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特開2023-108977DPCレセプト点検システム、点検方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108977
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】DPCレセプト点検システム、点検方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20230731BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010317
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】514084923
【氏名又は名称】株式会社Ubicomホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】上野 直
(72)【発明者】
【氏名】北岡 明哲
(72)【発明者】
【氏名】安念 香奈子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】DPCレセプトデータ自体から、手術の有無と、抽出分類番号の不整合について点検する。
【解決手段】DPCレセプト点検システム1の手術点検手段13は、一または複数の出来高レコードから、手術に関連するレコードを検索し、抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードがDPCレセプトデータに存在した場合、または、抽出分類番号に含まれる手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードがDPCレセプトデータに存在しない場合、抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検システムであって、
DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、
読み込んだ前記DPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出手段と、
前記分類番号抽出手段が抽出した分類番号である抽出分類番号に対応する手術の有無の整合について点検する手術点検手段とを備え、
前記DPCレセプトデータは、出来高点数部分を示すレコードである、一または複数の出来高レコードと、包括評価部分の診療行為の内容を示すコーディングデータのレコードである一または複数のコーディングデータレコードとを含み、
前記手術点検手段は、
出来高レコードから、手術に関連するレコードを検索し、
前記抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードが前記DPCレセプトデータに存在した場合、または、前記抽出分類番号に含まれる前記手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードが前記DPCレセプトデータに存在しない場合、前記抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告すること
を特徴とするDPCレセプト点検システム。
【請求項2】
前記抽出分類番号と傷病名の整合について点検する傷病名点検手段をさらに備え、
前記傷病名点検手段は、
前記DPCレセプトデータから、傷病コードを抽出する傷病名抽出処理と、
分類番号の一部と傷病とを対応させて記憶した傷病マスタを参照して、前記傷病マスタにおいて前記抽出分類番号に対応する傷病コードと、前記傷病名抽出処理で抽出した傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合に整合しないと判定する傷病名点検処理と、
前記傷病名点検処理で、整合しないと判定した場合に、傷病名が、前記抽出分類番号と整合しないことを警告する処理と、
を実行することを特徴とする請求項1に記載のDPCレセプト点検システム。
【請求項3】
前記抽出分類番号が、定義副傷病の有無を示す対応コードを含む場合に、DPCレセプトデータと副傷病名の整合について点検する副傷病名点検手段をさらに備え、
前記副傷病名点検手段は、
前記DPCレセプトデータから、副傷病コードを抽出する副傷病抽出処理と、
前記抽出分類番号が、定義副傷病があることを示す対応コードを含む場合、分類番号の一部と一または複数の定義副傷病のコードとを対応させて記憶した副傷病マスタを参照して、前記副傷病マスタにおいて前記抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、前記副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合、または、副傷病抽出処理で副傷病コードを抽出できなかった場合に整合しないと判定する副傷病点検処理と、
前記副傷病点検処理で、整合しないと判定した場合、副傷病名が、前記抽出分類番号と整合しないことを警告する処理と、
を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のDPCレセプト点検システム。
【請求項4】
前記副傷病名点検手段は、前記副傷病点検処理において、
さらに、前記抽出分類番号が、定義副傷病がないことを示す対応コードを含む場合、前記副傷病マスタを参照して、前記副傷病マスタにおいて前記抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、前記副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合しないと判定し、一致しない場合に整合すると判定することを特徴とする請求項3に記載のDPCレセプト点検システム。
【請求項5】
前記抽出分類番号が処置の対応コードを含む場合に、当該対応コードが正しいか否かを点検する処置コード点検手段をさらに備え、
前記処置コード点検手段は、
分類番号の一部と一または複数の処置コードとを対応させて記憶した処置マスタを参照して、前記抽出分類番号に対応する処置コードに関する処置を前記DPCレセプトデータから検索し、当該処置コードに対応する処置のデータが存在しない場合、前記抽出分類番号のうち、処置の対応コードに誤りがあることを警告する処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のDPCレセプト点検システム。
【請求項6】
手術または処置の日付が、入院期間内にあるか否かをチェックする日付チェック手段をさらに備え、
前記日付チェック手段は、
前記DPCレセプトデータから、入院期間を抽出する入院期間抽出処理と、
前記DPCレセプトデータに含まれる診療関連レコードの日付およびコーディングデータレコードの日付が前記入院期間内にあるかを判定し、入院期間内にないと判定した場合に、手術または処置の日付が入院期間内にないことを警告する処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のDPCレセプト点検システム。
【請求項7】
コンピュータを用いて、DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検方法であって、
DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む処理と、
読み込んだ前記DPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出処理と、
前記分類番号抽出処理で抽出した分類番号である抽出分類番号に対応する手術の有無の整合について点検する手術点検処理とを実行し、
前記手術点検処理において、
前記DPCレセプトデータに含まれる出来高点数部分を示すレコードである、一または複数の出来高レコードから、手術に関連するレコードを検索し、
前記抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードが前記DPCレセプトデータに存在した場合、または、前記抽出分類番号に含まれる前記手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードが前記DPCレセプトデータに存在しない場合、前記抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告すること
を特徴とするDPCレセプト点検方法。
【請求項8】
コンピュータを用いて、DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、
読み込んだ前記DPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出手段と、
前記分類番号抽出手段が抽出した分類番号である抽出分類番号に対応する手術の有無の整合について点検する手術点検手段として機能させ、
前記手術点検手段は、
前記DPCレセプトデータに含まれる出来高点数部分を示すレコードである、一または複数の出来高レコードから、手術に関連するレコードを検索し、
前記抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードが前記DPCレセプトデータに存在した場合、または、前記抽出分類番号に含まれる前記手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードが前記DPCレセプトデータに存在しない場合、前記抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告すること
を特徴とするプログラム。
【請求項9】
DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検システムであって、
DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、
読み込んだ前記DPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出手段と、
前記分類番号抽出手段が抽出した分類番号である抽出分類番号と傷病名の整合について点検する傷病名点検手段をさらに備え、
前記傷病名点検手段は、
前記DPCレセプトデータから、傷病コードを抽出する傷病名抽出処理と、
分類番号の一部と傷病とを対応させて記憶した傷病マスタを参照して、前記傷病マスタにおいて前記抽出分類番号に対応する傷病コードと、前記傷病名抽出処理で抽出した傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合に整合しないと判定する傷病名点検処理と、
前記傷病名点検処理で、整合しないと判定した場合に、傷病名が、前記抽出分類番号と整合しないことを警告する処理と、
を実行することを特徴とする記載のDPCレセプト点検システム。
【請求項10】
DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検システムであって、
DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、
読み込んだ前記DPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出手段と、
前記分類番号抽出手段が抽出した分類番号である抽出分類番号が、定義副傷病の有無を示す対応コードを含む場合に、DPCレセプトデータと副傷病名の整合について点検する副傷病名点検手段をさらに備え、
前記副傷病名点検手段は、
前記DPCレセプトデータから、副傷病コードを抽出する副傷病抽出処理と、
前記抽出分類番号が、定義副傷病があることを示す対応コードを含む場合、分類番号の一部と一または複数の定義副傷病のコードとを対応させて記憶した副傷病マスタを参照して、前記副傷病マスタにおいて前記抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、前記副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合、または、副傷病抽出処理で副傷病コードを抽出できなかった場合に整合しないと判定する副傷病点検処理と、
前記副傷病点検処理で、整合しないと判定した場合、副傷病名が、前記抽出分類番号と整合しないことを警告する処理と、
を実行することを特徴とするDPCレセプト点検システム。
【請求項11】
DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検システムであって、
DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、
読み込んだ前記DPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出手段と、
前記分類番号抽出手段が抽出した分類番号である抽出分類番号が処置の対応コードを含む場合に、当該対応コードが正しいか否かを点検する処置コード点検手段をさらに備え、
前記処置コード点検手段は、
分類番号の一部と一または複数の処置コードとを対応させて記憶した処置マスタを参照して、前記抽出分類番号に対応する処置コードに関する処置を前記DPCレセプトデータから検索し、当該処置コードに対応する処置のデータが存在しない場合、前記抽出分類番号のうち、処置の対応コードに誤りがあることを警告する処理を実行することを特徴とするDPCレセプト点検システム。
【請求項12】
DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検システムであって、
DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、
手術または処置の日付が、入院期間内にあるか否かをチェックする日付チェック手段をさらに備え、
前記日付チェック手段は、
前記DPCレセプトデータから、入院期間を抽出する入院期間抽出処理と、
前記DPCレセプトデータに含まれる診療関連レコードの日付、および、包括評価部分の診療行為の内容を示すコーディングデータのレコードである一または複数のコーディングデータレコードの日付が前記入院期間内にあるかを判定し、入院期間内にないと判定した場合に、手術または処置の日付が入院期間内にないことを警告する処理とを実行することを特徴とするDPCレセプト点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPCレセプトの点検システム、点検方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
平成15年より、高度医療を提供する特定機能病院において、急性期の入院についてDPC(Diagnosis Procedure Combination)という包括評価制度による診療報酬の請求制度が導入されている。この制度は、患者ごとに傷病名や年齢、意識障害レベル、手術、処置の有無などを組み合わせた「診断群分類」に応じて、入院1日当たりで診療報酬の点数(包括点数)が定められたものである。診断群分類は、医療資源を最も投入した傷病名(以下、単に「傷病名」という。)、手術の有無、所定の処置の有無などに応じて14桁の分類番号が定められ、分類番号および入院日数毎に1日当たりの点数が決められている。
【0003】
DPCレセプトは、他のレセプトと同様に、審査支払機関がレセプトの妥当性を審査し、審査を通ったレセプトについて、保険者から医療機関に診療報酬が支払われる。審査を通らなかったレセプトについては、医療機関に戻される。
【0004】
従来、レセプトの電子化に関する特許文献としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、紙のレセプトを電子化し、自動で審査するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-050245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、レセプトの点検項目については記載があるものの、具体的にどのように処理することで点検を行うかについては記載されていない。
【0007】
そこで、本発明は、DPCレセプトの妥当性を、DPCレセプトデータ自体に基づいて点検可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するための本発明は、DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検システムであって、DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、読み込んだDPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出手段と、分類番号抽出手段が抽出した分類番号である抽出分類番号に対応する手術の有無の整合について点検する手術点検手段とを備える。
手術点検手段は、DPCレセプトデータに含まれる出来高点数部分を示すレコードである、一または複数の出来高レコードと、包括評価部分の診療行為の内容を示すコーディングデータのレコードである一または複数のコーディングデータレコードとから、手術に関連するレコードを検索する。また、手術点検手段は、抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連するコーディングデータレコードおよび手術に関連する出来高レコードの少なくとも一方がDPCレセプトデータに存在した場合、または、抽出分類番号に含まれる手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連するコーディングデータレコードおよび手術に関連する出来高レコードのいずれもがDPCレセプトデータに存在しない場合、抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告する。
【0009】
このような構成によれば、DPCレセプトデータ自体から、手術の有無と、抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【0010】
前記したシステムは、抽出分類番号と傷病名(DPCレセプトデータに入力された「医療資源を最も投入した傷病名」としての傷病名。)の整合について点検する傷病名点検手段をさらに備えることができる。
傷病名点検手段は、DPCレセプトデータから、傷病コードを抽出する傷病名抽出処理と、分類番号の一部と傷病とを対応させて記憶した傷病マスタを参照して、傷病マスタにおいて抽出分類番号に対応する傷病コードと、傷病名抽出処理で抽出した傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合に整合しないと判定する傷病名点検処理と、傷病名点検処理で、整合しないと判定した場合に、傷病名が、抽出分類番号と整合しないことを警告する処理と、を実行する。
【0011】
このような構成によれば、DPCレセプトデータ自体から、入力された傷病名の情報と抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【0012】
前記したシステムは、抽出分類番号が、定義副傷病の有無を示す対応コードを含む場合に、DPCレセプトデータと副傷病名の整合について点検する副傷病名点検手段をさらに備えることができる。
副傷病名点検手段は、DPCレセプトデータから、副傷病コードを抽出する副傷病抽出処理と、抽出分類番号が、定義副傷病があることを示す対応コードを含む場合、分類番号の一部と一または複数の定義副傷病のコードとを対応させて記憶した副傷病マスタを参照して、副傷病マスタにおいて抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合、または、副傷病抽出処理で副傷病コードを抽出できなかった場合に整合しないと判定する副傷病点検処理と、副傷病点検処理で、整合しないと判定した場合、副傷病名が、抽出分類番号と整合しないことを警告する処理と、を実行する。
【0013】
このような構成によれば、DPCレセプトデータ自体から、入力された副傷病の情報と抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【0014】
副傷病名点検手段は、副傷病点検処理において、さらに、抽出分類番号が、定義副傷病がないことを示す対応コードを含む場合、副傷病マスタを参照して、副傷病マスタにおいて抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合しないと判定し、一致しない場合に整合すると判定してもよい。
【0015】
このような構成によれば、抽出分類番号として定義副傷病がない分類番号が入力されている場合に、誤りの可能性をユーザに警告することができる。
【0016】
前記したシステムは、抽出分類番号が処置の対応コードを含む場合に、当該対応コードが正しいか否かを点検する処置コード点検手段をさらに備えることができる。
処置コード点検手段は、分類番号の一部と一または複数の処置コードとを対応させて記憶した処置マスタを参照して、抽出分類番号に対応する処置コードに関する処置をDPCレセプトデータから検索し、当該処置コードに対応する処置のデータが存在しない場合、抽出分類番号のうち、処置の対応コードに誤りがあることを警告する処理を実行する。
【0017】
このような構成によれば、DPCレセプトデータ自体から、処置の有無と抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【0018】
前記したシステムは、手術または処置の日付が、入院期間内にあるか否かをチェックする日付チェック手段をさらに備えることができる。
日付チェック手段は、DPCレセプトデータから、入院期間を抽出する入院期間抽出処理と、DPCレセプトデータに含まれる診療関連レコードの日付およびコーディングデータレコードの日付が入院期間内にあるかを判定し、入院期間内にないと判定した場合に、手術または処置の日付が入院期間内にないことを警告する処理を実行する。
【0019】
このような構成によれば、DPCレセプトデータ自体から、入院期間の情報の入力の誤り、または、手術や処置の日付の入力の誤りについて点検し、誤りをユーザに警告することができる。
【0020】
また、前記した目的を達成するための本発明は、コンピュータを用いて、DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するDPCレセプト点検方法である。
この方法は、DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む処理と、読み込んだDPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出処理と、分類番号抽出処理で抽出した分類番号である抽出分類番号に対応する手術の有無の整合について点検する手術点検処理とを実行する。
手術点検処理においては、DPCレセプトデータに含まれる出来高点数部分を示すレコードである、一または複数の出来高レコードから、手術に関連するレコードを検索し、抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードがDPCレセプトデータに存在した場合、または、抽出分類番号に含まれる手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードがDPCレセプトデータに存在しない場合、抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告する。
【0021】
また、前記した目的を達成するための本発明は、コンピュータを用いて、DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するためのプログラムである。
このプログラムは、コンピュータを、DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む手段と、読み込んだDPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する分類番号抽出手段と、分類番号抽出手段が抽出した分類番号である抽出分類番号に対応する手術の有無の整合について点検する手術点検手段として機能させる。
手術点検手段は、DPCレセプトデータに含まれる出来高点数部分を示すレコードである、一または複数の出来高レコードから、手術に関連するレコードを検索し、抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードがDPCレセプトデータに存在した場合、または、抽出分類番号に含まれる手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連する出来高レコードがDPCレセプトデータに存在しない場合、抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、DPCレセプトデータ自体から、手術の有無と、抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】DPCレセプト点検システムと関連する装置を示す図である。
図2】DPCレセプト点検システムのブロック構成図である。
図3】分類番号の樹形図と、対応する手術・処置の例である。
図4】DPCレセプトデータの構造を説明する図である。
図5】DPCレセプトデータの一例である。
図6】手術コードマスタの一例である。
図7】傷病マスタの一例である。
図8】副傷病マスタの一例である。
図9】処置マスタの一例である。
図10】DPCレセプト点検システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図11図10に続くフローチャートである。
図12】DPCレセプト点検システムにおける点検後の画面表示である。
図13図12の第1ウィンドウの拡大図である。
図14図12の第2ウィンドウの拡大図である。
図15】分類番号を選択したときに表示される樹形図の例である。
図16】処置および日付についての警告を示す画面の例である。
図17】副傷病名についての警告を示す画面の例である。
図18】薬剤マスタの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のDPCレセプト点検システム1は、DPCレセプトの電子データに基づいてDPCレセプトを点検するシステムである。図1に示すように、DPCレセプト点検システム1は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータにプログラムを実行させることで実現されるもので、ネットワークと接続されていないスタンドアロン形のコンピュータでも実施可能である。図示は省略するが、CPU(制御部)、RAM、ROM等を備えるコンピュータに、プログラムを実行させることで、本発明の各処理・機能が実現される。
【0025】
DPCレセプト点検システム1は、例えば、拡張子が「.UKE」のファイル名で保存されるDPCレセプトデータを読み込んで、当該DPCレセプトデータ内での内容の不整合があるかどうかを判定し、不整合がある場合に、ユーザに警告を報知する。DPCレセプトデータや、点検に必要なマスタなどの、読み込むべきデータが記録された記憶装置は、DPCレセプト点検システム1を構成するコンピュータ内に保存されていてもよいし、DPCレセプト点検システム1とローカル接続された記憶装置S1(USBメモリなどを含む)に保存されていてもよいし、DPCレセプト点検システム1とネットワークNを介して接続された記憶装置S2に保存されていてもよい。本実施形態では、一例として、DPCレセプトデータは、便宜上、記憶装置S1に記憶されているものとする。
【0026】
また、DPCレセプト点検システム1は、その構成の一部が別のコンピュータに構築されていてもよい。例えば、処理の一部を、ネットワークNを介して接続されたサーバSVなどの他のコンピュータが実施するように構成されていてもよい。
【0027】
図2に示すように、DPCレセプト点検システム1は、機能的手段として、読込手段11、分類番号抽出手段12、手術点検手段13、傷病名点検手段14、副傷病名点検手段15、処置コード点検手段16、日付チェック手段17および警告表示手段18を備えている。また、記憶装置S1には、手術コードマスタ21、傷病マスタ22、副傷病マスタ23および処置マスタ24が記憶されている。
【0028】
読込手段11は、DPCレセプトの電子データであるDPCレセプトデータを読み込む処理を実行する。
【0029】
分類番号抽出手段12は、読み込んだDPCレセプトデータから、包括評価の分類番号を抽出する処理を実行する。分類番号は、診断群分類、診断群分類コードなどともいわれるが、本実施形態では、基本的には「分類番号」の用語を用いる。
【0030】
ここで、分類番号と、DPCレセプトデータについて詳細に説明する。
分類番号は、14桁の英数字で表された番号であり、図3に示すように、例えば、130080xx99xxxxのような番号である。この番号は、入院の主要因となった病気ごとに、手術をしたか否か、所定の処置をしたか否か、定義副傷病が認められたか否かなどによって分類されている。そして、番号ごとに、一日当たりの入院の請求額(点数)が定められており、医療機関は、この点数に入院日数を乗じた点数に応じて健康保険組合等に診療報酬の請求をする。
【0031】
図3の例で説明すると、分類番号の先頭6桁は、入院の主要因となった大まかな病名を表しており、130080は、再生不良性貧血を意味している。そして、手術の有無によって、先頭から9~10桁目の番号が決まっており、手術が無い場合には99、手術がある場合には、97が割り当てられている。さらに、所定の手術・処置があるか否かによって分類され(手術・処置等2の欄)、手術・処置がある場合には、その内容によって1,2,3の番号(対応コード)で分類されている。図3の下の表は、その手術・処置が、1,2,3それぞれの場合に当てはまる手術・処置の内容を示している。手術がある場合には、分類番号の下から3桁目に、その内容に応じて1,2,3の番号が付され、下2桁はxとなっている。手術・処置が無い場合は下から3桁目に0が割り当てられ、さらに、定義副傷病の有無によって、下から2桁目に0または1が割り当てられている。
【0032】
次に、図4および図5を参照してDPCレセプトデータについて説明する。
DPCレセプトデータは、csv形式で記録されたデータであり、「.UKE」の拡張子で保存されている。DPCレセプトデータは、各行(レコード)の先頭カラムにレコード識別情報が記録され、各レコードに、その識別情報に関連するデータが記録されている。図4に示すように、レコード識別情報は、医療機関情報レコード(IR)、レセプト共通レコード(RE)、レセプト情報としての保険者レコード(HO)、公費レコード(KO)、国保連固有情報レコード(KH)、・・・などがあり、基本的には、図4の順序に従って、DPCレセプトデータの先頭レコードから順に、各レコード識別情報に関する、1または複数のレコードが記録される。
【0033】
例えば、図5に示す一例のデータでは、先頭から、医療機関情報レコード(IR)、レセプト共通レコード(RE)がそれぞれ1行ずつ記録され、その後、2行のレセプト情報、1行の診断群分類レコード(BU)、5行の傷病レコード(SB)、1行の患者基礎レコード(KK)、1行の診療関連レコード(SK)、3行の包括評価情報、10行の出来高レコード(出来高情報)、多数のコーディングデータレコード(CD)が記録されている。なお、図5の例は、発明の説明のために必要な範囲でデータを入力した例である。
【0034】
図5のDPCレセプトデータのうち、発明の理解に必要なデータについて説明する。レセプト共通レコード(RE)には、患者およびDPCレセプトについての共通の情報が記録されている。DPCレセプトは、月ごとに作成されている。例えば、図5の例では、第4カラムに2019年1月分のデータであることを示す「201901」が記録されている。また、レセプト共通レコード(RE)には、患者を識別する患者コード「0009220402」が記録されている。
【0035】
診断群分類レコード(BU)には、第2カラムに分類番号が記録されている。第3カラムおよび第4カラムは、それぞれ入院年月日および退院年月日を示している。年月日のデータは、先頭4文字が西暦を表し、図5の例の先頭の4文字「2021」は、「西暦2021年」を意味する。例えば、「20210106」は、2021年1月6日を意味する。
【0036】
傷病レコード(SB)は、傷病に関する情報が記録されている。傷病レコードのうち、第6カラムに「01」が記録されている先頭レコードが傷病名のレコードであり、第5カラムの「D619」は、傷病名のICDコード(国際疾病分類に従った傷病の分類コード)を意味している。また、第6カラムに「02」が記録されている2番目のレコードが副傷病のレコードであり、第5カラムの「C795」は、副傷病のICDコードを意味している。
【0037】
診療関連レコード(SK)は、診療行為コードや、区分番号、手術・処置の実施(予定)年月日、診療区分コード、診療名称などを記録するレコードである。
【0038】
出来高レコードは、包括評価に含まれない診療行為等についての請求情報を記録するレコードである。例えば、レコード識別情報がSIのレコードは、診療行為レコードであり、レコード識別情報がIYのレコードは、医薬品レコードである(図5の例にはない)。診療行為レコード(SI)の第2カラムの2桁の数字は、診療識別を意味する。診療識別としては、例えば、初診(11)、投薬(21~28)、注射(31~33)、処置(40)、手術(50)、麻酔(54)、検査・病理(60)、画像診断(70)、入院(90,92)などがある。つまり、診療識別のコードによって、大まかな診療行為の内容を特定することができる。
【0039】
コーディングデータレコード(CD)は、包括評価に含まれる診療行為等についての情報を記録するレコードである。コーディングデータレコードは、例えば、実施年月日(第2カラム)、診療識別(第3カラム)、レセプト電算処理システム用コード(第6カラム)などを含む。診療識別は、出来高レコードと同様の、あらかじめ処置等に対応して決められたコードである。レセプト電算処理システム用コードは、詳細な診療行為、医薬品、特定器材等に対応してあらかじめ決められている。つまり、レセプト電算処理システム用コードによって、詳細な診療行為等の内容を特定することができる。
【0040】
分類番号は、医療機関に認められる1日当たりの請求額を決めるものなので、誤りを避けなければならない。一方、DPCレセプトデータは、分類番号に従った医療費の請求内容をデータにしたものであるので、DPCレセプト点検システム1は、DPCレセプトデータの詳細な内容を参照することで、DPCレセプトデータに記録された分類番号が適切であるか否かを判定する。
【0041】
次に、各点検に用いるマスタの内容と各手段13~18について説明する。
【0042】
[手術の点検について]
図6に示すように、手術コードマスタ21は、MDCコード、分類コード、対応コード、点数表名称およびKコードを対応付けて記憶したマスタである。MDCコードと分類コードを合わせた6桁の数字は、分類番号の先頭6桁に対応し、大まかな病名に対応するコード(以下、これを「疾患コード」という。)である。対応コードは、分類番号における手術の有無を表すデータであり、通常、手術なしの場合には99、手術ありの場合には、97が割り当てられている。Kコードは、具体的手術の内容または手術なしを示すコードであり、手術なしの場合には「KKK0」、手術ありの場合には、手術の内容に応じたKから始まるコードが割り当てられている。これらの各データは、厚生労働省のウェブサイトにおいて提供されている「診断群分類(DPC)電子点数表」から抜粋することで作成することができる。図6の点数表名称は、発明の理解を容易にするために、Kコードの内容が分かるように残したもので、必要ではない。
【0043】
手術点検手段13は、分類番号抽出手段12が抽出した分類番号である抽出分類番号に対応する手術の有無の整合について点検する処理を実行する。手術点検手段13は、DPCレセプトデータに含まれる出来高点数部分を示すレコードである、一または複数の出来高レコードと、包括評価部分の診療行為の内容を示すコーディングデータのレコードである一または複数のコーディングデータレコードとから、手術に関連するレコードを検索する。
一または複数の出来高レコードと、複数のコーディングデータレコードは、上述した図5に例示されている。
【0044】
手術点検手段13は、抽出分類番号に含まれる手術に関する桁のコードである手術コードが、手術なしを示すデータであり、かつ、手術に関連するコーディングデータレコードおよび手術に関連する出来高レコードの少なくとも一方がDPCレセプトデータに存在した場合に、抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告する。また、手術点検手段13は、抽出分類番号に含まれる手術コードが、手術ありを示すデータであり、かつ、手術に関連するコーディングデータレコードおよび手術に関連する出来高レコードのいずれもがDPCレセプトデータに存在しない場合に、抽出分類番号と手術の有無の関係が不整合であることを警告する。手術点検手段13は、警告する場合、後述する警告表示手段18を介して警告する。
【0045】
より具体的には、手術点検手段13は、手術コードマスタ21において、疾患コードが抽出分類番号の先頭6桁に対応する部分を参照する。図6では、ハッチングを付した「130080」の2つの行が図5のDPCレセプトデータから抽出された抽出分類番号(診断群分類レコードに記録された分類番号)に対応するものとなる。そして、抽出分類番号に含まれる手術コード(9~10桁目の数字である97または99)に対応する行を参照し、この行のKコードを取得する。そして、取得したKコードがKKK0であれば、手術なし、それ以外であれば手術ありであると判定する。
【0046】
なお、本実施形態では、手術コードマスタ21を参照して、抽出分類番号に含まれる手術コードが、手術ありを示すか手術なしを示すかを判定したが、簡易的には、手術コードマスタ21を用いずに、抽出分類番号の9~10桁目の数字が97であれば手術あり、99であれば手術なしであると判定してもよい。
【0047】
手術点検手段13は、抽出分類番号が手術なしを示すと判定した場合、図5のようなDPCレコードデータから、手術に関連する出来高レコードが存在するかを検索する。具体的には、出来高レコードの中に、「手術」のレコードがあるかを検索する。そして、手術点検手段13は、出来高レコードに疾患コードごとに定義されている、「手術」のレコードがあれば、手術に関連するレコードがあったと判定する。手術点検手段13は、抽出分類番号が手術なしを示すと判定し、かつ、出来高レコードに「手術」のレコードがある場合には、手術をしているのに、抽出分類番号が手術なしを示しているので、抽出分類番号と実際の手術の有無の関係が不整合であると判定する。なお、手術点検手段13は、コーディングレコードデータの中に、診療識別が50のレコード(「手術」を示すレコード)があるかをさらに点検してもよい。
【0048】
また、手術点検手段13は、抽出分類番号が手術ありを示すと判定した場合にも、DPCレコードデータから、疾患コードごとに定義されている、「手術」に関連する出来高レコードが存在するかを検索する。そして、手術点検手段13は、抽出分類番号が手術ありを示すと判定し、かつ、出来高レコードに、疾患コードごとに定義されている、「手術」のレコードがない場合には、手術をしていないのに、抽出分類番号が手術ありを示しているので、抽出分類番号と実際の手術の有無の関係が不整合であると判定する。
【0049】
[傷病名の点検について]
図7に示すように、傷病マスタ22は、分類番号の一部と傷病とを対応させて記憶したマスタである。傷病マスタ22は、MDCコード、分類コード、ICD名称およびICDコードを対応付けて記憶している。MDCコードと分類コードを合わせた6桁の疾患コードは、分類番号の先頭6桁に対応する。ICDコードは、疾患コードに対応する傷病のICDコードであり、1つの疾患コードに対して、IDCコードが1つのみ対応する場合もあれば、複数のICDコードが対応する場合もある。これらの各データは、厚生労働省のウェブサイトにおいて提供されている「診断群分類(DPC)電子点数表」から抜粋することで作成することができる。図7のICD名称は、発明の説明の理解を容易にするために、ICDコードの内容が分かるように残したもので、必要ではない。
【0050】
傷病名点検手段14は、抽出分類番号と傷病名の整合について点検する処理を実行する。傷病名点検手段14は、傷病名抽出処理と傷病名点検処理とを実行する。
【0051】
傷病名抽出処理は、DPCレセプトデータから、傷病コードを抽出する処理である。上述のように、DPCレセプトデータにおいて、傷病レコード(SB)のうち、第6カラムに「01」が記録されているレコードが傷病名のレコードであり、当該レコードの第5カラムから傷病コード(ICDコード)を抽出する。例えば、図5のDPCレセプトデータからは、「D619」の傷病コードが抽出される。
【0052】
傷病名点検処理は、傷病マスタ22を参照して、傷病マスタ22において抽出分類番号に対応する傷病コード(ICDコード)と、傷病名抽出処理で抽出した傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合に整合しないと判定する処理である。なお、傷病マスタ22において抽出分類番号に対応する傷病コードとは、厳密には、抽出分類番号の先頭6桁の疾患コードに対応する傷病コードである。
【0053】
例えば、図7を参照すると、疾患コードが130080に対応するICDコードとしては、複数のコードがある。この複数のコードの中に、DPCレセプトデータから抽出された傷病コードである「D619」が存在するかを検索し、存在した場合には整合すると判定し、存在しない場合には、整合しないと判定する。例えば、図7では、130080に対応して「D619」が存在するので整合すると判定することになる。
【0054】
そして、傷病名点検手段14は、傷病名点検処理で、整合しないと判定した場合に、傷病名が、抽出分類番号と整合しないことを警告する処理を実行する。傷病名点検手段14は、警告する場合、後述する警告表示手段18を介して警告する。
【0055】
[副傷病の点検について]
図8に示すように、副傷病マスタ23は、分類番号の一部と一または複数の定義副傷病のコードとを対応させて記憶したマスタである。副傷病マスタ23は、MDCコード、分類コード、対応コード、ICD名称およびICDコードを対応付けて記憶している。MDCコードと分類コードを合わせた疾患コードは、分類番号の先頭6桁に対応する。対応コードは、包括評価制度において、その疾患コードに対応して定義副傷病が定義されている場合に、分類番号の所定の桁に付するコードを意味している。130080の疾患コードでは、定義副傷病が定義されており、定義副傷病が「あり」である場合、分類番号の下から2桁目に1が付される(図3参照)。ICDコードは、疾患コードに対応する副傷病のICDコードであり、1つの疾患コードに対して、IDCコードが1つのみ対応する場合もあれば、複数のICDコードが対応する場合もある。これらの各データは、厚生労働省のウェブサイトにおいて提供されている「診断群分類(DPC)電子点数表」から抜粋することで作成することができる。図8のICD名称は、発明の説明の理解を容易にするために、ICDコードの内容が分かるように残したもので、必要ではない。
【0056】
副傷病名点検手段15は、抽出分類番号が、定義副傷病の有無を示す対応コードを含む場合に、DPCレセプトデータと副傷病名の整合について点検する処理を実行する。副傷病名点検手段15は、副傷病抽出処理と、副傷病点検処理とを実行する。
【0057】
副傷病抽出処理は、DPCレセプトデータから、副傷病コードを抽出する処理である。上述のように、DPCレセプトデータにおいて、傷病レコード(SB)のうち、第6カラムに「02」が記録されているレコードが副傷病のレコードであり、当該レコードの第5カラムから副傷病コード(ICDコード)を抽出する。例えば、図5のDPCレセプトデータからは、「C795」の副傷病コードが抽出される。
【0058】
副傷病点検処理は、抽出分類番号が、定義副傷病があることを示す対応コードを含む場合、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合すると判定し、一致しない場合、または、副傷病抽出処理で副傷病コードを抽出できなかった場合に整合しないと判定する。なお、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードとは、厳密には、抽出分類番号の先頭6桁の疾患コードに対応する副傷病コードである。また、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致する、というのは、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードが複数ある場合には、その複数のコードの1つと、副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致する、という意味である。
【0059】
例えば、図8を参照すると、疾患コードが130080に対応するICDコードとしては、複数のコードがある。副傷病名点検手段15は、この複数のコードの中に、DPCレセプトデータから抽出された傷病コードである「C795」が存在するかを検索し、存在した場合には整合すると判定し、存在しない場合には、整合しないと判定する。例えば、図8では、130080に対応して「C795」が存在しないので整合しないと判定することになる。
【0060】
また、副傷病名点検手段は、副傷病点検処理において、さらに、抽出分類番号が、定義副傷病がないことを示す対応コードを含む場合、副傷病マスタを参照して、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが一致するかを判定し、一致する場合に整合しないと判定し、一致しない場合に整合すると判定する。
すなわち、抽出分類番号が、定義副傷病がないことを示す対応コードを含むにもかかわらず、DPCレコードデータで特定される副傷病コードと、副傷病マスタ23において抽出分類番号(の先頭6桁)に対応するICDコードとが一致する場合には、本来は、分類番号として「定義副傷病がある」ことを示す番号を選択すべきであったと考えられる。そこで、副傷病名点検手段15は、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応する定義副傷病のコードと、副傷病抽出処理で抽出した副傷病コードとが整合しない、と判定する。
【0061】
そして、副傷病名点検手段15は、副傷病点検処理で、整合しないと判定した場合に、副傷病名が、抽出分類番号と整合しないことを警告する処理を実行する。副傷病名点検手段15は、警告する場合、後述する警告表示手段18を介して警告する。
【0062】
[処置コードの点検について]
図9に示すように、処置マスタ24は、分類番号の一部と、一または複数の処置コードとを対応させて記憶したマスタである。処置マスタ24は、MDCコード、分類コード、対応コード、処置の名称および処置コード(図9では、それぞれ、処置等の、名称、コードと表記)を対応付けて記憶している。MDCコードと分類コードを合わせた疾患コードは、分類番号の先頭6桁に対応する。対応コードは、包括評価制度において、その疾患コードに対応して1または複数の処置をする場合が定義されている場合に、分類番号の所定の桁に付するコードを意味している。130080の疾患コードでは、「手術・処置等2」が定義されており、「手術・処置等2」が「あり」である場合、さらにその処置の内容に応じて、分類番号の下から3桁目に1,2,3のいずれかが付される(図3参照)。処置コードは、疾患コードおよび対応コードの組み合わせに対応する処置のコードであり、1つの疾患コードおよび対応コードの組み合わせに対して、処置コードが1つのみ対応する場合もあれば、複数の処置コードが対応する場合もある。これらの各データは、厚生労働省のウェブサイトにおいて提供されている「診断群分類(DPC)電子点数表」から抜粋することで作成することができる。図9の処置の名称は、発明の説明の理解を容易にするために、処置コードの内容が分かるように残したもので、必要ではない。
【0063】
処置コード点検手段16は、抽出分類番号が処置の対応コードを含む場合に、当該対応コードが正しいか否かを点検する処理を実行する。
処置コード点検手段は、処置マスタ24を参照して、抽出分類番号(の先頭6桁)に対応する処置コードに関する処置をDPCレセプトデータから検索し、当該処置コードに対応するデータが存在しない場合、抽出分類番号のうち、処置の対応コードに誤りがあることを警告する処理を実行する。処置コード点検手段16は、警告する場合、後述する警告表示手段18を介して警告する。
【0064】
DPCレセプトデータには、処置コードが記録されている。例えば、図5のDPCレセプトデータでは、診療関連レコードに、処置コードとして0028(シクロスポリン(点眼薬を除く。))が記録されている。
【0065】
例えば、図5の例では、分類番号として130080xx97x1xxが記録され、診療関連レコードには処置コード0028が記録されている。そして、図9の処置マスタには、疾患コード130080の対応コード1に対応する処置コードとして0028が存在するので、整合する、と判定することになる。
【0066】
また、診療関連レコード(SK)の第2カラム(図5の例では入力なし)、出来高情報の診療行為レコード(SI)の第4カラム、コーディングデータレコードの第6カラムには、診療行為コードが記録されるので、出来高情報およびコーディングデータレコードに記録された診療行為コードで特定される処置(投薬等)が、処置コードに対応しているかを判定することもできる。
【0067】
診療行為コードと処置コードの対応を点検するには、診療行為コードと処置コードを対応付けた別のマスタを参照すればよい。例えば、図18の薬剤マスタは、処置として投与される薬剤の医薬品コードと処置コードとを対応付けたマスタである。薬剤マスタには、処置コードに対応して、その処置についてのダミーコード名と、薬剤の一般名と、具体的な医薬品名と、薬価基準コードと、医薬品コードとが記憶されている。薬価基準コードは、一般名と対応し、医薬品コードは医薬品名と対応している。例えば、処置コード0028の「シクロスポリン」には、5種類の医薬品名の医薬品(医薬品コード)が薬剤マスタに記録されている。そこで、図5のDPCレセプトデータの診療行為コードに、これらの医薬品コードの少なくとも1つが記録されていれば、処置コード0028に対応する薬剤の投与が行われたということなので、整合すると判定することができる。逆に、DPCレセプトデータの診療行為コードに、これらの医薬品コードのいずれもが記録されていない場合は、整合しないと判定することができる。
【0068】
ここで、処置コード点検手段16が「整合しない」、と判定した場合に、DPCレセプト点検システム1は、抽出分類番号の疾患コード(図5の例では130080)に対応する薬剤の投与などがされていないかを、出来高レコードおよびコーディングデータレコードから検索し、投与がされている場合に、分類番号の修正候補を提示してもよい。例えば、図9を参照すると、疾患コード130080(分類コード0080)には、「抗胸腺細胞グロブリン」(コード:0027)や、「エルトロンボパグ オラミン」(コード:0252)という医薬品など、シクロスポリン以外にも複数の医薬品が対応している。そこで、図18の薬剤マスタにおいて、これらのコード(ダミーコード)に対応する医薬品コードを取得し、この医薬品コードが、出来高レコードおよびコーディングデータレコードに記録されていないかを判定する。例えば、DPCレセプト点検システム1は、図18の薬剤マスタから、ダミーコード0252(「エルトロンボパグ オラミン」)に対応する医薬品コード「622036501」を取得する。そして、仮に、出来高レコードおよびコーディングデータレコードの診療行為コードに、「622036501」が存在しており、これを検出したならば、図9の対応コード「2」の「エルトロンボパグ オラミン」の処置がされていたということなので、分類番号としては、「130080xx97x2xx」が適切であったと推定することができる(図3の手術・処置等2で、2の対応コードに、エルトロンボパグ オラミンが対応していることを参照)。そこで、DPCレセプト点検システム1は、画面等に、『エルトロンボパグ オラミンの処置がされていますので、分類番号は、「130080xx97x2xx」が適切ではないですか?』などの提示をすることができる。また、ここで、処置コード点検手段16が「整合しない」と判定した場合に、分類番号の修正候補を提示する場合について説明したが、「整合する」と判定した場合であっても、関連する医薬品の検索をし、疾患コードに関連する医薬品をDPCレセプトデータから検出した場合には、分類番号の修正候補を提示してもよい。分類番号に応じて、診療報酬も異なるので、より適切な診療報酬の請求ができるようにするために、「整合する」と判定された場合にも、他の分類番号の候補を提示する意義は大きい。
【0069】
[日付のチェックについて]
日付チェック手段17は、手術または処置の日付が、入院期間内にあるか否かをチェックする処理を実行する。
日付チェック手段17は、まず、DPCレセプトデータから、入院期間を抽出する入院期間抽出処理を実行する。上述したように、DPCレセプトデータには、診断群分類レコードに、入院年月日と退院年月日が記録されているので、日付チェック手段17は、診断群分類レコードから入院年月日と退院年月日、つまり、入院期間を抽出する。
そして、日付チェック手段17は、DPCレセプトデータに含まれる診療関連レコードの日付およびコーディングデータレコードの日付が入院期間内にあるかを判定し、入院期間内にないと判定した場合に、手術または処置の日付が入院期間内にないことを警告する処理を実行する。日付チェック手段17は、警告する場合、後述する警告表示手段18を介して警告する。
【0070】
日付チェック手段17は、手術または処置の日付が入院期間内にあるか否かのチェックだけでなく、診療関連レコードの日付と、コーディングデータレコードおよび出来高レコードの該当行為の日付が互いに整合しているか否かの点検処理をさらに実行する。例えば、診療関連レコード、コーディングデータレコードおよび出来高レコードに、同一の行為(手術・処置等)に対応するデータがあった場合に、それらのデータに含まれる行為の日付が互いに異なる場合には、整合しないと判定する。日付チェック手段17は、整合しないと判定した場合に、診療関連レコード、コーディングデータレコードおよび出来高レコードに記録された行為の日付が整合しないことを警告する処理を実行する。日付チェック手段17は、警告する場合、後述する警告表示手段18を介して警告する。
【0071】
警告表示手段18は、各手段13~17によって、警告することを指示された場合に、コンピュータの画面に、警告を表示する手段である。
【0072】
次に、DPCレセプト点検システム1による処理の一例について説明する。
図10に示すように、DPCレセプト点検システム1の制御部は、点検をするためのプログラムが実行されると、まず、記憶装置S1からDPCレセプトデータを読み込む(S101)。そして、DPCレセプトデータから、分類番号、傷病コード、副傷病コードおよび入院期間を抽出する(S102)。
【0073】
次に、制御部は、抽出した分類番号である抽出分類番号に手術コードがあるか否かを判定する(S110)。例えば、簡易的には、分類番号の9~10桁目の数字が97または99であるかを判定する。制御部は、抽出した分類番号である抽出分類番号に手術コードがないと判定した場合(S110,No)、DPCレセプトデータに、手術に関するレコードがあるかを検索する(S111)。例えば、診療識別が50のレコードがあるかを検索する。制御部は、DPCレセプトデータに、手術に関するレコードがあると判定すれば(S111,Yes)、抽出分類番号と手術の有無の不整合を画面に表示して警告して(S112)、ステップS120へ進む。一方、制御部は、DPCレセプトデータに、手術に関するレコードがないと判定すれば(S111,No)、警告を表示せずにステップS120へ進む。
【0074】
また、制御部は、抽出した分類番号である抽出分類番号に手術コードがあると判定した場合(S110,Yes)、DPCレセプトデータに、手術に関するレコードがあるかを検索する(S115)。制御部は、DPCレセプトデータに、手術に関するレコードがないと判定すれば(S115,No)、抽出分類番号と手術の有無の不整合を画面に表示して警告して(S112)、ステップS120へ進む。一方、制御部は、DPCレセプトデータに、手術に関するレコードがあると判定すれば(S115,Yes)、警告を表示せずにステップS120へ進む。
【0075】
ステップS120において、制御部は、傷病コードが、傷病マスタ22において抽出分類番号に対応するコードと一致するかを判定する。そして、一致しないと判定した場合(S120,No)、抽出分類番号と傷病名の不整合を警告する表示をし(S121)、ステップS130へ進む。一方、一致すると判定した場合(S120,Yes)、警告を表示せずにステップS130へ進む。
【0076】
ステップS130において、制御部は、抽出分類番号が、定義副傷病があることを示す対応コードを含むかを判定する。制御部は、抽出分類番号が、定義副傷病があることを示す対応コードを含むと判定した場合(S130,Yes)、抽出された副傷病コードが、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応するコードと一致するかを判定する(S131)。制御部は、抽出された副傷病コードが、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応するコードと一致すると判定した場合(S131,Yes)、警告を表示することなくステップS140へ進む。一方、制御部は、抽出された副傷病コードが、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応するコードと一致しないと判定した場合(S131,No)、抽出分類番号と副傷病名が不整合であると判定し(S135)、抽出分類番号と副傷病名の不整合を警告する表示をし(S138)、ステップS140へ進む。
【0077】
制御部は、ステップ130において、抽出分類番号が、定義副傷病があることを示す対応コードを含まないと判定した場合(S130,No)、さらに、抽出分類番号が、定義副傷病がないことを示す対応コードを含むかを判定する(S132)。制御部は、抽出分類番号が、定義副傷病がないことを示す対応コードを含むと判定した場合(S132,Yes)、抽出された副傷病コードが、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応するコードと一致するかを判定する(S134)。制御部は、抽出された副傷病コードが、副傷病マスタ23において抽出分類番号に対応するコードと一致する判定した場合(S134,Yes)、抽出分類番号と副傷病名が不整合であると判定し(S135)、抽出分類番号と副傷病名の不整合を警告する表示をし(S138)、ステップS140へ進む。一方、制御部は、ステップS132でNoと判定した、つまり、定義副傷病に関するコードがない場合や、ステップS134でNoと判定した場合には、警告を表示することなくステップS140へ進む。
【0078】
図11に示すように、ステップS140において、制御部は、抽出分類番号が処置ありのコードを含むかを判定する。制御部は、抽出分類番号が処置ありのコードを含まないと判定した場合(S140,No)、処置に関する警告をすることなくステップS150へ進む。一方、制御部は、抽出分類番号が処置ありのコードを含むと判定した場合(S140,Yes)、処置マスタにおいて、抽出分類番号に対応する処置がDPCレセプトデータに存在するかを検索する(S141)。制御部は、処置マスタ24において、抽出分類番号に対応する処置がDPCレセプトデータに存在しないと判定した場合(S141,No)、抽出分類番号のうち、処置の対応コードに誤りがあることの警告を表示し(S142)、ステップS150へ進む。一方、制御部は、処置マスタ24において、抽出分類番号に対応する処置がDPCレセプトデータに存在すると判定した場合(S141,Yes)、警告を表示することなくステップS150へ進む。
【0079】
ステップS150において、制御部は、手術または処置の日付が入院期間内にあるか否かを判定する。制御部は、手術または処置の日付が入院期間内にないと判定した場合(S150,No)、手術または処置の日付が入院期間内にないことの警告を表示し(S151)、処理を終了する。一方、制御部は、手術または処置の日付が入院期間内にあると判定した(S150,Yes)、警告を表示することなく処理を終了する。
【0080】
なお、図10図11の処理はあくまで一例である。例えば、点検する項目の順序は異なっていてもよい。また、理解を容易にするため、各項目についてそれぞれ警告の表示をするように説明したが、警告するか否かについてフラグとして記録していき、警告の表示画面を作成する際に、警告する項目について警告のテキストを追加するようにしてもよい。
【0081】
次に、DPCレセプト点検システム1の動作例を画面の表示を参照しながら説明する。
DPCレセプト点検システム1は、点検の処理をすると、図12に示すような画面(「レセプト表示画面」とする。)をモニタに表示する。図12に示すように、レセプト表示画面は、左側に第1ウィンドウP1を表示し、第1ウィンドウP1の右側に第2ウィンドウP2を並べて表示したものである。この例では点検結果を示すウィンドウは、3頁にわたり、そのうち1頁目と2頁目を左右の各ウィンドウP1,P2で表示している。
【0082】
レセプト表示画面は、DPCレセプトデータを、データが示す項目とともに表示することで人が見やすい形にしたものである。また、点検処理の結果、警告すべき点があれば、警告を表示したものである。
図13に示すように、レセプト表示画面は、第1ウィンドウP1の最上部に、患者に関する情報欄41、保険・診療科に関する情報欄42が表示される。そして、これらの下に、分類番号欄43、傷病名欄44、副傷病欄45、入退院の年月日の欄46が表示される。さらに、これらの下には、左右2段組の詳細表示欄50が設けられる。詳細表示欄50は、診療関連表示欄51、警告を示す警告表示欄En(E1などと示すこととする)、出来高表示欄52を有する。
【0083】
図14に示すように、第2ウィンドウP2には、第1ウィンドウP1に続く詳細表示欄50が設けられる。図14の例では、第1ウィンドウP1に続く出来高表示欄52と、コーディングデータ表示欄53が表示されている。出来高表示欄52およびコーディングデータ表示欄53において、左の欄に表示された60,90などの2桁の数字は、診療識別である。なお、図13,14の例では、コーディングデータ表示欄53が第2ウィンドウP2に表示されているが、出来高の項目が少ない場合など、DPCレセプトデータの内容によっては、第1ウィンドウP1の詳細表示欄50に表示されることもある。
【0084】
図12図14の例では、警告表示欄E1に、「[1]診断群分類番号・手術の不一致」が表示されている。これは、分類番号としては、「130080xx97x1xx」がDPCレセプトデータに記録されているが、詳細表示欄50のどこにも、手術に関する情報が記載されていないためである。上述のように、手術は、診療識別が50であるところ、図12図14の例では、詳細表示欄50に診療識別が50の項目が表示されていない(図示省略した3頁目にもないということである。)。このため、DPCレセプト点検システム1は、分類番号と手術の不整合の警告を表示する。
【0085】
このように、本実施形態のDPCレセプト点検システム1では、DPCレセプトデータ自体から、手術の有無と、抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。そして、DPCレセプト点検システム1は、DPCレセプトデータを包括評価情報のみならず、出来高情報およびコーディングデータレコードも合わせて表にして表示し、複数の頁に跨がる場合に、複数頁を左右のウィンドウ(第1ウィンドウP1および第2ウィンドウP2)に並べて表示するので、警告が表示された場合に、どの点で誤りがあったのかを確認し易い。
【0086】
図15に示すように、DPCレセプト点検システム1は、分類番号欄43の選択(クリック、タップなどによる選択)に応じて、記録されている分類番号(抽出分類番号)の疾患コードに対応した樹形図を60表示する。図15の例では、疾患コード「130080」の再生不良性貧血についての分類番号を、手術の有無、処置2の有無、定義副傷病の有無に応じて枝分かれさせた樹形図として表示している。そして、上述の各種の点検において、抽出分類番号と、出来高レコードおよびコーディングデータレコードが整合しないと判定した場合においては、樹形図において、修正候補となる分類番号に対応する部分を、色で示すなどして強調表示してもよい。例えば、図15においては、「手術なし」の分類番号を入力すべきであったと判定した場合に、手術の「なし」の部分と分類番号「130080xx99xxxx」に対応する選択肢に対応する欄を、強調表示している。このように、分類番号欄43の選択により、抽出分類番号に対応する樹形図60を表示し、さらに、修正候補の分類番号を強調表示するので、ユーザは、正しい分類番号としては、どのような分類番号にすべきであったのかを容易に検討することができる。なお、この樹形図の画面において、または、樹形図とは別の画面において、修正候補となる分類番号を文字により表示してもよい。
【0087】
なお、図15の例では、抽出分類番号が手術ありを示す場合に、DPCレセプトデータに手術に関するレコードがない場合の警告について例示したが、抽出分類番号が手術なしを示す場合に、DPCレセプトデータに手術に関するレコードがある場合も警告することができる。
【0088】
次に、他の警告の例について説明する。図16のレセプト表示画面では、警告表示欄E2として、「[2]診断群分類番号・処置2の不一致」が表示されている。図16の例では、DPCレセプトデータに、分類番号として、「130080xx97x3xx」が記録され、手術・処置として、診療関連表示欄51に「手術・処置など 0028 シクロスポリン(点眼薬を除く。)平成31年1月8日」が記録されている。しかし、図9の処置マスタ24を参照すると、疾患コード130080の対応コード3に対応する処置コードは、「0027」(抗胸腺細胞グロブリン)であるべきなのに、この処置コードがDPCレセプトデータに記録されていないので、DPCレセプト点検システム1は、処置の対応コードに誤りがあると判定し、警告する。このようにして、DPCレセプト点検システム1は、DPCレセプトデータ自体から、処置の有無と抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【0089】
また、図16のレセプト表示画面では、警告表示欄E3として、「[3]手術、処置実施(予定)年月日が入院期間外」が表示されている。これは、DPCレセプトデータに記録された入院期間が平成31年1月6日~平31年1月7日であるにもかかわらず、診療関連表示欄51に「手術・処置など 0028 シクロスポリン(点眼薬を除く。)平成31年1月8日」と、平成31年1月8日の処置が記録されているからである。このようにして、DPCレセプト点検システム1は、DPCレセプトデータ自体から、入院期間の情報の入力の誤り、または、手術や処置の日付の入力の誤りについて点検し、誤りをユーザに警告することができる。
【0090】
また、図17のレセプト表示画面では、警告表示欄E4として、「[2]副傷病名なしまたは相違あり」が表示されている。これはDPCレセプトデータに副傷病名の記録が無いこと、または、記録されているが誤っていることの警告である。図17の例では、分類番号として「130080xx97x01x」、副傷病名として、「乳癌骨転移[C795]」が記録されている。しかし、「C795」のICDコードは、図8の副傷病マスタ23を参照すると、疾患コード130080の対応コード1に対応する副傷病についてのICDコードのいずれにも一致しないので、DPCレセプト点検システム1は、副傷病名が整合しないと判定し、副傷病名が誤っている旨の警告を表示する。このようにして、DPCレセプト点検システム1は、DPCレセプトデータ自体から、入力された副傷病の情報と抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【0091】
なお、図17の例では、分類番号として定義副傷病があることを示す対応コードが記録されていたが、定義副傷病がないことを示す対応コードが記録されていた場合は、DPCレセプト点検システム1は、副傷病として記録されたICDコードが、図8の疾患コード「130080」に対応するICDコードのいずれかと一致するかを判定する。そして、一致していた場合には、分類番号として定義副傷病があることを示す対応コードを選択すべきであるので、副傷病名が、抽出分類番号と整合しない旨の警告を表示する。このようにして、DPCレセプト点検システム1は、抽出分類番号として定義副傷病がない分類番号が入力されている場合に、誤りの可能性をユーザに警告することができる。
【0092】
また、図12図17の例では、いずれも、傷病名として、「再生不良性貧血[D619]」が記録されている。一方、図7の傷病マスタ22には、疾患コード「130080」に対応する傷病のICDコードとして、「D619」がある。したがって、傷病名に関しては、不整合がないため、警告を表示していない。しかし、DPCレセプト点検システム1は、この点での不整合があれば、警告を表示する。このようにして、DPCレセプト点検システム1は、DPCレセプトデータ自体から、入力された傷病名の情報と抽出分類番号の不整合について点検し、不整合がある場合にユーザに警告することができる。
【0093】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、警告の表示の仕方は、前記した画面の例には限定されない。警告は画面に表示する方法だけでなく、音による方法や、点字による方法で行ってもよい。
【0094】
また、処置コードの一致は、処置コード自体で判定するのではなく、処置コードをグループ化したコードに変換し、グループ化したコードで処置の一致を判定してもよい。
【0095】
また、上述の手術、処置コードの点検においては、1ヶ月分のDPCレセプトデータに着目し、当該1ヶ月分のDPCレセプトデータ内での分類番号と手術の有無、処置の有無等の点検を行うことを説明したが、抽出分類番号に対応する手術または処置が無い場合に、過去の連続する月のDPCレセプトデータに、対応する手術または処置があるか否かを点検してもよい。つまり、点検対象のDPCレセプトデータに対し、同じ患者コードで、同じ分類番号のDPCレセプトデータを抽出し、抽出されたDPCレセプトデータの中で、連続する過去の月の分のデータから、手術または対応する処置があるかを検索してもよい。このようにすることで、より高い精度で点検をすることができる。
【0096】
また、検査等によっては、同一月において、上限回数が決められているものがある。そこで、同じ患者について、同一月の他のDPCレセプトデータおよびDPCレセプトデータ以外のレセプトデータ(例えば、外来レセプトのデータ)、を参照し、上限回数が定められている検査等を検索し、上限を超える検査がなされていないかを点検してもよい。そして、上限回数を超えていた場合には、そのことを通知する警告を通知するとよい。
【0097】
また、画面上で、DPCレセプトと、他のレセプトとをセットで目視確認できるようにするとさらに望ましい。例えば、総括レセプトとDPCレセプトを、連続するページとして表示できるようにしたり、別のウィンドウとして並べて表示できるようにしてもよい。また、DPCレセプトと、外来レセプトを連続するページとして表示できるようにしたり、別のウィンドウとして並べて表示できるようにしてもよい。さらに、同一月の2種類のDPCレセプトを連続するページとして表示できるようにしたり、別のウィンドウとして並べて表示できるようにしてもよい。
【0098】
また、手術の有無と抽出分類番号の整合を点検するが、他の項目について点検しないDPCレセプト点検システムを構成することもできる。同様に、傷病名と抽出分類番号の整合を点検するが、他の項目について点検しないDPCレセプト点検システムを構成することもできる。また、副傷病と抽出分類番号の整合を点検するが、他の項目について点検しないDPCレセプト点検システムを構成することもできる。また、処置と抽出分類番号の整合を点検するが、他の項目について点検しないDPCレセプト点検システムを構成することもできる。また、入院期間と処置等の日付の整合を点検するが、他の項目について点検しないDPCレセプト点検システムを構成することもできる。
【0099】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 DPCレセプト点検システム
11 読込手段
12 分類番号抽出手段
13 手術点検手段
14 傷病名点検手段
15 副傷病名点検手段
16 処置コード点検手段
17 日付チェック手段
18 警告表示手段
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