(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108941
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】オイルダンパシステム
(51)【国際特許分類】
F16F 9/48 20060101AFI20230731BHJP
F16F 9/14 20060101ALI20230731BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20230731BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230731BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
F16F9/48
F16F9/14 Z
F16F15/023 Z
F16F15/02 A
E04H9/02 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010267
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】510235198
【氏名又は名称】有限会社シズメテック
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】鎭目 武治
(72)【発明者】
【氏名】鎭目 真喜子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 金二
(72)【発明者】
【氏名】井上 範夫
(72)【発明者】
【氏名】五十子 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】舟木 秀尊
(72)【発明者】
【氏名】小山 慶樹
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB13
2E139AC19
2E139BA12
2E139BD35
3J048AA06
3J048AC04
3J048CB21
3J048DA01
3J048EA38
3J069AA54
3J069CC06
3J069DD27
3J069EE65
(57)【要約】
【課題】減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、メンテナンス性を向上することが可能なオイルダンパシステムを提供する。
【解決手段】ユニフロー型のシリンダユニットに設けられる減衰バルブユニット10は、調圧バネ16で付勢される弁体14を有し、シリンダユニットの作動油流出室から外側シリンダへ流れる作動油Fがバネ力に抗して弁体を移動させる作用でエネルギ吸収するように構成され、この減衰バルブユニットの調圧バネは、制御用ピストンロッドそれぞれを初期位置に復帰させるために、制御用油fを制御用シリンダユニットそれぞれへ戻す戻し手段として構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シリンダが振動入力側及び振動減衰対象側の一方に連結され、ピストンロッドが振動入力側及び振動減衰対象側の他方に連結され、作動油が貯留された該外側シリンダの内部に、該ピストンロッドが連結されたピストンで作動油流出室と作動油流入室が区画された内側シリンダが設けられ、該ピストンが往復移動すると、該作動油流出室内の作動油が該外側シリンダへ流出し、該外側シリンダから該作動油流入室内へと一方向に流れるユニフロー型のシリンダユニットと、
バネ部材で付勢される弁体を有し、上記作動油流出室から上記外側シリンダへ流れる作動油がバネ力に抗して該弁体を移動させる作用でエネルギ吸収する減衰バルブユニットと、
上記ピストンを移動させる上記ピストンロッドが出没する出没ストローク量を伝達する伝達部材と、
上記ピストンロッドの出没ストローク方向に沿ってそれぞれ設けられ、該ピストンロッドに、所定出没ストローク量を超える超過突出ストローク及び超過没入ストロークが生じたときに、上記伝達部材によって、それら超過突出ストローク量及び超過没入ストローク量で各制御用ピストンロッドがそれぞれ突出作動されて制御用油を吐出する一対の制御用シリンダユニットと、
該一対の制御用シリンダユニットそれぞれから吐出される制御用油を上記減衰バルブユニットへ供給する制御用油供給系とを備え、
上記減衰バルブユニットには、上記バネ部材を挟んで上記弁体の反対側に設けられ、上記制御用油供給系から供給される制御用油で該バネ部材を縮めるように移動され、超過突出ストローク量及び超過没入ストローク量に応じて当該バネ部材のバネ力を大きくするバネ座と、上記制御用ピストンロッドそれぞれを初期位置に復帰させるために、制御用油を上記制御用シリンダユニットそれぞれへ戻す戻し手段とが備えられることを特徴とするオイルダンパシステム。
【請求項2】
前記戻し手段は、前記バネ部材が、制御用油を前記制御用油供給系へ流出させるように、前記バネ座を押圧するバネ力に設定されることを特徴とする請求項1に記載のオイルダンパシステム。
【請求項3】
前記戻し手段は、前記バネ座と前記弁体との間に前記バネ部材と重ねて設けられ、制御用油を前記制御用油供給系へ流出させるように、該バネ部材に該バネ座を押圧させるシムであることを特徴とする請求項1または2に記載のオイルダンパシステム。
【請求項4】
前記戻し手段は、前記バネ部材のバネ定数よりも小さなバネ定数で形成され、前記バネ座と前記弁体との間に上記バネ部材と並列に設けられ、制御用油を前記制御用油供給路へ流出させるように、該弁体側から該バネ座を押圧する戻しバネであることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載のオイルダンパシステム。
【請求項5】
前記戻し手段は、前記弁体を移動させる作動油の流れがなくなったとき、制御用油を前記制御用シリンダユニットそれぞれへ戻すことを特徴とする請求項1~4いずれかの項に記載のオイルダンパシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、メンテナンス性を向上することが可能なオイルダンパシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動入力側と振動減衰対象側との間、例えば地盤上に免震支承で支持された建物に作用する地震動を減衰するために、地盤と建物との間に設けられ、地震エネルギを吸収するオイルダンパが知られている。
【0003】
この種のオイルダンパとして、特許文献1が知られている。特許文献1の「免震装置用のオイルダンパ」は、免震支承との併用により免震装置を構成し、地震時における基礎と上部建物との相対変位を抑制するために、地震の揺れのエネルギーを吸収し、減衰させる免震装置用のオイルダンパであって、前記基礎および前記上部建物の一方に連結された第1シリンダと、当該第1シリンダ内に摺動自在に設けられ、当該第1シリンダ内を左右2つの油室に仕切る第1ピストンと、押圧部を有し、前記第1ピストンと一体に設けられ、前記基礎および前記上部建物の他方に連結されたピストンロッドとを有する第1油圧シリンダと、当該第1油圧シリンダの外部において前記2つの油室を互いに連通する連通路と、当該連通路の途中に設けられ、当該連通路を開閉する弁体と、移動自在のバネ座と、当該弁体とバネ座の間に設けられ、前記弁体を閉弁側に付勢するスプリングとを有し、前記第1油圧シリンダの前記第1ピストンが変位するのに伴い、前記第1シリンダの前記油室から供給された油圧により前記弁体が開弁することによって、減衰力を発生させる減衰バルブと、当該減衰バルブの前記バネ座の背面側に連通する第2シリンダと、当該第2シリンダ内に摺動自在に設けられた第2ピストンと、係合部を有し、前記第2ピストンと一体の第2ピストンロッドとを有し、前記第1ピストンの変位が所定値に達したときに、前記係合部が前記第1ピストンロッドの前記押圧部で押圧されることによって作動し、前記第2シリンダ内から前記バネ座の背面側に油圧を導入することにより、前記バネ座を介して前記スプリングを圧縮させ、当該スプリングのバネ力を増大させることによって、減衰力を増強する第2油圧シリンダと、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術に開示されているオイルダンパは、第1ピストンの変位が所定値に達したときに、第2油圧シリンダの第2シリンダ内から、減衰バルブのバネ座の背面側に油圧を導入して、第1油圧シリンダと連通する連通路を開閉するための弁体を付勢するスプリングのバネ力を増大し、減衰力を増強するようにしていて、地震動で生じる第1ピストンロッドのストロークに応じて減衰性能を変化させることができる優れた装置である。
【0006】
このオイルダンパでは、バネ座の背面側に油圧を導入する油圧を発生する第2シリンダ内に、減衰バルブから第2油圧シリンダに油を戻すスプリングを設けている。
【0007】
このスプリングが動くときに、第2シリンダ内面やスプリング自体の表面保護膜が剥がれ、それがゴミとなって油に混入してしまって、油が早期に劣化し、頻繁なメンテナンスが必要になるという不具合が考えられる。
【0008】
減衰バルブにスプリングを組み込むことに加えて、それとは別に、油を戻すスプリングを第2油圧シリンダに設けていて、これらスプリングの設置場所が異なるために、オイルダンパの性能を調整するメンテナンス作業が煩雑であるという不具合が考えられる。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、メンテナンス性を向上することが可能なオイルダンパシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるオイルダンパシステムは、外側シリンダが振動入力側及び振動減衰対象側の一方に連結され、ピストンロッドが振動入力側及び振動減衰対象側の他方に連結され、作動油が貯留された該外側シリンダの内部に、該ピストンロッドが連結されたピストンで作動油流出室と作動油流入室が区画された内側シリンダが設けられ、該ピストンが往復移動すると、該作動油流出室内の作動油が該外側シリンダへ流出し、該外側シリンダから該作動油流入室内へと一方向に流れるユニフロー型のシリンダユニットと、バネ部材で付勢される弁体を有し、上記作動油流出室から上記外側シリンダへ流れる作動油がバネ力に抗して該弁体を移動させる作用でエネルギ吸収する減衰バルブユニットと、上記ピストンを移動させる上記ピストンロッドが出没する出没ストローク量を伝達する伝達部材と、上記ピストンロッドの出没ストローク方向に沿ってそれぞれ設けられ、該ピストンロッドに、所定出没ストローク量を超える超過突出ストローク及び超過没入ストロークが生じたときに、上記伝達部材によって、それら超過突出ストローク量及び超過没入ストローク量で各制御用ピストンロッドがそれぞれ突出作動されて制御用油を吐出する一対の制御用シリンダユニットと、該一対の制御用シリンダユニットそれぞれから吐出される制御用油を上記減衰バルブユニットへ供給する制御用油供給系とを備え、上記減衰バルブユニットには、上記バネ部材を挟んで上記弁体の反対側に設けられ、上記制御用油供給系から供給される制御用油で該バネ部材を縮めるように移動され、超過突出ストローク量及び超過没入ストローク量に応じて当該バネ部材のバネ力を大きくするバネ座と、上記制御用ピストンロッドそれぞれを初期位置に復帰させるために、制御用油を上記制御用シリンダユニットそれぞれへ戻す戻し手段とが備えられることを特徴とする。
【0011】
前記戻し手段は、前記バネ部材が、制御用油を前記制御用油供給系へ流出させるように、前記バネ座を押圧するバネ力に設定されることを特徴とする。
【0012】
前記戻し手段は、前記バネ座と前記弁体との間に前記バネ部材と重ねて設けられ、制御用油を前記制御用油供給系へ流出させるように、該バネ部材に該バネ座を押圧させるシムであることを特徴とする。
【0013】
前記戻し手段は、前記バネ部材のバネ定数よりも小さなバネ定数で形成され、前記バネ座と前記弁体との間に上記バネ部材と並列に設けられ、制御用油を前記制御用油供給路へ流出させるように、該弁体側から該バネ座を押圧する戻しバネであることを特徴とする。
【0014】
前記戻し手段は、前記弁体を移動させる作動油の流れがなくなったとき、制御用油を前記制御用シリンダユニットそれぞれへ戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるオイルダンパシステムにあっては、減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、メンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかるオイルダンパシステムの好適な一実施形態の油圧回路を説明する説明図である。
【
図2】
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における平面図である。
【
図3】
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における側面図である。
【
図4】
図1のオイルダンパシステムに備えられる減衰バルブユニットを説明する断面図である。
【
図5】
図1のオイルダンパシステムに備えられる制御用シリンダユニットを説明する断面図である。
【
図6】
図4に示した減衰バルブユニットの変形例を示す断面図である。
【
図7】
図4に示した減衰バルブユニットの他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかるオイルダンパシステムの好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態にかかるオイルダンパシステムの油圧回路を説明する説明図である。
図2は、
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における平面視を示す図である。
図3は、
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における側面視を示す図である。
図2が設置状態の側面視であり、
図3が設置状態の平面視であってもよい。
【0019】
本実施形態にかかるオイルダンパシステム1は、振動入力側と振動減衰対象側との間、例えば地震エネルギを吸収するために地盤2あるいは地盤2と一体に動く建物3の基礎と当該基礎上に免震支承で支持された建物3との間に設けられる。
【0020】
しかしながら、本実施形態にかかるオイルダンパシステム1は、振動減衰を目的として、どのような振動伝達系に設けてもよいことはもちろんである。
【0021】
本実施形態にかかるオイルダンパシステム1は、ユニフロー型のシリンダユニット4を主体として構成される。
【0022】
ユニフロー型のシリンダユニット4自体は知られていて、外側シリンダ5と、外側シリンダ5の内部に設けられ、自由表面を保って作動油Fが貯留される作動油貯室6と、外側シリンダ5の内部に設けられる内側シリンダ7と、内側シリンダ7内部に液密状態でスライド自在に設けられると共に、当該内側シリンダ7内部を2つの作動油流出室R1及び作動油流入室R2に区画するピストン8と、ピストン8に一体に連結され、内側シリンダ7を貫通して外側シリンダ5の外方へ液密状態で突出され、スライド自在に作動されるピストンロッド9と、作動油貯室6と作動油流入室R2との間に設けられ、作動油Fを作動油貯室6から作動油流入室R2へのみ流通させ、逆流を遮断するダンパ用第1チェック弁11と、ピストン8に設けられ、作動油Fを作動油流入室R2から作動油流出室R1へのみ流通させ、逆流を遮断するダンパ用第2チェック弁12とを備えて構成されている。
【0023】
ユニフロー型のシリンダユニット4では、ピストン8が往復移動すると、作動油流出室R1内の作動油が外側シリンダ5へ流出すると同時に、作動油流入室R2内へ向けて外側シリンダ5から作動油が流入するように、作動油が一方向に流れるようになっている。
【0024】
ピストン8の受圧面積は、ピストンロッド9が連結される作動油流出室R1側ではピストンロッド9の断面積を差し引いた値であって、作動油流入室R2側の半分に設定される。
【0025】
そして、オイルダンパシステム1は基本的に、このシリンダユニット4の作動油流出室R1と外側シリンダ5内の作動油貯室6の間に、エネルギ吸収作用を発生する減衰バルブユニット10が設けられることで構成される。
【0026】
減衰バルブユニット10は、
図4に示すように、内側シリンダ7の作動油流出室R1と連通される作動油流入ポートP1及び作動油貯室6と連通される作動油流出ポートP2を有するバルブボディ13と、バルブボディ13内に移動自在に設けられ、移動されて作動油流入ポートP1を開閉する弁体14と、バルブボディ13内に、弁体14とは反対側に配置して、当該バルブボディ13に対し液密状態で移動自在に設けられたバネ座15と、バルブボディ13内に、バネ座15と弁体14との間に挟んで設けられ、バネ座15に支持されて弁体14を付勢する、バネ部材としての調圧バネ16とから構成される。
【0027】
すなわち、調圧バネ16の一端に弁体14が配置され、調圧バネ16の他端にバネ座15が配置される。
【0028】
減衰バルブユニット10では、調圧バネ16は弁体14を作動油流入ポートP1へ向けて付勢し、当該調圧バネ16の付勢力で弁体14が作動油流入ポートP1を閉じることにより、作動油流出室R1と作動油貯室6とが遮断され、他方、調圧バネ16の付勢力に抗して弁体14が作動油流入ポートP1を開くことにより、当該作動油流入ポートP1と作動油流出ポートP2とが連通され、これにより、作動油流出室R1と作動油貯室6とが連通される。
【0029】
減衰バルブユニット10では、ピストン8に押されて作動油流出室R1から外側シリンダ5に向かって流れる作動油が、調圧バネ16のバネ力に抗して弁体14を移動させる作用により作動油流入ポートP1が開かれるときに、当該作動油に圧力損失を生じさせてエネルギを吸収する。
【0030】
減衰バルブユニット10のバルブボディ13にはさらに、バネ座15の背面(調圧バネ16の設置側とは反対側)に面して、後述する導入ポートP3が設けられる。
【0031】
ユニフロー型のシリンダユニット4の作動は、ピストンロッド9が外側シリンダ5から突出方向に引き出されてピストン8が内側シリンダ7の作動油流出室R1を狭めるように移動すると、作動油流出室R1から作動油Fが減衰バルブユニット10に向かって流出する。
【0032】
作動油流出室R1から流出する作動油Fの流出圧が作動油流入ポートP1に作用し、調圧バネ16で付勢されている弁体14を、調圧バネ16のバネ力に抗して移動して、これにより作動油流入ポートP1が開かれる。
【0033】
作動油流入ポートP1が開かれると、作動油Fは、減衰バルブユニット10のバルブボディ13内を、当該バルブボディ13の内面と弁体14との隙間を通って、作動油流出ポートP2へ向かって流れ、さらに、作動油流出ポートP2から作動油貯室6へと向かって流れる。
【0034】
減衰バルブユニット10では、作動油流出室R1からの作動油Fの流出圧による弁体14の開放動作を調圧バネ16によって制限することにより、すなわち、調圧バネ16の圧縮状態を維持しながら作動油Fを流通させ続けることにより、オイルダンパシステム1としてのエネルギ吸収作用が発揮される。
【0035】
作動油流出室R1が狭められて作動油Fが作動油流出室R1から流出するとき、広げられる作動油流入室R2には、作動油貯室6からダンパ用第1チェック弁11を介して作動油Fが流入する。
【0036】
他方、ピストンロッド9が外側シリンダ5へ向けて没入方向に押し込まれてピストン8が内側シリンダ7の作動油流出室R1を広げるように移動し、これに伴って作動油流入室R2が狭められると、ダンパ用第1チェック弁11が閉じられていることから、そしてまた上述したように、ピストン8の作動油流入室R2側の受圧面積が作動油流出室R1側の受圧面積の2倍であることから、圧力が高まった作動油流入室R2の作動油Fが、ピストンロッド9の突出時の2倍の量で、ピストン8のダンパ用第2チェック弁12を通じて作動油流出室R1へ送り込まれ、その量の半分の作動油Fはさらに、作動油流出室R1から押し出されて減衰バルブユニット10に向かって流出する。
【0037】
作動油流出室R1では、作動油流入室R2からの2倍の量の作動油Fの流入により、その量の半分の作動油Fが補充されて常に充満される。
【0038】
ピストンロッド9の没入動作時も、突出動作時と同様に、作動油流出室R1から流出する作動油Fの流出圧が作動油流入ポートP1に作用し、調圧バネ16で付勢されている弁体14を、調圧バネ16のバネ力に抗して移動して、これにより作動油流入ポートP1が開かれる。
【0039】
作動油流入ポートP1が開かれると、作動油Fは、減衰バルブユニット10のバルブボディ13内を作動油流出ポートP2へ向かって流れ、さらに、作動油流出ポートP2から作動油貯室6へと向かって流れる。
【0040】
減衰バルブユニット10では、ピストンロッド9の没入動作時も、作動油流出室R1からの作動油Fの流出圧による弁体14の開放動作を調圧バネ16によって制限することにより、すなわち、調圧バネ16の圧縮状態を維持しながら作動油Fを流通させ続けることにより、オイルダンパシステム1としてのエネルギ吸収作用が発揮される。
【0041】
ピストンロッド9の突出動作時も、没入動作時も、ピストン8のスライド量が同じであれば、減衰バルブユニット10に流入する作動油Fの量は同じなので、エネルギ吸収量は同じになる。
【0042】
そして、本実施形態に係るオイルダンパシステム1を構成するユニフロー型のシリンダユニット4では上述のようにして、作動油Fは、作動油流出室R1からのみ作動油貯室6へ向けて流出し、また、作動油貯室6から作動油流入室R2へのみ流入するように、一方向に流れる。
【0043】
なお、作動油流出室R1と作動油貯室6との間には、ピストンロッド9の高速作動時に、作動油流出室R1の作動油Fの油圧を開放制御するリリーフ弁17が設けられている。
【0044】
シリンダユニット4は、外側シリンダ5が振動入力側及び振動減衰対象側の一方、例えば地盤2に連結される。
【0045】
シリンダユニット4はまた、ピストンロッド9が振動入力側及び振動減衰対象側の他方、例えば建物3に連結される。
【0046】
シリンダユニット4は、例えば地盤2及び建物3に連結して設けられるもので、
図2及び
図3に示すように、それら対象物への取付部37が、シリンダユニット4のピストンロッド9及び外側シリンダ5に備えられる。
【0047】
また、伝達部材18を外部から覆うカバーとして、ピストンロッド9の伸縮ストロークに応じて伸縮自在なベローズ51が、外側シリンダ5と取付部37との間に設けられる。
【0048】
シリンダユニット4自体は、地震によって地盤2と建物3との間に相対変位が生じると、その相対変位量に応じたストローク量で、ピストンロッド9が出没ストロークする。
【0049】
本明細書中、「ピストンロッド9の出没ストローク」とは、ピストン8の往復移動を伴って、ピストンロッド9が外側シリンダ5及び内側シリンダ7から外方へ突出する方向に引き出されたり、それらの内方へ没入する方向に押し込まれたりして、シリンダユニット4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に長くなったり、短くなったりする長さの変化をいう。
【0050】
同様に、「ピストンロッド9の突出ストローク」とは、シリンダユニット4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に長くなる長さの変化を、「ピストンロッド9の没入ストローク」とは、シリンダユニット4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に短くなる長さの変化をいう。
【0051】
これらストロークは、ピストンロッド9が初期位置で停止しているシリンダユニット4の非作動状態からの移動変位を意味する。
【0052】
また、ピストンロッド9の「突出」とは、ピストン8の往復移動を伴って、ピストンロッド9が外側シリンダ5及び内側シリンダ7から外方へ突出する方向に引き出され、シリンダユニット4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に長くなること、ピストンロッド9の「没入」とは、ピストンロッド9が外側シリンダ5及び内側シリンダ7の内方へ没入する方向に押し込まれ、シリンダユニット4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に短くなることを言う。
【0053】
シリンダユニット4には、
図1~
図3に示すように、ピストン8を移動させるピストンロッド9の出没ストローク量を伝達する伝達部材18が設けられる。
【0054】
伝達部材18は、ピストンロッド9の出没ストローク方向に長い軸体で形成される。伝達部材18は、長さ方向の一端である基端18aがピストンロッド9に取り付けられ、長さ方向の他端である先端18bが外側シリンダ5の外側に移動自在に支持される。
【0055】
基端18aがピストンロッド9に取り付けられる伝達部材18は、シリンダユニット4の外側でピストンロッド9の出没動作に従ってスライド移動し、ピストンロッド9が突出ストロークすると、当該突出ストローク方向へ同じ移動量で先端18bが移動され、ピストンロッド9が没入ストロークすると、当該没入ストローク方向へ同じ移動量で先端18bが移動される。
【0056】
シリンダユニット4の外側シリンダ5の外側には、伝達部材18を挟んでその両側それぞれに、ピストンロッド9の出没ストローク方向に沿って、一対の制御用シリンダユニット19,19が設けられる。
【0057】
一方の制御用シリンダユニット19は、ピストンロッド9の突出ストロークに対して、他方の制御用シリンダユニット19は、没入ストロークに対して作動するように備えられる。
【0058】
これら制御用シリンダユニット19,19は共に、
図5に示すように、シリンダケース20と、シリンダケース20内に気密状態でスライド自在に設けられ、シリンダケース20内を、制御用油fが満たされる油室20a及びシリンダケース20に設けられた空気孔20bを通じて大気圧に保持される空気室20cに区画する制御用ピストン21と、油室20a側から制御用ピストン21に一端が連結され、他端がシリンダケース20外方へ液密状態で突出され、スライド自在に出没作動される制御用ピストンロッド22と、シリンダケース20に設けられ、制御用ピストンロッド22の突出作動でスライド移動される制御用ピストン21によって狭められる油室20aから制御用油fを減衰バルブユニット10へ向けて吐出し、かつ、後述するように、シリンダユニット4が動作を終えて非作動状態になったときに、減衰バルブユニット10から戻される制御用油fを油室20aに流入させ、空気室20cを狭めつつ制御用ピストンロッド22と共に制御用ピストン21を押し戻す制御用油の流出入ポートP4とから構成される。
【0059】
本明細書中、「制御用ピストンロッド22が突出するあるいは没入する」とは、制御用ピストン21の往復移動を伴って、制御用ピストンロッド22がシリンダケース20から外方へ突出する方向に引き出されたり、それらの内方へ没入する方向に押し込まれたりして、制御用シリンダユニット19の長さ寸法が制御用ピストンロッド22の長さ方向に長くなったり、短くなったりする長さの変化をいう。
【0060】
伝達部材18の先端18bには、作動部24が設けられると共に、伝達部材18両側のこれら一対の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22の上記他端の突出先端に、作動部24が係脱自在に係合される受動部25が設けられる。
【0061】
一対の制御用シリンダユニット19,19は、
図1及び
図2に示すように、それらの制御用ピストンロッド22,22の突出方向が正反対となるように、かつピストンロッド9の出没ストローク方向でそれらの受動部25、25の間に伝達部材18の作動部24が位置するように設置される。
【0062】
さらに、これら制御用シリンダユニット19,19の受動部25,25は共に、シリンダユニット4のピストンロッド9が出没ストローク方向に中立位置(言い換えれば、シリンダユニット4が非作動の初期状態)であり、かつ、空気室20cが狭められて制御用ピストンロッド22,22の突出ストローク量が「0」の初期位置に位置されているときに、作動部24に対して、ピストンロッド9に設定される所定出没ストローク量分の距離が隔てられる。
【0063】
所定出没ストローク量とは、
図1に示すように、ピストンロッド9の上記中立位置Nを基準として、突出ストローク方向と没入ストローク方向とにそれぞれ等しく設定された突出ストローク量S及び没入ストローク量Sを言う。
【0064】
すなわち、作動部24と各受動部25,25それぞれとは、等しく、ピストンロッド9の所定ストローク量S分の距離だけ離されている。
【0065】
ピストンロッド9が所定ストローク量S以内で出没ストロークされるときには、伝達部材18の作動部24はそれに従って移動されるが、作動部24はいずれの制御用シリンダユニット19の受動部25にも係合されず、制御用シリンダユニット19は作動されない。
【0066】
ピストンロッド9に、所定出没ストローク量Sを超える、例えば超過突出ストロークが生じると、作動部24は、一方の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22の受動部25に係合する。
【0067】
そして受動部25は、所定出没ストローク量Sを超えた分の超過突出ストローク量で制御用ピストンロッド22を突出作動させる。
【0068】
突出作動される制御用ピストンロッド22により、制御用ピストン21がスライド移動され、シリンダケース20の流出入ポートP4から、超過突出ストローク分の制御用油fが吐出される。
【0069】
出没ストロークを繰り返すピストンロッド9が没入ストロークに移行すると、伝達部材18の作動部24は、係合により制御用ピストンロッド22を突出作動させた受動部25から離脱する。
【0070】
再度の突出ストロークで、超過突出ストローク量が前回の超過突出ストローク量を超えない場合、その間に突出動作されていた制御用ピストンロッド22は、同じ位置を保っていて制御用油fの吐出が生じない一方、超過突出ストローク量が前回の超過突出ストロークを超えて増した場合には、作動部24が受動部25に再度係合して、新たに増した分の超過突出ストローク量で再び制御用ピストンロッド22を突出動作させ、これにより、制御用シリンダユニット19から、超過突出ストロークが増した分の制御用油fが吐出される。
【0071】
ピストンロッド9に、所定出没ストローク量を超える超過没入ストロークが生じると、伝達部材18の作動部24により他方の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22が、上述した一方の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22と同様にして突出動作され、シリンダケース20の流出入ポートP4から、超過没入ストローク分、そしてまた超過没入ストロークが増した分の制御用油fが流出入ポートP4から吐出される。
【0072】
このように制御用シリンダユニット19は、シリンダユニット4のピストンロッド9の出没ストローク量が所定出没ストローク量Sを超えたとき、最初は、当該所定出没ストローク量Sに対してそれを超えたときの超過出没ストローク量分の制御用油fを吐出し、その後は、前回の超過出没ストロークを超えて増した分の超過出没ストローク量分の制御用油fを吐出することを繰り返す。
【0073】
すなわち、一対の制御用シリンダユニット19,19は共に、所定出没ストローク量Sを超えたとき、そしてまたその後、超過出没ストローク量が増していくたびに、制御用油fを増した分だけ吐出する。
【0074】
図1~
図3に示すように、一対の制御用シリンダユニット19,19と減衰バルブユニット10との間には、制御用油供給系26が設けられる。
【0075】
制御用油供給系26は配管システムで構成され、一対の制御用シリンダユニット19,19の流出入ポートP4,P4同士を連通する連通部27を有すると共に、当該連通部27と減衰バルブユニット10の導入ポートP3とを接続する。
【0076】
制御用油供給系26には、連通部27と減衰バルブユニット10の導入ポートP3との間に配置して、チェック弁28が設けられる。
【0077】
チェック弁28は、制御用油fが連通部27から導入ポートP3へ向かって流入するのを許容し、逆流を阻止する。
【0078】
そして、導入ポートP3からバルブボディ13内に流入される制御用油fによってバネ座15の背面に油圧が生じ、この油圧がチェック弁28に背面圧として作用される。
【0079】
バネ座15は、弁体14とは異なり、バルブボディ13に対し、液密な状態で移動自在に設けられる。
【0080】
したがって、導入ポートP3から流入した制御用油fは、バネ座15を押圧して移動させた状態でバルブボディ13内に滞留し、このため、制御用油fが作動油Fと混ざって、作動油流出ポートP2から作動油貯室6へ流れていくことはない。
【0081】
すなわち、チェック弁28を備えた制御用油供給系26では、各流出入ポートP4,P4から吐出される制御用油fは、これら一対の流出入ポートP4,P4同士の間で行き来するように流れたり、チェック弁28を介し、導入ポートP3を通じて、減衰バルブユニット10内のバネ座15の背面に流れ込み、当該バネ座15の背面に、調圧バネ16のバネ力を変化させる油圧を生じさせる。
【0082】
シリンダユニット4のピストンロッド9は、突出と没入を交互に繰り返し、これにより、一対の制御用シリンダユニット19,19の制御用ピストンロッド22,22が交互に突出作動されると、各流出入ポートP4,P4から交互に間欠的に制御用油fが吐出される。
【0083】
チェック弁28は、突出作動中のいずれか一方の制御用シリンダユニット19の流出入ポートP4から吐出されて、連通部27を通じて作用する制御用油fの油圧がその開弁圧を超えたときに、制御用油fを導入ポートP3へ導入し、他方、当該制御用油fの油圧がその開弁圧以下のときには、制御用油fが導入ポートP3へ流入するのを阻止する。
【0084】
チェック弁28で流通が阻止された制御用油fは、連通部27を通じて、他方の制御用シリンダユニット19(油室20aに油圧が生じていない状態であって、制御用ピストンロッド22が空気室20c側へ移動可能である)の流出入ポートP4に流入される。
【0085】
この連通部27は、バネ座15の背面に発生した油圧(チェック弁28の背面圧)が設定上限値に達したときなど、制御用油fがチェック弁28を通過できないときのリリーフ回路として機能される。
【0086】
超過突出ストローク量及び超過没入ストローク量が発生し、その後それらストローク量が順次増すたびに交互に突出作動される一対の制御用シリンダユニット19,19によって発生する制御用油fの油圧が繰り返しチェック弁28に作用し、チェック弁28は、開弁圧を超える度に、制御用油fを減衰バルブユニット10の導入ポートP3へ流入させる。
【0087】
これにより、減衰バルブユニット10のバルブボディ13内では、導入ポートP3からバネ座15の背面に導入され、その量が次第に増えていく制御用油fにより、調圧バネ16が弁体14との間で順次に収縮されていき、この収縮によって弁体14を付勢する当該調圧バネ16のバネ力が大きくなるように変化される。
【0088】
すなわち、バネ座15は、導入ポートP3から導入される制御用油fの油圧で調圧バネ16を縮めるように移動され、これによって、超過突出ストローク量や超過没入ストローク量に応じた調圧バネ16のバネ力の変化が生じる。
【0089】
制御用油供給系26には、
図1に示すように、制御用油fを一対の制御用シリンダユニット19,19へ戻すために、チェック弁28をバイパスするバイパス路29が設けられ、このバイパス路29には、チェック弁28と並列に、開閉自在かつ開度調整自在な絞り機能を有するリターンバルブ(例えば、ニードルバルブ)30が設けられる。
【0090】
このリターンバルブ30は、例えば地震が終息してシリンダユニット4が動作を終え非作動状態となる(ピストンロッド9が出没ストローク方向の中立位置Nに戻る)ときに開かれて、減衰バルブユニット10に送り込まれた制御用油fを、導入ポートP3から連通部27を介して、一対の制御用シリンダユニット19,19の流出入ポートP4,P4へ順次に戻すようになっている。
【0091】
他方、リターンバルブ30は、シリンダユニット4の作動中は、バネ座15背面からの制御用油fの流出を制限する。
【0092】
本実施形態に係るオイルダンパシステム1では、例えば上述したように地震が終息してシリンダユニット4が動作を終え非作動状態となって弁体14を移動させる作動油Fの流れがなくなったことに応じて、各制御用ピストンロッド22,22それぞれを突出ストローク量が「0」の初期位置に復帰させるために、減衰バルブユニット10から各制御用シリンダユニット19,19それぞれの流出入ポートP4,P4へ向けて制御用油fを戻す戻し手段が、背景技術とは異なり、減衰バルブユニット10に備えられる。
【0093】
図4に示した減衰バルブユニット10の例では、戻し手段は、調圧バネ16が、制御用油fを制御用油供給系26へ流出させるように、バネ座15を押圧するバネ力に設定されて構成される。
【0094】
すなわち、シリンダユニット4が作動状態から非作動状態に移行すると、減衰バルブユニット10の弁体14には、作動油流出室R1と連通している作動油流入ポートP1に僅かな油圧が作用するだけであり、かつまた、作動部24が受動部25に係合して制御用ピストンロッド22を突出作動させることはない。
【0095】
このときには、調圧バネ16は、バネ座15を介して制御用油fにより収縮されている状態から伸びて復原していく過程で、導入ポートP3を封鎖するようにバネ座15を押圧し、リターンバルブ30を通じて、バルブボディ13からほぼすべての制御用油fを制御用油供給系26、ひいては各制御用シリンダユニット19,19それぞれの流出入ポートP4へと押し戻すようになっている。
【0096】
調圧バネ16のバネ力は、作動油Fの流れがなくなったシリンダユニット4の非作動状態のときに、制御用油fが制御用油供給系26へ徐々に流出して戻される程度が望ましい。
【0097】
調圧バネ16の設置の仕方は、弁体14により作動油流入ポートP1を、かつバネ座15により導入ポートP3を閉じることが可能な状態で、調圧バネ16に変形荷重が加わらないか、もしくは僅かに加わる程度に設けることが望ましい。
【0098】
なお、
図1中、31は、制御用油供給系26内の油圧を表示する油圧計であり、32は、制御用油fのドレン用開閉弁である。
【0099】
本実施形態に係るオイルダンパシステム1の作動について説明する。シリンダユニット4は、ピストンロッド9が出没ストローク方向で中立位置Nにあるようにして、地盤2と建物3の間にセットされる。
【0100】
例えば地震が発生してシリンダユニット4が作動を開始したとき、ピストンロッド9の出没ストロークに超過突出ストロークまたは超過没入ストロークが生じないときは、一対の制御用シリンダユニット19,19が作動されることはなく、シリンダユニット4は、減衰バルブユニット10の弁体14が、調圧バネ16にセットされた初期バネ特性で作動油Fの流出圧に対し開閉されて、地震エネルギを吸収する。
【0101】
ピストンロッド9に所定の出没ストローク量Sを超える超過出没ストローク量が生じると、伝達部材18の作動部24により制御用シリンダユニット19,19が作動される。
【0102】
最初の超過突出ストロークまたは超過没入ストロークのいずれかにより、いずれか一方の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22が突出動作されて制御用油fが流出入ポートP4からチェック弁28を介して減衰バルブユニット10のバネ座15の背面に導入されると、調圧バネ16が縮められ、これにより、減衰バルブユニット10は、初期バネ特性よりも大きなバネ力に変更された調圧バネ16のバネ特性により、作動油Fの流出圧に対して弁体14を開閉することとなり、地震エネルギの吸収作用が増大する。
【0103】
最初の超過出没ストローク量以内であって、それを超える超過出没ストロークが生じないときには、一対の制御用ピストンロッド19,19は、伝達部材18でさらに突出作動されることはない。
【0104】
他方、前回の超過出没ストローク量を超えて増した分の超過突出ストローク量及び超過没入ストローク量が生じると、その度に一対の各制御用シリンダユニット19,19から吐出される制御用油fの油圧でチェック弁28が開かれ、そのたびに制御用油fが減衰バルブユニット10に導入され、調圧バネ16のバネ力がどんどん大きく変更されていく。
【0105】
従って、地震によって生じるピストンロッド9の出没ストローク量が大きくなればなるほど、減衰バルブユニット10の調圧バネ16のバネ力を大きくして、エネルギ吸収性能を大きく変化させていくことができる。
【0106】
その後、例えば地震が終息してシリンダユニット4が動作を終え非作動状態となる(ピストンロッド9が出没ストローク方向の中立位置Nに戻る)と、減衰バルブユニット10では、それまで収縮状態であった調圧バネ16が弁体14側を基点として伸長して弾性復原し始め、これによりバネ座15が導入ポートP3側へ押圧され、バルブボディ13に導入された制御用油fを、制御用油供給系26へと徐々に戻すことができる。
【0107】
制御用油供給系26では、制御用油fは、バイパス路29からリターンバルブ30を通って、連通部27へと流れ込み、さらに、各制御用シリンダユニット19、19の流出入ポートP4,P4を通じて、油室20a,20aに戻され、これにより、制御用ピストン21,21が空気室20c,20cを狭めるようにスライドされて、制御用シリンダロッド22,22がシリンダケース20,20内へ引き込まれ、制御用シリンダユニット19,19が初期状態に復帰される。
【0108】
本実施形態にかかるオイルダンパシステム1では、弁体14を移動させる作動油Fの流れがなくなったとき、制御用ピストンロッド22,22それぞれを初期位置に復帰させるために、制御用油fを制御用シリンダユニット19,19それぞれへ戻す戻し手段を調圧バネ16で構成して減衰バルブユニット10に備えるようにしたので、制御用油fが流通する制御用シリンダユニット19から制御用油供給系26に亘る間には、制御用油fにゴミなどの異物が混入する箇所がなく、制御用油fが早期に劣化してしまうことを防ぐことができる。
【0109】
また、戻し手段を調圧バネ16として減衰バルブユニット10に備えたことにより、性能を調整するためのバネ特性に関するメンテナンス作業を減衰バルブユニット10だけで済ませることができる。
【0110】
これらにより、オイルダンパシステム1のメンテナンス性を向上することができる。
【0111】
制御用油供給系26に、チェック弁28をバイパスするバイパス路29を設け、バイパス路29に、チェック弁28と並列に、減衰バルブユニット10の導入ポートP3から制御用油fを、連通部27を介して一対の制御用シリンダユニット19,19の流出入ポートP4,P4へ順次に戻すためのリターンバルブ30を設けたので、地震終息後など、シリンダユニット4及び一対の制御用シリンダユニット19,19を、円滑に作動前の中立状態に復帰させることができる。
【0112】
図6には、上記実施形態の変形例が示されている。この変形例では、戻し手段は、バネ座15と弁体14との間に調圧バネ16と重ねて設けられ、制御用油fを制御用油供給系26へ流出させるように、調圧バネ16にバネ座15を押圧させるシム33で構成される。
【0113】
シム33は、隙間調整用の部品として周知であって、このシム33を調圧バネ16に重ねて設けて微調整を行うことにより、異なるバネ特性の調圧バネ16に変更することなく、シム33の厚みで調圧バネの初期バネ特性を設定・変更することができ、制御用油fを適切に制御用油供給系26へ戻して、制御用シリンダユニット19を初期状態に復帰させることができる。
【0114】
図示例では、シム33は、弁体14と調圧バネ16との間に3枚重ねて設けられているが、バネ座15と調圧バネ16との間に設けてもよく、その枚数も問われない。
【0115】
シム33は、上記実施形態の戻し手段としての調圧バネと組み合わせて設けるようにしてもよい。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0116】
図7には、上記実施形態の他の変形例が示されている。この変形例では、戻し手段は、調圧バネ16のバネ定数よりも小さなバネ定数で形成され、バネ座15と弁体14との間に調圧バネ16と並列に設けられ、制御用油fを制御用油供給路26へ流出させるように、弁体14側からバネ座15を押圧する戻しバネ34で構成される。
【0117】
戻しバネ34は、調圧バネ16独自によるエネルギ吸収作用を妨げないように、当該調圧バネ16のバネ定数よりも小さなバネ定数、すなわちバネ力が弱いバネとされる。
【0118】
戻しバネ34は、シリンダユニット4の作動中は、調圧バネ16の作用とはほとんど無関係に伸び縮み変形される一方で、地震が終息するなどしてシリンダユニット4が動作を終え非作動状態になった後では、調圧バネ16の弾性復原で戻されるバネ座15が導入ポートP3を完全に封鎖する位置まで戻っておらず、したがって、制御用ピストンロッド22も完全に元の位置に戻っていない状態のときに、弱いバネ力で徐々にバネ座15を導入ポートP3へと押圧し、制御用油fを適切に制御用油供給系26へ戻して、制御用シリンダユニット19を初期状態に復帰させることができる。
【0119】
戻しバネ34は、上記実施形態の戻し手段としての調圧バネ16に組み合わせて設けてもよいし、さらには上記シム33に組み合わせてもよい。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0120】
リターンバルブ30は、制御用油fが常時、微少量流通する設定としておき、制御用油fが導入ポートP3へ向けて流入している間も、当該微少量が制御用シリンダユニット19へ戻されるようにしてもよい。
【0121】
この微少量は、例えば地震の終息後、5~10分程度の短時間ですべて制御用油fが制御用シリンダユニット19へ戻すことができ、かつ、オイルダンパシステム1の作動時は、バルブボディ13内に適切な油圧を発生させることができるように設定することが望ましい。
【符号の説明】
【0122】
1 オイルダンパシステム
2 地盤
3 建物
4 ユニフロー型のシリンダユニット
5 外側シリンダ
7 内側シリンダ
8 ピストン
9 ピストンロッド
10 減衰バルブユニット
14 弁体
15 バネ座
16 調圧バネ
18 伝達部材
19 制御用シリンダユニット
22 制御用ピストンロッド
26 制御用油供給系
33 シム
34 戻しバネ
F 作動油
f 制御用油
S 所定出没ストローク量
R1 作動油流出室
R2 作動油流入室