(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109011
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230731BHJP
C04B 35/468 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
C04B35/468
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010367
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂田 涼介
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】酸素欠陥の移動を抑制し、コアの体積割合を保つことで、静電容量の低下を招くことなく信頼性を高めることが可能な誘電体セラミック、およびそれを用いた積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】誘電体セラミックは、BaTiO
3系の誘電体セラミック粒子6を主相粒子とする焼結体である。誘電体セラミック粒子6は、表層部のシェル部11と、シェル部11より内側のコア部12とを備える。シェル部11にSiおよび希土類元素が含まれている。Siおよび希土類元素の濃度は、シェル部11の厚さ方向中央よりシェル部11とコア部12との界面に向かって増加している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiO3系の誘電体セラミック粒子を主相粒子とする焼結体からなる誘電体セラミックであって、
前記誘電体セラミック粒子は、表層部のシェル部と、該シェル部より内側のコア部とを備え、
前記シェル部にSiおよび希土類元素が含まれ、該Siおよび希土類元素の濃度が、前記シェル部の厚さ方向中央から前記シェル部と前記コア部との界面に向けて増加している、誘電体セラミック。
【請求項2】
前記Siおよび希土類元素の濃度が、前記シェル部の厚さ方向中央から前記誘電体セラミック粒子の粒界に向かって増加している、請求項1に記載の誘電体セラミック。
【請求項3】
前記シェル部と前記コア部との界面において、前記希土類元素の濃度が0.3~1.3atom%であり、前記Siの濃度が0.3~0.8atom%である請求項1または2に記載の誘電体セラミック。
【請求項4】
前記シェル部と前記コア部との界面に、前記Siおよび前記希土類元素が混在する界面層を有し、前記シェル部の外周に、前記Siおよび前記希土類元素が混在する粒界層を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載の誘電体セラミック。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の誘電体セラミックからなる誘電体層と、
金属材料からなる内部電極層と、
前記内部電極層に導通する外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘電体セラミックおよびそれを用いて作製された積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品であるコンデンサに小型高性能化の積層セラミックコンデンサが多用されている。従来、この種のコンデンサにおいて、信頼性を高めるために、誘電体層の形成材料である誘電体セラミック中に希土類元素を添加する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、誘電体セラミック粒子中に希土類元素を所定の濃度分布となるように添加することで、比誘電率が高く、信頼性が高い誘電体磁器組成物を作製する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、BaTiO3系の誘電体セラミック粒子の表層シェル部に、希土類元素を含む成分とMg,Mn,Ni等を含む成分との濃度分布を有する誘電体セラミックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-193072号公報
【特許文献2】国際公開第2011/125543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2の従来技術の誘電体セラミックでは、希土類元素の添加により寿命等の信頼性は向上するが、コアの体積割合が減少し、静電容量が低下するという課題がある。
【0007】
したがって、コアの体積割合を下げることなく誘電体セラミック粒子中における酸素欠陥の移動を抑制することで、静電容量の低下を招くことなく、信頼性を高めることが可能な誘電体セラミック、およびそれを用いて作製した積層セラミックコンデンサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の誘電体セラミックは、BaTiO3系の誘電体セラミック粒子を主相粒子とする焼結体である。前記誘電体セラミック粒子は、表層部のシェル部と、該シェル部より内側のコア部とを備える。前記シェル部には、Siおよび希土類元素が含まれている。該Siおよび希土類元素の濃度は、前記シェル部の厚さ方向中央から前記シェル部と前記コア部との界面に向かって増加している。
【発明の効果】
【0009】
本開示の誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサによれば、誘電体セラミック粒子のシェル部とコア部との界面にSiおよび希土類元素の高濃度層が存在するので、該高濃度層によってコア部からシェル部への酸素欠陥の移動を抑制し、静電容量の低下を招くことなく、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態の一例である積層セラミックコンデンサの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示される積層セラミックコンデンサを切断面線II-IIから見た断面図である。
【
図3】
図2の積層体の一部を拡大して示す断面の模式図である。
【
図4】誘電体セラミック粒子の構成を示す模式図である。
【
図5】誘電体セラミック粒子のシェル部におけるSi,Dyの濃度分布を示すグラフである。
【
図6】Si,Dy高濃度層によって酸素欠陥の移動を抑制する作用を示す模式図である。
【
図7】誘電体セラミック粒子の作製方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示の実施形態は、以下に記述する特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される総括的な概念の精神または範囲に沿ったものであれば、様々な態様を含むものとなる。
【0012】
図1は、本開示の実施形態の一例である積層セラミックコンデンサの外観を示す斜視図である。
図2は、
図1の切断面線II-IIから見た断面図である。
図1および
図2に示すように、本開示の実施形態の一例として示す積層セラミックコンデンサ100は、積層体1と、その表面に露出する外部電極3とを備えている。
【0013】
積層体1は、誘電体層5と内部電極層7とを有しており、誘電体層5と内部電極層7とが交互に複数層積層されている。本実施形態の積層体1は、例えば、直方体形状であって、誘電体層5と内部電極層7とは、積層方向から見た平面視において、いずれも矩形状である。ただし、積層体1の形状は、特に限定されず、立方体形状、円柱形状、楕円柱形状、多角柱形状等であってもよい。それに応じ、誘電体層5および内部電極層7を平面視で多様な形状に変形させることも可能である。
【0014】
内部電極層7は、金属等の導電材料で構成されている。金属材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)などを用いることができる。また、これらの金属材料を含む合金を用いることも可能である。外部電極3は、内部電極層7と電気的に導通する金属等の導電性材料で形成することができる。
【0015】
内部電極層7は、一辺が積層体1の側面に露出しており、外部電極3が積層体1の側面を覆うことによって内部電極層7と外部電極3とが電気的に接続されている。
図2では、誘電体層5と内部電極層7との積層数を数層に簡略して例示しているが、誘電体層5および内部電極層7の積層数は、特に限定されず、数百層に及ぶ場合もある。
【0016】
図3は、誘電体層5および内部電極層7を含む積層体1の一部を拡大して示す断面の模式図である。誘電体層5は誘電体セラミックからなる。本実施形態の誘電体セラミックは、BaTiO
3(チタン酸バリウム)系の誘電体セラミック粒子6を主相粒子とする焼結体からなる。
【0017】
誘電体セラミック粒子6は、チタン酸塩を主成分とする結晶粒子であって、その平均粒径は、例えば、0.1~0.5μm程度である。なお、主成分とは、誘電体セラミック粒子6中に最も多く含まれている成分のことである。また、チタン酸塩を主成分とするとは、誘電体セラミック粒子6中にチタン酸塩の含有量が他の成分よりも多く含まれている状態のことである。
【0018】
チタン酸塩としては、例えば、チタン酸バリウムのほか、チタン酸マグネシウムやチタン酸ランタンなどを使用することができ、これら複数種のチタン酸塩を混合して用いることも可能である。誘電率が高いチタン酸バリウムを用いることによって、積層セラミックコンデンサ100の静電容量を高めることができる。
【0019】
図4は、誘電体セラミック粒子6の構成を示す模式図である。誘電体セラミック粒子6は、表層部であるシェル部11と、シェル部11より内側のコア部12とから構成されている。そして、シェル部11の外周には、誘電体セラミック粒子6の粒界を画定する粒界層14が形成され、シェル部11とコア部12との間には、コアシェル界面を含む界面層13が形成されている。
【0020】
シェル部11およびコア部12は、チタン酸バリウム(BT)を主成分とする。シェル部11のBT中には、シリコン(Si)と希土類元素(Dy)とが添加されている。希土類元素としては、Dy(ジスプロシウム)のほか、Ho(ホルミウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Y(イットリウム)などを使用できる。
【0021】
図5は、シェル部11におけるSiおよびDyの濃度分布を示す。本実施形態では、SiおよびDyの濃度が、それぞれ、シェル部11の厚さ方向中央(
図5に一点鎖線で示す)で最も低く、そこから誘電体セラミック粒子6の粒界およびコアシェル界面に向かって増加している。なお、図示例では、SiおよびDyのそれぞれの濃度分布が折れ曲がった直線に沿って連続的に変化しているが、滑らかな曲線に沿って変化してもよく、階段状または段階的に変化してもよい。
【0022】
そして、SiおよびDyは、粒界層14と界面層13に固溶状態で混在し、粒界層14および界面層13にそれぞれシェル部11を強化する障壁14a,13a(
図6参照)を形成する。ここで、界面層13におけるSiおよびDyのそれぞれの濃度は、Siが0.3~0.8atom%の範囲であるのが好ましく、Dyが0.3~1.3atom%の範囲であるのが好ましい。
【0023】
SiおよびDyのそれぞれの濃度が上記範囲未満になると、界面層13の障壁13aの強度が不足し、上記範囲を超過すると、静電容量が低下する。本実施形態において、界面層13の強度は、酸素空孔の移動のしにくさを表す。障壁13aによって酸素空孔の移動が抑制される。添加物の濃度が低く、界面層13の強度が低いと、酸素空孔が容易に移動することができ、信頼性の低下につながることになる。
【0024】
図6は、粒界層14および界面層13に形成された障壁14a,13aの作用を示す模式図である。一般に、誘電体セラミック粒子では、粒子間で酸素欠陥が移動することによって絶縁劣化・破壊が起きやすくなると考えられる。したがって、誘電体セラミック粒子の信頼性を高めるために、粒子間における酸素欠陥の移動を抑制することが重要な課題とされている。
【0025】
本実施形態の誘電体セラミック粒子6では、
図6(A)に示すように、粒界層14および界面層13にSiおよびDyが高濃度に分布していることによって、シェル部11の内外周に障壁13a,14aが二重に形成されている。そして、これらの障壁13a,14aがコア部12に生じた酸素欠陥Voの移動を抑制し、シェル部11を強化している。
【0026】
とりわけシェル部11では、DyおよびSiのそれぞれの濃度がシェル部11の厚さ方向中央から界面層13に向かって増加するように分布しているため、コアシェル界面にBTおよびSiの固溶状態が実現し、誘電体セラミック粒子6に内部応力が発生し、それによってBT粒子のサイズ効果と同様の機能が得られる。
【0027】
しかも、コアシェル界面でBT粒子の誘電率が増加するので、誘電体セラミック粒子6が直流電圧のバイアスに対して高い実効誘電率を示す。特に、コアシェル界面である界面層13のSi濃度が0.3~0.8atom%の範囲にあると、コア部11に対する応力が十分に働き、誘電率も増加する。
【0028】
したがって、本実施形態の誘電体セラミックによれば、静電容量の低下を招くことなく、誘電体セラミック粒子6の信頼性を高めることができる。こうした作用効果は、希土類元素としてHo,Y,Gd,Tb等を用いた場合も同様に得られる。
【0029】
なお、
図6(B)は、本実施形態の参考例である誘電体セラミック粒子60を示している。参考例の誘電体セラミック粒子60では、粒界層14のみがSi,Dyの高濃度分布層となっている。このため、障壁14aがシェル部11の外周のみに形成され、シェル部11における酸素欠陥Voの移動を抑制する機能が不十分になっている。
【0030】
次に、本開示の誘電体セラミック粒子6を作製する方法と、誘電体セラミック粒子6を用いて積層セラミックコンデンサ100を作製する方法について説明する。
【0031】
図7は、誘電体セラミック粒子6の作製方法を示す模式図である。本開示の作製方法は、誘電体セラミック粒子6のコア部12を形成する工程(1)と、誘電体セラミック粒子6のシェル部11を形成する工程(2)とを備えている。
【0032】
工程(1)では、まず、平均粒径が180nm程度のBT粉末にSiO2を添加し、1000℃で1次仮焼する。次いで、1次仮焼後の焼粉を解砕し、解砕された焼粉にDy粉末を添加し、約1000℃で2次仮焼する。2次仮焼後の焼粉を再び解砕することで、仮焼粉16が形成される。
【0033】
工程(1)で作製した仮焼粉16は、誘電体セラミック粒子6の完成後にコア部12になる部分であって、仮焼粉16の外周に固溶したSi,Dyの高濃度層により、コアシェル界面部を含む界面層13が形成される。なお、工程(1)において、BTにSi,Dyを同時に添加すると、Dyの固溶が先に進むので、Siを先に添加し、BT粒子に膜を作り、Dyの早期固溶を抑えるのが望ましい。
【0034】
工程(2)では、まず、工程(1)の仮焼粉16に微小の微粉末として粒径70nmのBTとSi,Dyとを外添する。このとき、BTは、工程(1)で用いた粉末より微小の微粉末を使用するのが好ましい。こうすれば、後述の焼成時に、コア部12へのSi,Dyの固溶を抑えつつ、シェル部11の外周に粒界層14を効率よく形成し、内外二重の障壁13a,14aを備えた誘電体セラミック粒子6を作製できる。工程(2)では、仮焼粉16にBT,Si,Dyのいずれか1種だけを添加してもよい。また、工程(2)では、仮焼粉16にBT,Si,Dyの全種類を添加してもよい。このようにすることで、微構造を確実に有することができる。工程(2)では、仮焼粉16に添加したBT,Si,Dyは、固溶せずに存在している。
【0035】
次に、BTとSi,Dyとが添加された仮焼粉の混合物と、ポリビニルブチラール樹脂などの有機樹脂やトルエンおよびアルコールなどの溶媒とを混合し、ボールミルなどを用いてセラミックスラリを調製する。
【0036】
次いで、セラミックスラリをドクターブレード法やダイコータ法などのシート成形法を用いて基材上にセラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートの厚みは、誘電体層5の高容量化のための薄層化、高絶縁性を維持するという点で、0.8~1.5μm程度が好ましい。
【0037】
次に、得られたセラミックグリーンシートの表面上に導体ペーストを矩形状に印刷して内部電極層7を形成する。内部電極パターンとなる導体ペーストは、Niまたはその合金粉末を主成分金属とし、これに共材としてのセラミック粉末(BT粉末またはセラミックグリーンシートに用いたセラミック粉末)を混合し、有機バインダー、溶剤および分散剤を添加して調製する。
【0038】
続いて、誘電体層5と内部電極層7とを所要枚数積層し、圧着後に切断し、積層体1の前駆体を形成する。その後、300~500℃で脱バインダー処理を実施し、1150~1200℃程度のN2-H2雰囲気中で焼成して、コンデンサチップを得る。この焼成は、酸素分圧Po2が1×10-9~1×10-11の弱還元性雰囲気中で行うのがよい。BTとSi,Dyとが添加された仮焼粉の混合物は、このような焼成工程を経てシェル部11を有する誘電体セラミック粒子6の形態になる。このような誘電体セラミック粒子6では、コアシェル界面で希土類が高濃度となり、酸素欠陥(空孔)の移動が抑制される。
【0039】
工程(2)の焼成後には、得られたコンデンサチップを、弱酸化性の雰囲気中で酸化処理する。その後、酸化処理されたコンデンサチップに銅ペーストを塗布、焼き付け後、Niめっき、Snメッキを施して外部電極3を形成し、積層セラミックコンデンサを完成する。
【0040】
下記表1は、積層セラミックコンデンサの性能評価結果を示す。ここでは、実施例1~7について誘電体セラミック粒子6の濃度分析を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy;TEM)を用いたエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy;EDS)で行った。コアシェル界面は、TEMの面視野像の陰影、およびEDSマッピング像で特定した。静電容量は、1kHz,1Vの条件で測定した。誘電体セラミック粒子6の信頼性を示す平均故障時間は、実施例1~7の試料をそれぞれ20個用意し、各試料について、温度150℃、電圧DC25Vの条件で高温加速寿命試験を行った結果である。故障確率50%のところを平均故障時間とした。
【0041】
本実施形態において、故障確率とは、ワイブル分布を仮定したモデルによって計算する場合、累積故障率λ(t)=f(t)/R(t)によって求められる。同式において、f(t)はワイブル分布の確率密度(関数)、R(t)は信頼度(故障しない確率)である。累計故障率50%となるときの故障時間が平均故障時間である。
【0042】
実施例1は、従来品を示し、BT粉末中にDy2O3粉末およびSiO2粉末を添加して誘電体セラミック粒子を作製し、この誘電体セラミック粒子を用いて誘電体シートを作製した。ここでは、一度の焼成で焼結を進めた結果、添加物の固溶が進行し、コア部とシェル部との間に明確な界面ができず、コアシェル界面でのDyおよびSiの濃度の上昇が見られず、静電容量および信頼性の点で不十分であった。
【0043】
実施例2~7は、本開示の方法により作成された試料の評価結果を示す。そのうち実施例2では、コアシェル界面のDyおよびSi濃度が低いため、静電容量が0.85と1μF未満であり、平均故障時間も14時間となり、静電容量および信頼性が不足していた。
【0044】
実施例3~6では、いずれも静電容量が1μFを満たし、平均故障時間も15時間以上となり、十分に高い静電容量と信頼性を有する評価結果を得た。
【0045】
実施例7では、コアシェル界面の濃度が高くなりすぎた結果、信頼性は高いが、静電容量が不足していた。
【0046】
【表1】
単位:atom%(全元素に対して) (※は本開示の範囲外である。)
【0047】
なお、本開示の誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサは、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、誘電体セラミック粒子に使用する素材の材質を任意に変更したり、積層セラミックコンデンサの作製手順を適宜に変更したりするなど、本開示の要旨を逸脱することなく、多様な実施形態で具体化することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 積層体
3 外部電極
5 誘電体層
6 誘電体セラミック粒子
7 内部電極層
11 シェル部
12 コア部
13 界面層
14 粒界層
13a,14a 障壁
16 仮焼粉
100 積層セラミックコンデンサ
Vo 酸素欠陥