(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108993
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】高電圧試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010341
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】久保 敏裕
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA18
2G036AA19
2G036AA28
2G036BA01
2G036BB22
2G036CA01
2G036CA10
2G036CA12
(57)【要約】
【課題】実際の使用環境に近い状態で高電圧直流(HVDC)機器の電気特性又は温度特性を試験できるようにする。
【解決手段】高電圧直流機器10に直流高電圧を印加すると同時に交流試験電圧を印加して、高電圧直流機器10の電気特性又は温度特性を試験するための高電圧試験装置100であって、接地電位とされたチャンバ1と、チャンバ1外に設けられた第1交流電源2と、チャンバ1内に設けられ、第1交流電源2の交流電圧から直流高電圧を生成する直流高圧電源回路3と、チャンバ1外に設けられた第2交流電源4と、チャンバ1内に設けられ、第2交流電源2の交流電源を無線給電し、直流高電圧に交流電圧を重畳して、交流試験電圧を生成する送電コイル5及び受電コイル6と、チャンバ1外に設けられ、高電圧直流機器10が接続されるとともに、高電圧直流機器10に交流試験電圧を印加するための接続端子部9とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧直流機器に直流高電圧を印加すると同時に交流試験電圧を重畳して、前記高電圧直流機器の電気特性又は温度特性を試験するための高電圧試験装置であって、
接地電位とされたチャンバと、
前記チャンバ外に設けられた第1交流電源と、
前記チャンバ内に設けられ、前記第1交流電源の交流電圧から直流高電圧を生成する直流高電圧電源回路と、
前記チャンバ外に設けられた第2交流電源と、
前記チャンバ内に設けられ、前記第2交流電源の交流電源を無線給電し、前記直流高電圧に交流電圧を重畳して、前記交流試験電圧を生成する送電コイル及び受電コイルと、
前記チャンバ外に設けられ、前記高電圧直流機器が接続されるとともに、前記高電圧直流機器に前記交流試験電圧を印加するための接続端子部とを備える、高電圧試験装置。
【請求項2】
前記送電コイル又は前記受電コイルの少なくとも一方にコンデンサが並列接続されている、請求項1に記載の高電圧試験装置。
【請求項3】
前記チャンバ内において、前記直流高電圧電源回路の出力端、前記送電コイル又は前記受電コイルの周囲に、磁気シールドが設けられている、請求項1又は2に記載の高電圧試験装置。
【請求項4】
前記磁気シールドには、スリットが形成されている、請求項3に記載の高電圧試験装置。
【請求項5】
前記直流高電圧電源回路は、シェンケル形昇圧回路又はコッククロフト・ワルトン形昇圧回路を用いて構成されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の高電圧試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧直流(HVDC)機器の電気特性又は温度特性を試験するための高電圧試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、非特許文献1に示すような高電圧直流(HVDC)機器の電気特性又は温度特性を試験する場合には、HVDC試験用の商用電源が無いことから、交流電圧を印加し、それによって得られた温度上昇や温度勾配等の結果を、直流電圧を重畳した場合(実際にHVDC機器が使用される環境)での結果に補正している。
【0003】
しかしながら、交流電圧のみを印加するだけでは、温度勾配等が直流電圧を重畳した場合とは異なるため、補正式を用いて直流電圧重畳時の結果を推定したとしても、精度が不十分である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】欧州委員会、研究プロジェクト「PROMOTioN」におけるDC遮断器の試験レポート、インターネット<https://ec.europa.eu/research/participants/documents/downloadPublic/MWNpb3N0QjF0SXgrdW9KdWpXU1Vzb0xibHNUd3QxSzJSbGZvMkgvajQxNlFzckp3OC92SGRBPT0=/attachment/VFEyQTQ4M3ptUWRsZnZrQndMZ0oyRmorRkN2SkhiOXU=>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、実際の使用環境に近い状態で高電圧直流(HVDC)機器の電気特性又は温度特性を試験できるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る高電圧試験装置は、高電圧直流機器に直流高電圧を印加すると同時に交流試験電圧を重畳して、前記高電圧直流機器の電気特性又は温度特性を試験するための高電圧試験装置であって、接地電位とされたチャンバと、前記チャンバ外に設けられた第1交流電源と、前記チャンバ内に設けられ、前記第1交流電源の交流電圧から直流高電圧を生成する直流高圧電源回路と、前記チャンバ外に設けられた第2交流電源と、前記チャンバ内に設けられ、前記第2交流電源の交流電源を無線給電し、前記直流高電圧に交流電圧を重畳して、前記交流試験電圧を生成する送電コイル及び受電コイルと、前記チャンバ外に設けられ、前記高電圧直流機器が接続されるとともに、前記高電圧直流機器に前記交流試験電圧を印加するための接続端子部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このように構成された高電圧試験装置であれば、実際の使用環境に近い状態で高電圧直流(HVDC)機器の電気特性又は温度特性を試験できるようになる。ここで、直流高圧電源に交流電圧を重畳する構成として、無線給電を用いているので、絶縁を確保しながらも、直流高電圧に交流電圧を重畳する構成を簡単に実現することができる。
【0008】
前記送電コイル又は前記受電コイルの少なくとも一方にコンデンサが並列接続されていることが望ましい。この構成であれば、送電コイル及び受電コイルの間の結合度(共振の鋭さ)を向上させることができ、無線給電の効率を向上させることができる。
【0009】
チャンバ内の構造物端部への電界集中を緩和して、放電等の不具合の発生を抑制するためには、前記チャンバ内において、前記直流高電圧回路の出力端、前記送電コイル又は前記受電コイルの周囲に、磁気シールドが設けられていることが望ましい。
【0010】
前記磁気シールドには、スリットが形成されていることが望ましい。この構成であれば、磁気シールドで生じる渦電流損を軽減することができる。
【0011】
直流高圧電源回路の具体的な実施の態様としては、前記直流高電圧電源回路は、シェンケル形昇圧回路又はコッククロフト・ワルトン形昇圧回路を用いた構成が考えられる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、実際の使用環境に近い状態で高電圧直流(HVDC)機器の電気特性又は温度特性を試験できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る高電圧試験装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る高電圧試験装置100の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
<高電圧試験装置100の構成>
高電圧試験装置100は、高電圧直流機器(以下、HVDC機器という。)に交流試験電圧を印加して、HVDC機器の電気特性又は温度勾配等の温度特性を試験するためのものである。なお、HVDC機器には、電気ケーブルを含む。
【0016】
具体的にこの高電圧試験装置100は、
図1に示すように、チャンバ1と、高電圧用交流電源(第1交流電源)2と、高電圧用交流電源2の交流電圧から直流高電圧を生成する直流高電圧電源回路3と、試験対象10に給電するための試験用交流電源(第2交流電源)4と、試験用交流電源4の交流電源を無線給電し、直流高電圧に交流電圧を重畳して、交流試験電圧を生成する送電コイル5及び受電コイル6と、受電コイル6に並列に設けられた共振コンデンサ7と、磁気シールド8と、試験対象10が接続される接続端子部9とを備えている。
【0017】
チャンバ1は、直流高電圧電源回路3、送電コイル5、受電コイル6、共振コンデンサ7及び磁気シールド8を収容するものである。また、チャンバ1は、接地されているため、接地電位となっている。
【0018】
高電圧用交流電源2は、直流高電圧電源回路3に給電するためのものであって、チャンバ1外に設けられている。
【0019】
直流高電圧電源回路3は、チャンバ1内に設けられ、高電圧充電用交流電源2に接続される。本実施形態の直流高電圧電源回路3はシェンケル形昇圧回路である。具体的に直流高電圧電源回路3は、半円筒状をなし互いに対向する一対の高周波電極31と、順方向に直列接続された複数のダイオード32と、ダイオード32同士の各接続点において高周波電極と対向し、かつ、高周波電極31との間で静電容量を有するように設けられた複数のキャパシタ電極33と、生成された直流高電圧を出力する高電圧出力端部34と備えたものである。
【0020】
なお、直列接続されたダイオード32は、出力端である初段のアノードが高電圧出力端部34に、最終段のカソードがチャンバ1に接続されている。また、高電圧出力端部34は、配線を介してチャンバ1外の接続端子部9に接続されている。
【0021】
これにより、高電圧充電用交流電源2から高周波電極31に給電されると、キャパシタ電極33との間の静電容量に電圧が供給され,充電される。そして、この電圧がダイオード32によって維持され、低電位側から昇圧されて高電圧出力端部34に直流高電圧が形成されることで、高電圧出力端部34に接続された接続端子部9に直流高電圧が供給される。
【0022】
なお、本実施形態では直流高電圧電源回路3としてシェンケル形昇圧回路を用いているが、他の直流高電圧電源回路であってもよく、例えば、コッククロフト・ワルトン形昇圧回路を用いても良い。
【0023】
試験用交流電源4は、送電コイル5に給電するためのものであって、チャンバ1外に設けられている。
【0024】
送電コイル5はチャンバ1内に設けられ、試験用交流電源4に接続される。これにより、試験用交流電源4によって交流電力が給電されると、送電コイル5の周囲に、高周波に従って向きが周期的に反転する磁界が生じる。
【0025】
受電コイル6は、送電コイル5と磁気的に結合されたものであり、送電コイル5と対向し、かつ、なるべく同軸となるようにチャンバ1内に設けられ、配線を介してチャンバ1外の接続端子部9に接続されている。なお、受電コイル6及び送電コイル5を同軸に配置したほうが送電効率(結合度)は良くなる。これにより、送電コイル5との電磁誘導によって無線給電され、これにより生じた交流電圧がシェンケル形昇圧回路3によって供給される直流高電圧に重畳されて、交流試験電圧が生成され、当該交流試験電圧が接続端子部9に供給される。
【0026】
なお、電磁誘導による無線給電であるため、送電コイル5と受電コイル6は絶縁されており、従来技術と比較して絶縁を確保することが容易となっている。なお、試験用交流電源4は、高周波である必要はないが、例えば商標周波数等のように周波数が低いと効率が悪くなる。このため、無線給電は高周波で行い、受電コイル6側に設けたコンバータでいったん整流した後、インバータで所望の試験周波数に変換する方法も考えられる。
【0027】
共振コンデンサ7は、受電コイル6と並列となるようにチャンバ1内に設けられている。これにより、送電コイル5と受電コイル6との間の結合度(共振の鋭さ)を向上させることができ、無線給電の効率を向上させることができる。
【0028】
磁気シールド8は、受電コイル6、共振コンデンサ7及び高電圧出力端部34を覆うようにチャンバ1内に設けられており、具体的には、尖った部分を極力排した金属板に、適度な間隔でスリットが形成され、該金属板が小領域に分割されたものである。
【0029】
この磁気シールド8により、受電コイル6、共振コンデンサ7及び高電圧出力端部34の周囲の電界集中を緩和し、放電等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、両コイルによって生じる磁界が磁気シールド8内に引き起こす渦電流の存在領域が小領域に分割されるため、渦電流損を軽減することができる。
【0030】
接続端子部9は、チャンバ1外に設けられており、配線を介して高電圧出力端部34及び受電コイル6と接続されている。また、端子間には試験対象10が接続される。
【0031】
試験対象10は、電気特性又は温度特性の試験を所望する対象であり、例えば、HVDC機器である。接続端子部9に接続されることでシェンケル形昇圧回路3及び送受電コイル6から直流高電圧に交流電圧が重畳された交流試験電圧が供給される。これにより、試験対象10であるHVDC機器の電気特性又は温度特性の試験が行われる。
【0032】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の高電圧試験装置100によれば、高電圧直流(HVDC)機器に直流高電圧を印加すると同時に交流試験電圧を重畳しているので、実際の使用環境に近い状態で高電圧直流(HVDC)機器の電気特性又は温度特性を試験できるようになる。ここで、直流高圧電源に交流電圧を重畳する構成として、無線給電を用いているので、絶縁を確保しながらも、直流高電圧に交流電圧を重畳する構成を簡単に実現することができる。
【0033】
<変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、共振コンデンサ7が受電コイル6側にのみ設けられていたが、送電コイル5側のみに設けられていてもよいし、両方のコイルの側に設けられていてもよい。このような構造にしても、コイル間の結合度(共振の鋭さ)を向上させることができ、無線給電の効率を向上させることができる。
【0034】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100・・・高電圧試験装置
1・・・ チャンバ
2・・・ 高電圧用交流電源
3・・・ 直流高電圧電源回路
4・・・ 試験用交流電源
5・・・ 送電コイル
6・・・ 受電コイル
7・・・ 共振コンデンサ
8・・・ 磁気シールド
9・・・ 接続端子部
10・・・ 試験対象(HVDC機器)