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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109071
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B21F 11/00 20060101AFI20230731BHJP
   B23D 33/00 20060101ALI20230731BHJP
   B23D 33/02 20060101ALI20230731BHJP
   B23D 35/00 20060101ALI20230731BHJP
   B23D 33/12 20060101ALI20230731BHJP
   B23D 15/04 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B21F11/00 A
B23D33/00 C
B23D33/00 F
B23D33/02 A
B23D35/00 Z
B23D33/12
B23D15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010454
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】509082444
【氏名又は名称】株式会社堀江・設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】堀江 学
【テーマコード(参考)】
3C039
3C051
4E070
【Fターム(参考)】
3C039AA07
3C039AA25
3C051AA04
3C051BB11
3C051DD00
3C051EE09
3C051EE21
3C051GG01
4E070AA04
4E070AB14
4E070AC01
4E070BB01
4E070BF03
4E070CA03
4E070FA02
(57)【要約】
【課題】手工具の刃を利用しつつ、線材を適切に切断できる切断装置を提供すること。
【解決手段】取付部42,43に手工具3の刃41a,41bが着脱可能であるので、刃41a,41bが傷んだ場合には、市販の手工具3の替え刃に取り換えるだけで良い。そして、手工具3の刃41a,41bは、該手工具3の柄3a,3bに固定して使用されるものであり、取付部42,43にも安定して固定できるので、線材2に対する刃41a,41bの切り込みも安定させることができる。よって、手工具3の刃41a,41bを利用しつつ、線材2を適切に切断できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柄と、それら一対の柄の先端側に着脱可能に構成され、一対の前記柄が操作されることによって開閉する一対の刃と、を有する手工具の前記刃を用いて線材を切断する切断装置であって、
一対の前記刃が開閉可能な状態で取付けられる取付部と、その取付部に駆動力を付与して一対の前記刃を開閉させる駆動手段とを備え、
前記取付部に前記刃が着脱可能であることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
一対の前記刃の間に前記線材を供給する供給手段と、その供給手段による前記線材の供給方向において前記刃よりも下流側に配置され、前記線材の上面側を開放させた状態で前記線材を支持する支持部材と、その支持部材が挿入される挿入部を有し、上面が前記挿入部から前記支持部材の側方側に向けて下降傾斜するシュートと、を備え、
前記支持部材は、切断時に前記線材を支持する支持位置と、切断後の線材を前記シュートの上面に載せる下降位置とに上下に変位可能に構成されることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記線材の切断時に前記支持部材よりも下流側に配置され、前記線材の先端を挟持するチャックを備えることを特徴とする請求項2記載の切断装置。
【請求項4】
前記チャックは、前記支持部材よりも前記供給方向における上流側で前記線材の先端を受取る受取り位置と、その受取り位置で受取った前記線材の先端を前記支持部材よりも下流側に引き出して前記線材を切断する切断位置とに前記供給方向で変位可能に構成されることを特徴とする請求項3記載の切断装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記受取り位置と前記切断位置との間を前記チャックが変位する際に前記下降位置に下降することを特徴とする請求項4記載の切断装置。
【請求項6】
前記受取り位置から前記切断位置に向けて前記チャックが変位する際に、前記チャックが前記切断位置に到達する前に前記支持部材が前記支持位置に向けた上昇を開始することを特徴とする請求項5記載の切断装置。
【請求項7】
前記シュートから排出される前記線材を受ける収容箱を備え、
前記シュートは、前記刃よりも下流側に配置され、
切断後の前記線材の全体が前記シュートの上面に載る位置まで前記チャックによって引き出された後、前記チャックによる前記線材の挟持状態が解除されることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の切断装置。
【請求項8】
前記取付部は、前記切断装置の筐体に固定される固定取付部と、その固定取付部に対して相対的に回転可能に構成され、前記駆動手段の駆動力が付与される可動取付部とを備え、
一対の前記刃は、互いに回転可能に軸支された状態で前記固定取付部および前記可動取付部に取付けられることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の切断装置。
【請求項9】
一対の前記刃に向けた前記線材の供給方向において前記刃よりも下流側に配置され、作業者が前記線材の切断作業を行うための作業台を備え、
前記作業台は、前記刃側から下流側に向けて前記供給方向に沿って延びるレールと、そのレールにスライド可能に支持され、前記線材の先端を支持するブロックと、そのブロックの前記レールに対する相対位置から前記線材の切断長さを測定する測定手段と、前記作業者によって操作可能に構成され、一対の前記刃による前記線材の切断の開始を指示する指示手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項10】
前記供給方向において前記刃と前記ブロックとの間で前記線材を支持する支持部材を備え、
前記レールは、前記支持部材よりも前記供給方向における上流側に延び、
前記支持部材は、前記レール上で前記線材を支持する支持位置と、前記レール上から退避する退避位置と、に変位可能に構成されることを特徴とする請求項9記載の切断装置。
【請求項11】
前記退避位置は、前記レールを挟んで前記指示手段とは反対側であることを特徴とする請求項10記載の切断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置に関し、特に、手工具の刃を利用しつつ、線材を適切に切断できる切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手工具の刃に駆動手段の駆動力を付与することによって線材を切断する切断装置が知られている。例えば特許文献1には、ニッパー16(手工具)の上刃杆17(柄)を保持する上刃支持部13(取付部)にシリンダ9(駆動手段)の駆動力を付与し、その駆動力によってニッパー16の上刃および下刃を開閉させる切断装置が記載されている。この切断装置によれば、シリンダ9の駆動力を利用して線材を切断できる。そして、ニッパー16の刃が傷んだ際には、他の市販のニッパー16に取り換えるだけで良く、例えば切断装置に専用の高価な刃に取り換える必要が無い。よって、刃の交換コストを低減できる。なお、特許文献2にも同様の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭50-031593号公報(例えば、第2頁第3欄)
【特許文献2】実開昭60-171270号公報(例えば、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、手工具の柄は、作業者が手で持つことを前提にした作りになっており、必ずしも切断装置への固定に適した形状にはなっていない。つまり、例えば上述した従来技術のように手工具の柄が湾曲形状である場合、切断装置の取付部に柄を安定して固定することが難しい場合がある。柄の固定が不安定な状態で取付部に駆動力を付与すると、線材に対する刃の切り込みも不安定になるため、線材を適切に切断できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、手工具の刃を利用しつつ、線材を適切に切断できる切断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の切断装置は、一対の柄と、それら一対の柄の先端側に着脱可能に構成され、一対の前記柄が操作されることによって開閉する一対の刃と、を有する手工具の前記刃を用いて線材を切断する切断装置であって、一対の前記刃が開閉可能な状態で取付けられる取付部と、その取付部に駆動力を付与して一対の前記刃を開閉させる駆動手段とを備え、前記取付部に前記刃が着脱可能である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の切断装置によれば、手工具の一対の刃が開閉可能な状態で取付けられる取付部と、その取付部に駆動力を付与して一対の刃を開閉させる駆動手段とを備えるので、駆動手段の駆動力を利用した刃の開閉によって線材を切断できる。取付部に刃が着脱可能であるので、刃が傷んだ場合には、市販の手工具の替え刃に取り換えるだけで良い。そして、手工具の刃は、該手工具の柄に固定して使用されるものであり、取付部に安定して固定できるので、線材に対する刃の切り込みも安定させることができる。よって、手工具の刃を利用しつつ、線材を適切に切断できるという効果がある。
【0008】
請求項2記載の切断装置によれば、請求項1記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。一対の刃の間に線材を供給する供給手段と、その供給手段による線材の供給方向において刃よりも下流側で線材を支持する支持部材と、を備えるので、供給手段によって一対の刃の間に供給される線材は、支持部材に支持された状態で切断される。
【0009】
シュートの挿入部に挿入される支持部材は、刃による切断時に線材を支持する支持位置と、切断後の線材をシュートの上面に載せる下降位置とに上下に変位可能に構成されるので、切断後の線材を支持する支持部材を下降位置に変位させることにより、線材がシュートの上面(挿入部が非形成とされる領域)に引っ掛かる。
【0010】
支持部材は、線材の上面側を開放させた状態で線材を支持し、シュートの上面は、挿入部から支持部材の側方側に向けて下降傾斜しているので、シュートの上面に引っ掛かった線材は、支持部材から落下すると共にシュートの上面を滑り落ちて側方側に排出される。このように、支持部材の上下動(直動動作)を利用して線材を排出することにより、例えば支持部材を回転させて線材を排出する場合に比べ、切断装置の構造を簡素化できるという効果がある。
【0011】
請求項3記載の切断装置によれば、請求項2記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。線材の切断時に支持部材よりも下流側に配置され、線材の先端を挟持するチャックを備えるので、線材の先端をチャックで固定した状態で切断を行うことができる。これにより、線材の上面側が開放された状態で支持部材に支持される場合であっても、切断時の線材の安定性を確保できるので、線材を適切に切断できるという効果がある。
【0012】
請求項4記載の切断装置によれば、請求項3記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。チャックは、支持部材よりも上流側で線材の先端を受取る受取り位置と、その受取り位置で受取った線材の先端を支持部材よりも下流側に引き出して線材を切断する切断位置と、に線材の供給方向で変位可能に構成されるので、線材の先端をチャックによって受取り位置から切断位置まで直線的に引き出すことができる。これにより、切断位置まで引き出された線材に曲がりが生じることを抑制できるので、線材が所望の長さで切断され易くなるという効果がある。
【0013】
請求項5記載の切断装置によれば、請求項4記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。支持部材は、線材の受取り位置と切断位置との間をチャックが変位する際に下降位置に下降するので、チャックの変位に支持部材が干渉することを防止できるという効果がある。更に、該チャックの変位軌跡から支持部材を退避させることにより、チャックを支持部材よりも上流側(刃側)に配置した状態で線材を切断できるので、線材を様々な長さで切断できるという効果がある。
【0014】
請求項6記載の切断装置によれば、請求項5記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。線材の受取り位置から切断位置に向けてチャックが変位する際に、チャックが切断位置に到達する前に支持部材が支持位置に向けた上昇を開始するので、線材が切断位置まで引き出される前に支持部材によって線材を支持できる。これにより、線材が引き出される際に自重で撓むことを抑制できるので、線材が所望の長さで切断され易くなるという効果がある。
【0015】
請求項7記載の切断装置によれば、請求項4から6のいずれかに記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。シュートから排出される線材を受ける収容箱を備えるので、シュートの上面を滑り落ちた線材は収容箱に収容される。シュートは、刃よりも下流側に配置されるが、切断後の線材の全体がシュートの上面に載る位置までチャックによって引き出された後、チャックによる線材の挟持状態が解除される。これにより、線材の一部がシュートからはみ出た状態で滑り落ちることを抑制できるので、該シュートの上面に沿って滑り落ちる時の線材の姿勢を安定させることができる。即ち、線材がその供給方向に沿って真っすぐに伸びた状態を維持したまま収容箱に排出され易くなるので、複数の線材を繰り返し切断した場合に、それらの各線材を整列させた状態で収容箱に収容できるという効果がある。
【0016】
請求項8記載の切断装置によれば、請求項1から7のいずれかに記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。取付部は、切断装置の筐体に固定される固定取付部と、その固定取付部に対して相対的に回転可能に構成され、駆動手段の駆動力が付与される可動取付部とを備え、一対の刃は、互いに回転可能に軸支された状態で固定取付部および可動取付部に取付けられるので、駆動手段の駆動力によって可動取付部を固定取付部に対して回転させることにより、一対の刃を開閉させることができる。これにより、一対の刃のうちの一方の刃に対し、駆動手段の駆動力を付与することを不要にできる。即ち、1つの駆動手段の駆動力によって一対の刃を開閉できるので、切断装置の製品コストを低減できるという効果がある。
【0017】
請求項9記載の切断装置によれば、請求項1記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。一対の刃に向けた線材の供給方向において刃よりも下流側に配置され、作業者が線材の切断作業を行うための作業台を備える。作業台は、刃側から下流側に向けて線材の供給方向に沿って延びるレールと、そのレールにスライド可能に支持され、線材の先端を支持するブロックと、そのブロックのレールに対する相対位置から線材の切断長さを測定する測定手段と、を備える。これにより、レールに対するブロックの位置を調整することにより、そのブロックに線材の先端を支持させた場合の線材の切断長さを測定手段によって測定できる。よって、作業者は、測定手段で測定される線材の切断長さを所望の長さに設定すると共に、指示手段によって線材の切断の開始を指示することにより、線材を所望の長さで切断できる。よって、線材の切断作業の作業性が向上するという効果がある。
【0018】
請求項10記載の切断装置によれば、請求項9記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。線材の供給方向において刃とブロックとの間で線材を支持する支持部材を備えるので、線材の自重による撓みを支持部材によって防止できる。よって、線材が所望の長さで切断され易くなる。レールは、支持部材よりも線材の供給方向における上流側に延び、支持部材は、レール上で線材を支持する支持位置と、レール上から退避する退避位置と、に変位可能に構成されるので、支持部材をレール上から退避させることにより、ブロックを支持部材よりも上流側(刃側)に配置した状態で線材を切断できる。よって、線材を様々な長さで切断できるという効果がある。
【0019】
請求項11記載の切断装置によれば、請求項10記載の切断装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。支持部材の退避位置は、レールを挟んで指示手段とは反対側であるので、作業者が作業する側とは反対側に支持部材を退避させることができる。これにより、レール上から退避させた支持部材が作業者の作業の邪魔になることを抑制できるので、線材の切断作業の作業性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態における切断装置の斜視図である。
図2】(a)は、図1の矢印IIa方向視における切断部の正面図であり、(b)は、図2(a)の状態から刃を閉じた状態を示す切断部の正面図である。
図3】(a)は、刃が取付けられた状態を示す手工具の正面図であり、(b)は、刃が取外された状態を示す手工具の正面図である。
図4図1の矢印IV方向視における切断装置の部分拡大側面図である。
図5図4のV-V線におけるチャックの部分拡大断面図である。
図6図4の状態から線材をチャックによって下流側に引き出す様子を示す切断装置の部分拡大側面図である。
図7】切断後の線材をチャックによって更に下流側に引き出した様子を示す切断装置の部分拡大側面図である。
図8】(a)は、図7のVIIIa-VIIIa線における切断装置の部分拡大断面図であり、(b)は、図8(a)の状態から線材を収容箱に向けて排出する様子を示す切断装置の部分拡大断面図である。
図9】第2実施形態における切断装置の斜視図である。
図10図9の矢印X方向視における切断装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、切断装置100の概略構成について説明する。図1は、第1実施形態における切断装置100の斜視図である。
【0022】
図1に示すように、切断装置100は、ドラム1に巻かれた線材2を切断するための装置である。線材2は、銅などの導線が外装によって被覆された電線などが例示されるが、金属製の鋼線や光ファイバーケーブル等、他の線状のものを切断装置100で切断しても良い。
【0023】
切断装置100は、内部で線材2の切断を行うための筐体10を備える。筐体10は、後述する収容箱80を除く各部を収納する箱状に形成されているが、図1では、筐体10の内部空間の側方(矢印R側)を塞ぐ側板を取り外した状態を図示している。
【0024】
筐体10には、ドラム1から線材2を引き出すための送りローラ20が設けられる。送りローラ20は、水平方向(矢印L-R方向)に沿う軸回りに回転可能に構成される。送りローラ20は、線材2を挟んで上下一対に設けられ、それら一対の送りローラ20の外周面同士の間隔は、線材2の外径よりも僅かに小さくなっている。よって、一対の送りローラ20の間に線材2を挿入し、図示しない駆動源の駆動力を送りローラ20に付与することにより、線材2が送りローラ20によって送り出される。
【0025】
図1では、矢印F-Bが送りローラ20による線材2の送り方向(以下「線材2の供給方向」という)、L-Rが線材2の供給方向と直交する水平方向(左右方向)、U-Dが上下方向を示しており、図2図8においても同様とする。なお、線材2の供給方向における前方側(矢印F側)が下流側であり、該供給方向における後方側(矢印B側)が上流側である。
【0026】
送りローラ20よりも上流側(矢印B側)には、ドラム1に巻かれた線材2の曲がりを矯正するための矯正ローラ30,31が設けられる。矯正ローラ30は、上下方向に沿う軸回りに回転可能に構成され、矯正ローラ31は、左右方向に沿う軸回りに回転可能に構成される。
【0027】
矯正ローラ30は、線材2の左方(矢印L側)に位置する左ローラ30aと、線材2の右方(矢印R側)に位置する右ローラ30bと、から構成される。左ローラ30aは、線材2の供給方向に沿って複数(本実施形態では、3個)並べられ、右ローラ30bも同様に線材2の供給方向に沿って複数(本実施形態では、2個)並べて設けられる。
【0028】
矯正ローラ31は、線材2の上方に位置する上ローラ31aと、線材2の下方に位置する下ローラ31bと、から構成される。上ローラ31aは、線材2の供給方向に沿って複数(本実施形態では、3個)並べられ、下ローラ31bも同様に線材2の供給方向に沿って複数(本実施形態では、2個)並べて設けられる。
【0029】
左ローラ30a及び右ローラ30bの外周面同士の間隔や、上ローラ31a及び下ローラ31bの外周面同士の間隔は、線材2の外径よりも僅かに小さく形成される。これにより、線材2の左右の両面と、上下の両面とのそれぞれに各ローラ30a,30b,31a,31bを圧接させることができるので、曲がりが矯正された直線状の線材2を下流側(矢印F側)に供給できる。
【0030】
線材2の供給方向に並ぶ複数の左ローラ30a及び右ローラ30bは千鳥状の配置となっており、該供給方向に並ぶ複数の上ローラ31a及び下ローラ31bも同様の千鳥状に配置される。これにより、線材2に対して矯正ローラ30,31の各ローラ30a,30b,31a,31bを交互に接触させることができるので、線材2の曲がりを効果的に矯正できる。
【0031】
なお、本実施形態では、線材2に圧接される矯正ローラ30,31が、送りローラ20による線材2の送りに従動するように構成されているが、線材2を下流側に送るための駆動力を矯正ローラ30,31に付与しても良い。矯正ローラ30,31で曲がりが矯正された線材2は、送りローラ20よりも下流側に位置する切断部40に供給される。
【0032】
送りローラ20と切断部40との間には、筐体10の仕切壁11が設けられ、この仕切壁11には線材2を案内する案内筒12が切断部40に向けて突出している。案内筒12から切断部40に向けて供給される線材2は、線材2の供給方向に並ぶ一対の支持部材50,51と、チャック60とに支持された状態で切断され、切断部40で切断された線材2は、シュート70を介して収容箱80に排出される。
【0033】
次いで、図2及び図3を参照して、切断部40の詳細構成について説明する。図2(a)は、図1の矢印IIa方向視における切断部40の正面図であり、図2(b)は、図2(a)の状態から刃41a,41bを閉じた状態を示す切断部40の正面図である。図3(a)は、刃41a,41bが取付けられた状態を示す手工具3の正面図であり、図3(b)は、刃41a,41bが取外された状態を示す手工具3の正面図である。なお、図2(a)では、可動ブロック43aに隠れている刃41bの根元部分や凹部43bを破線で図示している。
【0034】
図2に示すように、切断部40は、線材2を切断するための刃41a,41bを備える。刃41a,41bは、それぞれ同一の形状であると共に、線材2の供給方向(矢印F-B方向)に延びる軸41c回りに軸支される。
【0035】
刃41aは、筐体10に固定された取付部42に取付けられる。取付部42は、筐体10の内部空間の底面に固定されるベース板42aを備える。ベース板42aからは支持板42bが上方に立ち上がっており、支持板42bの下流側(図3の紙面垂直方向手前側)の面には、刃41aを取付けるための略直方体状の固定ブロック42cが固定される。固定ブロック42cの下流側の面には、刃41aの基端(根元)部分に沿う形状の凹部42dが形成され、この凹部42dに嵌め込まれた刃41aがボルトBによって固定ブロック42cに着脱可能に取付けられる。即ち、刃41aは、筐体10に対して変位不能に固定される。
【0036】
刃41bが固定される取付部43は、取付部42の固定ブロック42cと略同一形状の可動ブロック43aを備える。可動ブロック43aの上流側(図3の紙面垂直方向奥側)の面には、刃41bの基端(根元)部分に沿う形状の凹部43b(図2(a)参照)が形成され、この凹部43bに嵌め込まれた刃41bが図示しないボルトによって可動ブロック43aに着脱可能に取付けられる。
【0037】
可動ブロック43aのうち、刃41bの取付け部分とは反対側の部位(図2(a)の矢印L側の端部)にはリンク43cの一端が軸支され、リンク43cの他端はシリンダ44(図1参照)のピストンロッド44aに軸支される。ピストンロッド44aは、シリンダ44への吸排気によって上下動するものである。
【0038】
刃41a,41bが開放する切断前の状態においては、刃41aと固定ブロック42cとの固定部分は軸41cよりも右方側(矢印R側)位置し、可動ブロック43aとリンク43cとの連結部分は軸41cよりも左方側(矢印L側)に位置している。また、該切断前の状態においては、リンク43cが可動ブロック43a及びピストンロッド44aを上下に繋いでいる。
【0039】
よって、ピストンロッド44aの上下動による駆動力がリンク43cを介して可動ブロック43aに付与されると、可動ブロック43aが軸41c周りに回転する。この可動ブロック43aの回転に伴い、刃41bも線材2の供給方向と直交する平面に沿って開閉(回転)する。従って、開放状態の刃41a,41bの間に線材2を挿入した状態で、刃41bを閉じる駆動力をシリンダ44から付与することにより、線材2が切断される(図2(b)参照)。
【0040】
刃41a,41bで線材2を切断する際の反力により、刃41aの根元の固定ブロック42cとの固定部分(軸41cを挟んだ刃先とは反対側)には軸41c回りに回転する方向の荷重が作用する。これと同様の荷重が支持板42bにも同様に作用するが、支持板42bは、軸41c(線材2の供給方向)と直交する平面に沿う板状に形成されるので、上記の荷重に対する支持板42bの強度を効果的に確保できる。
【0041】
更に、支持板42bには、その支持板42bの下流側(図2の紙面垂直方向手前側)の面とベース板42aとを連結する連結板42eが固定され、この連結板42eは、支持板42bの上流側(図2の紙面垂直方向奥側)の面にも設けられている。この連結板42eによっても、上記の荷重に対する支持板42bの強度を効果的に確保できる。
【0042】
図3に示すように、刃41a,41bは、手工具3に着脱可能に取付けられるものである。手工具3は、作業者によって操作される一対の柄3a,3bを備え、柄3aの先端(図3(b)の上側の端部)には、刃41aを嵌め込むための段差3cが形成される。柄3a,3bは同一の形状であり、柄3bにも刃41bを嵌め込むための段差が柄3aの段差3cと対面するようにして(図3(b)の紙面垂直方向奥側の面に)形成されている。
【0043】
この段差3c部分には、柄3a,3bの長手方向に並ぶ一対の貫通孔3dが形成され、刃41a,41bの各々には、柄3a,3bの貫通孔3dと対応する位置に貫通孔41dが形成される。これらの貫通孔3d,41dに挿入したボルトにナットを締結することにより、軸41cで軸支された刃41a,41bを柄3a,3bに固定できるようになっている。
【0044】
このような刃41a,41bが着脱可能になっている市販(既製)の手工具3は、刃41a,41bが傷んだ時のために替え刃(刃41a,41b)が量産および販売されている。即ち、刃41a,41bのみを容易に入手できるようになっている。
【0045】
図2に示すように、本実施形態では、手工具3の刃41a,41bが開閉可能な状態で取付けられる取付部42,43と、その取付部43に駆動力を付与して一対の刃を開閉させるシリンダ44(図1参照)とを備えるので、シリンダ44の駆動力を利用した刃41a,41bの開閉によって線材2を切断できる。取付部42,43に刃41a,41bが着脱可能に取付けられるので、刃41a,41bが傷んだ際には、他の市販(既製)の刃41a,41bに取り換えるだけで良い。
【0046】
そして、手工具3の刃41a,41bは、該手工具3の柄3a,3bの先端に固定して使用されるものであり、取付部42,43にも安定して固定できるので、線材2に対する刃41a,41bの切り込みも安定させることができる。よって、手工具3の刃41a,41bを利用しつつ、線材2を適切に切断できる。
【0047】
ここで、固定ブロック42cを筐体10に固定するのではなく、例えば固定ブロック42cと可動ブロック43aとの各々に駆動手段の駆動力を付与する構成を採用することも可能である。この場合には、刃41a,41bの軸41cを筐体10に固定すれば良い。しかしながら、そのような構成であると、固定ブロック42cを駆動させるための駆動手段が別途必要になることに加え、刃41a,41bを開閉させるための構造が複雑化する。
【0048】
これに対して本実施形態の切断装置100では、筐体10に固定される固定ブロック42cと、その固定ブロック42cに対して相対的に回転可能に構成され、シリンダ44の駆動力が付与される可動ブロック43aと、を備え、刃41a,41bは、軸41cに回転可能に軸支された状態で固定ブロック42c及び可動ブロック43aに取付けられる構成である。これにより、固定ブロック42cに対する可動ブロック43aの回転によって刃41a,41bを開閉できるので、刃41aに駆動力を付与することを不要にできる。つまり、1つのシリンダ44の駆動力で刃41a,41bを開閉できるので、切断装置100の製品コストを低減できると共に、刃41a,41bを開閉させる構造を簡素化できる。
【0049】
次いで、図4図8を参照して、切断装置100の詳細構成および切断動作について説明する。なお、以下に説明する切断装置100の切断動作は、図示しない制御装置(CPU)の制御プログラムに沿って実行される。
【0050】
まず、図4及び図5を参照して、チャック60を上流側に変位させて線材2を掴む構成について説明する。図4は、図1の矢印IV方向視における切断装置100の部分拡大側面図であり、図5は、図4のV-V線におけるチャック60の部分拡大断面図である。
【0051】
図4に示すように、線材2の切断を開始する際には先ず、送りローラ20から供給される線材2の先端を受取るためにチャック60を支持部材50,51よりも上流側(切断部40側)(矢印B側)に変位させる。この時、支持部材50,51は、チャック60の変位軌跡から外れた下降位置に下降しており、支持部材50,51とチャック60との衝突が防止される。
【0052】
チャック60の変位は、筐体10内の天井面に設けられたスライド機構90によって案内される。スライド機構90は、線材2の供給方向(矢印F-B方向)に延びると共に、チャック60に駆動力を付与する駆動源(図示せず)を有している。なお、スライド機構90は公知の構成が採用可能であるので詳細な説明を省略するが、例えばリニアガイドやシリンダ(アクチュエータ)を用いる構成(又は、それらを組み合わせる構成)が例示される。
【0053】
チャック60は、スライド機構90にスライド可能に支持される本体部61を備え、本体部61からは、線材2の先端を掴むためのアーム62が下方に突出している。
【0054】
図5に示すように、チャック60のアーム62は、線材2を挟んで左右一対に設けられ、これら一対のアーム62の各々の内面(線材2側を向く面)には、線材2を挟持するための挟持部63が固定される。左右一対の挟持部63の各々の内面には断面V字状の凹部64が形成される。
【0055】
左右一対のアーム62の各々は、本体部61の下面に形成されたレール65にスライド可能に吊り下げられている。レール65は左右方向に延びており、図示しない駆動源の駆動力がアーム62に付与されることにより、挟持部63を線材2から離隔させる開放位置(図5(a)の状態)と、挟持部63(凹部64)で線材2を挟持する挟持位置(図5(b)の状態)と、にアーム62が変位可能に構成される。
【0056】
図4に示すように、アーム62よりも下流側(矢印F側)には、線材2の先端が接触する接触板66が本体部61から下方に突出している。線材2が接触する接触板66の接触面(矢印B側を向く面)にはセンサS1が固定され、このセンサS1によって線材2の先端の有無が検出される。
【0057】
チャック60によって線材2を掴む際には、一対のアーム62を開放させた状態で、送りローラ20によって線材2を接触板66に向けて供給する。この供給によって線材2の先端部が接触板66のセンサS1で検出された場合には、送りローラ20が停止されると共に、一対のアーム62(挟持部63)によって線材2が挟み込まれる。これにより、線材2をチャック60で掴むことができる。
【0058】
次いで、図6を参照して、チャック60によって線材2を切断位置まで引き出す動作について説明する。図6は、図4の状態から線材2をチャック60によって下流側に引き出す様子を示す切断装置100の部分拡大側面図である。
【0059】
図6に示すように、線材2を切断位置まで引き出す場合には、チャック60で線材2を挟持した状態で、送りローラ20を駆動させつつ、チャック60を支持部材50,51よりも下流側に変位させる。そして、切断位置まで引き出された線材2を支持部材50,51によって支持することにより、線材2を切断可能な状態(図1の状態)が形成される。
【0060】
ここで、切断時の線材2を支持する支持部材50,51は、線材2の上面側を開放させた状態で支持している。即ち、線材2は、単に支持部材50,51に載せられているだけである。これは、詳細は後述するが、切断後の線材2を支持する支持位置から支持部材50,51を下降させることにより、シュート70によって線材2を支持部材50,51の側方側に排出するためである(図8参照)。このように、線材2の上面側が開放された状態で支持部材50,51に支持されることにより、支持部材50,51の側方側に向けた線材2の排出が容易になる一方で、切断部40の切断時の力によって線材2が動いて支持部材50,51から落下するおそれがある。
【0061】
これに対して本実施形態では、線材2の切断時に支持部材50,51よりも下流側に配置され、線材2の先端を挟持するチャック60を備えるので、線材2の先端をチャック60で固定した状態で線材2を切断できる。これにより、線材2の上面側が開放された状態で支持部材50,51に支持される場合であっても、切断時の線材2の安定性を確保できるので、線材2を適切に切断できる。
【0062】
また、チャック60は、送りローラ20から供給される線材2の先端を受取る受取り位置と、その受取り位置から線材2を引き出して切断を行う切断位置とに線材2の供給方向で変位するので、線材2を切断位置まで直線的に引き出すことができる。これにより、切断位置まで引き出された線材2に曲がりが生じることを抑制できるので、線材2が所望の長さで切断され易くなる。
【0063】
また、支持部材50,51は、チャック60が受取り位置と切断位置との間を変位する際に下降位置に下降するので、チャック60の変位に支持部材50,51が干渉することを防止できる。更に、例えば支持部材50,51(又は支持部材51のみ)を下降位置に変位させることにより、チャック60を支持部材50,51よりも上流側(矢印B側)に配置した状態で線材2を切断できる。よって、線材2を様々な長さで切断できる。
【0064】
ここで、受取り位置から切断位置に向けたチャック60の変位は、センサS2,S3によって検出される。センサS2は、支持部材50よりも下流側に配置され、センサS3は、支持部材51よりも下流側に配置される。線材2の受取り位置から切断位置に向けたチャック60の変位がセンサS2で検出された場合には、下降位置に下降している上流側の支持部材50が線材2を支持する支持位置に向けて上昇を開始する。また、該チャック60の変位がセンサS3で検出された場合には、下降位置に下降している下流側の支持部材51が支持位置に向けて上昇を開始する。
【0065】
即ち、線材2の受取り位置から切断位置に向けてチャック60が変位する際には、チャック60が切断位置に到達する前に支持部材50,51が支持位置に向けた上昇を開始する。これにより、チャック60によって引き出される線材2が切断位置に達する前に、支持部材50,51によって線材2を支持できるので、線材2が引き出される際に自重で撓むことを抑制できる。よって、線材2が所望の長さで切断され易くなる。
【0066】
次いで、図7及び図8を参照して、線材2を切断した後にシュート70から収容箱80に排出する動作について説明する。図7は、切断後の線材2をチャック60によって更に下流側に引き出した様子を示す切断装置100の部分拡大側面図である。図8(a)は、図7のVIIIa-VIIIa線における切断装置100の部分拡大断面図であり、図8(b)は、図8(a)の状態から線材2を収容箱80に向けて排出する様子を示す切断装置100の部分拡大断面図である。
【0067】
図7及び図8に示すように、線材2を切断部40で切断した後、線材2の先端を掴んだ状態のチャック60を更に下流側(矢印F側)に変位させる。これは、線材2の供給方向で切断部40の刃41a,41bよりも下流側にシュート70が配置されるためである。切断後の線材2の全体がシュート70の上面に載る位置までチャック60によって引き出された後、チャック60のアーム62(挟持部63)による線材2の挟持状態が解除されると共に、支持部材50,51が下降位置に下降する(図8参照)。
【0068】
支持部材50,51の側方(図8の矢印R側)には、切断後の線材2を支持部材50,51から収容箱80に排出するためのシュート70が設けられる。シュート70は、その上面が支持部材50,51の側方側に突出しつつ下降傾斜する板であり、シュート70の上端(支持部材50,51側の端部)には、線材2の供給方向で所定間隔を隔てる一対の切欠き71,72(切欠き72については、図7参照)が形成される。
【0069】
これらの切欠き71,72には、支持部材50,51が挿入される。支持部材50,51は、切断時に線材2を支持する支持位置(図8(a)の状態)と、切断後の線材2をシュート70の上面に載せる下降位置(図8(b)の状態)とに上下に変位可能に構成されるため、線材2の切断後に支持部材50,51を下降位置に下降させることにより、線材2がシュート70の上面(切欠き71,72が非形成とされる領域)に引っ掛かる。
【0070】
支持部材50,51の上端には、断面V字状の凹部を上面に有する支持部52(図8参照)が固定されており、この支持部52は、線材2の上面側を開放させた状態で支持している。そして、シュート70の上面は、切欠き71,72から支持部材50,51の側方側に向けて下降傾斜しているため、シュート70の上面に引っ掛かった線材2は、支持部材50,51から落下してシュート70の上面を滑り落ちる。シュート70の側方側(支持部材50,51とは反対側)には、収容箱80が隣接して配置されるので、シュート70を滑り落ちた線材2は収容箱80に収容される。
【0071】
このように、本実施形態では、支持部材50,51の側方側に線材2を排出しているが、このような側方側への線材2の排出に関する技術として、例えば実開昭54-101684号公報の技術が公知である。この技術では、切断後の線材(鋼材3)を支持する支持部材(山形鋼31)を駆動手段(ジャッキ25)の駆動力によって回転させることにより、線材をシュート(バンカ17の下壁35)に滑らせて側方側に排出している。この技術のように、駆動手段の直動を支持部材の回転に変換する構成では、線材を排出するための構造が複雑化する。
【0072】
これに対して本実施形態では、上述した通り支持部材50,51の上下動(直動動作)を利用して線材2を排出しているため、上記の公知技術のように支持部材を回転させて線材を排出する場合に比べ、切断装置100の構造を簡素化できる。
【0073】
また、シュート70に線材2を排出する際には、切断後の線材2の全体がシュート70の上面に載る位置までチャック60によって引き出された後、チャック60による線材2の挟持状態が解除されるので、線材2の一部がシュート70からはみ出た状態で滑り落ちることを抑制できる。これにより、シュート70の上面に沿って滑り落ちる時の線材2の姿勢を安定させることができる。即ち、線材2がその供給方向に沿って真っすぐに伸びた状態を維持したまま収容箱80に排出され易くなるので、複数の線材2を繰り返し切断した場合に、それらの各線材2を整列させた状態で収容箱に収容できる収容箱80に収容できる(図8参照)。
【0074】
次いで、図9及び図10を参照して、第2実施形態の切断装置200について説明する。上述した第1実施形態では、線材2の切断が制御装置の制御プログラムによって(自動で)実行される場合について説明したが、第2実施形態の切断装置200では、作業者の操作によって線材2が切断される場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図9は、第2実施形態における切断装置200の斜視図であり、図10は、図9の矢印X方向視における切断装置200の上面図である。なお、図10では、一対の支持部材219のうちの下流側(矢印F側)に位置する支持部材219を退避位置に退避させた状態を図示している。
【0076】
図9及び図10に示すように、第2実施形態の切断装置200は、切断部40が収容される箱状の筐体210を備える。筐体210内の切断部40に向けた線材2の供給は、ドラム1(図1参照)に巻かれた線材2を作業者が手で引き出すことによって行われる。
【0077】
図9及び図10では、矢印F-Bが線材2の供給方向、L-Rが線材2の供給方向と直交する水平方向(左右方向)、U-Dが上下方向を示している。なお、線材2の供給方向における前方側(矢印F側)が下流側であり、該供給方向における後方側(矢印B側)が上流側である。
【0078】
線材2の供給方向における筐体210の下流側(矢印F側)の壁213には案内筒12が貫通している。切断部40(刃41a,41bの間)及び案内筒12に通された線材2は、作業台214に引き出された状態で刃41a,41bによって切断される。
【0079】
作業台214は、筐体210の壁213に隣接して設けられており、作業台214の側方側(矢印L側)であって、作業者が立って作業を行う側には操作ボタン215が設けられる。この操作ボタン215を押すことにより、切断部40のシリンダ44の駆動力によって刃41a,41bが開閉し、この刃41a,41bの開閉によって線材2が切断される。
【0080】
刃41a,41bは、第1実施形態と同様、手工具3の柄3a,3b(図3参照)に着脱可能に固定されるものである。よって、手工具3の刃41a,41bを利用しつつ、線材2を適切に切断できる。
【0081】
操作ボタン215よりも作業台214の中央側(矢印R側)の上面には、線材2の供給方向に沿うレール216(図9の拡大部分または図10参照)が固定され、レール216には、ブロック217がスライド可能に支持される。即ち、これらのレール216及びブロック217は、リニアガイド機構を構成するものである。
【0082】
ブロック217の上面には、線材2を下方から支持する支持部217aと、その支持部217aよりも下流側で線材2の先端が接触する接触板217bと、が固定される。支持部217aは、上述した第1実施形態の支持部52(図8参照)と同一の構成である。
【0083】
また、作業台214の上面には、レール216に対するブロック217の相対位置から線材2の切断長さを測定するためのメジャー218が固定される。メジャー218は、レール216と平行に延びており、ブロック217の側面からは、メジャー218の目盛りを指す針217cが下方に突出している。この針217cが指すメジャー218の目盛りは、線材2の先端を接触板217bに接触させた状態で切断した時の線材2の切断長さを示すように構成される。
【0084】
このように、本実施形態の切断装置200の作業台214は、刃41a,41b側から下流側に向けて延びるレール216と、そのレール216にスライド可能に支持され、線材2の先端を支持するブロック217と、そのブロック217の位置から線材2の切断長さを測定する針217c(メジャー218)と、を備えている。よって、作業者がレール216に対するブロック217の位置を調整することにより、そのブロック217に線材2の先端を支持させた場合の切断長さを針217cによって測定できる。これにより、作業者は、針217cで測定される線材2の切断長さを所望の長さに設定した状態で、線材2の切断の開始を操作ボタン215で指示することにより、線材2を所望の長さで切断できる。よって、線材2の切断作業の作業性が向上する。
【0085】
ブロック217には、レール216に対するブロック217の相対位置を固定するためのレバー217dが設けられている。レバー217dによるブロック217の固定および固定解除の構造は公知の構成が採用可能であるので詳細な説明を省略するが、レバー217dを回転させる操作により、ブロック217に固定されたブレーキシューをレール216に対して接触または離隔させるものである。
【0086】
このレバー217dの操作により、作業者は、レール216に対するブロック217の位置、即ち針217c(メジャー218)によって測定される線材2の切断長さを固定した状態で線材2を切断できる。よって、ブロック217をレバー217dで固定した状態で複数の線材2を繰り返し切断することにより、複数の同じ長さの線材2を容易に生産できる。
【0087】
このように、本実施形態では、レール216に沿ってブロック217の位置を調整することにより、線材2の切断長さが変更可能になっている。よって、比較的長い線材2を切断する際には、レール216上の線材2を支持部材219で支持させる一方、短い線材2を切断する際には、その支持部材219をレール216上から退避させることが可能になっている(図10参照)。
【0088】
具体的には、作業台214の上面には、支持部材219の円柱状の支柱219a(図10参照)が固定されており、この支柱219aにはクランプ219bが回転可能に嵌め込まれる。クランプ219bにはハンドル219cが設けられ、ハンドル219cの操作によって支柱219aに対するクランプ219bの固定および固定の解除が可能になっている。
【0089】
クランプ219bの先端(支柱219aとは反対側の端部)には支持部219dが固定される。この支持部219dは、上述した第1実施形態の支持部52(図3参照)と同一の構成である。
【0090】
支持部材219は、レール216に並設されるようにして線材2の搬送方向に沿って複数(本実施形態では、2個)並べて設けられており、これらの支持部材219の支持部219dによって線材2を支持することが可能になっている。
【0091】
よって、各支持部材219よりも下流側に配置したブロック217に線材2の先端を支持させつつ、刃41a,41bとブロック217との間に位置する支持部材219(支持部219d)で線材2を支持することにより、線材2の自重による撓みを支持部材219によって規制できる。よって、線材2が所望の長さで切断され易くなる。
【0092】
また、ハンドル219cによる固定状態を解除したクランプ219bを支柱219aに対して回転させることにより、支持部219dをレール216上から退避させることができる。
【0093】
即ち、支持部材219の支持部219dは、レール216上で線材2を支持する支持位置と、レール216上でのブロック217の変位軌跡から外れた退避位置と、に変位可能に構成される。よって、図10に示すように、ブロック217の変位軌跡から支持部219dを退避させることにより、ブロック217を支持部材219よりも上流側に配置した状態で線材2を切断できる。よって、線材2を様々な長さで切断できる。
【0094】
また、支持部材219の支柱219aは、レール216を挟んで操作ボタン215とは反対側に配置されるので、作業者が作業する側とは反対側に支持部219dを退避させることができる。これにより、レール216上から退避させた支持部219dが作業者の作業の邪魔になることを抑制できるので、線材2の切断作業の作業性を向上できる。
【0095】
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0096】
上記各実施形態では、軸41c回りに回転によって一対の刃41a,41bを開閉させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、一対の刃の互いの(又はいずれか一方の)直動によって刃を開閉させても良い。
【0097】
上記各実施形態では、一対の刃41a,41bのうちの一方の刃41bに駆動力を付与する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、一対の刃41a,41b(固定ブロック42c及び可動ブロック43a)の各々に駆動手段の駆動力を付与しても良い。
【0098】
上記各実施形態では、刃41a,41bに駆動力を付与する駆動手段の一例としてシリンダ44(エアシリンダ)を例示したが、油圧シリンダなどの他のアクチュエータや、モータなどの駆動力によって刃41a,41bを開閉させても良い。
【0099】
上記各実施形態では、支持部材50,51,219が線材2の搬送方向に沿って複数設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、線材2の搬送方向に延びる樋状に形成された1つの支持部材50,51,219によって線材2を支持しても良いし、支持部材50,51,219を省略しても良い。
【0100】
上記各実施形態では、切断位置に向けてチャック60が変位する際に、チャック60が切断位置に到達する前に支持部材50,51が上昇を開始する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、チャック60が切断位置に到達した時や、切断位置に到達した後に支持部材50,51が上昇を開始しても良い。
【0101】
上記第1実施形態では、線材2を刃41a,41bの間に供給する供給手段の一例として送りローラ20を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ベルトコンベアなどの他の公知の送り装置によって線材2を供給しても良い。
【0102】
上記第1実施形態では、支持部材50,51よりも上流側に変位させたチャック60で線材2の先端を受取る場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、線材2の供給方向に延びる樋状または筒状に形成した支持部材50,51に向けて線材2を供給し、その支持部材50,51の下流側で線材2の先端をチャック60で受取る構成でも良い。この場合には、支持部材50,51よりも下流側で変位するチャック60によって線材2の先端を引き出す構成でも良いし、変位不能なチャック60によって単に線材2の先端を受取るだけの構成でも良い。
【0103】
また、線材2の供給方向に延びる樋状または筒状に支持部材50,51を形成する場合には、線材2の先端を掴むチャック60を省略し、単に線材2を支持部材50,51に載せた状態で切断しても良い。
【0104】
上記第1実施形態では、支持部材50,51が上下に変位する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支持部材50,51が上下に変位不能な構成でも良い。この場合には、チャック60の変位に支持部材50,51が干渉しないように支持部材50,51又はチャック60の形状を調整すれば良い。
【0105】
上記第1実施形態では、支持部材50,51が下降する動作を利用して線材2をシュート70から排出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支持部材50,51(支持部52)を回転させる動力によって線材2をシュート70に落とす構成でも良い。また、支持部材50,51に載る線材2をシュート70に向けて押し出す動作や、線材2を掴んでシュート70に落とす動作が可能な排出装置を別途設けても良い。これらの構成の場合には、シュート70の切欠き71,72を省略しても良い。
【0106】
上記第1実施形態では、板状のシュート70の端部に形成した切欠き71,72に支持部材50,51を挿入する構成を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シュート70に貫通する貫通孔に支持部材50,51を挿入しても良い。また、シュート70は、板状ではなく、網状や柵状のものであっても良い。
【0107】
上記第1実施形態では、シュート70によって支持部材50,51の側方側に線材2を排出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支持部材50,51の下流側にシュート70を設けても良い。この場合には、線材2の切断後に支持部材51のみを下降させてシュート70に落とすか、若しくは線材2がシュート70に載る位置までチャック60で引き出せば良い。
【0108】
上記第2実施形態では、刃41a,41bによる切断開始を指示する指示手段の一例として操作ボタン215を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、フットペダルなどの他の公知の手段を用いても良い。
【0109】
上記第2実施形態では、作業者が手動で線材2を引き出すことによって刃41a,41bの間に線材2を供給する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1実施形態のような供給手段(送りローラ20)によって線材2を供給し、その供給および供給停止を作業者が指示する供給指示手段(操作ボタンなど)を作業台214に設けても良い。
【0110】
上記第2実施形態では、レール216に対するブロック217の相対位置(線材2の切断長さ)を測定する測定手段の一例として針217c及びメジャー218を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、レール216に対するブロック217の相対位置をデジタル計測(デジタル表示)する装置や、リニアエンコーダなどを用いてブロック217の位置(線材2の切断長さ)を測定しても良い。
【0111】
上記第2実施形態では、支持部材219の支持部219dがレール216上から外れた位置に退避可能である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支持部材219の支持部219dを変位不能に構成し、支持部材219よりも下流側の領域のみでブロック217を変位させても良い。
【0112】
上記第2実施形態では、支柱219a回りのクランプ219bの回転によって支持部219dがレール216上から退避する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、リニアガイド機構などの直動を案内する部材によって支持部219dをスライドさせ、そのスライド変位によってレール216上から支持部219dが退避する構成でも良い。
【0113】
上記第2実施形態では、支持部219dの退避位置がレール216を挟んで操作ボタン215とは反対側である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、操作ボタン215側に支持部219dを退避させても良いし、支柱219aを高く形成して支持部219dをブロック217の変位軌跡よりも上方側に退避させても良い。
【0114】
上記第2実施形態では、レバー217dの操作によってレール216に対するブロック217の相対位置が固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、レール216に対するブロック217の相対位置が固定不能であっても良い。
【符号の説明】
【0115】
100,200 切断装置
2 線材
3 手工具
3a,3b 柄
10 筐体
20 送りローラ20(供給手段)
41a,41b 刃
42,43 取付部
42c 固定ブロック(固定取付部)
43a 可動ブロック(可動取付部)
44 シリンダ(駆動手段)
50,51 支持部材
60 チャック
70 シュート
71,72 切欠き(挿入部)
80 収容箱
214 作業台
216 レール
217 ブロック
217c 針(測定手段)
218 メジャー(測定手段)
219 支持部材

図1
図2
図3
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図10