IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケイミュー株式会社の特許一覧 ▶ サンユー販売株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109009
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】屋根材割付け装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230731BHJP
   E04D 1/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
G06Q50/10
E04D1/00 Z ESW
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010364
(22)【出願日】2022-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318005690
【氏名又は名称】サンユー販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 日向子
(72)【発明者】
【氏名】石橋 道也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】屋根の特定の範囲において屋根材を綺麗に割付けることができる屋根材割付け装置を提供する。
【解決手段】屋根材割付け装置10は、液晶表示装置などよりなる表示装置14と、プリンター16と、キーボードやマウスなどの入力部18と、スキャナーやCAD装置などよりなる平面図入力部20と、が接続されている制御部12を備える。制御部12は、寄棟屋根、切妻屋根、片流れ屋根、陸屋根などの各種類の屋根形状を記憶する屋根形状記憶部22と、屋根材の種類及び夫々の屋根材の縦寸法と横寸法を記憶する屋根材記憶部24と、屋根材の真物に関するデータを記憶を記憶する真物データ記憶部26と、屋根材の切物のデータについて記憶する切物データ記憶部28と、屋根材割付けプログラムや完成した屋根伏せ図などを記憶する記憶部30と、を有している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根に屋根材を割付ける屋根材割付け装置であって、
複数の屋根面から構成された屋根伏せ図のそれぞれの前記屋根面において、前記屋根面に指定された割付け開始点から、前記屋根材の横方向と前記屋根面の軒を示す枠線とが平行になるように、かつ、前記屋根材の縦方向と前記屋根面の流れ方向が平行になるように前記屋根材に対応した割付け領域を前記屋根面へ割付ける第1割付け手段と、
前記屋根面の特定点から前記枠線と平行な第1特定線と、前記特定点から前記流れ方向と平行な第2特定線とを入力する線特定手段と、
前記第1特定線と前記第2特定線とに囲まれた前記屋根面の特定範囲において、前記第1特定線から前記屋根面の軒までに割付けられた前記割付け領域の縦方向の寸法が、全て均等になるように割付ける第2割付け手段と、
を有することを特徴とする屋根材割付け装置。
【請求項2】
屋根に屋根材を割付ける屋根材割付け装置であって、
複数の屋根面から構成された屋根伏せ図のそれぞれの前記屋根面において、前記屋根面に指定された割付け開始点から、前記屋根材の横方向と前記屋根面の軒を示す枠線とが平行になるように、かつ、前記屋根材の縦方向と前記屋根面の流れ方向が平行になるように前記屋根材に対応した割付け領域を前記屋根面へ割付ける第1割付け手段と、
前記屋根面の特定点から前記枠線と平行な第1特定線と、前記特定点から前記流れ方向と平行な第2特定線とを入力する線特定手段と、
前記第1特定線と前記第2特定線とに囲まれた特定範囲において、前記第1特定線から前記屋根面の軒までに割付けられた前記割付け領域の縦方向の寸法が、所定の寸法になるように前記割付け領域を割付け、最も前記軒に近い位置の前記割付け領域の縦方向の寸法のみ前記所定の寸法より短くなるように割付ける第3割付け手段と、
を有することを特徴とする屋根材割付け装置。
【請求項3】
前記第1特定線と前記第2特定線とに囲まれた前記特定範囲が、すがりである、
請求項1又は2に記載の屋根材割付け装置。
【請求項4】
前記第1割付け手段は、前記割付け領域において、前記屋根面を構成する屋根線と前記割付け領域に割付けられた前記屋根材の真物が交叉する場合に、前記割付け領域から前記交叉する位置を超えて突出している前記真物の部分を切断して切物を作成する、
請求項1又は2に記載の屋根材割付け装置。
【請求項5】
前記第1割付け手段は、割付けた前記屋根材が前記切物の場合には、前記切物が割付けられた前記割付け領域の割付け位置と、前記切物の角部の位置を切物データとして記憶する、
請求項4に記載の屋根材割付け装置。
【請求項6】
隅棟に関して、棟コーナー仕様か棟包仕様かを選択する選択手段をさらに有し、
前記第1割付け手段は、
前記棟コーナー仕様が選択された場合に、前記隅棟と前記真物が交叉する位置に合わして前記真物を切断するようにして前記切物の各角部の位置を求め、
前記棟包仕様が選択された場合に、前記隅棟と前記真物が交叉する位置に合わして前記真物を切断するようにして前記切物の各角部の位置を求めると共に、前記隅棟と接する前記切物の下端の前記角部を切落として隅切りを行い、隅切りを行った前記切物の下端の位置を求める、
請求項5に記載の屋根材割付け装置。
【請求項7】
前記第1割付け手段は、
けらばと前記真物が交叉する位置に合わして前記真物を切断するようにして前記切物の各角部の位置を求めると共に、前記けらばと接する前記切物の上端の前記角部を切り落とし、切り落とした前記切物の上端の位置を求める、
請求項5に記載の屋根材割付け装置。
【請求項8】
前記第1割付け手段は、
谷と前記真物が交叉する位置に合わして前記真物を切断するようにして前記切物の各角部の位置を求めると共に、前記谷と接する前記切物の上端の前記角部を切り落とし、切り落とした前記切物の上端の位置を求める、
請求項5に記載の屋根材割付け装置。
【請求項9】
前記第1割付け手段は、
前記屋根の平棟、又は、壁取り合い部分に接して配される前記割付け領域の縦方向の寸法が、予め設定した寸法の範囲になるように、前記平棟、又は、前記壁取り合い部分に接した前記割付け領域を割付ける、
請求項1又は2に記載の屋根材割付け装置。
【請求項10】
前記第1割付け手段は、
前記平棟、又は、前記壁取り合い部分に接した前記割付け領域を割付けるときに、前記平棟、又は、前記壁取り合い部分に接した前記割付け領域の少なくとも一段下の段に配される前記割付け領域の縦方向の寸法が短くなるように割付ける、
請求項9に記載の屋根材割付け装置。
【請求項11】
割付けられたそれぞれの前記切物の前記寸法から面積を求め、
全ての前記切物の前記面積を合計して切物合計面積を求め、
全ての前記切物を作成するために用いられた前記真物の真物合計面積を求め、
前記真物合計面積から前記切物合計面積を差し引いて廃材面積を求める廃材情報算出手段をさらに有する、
請求項4に記載の屋根材割付け装置。
【請求項12】
前記廃材情報算出手段は、
前記屋根材の単位面積当たりの単位重量を求め、
前記切物合計面積に前記単位重量を積算して切物合計重量を求め、
前記廃材面積に前記単位重量を積算して廃材合計重量を求める、
請求項11に記載の屋根材割付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建屋の屋根に屋根材を割付けるための屋根材割付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本家屋などの建屋においては、その屋根に瓦やスレート屋根などの屋根材を配置している。この屋根材を配置する場合には、どのような位置に屋根材を割付けるかが重要であり、従来は業者が現場で屋根の形状などに基づいて割付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3584022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように業者がその割付け作業に時間がかかると共に、その割付け方に専門性の知識が要求される。特に、すがりなどにおいて屋根材を割付けることは難しいという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、屋根の特定の範囲において屋根材を綺麗に割付けることができる屋根材割付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、屋根に屋根材を割付ける屋根材割付け装置であって、複数の屋根面から構成された屋根伏せ図のそれぞれの前記屋根面において、前記屋根面に指定された割付け開始点から、前記屋根材の横方向と前記屋根面の軒を示す枠線とが平行になるように、かつ、前記屋根材の縦方向と前記屋根面の流れ方向が平行になるように前記屋根材に対応した割付け領域を前記屋根面へ割付ける第1割付け手段と、前記屋根面の特定点から前記枠線と平行な第1特定線と、前記特定点から前記流れ方向と平行な第2特定線とを入力する線特定手段と、前記第1特定線と前記第2特定線とに囲まれた前記屋根面の特定範囲において、前記第1特定線から前記屋根面の軒までに割付けられた前記割付け領域の縦方向の寸法が、全て均等になるように割付ける第2割付け手段と、を有することを特徴とする屋根材割付け装置である。
【0007】
また、本発明は、屋根に屋根材を割付ける屋根材割付け装置であって、複数の屋根面から構成された屋根伏せ図のそれぞれの前記屋根面において、前記屋根面に指定された割付け開始点から、前記屋根材の横方向と前記屋根面の軒を示す枠線とが平行になるように、かつ、前記屋根材の縦方向と前記屋根面の流れ方向が平行になるように前記屋根材に対応した割付け領域を前記屋根面へ割付ける第1割付け手段と、前記屋根面の特定点から前記枠線と平行な第1特定線と、前記特定点から前記流れ方向と平行な第2特定線とを入力する線特定手段と、前記第1特定線と前記第2特定線とに囲まれた特定範囲において、前記第1特定線から前記屋根面の軒までに割付けられた前記割付け領域の縦方向の寸法が、所定の寸法になるように前記割付け領域を割付け、最も前記軒に近い位置の前記割付け領域の縦方向の寸法のみ前記所定の寸法より短くなるように割付ける第3割付け手段と、を有することを特徴とする屋根材割付け装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋根の屋根面において、特定の範囲に屋根材を綺麗に割付けることができ、外観がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】寄棟屋根の斜視図である。
図2】切妻屋根の斜視図である。
図3】片流れ屋根の斜視図である。
図4】陸屋根の斜視図である。
図5】勾配の説明図であり、(a)は3寸勾配、(b)は4寸勾配、(c)は5寸勾配、(d)は6寸勾配の説明図である。
図6】屋根に使われる名称の説明図である。
図7】実施形態1の屋根材割付け装置のブロック図である。
図8】屋根材割付け装置のフローチャートである。
図9】真物と切物の割付けを行うフローチャートである。
図10】屋根材を割付けて屋根伏せ図を作成する屋根の例示を示す斜視図である。
図11】建屋の平面図である。
図12】屋根線を有していない屋根伏せ図の図である。
図13】屋根線を作成した屋根伏せ図の図である。
図14】東側の屋根面の説明図である。
図15】屋根材に設定した個別座標系の説明図である。
図16】屋根材を割付けようとしているところの拡大平面図である。
図17】すがりの平面図である。
図18】屋根材を割付けた状態の屋根伏せ図である。
図19】隅棟において隅コーナー仕様を選択した場合の斜視図である。
図20】棟コーナー仕様の出力結果である。
図21】棟包仕様を選択した場合の斜視図である。
図22】棟包仕様の出力結果である。
図23】けらばの部分の斜視図である。
図24】けらばの出力結果である。
図25】谷の部分の斜視図である。
図26】谷の部分の出力結果である。
図27】平棟の斜視図である。
図28】壁取り合い部の斜視図である。
図29】最上段以外の平棟の平面図である。
図30】実施形態2のすがりの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の屋根材割付け装置10について図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0011】
実施形態1の屋根材割付け装置10について、図1図29を参照して説明する。本実施形態の屋根材割付け装置10は、日本家屋などの建屋の屋根に長方形の屋根材を割付けるときに使用する支援システムであって、パソコン(コンピュータ)上で動作する屋根材割付けプログラムによって実現させることができる。
【0012】
1.用語の説明
まず、本明細書において使用される用語について説明する。
【0013】
建屋の屋根の各部分の名称としては、図6に示すように、大棟(平棟)、拝み、破風、壁際、下屋、庇、谷、けらば、軒などがある。
【0014】
「屋根材」1とは、平面形状がほぼ長方形の屋根に取り付ける部材であって、スレート屋根、ガルバリウム鋼板(登録商標)、瓦などがある。スレート屋根は、薄物屋根材、コロニアル(登録商標)、カラーベスト(登録商標)とも呼ばれる材料であり、スレートはセメントと繊維質からできており瓦と並んで広く普及している。ガルバリウム鋼板は、建築材料で板金とも呼ばれている。住宅の外部の様々な箇所に使われており、アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板で造られており、金属屋根と呼ばれるものはガルバリウム鋼板が殆どである。
【0015】
建屋の屋根の「屋根形状」には、図1に示す寄棟屋根、図2に示す切妻屋根、図3に示す片流れ屋根、図4に示す陸屋根などがある。
【0016】
「すがり」とは、図2に示すように、本屋根の軒先からさらに突出し、かつ、一方向だけに勾配のある屋根のこと、すなわち、片流れのような屋根のことである。
【0017】
「屋根伏せ図」とは、建屋の設計を平面図として記した「伏せ図」の中で、特に屋根の造りを記した図のこと。建物を真上から見下ろした状態の屋根や形や仕上げなどを、屋根面の平面図のように仕上げた図面となっている。屋根の外形平面図で、屋根の形状、勾配、材料などが記入されている。
【0018】
「流れ方向」とは、屋根の傾斜方向(勾配方向)に沿った方向である。
【0019】
屋根の「勾配」とは、図5に示すように、3寸勾配、4寸勾配、5寸勾配、6寸勾配がある。3寸勾配は、図5(a)に示すように、10寸に対し3寸下方に傾斜している状態を言う。「寸」とは、尺貫法における長さの単位であり、日本では約30.303mmで、尺の1/10と定義されている。
【0020】
「割付け」とは、屋根の屋根面上に長方形の屋根材1に対応した割付け領域を順番に配置することをいう。
【0021】
屋根材1に対応した「割付け領域」とは、図16のハッチングの領域で示すように屋根材1そのもの大きさでなく、横方向は屋根材1の横寸法a、縦方向は働き幅dで表現される長方形の領域である。
【0022】
「働き幅d」とは、図16に示すように、屋根材1の上部は上段の屋根材1の下部に重なって隠れて配置するため、屋根材1の縦寸法bから隠れた部分の寸法cを除き、実質外から露出して見える屋根材1の縦寸法をいう。
【0023】
「真物」とは、割付けを行う屋根材1に対して、出荷された状態の部材サイズのまま割付けが可能な屋根材1を表す。
【0024】
「切物」とは、割付けを行う部材に対して、元の部材サイズから切断を施し、割付けを行う部材を表す。
【0025】
2.屋根材割付け装置10の構成
屋根材割付け装置10の構成について図7のブロック図を参照して説明する。
【0026】
屋根材割付け装置10は、パソコン(コンピュータ)の制御部12と、この制御部12には、液晶表示装置などよりなる表示装置14、プリンター16、キーボードやマウスなどの入力部18、スキャナーやCAD装置などよりなる平面図入力部20が接続されている。また、この制御部12は、屋根形状記憶部22、屋根材記憶部24、真物データ記憶部26、切物データ記憶部28、記憶部30を有している。
【0027】
屋根材記憶部24は、屋根材1の種類と、それぞれの屋根材1の縦寸法と横寸法を記憶している。
【0028】
真物データ記憶部26は、屋根材1の真物に関するデータを記憶している。
【0029】
切物データ記憶部28は、屋根材1の切物のデータについて記憶している。
【0030】
屋根形状記憶部22は、図1図4に示すように、各種類の屋根形状を記憶し、例えば寄棟屋根、切妻屋根、片流れ屋根、陸屋根などである。
【0031】
記憶部30は、屋根材割付けプログラムや完成した屋根伏せ図などを記憶する。
【0032】
屋根材割付け装置10は、真物を切物に切断する切断装置40に接続され、切断装置40へ真物を切断するための切断情報をインターネット、通信装置、記憶媒体を介して出力する。
【0033】
3.屋根材割付け装置10の動作状態
次に、上記構成の屋根材割付け装置10を用いて、業者が日本家屋の建屋の屋根に屋根材1を割付ける処理内容を図8のフローチャートを参照して順番に説明していく。制御部12は、記憶部30に記憶した屋根材割付けプログラムによって下記の機能を実現できる。まず、屋根材割付け装置10が、屋根材1を割付ける屋根は、図10に示すように、寄棟屋根を一部変形し、また、すがりを有する。
【0034】
(1)ステップS1
ステップS1において、平面図を入力する(図11参照)。
【0035】
建屋の平面図を平面図入力部20から入力する。このときに建屋が、2階以上の建屋である場合には、各階にある屋根毎の下にある平面図を入力する。この入力時に平面図の実寸の大きさも入力する。入力方法は、スキャナー、CADデータ、PDFデータなどである。制御部12は、入力した平面図に対して実寸の大きさを考慮して2次元のxy直交座標系である絶対座標系とその原点を設定する。ここでは、原点0を中心にして東西方向がx軸方向、南北方向がy軸方向であり、真東が+x軸方向、真北が+y軸方向である。
【0036】
(2)ステップS2
ステップS2において、外壁線を入力する(図11参照)。
【0037】
建屋の平面図の外壁線を入力部18で入力する。この入力は、平面図における外壁に沿ってマウスを移動させてカーソルでなぞるか、絶対座標系における外壁の位置を表す数値と外壁線の実寸データを入力する。
【0038】
(3)ステップS3
ステップS3において、出幅を入力する(図11参照)。
【0039】
外壁線から屋根の先端までの距離である出幅の数値を入力部18で入力する。この出幅は、東西南北の外壁線に関して全て同一でもよく、また、東西南北の外壁線毎に異なる数値を入力してもよい。
【0040】
(4)ステップS4
ステップS4において、東西南北の枠線を作成する(図11図12参照)。
【0041】
制御部12は、外壁線から出幅だけ突出した位置に屋根伏せ図の外枠を示す枠線と枠線の長さの実寸データを作成する。この実寸データは、制御部12が平面図の外壁線の長さの実寸データと出幅の数値から算出する。
【0042】
(5)ステップS5
ステップS5において、図5に示す3寸勾配などの勾配を入力する。
【0043】
屋根の勾配を入力部18で入力する。なお、ステップS6において屋根形状を特定してから勾配を入力してもよい。この場合には、全ての屋根面に同じ勾配を入力するのでなく、屋根面毎に勾配を入力してもよい。
【0044】
(6)ステップS6
ステップS6において、屋根形状を特定する。
【0045】
屋根形状記憶部22で記憶している図1図4に示すような寄棟屋根、切妻屋根、又は、片流れ屋根などの複数の屋根形状から該当する屋根の屋根形状を入力部18で特定する。
【0046】
(7)ステップS7
ステップS7において、屋根線を作成する。
【0047】
制御部12は、枠線に囲まれた範囲において、特定した屋根形状に対応した屋根線を作成する。
【0048】
(a)特定した屋根形状が寄棟屋根の場合(図1参照)
特定した屋根形状が図1に示す寄棟屋根において、屋根線を作成する場合について説明する。
【0049】
第1に、東西南北の枠線に関して、軒の属性をそれぞれ付加する。なお、各枠線(軒)は交わると曲がるものとする。
【0050】
第2に、隣り合う枠線(軒)が90°で交わる場合は、隣り合う枠線の中の一方の枠線から例えば、斜め45°の位置に隅棟を作成する。なお、隣り合う屋根面の勾配により45°になるとは限らないので、その場合には勾配に合わせて屋根線の角度を調整する。
【0051】
第3に、隣り合う枠線(軒)が270°で交わる場合は、隣り合う枠線の中の一方の枠線から例えば、斜め135°の位置に谷を作成する。なお、隣り合う屋根面の勾配により135°になるとは限らないので、その場合には勾配に合わせて屋根線の角度を調整する。
【0052】
第4に、一の隅棟と他の隅棟が交わると、その位置で一の隅棟と他の隅棟は終了する。
【0053】
第5に、2つの隅棟が交わる点と他の2つの隅棟が交わる点とを結び平棟を作成する。
【0054】
以上により、寄棟屋根における屋根伏せ図の屋根線を作成できる。また、この方法であると、図1に示すような完全な寄棟屋根に限らず、図10に示すような変形した寄棟屋根であっても屋根線を作成できる。
【0055】
(b)特定した屋根形状が切妻屋根の場合(図2参照)
特定した屋根形状が図2に示す切妻屋根において、屋根線を作成する場合について説明する。
【0056】
第1に、東西南北の枠線に関して、軒の属性と「けらば」の属性を付加する。
【0057】
第2に、相対向する軒と軒との間の屋根面に平棟を作成する。
【0058】
以上により、切妻屋根における屋根伏せ図の屋根線を作成できる。
【0059】
例えば、図6に示す建屋の2階の屋根が切妻屋根に該当する。
【0060】
(c)特定した屋根形状が片流れ屋根の場合(図3参照)
特定した屋根形状が図3に示す片流れ屋根において、屋根線を作成する場合について説明する。
【0061】
第1に、東西南北の枠線に関して、軒の属性と「けらば」の属性、又は壁際の属性を付加する。
【0062】
第2に、軒の位置が、最も傾斜が低い位置となるように流れ方向を決める。
【0063】
以上により、片流れ屋根は、屋根線がなく、流れ方向を決めるだけで屋根伏せ図を作成できる。
【0064】
例えば、図6に示す建屋の1階の庇が片流れ屋根に該当する。
【0065】
特定した屋根形状が図4に示す陸屋根であっても、勾配が0なだけで、後は片流れ屋根と同じである。この場合には、軒の位置は任意に決定できる。
【0066】
(8)ステップS8
ステップS8において、屋根面を作成する。
【0067】
制御部12は、枠線と屋根線で囲まれた複数の屋根面候補を作成する。
【0068】
制御部12は、屋根面候補の流れ方向を設定する。
【0069】
制御部12は、勾配に基づいて屋根面候補を流れ方向に傾斜させて、屋根線の実寸データを求め、枠線の実寸データと屋根線の実寸データに対応した屋根面をそれぞれ作成する。
【0070】
これにより、図13に示すように、屋根材1が割付けられていない屋根面Y1~Y8の屋根伏せ図が完成する。
【0071】
(9)ステップS9
ステップS9において、屋根材1を特定する。
【0072】
屋根材記憶部24で記憶している複数種類の屋根材1から、割付けたい屋根材1(例えば、スレート屋根)を入力部18で特定する。屋根材記憶部24から特定した屋根材1の種類、及び、屋根材1の寸法に関する情報が制御部12に入力される。
【0073】
屋根材1には、図15に示すように、2次元のpq直交座標系である個別座標系が設定されている。屋根材1の左下端部が、この個別座標系の原点(0,0)に設定され、屋根材1の右端部は(a,0)に設定され、角部を除いた左上端部は(0,b)に設定され、角部を除いた右上端部は(a,b)に設定されている。そして、屋根材1の寸法に関する情報とは、個別座標系における屋根材(真物)1の各角部の個別座標値、及び、働き幅dを含んでいる。この個別座標系は、絶対座標系と独立している。なお、屋根材1の特定は、ステップS8の後に限らず、ステップS1~S7の間に実施してもよい。
【0074】
(10)ステップS10
ステップS10において、図10に示すように屋根の隅棟がある場合には、この隅棟を棟コーナー仕様(図19)にするか、又は、棟包仕様(図21)にするかを、業者が入力部18で選択する。
【0075】
(11)ステップS11
ステップS11において、屋根材1に対応した割付け領域を屋根面に割付ける(図13図14図16参照)。
【0076】
(a)屋根面への屋根材1に対応した割付け領域の割付け規則
まず、屋根面への屋根材1に対応した割付け領域の割付け規則を説明する。
【0077】
規則1は、屋根材1が割付けられていない屋根伏せ図に屋根面Y1~Y8が複数ある場合には、最も東にある屋根面Y1から屋根面Y8へ時計回りの方向に存在する屋根面に屋根材1に対応した割付ける領域を順番に割付ける(図10図13参照)。
【0078】
規則2は、屋根面の軒側の左端部(割付け開始点P)から右に向かって右端部まで順番に長方形の割付け領域を重ならないように、かつ、隣り合わせで並べていく。この並べる作業が、割付けるという意味である。なお、「左端部(割付け開始点P)から右に向かって右端部まで」とは図13においてわかりやすく説明するための表現で、実際は、軒の一方の端部から他方の端部へという意味である。次に、次の段において軒側の左端部から右端部に向かって割付け領域を順番に割付ける。さらに次の段も同様に割付け領域を順番に割付け、このことを繰り返して屋根面の最上段まで割付け領域を割付ける(図14参照)。
【0079】
規則3は、屋根材1の横方向と屋根面の枠線とが平行になるように割付ける(図14参照)。
【0080】
規則4は、屋根材1の縦方向と屋根面の流れ方向が平行になるように下段から割付ける(図14参照)。
【0081】
規則5は、屋根面内の各位置、枠線、平棟D1、平棟D2、隅棟L、隅棟R1、隅棟R2の位置は、絶対座標系の座標値で示される(図14参照)。
【0082】
規則6は、屋根材1の割付け位置に関するものである。屋根材1の真物に関しては、屋根面Yの番号、軒からの段数(最下段は1となる)、屋根面の左端部(屋根線と交叉する部分)から数えて何番目にある割付け領域かを示す番号で設定される。例えば、屋根面Y1の3段目にあり、屋根面Y1の左端部から数えて3番目の真物の割付け領域の真物割付け領域番号は、「13-3」である。切物に関しては、屋根面Yの番号、屋根面の左側にときはL又は右側にあるときはR、軒からの段数、左端部又は右端部からから数えて何番目にある割付け領域かを示す番号で設定される。例えば、屋根面Y1の左側の2段目にあり、左端部から数えて1番目の切物の割付け領域の切物割付け領域番号は、「1L2-1」である。
【0083】
規則7は、各割付け位置における屋根材1が、真物か、又は、切物であるかの識別番号を記憶する。そして、真物と切物の処理を行う。これについては後述する。
【0084】
(b)屋根面Y1への割付け方法
制御部12は、第1に、東側の屋根面Y1の軒側に最も近い位置(1段目)の左端部(割付け開始点P)から右端部に向かって順番に割付け領域を割付ける。左端部の判断は、屋根面の左にある隅棟Lの線上に割付け領域があれば左端部とする。また、右端部の判断は、屋根面の右にある隅棟R1、隅棟R2の線上に割付け領域があれば右端部とする(図14参照)。なお、枠線の位置において一列に並べられる割付け領域の数は、枠線の横寸法の長さの実寸データfから、割付け領域の横寸法gを割った数(=f/g)で決まる。割った数(=f/g)の端数は後から説明する切物として処理される。
【0085】
制御部12は、第2に、1段目の割付けが終了すると2段目の左端部から右端部に向かって順番に割付け領域を割付ける。このときに1段目における長方形の割付け領域の割付け位置より、割付け領域の半分の寸法だけ横方向にずらし、千鳥状に割付け領域を配する(図14図16参照)。なお、他の種類の屋根材1(例えば、瓦)では、ストレート状に割付け領域を割付けてもよい。
【0086】
制御部12は、以下、同様にして屋根面Y1の最上段まで割付けを行う。この判断は、割付け領域の割付け位置が、平棟D1の位置に来たときに屋根面の最上段まで割付けたとする(図14参照)。これで図14に示す東側の屋根面Y1への屋根材1の割付けが終了する。なお、この処理のときに後から説明する真物と切物の処理(ステップS21~S42)を実行する。
【0087】
そして、次に、屋根面Y2の割付けを行い、最終的に図18に示すように全ての屋根面Y1~Y8への屋根材1の割付けを行い屋根伏せ図を完成させる。
11.ステップS11において、屋根材1を割付けた屋根伏せ図を出力する(図18参照)。
【0088】
制御部12は、図18に示す屋根材1を割付けた屋根伏せ図を表示装置14で表示する。また、制御部12は、屋根材1を割付けた屋根伏せ図を記憶部30に記憶する。
【0089】
なお、建屋の同じ階、又は、他の階にある他の屋根がある場合には、屋根毎の屋根伏せ図を同様に作成する。
【0090】
(12)ステップS12~ステップS15(すがりの均等割り)
上記のようにして屋根伏せ図が表示装置14に表示された場合に、屋根の南側にあるすがりに関して、働き幅が均等に割付けられていないときに、意匠をよくする観点や割付け作業の簡易化の観点からすがりの働き幅を均等に行いたい場合がある。そのため、本実施形態の屋根材割付け装置10では、すがりの均等割り機能を有している。この機能について、図8のフローチャートのステップS12からステップS15に基づいて説明する。
【0091】
ステップS12において、すがりに屋根材1を均等に割付けるか否かを入力部18によって選択する。均等に割付けることを選択した場合にはステップS13に進み(yの場合)、すがりに関して働き幅を均等にしなくてよい場合や、すでに働き幅が均等に割付けて表示されている場合には、この機能を実行しない選択を行いステップS15に進む(nの場合)。
【0092】
ステップS13において、すがり均等割を行うため、図17に示すように、表示装置14に表示されている屋根伏せ図において、すがりの範囲を、特定点Gを起点とした直交する第1特定線T1と第2特定線T2で特定する。
【0093】
特定点Gは、屋根伏せ図のすがりが枠線から突出し始めている屋根面Y2の軒の位置で、かつ、すがりの左端部又は右端部(図17では左端部)に付与する。
【0094】
第1特定線T1は、枠線(軒)と平行な線であり、すがりの幅方向の最上段の位置を特定するものである。
【0095】
第2特定線T2は、すがりが突出し始めている屋根面Y2の軒の位置から、すがりの軒の位置までを流れ方向に沿って特定する。
【0096】
ステップS14において、特定されたすがりの範囲に関して、働き幅dが全て同じになるように、制御部12は、真物割付け領域、切物割付け領域を設定する。この設定方法は、ステップS11で説明した屋根面Y2の割付け方法と同じである。なお、可能な限り屋根面Y2の割付け領域の働き幅と同じ働き幅で均等割付けを行うが、屋根面Y2の割付け領域の働き幅で割付けを行うと均等にならない場合には、すがりの範囲だけで均等割付けが行えるように働き幅dを設定する。
【0097】
ステップS15において、このすがりに屋根材1を割付けた場合に、切物の形状や数が変化することがあるので、ステップS11において行った屋根材1の割付けを再び実行する。そしてステップS16に進む。
【0098】
(13)ステップS16
ステップS16において、制御部12は、すがりに屋根材1の働き幅dを均等に割付けた屋根伏せ図、又は、すがり均等割を実行しなかったときの屋根伏せ図と、後から説明する切物データを表示装置14で表示し、プリンター16で印刷して出力し、記憶部30に記憶する。
【0099】
また、制御部12は、切物データを切断装置40に、インターネット回線、又は、記憶媒体を介して出力する。
【0100】
4.平棟、壁取り合い部の割付け調整機能
上記割付けにおいて、平棟の近傍の割付けについては特別な割付けを実行する。屋根の平棟には笠木を取付け金属製の棟包で覆う必要がある。このときに棟包の端部が、最上段の屋根材1と、その一段下の屋根材1との間を跨がないようにするために、最上段の屋根材1に関しては、縦寸法(流れ方向)の幅が、150mm~250mm程度の寸法(以下、「必要寸法h」という)とすることが望ましい。なお、平棟に接する最上段の屋根材1に関しては、その上に他の屋根材1が重なることはないので、働き幅が存在せず、屋根材1(切物)の縦方向の寸法が、そのまま割付け領域の縦方向の寸法となる。
【0101】
しかし、軒がある最下段から屋根材1を順番に上に割付けた場合には、最上段の屋根材1の割付け領域の縦方向の寸法に関して、この必要寸法hより小さくなる可能性がある。
【0102】
そこで、制御部12は、図27に示すように、最上段の平棟D1である屋根線に接する屋根材1(真物、切物)の割付け領域に関しては、縦方向の寸法が必要寸法hになるように設定する割付け調整機能を有している。また、制御部12は、最上段の割付け領域の縦方向の寸法が延びた分だけ、一段下の割付け領域の縦方向の寸法を小さくする。なお、屋根形状によっては、一段下の割付け領域の縦方向の寸法だけで調整するのでなく、必要に応じて一段下の割付け領域の縦方向の寸法を含めて複数段の割付け領域の縦方向の寸法を少しずつ小さくするように調整してもよい。
【0103】
また、図29に示すように、最上段の平棟D1以外の、すなわち最上段以外の平棟D2に関しても、棟包を施す必要があるため、平棟D2と接する屋根材1の割付け領域に関しても同様に必要寸法hを確保し、一段下の割付け領域の縦方向の寸法に関しては、その分小さくする。なお、屋根形状によっては、一段下の割付け領域の縦方向の寸法だけで調整するのでなく、必要に応じて一段下の割付け領域の縦方向の寸法を含めて複数段の割付け領域の縦方向の寸法を少しずつ小さくするように調整してもよい。
【0104】
また、図10の屋根では壁に接する屋根面は存在しないが、制御部12は、図6図28に示すように建屋の壁際(壁取り合い部)に屋根面が接する場合には、壁と接する最上段の屋根材1の割付け領域の縦方向の寸法に関しても同様に必要寸法hを確保する。これは、壁と接する最上段の屋根材1には雨押さえを取り付ける必要があるからである。そして、一段下の割付け領域の縦方向の寸法に関しては、その分小さくする。なお、屋根形状によっては、一段下の割付け領域の縦方向の寸法だけで調整するのでなく、必要に応じて一段下の割付け領域の縦方向の寸法を含めて複数段の割付け領域の縦方向の寸法を少しずつ小さくするように調整してもよい。なお、図27乃至図29に基づいて説明した際の小さくするとは、割付け領域の縦方向の寸法を全て均等になるように割付けた寸法、又は所定の寸法に対して調整することを言う。
【0105】
5.真物と切物の処理
次に、屋根材1の割付けにおける真物と切物の処理について、図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0106】
ステップS21において、上記で屋根面Y1に割付けた割付け領域において、屋根材1の真物がそのまま使用できる部分を「真物割付け領域」として設定し、それぞれの真物割付け領域に対して、上記の規則6で説明した真物割付け領域番号を付与する。また、各真物割付け領域に割付けられた真物にも真物割付け領域番号を付与する。例えば、図16においてハッチング線によって塗りつぶされた割付け領域が真物割付け領域として設定できる。このときに、各真物割付け領域の角部の座標点の位置を割付け位置として算出する。この算出は、絶対座標系における屋根面Y1中の各点の座標位置に基づいて行う。
【0107】
ステップS22において、真物割付け領域以外を「切物割付け領域」として設定し、それぞれの切物割付け領域に対して、上記の規則6で説明した切物割付け領域番号を付与する。なお、屋根面Y1の上下左右の辺を構成する屋根線の絶対座標系の座標値は、記憶され、切物割付け領域は、この屋根線が交叉している。
【0108】
ステップS23において、最初に切物の割付けを行う切物割付け領域を設定する。この設定は、割付け開始点Pからでも、任意の点からでもよい。この説明においては割付け開始点Pを切物割付け開始点として設定し、この切物割付け開始点から上段方向に順番に切物の割付けの開始を行い上段方向に全て割付けを行うと、次に割付け開始点Pの右側にある切物割付け領域に割付けを行う順番とする。なお、この順番は任意に決定してもよい。
【0109】
ステップS24において、その設定された切物割付け領域に対応する切物割付け領域番号、切物の形状と寸法(以下、まとめて「切物データ」という)を求める。切物の形状は、切物のそれぞれの角部の個別座標値で特定し、寸法は、隣接する角部の個別座標値の間の最短距離を意味している。
【0110】
ステップS25において、この切物に対応する切物識別番号と切物データを切物データ記憶部28から検索し呼び出してくる。「切物識別番号」とは、切物割付け領域番号とは別の番号で、その切物を切物割付け領域に割付ける前に、その切物を他の切物と識別するための識別子である。
【0111】
なお、最初の屋根面Y1の最初の位置においては切物データが存在しないため、このステップは省略される。しかし、その屋根面Y1における第2の切物割付け領域における切物の割付けや、次からの屋根面における割付けにおいてはこの切物データが存在しているため、その中から検索を行う。
【0112】
この検索を行う「切物割付け条件」としては、第1の条件として切物割付け領域の横寸法と縦寸法より大きい横寸法と縦寸法を有する切物であり、第2の条件として、切物割付け領域の横寸法、又は、縦寸法と切物の横寸法、又は、縦寸法の差が最小なものを検索する。
【0113】
ステップS26において、切物割付け条件の第1の条件である切物割付け領域の横寸法と縦寸法より大きい横寸法と縦寸法を有する切物がない場合には、該当する切物がないと判断し、ステップS36に進む(nの場合)。また、この第1の条件に合う切物がある場合にはステップS27に進む(yの場合)。
【0114】
ステップS27において、該当する切物をその大きさで切物割付け領域に割付けることができるか否かを判断し、その大きさのままで割付けることができる場合にはステップS28に進み(yの場合)、そうでない場合にはステップS30に進む(nの場合)。この判断は、記憶されている切物の縦寸法、横寸法と、切物割付け領域の縦寸法、横寸法を比較して行う。
【0115】
ステップS28において、その切物をそのままの大きさで割付けることができるため、設定された切物割付け領域にその切物を割付け、その切物データに切物割付け領域番号を付与し、その切物割付け領域の角部の座標点の位置を割付け位置として算出する。
【0116】
ステップS29において、割付けた切物の切物識別番号を切物データ記憶部28から削除し、ステップS41に進む。
【0117】
ステップS30において、ステップS27で切物をその大きさのままで割付けることができないと判断されたため、その切物を切物対応割付け領域に対応して切断し、ステップS31に進む。
【0118】
ステップS31において、その切断した切物を設定された切物割付け領域に割付ける。そして、その切物割付け領域に割付けた切物に切物割付け領域番号を付与し、その切物割付け領域の角部の座標点の位置を割付け位置として算出する。
【0119】
ステップS32において、割付けた切物の切物識別番号を切物データ記憶部28から削除し、ステップS33に進む。
【0120】
ステップS33において、切物を切断して残った部分が新たに切物として登録できるか否かを判断し、登録できる場合には(yの場合)、ステップS34において、残った部分に新たな切物識別番号を付与し、その切物データと共に切物データ記憶部28に記憶させステップS41に進む。また、残りの部分が切物として登録できない場合には(nの場合)、ステップS35においてその残りの部分のデータを破棄しステップS41に進む。ここで、残りの部分が切物として登録できるかの判断条件である「切物判定条件」としては、例えば、真物及び切物の傾斜面を有する部分以外は全て使用できるような状態とする。
【0121】
ステップS36において、ステップS26で該当する切物がないと判断されたため、新たに一枚の真物をその設定された切物割付け領域に対応して切断する。
【0122】
ステップS37において、その切断した切物を切物割付け領域に割付ける。この場合に新たに作成した切物に切物割付け領域番号を付与し、その切物割付け領域の角部の座標点の位置を割付け位置として算出する。
【0123】
ステップS38においては、切断した真物の残りの部分が切物として登録できるか否かを判断する。この判断方法はステップS33における切物判定条件と同様である。そして、この切物判定条件に該当するものであれば(yの場合)、ステップS39において、その残りの部分に切物識別番号を付与して切物データ記憶部28に登録する。この場合に、新たに作成した切物識別番号と切物データを登録する。そして、ステップS41に進む。一方、その切物判定条件に合致しない場合には(nの場合)、ステップS40において残りの部分は破棄し、そして、ステップS41に進む。
【0124】
ステップS41においては、一つの切物割付け領域に切物が割付けられたため、次の切物割付け領域にいくか否かを判断する。全ての切物割付け領域に切物が割付けられた場合にはステップS42に進み(yの場合)、そうでない場合にはステップS24に戻る(nの場合)。
【0125】
ステップS42において、全ての真物割付け領域及び切物割付け領域に真物と切物が割付けられたため、その屋根面の割付けを終了し、割付け領域毎に割付けられた真物識別番号とその割付け位置及び切物識別番号とその割付け位置を記憶する。
【0126】
ステップS43においては、この割付け処理を屋根伏せ図の最も東側の屋根面Y1から時計回りの方向に順番に割付けを行っているので、次の屋根面がある場合には(yの場合)、ステップS21に戻り、次の屋根面がなく全ての屋根面Y1~Y8の割付けが完了すると(nの場合)、割付け処理を終了する。このときに、ある屋根面の中で切物の取り回しが行われ、その屋根面において使用されなかった切物については次の屋根面における割付けに使用される。そして、全ての屋根面の割付けに使用した屋根材1の枚数(真物の枚数と切物に使用された真物の枚数の合計)を記憶する。
【0127】
さらに、制御部12は、建屋の同じ階、又は、他の階にある屋根についても同様に屋根材1の真物と切物の割付け処理を行い、各屋根に使用している切物の取り回しを行う。
【0128】
6.切物データの算出
ステップS24における切物データを算出する方法について説明する。
【0129】
切物割付け領域では屋根線と、割付けられる屋根材1の真物が交叉するので、この交叉位置から切物のそれぞれの角部の個別座標値を求める。その方法は下記の通りである。
【0130】
第1に、図15に示すように、隣接する真物割付け領域の右下端部に、屋根材1(真物)の左下端部を合わせ、その位置を個別座標系の原点(0,0)に設定する。隣接する真物割付け領域の右下端部は、割付け時に絶対座標系の座標値が予め判明しているので、その屋根材1の個別座標系の原点(0,0)と絶対座標系の座標値との間の対応関係が決定する。
【0131】
第2に、屋根線に関しては、絶対座標系の絶対座標値が求められている。そのため、前記対応関係に基づいて、屋根線を構成する絶対座標系の絶対座標値を個別座標系の個別座標値に変換する。
【0132】
第3に、この個別座標系に変換した屋根線の個別座標値が、真物を切断して切物を制作するときの切物のそれぞれの角部の個別座標値となる。なお、切物の大きさと切物割付け領域の大きさとは、同じでなく、切物の範囲から働き幅dを差し引いた領域(図15のハッチング線で示された範囲)が、切物割付け領域となる。
【0133】
上記のようにして切物データを算出するのであるが、屋根線が隅棟、けらば、谷に配される切物の場合には、制御部12は、次のように切物データを求める。
【0134】
(1)隅棟に配される切物
隅棟に配される切物に関して図19図22を参照して説明する。隅棟については、棟コーナー仕様と棟包仕様とがある。そのため、ステップS10において、隅棟の仕様を決定している。なお、本実施形態における棟コーナー仕様とは、差し棟を用いる仕様だけでなく、切物同士が接触するよう突き合わせ、この突き合わせ部をそのまま見せる仕様も含まれる。
【0135】
棟コーナー仕様を選択した場合には、図19に示すように、真物を斜めに切断した切物をそのまま隅棟に配するものであるため、制御部12は、この切物の形状と寸法を、真物と隅棟が交叉している線の個別座標値から求める。
【0136】
そして、制御部12は、求めた切物の各角部の個別座標値を、切物割付け領域番号と共に切物データとして切物データ記憶部28に記憶する。また、制御部12は、切物の各角部の個別座標値を切物の形状と寸法に変換して、切物割付け領域番号と共に図20に示すような出力画面に出力する。図20に示す出力画面において、上段画面には、その切物が割付けられる切物割付け領域番号が記載され、下部画面には、その切物割付け領域番号に対応する切物の形状と寸法が表示される。なお、図20の画面は例示であって、1つの真物から2つの切物が切り取られる。
【0137】
棟包仕様を選択した場合には、棟コーナー仕様のように真物を斜めに切断して切物を形成するだけでなく、さらに切物の下端の角部を切落として隅切りを行う必要がある。制御部12が、隅切りを行うときは、切物と隅棟が接する線の下端の角部の個別座標値を基準点にして切り落とし、切り落とした切物の下端の個別座標値を求める。隅切りの形状と寸法を決める座標値は、基準点を基準にして予め設定しておく。
【0138】
そして、制御部12は、隅切りした切物の各角部の個別座標値を、切物割付け領域番号と共に切物データとして切物データ記憶部28に記憶する。また、制御部12は、切物の各角部の個別座標値を切物の形状と寸法に変換して、切物割付け領域番号と共に図22に示すような出力画面に出力する。図22に示す出力画面において、上部画面には、切物割付け領域番号、下部画面には、各切物の形状と寸法を表示する。なお、図22の画面は例示であって、1つの真物から2つの切物が切り取られる。
【0139】
(2)けらばに配される切物
次に、けらばに関して図2図23図24を参照して説明する。図10の屋根には「けらば」は存在しないが、図2のように「けらば」が存在する場合がある。
【0140】
このときには、図23に示すように、まず、制御部12は、真物とけらばが交叉する線の個別座標値から切物の形状と寸法を求める。
【0141】
次に、図23に示すように、けらばに配される場合には切物に肩を設ける必要があるため、切物の上端の角部を切り落とす。制御部12が切り落としを設けるときは、切物とけらばが接する線の上端の角部の個別座標値を基準点にして切り落とし、切り落とした切物の上端の個別座標値を求める。その切り落としの形状と寸法を決める座標値は、基準点を基準にして予め設定しておく。
【0142】
そして、制御部12は、切落としを設けた切物の各角部の個別座標値を、切物割付け領域番号と共に切物データとして切物データ記憶部28に記憶する。また、制御部12は、切物の各角部の個別座標値を切物の形状と寸法に変換して、切物割付け領域番号と共に図24に示すような出力画面に出力する。図24に示す出力画面において、上部画面には、切物割付け領域番号、下部画面に切落としを行った切物の形状と寸法を表示する。なお、図24の画面は例示であって、1つの真物から2つの切物が切り取られる。
【0143】
(3)谷に配される切物
次に、谷に配される切物に関して図25図26を参照して説明する。
【0144】
図25に示すように、まず、制御部12は、真物と谷が交叉する線の個別座標値から切物の形状と寸法を求める。
【0145】
次に、図25に示すように、谷と接する切物には肩を設ける必要があるため、切物の上端の角部を切り落とす。制御部12が肩を設けるときは、切物と谷が接する線の上端の角部の個別座標値を基準点にして切り落とし、切り落とした切物の上端の個別座標値を求める。その切り落としの形状と寸法を決める座標値は、基準点を基準にして予め設定しておく。
【0146】
そして、制御部12は、肩を形成した切物の各角部の個別座標値を、切物割付け領域番号と共に切物データとして切物データ記憶部28に記憶する。また、制御部12は、切物の各角部の個別座標値を切物の形状と寸法に変換して、切物割付け領域番号と共に図26に示すような出力画面に出力する。図26に示す出力画面において、上部画面には、切物割付け領域番号、下部画面には、切物の形状と寸法を表示する。なお、図26の画面は例示であって、1つの真物から1つの切物が切り取られる。
【0147】
7.廃材情報の算出
制御部12は、廃材情報算出手段であり、屋根に使用される屋根材1から排出される廃材情報を求める。その求める方法について説明する。
【0148】
まず、全ての屋根面に割付けられたそれぞれの切物データ(切物の形状と寸法)からそれぞれの切物の面積を求める。
【0149】
次に、全ての切物の面積を合計して、切物合計面積を求める。
【0150】
次に、全ての切物を作成するために用いられた真物の真物合計面積を求める。真物に関しては縦寸法と横寸法が予め判明しているため、その寸法から1個の真物の面積を求め、使用された真物の数を積算して真物合計面積を求める。
【0151】
次に、真物合計面積から切物合計面積を差し引いて廃材面積を求める。
【0152】
また、屋根材1の単位面積当たりの単位重量を求めるか、予め記憶させておく。
【0153】
次に、切物合計面積に単位重量を積算して切物合計重量を求める。
【0154】
次に、廃材面積に単位重量を積算して廃材合計重量を求める。
【0155】
次に、切物データを出力する切断装置40が、それぞれの切物を切断する回数を求める。通常、切物の辺の内、真物の辺を除く辺の数が切断回数となる。
【0156】
次に、それぞれの切物の切断回数を全て合計して、切断総合計を求める。
【0157】
上記のようにして制御部12が求めた切物合計面積、廃材面積、切物合計重量、廃材合計重量、切断合計回数を廃材情報として表示装置14に表示すると共に、プリンター16に印刷し、記憶部30に記憶する。
【0158】
これにより、この屋根において使用される屋根材1から出る廃材情報を、業者が得ることができる。
【0159】
8.切断装置40への出力情報
切断装置40に出力する切物データとしては、それぞれの切物の形状、寸法、切物割付け領域番号を出力する。切断装置40は、切物データに基づいて、真物を切断し、切断した切物に切物割付け領域番号を印刷する。
【0160】
切断装置40が、切物に切物割付け領域番号を印刷する場合には、切物の裏面に印刷する場合にはどの位置でも印刷できる。しかし、切物の表面に印刷する場合には、その切物の上段に異なる切物が被さって隠れる部分に印刷する。このときには、切物の働き幅dが予め判明しているため、その働き幅dの範囲外の部分(露出する部分以外の部分)に印刷するように、印刷可能範囲を構成する個別座標値を制御部12は、出力する。
【0161】
9.効果
本実施形態によれば、屋根面から突出したすがりについて、屋根材1を均等に割付けることができ、外観が綺麗になる。
【0162】
また、隅棟において、棟コーナー仕様と棟包仕様とを選択するだけで、それに対応した切物データを出力できる。
【0163】
また、けらば、谷に関して、自動的に肩を切落とした切物データを出力できる。
【0164】
また、平棟、壁取り合い部と接する屋根材1に関しては、棟包や雨押さえを設置できるようにするために、必要寸法hを確保できる。
【0165】
また、切物データから、廃材情報を求めることができる。
【実施形態2】
【0166】
次に。実施形態2の屋根材割付け装置10について図30を参照して説明する。
【0167】
実施形態1では、すがりに関して、第1特定線T1と第2特定線T2で特定した範囲に関して、流れ方向の働き幅dが均等に割付けられるようにした。
【0168】
これに対し本実施形態では、図30に示すように、屋根面の本体から割付けられた割付け領域と同じ働き幅dで割付け領域を割付け、最も軒に近い最下段の割付け領域のみ、上記働き幅dより短くなるように割付け領域を割付ける。
【0169】
本実施形態であっても、屋根面から突出したすがりについて、屋根材1を屋根面と同じ働き幅dで割付けることができ、外観が綺麗になる。
【変更例】
【0170】
上記実施形態の屋根以外に、寄棟屋根、切妻屋根、片流れ屋根、陸屋根、方形屋根、入母屋屋根、半切妻屋根、差しかけ屋根、こし屋根、バタフライ型屋根、しころ屋根、のこぎり屋根でも、すがりがあれば、すがりの均等割付けなどを適応することができる。
【0171】
また、すがりに限らず屋根面において、第1特定線T1と第2特定線T2で特定された範囲で均等割付けなどを適応することができる。
【0172】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0173】
10・・・屋根材割付け装置、12・・・制御部、14・・・表示装置、16・・・プリンター、18・・・入力部、20・・・平面図入力部、22・・・屋根形状記憶部、24・・・屋根材記憶部、26・・・真物データ記憶部、28・・・切物データ記憶部、30・・・記憶部、40・・・切断装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30