(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109065
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】スライディングノズル装置
(51)【国際特許分類】
B22D 41/34 20060101AFI20230731BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20230731BHJP
F27D 3/14 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B22D41/34
B22D11/10 340D
F27D3/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010447
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今長谷 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晶
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健志
【テーマコード(参考)】
4E014
4K055
【Fターム(参考)】
4E014MA07
4E014MA19
4K055AA04
4K055JA07
(57)【要約】
【課題】スライド金枠が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠を開くときに、スライド金枠が落下することを防止できるスライディングノズル装置を提供する。
【解決手段】固定金枠1と、固定金枠1に対して開閉可能かつスライド可能に設けられているスライド金枠2とを備え、スライド金枠2を開くときスライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられるスライディングノズル装置Sである。固定金枠1には落下防止部材9が設けられると共に、スライド金枠2には係止部材7が設けられ、落下防止部材9は、スライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態においてスライド金枠2が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠2を開くときに、係止部材7を係止する係止面91を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金枠と、前記固定金枠に対して開閉可能かつスライド可能に設けられているスライド金枠とを備え、前記スライド金枠を開くとき当該スライド金枠のスライド方向が鉛直方向になるように立てられるスライディングノズル装置であって、
前記固定金枠には落下防止部材が設けられると共に、前記スライド金枠には係止部材が設けられ、
前記落下防止部材は、前記スライド金枠のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態において前記スライド金枠が最も上側に移動した位置である最上位置で前記スライド金枠を開くときに、前記係止部材を係止する係止面を有するスライディングノズル装置。
【請求項2】
前記落下防止部材は、前記最上位置より下側の位置で前記スライド金枠を開くときに、前記係止部材と当接する当接面を有する、請求項1に記載のスライディングノズル装置。
【請求項3】
前記係止部材は、本体部と、前記本体部から突出する突出部とを有し、
前記最上位置で前記スライド金枠を開くときに、前記突出部が前記落下防止部材の前記係止面に係止される、請求項1又は2に記載のスライディングノズル装置。
【請求項4】
前記固定金枠には、前記スライド金枠を回転可能に支持するヒンジ軸が設けられ、
前記突出部は軸受孔を有し、
前記スライド金枠を開くときに、前記ヒンジ軸が前記軸受孔に挿入される、請求項3に記載のスライディングノズル装置
【請求項5】
前記スライド金枠は、当該スライド金枠をスライドさせる駆動装置の連結部と連結される接続部を備え、
前記接続部と前記係止部材には、前記接続部と前記係止部材を連結するピンが挿入され、
前記スライド金枠を開いたとき、前記落下防止部材が前記ピンの移動を制限する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスライディングノズル装置。
【請求項6】
前記駆動装置の連結部には、当該連結部が最も上側に移動した位置である最上位置より下側の位置にあるときに前記スライド金枠を閉めることができないようにする阻止部材が設けられている、請求項5に記載のスライディングノズル装置。
【請求項7】
前記スライド金枠をスライドさせる駆動装置を備え、
前記スライド金枠を開くときに当該スライド金枠のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態において、前記駆動装置は前記スライド金枠の下方に位置する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のスライディングノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋などの溶融金属容器の底部に取り付けられ、溶融金属容器から流出する溶鋼の量を調整するスライディングノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライディングノズル装置は、2枚又は3枚のノズル孔を有する耐火物製の耐火プレートを高圧で挟んだ状態(面圧を負荷した状態)で、これらのうち1枚の耐火プレートをスライドさせることにより、ノズル孔の開度を変えて、溶融金属容器から流出する溶鋼の量を調整する。このスライドする耐火プレートはスライド金枠に収納されており、スライド金枠は整備時に耐火プレートの交換等をするため固定金枠に対して開閉可能に設けられている。また、スライド金枠は耐火プレートをスライドさせるため固定金枠に対してスライド可能に設けられている。さらに、スライド金枠には、そのスライド金枠をスライドさせるため油圧シリンダーなどの駆動装置が連結されている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなスライディングノズル装置を整備する場合、スライディングノズル装置はスライド金枠のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態で整備場に設置される。このとき、スライド金枠をスライドさせるための駆動装置はスライディング装置の上側又は下側に設けられ、スライド金枠は上下方向に移動可能となっている。そして、スライド金枠を開閉する場合は、一般的にスライド金枠が最も下側に移動した位置である最下位置で開閉を行っていた。
【0004】
一方で、スライド金枠が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠の開閉を行いたい場合もある。ところが、スライド金枠の開閉を最上位置で行う場合、スライド金枠を開くときにスライド金枠が最下位置まで落下し、スライディングノズル装置が損傷する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スライド金枠が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠を開くときに、スライド金枠が落下することを防止できるスライディングノズル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、次のスライディングノズル装置が提供される。
固定金枠と、前記固定金枠に対して開閉可能かつスライド可能に設けられているスライド金枠とを備え、前記スライド金枠を開くとき当該スライド金枠のスライド方向が鉛直方向になるように立てられるスライディングノズル装置であって、
前記固定金枠には落下防止部材が設けられると共に、前記スライド金枠には係止部材が設けられ、
前記落下防止部材は、前記スライド金枠のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態において前記スライド金枠が最も上側に移動した位置である最上位置で前記スライド金枠を開くときに、前記係止部材を係止する係止面を有する、スライディングノズル装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスライディングノズル装置によれば、スライド金枠が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠を開くときに、スライド金枠が落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるスライディングノズル装置の斜視図であり、(a)はノズル孔の開度を全閉にした状態、(b)は固定金枠に対してスライド金枠を開閉するときの状態を示す。
【
図2】
図1に示したスライディングノズル装置の縦断面図であり、(a)は
図1(a)のA-A断面図、(b)は
図1(b)のB-B断面図。
【
図3】固定金枠に対してスライド金枠を全開にした状態のスライディングノズル装置の斜視図。
【
図5】
図1(b)の状態を斜め下方から見た斜視図。
【
図6】
図5の状態から駆動装置の駆動軸を後退限にしたときの状態を示す斜視図。
【
図7】
図6の状態から係止部材の本体部及びスライド金枠の接続部と、駆動装置の連結部との連結状態を変更した状態を示す斜視図。
【
図9】
図1(b)の状態からスライド金枠2を少し開いた状態を、両側のバネボックス等を省略して示す斜視図。
【
図10】
図9の状態からスライド金枠をさらに開いてスライド金枠を全開にした状態を、両側のバネボックス等を省略して示す斜視図。
【
図11】整備中に誤って駆動装置の駆動軸を後退させる操作を行ったときの状態を示す斜視図。
【
図12】スライド金枠を開いたときに、落下防止部材が連結ピンの移動を制限している状態を示す斜視図。
【
図13】駆動装置の連結部が、
図3の最上位置より下側の位置に移動した状態を示す斜視図。
【
図14】
図13の状態からスライド金枠を閉じようとしたときの阻止部材の作用を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本発明の一実施形態であるスライディングノズルを斜視図で示しており、同図(a)にはノズル孔の開度を全閉にした状態、同図(b)には固定金枠に対してスライド金枠を開閉するときの状態を示している。また、
図2には、
図1に示したスライディングノズル装置の縦断面を示し、同図(a)は
図1(a)のA-A断面、同図(b)は
図1(b)のB-B断面を示している。また、
図3には固定金枠に対してスライド金枠を全開にした状態のスライディングノズル装置を斜視図で示している。なお、スライド金枠を開閉する作業は、上述の通りスライディングノズル装置を鉛直状態に立てた状態で行うので、
図1~
図3ではスライディングノズル装置を鉛直状態に立てた状態で示している。後述する
図4以降においても同様である。
【0011】
本実施形態のスライディングノズル装置Sは、固定金枠1と、固定金枠1に対してスライド可能かつ開閉可能に設けられたスライド金枠2と、固定金枠1の両側に回転可能に設けられた2つのバネボックス3とを有している。
【0012】
固定金枠1は略長方形をした板状の部材であり、内部に耐火プレート4Aを収納するためのプレート収納部11が形成されている。固定金枠1は、図示しないボルトで例えば取鍋などの溶融金属容器の底に固定される。
スライド金枠2も略長方形をした板状の部材であり、内部に耐火プレート4Bを収納するためのプレート収納部21が形成されている。
【0013】
スライディングノズル装置Sでは、固定金枠1のプレート収納部11に装着された耐火プレート4Aと、スライド金枠2のプレート収納部21に装着された耐火プレート4Bとを対向させた状態で耐火プレート4Aと耐火プレート4Bとの間に面圧を負荷し、スライド金枠4をスライドさせることで溶融金属容器から流出する溶鋼の量を調整する。すなわち、耐火プレート4A及び耐火プレート4Bにはそれぞれノズル孔4A-1及びノズル孔4B-1が設けられており、スライド金枠2をスライドさせることより、ノズル孔4A-1及びノズル孔4B-1の重なりにより形成されるノズル孔の開度を変えて、溶融金属容器から流出する溶鋼の量を調整する。なお、耐火プレート4Bには下ノズル5が接合されている。
【0014】
ここで、
図1(a)及び
図2(a)にはノズル孔の開度を全閉にした状態を示している。鋳造場などで使用後、スライディングノズル装置はこの全閉状態となっている。そして、スライディングノズル装置を整備する場合、スライディングノズル装置はこの全閉状態で整備場に搬入され、その後、
図1(a)及び
図2(a)に示しているようにスライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられる。なお、以下の説明では、この全閉状態でのスライド金枠2の位置を「全閉位置」という。
【0015】
整備場においてスライディングノズル装置を整備するためにスライド金枠2を開くときには、
図1(b)及び
図2(b)に示しているように、スライド金枠2を全閉位置より上側の位置である開閉位置に移動させる。この開閉位置はスライド金枠2が最も上側に移動した位置である最上位置である。
本実施形態ではスライド金枠2が全閉位置にあるときは耐火プレート4Aと耐火プレート4Bとの間に面圧が負荷されている。そしてスライド金枠2を最上位置まで移動させると面圧が解除される。すなわち、本実施形態において面圧の負荷又は解除は、スライド金枠2のスライド方向に沿った移動と2つのバネボックス3とを利用して行う。なお、スライド金枠2のスライド方向に沿った移動と2つのバネボックス3とにより面圧を負荷又は解除する機構は周知であるので説明を省略する。
【0016】
図3に表れているように、固定金枠1にはスライド金枠2のヒンジ22を回転可能かつスライド可能に支持するヒンジ軸12が設けられている。同図には表れていないが、ヒンジ22にはヒンジ軸12を回転可能かつスライド可能に支持するために貫通孔が設けられ、この貫通孔にヒンジ軸12が貫入されている。すなわち、本実施形態においてスライド金枠2は、ヒンジ22の貫通孔に貫入されたヒンジ軸12を回転中心として回転することで、固定金枠1に対して開閉可能となっている。また、本実施形態においてスライド金枠2は、ヒンジ22の貫通孔に貫入されたヒンジ軸12に沿ってスライドすることで、固定金枠1に対してスライド可能となっている。なお、
図1(a)に表れているヒンジ軸12の下端が、後述する軸受孔721に挿入されるようになっている。
【0017】
スライディングノズル装置Sは、スライド金枠をスライドさせる駆動装置6を備えている。本実施形態において駆動装置6は、スライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態においてスライド金枠2の下方に位置し、支持フレーム13によって固定金枠1側に設置されている。また、本実施形態では駆動装置6として油圧シリンダーを使用している。
スライド金枠2は、駆動装置6の連結部61と連結される接続部23を備えている。また詳細は後述するが、スライド金枠2には係止部材7が設けられている。そして接続部23と係止部材7には、これら接続部23と係止部材7を連結するピン(以下「連結ピン」という。)8が抜き差し可能に挿入されている。本実施形態において連結ピン8は、接続部23に設けられた貫通孔231及び係止部材7の本体部71に設けられた貫通孔711に抜き差し可能に挿入されている。
【0018】
駆動装置6の連結部61は、駆動装置6の駆動軸62の先端に固定されている。
図4に、連結部61単体を斜視図で示している。上述の
図1~3と共に
図4を参照すると、連結部61は、基端フレーム611と、この基端フレーム611からスライド金枠2のスライド方向に伸びる2つの対向する平行フレーム612とを有し、2つの対向する平行フレーム612の間には、スライド金枠2の接続部23が挿入される空間613を有している。また、2つの平行フレーム612は、その先端側に固定金枠1とは反対側が開口する溝状凹部614を、基端側(駆動装置6側)に貫通孔615を、それぞれ有している。そして、2つの平行フレーム612のそれぞれの溝状凹部614どうし、及び貫通孔615どうしは、スライド方向に対して直角方向の中心軸が共通している。なお、詳細は後述するが、連結部61には、この連結部61が最も上側に移動した位置である最上位置より下側の位置にあるときにスライド金枠2を閉めることができないようにする阻止部材10が設けられている。
一方、スライド金枠2の接続部23は、スライド金枠2のスライド方向である長手方向中心軸に沿って中央部から延び、その先端側に貫通孔231を有する。この接続部23は、その先端が駆動装置6の連結部61の基端フレーム611に当接可能で、しかも当接したときにそれぞれの貫通孔615、231が整合するようになっている。
【0019】
係止部材7の本体部71及びスライド金枠2の接続部23と、駆動装置6の連結部61との連結についてさらに詳しく説明すると、
図1(a)及び
図2(a)に示しているようにスライド金枠2が全閉位置にあるとき、すなわち耐火プレート4Aと耐火プレート4Bとの間に面圧が負荷されているときは、連結ピン8が、係止部材7の本体部71の貫通孔711、スライド金枠2の接続部23の貫通孔231及び駆動装置6の連結部61の貫通孔615に挿入することにより、係止部材7の本体部71及びスライド金枠2の接続部23と、駆動装置6の連結部61とが連結されている。なお、スライド金枠2が全閉位置にあるとき、駆動装置6の駆動軸62は
図2(a)に表れているように前進限である。
【0020】
次に耐火プレート4Aと耐火プレート4Bとの間の面圧を解除するには、
図1(b)及び
図2(b)に示しているように、スライド金枠2を最上位置まで移動させる。具体的には、面圧が負荷されている
図1(a)及び
図2(a)の状態において貫通孔711、貫通孔231及び貫通孔615に挿入されている連結ピン8を引き抜く。そして、駆動装置6の駆動軸62を後退させて、駆動装置6の連結部61の溝状凹部614と、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231とを整合させる。続いて駆動装置6の連結部61の溝状凹部614と、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231に連結ピン8を挿入して連結したうえで、駆動装置6の駆動軸62を前進限にする。これにより、
図1(b)及び
図2(b)に示しているようにスライド金枠2が最上位置まで移動し面圧が解除される。なお、
図5には、
図1(b)の状態を斜め下方から見た斜視図を示している。
【0021】
一方、面圧を負荷するには、
図5の状態から駆動装置6の駆動軸62を後退限にする。これにより、
図6に示しているようにスライド金枠2が面圧負荷位置まで移動し、その途中で面圧が負荷される。その後、駆動装置6の連結部61の溝状凹部614と、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231に挿入されている連結ピン8を引き抜く。そして、駆動装置6の駆動軸62を前進させて、駆動装置6の連結部61の貫通孔614と、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231とを整合させたうえで、
図7に示しているように駆動装置6の連結部61の貫通孔615と、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231に連結ピン8を挿入して連結する。その後、駆動装置6の駆動軸62を前進限にすると、スライド金枠2のスライド方向の位置が
図1(a)及び
図2(a)に示した全閉位置となる。上述の通りスライド金枠2が全閉位置にあるときは耐火プレート4Aと耐火プレート4Bとの間に面圧が負荷されており、この全閉状態で鋳造場へ移送される。
【0022】
以上のように本実施形態では、鋳造場で使用されるときは、駆動装置6の連結部61の貫通孔615と、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231に連結ピン8を挿入することにより、係止部材7の本体部71及びスライド金枠2の接続部23と、駆動装置6の連結部61とが連結されている。一方、整備場で面圧を負荷又は解除するときには、駆動装置6の連結部61の溝状凹部614と、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231に連結ピン8を挿入することにより、係止部材7の本体部71及びスライド金枠2の接続部23と、駆動装置6の連結部61とが連結されている。
【0023】
図1及び
図5~7に表れているように、本実施形態において固定金枠1には落下防止部材9が設けられている。また、スライド金枠2には上述の通り係止部材7が設けられている。
図8に、落下防止部材9及び係止部材7の単体を斜視図で示している。この
図8における落下防止部材9及び係止部材7の位置関係は、両部材の形状が明確に表れるように、
図1(a)において全閉位置にあるスライド金枠2をさらに下方に移動させた状態としている。
また
図9には、
図1(b)の状態からスライド金枠2を少し開いた状態を、両側のバネボックス3等を省略して示している。さらに
図10には、
図9の状態からスライド金枠をさらに開いてスライド金枠を全開にした状態を、両側のバネボックス3等を省略して示している。
【0024】
図1及び
図5~10を参照しつつ落下防止部材9及び係止部材7の構成を説明する。落下防止部材9は、スライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態においてスライド金枠2が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠2を開くときに係止部材7を係止する係止面91を有する。また、本実施形態において落下防止部材9は、上述の最上位置より下側の位置でスライド金枠2を開くときに、係止部材7と当接する当接面92をさらに有する。
本実施形態において係止部材7は、本体部71と、本体部71から突出する突出部72とを有する。本体部71は、スライド金枠2のスライド方向である長手方向中心軸よりヒンジ22側の位置からスライド金枠2の長手方向に沿って延びている。すなわち本体部71は、上述のスライド金枠2の接続部23と対向するように設けられ、本体部71と接続部23との間には、上述の2つの対向する平行フレーム612のうちヒンジ軸12側に位置する平行フレーム612が挿入可能となっている。
【0025】
突出部72は、本体部71からヒンジ22側に向けて突出している。そして、上述の最上位置でスライド金枠2を開くときに、突出部72の下面が落下防止部材9の係止面91に係止されるようになっている。また突出部72は、平面形状が略四分円であり、その略四分円の略中心位置に軸受孔721を有する。この軸受孔721には、上述の最上位置でスライド金枠2を開くときに、ヒンジ軸12の下端が挿入され、これにより軸受孔721の中心がヒンジ軸12の中心軸線と整合するようになっている。すなわちスライド金枠2を開くとき、突出部72はヒンジ軸12の下端を回転中心として回転する。このようにスライド金枠2を開くときにヒンジ軸12が軸受孔721に挿入されることで、スライド金枠2を開くときの係止部材7のぶれが防止され、スライド金枠2をスムーズに開くことができる。
【0026】
また、
図8に示しているように突出部72は、落下防止部材9の当接面92とわずかな隙間Wを介して対向する対向面722を有している。また、対向面722は、突出部72がヒンジ軸12の下端を回転中心として回転するときの半径方向外側に凹面部723を有する。また、落下防止部材9の当接面92は、凹面部723と整合する凸面部921を有する。さらに、凸面部921の上端部には下方に傾斜する傾斜面922が形成されている。
ここで、
図8に示している隙間Wは
図1(a)のような面圧負荷時に形成されている。すなわち、本実施形態のスライディングノズル装置Sでは、面圧負荷状態において、突出部72の対向面722と落下防止部材9の当接面92との間に隙間Wがあるので、スライド金枠2がスライドする際に係止部材7と落下防止部材9が擦れて損傷することはない。
【0027】
次に、スライド金枠2を開閉する手順について説明する。
上述の通りスライディングノズル装置を整備する場合、スライド金枠2が全閉位置にある全閉状態で整備場に搬入され、その後、
図1(a)及び
図2(a)に示しているようにスライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられる。なお、この全閉状態では耐火プレート4Aと耐火プレート4Bとの間に面圧が負荷されている。
続いて、
図1(b)、
図2(b)及び
図5に示しているようにスライド金枠2を最上位置まで移動させて面圧を解除する。なお、スライド金枠2を全閉位置から最上位置まで移動させる手順は上述の通りである。
【0028】
スライド金枠2が最上位置まで移動すると、係止部材7の突出部72に設けられている軸受孔721に、ヒンジ軸12の下端が挿入される。また、係止部材7の突出部72の下面の高さレベルが落下防止部材9の係止面91の高さレベルと一致する。この状態から、ヒンジ軸12を回転中心としてスライド金枠2を開方向に回転させると、
図9及び
図10に示しているように、スライド金枠2は、係止部材7の突出部72の下面が落下防止部材9の係止面91に係止されながら開方向に回転する。このとき、落下防止部材9の当接面92とわずかな隙間Wを介して対向する対向面722の半径方向外側には凹面部723があり、落下防止部材9の当接面92には凹面部723と整合する凸面部921があり、さらに凸面部921の上端部には下方に傾斜する傾斜面922があるから、スライド金枠2を開方向に回転させると、直ちに突出部72の下面の半径方向外側の面が傾斜面922に案内されるようにして落下防止部材9の係止面91にスムーズに係止される。
また、このとき駆動装置6の連結部61も最上位置にあり、連結部61に設けられている阻止部材10は、スライド金枠2を開方向に回転させる際に、係止部材7の本体部71と接続部23との間を通過し、スライド金枠2の開閉の障害となることはない。
【0029】
一方、スライド金枠2が最上位置より下側の位置、例えば
図11に示すように整備中に誤って駆動装置6の駆動軸62を後退させる操作を行ったときの位置でスライド金枠2を開くときには、係止部材7の突出部72の対向面722が落下防止部材9の当接面92と当接する。そのため、スライド金枠2が最上位置より下側の位置、例えば上述の
図11に示す位置にある状態ではスライド金枠2を開くことができない。
【0030】
このように本実施形態では、スライド金枠2が最上位置にあるときにのみスライド金枠2を開くことができ、スライド金枠2が最上位置より下側の位置にあるときはスライド金枠2を開くことができない。そして、スライド金枠2が最上位置にあるときにスライド金枠2を開く際には、上述の通り係止部材7の突出部72の下面が落下防止部材9の係止面91に係止されるから、スライド金枠2が落下することを防止できる。
【0031】
スライド金枠2を全開にした状態では
図10に表れているように、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231に挿入されている連結ピン8の一端すなわちヒンジ22側の端部が、落下防止部材9の当接面92と対向する。そのため、連結ピン8がヒンジ22側に移動したとしても
図12に示すように、連結ピン8のヒンジ22側の端部が落下防止部材9の当接面92に当接し、これにより連結ピン8のヒンジ22側への移動が制限されて、連結ピン8が係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231から抜け落ちることが防止される。また、本実施形態において連結ピン8のヒンジ22側の端部には取手81が設けられており、この取手81が連結ピン8のヒンジ22側とは反対側への移動を制限する。すなわち、連結ピン8がヒンジ22側とは反対側へ移動したとしても、連結ピン8の取手81が係止部材7の本体部71のヒンジ22側の側面に当接し、これにより連結ピン8のヒンジ22側とは反対側への移動が制限されて、連結ピン8が係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231から抜け落ちることが防止される。
【0032】
次に、スライド金枠2を閉じる際は、スライド金枠2は上述の開く際とは逆に、
図10、
図9、
図5の順に閉方向に回転する。すなわち、
図10及び
図9の状態ではスライド金枠2は、係止部材7の突出部72の下面が落下防止部材9の係止面91に係止されながら閉方向に回転する。その後、スライド金枠2が、係止部材7の突出部72の下面が落下防止部材9の係止面91に係止されなくなるまで閉方向に回転しても、連結ピン8が駆動装置6の連結部61の溝状凹部614に挿入され、最終的には
図5の状態となる。このように本実施形態では、スライド金枠2を閉じる際にもスライド金枠2が落下することを防止できる。
【0033】
ここで、
図10、
図9、
図5の状態では、駆動装置6の連結部61も最上位置にあり、連結部61に設けられている阻止部材10は、スライド金枠2を閉方向に回転させる際に、係止部材7の本体部71と接続部23との間を通過し、スライド金枠2を閉じる際の障害となることはない。
一方で、
図13に示しているように、駆動装置6の誤操作等により駆動装置6の連結部61が最上位置より下側の位置にある場合、
図14に示しているように、係止部材7の本体部71の貫通孔711及びスライド金枠2の接続部23の貫通孔231に挿入されている連結ピン8が阻止部材10に突き当たる。そのため、スライド金枠2を閉めることができない。
なお、本実施形態において
図14のように連結ピン8が阻止部材10に突き当たるとき、係止部材7の突出部72は落下防止部材9の係止面91に係止された状態にある。そのため、駆動装置6の連結部61が最上位置より下側の位置に移動しているときに、スライド金枠2を閉じようとしてもスライド金枠2が落下することはない。
このように本実施形態において阻止部材10は、駆動装置6の連結部61が最上位置より下側の位置にあるときにスライド金枠2を閉めることができないようにする。駆動装置6の連結部61が最上位置より下側の位置にあるときにスライド金枠2を閉めることができると、スライド金枠2が、係止部材7の突出部72の下面が落下防止部材9の係止面91に係止されなくなるまで閉方向に回転したときに、スライド金枠2が落下するおそれがある。
【0034】
以上のように本実施形態によれば、スライド金枠2が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠2を開くときにスライド金枠2が落下することを防止できると共に、最上位置で開いたスライド金枠を閉じるときにもスライド金枠2が落下することを防止できる。
【0035】
なお、本実施形態において駆動装置6は、スライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態においてスライド金枠2の下方に位置するが、スライド金枠2の上方に位置してもよい。この場合も、スライド金枠2が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠2を開閉する。
【0036】
一方で、従来のスライディングノズル装置では一般的に、駆動装置がスライド金枠の上方に位置する場合、スライド金枠が最も下側に移動した位置である最下位置でスライド金枠を開閉するようにしている。開閉時にスライド金枠が落下しないようにするためである。そこで、本実施形態のように駆動装置6がスライド金枠2の下方に位置する場合にはスライド金枠2が最も上側に移動した位置である最上位置でスライド金枠2を開閉し、駆動装置6がスライド金枠2の上方に位置する場合にはスライド金枠2が最も下側に移動した位置である最下位置でスライド金枠2を開閉するようにすることもできる。そうすれば、駆動装置6がスライド金枠2の上方に位置する場合と下方に位置する場合で、駆動装置6を支持する支持フレーム13の設計を共通化することができる。この点から本発明では本実施形態のように、スライド金枠2を開くときにスライド金枠2のスライド方向が鉛直方向になるように立てられた状態において、駆動装置6はスライド金枠2の下方に位置することが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
S スライディングノズル装置
1 固定金枠
11 プレート収納部
12 ヒンジ軸
13 支持フレーム
2 スライド金枠
21 プレート収納部
22 ヒンジ
23 接続部
231 貫通孔
3 バネボックス
4A,4B 耐火プレート
4A-1,4B-1 ノズル孔
5 下ノズル
6 駆動装置
61 連結部
611 基端フレーム
612 平行フレーム
613 空間
614 溝状凹部
615 貫通孔
62 駆動軸
7 係止部材
71 本体部
711 貫通孔
72 突出部
721 軸受孔
722 対向面
723 凹面部
8 連結ピン
81 取手
9 落下防止部材
91 係止面
92 当接面
921 凸面部
922 傾斜面
10 阻止部材