(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109067
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】両軸受リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
A01K89/015 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010450
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】原口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 聡
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108ED02
2B108ED08
2B108ED20
2B108ED26
2B108ED29
(57)【要約】
【課題】クラッチカムの設計に関する制限を緩和できる両軸受リールを、提供する。
【解決手段】両軸受リール1は、リール本体3と、スプール5と、ハンドル7と、クラッチ操作部材9と、クラッチ制御機構17と、を備える。クラッチ操作部材9は、第1位置と、第2位置と、第1位置及び第2位置の間に位置する第3位置との間で、リール本体3に対して移動する。クラッチ制御機構17は、クラッチ爪47と、クラッチカム49と、を有する。クラッチカム49は、クラッチ爪47によって押圧されることによって、所定の第1方向にのみ回転する。クラッチ操作部材9が第1位置から第2位置に向けて移動する場合に、第1押圧部63aは第1被押圧部69aを押圧する。クラッチ操作部材9が第3位置から第2位置に向けて移動する場合に、第2押圧部63bは第2被押圧部69bを押圧する。
【選択図】
図3D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、
前記リール本体に対して回転可能に構成されるスプールと、
前記リール本体に対して回転可能に構成されるハンドルと、
前記スプール及び前記ハンドルの間に設けられるクラッチ機構と、
前記リール本体に対して移動可能に設けられ、第1位置と、第2位置と、前記第1位置及び前記第2位置の間に位置する第3位置との間で、前記リール本体に対して移動するクラッチ操作部材と、
前記クラッチ操作部材に設けられるクラッチ爪と、前記クラッチ爪によって押圧されることによって所定の第1方向にのみ回転するクラッチカムと、を有し、前記クラッチカムの回転によって前記クラッチ機構を制御するクラッチ制御機構と、
を備え、
前記クラッチ爪は、第1押圧部と、前記第1押圧部とは異なる第2押圧部と、を有し、
前記クラッチカムは、前記第1押圧部に押圧される第1被押圧部と、前記第1被押圧部より前記第1方向と反対の第2方向側に配置され前記第2押圧部に押圧される第2被押圧部と、を有し、
前記クラッチ操作部材が前記第1位置から前記第2位置に向けて移動する場合に、前記第1押圧部が前記第1被押圧部を押圧し、
前記クラッチ操作部材が前記第3位置から前記第2位置に向けて移動する場合に、前記第2押圧部が前記第2被押圧部を押圧する、
両軸受リール。
【請求項2】
前記クラッチ制御機構は、前記クラッチカムの回転によって、前記クラッチ機構を、第1状態と、前記第1状態とは異なる第2状態とに切り換える、
請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記第1状態は、前記ハンドルの回転力を前記スプールに伝達する伝達状態であり、
前記第2状態は、前記スプールに対する前記ハンドルの回転力の伝達を遮断する遮断状態である、
請求項2に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記クラッチカムの回転中心軸に関する軸方向において、前記第2被押圧部は前記第1被押圧部と少なくとも部分的にずれる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項5】
前記クラッチ爪は、前記第1被押圧部に対する前記第2押圧部の係合を規制する壁部、をさらに有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項6】
前記クラッチ爪は、前記クラッチ操作部材を前記リール本体に対して前記第3位置で位置決めする位置決め部、をさらに有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項7】
前記第1押圧部及び前記第2押圧部を有する爪部と、前記位置決め部とは、別部材である、
請求項6に記載の両軸受リール。
【請求項8】
前記爪部は樹脂によって形成され、前記位置決め部は金属によって形成される、
請求項7に記載の両軸受リール。
【請求項9】
前記クラッチ操作部材は、前記リール本体及び前記クラッチカムの間に配置され前記クラッチカムを回転可能に支持する支持プレート、を有し、
前記クラッチカムは、環状部と、前記環状部の外周面から突出し前記第1被押圧部及び前記第2被押圧部を構成する被押圧爪と、を有し、
前記支持プレート及び前記被押圧爪の間には隙間が設けられる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項10】
前記クラッチ操作部材は、前記リール本体及び前記クラッチカムの間に配置され前記クラッチカムを回転可能に支持する支持プレート、を有し、
前記クラッチ爪は、前記クラッチ操作部材を前記リール本体に対して前記第3位置で位置決めする位置決め部と、前記位置決め部に設けられるカバー部と、を有し、
前記クラッチ操作部材が前記リール本体に対して前記第3位置に位置した状態で、前記クラッチ爪及び前記支持プレートを軸方向外側から見た場合に、前記カバー部の少なくとも一部が前記支持プレートに重なる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項11】
前記リール本体は、軸部を有し、
前記クラッチ爪は、前記クラッチ操作部材を前記リール本体に対して前記第3位置で位置決めする位置決め部、をさらに有し、
前記位置決め部は、前記軸部に係合する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項12】
前記リール本体は、凹部を有し、
前記クラッチ爪は、前記クラッチ操作部材を前記リール本体に対して前記第3位置で位置決めする位置決め部、をさらに有し、
前記位置決め部は、本体部と、前記本体部に配置される係合部と、前記本体部及び前記係合部の間に配置され前記係合部を付勢する付勢部材と、を有し、
前記係合部は前記凹部に係合する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項13】
前記クラッチ爪は、前記第1押圧部を含む第1クラッチ爪と、前記第2押圧部を含む第2クラッチ爪と、を有する、
請求項1に記載の両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の両軸受リールは、ハンドルの回転力をスプールに伝達及び遮断するクラッチ機構と、クラッチ操作部材の操作によってクラッチ機構を伝達状態及び遮断状態に切り換えるクラッチ制御機構と、を備えている。
【0003】
この構成では、クラッチ操作部材を第1位置から第2位置に移動することによってクラッチカムが回転し、クラッチ制御機構がクラッチ機構を伝達状態及び遮断状態に交互に切り換える。この場合、クラッチ機構が伝達状態である場合と、クラッチ機構が遮断状態である場合との両方において、クラッチ操作部材は第1位置に配置される。
【0004】
特許文献2の両軸受リールは、特許文献1の両軸受リールと同様に、クラッチ機構と、クラッチ制御機構と、を備えている。クラッチ制御機構は、クラッチ爪と、クラッチカムと、を有する。
【0005】
この構成では、クラッチ爪が1つの爪先を有している。クラッチ操作部材が第1位置から第2位置に向けて移動する場合、クラッチ爪の爪先はクラッチカムのラチェット歯を押圧する。これにより、クラッチカムは回転し、クラッチ制御機構がクラッチ機構を伝達状態から遮断状態に切り換える。クラッチ機構が遮断状態である場合、クラッチ操作部材は、第1位置及び第2位置の間に位置する第3位置に、配置される。
【0006】
クラッチ操作部材が第3位置から第2位置に向けて移動する場合、クラッチ爪の爪先はクラッチカムの第1位置決め部を押圧する。これにより、クラッチカムは回転し、クラッチ制御機構がクラッチ機構を遮断状態から伝達状態に切り換える。クラッチ機構が伝達状態である場合、クラッチ操作部材は第1位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6518514号公報
【特許文献2】特許第6914052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の両軸受リールでは、クラッチ機構が伝達状態である場合と、クラッチ機構が遮断状態である場合との両方において、クラッチ操作部材は第1位置に配置されるので、釣り人はクラッチ操作部材の位置を見てクラッチ機構の状態を判断することが難しい。また、クラッチ機構が遮断状態である場合にクラッチ操作部材が第1位置に配置されると、釣り人がサミングを行うためのスペースが狭くなる。
【0009】
特許文献2の両軸受リールでは、クラッチ機構が遮断状態である場合、クラッチ操作部材は、第1位置及び第2位置の間に位置する第3位置に、配置されるので、上記の特許文献1で生じた問題は解決される。しかしながら、特許文献2の両軸受リールでは、1つの爪先だけで、クラッチカムのラチェット歯及びクラッチカムの第1位置決め部を押圧する必要があったので、クラッチカムの外周に配置されるラチェット歯及び第1位置決め部を増やすためには、クラッチカムを大径化する必要があった。あるいは、ラチェット歯及び第1位置決め部の数を変更することなく、クラッチカムを小径化することが難しかった。
【0010】
本発明の目的は、クラッチカムの設計に関する制限を緩和できる両軸受リールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面に係る両軸受リールは、リール本体と、スプールと、ハンドルと、クラッチ機構と、クラッチ操作部材と、クラッチ制御機構と、を備える。スプールは、リール本体に対して回転可能に構成される。ハンドルは、リール本体に対して回転可能に構成される。クラッチ機構は、スプール及びハンドルの間に設けられる。
【0012】
クラッチ操作部材は、リール本体に対して移動可能に設けられる。クラッチ操作部材は、第1位置と、第2位置と、第1位置及び第2位置の間に位置する第3位置との間で、リール本体に対して移動する。
【0013】
クラッチ制御機構は、クラッチ爪と、クラッチカムと、を有する。クラッチ爪は、クラッチ操作部材に設けられる。クラッチカムは、クラッチ爪によって押圧されることによって、所定の第1方向にのみ回転する。クラッチ制御機構は、クラッチカムの回転によってクラッチ機構を制御する。
【0014】
クラッチ爪は、第1押圧部と、第1押圧部とは異なる第2押圧部と、を有する。クラッチカムは、第1被押圧部と、第2被押圧部と、を有する。第1被押圧部は、第1押圧部に押圧される。第2被押圧部は、第1被押圧部より第2方向側に配置される。第2方向は、第1方向とは反対の方向である。第2被押圧部は、第2押圧部に押圧される。
【0015】
クラッチ操作部材が第1位置から第2位置に向けて移動する場合に、第1押圧部は第1被押圧部を押圧する。クラッチ操作部材が第3位置から第2位置に向けて移動する場合に、第2押圧部は第2被押圧部を押圧する。
【0016】
本両軸受リールでは、クラッチ操作部材の位置に応じて、2つの押圧部(第1押圧部及び第2押圧部)が2つの被押圧部(第1被押圧部及び第2被押圧部)を各別に押圧する。これにより、従来技術と比較して、第1被押圧部の数を増やすことができる。あるいは、第1被押圧部の数を変更することなく、クラッチカムを小径化することができる。すなわち、本両軸受リールでは、従来技術と比較して、クラッチカムの設計に関する制限を緩和することができる。
【0017】
本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、好ましくは、クラッチ制御機構は、クラッチカムの回転によって、クラッチ機構を、第1状態と、第1状態とは異なる第2状態とに切り換える。
【0018】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、以下のように構成される。第1状態は、ハンドルの回転力をスプールに伝達する伝達状態である。第2状態は、スプールに対するハンドルの回転力の伝達を遮断する遮断状態である。
【0019】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、クラッチカムの回転中心軸に関する軸方向において、第2被押圧部は第1被押圧部と少なくとも部分的にずれる。
【0020】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、クラッチ爪は、第1被押圧部に対する第2押圧部の係合を規制する壁部、をさらに有する。
【0021】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、クラッチ爪は、クラッチ操作部材をリール本体に対して第3位置で位置決めする位置決め部、をさらに有する。
【0022】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、第1押圧部及び第2押圧部を有する爪部と、位置決め部とは、別部材である。
【0023】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、以下のように構成される。爪部は樹脂によって形成される。位置決め部は金属によって形成される。
【0024】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、以下のように構成される。クラッチ操作部材は、支持プレートを有する。支持プレートは、クラッチカムを回転可能に支持する。支持プレートは、リール本体及びクラッチカムの間に配置される。クラッチカムは、環状部と、被押圧爪と、を有する。被押圧爪は、環状部の外周面から突出する。被押圧爪は、第1被押圧部及び第2被押圧部を構成する。支持プレート及び被押圧爪の間には隙間が設けられる。
【0025】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、以下のように構成される。クラッチ操作部材は、支持プレートを有する。支持プレートは、クラッチカムを回転可能に支持する。支持プレートは、リール本体及びクラッチカムの間に配置される。クラッチ爪は、位置決め部と、カバー部と、を有する。位置決め部は、クラッチ操作部材をリール本体に対して第3位置で位置決めする。カバー部は、位置決め部に設けられる。クラッチ操作部材がリール本体に対して第3位置に位置した状態で、クラッチ爪及び支持プレートを軸方向外側から見た場合に、カバー部の少なくとも一部が支持プレートに重なる。
【0026】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、以下のように構成される。リール本体は、軸部を有する。クラッチ爪は、位置決め部をさらに有する。位置決め部は、クラッチ操作部材をリール本体に対して第3位置で位置決めする。位置決め部は、軸部に係合する。
【0027】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、好ましくは、以下のように構成される。リール本体は、凹部を有する。クラッチ爪は、位置決め部をさらに有する。位置決め部は、クラッチ操作部材をリール本体に対して第3位置で位置決めする。位置決め部は、本体部と、係合部と、付勢部材と、を有する。係合部は、本体部に配置される。係合部は凹部に係合する。付勢部材は、本体部及び係合部の間に配置される。付勢部材は、係合部を付勢する。
【0028】
本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、好ましくは、クラッチ爪は、第1押圧部を含む第1クラッチ爪と、第2押圧部を含む第2クラッチ爪と、を有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、両軸受リールにおいて、クラッチカムの設計に関する制限を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態による両軸受リールの外観斜視図。
【
図3A】クラッチ操作部材が第1位置に配置された状態のクラッチ制御機構の側面図(クラッチオン状態)。
【
図3B】クラッチ操作部材が第2位置に配置された状態のクラッチ制御機構の側面図(クラッチオフ状態)。
【
図3C】クラッチ操作部材が第3位置に配置された状態のクラッチ制御機構の側面図(クラッチオフ状態)。
【
図3D】クラッチ操作部材が第2位置に配置された状態のクラッチ制御機構の側面図(クラッチオン)
【
図6】リール本体の機構装着板、クラッチ操作部材、及びクラッチカムの側面図。
【
図8A】クラッチ操作部材が第3位置に配置された状態のクラッチ戻し機構を説明するための側面図(リターンギアの回転前)。
【
図8B】クラッチ操作部材が第3位置に配置された状態のクラッチ戻し機構を説明するための側面図(リターンギアの回転後)。
【
図9】クラッチカムの変形例を説明するためのクラッチカムの側面図。
【
図10】クラッチ爪の変形例を説明するためのクラッチ爪の上面図。
【
図11】クラッチ爪の変形例を説明するためのクラッチ爪の上面図。
【
図12A】リール本体の機構装着板及びクラッチ爪の変形例を説明するための機構装着板及びクラッチ爪の上面図。
【
図13】クラッチ爪の変形例を説明するためのリール本体の機構装着板及びクラッチ爪の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態による両軸受リール1は、
図1に示すように、リール本体3と、スプール5と、ハンドル7と、クラッチ操作部材9と、を備える。
図2に示すように、両軸受リール1は、スプール軸11と、ピニオンギア13と、クラッチ機構15と、クラッチ制御機構17と、をさらに備える。
図3Aに示すように、両軸受リール1は、クラッチ戻し機構19をさらに備える。
【0032】
本実施形態では、
図2に示すように、スプール軸11は、スプール軸心X1を有する。後述するクラッチ制御機構17のクラッチカム49は、回転中心軸X2を有する。スプール軸心X1及びクラッチカム49の回転中心軸X2は同心である。
【0033】
軸方向は、スプール軸心X1が延びる方向、スプール軸心X1に沿った方向、クラッチカム49の回転中心軸X2が延びる方向、又はクラッチカム49の回転中心軸X2に沿った方向、を含む。径方向は、スプール軸心X1から離れる方向、及びクラッチカム49の回転中心軸X2から離れる方向、を含む。
【0034】
周方向及び回転方向は、スプール軸心X1まわりの方向、及びクラッチカム49の回転中心軸X2まわり方向を含む。本実施形態では、クラッチカム49が回転中心軸X2まわりに回転する方向が、第1回転方向R1と記される。第1回転方向R1とは反対の回転方向が、第2回転方向R2と記される。
【0035】
図1に示すように、リール本体3は、フレーム21と、第1側カバー23と、第2側カバー25と、を備える。リール本体3は、フレーム21に装着される表示部27、をさらに備える。
【0036】
図2に示すように、フレーム21は、第1側板29と、第2側板31と、複数の連結部材33とを、有する。第1側板29は、ハンドル7側に配置される。第1側板29は、側板本体35と、機構装着板37と、を有する。
【0037】
機構装着板37は、側板本体35と第1側カバー23との間に配置される。例えば、機構装着板37は、本体部37aと、筒部37bと、を有する。本体部37aは、側板本体35に装着される。本体部37aには、クラッチ操作部材9及びクラッチ制御機構17が配置される。筒部37bは、本体部37aと一体に形成される。筒部37bの内周部には、ピニオンギア13及びスプール軸11が挿通される。
【0038】
図3Aに示すように、リール本体3は、軸部28をさらに有する。軸部28は、機構装着板37に設けられる。軸部28は、機構装着板37と一体に形成される。軸部28には、後述するアーム部59が当接する。本実施形態では、軸部28には、干渉部材28aが設けられる。軸部28には、干渉部材28aを介して、アーム部59が当接する。
【0039】
図2に示すように、第2側板31は、軸方向において、第1側板29と間隔を隔てて配置される。第1側板29と第2側板31との間には、スプール5が配置される。複数の連結部材33は、第1側板29と第2側板31とを連結する。前部の連結部材33は、筒状に形成される。前部の連結部材33aの内部には、モータ34が収容される。下部の連結部材33bには、釣り竿を装着するための竿装着脚部が一体に形成される。第1側カバー23は、第1側板29を覆う。第2側カバー25は、第2側板31を覆う。
【0040】
図1に示すように、ハンドル7は、リール本体3に対して回転可能に構成される。例えば、ハンドル7は、第1側カバー23側に設けられる。ハンドル7は、リール本体3に対して回転可能に支持される。ハンドル7は、図示しない駆動軸に連結される。ハンドル7の回転力は駆動軸に伝達される。
【0041】
図2に示すように、スプール5は、リール本体3に対して回転可能に構成される。例えば、スプール5は、スプール軸11と一体的に回転するように、スプール軸11に装着される。スプール5は、スプール軸11を介して、リール本体3に回転可能に支持される。
【0042】
スプール軸11は、リール本体3に対して回転可能に支持される。例えば、スプール軸11は、第1側板29(側板本体35)に対して回転可能に支持される。スプール軸11は、第2側板31に設けられる軸支持部32に対して、回転可能に支持される。軸支持部32は第2側板31に装着される。スプール軸11は、ピニオンギア13の内周部に挿通される。
【0043】
図2に示すように、ピニオンギア13は、スプール軸11に対して軸方向移動するように、スプール軸11の外周側に配置される。ピニオンギア13は、クラッチ制御機構17によって、スプール軸11に対して軸方向に移動する。
【0044】
ピニオンギア13は、クラッチ機構15を介して、スプール軸11と一体的に回転し且つスプール軸11と相対的に回転する。ピニオンギア13は、スプール軸11の外周側に配置される。
【0045】
例えば、クラッチ機構15が、後述するクラッチオン状態(第1状態の一例)である場合、ピニオンギア13はスプール軸11と一体的に回転する。クラッチ機構15が、後述するクラッチオフ状態(第2状態の一例)である場合、ピニオンギア13はスプール軸11に対して相対的に回転する。
図2では、クラッチ機構15がクラッチオン状態である場合の例が、示されている。
【0046】
ピニオンギア13には、スプール駆動機構14を介して、ハンドル7の回転力又はモータ34の回転力が伝達される。例えば、スプール駆動機構14は、ハンドル7に連結される駆動軸と、駆動軸に連結される駆動ギアと、駆動ギア及びモータ34の出力軸に接続される遊星歯車機構と、遊星歯車機構に接続される回転伝達機構と、を有する。ピニオンギア13には、回転伝達機構から回転力が伝達される。
【0047】
図2に示すように、クラッチ機構15は、ハンドル7とスプール5の間に配置される。クラッチ機構15は、ハンドル7の回転力をスプール5に伝達及び遮断する。クラッチ機構15は、クラッチオン状態と、クラッチオン状態とは異なるクラッチオフ状態とに、切り換え可能に構成される。クラッチオン状態は、ハンドル7の回転力をスプール5に伝達する伝達状態である。クラッチオフ状態は、スプール5に対するハンドル7の回転力の伝達を遮断する遮断状態である。
【0048】
図2に示すように、クラッチ機構15は、ピン部材15aと、係合凹部15bと、を有する。ピン部材15aは、スプール軸11に設けられる。ピン部材15aの両端部は、スプール軸11の外周面から突出する。係合凹部15bは、ピニオンギア13に設けられる。ピン部材15aが係合凹部15bに係合した状態が、クラッチオン状態である。ピン部材15aが係合凹部15bから離脱した状態が、クラッチオフ状態である。
【0049】
図3A-
図3Dに示すように、クラッチ操作部材9は、クラッチ制御機構17を操作するために用いられる。クラッチ操作部材9は、リール本体3に対して移動可能に設けられる。例えば、クラッチ操作部材9は、
図3Aに示す第1位置と、
図3Bに示す第2位置と、
図3Cに示す第3位置との間で、リール本体3に対して移動する。第3位置は、第1位置及び第2位置の間に位置する。
【0050】
図3A-
図3Dに示すように、クラッチ操作部材9は、操作部39と、連結アーム41と、支持プレート43と、を有する。操作部39は、釣り人によって押圧される部分である(
図1を参照)。操作部39は、連結アーム41に装着される。連結アーム41は、支持プレート43と一体に形成される。連結アーム41は、支持プレート43から延び、第1側板29(側板本体35)の孔部35aを通過する。連結アーム41の先端部には、操作部39が装着される。
【0051】
図2に示すように、支持プレート43は、リール本体3及びクラッチ制御機構17の間に配置される。例えば、支持プレート43は、軸方向において、機構装着板37及び後述するクラッチ制御機構17のクラッチカム49の間に配置される。
【0052】
図3A-
図3Dに示すように、支持プレート43は、リール本体3に対して回転可能に装着される。例えば、支持プレート43は、機構装着板37に対して回転可能に装着される。支持プレート43は、クラッチカム49を回転可能に支持する。
【0053】
図3Aに示すように、支持プレート43には、支持軸43aが設けられる。支持軸43aは、後述するクラッチ制御機構17のクラッチ爪47を揺動可能に支持する。支持軸43aは、軸方向に延びるように、支持プレート43に設けられる。支持軸43aは、支持プレート43と一体に形成されても、支持プレート43と別体で形成されてもよい。
【0054】
上記の構成を有するクラッチ操作部材9は、第1トーションバネ45によって、第2位置から第1位置に向けて、付勢される。例えば、
図3A-
図3Dに示すように、第1トーションバネ45の第1バネアーム45aは、支持プレート43に係合する。第1トーションバネ45の第2バネアーム45bは、機構装着板37に係合する。
【0055】
この構成では、
図3A及び
図3Bに示すように、クラッチ操作部材9が第1位置から第2位置に移動すると、支持プレート43が機構装着板37に対して回転し、第1トーションバネ45が捩られる。これにより、第1トーションバネ45は、復元力によって、クラッチ操作部材9を第2位置から第1位置に向けて付勢する。
【0056】
クラッチ制御機構17は、
図2に示すクラッチ機構15を制御する。例えば、クラッチ制御機構17では、クラッチカム49の回転によってクラッチ機構15が制御される。詳細には、クラッチ制御機構17では、クラッチカム49の回転によって、クラッチ機構15がクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換えられる。
図2に示すように、クラッチ制御機構17は、第1側カバー23及び第1側板29の間に配置される。
【0057】
図3A-
図3Dに示すように、クラッチ制御機構17は、クラッチ爪47と、クラッチカム49と、を有する。クラッチ制御機構17は、ヨーク支持部材51と、クラッチヨーク53と、ピニオンギア13と、コイルバネ55(
図2及び
図5を参照)と、をさらに有する。クラッチ爪47は、クラッチ操作部材9に対して揺動可能に装着される。例えば、クラッチ爪47は、支持プレート43に対して揺動可能に装着される。
【0058】
図4に示すように、クラッチ爪47は、爪部57と、アーム部59(位置決め部の一例)と、を有する。爪部57は、本体部61と、押圧部63と、を有する。本体部61は、装着孔61aを有する。装着孔61aは、支持プレート43の支持軸43aに装着される。
【0059】
押圧部63は、本体部61と一体に形成される。例えば、
図3A-
図3Dに示すように、本体部61が支持プレート43の支持軸43aに装着された状態において、押圧部63は、クラッチカム49の外周部に対向するように配置される。
【0060】
図4に示すように、押圧部63は、第1押圧部63aと、第2押圧部63bと、規制壁63c(壁部の一例)と、を有する。第1押圧部63aは、押圧部63において第1回転方向R1側に設けられる。第2押圧部63bは、第1押圧部63aとは異なる。第2押圧部63bは、押圧部63において第2回転方向R2側に設けられる。第2押圧部63bは、第2回転方向R2において、第1押圧部63aと間隔を隔てて配置される。第2押圧部63bの軸方向長さは、第1押圧部63aの軸方向長さより短い。
【0061】
規制壁63cは、第1押圧部63a及び第2押圧部63bの間に設けられる。規制壁63cは、後述するクラッチカム49の第1被押圧部69aの径方向外側面69fに当接する。これにより、第2押圧部63bは、第1被押圧部69aに係合することなく、第1被押圧部69aを通過する。すなわち、規制壁63cは、第1被押圧部69aに対する第2押圧部63bの係合を規制する。
【0062】
図4に示すように、アーム部59は、爪部57に設けられる。例えば、アーム部59は、爪部57と一体に形成される。
図3Cに示すように、アーム部59は、リール本体3の軸部28に係合する。例えば、アーム部59の先端は、機構装着板37の軸部28に当接する。詳細には、アーム部59の先端は、鉤状に形成される。アーム部59の先端は、干渉部材28aを介して、軸部28に係止される。これにより、アーム部59は、クラッチ操作部材9をリール本体3に対して第3位置で位置決めする。
【0063】
上記の構成を有するクラッチ爪47は、
図3A-
図3Dに示すように、第2トーションバネ65によって、クラッチカム49に向けて付勢される。例えば、支持プレート43の支持軸43aには、第2トーションバネ65のコイル部65aが配置される。コイル部65aは、図示しない抜け止め部材によって、抜け止めされる。
【0064】
第2トーションバネ65の第3バネアーム65bは、支持プレート43に係合する。第2トーションバネ65の第4バネアームは、押圧部63の孔部63d(
図4を参照)に係合する。この構成によって、第2トーションバネ65は、クラッチ爪47の押圧部63をクラッチカム49に向けて付勢する。
【0065】
図3A-
図3Dに示すように、クラッチカム49は、リール本体3に対して回転可能に配置される。例えば、クラッチカム49は、リール本体3の機構装着板37に対して回転可能に配置される。クラッチカム49は、クラッチ爪47によって押圧されることによって、第1回転方向R1にのみ回転する。
【0066】
図5に示すように、クラッチカム49は、環状部67と、複数のラチェット歯69(被押圧爪)と、複数のカム部71と、を有する。
図5のラチェット歯69及びカム部71を示す符号は、1つの部材にのみ付されている。
【0067】
環状部67は、環状に形成される。
図6に示すように、環状部67は、支持プレート43上に配置される。環状部67は、機構装着板37の筒部37b(
図2を参照)の径方向外側に、配置される。
【0068】
図5に示すように、複数のラチェット歯69は、環状部67の外周部に設けられる。例えば、複数のラチェット歯69は、周方向に互いに間隔を隔てて配置される。複数のラチェット歯69それぞれは、環状部67の外周面67aから径方向外側に突出する。複数のラチェット歯69それぞれは、環状部67の外周面67aと一体に形成される。本実施形態では、複数のラチェット歯69は8個のラチェット歯69を含む。
【0069】
図6及び
図7に示すように、各ラチェット歯69は、第1被押圧部69aと、第2被押圧部69bと、を有する。各ラチェット歯69は、第1傾斜面69cと、頂面69dと、第2傾斜面69eと、をさらに有する。
【0070】
第1被押圧部69aは、第1押圧部63aに押圧される。第1被押圧部69aは、各ラチェット歯69において第1回転方向R1の上流側の端部に設けられる。第1被押圧部69aは、径方向外側面69fを含む。
【0071】
第2被押圧部69bは、第2押圧部63bに押圧される。第2被押圧部69bは、第1被押圧部69aより第1回転方向R1側に配置される。例えば、周方向に互いに隣接するラチェット歯69では、第2被押圧部69bは、第1被押圧部69aより第2回転方向R2側に配置される。
【0072】
第2被押圧部69bは、環状部67の外周面67aより径方向外側に設けられる。第2被押圧部69bは、ラチェット歯69の先端面に設けられる。第2被押圧部69bは、ラチェット歯69の先端面で凹状に形成される。
【0073】
図6に示すように、第2被押圧部69bは、軸方向において、第1被押圧部69aと少なくとも部分的にずれる。例えば、第2被押圧部69bが軸方向に設けられる範囲は、第1被押圧部69aが軸方向に設けられる範囲とは異なる。第2被押圧部69bの軸方向長さは、第1被押圧部69aの軸方向長さより短い。
【0074】
図6及び
図7に示すように、第1傾斜面69cは、環状部67の外周面67aから第2被押圧部69bに向けて延び、第2被押圧部69bに接続される。頂面69dは、環状部67の外周面67aより径方向外側に設けられる。頂面69dは、ラチェット歯69の先端面を形成する。
【0075】
頂面69dは、第2被押圧部69b及び第2傾斜面69eの間において周方向に延びる。頂面69dは、第2被押圧部69b及び第2傾斜面69eに接続される。第2傾斜面69eは、頂面69dから第1被押圧部69aの径方向外側面69fに向けて延び、第1被押圧部69aの径方向外側面69fに接続される。
【0076】
図7に示すように、第1被押圧部69aの径方向外側面69fから回転中心軸X2までの距離は、頂面69dから回転中心軸X2までの距離より小さい。第1被押圧部69aの径方向外側面69fから回転中心軸X2までの距離は、環状部67の外周面67aから回転中心軸X2までの距離より大きい。
【0077】
図5に示すように、複数のカム部71は、環状部67に設けられる。例えば、複数のカム部71は、周方向に互いに間隔を隔てて配置される。複数のカム部71それぞれは、環状部67から軸方向に突出する。複数のカム部71それぞれは、環状部67と一体に形成される。本実施形態では、複数のカム部71は8個のカム部71を含む。
【0078】
図6及び
図7に示すように、各カム部71は、位置決め凹部71aと、第3傾斜面71bと、第4傾斜面71cと、立設面71dと、を有する。位置決め凹部71aは、各カム部71の頂部に設けられる。位置決め凹部71aは、各カム部71の頂部で凹状に形成される。位置決め凹部71aは、クラッチオフ状態でクラッチヨーク53を位置決めする。
【0079】
第3傾斜面71bは、環状部67の前面67bから位置決め凹部71aに向けて延び、位置決め凹部71aに接続される。第4傾斜面71cは、位置決め凹部71aから立設面71dの上端に向けて延び、立設面71dの上端に接続される。立設面71dは、第4傾斜面71cから環状部67の前面67bに向けて延び、環状部67の前面67bに接続される。
【0080】
図6に示すように、立設面71dの上端から環状部67の前面67bまでの距離は、位置決め凹部71a及び第4傾斜面71cの接続部から環状部67の前面67bまでの距離より小さい。
【0081】
図3A-
図3Dに示すように、ヨーク支持部材51は、リール本体3に装着される。例えば、ヨーク支持部材51は機構装着板37に固定される。
【0082】
図5に示すように、ヨーク支持部材51は、装着部51aと、1対のガイド軸51bと、を有する。装着部51aは環状に形成される。装着部51aは、機構装着板37に固定される。1対のガイド軸51bそれぞれは、棒状に形成される。1対のガイド軸51bは、装着部51aに設けられる。装着部51aが機構装着板37に固定された状態において、1対のガイド軸51bは軸方向に延びる。
【0083】
図5に示すように、クラッチヨーク53は、ヨーク本体53aと、1対のガイド孔53bと、ギア係合部53cと、カム係合部53dと、を有する。ヨーク本体53aは、実質的に一方向に長く形成されている。
【0084】
1対のガイド孔53bは、ヨーク本体53aに設けられる。1対のガイド孔53bは、ヨーク本体53aを貫通する。1対のガイド孔53bには、1対のガイド軸51bが各別に挿通される。
【0085】
これにより、クラッチヨーク53は、1対のガイド軸51bに沿って軸方向に案内される。例えば、クラッチヨーク53は、クラッチカム49が第1回転方向R1に回転した場合に、スプール5から離れる軸方向と、スプール5に近づく軸方向とに、移動する。
【0086】
ギア係合部53cは、ヨーク本体53aの中央部に設けられる。例えば、ギア係合部53cは、半円形に形成される。ギア係合部53cは、ピニオンギア13の環状凹部13aに係合する。これにより、クラッチヨーク53は、ピニオンギア13とともに軸方向に移動する。
【0087】
カム係合部53dは、ヨーク本体53aの両端部に設けられる。カム係合部53dは、クラッチカム49のカム部71に係合する。例えば、
図3A、及び
図3Dに示すように、クラッチ機構15がクラッチオン状態である場合、カム係合部53dは、周方向に互いに隣接するカム部71の間において、環状部67の前面67bに配置される。
図3B及び
図3Cに示すように、クラッチ機構15がクラッチオフ状態である場合、カム係合部53dは、カム部71の位置決め凹部71aに配置される。
【0088】
図2に示すように、コイルバネ55は、スプール軸11の径方向外側に配置される。コイルバネ55は、軸方向において、クラッチヨーク53及び第1側カバー23の間に配置される。これにより、コイルバネ55は、クラッチヨーク53を、スプール5に近づく軸方向に向けて付勢する。
【0089】
図3Aに示すように、クラッチ戻し機構19は、リターンギア73と、クラッチカム49と、を有する。リターンギア73は、駆動軸70に連結される。リターンギア73は駆動軸70とともに回転する。例えば、
図8Aに示すようにクラッチ機構15がクラッチオフ状態である場合に、
図8Bに示すようにハンドル7が糸巻き取り方向Mに回転すると、リターンギア73が回転する。これにより、リターンギア73の複数のギア歯73aのいずれか1つが、クラッチカム49の複数のラチェット歯69のいずれか1つを押圧し、クラッチカム49が第1回転方向R1に回転する。
【0090】
図3A~
図3Dに示すように、クラッチ制御機構17は動作する。
図3Aに示すように、クラッチ操作部材9が第1位置に配置された状態では、クラッチ機構15はクラッチオン状態である。この状態では、クラッチヨーク53のカム係合部53dは、周方向に互いに隣接するカム部71の間において環状部67の前面67bに配置される。クラッチ爪47の第1押圧部63a及び第2押圧部63bは、周方向に互いに隣接するラチェット歯69の間に配置される。
【0091】
まず、
図3A及び
図3Bに示すように、釣り人がクラッチ操作部材9の操作部39を押圧し、クラッチ操作部材9の操作部39が第1位置から第2位置に移動すると、クラッチ爪47の第1押圧部63aがクラッチカム49の第1被押圧部69aを押圧する。これにより、クラッチカム49が第1回転方向R1に回転する。
【0092】
このクラッチカム49の回転によって、クラッチヨーク53のカム係合部53dが、カム部71の第3傾斜面71bを上り、位置決め凹部71aに配置される。これにより、クラッチ機構15が、クラッチオン状態からクラッチオフ状態に切り換えられる。
【0093】
ここで、釣り人がクラッチ操作部材9(操作部39)から指を離すと、
図3B及び
図3Cに示すように、クラッチ操作部材9(操作部39)が第2位置から第3位置に移動する。この場合、クラッチ爪47は第2回転方向R2に移動する。この際には、クラッチ爪47の第2押圧部63bが、ラチェット歯69の第1傾斜面69cを上り、クラッチ爪47のアーム部59がリール本体3(機構装着板37)の軸部28に当接する。
【0094】
これにより、クラッチ爪47の第2押圧部63bがチェット歯の頂面69d(
図7を参照)に配置される。この状態では、クラッチヨーク53のカム係合部53dは位置決め凹部71aに配置され、クラッチ機構15はクラッチオフ状態である。
【0095】
次に、
図3C及び
図3Dに示すように、釣り人がクラッチ操作部材9(操作部39)を押圧し、クラッチ操作部材9(操作部39)が第3位置から第2位置に移動すると、クラッチ爪47の第2押圧部63bがクラッチカム49の第2被押圧部69bを押圧する。これにより、クラッチカム49が第1回転方向R1に回転する。この際には、クラッチ爪47のアーム部59は、リール本体3(機構装着板37)の軸部28から離脱する。
【0096】
このクラッチカム49の回転によって、クラッチヨーク53のカム係合部53dが、位置決め凹部71aから離脱する。その後、クラッチヨーク53のカム係合部53dは、カム部71の第4傾斜面71c(
図7を参照)を下り、周方向に互いに隣接するカム部71の間において環状部67の前面67bに配置される。これにより、クラッチ機構15が、クラッチオフ状態からクラッチオン状態に切り換えられる。
【0097】
ここで、釣り人がクラッチ操作部材9(操作部39)から指を離すと、
図3D及び
図3Aに示すように、クラッチ操作部材9(操作部39)が第2位置から第1位置に移動する。この場合、クラッチ爪47は第2回転方向R2に移動する。
【0098】
この際には、クラッチ爪47の第1押圧部63a及び第2押圧部63bは、
図7に示すラチェット歯69の外面に沿って移動する。例えば、クラッチ爪47の第1押圧部63a及び第2押圧部63bは、ラチェット歯69の頂面69dに沿って移動し、ラチェット歯69の第2傾斜面69eを下る。
【0099】
クラッチ爪47の第1押圧部63a及び第2押圧部63bが第1被押圧部69aの径方向外側面69fに到達すると、クラッチ爪47の規制壁63c(
図4を参照)が第1被押圧部69aの径方向外側面69fに接触する。その後、クラッチ爪47の第1押圧部63a及び第2押圧部63bは、周方向に互いに隣接するラチェット歯69の間に配置される。これにより、クラッチ操作部材9(操作部39)が第1位置に復帰する。
【0100】
図8A及び
図8Bに示すように、クラッチ戻し機構19は動作する。
図8Aに示すようにクラッチ機構15がクラッチオフ状態である場合に、
図8Bに示すように釣り人がハンドル7を糸巻き取り方向Mに回転すると、リターンギア73が回転する。
【0101】
このリターンギア73の回転によって、リターンギア73のギア歯73aがクラッチカム49の第1被押圧部69aを押圧する。これにより、クラッチカム49が第1回転方向R1に回転し、
図3Aのようにクラッチ機構15がクラッチオフ状態からクラッチオン状態に切り換えられる。この際のクラッチヨーク53の動作は、クラッチ制御機構17のクラッチヨーク53の動作と同じである。
【0102】
上記の構成を有する両軸受リール1では、クラッチ操作部材9の位置に応じて、第1押圧部63a及び第2押圧部63bが第1被押圧部69a及び第2被押圧部69bを各別に押圧する。これにより、従来技術と比較して、第1被押圧部69aの数を増やすことができる。あるいは、第1被押圧部69aの数を変更することなく、クラッチカム49を小径化することができる。すなわち、本両軸受リール1では、従来技術と比較して、クラッチカム49の設計に関する制限を緩和することができる。
【0103】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0104】
・変形例1
クラッチカム49は、以下のように構成されてもよい。変形例1では、
図9に示すように、クラッチカム49の環状部67が、配置面67cを有する。配置面67cは、クラッチ操作部材9の支持プレート43上に配置される。配置面67cが支持プレート43上に配置された状態において、クラッチカム49の複数のラチェット歯69及び支持プレート43の間には、隙間Gが設けられる。
【0105】
この構成では、クラッチカム49が支持プレート43に対して第1回転方向R1に回転する場合、配置面67cが支持プレート43と摺動する。この場合、複数のラチェット歯69は、支持プレート43と摺動しない。これにより、クラッチカム49を第1回転方向R1にスムーズに回転させることができる。
【0106】
・変形例2
クラッチ爪147は、以下のように構成されてもよい。変形例2では、
図10に示すように、爪部157と、アーム部159とは、別部材である。爪部157は樹脂によって形成される。アーム部159は金属によって形成される。アーム部159は、プレス成型によって形成されることが好ましい。アーム部159は、取付部159aと、アーム本体159bと、を有する。取付部159aは、爪部157に取り付けられる。アーム本体159bは、取付部159aと一体に形成される。この構成では、アーム部159を好適に弾性変形させることができる。これにより、クラッチ操作部材9をリール本体3に対して第3位置で好適に位置決めすることができる。
【0107】
・変形例3
クラッチ爪247は、以下のように構成されてもよい。変形例3では、
図11に示すように、クラッチ爪247は、カバー部64をさらに有する。カバー部64は、アーム部59に設けられる。クラッチ操作部材9がリール本体3に対して第3位置に位置した状態で、クラッチ爪47及び支持プレート43を軸方向外側から見た場合に、カバー部64の少なくとも一部が支持プレート43に重なる。この構成では、クラッチ爪47のアーム部59及び支持プレート43の間の隙間が、カバー部64によって覆われる。これにより、異物が隙間に侵入することをカバー部64によって防ぐことができる。
【0108】
・変形例4
リール本体3及びクラッチ爪347は、以下のように構成されてもよい。変形例4では、
図12Aに示すように、リール本体3の機構装着板37は、凹部37cを有する。
図12A及び
図12Bに示すように、クラッチ爪347のアーム部259は、本体部259aと、軸部材259b(係合部の一例)と、コイルバネ259c(付勢部材の一例)と、を有する。
【0109】
軸部材259bは本体部259aに配置される。コイルバネ159cは、本体部259a及び軸部材259bの間に配置される。軸部材259bは凹部37cに係合する。例えば、コイルバネ259cは本体部259aの穴部259dに配置される。コイルバネ259cの一端は穴部259dの底部に当接する。コイルバネ259cの他端は軸部材259bの一端に当接する。これにより、軸部材259bはコイルバネ259cによって付勢される。軸部材259bの他端は、凹部37cに係合する。
【0110】
凹部37cには、軸部材259bの他端が係合する係合壁37dが、形成される。軸部材259bの他端が係合壁37dに当接することによって、クラッチ操作部材9(操作部39)が第3位置で位置決めされる。この構成では、クラッチ操作部材9(操作部39)が第3位置に位置する状態で、釣り人がクラッチ操作部材9(操作部39)を第3位置から第1位置に向けて操作したとしても、軸部材259bが穴部259dの内部に退くので、アーム部259の破損を防ぐことができる。
【0111】
・変形例5
クラッチ爪447は、以下のように構成されてもよい。変形例5では、
図13に示すように、クラッチ爪447は、第1クラッチ爪447aと、第2クラッチ爪447bと、を有する。
【0112】
第1クラッチ爪447aは、リール本体3の機構装着板37に揺動可能に装着される。第1クラッチ爪447aは、トーションバネ448aによってクラッチカム49に向けて付勢される。第1クラッチ爪447aは第1押圧部63aを含む。
【0113】
第2クラッチ爪447bは、リール本体3の機構装着板37に揺動可能に装着される。第2クラッチ爪447bは、トーションバネ448bによってクラッチカム49に向けて付勢される。第2クラッチ爪447bは第2押圧部63bを含む。第2クラッチ爪447bは、第2回転方向R2において、第1クラッチ爪447aと間隔を隔てて配置される。
【0114】
この構成では、クラッチ操作部材9の操作部39が第1位置から第2位置に移動すると、第1クラッチ爪447aの第1押圧部63aがクラッチカム49の第1被押圧部69aを押圧する。これにより、クラッチカム49が第1回転方向R1に回転する。
【0115】
クラッチ操作部材9の操作部39が第3位置から第2位置に移動すると、第2クラッチ爪447bの第2押圧部63bがクラッチカム49の第2被押圧部69bを押圧する。これにより、クラッチカム49が第1回転方向R1に回転する。このように構成しても、前記実施形態と同様にクラッチ制御機構17を動作させることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 両軸受リール
3 リール本体
5 スプール
7 ハンドル
9 クラッチ操作部材
28 軸部
15 クラッチ機構
17 クラッチ制御機構
37c 凹部
43 支持プレート
47,147,247,347,447 クラッチ爪
49 クラッチカム
57,157 爪部
59,159,259 アーム部
61 アーム部の本体部
63 押圧部
63a 第1押圧部
63b 第2押圧部
64 カバー部
67 環状部
69 ラチェット歯
69a 第1被押圧部
69b 第2被押圧部
63c 規制壁
259b 軸部材
259c コイルバネ
447a 第1クラッチ爪
447b 第2クラッチ爪
R1 第1回転方向
R2 第2回転方向
X1 スプール軸心
X2 回転中心軸