IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社デンソープレステックの特許一覧

<>
  • 特開-接合構造及び接合方法 図1
  • 特開-接合構造及び接合方法 図2
  • 特開-接合構造及び接合方法 図3
  • 特開-接合構造及び接合方法 図4
  • 特開-接合構造及び接合方法 図5
  • 特開-接合構造及び接合方法 図6
  • 特開-接合構造及び接合方法 図7
  • 特開-接合構造及び接合方法 図8
  • 特開-接合構造及び接合方法 図9
  • 特開-接合構造及び接合方法 図10
  • 特開-接合構造及び接合方法 図11
  • 特開-接合構造及び接合方法 図12
  • 特開-接合構造及び接合方法 図13
  • 特開-接合構造及び接合方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109028
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】接合構造及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20230731BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B21D39/03 Z
F16B5/04 C
F16B5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010394
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520457971
【氏名又は名称】株式会社デンソープレステック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 剛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 文男
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JD05
3J001JD07
(57)【要約】
【課題】第1板状部及び第2板状部を接合する場合に、第2板状部に板厚方向への応力が作用することを抑制する。
【解決手段】接合構造30は、第1板状部32及び第2板状部34を接合する接合構造であって、第1板状部32から突出する第1突出部36と、第1突出部36の先端部から突出する第2突出部38と、第2板状部34に形成された貫通孔40とを有する。第1突出部36の先端部は、第2板状部34に当接され、第2突出部38は、貫通孔40に挿入され、第2突出部38の先端部は、貫通孔40から突出し、第2突出部38の先端部には、第2突出部38の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されたかしめ部44が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1板状部及び第2板状部を接合する接合構造であって、
前記第1板状部から突出する第1突出部と、
前記第1突出部の先端部から突出する第2突出部と、
前記第2板状部に形成された貫通孔と、
を有し、
前記第1突出部の先端部は、前記第2板状部に当接され、
前記第2突出部は、前記貫通孔に挿入され、
前記第2突出部の先端部は、前記貫通孔から突出し、
前記第2突出部の先端部には、前記第2突出部の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されたかしめ部が形成されている、
接合構造。
【請求項2】
前記第1突出部及び前記かしめ部は、前記第2板状部を挟持している、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記第1突出部及び前記第2突出部は、中空状に形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
第1板状部及び第2板状部を接合する接合方法であって、
前記第1板状部から突出する第1突出部の先端部を、前記第2板状部に当接し、
前記第1突出部の先端部から突出する第2突出部を、前記第2板状部に形成された貫通孔に挿入し、
前記貫通孔から突出する前記第2突出部の先端部に、前記第2突出部の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されたかしめ部を形成する、
ことを含む接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、第1板状部及び第2板状部を接合する接合構造としては、次の技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。すなわち、公知の技術において、第1板状部は、第1板状部から突出する突出部を有しており、第2板状部は、貫通孔を有している。突出部は、貫通孔に挿入され、突出部の先端部には、突出部の突出方向に圧縮されたかしめ部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-10675号公報
【特許文献2】特開2019-187140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の公知の技術において、例えば、第2板状部が回路基板である場合、突出部の先端部が突出方向に圧縮されることにより、回路基板に板厚方向への応力が作用する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、第1板状部及び第2板状部を接合する場合に、第2板状部に板厚方向への応力が作用することを抑制することができる接合構造及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る接合構造は、第1板状部及び第2板状部を接合する接合構造であって、前記第1板状部から突出する第1突出部と、前記第1突出部の先端部から突出する第2突出部と、前記第2板状部に形成された貫通孔とを有し、前記第1突出部の先端部は、前記第2板状部に当接され、前記第2突出部は、前記貫通孔に挿入され、前記第2突出部の先端部は、前記貫通孔から突出し、前記第2突出部の先端部には、前記第2突出部の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されたかしめ部が形成されている。
【0007】
この接合構造によれば、第2突出部の先端部に形成されたかしめ部は、第2突出部の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されることにより形成される。したがって、第1板状部及び第2板状部を接合する場合に、第2板状部に応力が作用することを抑制することができる。
【0008】
本発明の第2態様に係る接合方法は、第1板状部及び第2板状部を接合する接合方法であって、前記第1板状部から突出する第1突出部の先端部を、前記第2板状部に当接し、前記第1突出部の先端部から突出する第2突出部を、前記第2板状部に形成された貫通孔に挿入し、前記貫通孔から突出する前記第2突出部の先端部に、前記第2突出部の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されたかしめ部を形成することを含む。
【0009】
この接合方法によれば、第2突出部の先端部に形成されたかしめ部は、第2突出部の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されることにより形成される。したがって、第1板状部及び第2板状部を接合する場合に、第2板状部に応力が作用することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】モータの一例を示す縦断面図である。
図2】接合構造の一例を示す縦断面図である。
図3】接合方法の一例を示す縦断面図である。
図4】打ち出し装置の一例を示す縦断面図である。
図5】打ち出し装置の第1動作状態の一例を示す縦断面図である。
図6】打ち出し装置の第2動作状態の一例を示す縦断面図である。
図7】打ち出し装置の第3動作状態の一例を示す縦断面図である。
図8】打ち出し装置の第4動作状態の一例を示す縦断面図である。
図9】打ち出し装置の第5動作状態の一例を示す縦断面図である。
図10】打ち出し装置の第6動作状態の一例を示す縦断面図である。
図11】打ち出し装置の第7動作状態の一例を示す縦断面図である。
図12】打ち出し装置の第8動作状態の一例を示す縦断面図である。
図13】打ち出し装置の第9動作状態の一例を示す縦断面図である。
図14】打ち出し装置の第10動作状態の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
図1には、一例として、本発明の一実施形態に係る接合構造30が適用されたモータ10が示されている。モータ10は、モータシャフト12と、ロータ14と、ステータ16と、モータホルダ18と、センターピース20と、回路基板22と、回路ケース24と、ヒートシンク26とを備えている。モータ10は、接合構造30以外は特許文献2に開示されたモータと同様の構成である。接合構造30は、一例として、ヒートシンク26及び回路基板22の接合に用いられている。一例として、ヒートシンク26は、アルミ合金等の金属製であり、回路基板22は、樹脂製のプリント基板である。
【0013】
図2には、接合構造30の一例が示されている。接合構造30は、第1板状部32及び第2板状部34を接合する構造である。第1板状部32は、ヒートシンク26の一部であり、第2板状部34は、回路基板22の一部である。なお、第1板状部32は、ヒートシンク26の一部であるが、ヒートシンク26以外の部材の一部でもよい。また、第2板状部34は、回路基板22の一部であるが、回路基板22以外の部材の一部でもよい。また、接合構造30は、モータ10以外の装置又は部材等に適用されてもよい。
【0014】
接合構造30は、第1板状部32から突出する第1突出部36と、第1突出部36の先端部から突出する第2突出部38と、第2板状部34に形成された貫通孔40とを有する。第1突出部36の突出方向及び第2突出部38の突出方向は、いずれも第1板状部32の板厚方向と一致する方向である。第1突出部36及び第2突出部38は、後述するように打ち出し加工によって形成されたものであり、2段打ち出し部42を形成している。
【0015】
第1突出部36は、断面円形状に形成されている。第1突出部36は、打ち出し加工によって形成されることにより、中空状に形成されている。第2突出部38の先端部を除く部分も、断面円形状に形成されている。第1突出部36は、打ち出し加工によって形成されることにより、中空状に形成されている。つまり、第2突出部38の先端部を除く部分は、中空状に形成されている。貫通孔40は、断面円形状に形成されている。なお、第1突出部36及び第2突出部38は、例えば、切削、鍛造、鋳造又は射出成形等により、中実状に形成されてもよい。
【0016】
第1突出部36の先端部は、第2板状部34に当接されており、第2突出部38は、貫通孔40に挿入されている。第2突出部38の先端部は、貫通孔40から突出しており、第2突出部38の先端部には、かしめ部44が形成されている。
【0017】
かしめ部44は、後述するように、第2突出部38の突出方向に対する交差方向(一例として、直交方向)の両側から圧縮されることにより、かしめられている。かしめ部44は、第2突出部38の突出方向に対する交差方向の両側から圧縮されることにより長軸方向に延びた潰れ形状を有する。図2の下図に示すように、かしめ部44を横断面で見た場合に、かしめ部44の長軸方向の両端部44Aは、貫通孔40の周縁部に係止されている。
【0018】
第1突出部36及びかしめ部44(すなわち長軸方向の両端部44A)は、第2板状部34を挟持している。第1突出部36及びかしめ部44によって第2板状部34が挟持されることにより、第2板状部34は、第1板状部32に対して固定されている。なお、第1板状部32に対する第2板状部34の固定態様は、本固定でもよく、仮固定でもよい。仮固定の場合、第1板状部32と他の部材(図示省略)とによって第2板状部34が挟持されることにより、第2板状部34が第1板状部32に対して固定されてもよい。
【0019】
次に、本発明の一実施形態に係る接合方法について説明する。
【0020】
図3には、かしめ装置50が示されている。かしめ装置50は、芯金52及び一対のかしめ工具54を備える。かしめ装置50は、本発明の一実施形態に係る接合方法に用いられる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る接合方法は、第1板状部32及び第2板状部34を接合する方法である。本接合方法は、準備工程及びかしめ工程を備える。図3の左図には、準備工程が示されており、図3の右図には、かしめ工程が示されている。
【0022】
準備工程では、第1板状部32から突出する第1突出部36の先端部が、第2板状部34に当接される。また、第1突出部36の先端部から突出する第2突出部38が、貫通孔40に挿入される。この状態で、第2突出部38の先端部は、貫通孔40から突出する。第1突出部36の内側には、芯金52が挿入される。芯金52の先端部(すなわち下端部)は、第1突出部36の底部に当接され、芯金52の外周面は、第1突出部36の内周面に接触する。
【0023】
かしめ工程では、貫通孔40から突出する第2突出部38の先端部が、第2突出部38の突出方向に対する交差方向(一例として、直交方向)の両側から一対のかしめ工具54によって圧縮される。そして、第2突出部38の先端部に、一対のかしめ工具54によって圧縮されることにより、かしめ部44が形成される。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る2段打ち出し部42を製造するための打ち出し方法について説明する。
【0025】
図4には、打ち出し装置60が示されている。打ち出し装置60は、2段打ち出し部42を製造するための装置である。打ち出し装置60は、パンチ62、ダイ64、及び押え型66を備える。
【0026】
パンチ62は、本体部68と、本体部68の先端部から突出する凸部70とを有する。ダイ64は、本体部68の外径よりも内径が大きい第1凹部72と、第1凹部72の底部に形成された第2凹部74とを有する。第1凹部72及び第2凹部74は、上述の第1突出部36及び第2突出部38に対応する形状を有しており、それぞれ断面円形状に形成されている。第2凹部74の内径は、本体部68の外径よりも小さく、かつ凸部70の外径よりも大きい。押え型66には、孔部76が形成されており、孔部76には、パンチ62が収容されている。本体部68の先端部に対する凸部70の突出寸法(すなわち、高さH)は、後述する板材(図5参照)の板厚寸法(すなわち、厚さT)よりも小さい寸法に設定されている。なお、図4では、本体部68と押え型66とのクリアランスが誇張されており、実際には、本体部68と押え型66とのクリアランスは限りなく小さい。
【0027】
本体部68の先端部の周縁部68Aは、本体部68の基端部(図示省略)側、すなわち、ダイ64から遠ざかる側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。凸部70の先端部の周縁部70Aは、凸部70の基端部70B側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。凸部70の基端部70Bは、本体部68側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凹状に湾曲するテーパ面によって形成されている。テーパ面とは、R形状も含む概念である。
【0028】
第1凹部の72の開口部の周縁部72Aは、第1凹部72の底部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。第2凹部の74の開口部の周縁部74Aは、第2凹部74の底部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。以上の構成である打ち出し装置60は、本発明の一実施形態に係る打ち出し方法に用いられる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る打ち出し方法は、2段打ち出し部42を製造する方法である。図5から図14には、本打ち出し方法によって2段打ち出し部42が製造される様子が示されている。
【0030】
本打ち出し方法では、図5に示すように、ダイ64に板材80がセットされる。板材80は、例えば、2段打ち出し部42が形成される前のヒートシンク26に相当する。板材は、ダイ64と反対側から押え型66によって押え付けられる。そして、図5から図14に示すように、パンチ62がダイ64側に移動しながら、本体部68及び凸部70によって板材80が押圧される。パンチ62は、2段打ち出し部42が形成されるまでダイ64側に移動する。
【0031】
詳細は後述するが、本体部68によって板材80が押圧されることにより、図14に示すように、板材80の一部から突出する第1突出部36が形成される。板材80の一部は、第1板状部32に相当する。また、凸部70によって板材80が押圧されることにより、第1突出部36の先端部から突出する第2突出部38が形成される。図5から図14に示す板材80に付されたドットは、打ち出し加工において板材80に作用する応力の分布を示している。ドットが濃くなるほど応力が高くなることを示している。また、図5から図14において板材80の形状は、応力分布に基づいて誇張して示されている。
【0032】
図7には、本体部68が板材80を押圧し始める直前の状態が示されている。本打ち出し方法では、より詳しくは、図7に示すように、本体部68が板材80を押圧し始める直前の状態では、板材80が湾曲することによって凸部70の基端部70Bから本体部68の先端部(すなわち本体部68の下面)に亘ってパンチ62と板材との間に隙間82が形成される。このように、本体部68が板材80を押圧し始めるまでは、隙間82が形成されるように、凸部70によって板材80が押圧される。
【0033】
図10には、凸部70が第2凹部74に挿入され始める直前の状態が示されている。本打ち出し方法では、より詳しくは、図10に示すように、凸部70が第2凹部74に挿入され始める前に、本体部68の先端部と第1凹部72の底部とで板材80が圧縮される。そして、本体部68の先端部と第1凹部72の底部とで板材80が圧縮されることによって、本体部68の外周面と第1凹部72の内周面との間で板材80に作用する引張力F2が低減される。
【0034】
また、本打ち出し方法では、より詳しくは、図10から図14に示すように、本体部68の外周面と第1凹部72の内周面とによって板材80が圧縮され、かつ本体部68の先端部と第1凹部72の底部とによって板材80が圧縮された状態で、凸部70によって板材80が押圧されることにより、第2突出部38が形成される。
【0035】
次に、本発明の一実施形態の効果について説明する。
【0036】
以上詳述した通り、本発明の一実施形態に係る接合構造30によれば、図3に示すように、第2突出部38の先端部に形成されたかしめ部44は、第2突出部38の突出方向に対する交差方向(一例として、直交方向)の両側から圧縮されることにより形成される。したがって、第1板状部32及び第2板状部34を接合する場合に、第2板状部34に板厚方向への応力が作用することを抑制することができる。これにより、第2板状部34(一例として、回路基板22の一部)が変形することを抑制することができる。
【0037】
また、図2に示すように、第1突出部36及びかしめ部44は、第2板状部34を挟持しているので、第1突出部36及びかしめ部44により、第2板状部34を第1板状部32に対して固定(例えば、仮固定又は本固定)することができる。
【0038】
また、図3に示すように、第1突出部36及び第2突出部38は、中空状に形成されている。したがって、第1突出部36及び第2突出部38を打ち出し加工により形成することができる。
【0039】
また、図4に示すように、本発明の一実施形態に係る打ち出し装置60によれば、ダイ64は、本体部68の外径よりも内径が大きい第1凹部72と、第1凹部72の底部に形成され、本体部68の外径よりも内径が小さく、かつ凸部70の外径よりも内径が大きい第2凹部74とを有する。したがって、図5から図14に示すように、ダイ64に板材80をセットした状態で、パンチ62をダイ64側に移動させた場合、本体部68によって板材80が押圧されることにより、板材80の一部から突出する第1突出部36が形成され、かつ凸部70によって板材80が押圧されることにより、第1突出部36の先端部から突出する第2突出部38が形成される。すなわち、板材80の一部から突出する第1突出部36と、第1突出部36の先端部から突出する第2突出部38とを有する2段打ち出し部42を板材80に形成することができる。
【0040】
また、凸部70の基端部70Bは、本体部68側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凹状に湾曲するテーパ面によって形成されている。したがって、図7に示すように、本体部68が板材80を押圧し始める直前の状態では、テーパ面である凸部70の基端部70Bによって板材80の材料の流動が抑えられることにより、凸部70の基端部70Bから本体部68の先端部に亘ってパンチ62と板材80との間に隙間82が形成されるように板材80が湾曲する。これにより、例えば、凸部70の基端部70Bにテーパ面が形成されていない場合に比して、凸部70による押圧によって板材80に引張力F1が作用するタイミングを遅らせることができる。
【0041】
また、図10に示すように、凸部70が第2凹部74に挿入され始める前に、本体部68の先端部と第1凹部72の底部とで板材80が圧縮されることにより、本体部68の外周面と第1凹部72の内周面との間で板材80に作用する引張力F2が低減される。これにより、本体部68の先端部の周縁部68Aによる押圧によって板材80に作用する引張力F2を低減することができるので、板材80の破断を抑制することができる。
【0042】
また、図10から図14に示すように、本体部68の外周面と第1凹部72の内周面とによって板材80が圧縮され、かつ本体部68の先端部と第1凹部72の底部とによって板材80が圧縮された状態で、凸部70によって板材80が押圧されることにより、第2突出部38が形成される。したがって、第2突出部38が形成される段階では、板材80の材料が第2突出部38側に流動するので、板材80の破断を抑制しつつ中空状の第2突出部38を形成することができる。
【0043】
また、本体部68の先端部の周縁部68Aは、本体部68の基端部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。したがって、図8から図11に示すように、本体部68によって板材80が押圧されることにより、第1突出部36が形成される場合に、本体部68の先端部の周縁部68Aに沿って板材80の材料が円滑に流動するので、板材80の破断を抑制しつつ中空状の第1突出部36を形成することができる。
【0044】
また、第1凹部の72の開口部の周縁部72Aは、第1凹部72の底部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。したがって、図8から図11に示すように、本体部68によって板材80が押圧されることにより、第1突出部36が形成される場合に、第1凹部の72の開口部の周縁部72Aに沿って板材80の材料が円滑に流動するので、板材80の破断を抑制しつつ中空状の第1突出部36を形成することができる。
【0045】
また、凸部70の先端部の周縁部70Aは、凸部70の基端部70B側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。したがって、図11から図14に示すように、凸部70によって板材80が押圧されることにより、第2突出部38が形成される場合に、凸部70の先端部の周縁部70Aに沿って板材80の材料が円滑に流動するので、板材80の破断を抑制しつつ中空状の第2突出部38を形成することができる。
【0046】
また、第2凹部の74の開口部の周縁部74Aは、第2凹部74の底部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている。したがって、図11から図14に示すように、凸部70によって板材80が押圧されることにより、第2突出部38が形成される場合に、第2凹部の74の開口部の周縁部74Aに沿って板材80の材料が円滑に流動するので、板材80の破断を抑制しつつ中空状の第2突出部38を形成することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0048】
なお、上述の本発明の一実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0049】
(付記1)
パンチ及びダイを備える打ち出し装置であって、
パンチは、
本体部と、
前記本体部の先端部から突出する凸部と、
を有し、
前記ダイは、
前記本体部の外径よりも内径が大きい第1凹部と、
前記第1凹部の底部に形成され、前記本体部の外径よりも内径が小さく、かつ前記凸部の外径よりも内径が大きい第2凹部と、
を有する、
打ち出し装置。
(付記2)
前記凸部の基端部は、前記本体部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凹状に湾曲するテーパ面によって形成されている、
付記1に記載の打ち出し装置。
(付記3)
前記凸部の先端部の周縁部は、前記凸部の基端部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている、
付記1又は付記2に記載の打ち出し装置。
(付記4)
前記本体部の先端部の周縁部は、前記本体部の基端部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている、
付記1から付記3の何れか一項に記載の打ち出し装置。
(付記5)
前記第1凹部の開口部の周縁部は、前記第1凹部の底部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている、
付記1から付記4の何れか一項に記載の打ち出し装置。
(付記6)
前記第2凹部の開口部の周縁部は、前記第2凹部の底部側に向かうに従って拡径し、かつ縦断面視で凸状に湾曲するテーパ面によって形成されている、
付記1から付記5の何れか一項に記載の打ち出し装置。
(付記7)
付記1から付記6の何れか一項に記載の打ち出し装置を用いた打ち出し方法であって、
前記ダイに板材をセットし、
前記パンチを前記ダイ側に移動させながら、前記本体部及び前記凸部によって前記板材を押圧し、
前記本体部によって前記板材を押圧することにより、前記板材の一部から突出する第1突出部を形成し、
前記凸部によって前記板材を押圧することにより、前記第1突出部の先端部から突出する第2突出部を形成する、
ことを含む打ち出し方法。
(付記8)
前記本体部が前記板材を押圧し始める直前の状態では、前記板材が湾曲することによって前記凸部の基端部から前記本体部の先端部に亘って前記パンチと前記板材との間に隙間が形成されるように、前記本体部が前記板材を押圧し始めるまで、前記凸部によって前記板材を押圧する、
付記7に記載の打ち出し方法。
(付記9)
前記凸部が前記第2凹部に挿入され始める前に、前記本体部の外周面と前記第1凹部の内周面との間で前記板材に作用する引張力を、前記本体部の先端部と前記第1凹部の底部とで前記板材を圧縮することによって低減させる、
付記7又は付記8に記載の打ち出し方法。
(付記10)
前記本体部の外周面と前記第1凹部の内周面とによって前記板材を圧縮し、かつ前記本体部の先端部と前記第1凹部の底部とによって前記板材を圧縮した状態で、前記凸部によって前記板材を押圧することにより、前記第2突出部を形成する、
付記7から付記9の何れか一項に記載の打ち出し方法。
【符号の説明】
【0050】
10…モータ、12…シャフト、14…ロータ、16…ステータ、18…ホルダ、20…センターピース、22…回路基板、24…回路ケース、26…ヒートシンク、30…接合構造、32…第1板状部、34…第2板状部、36…第1突出部、38…第2突出部、40…貫通孔、42…2段打ち出し部、44…かしめ部、50…かしめ装置、52…芯金、54…かしめ工具、60…打ち出し装置、62…パンチ、64…ダイ、66…押え型、68…本体部、68A…本体部の先端部の周縁部、70…凸部、70A…凸部の先端部の周縁部、70B…凸部の基端部、72…第1凹部、72A…第1凹部の開口部の周縁部、74…第2凹部、74A…第2凹部の開口部の周縁部、76…孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14