(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109083
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】大型機械の検査システムおよび大型機械の検査方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/10 20060101AFI20230731BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230731BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230731BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C39/02
B64C27/08
B64D47/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010474
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301KK05
5H301KK07
(57)【要約】
【課題】 比較的簡単または比較的安全に大型機械を検査することのできる大型機械の検査システムおよび大型機械の検査方法を提供する。
【解決手段】 無人航空機40に取り付けた検査機器48を用いて大型機械を検査した検査結果を制御装置26,42,71、91に送信する大型機械11の検査システムであって、予め定めた飛行ルートRに沿って無人航空機40を飛行させるとともに、大型機械11の状態または大型機械11との位置関係により一部飛行ルートまたは飛行のタイミングの決定または修正、或いは検査方法の決定または修正を行う制御装置26,42,71、91を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機に取り付けた検査機器を用いて大型機械を検査した検査結果を制御装置に送信する大型機械の検査システムであって、
予め定めた飛行ルートに沿って無人航空機を飛行させるとともに、大型機械の状態または大型機械との位置関係により一部飛行ルートまたは飛行のタイミングの決定または修正、或いは検査方法の決定または修正を行う制御装置が備えられた、大型機械の検査システム。
【請求項2】
無人航空機には、無人航空機に搭載された検出機器により大型機械の作動状況の把握または大型機械との距離または位置関係を把握、他の制御装置との通信により大型機械の作動状況の把握の少なくとも一方の手段を用いて、一部飛行ルートまたは飛行のタイミングの決定または修正、或いは検査機器を用いた検査方法の決定または修正を行う制御装置が備えられた、請求項1に記載の大型機械の検査システム。
【請求項3】
前記検査機器には、カメラ、温度センサ、騒音センサ、振動センサ、超音波センサの少なくとも一つが含まれ、
前記検査機器は、無人航空機に着脱可能に設けられている請求項1または請求項2に記載の大型機械の検査システム。
【請求項4】
前記検査機器は、無人航空機の本体部から垂下方向に設けられた垂下方向保持具の先端部または先端部近傍に取り付けられるかまたは、前記無人航空機の鉛直方向重心線を挟んで両側に向けて水平方向に設けられた水平方向保持具の少なくとも一方の先端部または先端部近傍に取り付けられ、
水平方向保持具に検査機器が取り付けられる場合は、前記鉛直方向重心線を挟んで他方側の水平方向保持具の先端部または先端部近傍にも検査機器または錘部が取り付けられている請求項3に記載の大型機械の検査システム。
【請求項5】
大型機械を無人航空機に取り付けた検査機器を用いて検査した検査結果を制御装置に送信する大型機械の検査方法であって、
前記無人航空機は予め定めた飛行ルートを飛行するともに、
大型機械と通信することにより大型機械の作動状況を把握し、一部飛行ルート、飛行のタイミング、検査方法の少なくとも一つを決定または修正しつつ、
前記検査機器により前記大型機械の検査を行う大型機械の検査方法。
【請求項6】
検査機器はカメラであり、撮影された画像データは無人航空機から制御装置に送信され、表示装置に表示されるともに記憶装置に記憶される請求項5に記載の大型機械の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型機械を無人航空機に搭載した検査機器を用いて検査した検査結果を制御装置に送信する大型機械の検査システムおよび大型機械の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一例として床面からの高さが2.5mを超えるような大型機械について、従来は作業者が大型機械に据え付けられた梯子等を利用して機械の上部に登り検査作業を行っていた。しかし前記の検査作業は高所作業となり、作業者に危険が伴うこともあった。また大型機械の作動中は作業者が検査作業をできないケースがあった。更に大型機械の種類によっては高温やガス等の影響により作業者が検査作業を行うエリアに近づけないケースもあった。これらの対策として作業者を載せた特殊なゴンドラを使用することも考えられるが、工場内には前記ゴンドラを導入するスペースが無い場合も多く、また前記ゴンドラ自体の費用も高額なものとなってしまう。更には工場内に設置されているクレーンに検査機器を取り付け、作業者がクレーンを操作して大型機械の検査作業を行うことも想定されるが、大型機械が収容される工場には全て検査作業に最適なクレーンがあるとは限らず、クレーンが使用可能な場合も短時間で最適な位置から最適な検査を行うことは困難であった。
【0003】
一方特許文献1に記載されるように、通称ドローンと呼ばれる無人航空機(UAV)により工場内の設備の検査をすることも公知である。特許文献1には工場の建屋内に設置された設備の運転状況を運転状況映像化手段によって空中から監視することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1は、人が建屋内で飛行体を操作して検査を行うものであるので次のような問題があった。即ち飛行体を人が操作するのには熟練を要するので、飛行体の操作に熟練していない者が検査を行うことはできなかった。また飛行体は人により操作されるので、設備に対する検査位置は、毎回異なってしまい、前回の検査結果との正確な比較が行えなかった。更に飛行体は人により操作されるので、誤操作により設備に衝突して設備を破損したり、検査機器を含む飛行体自体を破損する可能性もあった。更には設備の作動状況とは無関係に飛行体を飛行させるので設備に移動部分や温度等の状況が変化する状況変化部分が存在する場合は、飛行体の飛行や検査に不都合を生じる可能性があった。
【0006】
そこで本発明は、比較的簡単または比較的安全に大型機械を検査することのできる大型機械の検査システムおよび大型機械の検査方法を提供することを目的とする。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の大型機械の検査システムは、無人航空機に取り付けた検査機器を用いて大型機械を検査した検査結果を制御装置に送信する大型機械の検査システムであって、予め定めた飛行ルートに沿って無人航空機を飛行させるとともに、大型機械の状態または大型機械との位置関係により一部飛行ルートまたは飛行のタイミングの決定または修正、或いは検査方法の決定または修正を行う制御装置が備えられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の大型機械の検査システムは、無人航空機に取り付けた検査機器を用いて大型機械を検査した検査結果を制御装置に送信する大型機械の検査システムであって、予め定めた飛行ルートに沿って無人航空機を飛行させるとともに、大型機械の状態または大型機械との位置関係により一部飛行ルートまたは飛行のタイミングの決定または修正、或いは検査方法の決定または修正を行う制御装置が備えられているので、比較的簡単または比較的安全に大型機械を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の大型機械の検査システムによる検査方法を示す図である。
【
図2】本実施形態の大型機械の検査システムの無人航空機の基本形を示す図である。
【
図3】本実施形態の大型機械の検査システムのブロック図である。
【
図4】本実施形態の大型機械の検査システムの無人航空機の応用形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<大型機械の構成>
図1を参照して大型機械の一種である竪型ロータリ式の射出成形機11について説明する。竪型ロータリ式の射出成形機11とその型締装置12は、工場の建物内の床面10上に設置され、建物の床面10からの高さが最低でも2.5m以上あり、通常は5mないし10mの高さを備えている。型締装置12は、下盤である固定盤13に対して各タイバ14が垂直方向に固定され、各タイバ14の上部は上盤である受圧盤15に固定されている。またタイバ14にガイドされて可動盤16が昇降移動可能に設けられている。可動盤16の昇降移動は、受圧盤15と可動盤16の間を接続して設けられた2基の型開閉機構の型開閉シリンダ17により行われる。なお型開閉機構は、サーボモータやボールねじ機構を用いたものでもよい。また受圧盤15には型締シリンダ18等の型締機構が設けられており、型締シリンダ18のラム19が可動盤16の背面に固定されている。また受圧盤15の上部や側部には型締シリンダ18へ作動油を供給する図示しないタンク、ポンプ、バルブ等が取り付けられている。なお型締機構は電動モータとトグル機構を用いたものでもよい。
【0012】
本実施形態の射出成形機11は多色成形品用のものであり、可動盤16の下面には回転テーブル20が可動盤16に対して回転可能に設けられている。回転テーブル20は、可動盤16の側面に固定され図示しないテーブル回転用のサーボモータによりベルトを介して回転される。そして回転テーブル20の下面には2個の可動金型21,21が取り付けられる。また固定盤13の上面には可動金型21,21と型開閉される2個の固定金型22,22が取り付けられる。また固定盤13と可動盤16の間の可動金型21,21が移動する領域の側方であって
図1において右側の操作側には、安全扉23が水平方向に開閉可能に取り付けられている。また
図1において左側の反操作側にも安全扉24が水平方向に開閉可能に設けられている。更には型締装置12の側方には図示しない取出機が設けられている。
【0013】
また射出成形機11は、型締装置12の側方には図示しない複数の射出装置が配置されている。更に射出成形機11は、表示装置を兼ねた設定表示装置25と、制御装置26(本発明の制御装置の一つとなり得る)を備えている。制御装置26は、射出成形機11の各センサ等と通信して該射出成形機11の作動を制御したり状態を把握する作動制御部27および記憶部28(記憶装置)と、後述するコントローラ70の制御装置71(本発明の制御装置の一つとなり得る)等と通信する送受信部29を備えている。また制御装置26にはその他にも種々の機能はあるが、本発明との関連性が無いか薄い部分は説明を省略する。
【0014】
本実施形態では射出成形機11の設定表示装置25に無人航空機40の発着台30が設けられている。設定表示装置25に発着台30が設けられる場合は、設定表示装置25の側面に設けられた回転軸により発着台30が水平方向に固定可能に保持されている。なお発着台30を使用しないとき発着台30はヒンジ式の回転軸とともに回動されて設定表示装置25の側面に沿う方向に収納される。なお発着台30については、射出成形機11の固定盤13や図示しない射出装置など別の部分に取り付けられたものでもよい。また発着台30は、射出成形機11から一定距離内の離れた位置に設けられたものでもよい。
【0015】
更に大型機械である射出成形機11の型締装置12の各部には、無人航空機40が飛行ルートRに沿って飛行されているかを確認し、飛行ルートRからずれが生じている際には修正するためのマーカー31が設けられている。本実施形態においてマーカー31は、型締シリンダ18のシリンダの中央上部、各タイバ14の上端部、型開閉機構の型開閉シリンダ17の上部、可動盤16の側方であって型開閉シリンダ17のロッドを取り付けるブラケット32の側部、固定盤13の側部、発着台30の上面の中央部に設けられている。それぞれのマーカー31の形状は、それぞれ異なっていて無人航空機40に搭載されたマーカー31を検出する検出機器を兼ねた検出機器であるカメラ48とその検査制御部44によって、どのマーカー31か識別可能であることが望ましい。
【0016】
なお大型機械が射出成形機11の場合、作業者の手が届かない2.5m以上の高さのものであれば、水平方向に可動盤が移動する横型射出成形機であってもよい。大型機械の種類は限定されず、鍛工装置を含むプレス装置であってもよい。プレス装置の場合は、チャンバ内に多数の熱板を備えたものなども含まれる。更に大型機械は、鉱石や土石類、人造物等を破砕する破砕機、各種材料を混合する混合装置、クレーンやコンベアを備えた貯留装置であってもよい。更に大型装置は、鉱石や人造物を溶融する溶融炉を含む溶融装置であってもよい。これら大型機械は、床面10または地面からの高さが2.5m以上あるものが主な対象となるが、例外的に高さが2.5m以下であっても装置の水平方向の短辺側の長さが3.0m以上であって、機械側方の検査者の立ち位置から検査者が立ち入れない検査エリアまでの長さが1.0m以上あるものでもよい。
【0017】
次に
図2、
図3を参照して大型機械の検査システムの無人航空機40と検出機器と検査機器について説明する。上述のように無人航空機40(UAV)は、通称ドローンと呼ばれる飛行体であり、本体部41の4隅近傍にプラシレスモータ等のモータ49が取り付けられている。そしてモータ49の回転軸には複数枚のロータ50(プロペラ)が取り付けられている。なお
図2ではモータ49とロータ50からなる飛翔部51は2基しか描画されていないが、本実施形態の飛翔部51の数は最も一般的な4基である。なお本発明の無人航空機40が備える飛翔部51の数は、3基以上の複数基であり一例として10基以下である。本体部41には充電式の電池52(バッテリー)が搭載され、前記電池52は図示しないスイッチを含むESC等の電圧制御器53を介してモータ49に接続されている。また本体部41には無人航空機40の姿勢を自律制御するための飛行制御部43が搭載されている。飛行制御部43には速度の変化により姿勢を制御する加速度センサ45や傾きや向きの変化により姿勢を制御する角速度センサ46(ジャイロセンサ)、自律飛行判断部47が含まれる。
【0018】
また無人航空機40には、大型機械である射出成形機11への近接を検出する検出機器が搭載されている。本実施形態において検出機器は、超音波センサ54からなり、飛行中は測定する射出成形機11に対して常時超音波を発信して射出成形機11との距離を測定する。そして予め定めた距離以上に無人航空機40が射出成形機11に接近しないように制御する。前記超音波センサ54等の安全に飛行を行うための検出機器は、本体部41に搭載された制御装置42(本発明の制御装置の一つとなり得る)の飛行制御部43の自律飛行判断部47に接続されている。また飛行制御部43は前記電圧制御器53にも接続されている。更に制御装置42はアンテナを含む送受信部55を備え、後述する検査者が手で持って操作するコントローラ70と通信可能となっている。
【0019】
また大型機械である射出成形機11の作動状況の把握や射出成形機11との距離を把握するためには検出機器としては、検査機器であるカメラ48を使用するか、または前記カメラ48と他の検出機器と併用するものでもよい。その場合カメラ48により撮影された画像から飛行制御部43または検査制御部44が射出成形機11の作動状況や距離を判断する。または後述するコントローラ70の制御装置71の飛行制御部43やホストコンピュータ90(本発明の制御装置の一つとなり得る)の判断部93で前記状態を判断してもよい。また前記検出機器としては赤外線センサ、光電センサなど他のセンサを用いるか複数を組み合わせたものでもよい。
【0020】
また無人航空機40は下面側に各種検査機器を着脱自在に搭載するためのチャック装置56を備えており、無人航空機40は各種の検査機器を交換して搭載可能となっている。本実施形態ではチャック装置56には、カメラ48の角度を制御するカメラ角度変更機構57が保持されている。カメラ角度変更機構57は、図示しないモータ、減速機構、カメラ48を軸保持する回転駆動軸、カメラ48と直接当接する保持部などを備えている。そしてカメラ48は水平方向以外にも上方または下方に向けてカメラ撮影の際の角度が変更可能となっている。カメラ角度変更機構57は、とりわけカメラ48を鉛直方向に回動させて無人航空機40の真下の画像を撮影できることが望ましい。
【0021】
なお無人航空機40は、カメラ48を含む少なくとも一つ或いは少なくとも2つの検査機器は常時搭載し、それ以外の検査機器は選択的に着脱自在に搭載するものでもよい。無人航空機40に搭載される検査機器としては、CCDカメラ等のカメラ48の他に、騒音センサ62、温度センサ63、振動センサ、超音波探傷センサ、気体や液体の成分分析用センサ、歪センサを含むロードセル等の各種センサが想定される。これらセンサは検査制御部44に接続されている。そして検査制御部44からの指令により検査が実行され、検出されたデータは検査制御部44において信号変換され検査制御部44に接続される送受信部55から前記コントローラ70へ検査データが送信可能となっている。
図3では検査制御部44は一つのブロックとして記載されているが、検査制御部44はそれぞれのセンサごとに対応して設けられることも一般的である。
【0022】
無人航空機40は、飛翔部51、検査機器であるカメラ48等、検出機器である超音波センサ54等が大型機械である射出成形機11に直接当接することを防止するガード部58が設けられている。ガード部58は樹脂やゴムから構成され、フレーム部59が接続部60により接続されて立体構造となっている。またフレーム部59や接続部60の外側の少なくとも一部には、緩衝用のスポンジ(多孔性エラストマ)や樹脂製空気袋などを取り付けることも衝撃吸収の点で望ましい。そしてガード部58のフレーム部59の一部は本体部41に接続されている。そしてガード部58の内側に前記飛翔部51、本体部41、制御装置42、検査機器等が保護されて保持される形となっている。従ってもしも無人航空機40が予め想定された飛行ルートRを外れたとしても、ガード部58が大型機械に当接するのみであるで、大型機械に損傷を与えることはなく、また無人航空機40も損傷を受けない。
【0023】
無人航空機40の本体部41の下面から下方に向けて少なくとも3本の脚部61が設けられている。脚部61は、無人航空機40を発着台30に載置または着陸させる際に、脚部61の先端部が発着台30に当接されて無人航空機40を載置するものである。脚部61があることにより検査機器等が直接、発着台30に当接されず、検出機器に無人航空機40の自重がかからず、無人航空機40が安定的に載置される。なお無人航空機40は、ガード部58の下側部分が脚部61の代わりをするものでもよい。
【0024】
無人航空機40の本体部41には、制御装置42が搭載されている。本発明における無人航空機40の制御装置42は、無人航空機40に搭載された検出機器により大型機械の作動状況の把握または大型機械との距離または位置関係を把握、他の制御装置であるコントローラ70の制御装置71、大型機械の制御装置26、ホストコンピュータ90の制御装置91の少なくとも一つとの通信により大型機械の作動状況の把握の少なくとも一方の手段を用いて、一部飛行ルートまたは飛行のタイミングの決定または修正、或いは検査機器を用いた検査方法の決定または修正を行う。前記においてコントローラ70の制御装置71は、単なる中継や転送を行うものであり、基本となる飛行ルートRや検査位置の情報は、大型機械の制御装置26またはホストコンピュータ90の制御装置91から行うものや、2つ以上に制御装置で本発明の機能を分散するものでもよい。
【0025】
次に
図3を参照して大型機械の検査システムのシステム構成について更に説明する。検査システムの制御装置は、予め定めた飛行ルートRに沿って無人航空機40を飛行させるとともに、大型機械の状態または大型機械との位置関係により一部飛行ルートまたは飛行のタイミングの決定または修正、或いは検査方法の決定または修正を行う。ここにおいて制御装置とは、無人航空機40の制御装置42、射出成形機11の制御装置26、コントローラ70の制御装置71、ホストコンピュータ90の制御装置91の少なくとも一つであればよい。即ちどこに制御装置があっても通信機能により無人航空機40の飛行制御と検査実施が行えればよい。上記により本発明の検査システムは、無人航空機40は予め定めた飛行ルートRを飛行するともに、大型機械と通信、または無人航空機40自体の検出機構により大型機械の作動状況を把握し、一部飛行ルート、飛行のタイミング、検査方法の少なくとも一つを決定または修正しつつ、前記検査機器により前記大型機械の検査を行うことができる。
【0026】
無人航空機40の制御装置42は、飛行制御部43、検査制御部44、送受信部55を備えている。そして送受信部55は、検査者が保持するハンディタイプのコントローラ70の送受信部72に接続されている。コントローラ70は制御装置71を備えている。制御装置71は、大きく分けて、無人航空機40の飛行制御部73と検査制御部74を備えており、その他にも記憶部80や音声処理部81を備えている。制御装置71の飛行制御部73は、自動飛行制御部75と手動飛行制御部76を備えている。また検査制御部74は、検査指令部77と検査結果判断部78を備えている。そして飛行制御部73と検査制御部74と音声処理部81は、無人航空機40と通信を行う送受信部72に接続されている。また飛行制御部73と検査制御部74は、無人航空機40、ホストコンピュータ90、および大型機械である射出成形機11の制御装置26に対して送受信を行う送受信部72にも接続されている。
【0027】
また記憶部80は飛行制御部73や検査制御部74に接続されている。更に音声処理部81はマイクとスピーカーを備えており、検査者はホストコンピュータ90の側の技術者と通話が可能となっている。更にコントローラ70は、表示装置を兼ねた設定表示装置79と飛行操作装置82を備えており、設定表示装置79は、飛行制御部73,検査制御部74等に接続されている。また飛行操作装置82は、無人航空機40が予め定められた飛行ルートRに沿って自動飛行する場合の開始操作および終了操作や、無人航空機40が手動飛行する場合、検査者が操作を行う部分である。
【0028】
なおコントローラ70と、無人航空機40、射出成形機11の制御装置26、ホストコンピュータ90の間の少なくとも一つの間は無線ではなく、信号線(有線)を介して接続してもよい。大型機械が強い電磁波など無線通信に大きな影響を及ぼすものを発生させる機械である場合は、信号線を介してコントローラ70と他の機器を接続することも望ましい。また射出成形機11の制御装置26とコントローラ70は、一体のものでもよい。即ち射出成形機11に備え付けられた設定表示装置25と制御装置26に前記コントローラ70の機能を持たせてもよいし、射出成形機11のメインの設定表示装置25以外に、射出成形機11の少なくとも一部の制御や作動状況の確認のできるハンディタイプのコントローラを備える場合、前記ハンディタイプのコントローラに、無人航空機40の制御機能を持たせてもよい。いずれにしても射出成形機11の作動制御部27を含む制御装置26と無人航空機40がコントローラ70を介して通信することにより、無人航空機40の側は、大型機械である射出成形機11の作動状況を把握し、一部飛行ルート、飛行のタイミング、検査方法の少なくとも一つを決定または修正しつつ、前記検査機器により大型機械の検査を行うことができる。
【0029】
また本実施形態ではコントローラ70と射出成形機11の制御装置26は、システム全体を統括する制御装置であるホストコンピュータ90の制御装置91の送受信部92に接続されている。ホストコンピュータ90の送受信部92は判断部93と記憶部94と、表示装置を兼ねた設定表示装置96と音声処理部95に接続されている。記憶部94はホストコンピュータ90に接続されたサーバーであってもよい。従って無人航空機40に取り付けたカメラ48の画像はホストコンピュータ90の側でも見ることができる。またホストコンピュータ90の音声処理部95は、マイクとスピーカーを備えており、コントローラ70の側の検査者とホストコンピュータ90の側の作業者が通話することができる。なお本発明の検査システムにおいてはコントローラ70の側の機能を充実させれば、ホストコンピュータ90を無くすか、単なる記憶装置としてサーバー機能のみとすることもできる。
【0030】
またホストコンピュータ90は、射出成形機11の制御装置26とも接続されている。ホストコンピュータ90が設けられる場所は、同じ工場の建物内であってもよいが、同じ会社の別の建物であってもよい。更には射出成形機メーカー、無人航空機の製造メーカー、無人航空機の運航管理会社、クラウド管理会社の少なくとも一箇所にホストコンピュータ90を置いてもよい。また飛行制御や検査制御の制御機能は全てホストコンピュータ90の側に設け、コントローラ70には最小限の機能のみを設けてもよいし、逆にコントローラ70、またはコントローラ70と大型機械の制御装置26に全ての機能を設けて、ホストコンピュータ90を設けないようにしてもよい。また無人航空機40の制御装置42、無人航空機40機のコントローラ70、射出成形機11の制御装置26、ホストコンピュータ90の制御装置91の少なくとも一つには、機械学習の可能なAI(人工知能)を備えたものでもよい。
【0031】
次に大型機械の検査システムを用いた大型機械の検査方法について
図1ないし
図3を参照して説明する。本発明の特徴の一つは、大型機械の作動中でも検査が可能な点である。一般的に検査者自身が検査を行う場合、作動中の機械への接近は問題がある場合が多く殆どの箇所の検査はできない。ましてや特に作動中に大型機械の高所部分での検査はできない。そのため大型機械が操業していない日や時間に検査作業する必要があり、時間外労働などが発生する場合がある。また一例として騒音測定、振動測定、温度測定のように、大型機械の作動中でないと測定できないものもあり、作動中に検査が行えることは大きなメリットがある。
【0032】
更に本発明の特徴の一つは、作業者が全工程において手動により無人航空機40を飛ばして検査を行うものではなく、無人航空機40は少なくとも最初の飛行部分を含む部分では予め定めた飛行ルートRに沿って飛行し、予め設定された検査位置で検査機器により大型機械の検査を行うことである。そのことにより、検査者が無人航空機40の飛行に習熟していない者であっても、無人航空機40を射出成形機11等の大型機械に衝突させることなく飛行および検査を行うことができる。また前回の検査位置を保存しておくことにより、前回とほぼ同じ位置で無人航空機40が検査を行うことができ、過去データとの比較を含めた正確な検査が可能となる。
【0033】
ただしコントローラ70には手動飛行制御部76が備えられており、検査者による手動の無人航空機40の操作も並行して実行可能となっている。一例として検査時に射出成形機11に油漏れなどの異常が視認された際には、手動操作により無人航空機40を異常が視認された部分により一層近づけて、状態を更に確認するなどしてもよい。ただし手動飛行制御を解除した場合は、無人航空機40は予め定めた飛行ルートRに自動的に復帰することが望ましい。
【0034】
無人航空機40の飛行ルートRの作成に際しては、建物の天井の高さ、クレーンや周辺機器も含めた機器の形状と配置位置、大型機械の形状などデータが三次元座標データとして予めホストコンピュータ90等の判断部93等に取り込まれて、飛行ルートRの作成に利用される。なお大型機械は建物内にあるものに限定されないし、建物内にあっても、明らかに大型機械の周囲に大空間が存在する場合は、飛行ルートRの作成に関して、大型機械の三次元座標データのみを用いてもよい。なお本発明は、工場内の大型機械の検査を主目的としているので、GPSを用いた無人航空機40の制御は通常は想定していない。ただしGPSを用いた無人航空機40の位置制御を併用するものを除外するものではない。
【0035】
大型機械の検査システムは、通常はそれぞれの大型機械に固有の製造番号等に対応して検査用の飛行ルートRを保有する。しかし同型の大型機械であれば同一の飛行ルートRを使用または一部変更して利用することもできる。飛行ルートの起点地点は、大型機械自体、または大型機械の近傍に設けられた無人航空機40の発着台30である。通常の場合、無人航空機40は検査者が持参し、まず発着台30に無人航空機40を載置する。本実施形態の三次元座標データ(空間座標)による飛行ルートRは、発着台30が起点(原点)となり、発着台30からの座標の位置関係(距離)により決定される。しかし非行制御のための原点位置は発着台30以外の別の部分でもよい。
【0036】
次に検査者はコントローラ70の飛行操作装置82を操作し、無人航空機40のモータ49等を作動させ、無人航空機40を発着台30から離陸させ予め定めた飛行ルートRに沿って飛行させる。そして無人航空機40は前記飛行ルートR上に予め設定された検査ポイントP1に到着すると、ホバーリングすることにより同じ位置に停止する。検査機器がCCDカメラである場合、例えば検査ポイントP1では水平方向または水平方向よりもやや下方に向けられたカメラ48により、可動盤16上面の状態やラム19の傷や油漏れの状況、型開閉シリンダ17の傷や油漏れの状況などを確認する。この際にCCDカメラにより撮影されたカメラ画像は、検査者が異常の有無の確認をしてもよいし、機械的に異常の確認をしてもよい。画像は動画でも静止画像でもよい。機械的な確認とは、CCDカメラの画像のコントラストや色を数値化して閾値を超えたかどうかにより判断してもよいし、CCDカメラの画像の色などを、正常な状態の色などと、異常な状態の色などを、それぞれ機械学習装置に機械学習(教師あり学習)させて、異常を判断するようにしてもよい。
【0037】
また検査ポイントP1において無人航空機40を停止させる時間(飛行のタイミング)およびカメラ48を用いて検査する際のタイミングは、予め決定したタイミングで行ってもよいが、本実施形態では射出成形機11の型締装置12の作動状態により決定または修正される。具体的には無人航空機40の飛行制御部43と検査制御部44はコントローラ70を介して射出成形機11の制御装置26と通信接続されている。そして型締装置12の可動盤16が型開状態から型閉状態に到るまで型閉作動の状況、または型閉状態から型開状態に到るまでの型開作動の状況は、制御装置26から無人航空機40の飛行制御部43と検査制御部44に送られる。そして前記型閉工程の間または型開工程の間の間だけ、無人航空機40は検査ポイントP1に停止し、カメラ48は型締シリンダ18のラム19や型開閉シリンダ17の状況を検査する。従って本発明の大型機械の検査システムは、予め飛行ルートRの少なくとも一部のみが定められており、検査位置や検査方法は、大型機械の状態を検出してから決定するものも含まれる。または予め検査方法(検査位置、検査時間、検査機器の制御方法など)は定められているものの、大型機械の状況に応じて、検査方法を修正するものでもよい。
【0038】
そしてカメラ48が撮影した画像は、動画としてコントローラ70やホストコンピュータ90に送信され続ける。そのことにより型閉工程または型開工程が良好に行われているかどうかをコントローラ70の表示装置を兼ねた設定表示装置79や、ホストコンピュータ90の表示装置を兼ねた設定表示装置96で見ることができる。そして一例としてコントローラ70を操作する検査者が営業担当などで大型機械の異常状態の分析に詳しくない者であっても、射出成形機メーカーのホストコンピュータ90と接続することにより、大型機械の異常状態の分析に詳しい技術者の指導を仰ぎながら検査を行うこともできる。またこれら検査ポイントP1は、発着台30を含めて射出成形機11の型締装置12に対して三次元座標により設定されているから、常に型締装置12に対して同じ位置で検査が可能となる。なお検査ポイントP1における検査は、原則として上記のように無人航空機40を一時停止させるが、検査ポイントP1で1枚のみ静止画像の撮影を行う場合などは、検査ポイントP1に無人航空機40を停止させず移動させながら検査(撮影)を行ってもよい。
【0039】
しかし無人航空機40を予め定めた三次元座標により飛行させる場合に、外乱により無人航空機40が飛行ルートRを外れる場合が考えられる。外乱の種類としては、大型機械のモータ等から発生する電磁波や、熱による気流の影響などが考えられ、大型機械が屋外に設置されている場合は、風の影響が最も大きな要素として考えられる。また例え飛行ルートRが予め無人航空機40の制御装置42の記憶部に保存されていたとしても、無人航空機40の作動誤差に起因して飛行ルートRから外れることもある。
【0040】
このような予め定めた飛行ルートRから無人航空機40が外れる問題について、本発明では2つの対策が為されている。まず一番目は、大型機械である型締装置12に取り付けられたマーカー31の位置や種類を、無人航空機40に搭載されたCCDカメラ等のカメラ48により検出し、飛行ルートRの修正を行う方法である。一例として或るマーカー31の直上位置または真横位置を無人航空機40が通過するように飛行ルートRが設定されていたにも関わらず、無人航空機40が通過しなかった場合に誤差に応じて修正を行う。この際、カメラ48により撮影される全体画像内のマーカー31の位置(無人航空機40とマーカー31の角度関係)と、マーカー31の大きさ(無人航空機40とマーカー31の距離)により無人航空機40の現在の位置を計算してもよいし、複数のマーカー31の位置関係や種類から無人航空機40の現在の位置を計算してもよい。また無人航空機40に複数のカメラ48を搭載して前記マーカーとの距離や角度を検出してもよい。
【0041】
また二番目として無人航空機40は、検出機器により大型機械との距離が測定可能となっている。具体的には超音波センサ54から超音波を発信して大型機械や床面10からの反射により大型機械と無人航空機40の距離や床面10からの高さを測定する。この距離の測定は、飛行ルートRの修正にも使用可能であるが、無人航空機40の進行方向において、無人航空機40が不意に大型機械に近づきすぎた場合の衝突回避用に主として用いられる。従って超音波センサ54は超音波を発信する方向を変更可能に取り付けるか複数の超音波センサ54を進行方向、上下方向に向けて取り付けることも想定される。即ち大型機械と無人航空機40の距離が一定の閾値以下となると無人航空機40は、そのまま同じ進行方向への継続移動を停止するようにプログラミングされている。また同様の無人航空機40の保護機能として、検出機器に温度センサ、ガス濃度センサ、気流測定用の加速度計、電磁波測定センサ、大型機械の状態変化把握用のカメラの少なくとも一つを搭載し、予め定めた条件よりも過酷な条件が検出されたらそれ以上の大型機械に近づかないように制御することも考えられる。これらの検出機器の少なくとも一つを搭載することにより、無人航空機40を自律的により安全に飛行させることができる。
【0042】
そして
図1に示されるように無人航空機40は、予め定めた飛行ルートR上に設定された検査ポイントP2、P3、P4、P5,P6の順に検査を行い、最終的に発着台30の上に着陸して検査を終了する。上記したように無人航空機40の飛行ルートRは三次元座標を使用するので、一般的には、垂直移動(昇降)と水平移動の組み合わせにより無人航空機40の移動制御を行う。ただし大型機械のよほど特殊な部分の検査を行う際は、斜め移動を用いるものを除外しない。また無人航空機40は複数基の飛翔部51により飛行するものであるので、水平移動よりも垂直移動のほうが精度が高く移動できる。従って
図1における検査ポイントP2への移動のように、検査ポイントP2から大型機械の水平面(平面)への距離と垂直面(側面)への距離があまり違わない場合などでは、垂直移動により検査ポイントP2へ到達させることのほうが望ましい。
【0043】
そして検査ポイントP3では型締シリンダ18へ作動油を送る配管の接続部分からの油漏れやバルブの状態、タイバ14の締結状態などを検査し、検査ポイントP4では検査ポイントP1とは反対側から見た型締シリンダ18のラム19や型開閉シリンダ17の状態などを検査する。また検査ポイントP5,P6では金型のキャビティ面の状態などを検査する。検査ポイントP5,P6において、カメラ48によって上側の可動金型21,21と下側の固定金型22,22の両方の検査を行う際は、後述する方法で水平方向保持具102の先端部にカメラ角度変更機構57を介して取り付けられたカメラ48を180°回転させることにより行われる。また他の大型機械の下面側の検査を行う場合も上側の可動金型21,21の検査と同様の方法により行われる。
【0044】
また検査ポイントP5,P6への無人航空機40の進入に際しては、無人航空機40の制御装置42と射出成形機11の制御装置26は通信を行い、安全扉23,24が開放された状態にあることと、可動盤16が上昇していて、固定金型22に対して可動金型21,21が型開された状態にあることを確認する必要がある。従って無人航空機40により検査を行う際、飛行ルートRは予め定められていても、大型機械の状態(安全扉23,24の開閉移動や可動金型21,21の開閉移動など)が検査可能な状況となるまで、無人航空機40を一時ホバーリングさせて、飛行のタイミングを修正することが行われる。または無人航空機40が検査ポイントに到達していても、大型機械の作動状態が検査に最適な状態になるのを待ってからカメラ撮影などの検査を行う(検査のタイミングを修正する)ことも行われる。
【0045】
また可動金型21,21および固定金型22,22のキャビティ面などは損傷を防止するために、無人航空機40の金属部分の衝突を絶対に避けたい部分である。本実施形態の無人航空機40は、金属製の飛翔部51のロータ50や検査機器の周囲は、樹脂やゴム、または一部は緩衝材のスポンジや空気袋が取り付けられたガード部58により覆われているので、万一、無人航空機40が予め定めた飛行ルートRを外れたりして、無人航空機40と可動金型21,21,または固定金型22,22等が接触しても大きな影響を与えることは無い。また無人航空機40が大型機械との接触や他の理由で正規の発着台30の着陸位置以外に落下し再飛行できなくなった場合は、警報音等のアラームを発するとともに、落下した無人航空機40を回収するために射出成形機11等の大型機械の作動を一時停止することが望ましい。
【0046】
そして無人航空機40は、予め定められた飛行ルートRに沿って、検査ポイントP1,P2,P3,P4,P5,P6において一時停止するなどして検査を行った後は、発着台30に着陸して検査を終了する。カメラ等、検査機器の検査データは、無人航空機40の飛行中にリアルタイムにコントローラ70やホストコンピュータ90に送られることは説明した通りであるが、一部の検査データだけはリアルタイム送信するものや、全ての検査データは無人航空機40の着陸後にデータ回収するものでもよい。いずれにしても検査データは、ホストコンピュータ90の記憶部94であるサーバー等の記憶装置に記憶され、次回に同じ検査を行った際の検査データとの比較や状態の変化の把握に用いられる。
【0047】
また無人航空機40のチャック装置56には、カメラ以外の検査機器も搭載できるので、最初はカメラ48による検査を行い、次にカメラ48以外の検査機器(一例として、騒音センサ62、温度センサ63、振動センサ、超音波センサのいずれか)に交換して検査を行うことも可能である。また無人航空機40に複数の検査機器を搭載して1度の飛行時に複数の検査を行うことも可能である。その場合一般的にはカメラ48と他の検査機器の組み合わせが用いられることが多い。
【0048】
次に無人航空機40にカメラ48以外の検査機器である騒音センサ62を取り付けて検査を行うケース(応用形)について
図4を参照して説明する。射出成形機11等の大型機械では、装置作動中の騒音の大きさを測定して、ベルトの撓みや劣化等の状態、ポンプの状態、油圧機器のバルブの状態などを検査し、故障予知や部品交換の時期を検討することがある。大型機械の騒音の大きさは、同じ大型機械の前回測定値との比較や、同型の別の大型機械の状態との比較となる。従って無人航空機40の飛翔時のロータ50の回転による騒音が騒音センサ62のマイクに拾われても騒音測定ができない訳ではない。しかし無人航空機40のロータ50から騒音計をなるべく離隔した位置に設けたほうがより一層、精密な測定ができる場合が多い。
【0049】
従って本実施形態では、無人航空機40の本体部から下方に向けて設けた垂下方向保持具101の先端部または先端部近傍に騒音センサを取り付けて騒音測定を行う。または前記垂下方向保持具101の先端部または先端部近傍に設けた水平方向保持具102の先端部または先端部近傍に騒音センサを取り付けて騒音測定を行う。更には本体部41に直接設けた水平方向保持具の先端に騒音センサ62を取り付けてもよい。
【0050】
より具体的には、本体部41の中央には貫通孔103が設けられ、騒音センサ62等の検査機器を吊り下げて保持するための垂下方向保持具101が前記貫通孔103に対して上下に摺動可能に設けられている。本実施形態で垂下方向保持具101は0.5mないし3.0mの金属製または樹脂製のパイプからなり、パイプの上部には垂下方向保持具101が本体部41から脱落しないようにストッパ104が設けられている。なお垂下方向保持具101については、前記パイプを用いたもの以外にもワイヤを用いたものでもよい。ワイヤを用いた場合は1mないし5mの長さのワイヤを用いたものが望ましい。大型機械の被検査部分部が高温状態など過酷な条件である場合は、垂下方向保持具101の長さを長くする必要があり、パイプまたはワイヤの長さを2m以上とすることが望ましい。
【0051】
また本実施形態では垂下方向保持具101の先端には、前記垂下方向保持具101に対して直角方向に固定された水平方向保持具102が設けられている。そして水平方向保持具102の一端に、騒音センサ62が着脱自在に取り付けられている。また無人航空機40の鉛直方向の重心線を挟んで、水平方向保持具102の他方側の先端部または先端部近傍には錘部105が取り付けられている。なお水平方向保持具102の前記他方側にもカメラなどの検査機器を着脱可能に設けたものでもよい。または水平方向保持具102は1本には限定されず、平面視した状態で垂下方向保持具101を中心にして、十字方向に2本の水平方向保持具102を設け、それらの水平方向保持具102の先端部や先端部近傍にカメラ48等の検査機器または錘部105を設けてもよい。上記において無人航空機40は、複数の飛翔部51を用いてほぼ常時、本体部41が水平状態で飛行するので、垂下方向保持具101、水平方向保持具102という部材名称を用いているが、飛行中の無人航空機40は本体部41が水平状態を保持できない場合もある。従って垂下方向保持具101は概ね垂下状態にありさえすればよく、水平方向保持具102は概ね水平状態にありさえすればよい。
【0052】
また垂下方向保持具101の先端に直接取り付けられた騒音センサ62等の検査機器や、垂下方向保持具101の先端に水平方向保持具102を介して取り付けられた検査機器は、本体部41等と同様にガード部106により周囲が囲まれていることも望ましい。更にガード部106の上部、または無人航空機40と検査機器の間の垂下方向保持具101の中間位置には必要に応じて遮蔽部材107が取り付けられる。遮蔽部材107はフレーム部に遮蔽シートが貼りつけられたものか平板状の遮蔽板からなる。遮蔽部材107は、無人航空機40の飛翔部51の影響を検査機器に及びにくくし、大型機械の被検査部の影響を無人航空機40の制御装置42などに及びにくくするためのものである。検査機器が騒音センサ62の場合、遮蔽部材107は遮音効果に優れた遮音板が取り付けられる。そして無人航空機40を飛行制御して、騒音センサ62を大型機械の騒音を測定したい機構部の近傍に近づけて騒音測定を行う。測定されたデータはカメラ画像のデータと同様にコントローラ70やホストコンピュータ90に送られる。
【0053】
次に無人航空機40に温度センサ63を取り付けて大型機械の温度測定をするケースについて説明する。このケースも無人航空機40のモータ49は回転駆動時に発熱作用があるので、モータ49等と温度センサ63を離隔させることが望ましく、前記した垂下方向保持具101や水平方向保持具102の先端部や先端近傍に温度センサを取り付けて大型機械の温度を測定したい部分の測定を行う。温度センサ63により温度測定を行う際は、上方位置または垂下方向保持具101の中間位置に遮蔽部材107を設ける場合は、遮熱効果の高いものが望ましい。
温度センサ63の種類については、非接触式のものが望ましく、その場合は温度センサ63と測定部位を当接させないでも温度測定ができるが、接触式の温度センサ63を用いて温度センサ63と測定部位が当接するように無人航空機40を制御して温度測定をしてもよい。射出成形機の場合は、油圧配管やバルブ、サーボモータ、減速機などで前記機器に温度センサ63が固定的に取り付けられていない部分の温度を測定することができる。
【0054】
また大型機械が金属を溶融させるダイカスト機(金属射出成形機)や溶鉱炉等を含む溶融装置の場合、溶融金属貯蔵槽や加熱シリンダ等に無人航空機40が近づきすぎると放出熱の影響で、無人航空機40の制御装置42等に悪影響を及ぼす場合がある。そのような場合も上記したような垂下方向保持具101や水平方向保持具102の先端部または先端部近傍に温度センサ63を取り付けることにより、無人航空機40の寿命を延ばすことができる。また溶融炉などの溶融装置の場合、炉の開閉状況によって周辺部の温度が異なり、無人航空機40が近づける範囲が異なることもある。従って本発明における「予め定めた飛行ルートR」とは、飛行ルート全体のうちの少なくとも一部が予め定められていればよく、途中からは大型機械の状況に応じて無人航空機40が自律的な制御、または検査者の手動制御により、一部の飛行ルートまたは飛行のタイミング(停止や速度など時間的要素を含む)を修正するものも含まれる。或いは予め定められた飛行ルートR以外の残りの一部の飛行ルートまたは飛行のタイミングは、最初から設定されておらず、大型機械の状況に応じて決定するものでもよい。
【0055】
また温度以外にも検査ポイントが過酷な状況にある場合に無人航空機40の本体部41や制御装置42と、検査機器を離隔させることが望ましく、前記した垂下方向保持具101のパイプやワイヤ、水平方向保持具102のパイプなどが用いられる。前記の構成により大型機械が作動中で検査したい部分が危険な状態であったり、大型機械の検査したい部分の周辺が過酷な状況にあったりして、作業者による検査ができなかった場合も、無人航空機40を使用して検査を行うことが可能となる。
【0056】
大型機械が真空チャンバを備えた多段ホットプレス機の場合、真空チャンバの扉が開放されていることと多段の熱板が型開きされて熱板間に空間があることを前記多段ホットプレス機からの通信により無人航空機40が把握して検査を開始する。或いは無人航空機40の検出機器のカメラ48が撮影した画像を人工知能などを用いて分析し、扉が開放されていることや熱板間に空間があることと判断して無人航空機40の飛行のタイミングを決定して移動させ、検査ポイントに到達すると検査を開始する。前記検査の際には水平方向保持具102の先端部または先端部近傍に取り付けられたカメラ48や温度センサ63などを用いて開放された真空チャンバ内の熱板の状態などを検査する。
【0057】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや上記の各実施形態の一部部分を個別に組み合わせたものについても適用されることは言うまでもないことである。無人航空機40が一度に検査する大型機械の数は1台に限定されず、1回の検査で複数台の大型機械の検査を行うものでもよい。または1台の大型機械の各作動部の同期を検査するなどの目的で、同時に2機以上の無人航空機40を用いて検査を行うものでもよい。
【0058】
更には上記のような検査により大型機械の高所に異常が発見され、作業者が部品交換などを行う際には、無人航空機40のチャック装置56の検査機器を外して、交換部品や作業用の工具などを搭載し、無人航空機40が大型機械の高所の作業位置まで運搬するようにしてもよい。その場合の無人航空機40の飛行ルートは三次元座標を用いることが望ましいが、一部または全部の無人航空機40の操作を作業者の手動で行ってもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 射出成形機
12 型締装置
26,42,71,91 制御装置
40 無人航空機
48 カメラ(検査機器)
51 飛翔部
54 超音波センサ(検出機器)
P1,P2,P3,P4,P5,P6 検査ポイント
R 飛行ルート