(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109031
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】織布、織機、および織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 25/00 20060101AFI20230731BHJP
D03D 49/24 20060101ALI20230731BHJP
D03C 3/40 20060101ALI20230731BHJP
D03C 13/00 20060101ALI20230731BHJP
D03J 1/14 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
D03D25/00
D03D49/24
D03C3/40 B
D03C13/00 A
D03J1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010398
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】521487661
【氏名又は名称】佐藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】伊勢坊 健太
【テーマコード(参考)】
4L048
4L050
【Fターム(参考)】
4L048BA22
4L048CA01
4L048DA01
4L048DA24
4L048EA00
4L050AA01
4L050CA16
4L050CB93
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、従来の縫い合わせた分岐織布よりも高い強度を有する新規の分岐織布を得ることである。
【解決手段】本発明の織布1000は、中心緯糸1001と、中心緯糸1001を起点として、第3の経糸群1030と第1の経糸群1010と第1の緯糸群1110とで形成される第1の織布片110と、中心緯糸を起点として、第1の経糸群110と第2の経糸群120と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片1120と、中心緯糸を起点として、第2の経糸群1020と第3の経糸群1030と第3の緯糸群1130とで形成される第3の織布片1300とを有し、中心緯糸を中心に第1の織布片1100と第2の織布片1200と第3の織布片1300とが三又に分岐する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心緯糸と、
前記中心緯糸を起点として、第3の経糸群と第1の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第2の経糸群と第3の経糸群と第3の緯糸群とで形成される第3の織布片とを有し、
前記中心緯糸を中心に前記第1の織布片と前記第2の織布片と前記第3の織布片とが三又に分岐する織布。
【請求項2】
中心緯糸を中心にN個の織布片がN又に分岐した織布であって、
前記中心緯糸と、
前記中心緯糸を起点として、第Nの経糸群と第1の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第(N-2)の経糸群と第(N-1)の経糸群と第(N-1)の緯糸群とで形成される第(N-1)の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第(N-1)の経糸群と第Nの経糸群と第Nの緯糸群とで形成される第Nの織布片とを少なくとも有し、
Nは4以上の整数である、織布。
【請求項3】
前記第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸は、前記第1の織布片の先端から前記中心緯糸を経由して前記第2の織布片の先端へと配置され、
前記第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸は、前記第2の織布片の先端から前記中心緯糸を経由して前記第3の織布片の先端へと配置され、
前記第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸は、前記第3の織布片の先端から前記中心緯糸を経由して前記第1の織布片の先端へと配置されている、請求項1に記載の織布。
【請求項4】
前記複数の第1の経糸と前記複数の第2の経糸と前記複数の第3の経糸とは、前記中心緯糸の方向に沿って、この順に繰り返し配置されている、請求項1または3に記載の織布。
【請求項5】
中心緯糸を中心に、第1の経糸群と第3の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、前記第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、前記第2の経糸群と前記第3の経糸群と第3の緯糸群とで形成される第3の織布片とが分岐した織物を製造するための織機であって、
前記中心緯糸を配置可能な略水平な基軸と、
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群とを固定可能な第1の固定部材と、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群とを固定可能な第2の固定部材と、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群とを固定可能な第3の固定部材と、
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を形成させるための第1の綜絖部材と、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に隙間を形成させるための第2の綜絖部材と、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を形成させるための第3の綜絖部材と、
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間の隙間に挿入された前記第1の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させるための第1の筬部材と、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間の隙間に挿入された前記第2の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させるための第2の筬部材と、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間の隙間に挿入された前記第3の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させるための第3の筬部材と
を備え、
前記第1の固定部材と前記第2の固定部材と前記第3の固定部材とは、前記基軸を中心に径方向に所定距離離間するとともに、前記基軸の周方向に所定距離離間した位置にそれぞれ配置されている、織機。
【請求項6】
前記第1の綜絖部材、前記第2の綜絖部材および前記第3の綜絖部材の少なくとも1つは、一方の経糸群のみを移動させるように構成されている、請求項5に記載の織機。
【請求項7】
前記第1の固定部材、前記第2の固定部材および前記第3の固定部材の少なくとも1つは、一方の経糸群および他方の経糸群を構成するそれぞれの複数の経糸を挿入固定可能な先細のスリットを有する、請求項5または6に記載の織機。
【請求項8】
前記基軸は回転可能に構成されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の織機。
【請求項9】
前記基軸の回転位置を固定する回転防止機構をさらに備える、請求項8に記載の織機。
【請求項10】
前記中心緯糸と前記第1の固定部材との間、前記中心緯糸と前記第2の固定部材との間または前記中心緯糸と前記第3の固定位置との間には、前記第1の織布片、前記第2の織布片または前記第3の織布片を押えるための布押え部材が少なくとも1つ配置されている、請求項5~9のいずれか一項に記載の織機。
【請求項11】
前記第1の筬部材は、前記第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸を挿通可能な第1のスリットと、前記第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸を挿通可能な第2のスリットを有し、
前記第2の筬部材は、前記第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸を挿通可能な第3のスリットと、前記第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸を挿通可能な第4のスリットを有し、
前記第3の筬部材は、前記第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸を挿通可能な第5のスリットと、前記第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸を挿通可能な第6のスリットを有し、
前記第1の筬部材が備える第1のスリットと第2のスリットが配置されるパターンと、前記第2の筬部材が備える第3のスリットと第4のスリットが配置されるパターンと、前記第3の筬部材が備える第5のスリットと第6のスリットが配置されるパターンは、それぞれ異なるパターンである、請求項5~10のいずれか一項に記載の織機。
【請求項12】
織機を用いて、請求項1~4のいずれか一項に記載の織布の製造方法であって、
前記製造方法は、
前記織機の略水平な基軸に沿って前記中心緯糸を配置するステップと、
前記第1の経糸群を、前記中心緯糸を介して前記織機の第1の固定部材から前記織機の第2の固定部材に配設するステップと、
前記第2の経糸群を、前記中心緯糸を介して前記第2の固定部材から前記織機の第3の固定部材に配設するステップと、
前記第3の経糸群を、前記中心緯糸を介して前記第3の固定部材から前記第1の固定部材に配設するステップと、
前記第1の固定部材と前記中心緯糸との間において、前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第1の緯糸を挿入するとともに前記第1の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させることによって前記第1の織布片を形成するステップと、
前記第2の固定部材と前記中心緯糸との間において、前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に前記第2の緯糸を挿入するとともに前記第2の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させることによって前記第2の織布片を形成するステップと、
前記第3の固定部材と前記中心緯糸との間において、前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第3の緯糸を挿入するとともに前記第3の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させることによって前記第3の織布片を形成するステップと
を備える、製造方法。
【請求項13】
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第1の緯糸を挿入する際において、前記第1の経糸群または前記第3の経糸群のどちらか一方のみを移動させることによって、前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を設けるステップと、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に前記第2の緯糸を挿入する際において、前記第1の経糸群または前記第2の経糸群のどちらか一方のみを移動させることによって、前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に隙間を設けるステップと、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第3の緯糸を挿入する際において、前記第2の経糸群または前記第3の経糸群のどちらか一方のみを移動させることによって、前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を設けるステップと
のいずれか1つのステップをさらに備える、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記基軸を回転させることによって、前記中心緯糸を起点に形成される前記第1の織布片と前記第2の織布片と前記第3の織布片とを巻き取るステップをさらに備える、請求項12または13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布、織機、および織布の製造方法に関し、特に、三又以上に分岐した構造を有する織布、このような織布を織るための織機、このような織布の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣類の素材あるいは建築で用いられる膜の素材として織布(布状に織られた織物)が用いられているが、織布片を用いて三又および三又以上に分岐した構造を有する織布を作製する場合、2枚以上の織布片を縫い合わせるという方法を採っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、2枚以上の織布片を縫い合わせて三又および三又以上の分岐した構造の織布(以下、「分岐織布」という。)を形成すると、縫い合わせた部分の強度が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、分岐した布構造を形成する隣接する織布片の間で連続した織り糸を有する新規の織布、およびそのための製造方法および織機を提供する。本発明により、従来の縫い合わせた分岐織布よりも高い強度を有する新規の分岐織布を得ることができる。
【0005】
本願発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
中心緯糸と、
前記中心緯糸を起点として、第3の経糸群と第1の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第2の経糸群と第3の経糸群と第3の緯糸群とで形成される第3の織布片とを有し、
前記中心緯糸を中心に前記第1の織布片と前記第2の織布片と前記第3の織布片とが三又に分岐する織布。
(項目2)
中心緯糸を中心にN個の織布片がN又に分岐した織布であって、
前記中心緯糸と、
前記中心緯糸を起点として、第Nの経糸群と第1の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第(N-2)の経糸群と第(N-1)の経糸群と第(N-1)の緯糸群とで形成される第(N-1)の織布片と、
前記中心緯糸を起点として、第(N-1)の経糸群と第Nの経糸群と第Nの緯糸群とで形成される第Nの織布片とを少なくとも有し、
Nは4以上の整数である、織布。
(項目3)
前記第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸は、前記第1の織布片の先端から前記中心緯糸を経由して前記第2の織布片の先端へと配置され、
前記第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸は、前記第2の織布片の先端から前記中心緯糸を経由して前記第3の織布片の先端へと配置され、
前記第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸は、前記第3の織布片の先端から前記中心緯糸を経由して前記第1の織布片の先端へと配置されている、項目1に記載の織布。
(項目4)
前記複数の第1の経糸と前記複数の第2の経糸と前記複数の第3の経糸とは、前記中心緯糸の方向に沿って、この順に繰り返し配置されている、項目1または3に記載の織布。
(項目5)
中心緯糸を中心に、第1の経糸群と第3の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、前記第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、前記第2の経糸群と前記第3の経糸群と第3の緯糸群とで形成される第3の織布片とが分岐した織物を製造するための織機であって、
前記中心緯糸を配置可能な略水平な基軸と、
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群とを固定可能な第1の固定部材と、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群とを固定可能な第2の固定部材と、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群とを固定可能な第3の固定部材と、
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を形成させるための第1の綜絖部材と、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に隙間を形成させるための第2の綜絖部材と、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を形成させるための第3の綜絖部材と、
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間の隙間に挿入された前記第1の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させるための第1の筬部材と、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間の隙間に挿入された前記第2の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させるための第2の筬部材と、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間の隙間に挿入された前記第3の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させるための第3の筬部材と
を備え、
前記第1の固定部材と前記第2の固定部材と前記第3の固定部材とは、前記基軸を中心に径方向に所定距離離間するとともに、前記基軸の周方向に所定距離離間した位置にそれぞれ配置されている、織機。
(項目6)
前記第1の綜絖部材、前記第2の綜絖部材および前記第3の綜絖部材の少なくとも1つは、一方の経糸群のみを移動させるように構成されている、項目5に記載の織機。
(項目7)
前記第1の固定部材、前記第2の固定部材および前記第3の固定部材の少なくとも1つは、一方の経糸群および他方の経糸群を構成するそれぞれの複数の経糸を挿入固定可能な先細のスリットを有する、項目5または6に記載の織機。
(項目8)
前記基軸は回転可能に構成されている、項目5~7のいずれか一項に記載の織機。
(項目9)
前記基軸の回転位置を固定する回転防止機構をさらに備える、項目8に記載の織機
(項目10)
前記中心緯糸と前記第1の固定部材との間、前記中心緯糸と前記第2の固定部材との間または前記中心緯糸と前記第3の固定位置との間には、前記第1の織布片、前記第2の織布片または前記第3の織布片を押えるための布押え部材が少なくとも1つ配置されている、項目5~9のいずれか一項に記載の織機。
(項目11)
前記第1の筬部材は、前記第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸を挿通可能な第1のスリットと、前記第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸を挿通可能な第2のスリットを有し、
前記第2の筬部材は、前記第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸を挿通可能な第3のスリットと、前記第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸を挿通可能な第4のスリットを有し、
前記第3の筬部材は、前記第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸を挿通可能な第5のスリットと、前記第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸を挿通可能な第6のスリットを有し、
前記第1の筬部材が備える第1のスリットと第2のスリットが配置されるパターンと、前記第2の筬部材が備える第3のスリットと第4のスリットが配置されるパターンと、前記第3の筬部材が備える第5のスリットと第6のスリットが配置されるパターンは、それぞれ異なるパターンである、項目5~10のいずれか一項に記載の織機。
(項目12)
織機を用いて、項目1~4のいずれか一項に記載の織布の製造方法であって、
前記製造方法は、
前記織機の略水平な基軸に沿って前記中心緯糸を配置するステップと、
前記第1の経糸群を、前記中心緯糸を介して前記織機の第1の固定部材から前記織機の第2の固定部材に配設するステップと、
前記第2の経糸群を、前記中心緯糸を介して前記第2の固定部材から前記織機の第3の固定部材に配設するステップと、
前記第3の経糸群を、前記中心緯糸を介して前記第3の固定部材から前記第1の固定部材に配設するステップと、
前記第1の固定部材と前記中心緯糸との間において、前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第1の緯糸を挿入するとともに前記第1の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させることによって前記第1の織布片を形成するステップと、
前記第2の固定部材と前記中心緯糸との間において、前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に前記第2の緯糸を挿入するとともに前記第2の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させることによって前記第2の織布片を形成するステップと、
前記第3の固定部材と前記中心緯糸との間において、前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第3の緯糸を挿入するとともに前記第3の緯糸を前記中心緯糸に向かって移動させることによって前記第3の織布片を形成するステップと
を備える、製造方法。
(項目13)
前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第1の緯糸を挿入する際において、前記第1の経糸群または前記第3の経糸群のどちらか一方のみを移動させることによって、前記第1の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を設けるステップと、
前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に前記第2の緯糸を挿入する際において、前記第1の経糸群または前記第2の経糸群のどちらか一方のみを移動させることによって、前記第1の経糸群と前記第2の経糸群との間に隙間を設けるステップと、
前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に前記第3の緯糸を挿入する際において、前記第2の経糸群または前記第3の経糸群のどちらか一方のみを移動させることによって、前記第2の経糸群と前記第3の経糸群との間に隙間を設けるステップと
のいずれか1つのステップをさらに備える、項目12に記載の製造方法。
(項目14)
前記基軸を回転させることによって、前記中心緯糸を起点に形成される前記第1の織布片と前記第2の織布片と前記第3の織布片とを巻き取るステップをさらに備える、項目12または13に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の縫い合わせた分岐織布よりも高い強度を有する新規の分岐織布、そのような分岐織布のための製造方法や織機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1による織布1000を説明するための斜視図である。
【
図2】
図1に示す織布1000の具体的な構造を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す織布1000を織るための装置(織機100)の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す織機100を筐体10と布を織るための構成(巻取り部材101および織り機構110、120、130)とに分離して示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す織機100に含まれる第1、第2、第3の織り機構110、120、130で織布片1100、1200、1300を織る方向D1~D3を示す平面図である。
【
図6】
図4に示す巻取り部(基軸)101を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す巻取り部(基軸)101を分解して示す斜視図である。
【
図8】
図3に示す織機100の構成要素を分解して示す斜視図である。
【
図9】
図4に示す第1の織り機構110を構成する固定部材(第1の糸止め部材)110dを説明するための図である。
【
図10】
図4に示す第1の織り機構100aを構成する綜絖部材(第1の綜絖部材)110を説明するための図である。
【
図11】
図4に示す第1の織り機構100aを構成する筬部材(第1の筬部材)110bを説明するための図である。
【
図12】
図4に示す第1、第2、第3の織り機構110、120、130の筬部材110b、120b、130bの間での、第1の糸通しスリット11bおよび第2の糸通しスリット12bの位置ずれを説明するための図である。
【
図13】
図4に示す第1の織り機構110を構成する布押え部材(第1の布押え部材)110cを説明するための図である。
【
図14】
図4に示す筐体10を構成する側壁フレーム20aを説明するための平面図である。
【
図15】
図1に示す織布1000を
図3に示す織機100を用いて製造する方法を説明するための斜視図であり、経糸群に緯糸を織り始める準備をする準備工程を示している。
【
図16】
図15に示す準備工程で張られた3つの経糸群1010、1020、1030の経糸1011、1021、1031を中心緯糸1001とともに拡大して示す斜視図である。
【
図17】第1の織り機構110での第1の初期工程における第1の綜絖部材110aおよび第1の筬部材110bの動きを説明するための模式図である。
【
図18】第1の織り機構110にて第1の初期工程で形成された第1の織布片1100を示す斜視図である。
【
図19】第1、第2、第3の織り機構110、120、130で織布片1100、1200、1300が第1の織長さ(各筬部材110b、120b、130bが巻取り部材101の係止め板112に干渉しない長さ)まで織られた状態を示す模式図である。
【
図20】第1の織り機構110にて織布片1100が第2の織長さ(基軸101から第1の布押え部材110cまでの距離に相当する長さ)を超えるまで織られた状態を示す斜視図である。
【
図21】第1、第2、第3の織り機構110、120、130にてそれぞれ、織布片1100、1200、1300の織り長さが第2の織長さを超えた状態を示す模式図である。
【
図22】第1の織り機構110に第1の布押え部材110cを取り付けた状態での第1の綜絖部材110aおよび第1の筬部材110bの動きを説明するための模式図である。
【
図23】第1、第2、第3の織り機構110、120、130にてそれぞれ織られた織布片1100、1200、1300が巻取り部材101に巻き取られた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0009】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0010】
[分岐織布]
本発明は、分岐した布構造を形成する隣接する織布片の間で連続した織り糸を有する新規の分岐織布に関するものである。
【0011】
本発明の織布は、
中心緯糸と、
中心緯糸を起点として、第3の経糸群と第1の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、
中心緯糸を起点として、第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、
中心緯糸を起点として、第2の経糸群と第3の経糸群と第3の緯糸群とで形成される第3の織布片とを有し、
中心緯糸を中心に第1の織布片と第2の織布片と第3の織布片とが三又に分岐するものである。
【0012】
本発明の分岐織布は、三又に分岐する3つの織布片の隣接するもの同士が1つの経糸群の経糸によりつながることとなり、織布片同士を縫合する場合と比べて接合強度を高めることができる。
【0013】
本発明の分岐織布は、中心緯糸を中心に第1の織布片と第2の織布片と第3の織布片とが三又に分岐する織布であって、3つの経糸群の各々の経糸が3つの織布片のうちの2つの織布片で共用されるものであれば、その他の構成は限定されるものではない。
【0014】
例えば、第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸は、第1の織布片の先端から中心緯糸を経由して第2の織布片の先端へと配置され、第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸は、第2の織布片の先端から中心緯糸を経由して第3の織布片の先端へと配置され、第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸は、第3の織布片の先端から中心緯糸を経由して第1の織布片の先端へと配置されていることが好ましい。
【0015】
これにより、分岐した布構造を形成する隣接する織布片の一方の先端から、隣接する織布片の他方の先端まで1つの経糸群の経糸(織糸)を連続させることができ、分岐した布構造を有する織布の強度を効果的に高めることができる。
【0016】
また、第1の経糸と第2の経糸と第3の経糸とは、中心緯糸の方向に沿って、この順に繰り返し配置され、複数の第1の経糸を含む第1の経糸群と、複数の第2の経糸を含む第2の経糸群と、複数の第3の経糸を含む第3の経糸群とを形成することが好ましい。
【0017】
このように第1~第3の3つの経糸群の経糸を中心緯糸の方向に沿って所定の順序で繰り返し配置することで、各織布片で2つの経糸をより均等に配置することができ、織布片の強度のばらつきを軽減することができる。
【0018】
従って、本発明の基本原理は、三つ以上の織布片が三又以上に分岐する織布において、1つの織布片とこれの両側に隣接する2つの織布片とで経糸を共用することであり、四又以上に分岐する織布にも適用可能である。
【0019】
すなわち、本発明は、中心緯糸を中心に三又に分岐する織布に限定されるものではなく、中心緯糸を中心に4個以上(N:N≧4)の織布片が4以上(N:N≧4)の又に分岐した織布において、1つの織布片とこれに隣接する一方側の織布片とで1つの経糸群の経糸を共用し、1つの織布片とこれに隣接する他方側の織布片とで他の1つの経糸群の経糸を共用するものであってもよい。
【0020】
図1は、本発明の実施形態1の分岐織布1000を説明するための斜視図であり、
図1(a)は、三又に分岐した織布1000を台Tなどの表面上に置いた状態を示し、
図1(b)は、織布1000の三又を形成する3つの織布片1100、1200、1300を伸ばした状態を示す。
【0021】
本実施形態1の織布1000は、
図1(a)、(b)に示すように、中心緯糸1001と、第1~第3の3つの織布片1100、1200、1300とを有し、中心緯糸1001を中心に第1の織布片1100と第2の織布片1200と第3の織布片1300とが三又に分岐した構造となっている。なお、本発明は三又に分岐した織布に限定されず、四又以上に分岐した織布も包含するものであることは上述のとおりである。
【0022】
図2は、
図1に示す織布1000の具体的な構造を模式的に示す斜視図であり、
図2(a)は、
図1(b)のR1部分を拡大して示し、
図2(b)、
図2(c)、
図2(d)は、第1、第2、第3の経糸群1010、1020、1030の各々における1つの経糸1011、1021、1031を示す。
【0023】
第1の織布片1100は、中心緯糸1001を起点として、第1の経糸群1010と第3の経糸群1030と第1の緯糸群1110とで織られている(
図2(a))。
【0024】
ここで、第1の経糸群1010に含まれる複数の経糸(第1の経糸)1011は、第1の織布片1100の一方の経糸を構成する第1部分1011aと、第2の織布片1200の他方の経糸を構成する第2部分1011bとを有している(
図2(b))。第1の経糸1011の第1部分1011aと第2部分1011bとは、中心緯糸1001に引っ掛かる部分で区分されている。
【0025】
第2の織布片1200は、中心緯糸1001を起点として、第1の経糸群1010と第2の経糸群1020と第2の緯糸群1120とで織られている(
図2(a))。
【0026】
ここで、第2の経糸群1020に含まれる複数の経糸(第2の経糸)1021は、第2の織布片1200の一方の経糸を構成する第1部分1021aと、第3の織布片1300の他方の経糸を構成する第2部分1021bとを有している(
図2(c))。第2の経糸1021の第1部分1021aと第2部分1021bとは、中心緯糸1001に引っ掛かる部分で区分されている。
【0027】
第3の織布片1300は、中心緯糸1001を起点として、第2の経糸群1020と第3の経糸群1030と第3の緯糸群1130とで織られている(
図2(a))。
【0028】
ここで、第3の経糸群1030に含まれる複数の経糸(第3の経糸)1031は、第3の織布片1300の一方の経糸を構成する第1部分1031aと、第1の織布片1100の他方の経糸を構成する第2部分1031bとを有している(
図2(d))。第3の経糸1031の第1部分1031aと第2部分1031bとは、中心緯糸1001に引っ掛かる部分で区分されている。
【0029】
つまり、第1の織布片1100は、第1の経糸群1010に含まれる複数の第1の経糸1011の第1部分1011aと、第3の経糸群1030に含まれる複数の第3の経糸1031の第2部分1031bとを、第1の緯糸群1110の複数の第1の緯糸1111で織った構造となっている。
【0030】
第2の織布片1200は、第2の経糸群1020に含まれる複数の第2の経糸1021の第1部分1021aと、第1の経糸群1010に含まれる複数の第1の経糸1011の第2部分1011bとを、第2の緯糸群1120の複数の第2の緯糸1121で織った構造となっている。
【0031】
第3の織布片1300は、第3の経糸群1030に含まれる複数の第3の経糸1031の第1部分1031aと、第2の経糸群1020に含まれる複数の第2の経糸1021の第2部分1021bとを、第3の緯糸群1130の複数の第3の緯糸1131で織った構造となっている。
【0032】
このように第1~第3の3つの織布片1100、1200、1300が三又に分岐した織布1000では、第1の経糸群1010を構成する複数の第1の経糸1011は、第1の織布片1100の先端から中心緯糸1001を経由して第2の織布片1200の先端へと配置されている。第2の経糸群1020を構成する複数の第2の経糸1021は、第2の織布片1200の先端から中心緯糸1001を経由して第3の織布片1300の先端へと配置されている。第3の経糸群1030を構成する複数の第3の経糸1031は、第3の織布片1300の先端から中心緯糸1001を経由して第1の織布片1100の先端へと配置されている。
【0033】
このような構成により、分岐した布構造を形成する隣接する織布片の一方の先端から、隣接する織布片の他方の先端まで1つの経糸群の経糸(織糸)を連続させることができ、織布片を縫合する場合に比べて、分岐した布構造を有する織布の強度を効果的に高めることができる。
【0034】
また、三又に分岐した織布1000では、第1の経糸群1010の複数の第1の経糸1111と、第2の経糸群1020の複数の第2の経糸1121と、第3の経糸群1030の複数の第3の経糸1131とは、中心緯糸1001の方向に沿って、この順に繰り返し配置されていることが好ましい。
【0035】
このように第1~第3の3つの経糸群の経糸を中心緯糸の方向に沿って所定の順序で繰り返し配置することで、各織布片で2つの経糸をより均等に配置することができ、織布片の強度のばらつきを軽減することができる。
【0036】
[織機]
本発明はまた、本発明の分岐織布を織るための織機を提供し、本発明の織機は、中心緯糸を中心に、第1の経糸群と第3の経糸群と第1の緯糸群とで形成される第1の織布片と、第1の経糸群と第2の経糸群と第2の緯糸群とで形成される第2の織布片と、第2の経糸群と第3の経糸群と第3の緯糸群とで形成される第3の織布片とが分岐した織物を製造するための織機であって、織機は中心緯糸を配置可能な略水平な基軸と、第1の織布片を織るための第1の織り機構と、第2の織布片を織るための第2の織り機構と、第3の織布片を織るための第3の織り機構とを少なくとも備えていれば、その他の構成は任意であり得る。
【0037】
例えば、1つの実施形態において、第1の織り機構、第2の織り機構、第3の織り機構はそれぞれ基軸を中心に径方向に所定距離離間するとともに、周方向に等間隔で配置されている。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0038】
設けられる織り機構の数によって周方向に配置される間隔を変更してもよいし、それぞれ隣接して配置される織り機構との距離をそれぞれ変化させて配置しても良い。また、基軸を中心に径方向に離間して配置される位置も、織り機構それぞれにおいて任意であり得る。
【0039】
第1の織り機構、第2の織り機構、第3の織り機構は、それぞれ同様の構成であって、経糸群と緯糸群とを固定可能な固定部材と、経糸群と緯糸群との間に隙間を形成するための綜絖部材と、経糸群と緯糸群との間の隙間に挿入された緯糸を中心緯糸に向かって移動させるため筬部材とを有している。
【0040】
第1の織り機構と第2の織り機構と第3の織り機構との違いは、織り機構に通す経糸と緯糸とがそれぞれ異なることである。具体的には、第1の織り機構は、第1の経糸群と第3の経糸群との間に第1の緯糸を織り込むものであって、第2の織り機構は第1の経糸群と第2の経糸群との間に第2の緯糸を織り込むものであって、第3の織り機構は、第2の経糸群と第3の経糸群との間に第3の緯糸を織り込むように構成されている。
【0041】
その結果、第1の織り機構で織られた第1の織布片と第2の織り機構で織られた第2の織布片とで第1の経糸群が共用され、第2の織り機構で織られた第2の織布片と第3の織り機構で織られた第3の織布片とで第2の縦糸群が共用され、第3の織り機構で織られた第3の織布片と第1の織り機構で織られた第1の織布片とで第3の経糸群が共用されることとなり、本発明の新規織布を得ることができる。
【0042】
従って、本発明の織機は、3つの経糸群の各々が3つの織布片のうちの2つで共用されるように3つの経糸群を3つの緯糸群により織るものであれば、その他の構成は限定されるものではない。
【0043】
図3は、
図1および
図2に示す三又に分岐する織布1000を織るための装置(織機100)の一例を示す斜視図であり、
図4は、
図3に示す織機100を筐体10と布を織るための機構とに分離して示す斜視図である。
【0044】
図5は、
図3に示す織機100において、基軸101に対する第1、第2、第3の織り機構110、120、130の配置および第1、第2、第3の織り機構110、120、130によって織られる方向D1~D3を示す平面図である。
【0045】
(基軸)
本発明における基軸は、中心緯糸を配置して固定するように構成された部材である。基軸は、回転可能に構成されていてもよいし、あるいは、回転不能に構成されていてもよい。ただし、基軸は回転可能に構成することで、基軸から離れる方向に織り進められる織布片を織りながら基軸に巻き取ることが可能となり、各織り機構では、基軸から綜絖部材までの距離以上に長い織布片を織ることが可能となる。
【0046】
また、基軸が回転可能に構成されている場合は、基軸の回転位置を固定する回転防止機構をさらに備えることが好ましい。なぜなら、織布片を巻き取っている基軸は固定しておかないと、織布片を織る際に経糸にかかる張力により、巻取り方向と逆方向に回転して、巻き取った織布片が巻き戻されてしまうからである。
【0047】
基軸を回転させる手段は任意であり得る。例えば、手動であってもよいし、モータなどの駆動源からの動力によってでもよい。
【0048】
基軸が回転可能に構成されている場合には、好ましくは、基軸は織られた織布片を係止させるための係止め板を備える。なお、係止め板を設ける個数は任意であり得るが、好ましくは織機で織られる織布片の数に合わせて設けられる。
【0049】
図6は、
図4に示す基軸(巻き取り部も含む)101を拡大して示す斜視図であり、
図7は、
図6に示す基軸101を分解して示す斜視図である。
【0050】
基軸101は、筐体に略水平に固定されており、3つの織り機構110、120、130でそれぞれ織布片1100、1200、1300を織り始めるときの基準となる中心緯糸1001を配置し固定する部材である。
【0051】
基軸101は両端に設けられた一対の側板111と、これらに装着される係止め板112とを有している。ここで、一対の側板111はそれぞれ、筐体10を構成する左右の側壁フレーム20a、20bに回転可能に支持される構造となっている。そして、それぞれの基軸101は中心緯糸1001を通す糸挿入孔111aが形成されている。一対の側板111には、その回転中心の周りに等間隔で3つの嵌合溝111bが形成されている。
【0052】
なお、基軸101は、側板111に形成される3つの嵌合溝111bを、回転中心の周りに等間隔に配置したものに限定されず、回転中心の周りに不均等な間隔で配置したものでもよい。また、基軸は、筐体10(例えば、側壁フレーム20a、20b)に回転可能に支持される側板111に代えて、側壁フレーム20a、20bに回転不能に固定される3つの側板を備えたものでもよい。
【0053】
係止め板112の両端には、
図7に示すように、それぞれ嵌合突起112aが形成されており、係止め板112は、両端の嵌合突起112aを一対の側板111の嵌合溝111bに嵌め込むことで、一対の側板111に取り付け可能となっている。
【0054】
基軸101が3つの係止め板112を有することにより、基軸101が回転した際に3つの係止め板112がそれぞれ3つの織布片を係止めすることになり、その結果、効率的に3つの織布片を巻き取ることが可能となる。
【0055】
また、織機100は、回転可能な基軸101に係合して基軸の回転を阻止する回転防止機構を備えていてもよい。回転防止機構は基軸の回転を阻止できるものであれば任意の構成であり得る。例えば、基軸を回転駆動させる駆動手段のブレーキであってもよいし、基軸の回転を阻止する回転阻止具(ストッパ)102であってもよい。例えば、
図8に示す様に、回転阻止具は係止め板112に嵌合可能な爪部を有するとともに、
図5に示す布押え部材110cに当接可能な軸部とを有しているものであってもよい。
【0056】
次に、第1~第3の織り機構110、120、130を説明する。
【0057】
(織り機構)
図8は、
図3に示す織機100の構成要素を分解して示す斜視図である。
【0058】
本発明の織機100は、基軸を略中心にして3つの織り機構(第1の織り機構110、第2の織り機構120、第3の織り機構130)が周囲に配置されているが、基本的に第1~第3の織り機構の構造はそれぞれ同様の構造を有している。したがって、織り機構については、第1の織り機構についてのみ詳細に説明する。
【0059】
第1の織り機構110は、
図5に示すように、基軸101から所定の方向で遠ざかる方向(織り方向D1)に第1の織布片1100を第1の経糸群1010の経糸1011と、第3の経糸群1030の経糸1031と、第1の緯糸群1110の緯糸1111を用いて織る機構であり、
図4、
図5および
図8に示すように、これらの経糸と緯糸とを織るための複数の部材、基本的には、第1の綜絖部材110a、第1の筬部材110b、第1の固定部材110dを有している。
【0060】
また、必要に応じて第1の織布片を押さえるための第1の布押え部材110cと、第1の緯糸群1110の緯糸(第1の緯糸)1111を織り込むためのシャトル103とを選択的に備え得る(
図8参照)。なお、織り方向D1の角度(水平に対してなす角度)は任意であり得る。
【0061】
以下、第1の織り機構110を構成する各部材110a~110dの具体的な構造を説明する。
【0062】
(固定部材)
本発明における固定部材は、織布片を構成する2つの経糸群をそれぞれ固定可能な任意の部材である。本発明の織機は、製造する対象となる織布の分岐の数に対応した固定部材を有する。固定部材は、経糸を固定するための任意の構造を有し、例えば、経糸を単に上部から押さえつけるものであってもよいし、糸を挿入可能なスリットとスリットに挿入した経糸を上部から押さえる押圧部材とで構成してもよいし、糸を挿入固定可能な先細のスリットによって経糸を固定してもよいし、糸を巻き付け固定可能なピンを有していてもよい。
【0063】
図9は、
図4に示す第1の織り機構110を構成する第1の固定部材(第1の糸止め部材)110dを説明するための図であり、この例示的な実施形態においては先細のスリットに糸を挿入することによって糸を固定する。
図9(a)は、
図4に示す第1の糸止め部材110dを直立姿勢にして示す拡大図、
図9(b)および
図9(c)は、
図9(a)に示す第1の糸止め部材110dの正面図(A9方向から見た図)および側面図(B9方向から見た図)である。
【0064】
第1の固定部材110dは、第1の経糸群1010と第3の経糸群1030とを固定可能であり、図示される例示的な実施形態では、第1の固定部材110dには、櫛状の歯の隙間に第1の経糸群1010の経糸1011(具体的には経糸1011の第1部分1011a)と第3の経糸群1030の経糸1031(具体的には経糸1031の第2部分1031b)とを挟み込んで糸止めする第1の固定部材110dが用いられている。
【0065】
この第1の固定部材110dは、
図9に示すように、矩形の板状体からなる糸止め本体10dと、糸止め本体10dの両側部に形成された固定片13dとを有している。固定片13dは、側壁フレーム20a、20bの一部に嵌合する部分であり、固定片13dと側壁フレーム20a、20bとの嵌合により固定片13dが筐体10に固定されるようになっている。
【0066】
そして、糸止め本体10dには、第1の経糸群1010の経糸1011(具体的には経糸1011の第1部分1011a)を固定するための先細のスリット(
図9における第1のV字型溝11d)と、第3の経糸群1030の経糸1031(具体的には経糸1031の第2部分1031b)を固定するための先細のスリット(
図9における第2のV字型溝12d)とが、長手方向(基軸101の中心軸の方向)の側辺に沿って交互に設けられている。このような先細のスリットによって糸を固定する方法であれば、糸をスリットに押し込むという簡単な操作で固定することが可能という利点がある。
【0067】
なお、先細のスリットとして
図9においては、V字型溝を示しているが、これに限定されない。例えば、略コ字状のスリットの下部側の一部にコ字状のスリットの内壁が狭くなる部分を設けたものも本件発明における先細のスリットに含まれるものである。
【0068】
(綜絖部材)
綜絖部材は、織布片を構成する2つの経糸群を分離して緯糸を通す隙間を形成可能な任意の部材である。本発明の織機は、製造する対象となる織布の分岐の数に対応した綜絖部材を有する。綜絖部材は、織布片を構成する2つの経糸群を分離するための任意の構造を有し、2つの経糸群の一方の経糸群のみを移動させるように構成されていてもよいし、あるいは、2つの経糸群の両方の経糸群を移動させるように構成されていてもよい。
【0069】
ただし、綜絖部材が2つの経糸群の一方の経糸群のみを移動させるよう構成する場合は、経糸の張力を低く抑えることができる。なぜなら、この場合、他方の経糸群の経糸は、移動させる必要がないので、一定の張力で固定しておくことができ、他方の経糸はその移動による張力増大を回避できるからである。また、この場合、移動させる経糸群の経糸は、移動による張力変化は生ずるが、緯糸を通すタイミング、つまり最も張力が大きくなるタイミングでのみ必要な張力がでるようにすれば、それ以外のタイミングでは、必要な張力より小さい張力しか発生しないようにすることができ、必要な張力で張られた経糸の張力が経糸の移動によりさらに大きな張力になるのを回避できるからである。
【0070】
なお、綜絖部材の移動手段は任意の形態であり得る。例えば、手動であってもよいし、モータなどの駆動源の動力によって移動させるものであってもよい。
【0071】
図10は、
図4に示す第1の織り機構100aを構成する綜絖部材(第1の綜絖部材)110を説明するための図である。
図10(a)は、
図4に示す第1の綜絖部材110aを直立姿勢にして示す拡大図、
図10(b)および
図10(c)は、
図10(a)に示す第1の綜絖部材110aの正面図(A10方向から見た図)および上面図(B10方向から見た図)である。
【0072】
第1の綜絖部材110aは、第1の経糸群1010の経糸1011(具体的には経糸1011の第1部分1011a)と第3の経糸群1030の経糸1031(具体的には経糸1031の第2部分1031b)との間に隙間を形成させるための部材である。
【0073】
第1の綜絖部材110aは、矩形の板状体からなる綜絖本体10aと、綜絖本体10aの両側部に形成されたガイド片13aとを有している。ガイド片13aは、側壁フレーム20a、20bの一部に係合する部分であり、ガイド片13aと側壁フレーム20a、20bとの係合により第1の綜絖部材110aが筐体10に対して所定の方向(具体的には織布片の面に交差する方向)に移動するようになっている。
【0074】
そして、綜絖本体10aは、第1の経糸群1010の経糸1011(具体的には経糸1011の第1部分1011a)を通す糸通し孔11aと、第3の経糸群1030の経糸1031(具体的には経糸1031の第2部分1031b)を通す糸通しスリット12aとが、長手方向(基軸101の中心軸の方向)に沿って交互に設けられている。ここで、糸通し孔11aに通された第1の経糸1011は、第1の綜絖部材110aの移動に合わせて移動するのに対し、糸通しスリット12aに通された第3の経糸1031は、第1の綜絖部材110aが移動しても移動しないようになっている。
【0075】
(筬部材)
筬部材は、織布片を構成する2つの経糸群との隙間に挿入された緯糸を中心緯糸に向かって移動可能な任意の部材である。本発明の織機は、製造する対象となる織布の分岐の数に対応した筬部材を有する。筬部材は、織布片を構成する2つの経糸群との隙間に挿入された緯糸を中心緯糸に向かって移動させるための任意の構造であり得る。
【0076】
例えば、2つの経糸群との隙間に挿入された緯糸を中心緯糸側に単に押す平板(例えば、定規のようなもの)の糸押部材であってもよいし、
図11に示す様に、糸押部材に2つの経糸群の経糸を貫通させる糸貫通開口を有しているものであってもよい。ここで、糸貫通開口は、個々の経糸を通すための長孔を形成する細長いスリットでもよいし、隣接する複数の経糸を通すための幅広の長孔を形成する幅広のスリットでもよい。
【0077】
また、本発明の織機において、糸貫通開口を有する筬部材を使用する場合においては、3つの経糸群の経糸は中心緯糸に沿って所定の順序で繰り返し配置されているので、3つの織り機構で用いられる筬部材の間では、糸貫通開口(スリット)の位置は、各織り機構で織り込む経糸の位置に合わせてずれている。
【0078】
すなわち、第1の筬部材(第1の織り機構における筬部材)は、第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸を挿通可能な第1のスリットと、第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸を挿通可能な第2のスリットを有し、第2の筬部材(第2の織り機構における筬部材)は、第1の経糸群を構成する複数の第1の経糸を挿通可能な第3のスリットと、第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸を挿通可能な第4のスリットを有し、第3の筬部材(第3の織り機構における筬部材)は、第2の経糸群を構成する複数の第2の経糸を挿通可能な第5のスリットと、第3の経糸群を構成する複数の第3の経糸を挿通可能な第6のスリットを有し、第1の筬部材が備える第1のスリットと第2のスリットが配置されるパターンと、第2の筬部材が備える第3のスリットと第4のスリットが配置されるパターンと、第3の筬部材が備える第5のスリットと第6のスリットが配置されるパターンは、それぞれ異なるパターンとなっている。
【0079】
図11は、
図4に示す第1の織り機構100aを構成する筬部材(第1の筬部材)110bを説明するための図である。
図11(a)は、
図4に示す第1の筬部材110bを直立姿勢にして示す拡大図、
図11(b)および
図11(c)は、
図11(a)に示す第1の筬部材110bの正面図(A11方向から見た図)および上面図(B11方向から見た図)である。
【0080】
第1の筬部材110bは、第1の経糸群1010と第3の経糸群1030との間の隙間に挿入された第1の緯糸群1110の緯糸(第1の緯糸)1110(
図2参照)を中心緯糸1001(
図2参照)に向かって移動させるための部材である。
【0081】
第1の筬部材110bは、矩形の板状体からなる筬本体10bと、筬本体10bの両側部に筬本体10bの表面に垂直な方向に延びるL字型ガイド片14bとを有している。L字型ガイド片14bは、側壁フレーム20a、20bの一部に係合する部分であり、L字型ガイド片14bと側壁フレーム20a、20bとの係合により第1の筬部材110bが筐体10に対して所定の方向にスライドするようにガイドされる。
【0082】
そして、第1の筬部材110bには、第1の経糸群1010の経糸1011(具体的には経糸1011の第1部分1011a)を通す第1糸通しスリット11bと、第3の経糸群1030の経糸1031(具体的には経糸1031の第2部分1031b)を通す第2糸通しスリット13bとが、長手方向(基軸101の中心軸の方向)に沿って交互に設けられている。ここで、第1糸通しスリット11bに通された第1の経糸1011は、第1の綜絖部材110aの移動に合わせて第1糸通しスリット11b内で移動するようになっている。
【0083】
なお、第2糸通しスリット12bに通された第3の経糸1031は、第1の綜絖部材110aが移動しても移動することはない。
【0084】
図12は、
図4に示す第1、第2、第3の織り機構110、120、130の筬部材110b、120b、130bの間での2つの経糸に対応する2つの糸通しスリットの位置ずれを説明するための図である。
【0085】
織布1000では、
図2に示すように、第1の経糸群1010の経糸1011、第2の経糸群1020の経糸1021、および第3の経糸群1030の経糸1031がこの順に中心緯糸1001に沿って並んでいるが、
図12に示すように、第1の織り機構110では、第1の織布片1100を織るのに、第1の経糸群1010の経糸1011と第3の経糸群1030の経糸1031とが用いられるのに対して、第2の織り機構120では、第2の織布片1200を織るのに、第1の経糸群1010の経糸1011と第2の経糸群1020の経糸1021とが用いられる。
【0086】
このため、第2の織り機構120を構成する第2の筬部材120bでは、第1の筬部材110bにはない、第2の経糸1021を通す糸通しスリット12bが、第3の経糸1031を通す糸通しスリット13bに代えて設けられており、その結果、第2の筬部材120bと第1の筬部材110bとでは、糸通しスリットの配列パターンが異なっている。
【0087】
また、
図12に示すように、第1の織り機構110では、第1の織布片1100を織るのに、第1の経糸群1010の経糸1011と第3の経糸群1030の経糸1031とが用いられるのに対して、第3の織り機構130では、第3の織布片1300を織るのに、第2の経糸群1020の経糸1021と第3の経糸群1030の経糸1031とが用いられる。
【0088】
このため、第3の織り機構130を構成する第3の筬部材130bでは、第1の筬部材110bにはない、第2の経糸1021を通す糸通しスリット12bが、第1の経糸1011を通す糸通しスリット11bに代えて設けられており、その結果、第2の筬部材120bと第1の筬部材110bとでは、糸通しスリットの配列パターンが異なっている。
【0089】
(布押え部材)
本発明における布押え部材は、織られた織布片の表面が基軸に平行になるように織布片の表面を押える押さえ部材である。本発明の織機は、製造する対象となる織布の分岐の数に対応した布押え部材を有することが好ましい。
【0090】
織機では、中心緯糸と第1の固定部材との間、中心経糸と第2の固定部材との間または中心糸と第3の固定部材との間には、第1の織布片、第2の織布片または第3の織布片を押えるための布押え部材が少なくとも1つ配置されていることが好ましい。
【0091】
このように布押え部材を取り付けることで、織布片の表面が基軸に対して傾くのを抑制することができ、織布片を歪みのない平坦な布片に仕上げることができる。また、布押え部材には、織布片を巻取り部材101で巻き取った後も、筬の可動範囲を広く確保する働きがある。
【0092】
図13は、
図4に示す第1の織り機構110を構成する布押え部材(第1の布押え部材)110cを説明するための図である。
図13(a)は、
図4に示す第1の布押え部材110cを直立姿勢にして示す拡大図であり、
図13(b)は、
図13(a)に示す第1の布押え部材110cの分解斜視図であり、
図13(c)は、
図13(a)に示す布押え部材110cの機能を説明するための模式図である。
【0093】
第1の布押え部材110cは、基軸101から第1の織り方向D1に沿って織られた第1の織布片1100の織り長さがある程度の長さになったときに筐体10に装着され、第1の織布片1100の表面を押えることにより第1の織布片1100の織り面が基軸101の軸心に平行な面から傾かないようにする部材である。
【0094】
なお、この第1の布押え部材110cを装着すると、第1の筬部材110bが第1の布押え部材110cよりも基軸101に近づくことができなくなるので、この第1の筬部材110bを装着するときは、基軸101と、筐体10に装着された第1の布押え部材110cとの距離より長い長さまで第1の織布片1100を織ったときである。
【0095】
そして、この第1の布押え部材110cは、矩形の縦板からなる布押え本体10cと、この布押え本体10cに組み込まれる矩形の横板からなる補強片11cとを含む。布押え本体10cには、その一方の縦側辺から切り込まれた本体切込み10c1が形成され、補強片11cには、その1つの横側辺から切り込まれた補強片切込み11c1が形成されている。
【0096】
この第1の布押え部材110cは、
図13(b)に示すように、本体切込み10c1と補強片切込み11c1とを対向させて、布押え本体10cの一部が補強片切込み11c1に収容され、補強片11cの一部が本体切込み10c1に収容されるよう両者を嵌合することにより組み立てられている(
図13(a)参照)。
【0097】
織機では、このような布押え部材を取り付けることで、織布片を巻取り部材101で巻き取った後も織布片の布面を筬の移動方向に沿った面とすることができ、筬の可動範囲を広く確保することができる(
図13(c)参照)。
【0098】
(筐体10)
筐体は、三又に分岐する織布の起点となる中心緯糸を配置するための基軸と、三又に分岐する織布を構成する第1の織布片を織るため第1の織機、第2の織布片を織るための第2の織機、第3の織布片を織るための第3の織機とを収納可能であれば任意の形態であり得る。
【0099】
1つの実施形態において、筐体は一対の側壁フレームと、一対の側壁フレーム同士を連結する連結フレームとを有するが、本発明はこれに限定されない。また、側壁フレームと連結フレームとの接続手段は任意の手段であり得る。例えば、ボルトやビスなどの締結手段であってもよいし、突起と凹凸部や孔とによる嵌合手段などであってもよい。
【0100】
同様に、筐体に対する基軸、織り機構の各構成部材(例えば、固定部材、布押え部材)の接続手段も任意の手段であり得る。
【0101】
さらに、筐体は筬部材および/または綜絖部材について、スライド可能であれば任意の形態で接続され得る。例えば、筐体は筬部材や綜絖部材の一部をスライド収納可能なスリットを備えていてもよいし、リニアスライド機構によって筬部材および/または綜絖部材をスライド可能にするものであってもよい。
【0102】
次に、基軸101および第1~第3の織り機構110、120、130を収容する筐体10を具体的に説明する。
【0103】
筐体10は、
図4に示すように、一対の側壁フレーム20a、20bと、連結フレーム20とを含み、これらの側壁フレーム20aおよび20bは、これらの側壁フレーム20a、20bの間に基軸101と3つの織り機構110、120、130とを収容するスペースが形成されるように連結フレーム20により連結されている。
【0104】
左右一対の側壁フレーム20a、20bは、基軸101および3つの織り機構110、120、130を構成する部材を支持可能な構造となっており、以下具体的に説明する。
【0105】
図14は、
図5に示す筐体10を構成する側壁フレーム20a、20bを説明するための平面図であり、
図14(a)は、
図4の紙面左側の側壁フレーム20aの内側面を示し、
図14(b)は、
図4の紙面右側の側壁フレーム20bの外側面を示す。
【0106】
筐体10を構成する左右の側壁フレーム20a、20bは左右対称な構造となっているので、
図14(a)に示す左側の側壁フレーム20aを説明する。
【0107】
この側壁フレーム20aには、連結フレーム20の一端の突起部に嵌合する複数の嵌合孔20aが形成されている。
【0108】
そして、この側壁フレーム20aは、概ね正三角形のフレーム構造を有しており、3つの頂点部21、22、23にはそれぞれ、第1、第2、第3の綜絖部材110a、120a、130aをスライド可能に支持する第1、第2、第3の綜絖ガイド部31、32、33が形成されている。
【0109】
ここで、第1、第2、第3の綜絖ガイド部31、32、33は、具体的には、頂点部21、22、23に対向する底辺に平行になるようにそれぞれの頂点部に形成されたガイド溝であり、このガイド溝内を各綜絖部材110a、120a、130aのガイド片13aがスライド可能に支持されるようになっている。
【0110】
また、各頂点部21~23の先端には、第1、第2、第3の糸止め部材110d、120d、130dを固定するための第1、第2、第3の糸止め取付部51、52、53が形成されている。
【0111】
ここで、第1、第2、第3の糸止め取付部51、52、53は、具体的には、頂点部21、22、23の先端部に形成された嵌合孔であり、この嵌合孔に各糸止め部材110d、120d、130dの固定片13dが嵌合することにより糸止め部材110d、120d、130dが側壁フレーム20aに取り付けられるようになっている。
【0112】
また、側壁フレーム20aでは、各頂点部21~23と中心部との間には、それぞれ、第1、第2、第3の筬部材110b、120b、130bをスライド可能に支持する第1、第2、第3の第1の筬ガイド部41、42、43が形成されている。
【0113】
ここで、第1、第2、第3の筬ガイド部41、42、43は、具体的には、側壁フレーム20aにおける各頂点部21、22、23と中心部との間に、中心部からそれぞれの頂点部に向けて形成されたガイド溝であり、このガイド溝内を各筬部材110b、120b、130bのガイド片14bがスライド可能に支持されるようになっている。
【0114】
また、側壁フレーム20aの内面のうちの中心部と各綜絖ガイド部31、32、33との間の一部には、第1、第2、第3の布押え部材110c、120c、130cを着脱可能に支持する第1、第2、第3の布押え支持部61、62、63が形成されている。
【0115】
この第1、第2、第3の布押え支持部61、62、63は、側面がT字型形状の布押え部材の端部を着脱可能に保持する溝部で構成されている。
【0116】
そして、側壁フレーム20aは、その中心部で基軸101を構成する側板111aを回転可能に支持するように構成されている。
【0117】
また、もう一方の側壁フレーム20bも側壁フレーム20aと同一の構造となっており、連結フレーム20で連結された2つの側壁フレーム20aおよび20bとの間には、基軸101が回転可能に支持されるとともに、第1~第3の織り機構110、120、130の綜絖部材110a、120a、130aおよび筬部材110b、120b、130bがスライド可能に支持され、さらに、第1~第3の織り機構110、120、130の糸止め部材110d、120d、130dが固定される。また、第1~第3の織り機構110、120、130の布押え部材110c、120c、130cは、これらの側壁フレーム20a、20bの間に着脱可能に取り付けられる。
【0118】
[製造方法]
本発明はまた、本発明の分岐織布を製造する方法を提供し、本発明の方法は、織機を用いて、上述した織布を製造する方法であって、
この方法は、
織機の略水平な基軸に沿って中心緯糸を配置するステップと、
第1の経糸群を、中心緯糸を介して織機の第1の固定部材から第2の固定部材に配設するステップと、
第2の経糸群を、中心緯糸を介して第2の固定部材から第3の固定部材に配設するステップと、
第3の経糸群を、中心緯糸を介して第3の固定部材から第1の固定部材に配設するステップと、
第1の固定部材と中心緯糸との間において、第1の経糸群と第3の経糸群との間に第1の緯糸を挿入するとともに第1の緯糸を中心緯糸に向かって移動させることによって第1の織布片を形成するステップと、
第2の固定部材と中心緯糸との間において、第1の経糸群と第2の経糸群との間に第2の緯糸を挿入するとともに第2の緯糸を中心緯糸に向かって移動させることによって第2の織布片を形成するステップと、
第3の固定部材と中心緯糸との間において、第2の経糸群と第3の経糸群との間に第3の緯糸を挿入するとともに第3の緯糸を中心緯糸に向かって移動させることによって第3の織布片を形成するステップと
を備える、製造方法を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0119】
このように本発明の織布を製造する方法は、第1~第3の3つの経糸群の経糸を、第1~第3の3つの固定部材のうちの2つの固定部材の一方(第1、第2、第3の固定部材)から他方(第2、第3、第1の固定部材)に中心緯糸を介して配設し、中心緯糸と各固定部材との間で2つの経糸群の間に1つの緯糸群を織り込むものであれば、その他の構成は限定されるものではなく任意であり得る。
【0120】
例えば、中心緯糸と1つの固定部材との間で2つの経糸群の間に1つの緯糸群(緯糸)を織り込む際には、2つの経糸群のいずれか一方のみを移動させるようにしてもよいし、あるいは、2つの経糸群の両方を移動させるようにしてもよい。
【0121】
ここで、2つの経糸群のいずれか一方のみを移動させる場合は、上述したように経糸の張力を低く抑えることができる。
【0122】
また、中心緯糸を起点に形成される第1の織布片と第2の織布片と第3の織布片とは、基軸を回転させることによって巻き取るようにしてもよい。この場合、第1~第3の3つの織布片として、中心緯糸と固定部材との距離よりも長い織布片を形成することが可能となる。
【0123】
このように本発明の織布を製造する方法は、三つの織布片を含み、これらの織布片が三又に分岐した構造の織布を製造する方法に限定されるものではないが、以下の実施形態の製造方法の説明では、本発明の方法は、織布として、3つの織布片が三又に分岐したものを製造するものとする。
【0124】
また、本発明の方法で用いる織機では、第1~第3の各織り機構における綜絖部材は、2つの経糸群の一方を移動させることにより、2つの経糸群に緯糸群を織り込む隙間を形成するものとし、基軸は、形成した織布片を巻取り可能となるよう回転可能に構成したものとする。
【0125】
次に、
図1に示す織布1000を
図3に示す織機100を用いて製造する方法を説明する。
【0126】
図15は、
図1に示す織布1000を
図3に示す織機100を用いて織る方法を説明するための斜視図であり、最初に中心緯糸を張ると共に経糸を張り終えるまでの準備工程を示す。
【0127】
(準備工程)
まず、
図15(a)に示すように、筐体10に回転可能に取り付けた一対の側板111の糸挿入孔111aに中心緯糸1001を通して一対の側板111の間に中心緯糸1001を張る。この状態で、第1~第3の経糸群1010、1020、1030の経糸(第1~第3の経糸)1011、1021、1031を張る。
【0128】
このとき、第1、第2、第3の経糸群1010、1020、1030の各々の複数の経糸は、
図16に示すように、中心緯糸1001の方向(つまり、一方の側板111からもう一方の側板111に向う方向)に向けて所定の順序で繰り返し配置される。
【0129】
図16は、
図15に示す工程で張られた3つの経糸群1010、1020、1030の経糸1011、1021、1031を中心緯糸1001とともに拡大して示す斜視図である。
【0130】
(第1の織り機構110での経糸1011、1031の張り状態)
織機100に3つの経糸群1010、1020、1030が張られた状態では、中心緯糸1001と第1の織り機構110の第1の糸止め部材110dとの間には、第1の経糸1011の第1部分1011aと第3の経糸1031の第2部分1031bとが配置されることとなる(
図5、
図16参照)。
【0131】
このとき、第1の経糸1011の第1部分1011aは、第1の綜絖部材110aの糸通し孔11aを通り、第1の筬部材110bの糸通しスリット(第1のスリット)11bを通るようにする。また、第3の経糸1031の第2部分1031bは、第1の綜絖部材110aの糸通しスリット12aを通り、第1の筬部材110bの糸通しスリット(第2のスリット)13bを通るようにする(
図5、
図10、
図11参照)。
【0132】
第1の経糸1011の第1部分1011aと第3の経糸1031の第2部分1031bとは、第1の綜絖部材110aの手前側(基軸101と反対側)で第1の織り機構110の第1の糸止め部材110dで固定される(
図5参照)。
【0133】
(第2の織り機構120での経糸1011、1031の張り状態)
織機100に3つの経糸群1010、1020、1030が張られた状態では、中心緯糸1001と第2の織り機構120の第2の糸止め部材120dとの間には、第1の経糸1011の第2部分1011bと第2の経糸1021の第1部分1021aとが配置されることとなる(
図5、
図16参照)。
【0134】
このとき、第2の経糸1021の第2部分1021aは、第2の綜絖部材120aの糸通し孔11aを通り、さらに第2の筬部材120bの糸通しスリット(第4のスリット)12bを通るようにする。また、第1の経糸1011の第2部分1011bは、第2の綜絖部材120aの糸通しスリット12aを通り、さらに第2の筬部材110bの糸通しスリット(第3のスリット)11bを通るようにする(
図5、
図10、
図11参照)。
【0135】
第1の経糸1011の第2部分1011bと第2の経糸1021の第1部分1021aとは、第2の綜絖部材120aの手前側(基軸101と反対側)で第2の織り機構120の第2の糸止め部材120dで固定される(
図5参照)。
【0136】
(第3の織り機構130での経糸1021、1031の張り状態)
織機100に3つの経糸群1010、1020、1030が張られた状態では、中心緯糸1001と第3の織り機構130の第3の糸止め部材130dとの間には、第3の経糸1031の第1部分1031aと第2の経糸1021の第2部分1021bとが配置されることとなる(
図5、
図16参照)。
【0137】
このとき、第3の経糸1031の第1部分1031aは、第3の綜絖部材130aの糸通し孔11aを通り、さらに第3の筬部材130bの糸通しスリット(第6のスリット)13bを通るようにする。また、第2の経糸1021の第2部分1021bは、第3の綜絖部材130aの糸通しスリット12aを通り、さらに第3の筬部材130bの糸通しスリット(第5のスリット)12bを通るようにする(
図5、
図10、
図11参照)。
【0138】
第3の経糸1031の第2部分1031aと第2の経糸1021の第2部分1021bとは、第3の綜絖部材130aの手前側(基軸101と反対側)で第3の織り機構130の第3の糸止め部材130dで固定される(
図5参照)。
【0139】
その後、
図15(a)に示すように、一対の側板111に1つの係止め板112を装着する。
【0140】
最初に第1の織り機構110で織り作業を行う場合は、係止め板112は、張られた第1の経糸1011の第1部分1011aおよび第3の経糸1031の第2部分1031bに平行になるよう、第1の織り機構110とは中心緯糸1001を挟んで反対側に位置するように配置する。
図15(b)はこのように係止め板112を一対の側板111に取り付けた状態を示す。
【0141】
(第1の初期工程)
準備工程を終えると、基軸に1つの係止め板のみを装着した上で、第1の織り機構、第2の織り機構、第3の織り機構の内の一つの織り機構(例えば、第1の織り機構)において、筬部材が基軸の係止め板に干渉しない長さまで織る第1の初期工程の織り作業を行う。この第1の初期工程の織り作業について説明する。
【0142】
図17は、第1の織り機構110での第1の初期工程における第1の綜絖部材110aおよび第1の筬部材110bの動きを説明するための模式図である。
【0143】
図15および
図16に示すように3つの経糸群1010、1020、1030の経糸1011、1021、1031が織機100内に張られた状態(
図5参照)から第1の織り機構110で織り作業を行う場合、
図17(a)に示すように、第1の綜絖部材110aをX1方向に移動させると、第1の綜絖部材110aの移動とともに第1の経糸1011の第1部分1011aが押し下げられて第3の経糸1031の第2部分1031bから分離される。これにより第1の経糸群1010の第1部分1011aと第3の経糸1031の第2部分1031bとの間に隙間ができ、2つの経糸群の経糸の間に緯糸を挿入可能となる。このとき、第1の緯糸1111を保持しているシャトル103を、2つの経糸群の経糸の隙間のうちの中心緯糸1001と第1の筬部材110bとの間の部分に通すことで緯糸を2つの経糸群の経糸の間に挿入することができる。
【0144】
その後は、
図17(b)に示すように、第1の筬部材110bを中心緯糸1001に向けて移動させることにより、挿入した緯糸を中心緯糸1001側に詰める。なお、第1の初期工程では、筬部材110bは、中心緯糸1001の間近まで移動させる必要があるので、このような筬部材の移動の邪魔になる第1の布押え部材110cは装着しておらず、さらに、一対の側板111には、同様の理由で1つの係止め板112のみ装着している。
【0145】
続いて、第1の筬部材110bを第1の綜絖部材110aに近接する位置(待機位置)まで戻した状態で、
図17(c)に示すように、第1の綜絖部材110aをX2方向に移動させると、第1の綜絖部材110aの移動とともに第1の経糸1011の第1部分1011aが持ち上げられる。これにより、第1の綜絖部材110aが下側に位置する状態で2つの経糸群の経糸の間に挿入した緯糸が織り込まれることとなる。
【0146】
このとき、第1の経糸群1010の第1部分1011aが第3の経糸1031の第3部分1021bより上側に位置する状態で、これらの経糸間に隙間ができており、この隙間に、第1の緯糸1111を保持しているシャトル103を通すことで、緯糸を2つの経糸群の経糸の間に挿入する。
【0147】
そして、
図17(d)に示すように、第1の筬部材110bを中心緯糸1001に向けて移動させることにより、挿入した緯糸を中心緯糸1001側に詰め、その後、第1の筬部材110bを待機位置まで戻して、第1の綜絖部材110aを再びX1方向に移動させる。
【0148】
このように第1の綜絖部材110aの上下動作と、シャトルの挿入と、第1の筬部材110bの往復移動とを繰り返すことにより、2つの経糸群の経糸が緯糸により織り込まれ、第1の織布片1100が形成されていく。
【0149】
図18は、第1の織り機構110にて第1の初期工程で形成された第1の織布片1100(太い二点鎖線)を示す斜視図である。
【0150】
図18に示すように、第1の織り機構110での第1の初期工程の織り作業で、第1の織布片1100が、筬部材が係止め板に干渉しない以上に織られると、係止め板112を、他の織り機構(第2の織り機構120あるいは第3の織り機構130)で初期工程の織り作業を行うための位置に付け替えて、第1の織り機構110での第1の初期工程と同様の織り作業を行う。
【0151】
図19は、第1、第2、第3の織り機構110、120、130で第1の初期工程が終了した状態を示す模式図である。
【0152】
(第2の初期工程)
3つの織り機構110、120、130での第1の初期工程が完了すると、その後は、一対の側板111に3つの係止め板112を取り付けた状態で、3つの織り機構110、120、130にて順次、織布片1100、1200、1300が第1の布押え部材110cまでの距離まで織る第2の初期工程の作業を行う。
図20は、第1の織り機構110にて織布片1100が第2の初期工程で第1の布押え部材110cまでの距離まで織られた状態を示す斜視図である。
【0153】
このように3つの織り機構110、120、130での第2の初期工程が完了し、各織り機構での織布片の長さが第2の織り長さを超えると、各織り機構では布押え部材110c、120c、130cを取り付ける。
【0154】
図21は、第1、第2、第3の織り機構110、120、130にてそれぞれ、織布片1100、1200、1300の織り長さが各布押え部材110c、120c、130cの位置まで織られた状態を示す模式図である。
【0155】
このように布押え部材を取り付けることで、織布片の表面が基軸101に対して傾斜するのを抑制することができ、織布片を歪みのない平坦な布片に仕上げることができる。
【0156】
その後は、各織り機構110、120、130では、布押え部材110c、120c、130cから筬部材110b、120b、130bの待機位置(綜絖部材110a、120a、130aに近接する位置)まで織布片1100、1200、1300を織る動作と、このようにして織られた3つの織布片1100、1200、1300を巻取り部材としての基軸101で巻き取る作業とを繰り返すことで、所定長さの3つの織布片が三又に分岐した構造を有する織布1000を作製する。
【0157】
(本工程)
第2の初期工程を終了した後、第1の織り機構110にて第1の布押え部材110cを装着した状態で第1の織布片1100を織る本工程の織る作業を説明する。
図22は、第1の織り機構110に第1の布押え部材110cを取り付けた状態での第1の綜絖部材110aおよび第1の筬部材110bの動きを説明するための模式図である。
【0158】
図22(a)に示すように、第1の綜絖部材110aをX1方向に移動させると、第1の綜絖部材110aの移動とともに第1の経糸1011の第1部分1011aが押し下げられて第3の経糸1031の第2部分1031bから分離される。この状態で、第1の緯糸1111を保持しているシャトルを、2つの経糸群の経糸の隙間のうちの中心緯糸1001と第1の筬部材110bとの間の部分に通すことで緯糸を2つの経糸群の経糸の間に挿入する。
【0159】
次に、
図22(b)に示すように、第1の筬部材110bを第1の布押え部材110cに向けて移動させることにより、挿入した緯糸を、すでに織られた第1の織布片1100の最終端側に詰める。
【0160】
続いて、第1の筬部材110bを第1の綜絖部材110aに近接する位置(待機位置)まで戻した状態で、
図22(c)に示すように、第1の綜絖部材110aをX2方向に移動させると、第1の綜絖部材110aの移動とともに第1の経糸1011の第1部分1011aが持ち上げられる。これにより、最後に2つの経糸群の経糸の間に挿入した緯糸が織り込まれることとなる。
【0161】
この状態では、第1の経糸群1010の第1部分1011aと第3の経糸1031の第2部分1031bとの間に隙間ができており、この隙間に、第1の緯糸1111を保持しているシャトルを通すことで、緯糸を2つの経糸群の経糸の間に挿入する。
【0162】
そして、
図22(d)に示すように、第1の筬部材110bを第1の布押え部材110c側に移動させることにより、挿入した緯糸をすでに織られた第1の織布片1100側に詰める。その後、第1の筬部材110bを待機位置まで戻して、第1の綜絖部材110aを再びX1方向に移動させる。
【0163】
このように第1の綜絖部材110aの上下動作と、シャトルの挿入と、第1の筬部材110bの往復移動とを繰り返すことにより、2つの経糸群の経糸が緯糸により織り込まれ、第1の織布片1100が第1の布押え部材110cから第1の糸止め部材110d側に向けて形成されていく。
【0164】
第1の織り機構110で第1の織布片1100が第1の織布片1100の待機位置の手前まで織られると、他の織り機構、例えば、第2の織り機構120で、第1の織り機構110での織り作業と同様の作業により、第2の織布片1200を第2の筬部材120bの待機位置の手前まで織り、さらに、残りの織り機構、例えば、第3の織り機構130で、第2の織り機構120での織り作業と同様の作業により、第3の織布片1300を第3の筬部材130bの待機位置の手前まで織る。
【0165】
この状態まで各織り機構110、120、130での織り作業が行われると、各織り機構ではそれ以上織る作業ができなくなるので、織布片1100、1200、1300のうちの布押え部材から筬部材までの部分を基軸101に巻き取る。
【0166】
図23は、第1、第2、第3の織り機構110、120、130にてそれぞれ織られた織布片1100、1200、1300が巻取り部材101に巻き取られた状態を示す模式図である。
【0167】
このように第1、第2、第3の織り機構110、120、130で織られた織布片1100、1200、1300を巻取り部材101により巻き取った状態では、
図23に示すように、巻取り部材101の係止め板112に回転阻止具102を装着することで、巻き取った織布片が巻き戻されるのを阻止できる。
【0168】
なお、各織り機構110、120、130で形成された織布片1100、1200、1300を巻き取る際には、各織り機構の糸止め部材110d、120d、130dでの経糸の固定を解除し、巻き取った後に再度、各織り機構で経糸を糸止め部材に固定する。
【0169】
このように、本実施形態1では、分岐した布構造を形成する隣接する織布片の間で織り糸を連続させることができ、これにより従来の縫い合わせた分岐織布よりも高い強度を有する新規の分岐織布を得ることができる。
【0170】
また、分岐した布構造を形成する隣接する織布片の間で連続した織り糸を有する新規の織布、およびそのための製造方法および織機を得ることができる。
【0171】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は、従来の縫い合わせた分岐織布よりも高い強度を有する新規の分岐織布、そのような分岐織布のための製造方法や織機を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0173】
1000 織布
1100 第1の織布片
1200 第2の織布片
1300 第3の織布片
1001 中央緯糸
1010 第1の経糸群
1011 第1の経糸群の経糸(第1の経糸)
1011a 第1の経糸の第1部分
1011b 第1の経糸の第2部分
1020 第2の経糸群
1021 第2の経糸群の経糸(第2の経糸)
1021a 第2の経糸の第1部分
1021b 第2の経糸の第2部分
1030 第3の経糸群
1031 第3の経糸群の経糸(第3の経糸)
1031a 第3の経糸の第1部分
1031b 第3の経糸の第2部分
1110 第1の緯糸群
1111 第1の緯糸群の緯糸(第1の緯糸)
1120 第2の緯糸群
1121 第2の緯糸群の緯糸(第2の緯糸)
1130 第3の緯糸群
1131 第3の緯糸群の緯糸(第3の緯糸)
100 織機
101 巻取り部材
111 側板
111a 糸挿入孔
111b 嵌合溝
112 係止め板
112a 嵌合突起
102 回転阻止具
103 シャトル
110 第1の織り機構
110a 第1の綜絖部材
10a 綜絖本体
11a 糸通し孔
12a 糸通しスリット
13a ガイド片
110b 第1の筬部材
10b 筬本体
11b、12b、13b 糸通しスリット
14b ガイド片
110c 第1の布押え部材
10c 布押え本体
11c 補強片
110d 第1の糸止め部材
10d 糸止め本体
11d 第1の固定スリット
12d 第2の固定スリット
13d 固定片
120 第2の織り機構
120a 第2の綜絖部材
120b 第2の筬部材
120c 第2の布押え部材
120d 第2の糸止め部材
130 第3の織り機構
130a 第3の綜絖部材
130b 第3の筬部材
130c 第3の布押え部材
130d 第3の糸止め部材
10 筐体
20 連結フレーム
20a、20b 側壁フレーム
31 第1の綜絖ガイド部
32 第2の綜絖ガイド部
33 第3の綜絖ガイド部
41 第1の筬ガイド部
42 第2の筬ガイド部
43 第3の筬ガイド部
51 第1の糸止め固定部
52 第2の糸止め固定部
53 第3の糸止め固定部
61 第1の布押え固定部
62 第2の布押え固定部
63 第3の布押え固定部