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  • 特開-高周波窓 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108984
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】高周波窓
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/40 20060101AFI20230731BHJP
   H01P 1/08 20060101ALI20230731BHJP
   H01P 1/30 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H01J23/40 A
H01P1/08
H01P1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010328
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室井 里紗
(72)【発明者】
【氏名】浦方 弘人
【テーマコード(参考)】
5J011
【Fターム(参考)】
5J011FA01
5J011FA02
(57)【要約】
【課題】 誘電体と、導入側スリーブ及び導出側スリーブとの接合部の破断を防止できる高周波窓を提供する。
【解決手段】 円板状の誘電体と、誘電体の一面側に設けて誘電体に高周波を導入する円筒状の導入側スリーブと、誘電体の他面側に設けて誘電体から高周波を導出する円筒状の導出側スリーブと、を備え、誘電体は、外周縁部の一面を導入側スリーブに、他面を導出側スリーブにろう接してあり、導入側スリーブと導出側スリーブはそれぞれ、誘電体とのろう接部の近傍に、半径方向外側に向けた膨張を抑える膨張抑止部材を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の誘電体と、前記誘電体の一面側に設けて前記誘電体に高周波を導入する円筒状の導入側スリーブと、前記誘電体の他面側に設けて前記誘電体から高周波を導出する円筒状の導出側スリーブと、を備え、
前記誘電体は、外周縁部の前記一面を前記導入側スリーブに、前記他面を前記導出側スリーブにろう接しており、
前記導入側スリーブと前記導出側スリーブはそれぞれ、前記ろう接部の近傍に、半径方向外側に向けた膨張を抑える膨張抑止部材を備える高周波窓。
【請求項2】
前記導入側スリーブと前記導出側スリーブとはそれぞれ、円筒形状を成す本体部と、前記誘電体側の端部に半径方向外側に向けて突設するつば部とを有し、前記各つば部で前記誘電体の外周縁部を挟んで配置しており、前記膨張抑止部材は、リング形状を成し、前記各本体部の外周に嵌入している請求項1に記載の高周波窓。
【請求項3】
前記膨張抑止部材は、断面において互いに直角を成す一面と他面とを有し、前記直角の一面を前記つば部にろう接し、前記直角の他面を前記本体部にろう接してある請求項2に記載の高周波窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波窓に関する。
【背景技術】
【0002】
真空に保たれた加速空洞に、大電力高周波を導入する入力結合器や、クライストロンに代表される電力管から高周波電力を取り出す出力回路において、真空と大気、ガスまたは真空との間を分ける要素部品として、高周波窓が公知である。
この種の高周波窓は、高周波源(RF源)から高周波を導入する導入側スリーブと、高周波を導出する導出側スリーブと、これらのスリーブ間に設けた誘電体とを備えている。
導入側スリーブと導出側スリーブとは一例として銅製であり、誘電体は、X線による劣化や、放電による火災を防ぐ為不燃性の材料が適しており、その条件を満たす材料の一つとして、セラミックスが一般に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-162637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘電体は、導入側スリーブ及び導出側スリーブの端面間にろう接により接合されているが、誘電体と、導入側スリーブ及び導出側スリーブとの材質が異なる為に、ろう接の為の熱が加わったときに、熱膨張率の相違から、接合部に破断が生じ、真空リークが発生するおそれがあった。
【0005】
本実施形態は、誘電体と、導入側スリーブ及び導出側スリーブとの接合部の真空リークを防止できる高周波窓の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、円板状の誘電体と、前記誘電体の一面側に設けて前記誘電体に高周波を導入する円筒状の導入側スリーブと、前記誘電体の他面側に設けて前記誘電体から高周波を導出する円筒状の導出側スリーブと、を備え、前記誘電体は、外周縁部の前記一面を前記導入側スリーブに、前記他面を前記導出側スリーブにろう接しており、前記導入側スリーブと前記導出側スリーブはそれぞれ、前記ろう接部の近傍に、半径方向外側に向けた膨張を抑える膨張抑止部材を備える高周波窓である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る高周波窓の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、一実施形態について詳細に説明する。なお、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、実施形態に係る高周波窓1は、円板状の誘電体3と、誘電体3の一面3a側に設けて誘電体3に高周波を導入する導入側スリーブ5と、誘電体3の他面3b側に設けて誘電体3から高周波を導出する導出側スリーブ7と、膨張抑止部材8、8とを備えている。
誘電体3は、セラミックス製であり、所定の高周波を透過する。本実施形態では、一面3a側を高周波の導入側とし、他面3b側を高周波の導出側としているが、いずれが導入側又は導出側としても良い。
誘電体3の外周縁部9において、一面3aと他面3bと端面3cには、それぞれメタライズ処理された金属膜が設けてあり、一面側メタライズ面9a、他面側メタライズ面9b及び端面側メタライズ面9cが連続した金属膜として形成されており、断面において略コ字形状を成している。
【0010】
導入側スリーブ5と導出側スリーブ7は、それぞれ銅又は銅合金製であり、円筒形状を成す本体部11と、本体部11の誘電体3側に形成されたつば部13とを備えている。尚、導入側スリーブ5と導出側スリーブ7の材質は、上記の銅及び銅合金に限らず、コバール等の使用も可能であり、あくまでも一例である。本体部11とつば部13とは連続して形成されており、本体部11とつば部13とで略直角のコーナ15を成している。
導入側スリーブ5のつば部13と導出側スリーブ7のつば部13とで誘電体3の外周縁部9を挟んでおり、誘電体3の一面側メタライズ面9aと他面側メタライズ面9bはそれぞれつば部13にろう付けにより接合されている。
導入側スリーブ5と導出側スリーブ7の各つば部13の外周面13aは、誘電体3の端面側メタライズ面9cと面一に配置されている。つば部13の外周面13aと誘電体3の端面側メタライズ面9cは、面一に限らず、凹凸を成していても良く、導入側スリーブ5から導出側スリーブ7までメタライズ面9cを介して金属面で繋がっていれば良い。
【0011】
膨張抑止部材8は、導入側スリーブ5及び導出側スリーブ7の外周に配置されて、各スリーブ5、7の半径方向外側に向けた膨張(図1中矢印F参照)を抑えるものである。
膨張抑止部材8はリング形状を成しており、導入側スリーブ5及び導出側スリーブ7において、それぞれ本体部11とつば部13とが成すコーナ15に配置されており、本体部11の外周に嵌入されている。
【0012】
この膨張抑止部材8は、誘電体3に用いる材料と同じ又は熱膨張率が同等である材料でできており、誘電体3の材料と同じ例として、アルミナ(酸化アルミニウム)、サファイヤ等が好ましく用いられるが、酸化ベリリウム、窒化ケイ素、ダイヤモンド等であっても良い。
各膨張抑止部材8は、断面が四角形状を成しており、四角の一面8aをつば部13に対向し、一面8aと直角を成す他面8bを本体部11の外周面に対向しており、各対向部分をそれぞれろう付けにより接合されている。尚、図1中にハッチングで示すように、膨張抑止部材8の一面8aはメタライズ処理された金属膜であり、他面8bもメタライズ処理された金属膜としてある。
【0013】
次に、本実施形態に係る高周波窓1の製造方法について説明する。
(誘電体のメタライズ処理)
まず、誘電体3の全周に亘る外周縁部9において、誘電体3の一面3a、他面3b及び端面3cをメタライズ処理して、それぞれ連続した断面コ字形状の金属膜9a、9b、9cを形成する。
【0014】
(導入側スリーブ5と導出側スリーブ7の形成)
円筒形状のスリーブ材の一端に半径方向外側に突設するつば部13を形成し、円筒形状の本体部11とこれに連続して直角を成すつば部13を有する導入側スリーブ5及び導出側スリーブ7とする。
【0015】
(膨張抑止部材形成及びメタライズ処理)
断面四角形状でリング状膨張抑止部材を2つ形成し、2つの各膨張抑止部材8において、断面四角形状の一面8aと、これと直角を成す他面8bとのそれぞれにメタライズ処理をして金属膜を形成する。
【0016】
(ろう付け)
導入側スリーブ5の本体部11と導出側スリーブ7の本体部11にそれぞれ、リング形状の膨張抑止部材8を嵌め入れて、つば部13と本体部11とのコーナ15に配置すると共に膨張抑止部材8の接合部分にろう材を設置する。
導入側スリーブ5のつば部13と導出側スリーブ7のつば部13との間に誘電体3の外周縁部9を挟むように配置し、各接合部分にろう材を設置する。
その後、炉内で各ろう材を溶融して接合する。
【0017】
実施形態の作用効果について説明する。
実施形態によれば、導入側スリーブ5と導出側スリーブ7はそれぞれ、つば部13と誘電体3との接合部において、ろう接の為の熱を加えた再に、誘電体3と各スリーブ5、7との熱膨張率が異なることから、これらの接合部に破断が生じるおそれがあるが、本実施形態では、膨張抑止部材8を設けて、各スリーブ5、7の半径方向外側に向けた膨張(図1中矢印F参照)を抑えているので、ろう接時の熱膨張による接合部の破断を防止できる。このように、接合部の破断を防止することで、真空リークを抑制し、より高い周波数帯で使用する高周波窓の製作が可能となる。
特に、誘電体3はセラミックス材であり、導入側スリーブ5と導出側スリーブ7は銅材である場合には、銅材の膨張率がセラミックスの膨張率よりも著しく大きいが、本実施形態では膨張抑止部材8により導入側スリーブ5と導出側スリーブ7の熱膨張を抑えることで、かかる膨張率の差に基づく接合部の破断を防止できる。
【0018】
膨張抑止部材8をリング形状とし、円筒形状の本体部11の外周面に装着することで、簡単な構成で容易に導入側スリーブ5と導出側スリーブ7の半径方向外側への膨張を抑制できる。
膨張抑止部材8は、断面において互いに直角を成す一面8aと他面8bを有する形状としているから、導入側スリーブ5と導出側スリーブ7の各本体部11の外周面とつば部13とが形成するコーナ15に安定に配置することができると共に接触面を広くとることができる。これにより、膨張抑止部材8を安定に且つ強固に装着できる。
【0019】
誘電体3の外周縁部9は、一面側メタライズ面9aと、他面側メタライズ面9bと、端面側メタライズ面9cとで連続した金属面としてあり、一面側メタライズ面9aは導入側スリーブ5に、他面側メタライズ面9bは導出側スリーブ7に接続されているから、高周波が誘電体3の端面から漏れ出るのを防止できる。
誘電体3の外周縁部9の端面は、導入側スリーブ5と導出側スリーブの各つば部13の外周面と面一にしたりわずかな凹凸とすることで、つば部13から大きく突出していないので、つば部13の外周側を簡素な構成にでき、冷却部材等の周辺部材の配置の邪魔にならない。
【0020】
上述した一実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0021】
例えば、膨張抑止部材8は、断面が四角形状に限らず、一面8aと他面8bとの2面が直角を成す直角三角形であっても良い。
【符号の説明】
【0022】
1…高周波窓、3…誘電体、3a…一面、3b…他面、5…導入側スリーブ、7…導出側スリーブ、8…膨張抑止部材、11…本体部、13…つば部。
図1