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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109088
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20230731BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20230731BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20230731BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20230731BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20230731BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20230731BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20230731BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20230731BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20230731BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230731BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20230731BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
B60W10/02 900
B60K6/52 ZHV
B60K6/442
B60K6/547
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W20/20
B60W20/15
B60W50/04
B60L15/20 K
B60L15/20 S
B60L50/16
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010484
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519314766
【氏名又は名称】株式会社BluE Nexus
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸将
(72)【発明者】
【氏名】力石 貴文
【テーマコード(参考)】
3D202
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB37
3D202BB53
3D202BB65
3D202CC24
3D202DD16
3D202DD18
3D202DD24
3D202DD26
3D202DD32
3D202DD33
3D202DD38
3D202FF02
3D202FF06
3D202FF12
3D202FF13
3D241AA66
3D241AD18
3D241BA50
3D241CA08
3D241CC03
3D241CC13
3D241CC15
3D241DA03Z
3D241DA27Z
3D241DA28Z
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA05
5H125BD17
5H125BE05
5H125CA02
5H125CA08
5H125EE08
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】エンジンおよび第1電動機と第1車輪との間に介挿された係合装置を解放し、第2電動機の動力で第2車輪を駆動させて走行する走行モードで走行中に、係合装置が解放されているかを精度良く判定できるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】係合装置CBを解放した状態で、リヤ電動機RrMGの動力で車両10を走行させるシリーズ走行モードで走行中に、係合装置CBが解放されているかを判定するに当たって、AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとの間の回転速度差ΔNiと、フロント電動機FrMGの回転状態と、に基づいて判定されるため、AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとが偶然一致した場合であっても、フロント電動機FrMGの回転状態から係合装置CBが解放されているかを正確に判定することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよび第1電動機の動力を伝達可能に構成された第1車輪と、第2電動機の動力を伝達可能に構成された第2車輪と、前記エンジンおよび第1電動機と前記第1車輪との間の動力伝達経路に介挿されて前記動力伝達経路における動力伝達を断接する係合装置と、を備え、前記係合装置を解放し、前記第2電動機の動力で車両を走行させる走行モードを実行可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
前記走行モードで走行中において、前記係合装置が解放されているか否かを、前記係合装置によって断接される入力回転部材および出力回転部材間の回転速度差と、前記エンジンの回転状態または前記第1電動機の回転状態と、に基づいて判定する制御部を、備える
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記動力伝達経路には、変速機が設けられており、
前記係合装置は、前記変速機に備えられている変速用係合装置であり、
前記係合装置の前記回転速度差が、前記変速機の入力軸の回転速度と、前記変速機の出力軸の回転速度および前記変速機の変速比から算出される前記入力軸の推定回転速度と、の回転速度差に基づいて推定される
ことを特徴とする請求項1のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記走行モードで走行中は、前記エンジンの動力を用いて前記第1電動機を回転させることによる発電制御を行い、前記第1電動機によって発電された電力を前記第2電動機に供給して走行する、シリーズ走行が実行される
ことを特徴とする請求項1または2のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記回転速度差が予め設定されている第1所定値以下の状態が予め設定されている第1所定時間以上継続し、且つ、前記エンジンまたは前記第1電動機の回転速度と前記エンジンまたは前記第1電動機の目標回転速度との乖離量が予め設定されている第2所定値以上の状態が予め設定されている第2所定時間以上継続した場合、前記係合装置が係合しているものと判定する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよび第1電動機の動力を伝達可能に構成された第1車輪と、第2電動機の動力を伝達可能に構成された第2車輪と、を備えるハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよび第1電動機の動力を伝達可能に構成された第1車輪と、第2電動機の動力を伝達可能に構成された第2車輪と、エンジンおよび第1電動機と第1車輪との間の動力伝達経路に介挿された係合装置と、を備え、前記係合装置を解放してエンジンおよび第1電動機と第1車輪との間の動力伝達経路を遮断し、第2電動機の動力によって第2車輪を駆動させて車両を走行させる走行モードを実行可能なハイブリッド車両が知られている。例えば、特許文献1に記載のハイブリッド車両がそれである。特許文献2には、第2電動機の動力によって第2車輪を駆動させる走行モードで走行中において、エンジンの動力によって第1電動機を回転させる発電制御を行い、発電された電力を第2電動機に供給するシリーズ走行を実行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-98663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した走行モードで走行中において、例えば係合装置の機械的な故障等が発生した場合に係合装置が係合することが考えられる。このとき、第1車輪に意図しない動力が伝達されてしまう。このような係合装置の係合を検出するため、上記走行モードで走行中は、係合装置が解放されている状態であるかを常に監視する必要ある。例えば、係合装置によって断接される回転部材間の回転速度差に基づいて、係合装置が解放されている状態であるかを判断する方法が考えられる。しかしながら、係合装置によって断接される回転部材は互いに独立して回転するため、係合装置が解放された状態であっても係合装置によって断接される回転部材の回転速度が一致する可能性があり、この場合には、係合装置が係合されているものと誤判定される可能性がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンおよび第1電動機と第1車輪との間の動力伝達経路に介挿された係合装置を解放し、第2電動機の動力で第2車輪を駆動させて走行する走行モードを実行可能なハイブリッド車両の制御装置において、前記走行モードで走行中に係合装置が解放されているかを精度良く判定できるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)エンジンおよび第1電動機の動力を伝達可能に構成された第1車輪と、第2電動機の動力を伝達可能に構成された第2車輪と、前記エンジンおよび第1電動機と前記第1車輪との間の動力伝達経路に介挿されて前記動力伝達経路の動力伝達を断接する係合装置と、を備え、前記係合装置を解放し、前記第2電動機の動力で車両を走行させる走行モードを実行可能なハイブリッド車両の制御装置であって、(b)前記走行モードで走行中において、前記係合装置が解放されているか否かを、前記係合装置によって断接される入力回転部材および出力回転部材間の回転速度差と、前記エンジンの回転状態または前記第1電動機の回転状態と、に基づいて判定する制御部を、備えることを特徴とする。
【0007】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記動力伝達経路には、変速機が設けられており、前記係合装置は、前記変速機に備えられている変速用係合装置であり、前記係合装置の前記回転速度差が、前記変速機の入力軸の回転速度と、前記変速機の出力軸の回転速度および前記変速機の変速比から算出される前記入力軸の推定回転速度と、の回転速度差に基づいて推定されることを特徴とする。
【0008】
第3発明の要旨とするところは、第1発明または第2発明において、前記走行モードで走行中は、前記エンジンの動力を用いて前記第1電動機を回転させることによる発電制御を行い、前記第1電動機によって発電された電力を前記第2電動機に供給して走行する、シリーズ走行が実行されることを特徴とする。
【0009】
第4発明の要旨とするところは、第1発明から第3発明の何れか1において、前記制御部は、前記回転速度差が予め設定されている第1所定値以下の状態が予め設定されている第1所定時間以上継続し、且つ、前記エンジンまたは前記第1電動機の回転速度と前記エンジンまたは前記第1電動機の目標回転速度との乖離量が予め設定されている第2所定値以上の状態が予め設定されている第2所定時間以上継続した場合、前記係合装置が係合しているものと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、係合装置を解放した状態で、第2電動機の動力で車両を走行させる走行モードで走行中に、係合装置が解放されているかを判定するに当たって、係合装置によって断接される入力回転部材および出力回転部材間の回転速度差と、エンジンの回転状態または第1電動機の回転状態と、に基づいて判定されるため、係合装置が解放されているにも拘わらず、係合装置の入力回転部材の回転速度と出力回転部材の回転速度とが偶然一致した場合であっても、エンジンの回転状態または第1電動機の回転状態から係合装置が解放されているかが判定されることで、係合装置が解放されているかを正確に判定することができる。
【0011】
第2発明によれば、変速機に備えられる係合装置の回転速度差が、変速機の入力軸の回転速度と、変速機の出力軸の回転速度および変速機の変速比から算出される入力軸の推定回転速度と、の回転速度差に基づいて推定される。従って、係合装置の入力回転部材の回転速度および出力回転部材の回転速度を検出するセンサを追加することなく、従来から設けられているセンサによって係合装置の回転速度差を推定することができる。
【0012】
第3発明によれば、シリーズ走行が実行されると、エンジンの動力を用いて第1電動機を回転させることにより発電制御を行い、発電された電力を第2電動機に供給して車両を走行させることができる。このとき、係合装置が解放されているにも拘わらず、係合装置の入力回転部材の回転速度と出力回転部材の回転速度とが偶然一致する場合がある。このような場合であっても、係合装置が解放されているかが、エンジンまたは第1電動機の回転状態からも判断されるため、係合装置が解放されているかを正確に判定することができる。
【0013】
第4発明によれば、前記回転速度差が第1所定値以下の状態が第1所定時間以上継続し、且つ、エンジンまたは第1電動機の回転速度とエンジンまたは第1電動機の目標回転速度との乖離量が第2所定値以上の状態が第2所定時間以上継続したか否かに基づいて、係合装置の係合状態を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用されたハイブリッド車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を説明する図である。
図2図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートである。
図3図1の電子制御装置による制御結果の一態様を示すタイムチャートである。
図4】本発明の他の実施例に対応するハイブリッド車両の概略構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0016】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両10(以下、車両10)の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、前輪14の駆動力源であるエンジン12およびフロント電動機FrMGと、後輪16の駆動力源であるリヤ電動機RrMGと、を備えた四輪駆動形式のハイブリッド車両である。車両10は、エンジン12と前輪14との間の動力伝達経路に設けられたフロントユニット18と、後輪16を駆動させるためのリヤユニット20と、を備えている。
【0017】
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置100によって、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置22が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
【0018】
フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGは、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能、および、機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有するモータジェネレータである。
【0019】
フロント電動機FrMGは、フロントインバータ24(FrPCU)およびシステムメインリレー26(SMR)を介して、HEVバッテリ28に接続されている。フロント電動機FrMGは、後述する電子制御装置100によってフロントインバータ24が制御されることにより、フロント電動機FrMGの出力トルクであるFrMGトルクTmFrが制御される。FrMGトルクTmFrは、例えばフロント電動機FrMGの回転方向がエンジン12の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側の正トルクは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。
【0020】
フロント電動機FrMGは、エンジン12に代えて或いはエンジン12に加えて、フロントインバータ24およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28から供給される電力により走行用の動力を発生する。また、フロント電動機FrMGは、エンジン12の動力や前輪14側から入力される被駆動力により発電を行う。フロント電動機FrMGの発電により発生させられた電力は、フロントインバータ24およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28に蓄電される。もしくは、フロント電動機FrMGの発電により発生させられた電力がリヤ電動機RrMGに供給され、リヤ電動機RrMGが駆動させられる。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギも同意である。また、前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
【0021】
リヤ電動機RrMGは、リヤインバータ30(RrPCU)およびシステムメインリレー26(SMR)を介して、HEVバッテリ28に接続されている。リヤ電動機RrMGは、後述する電子制御装置100によってリヤインバータ30が制御されることにより、リヤ電動機RrMGの出力トルクであるRrMGトルクTmRrが制御される。RrMGトルクTmRrは、例えばリヤ電動機RrMGの回転方向が前進走行時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側の正トルクは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。
【0022】
リヤ電動機RrMGは、リヤインバータ30およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28から供給される電力、または、フロント電動機FrMGによって発電された電力、により走行用の動力を発生する。また、リヤ電動機RrMGは、後輪16側から入力される被駆動力により発電を行う。リヤ電動機RrMGの発電により発生させられた電力は、リヤインバータ30およびシステムメインリレー26を介してHEVバッテリ28に蓄電される。HEVバッテリ28は、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGに対して電力を授受する蓄電装置である。
【0023】
フロントユニット18は、エンジン12およびフロント電動機FrMGの動力を前輪14に伝達可能に構成されている。フロントユニット18は、エンジン12、K0クラッチ34(K0)、入力クラッチ36(WSC)、および自動変速機38等を備えている。K0クラッチ34(K0)、入力クラッチ36(WSC)、および自動変速機38は、それぞれ車体に取り付けられる非回転部材であるケース32内に収容されている。K0クラッチ34は、エンジン12と前輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12とフロント電動機FrMGとの間に設けられたクラッチである。入力クラッチ36は、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路上におけるK0クラッチ34と自動変速機38との間に設けられたクラッチである。なお、前輪14が本発明の第1車輪に対応し、フロント電動機FrMGが本発明の第1電動機に対応している。
【0024】
自動変速機38は、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路に設けられている。また、フロントユニット18は、自動変速機38の変速機出力軸40に連結されたデファレンシャル装置42(DIFF)、および、前輪14に連結された左右一対の前輪車軸44等を備えている。また、フロントユニット18は、エンジン12とK0クラッチ34との間を連結するエンジン連結軸46、K0クラッチ34と入力クラッチ36との間を連結する電動機連結軸48を、備えている。なお、自動変速機38が、本発明の変速機に対応している。
【0025】
フロント電動機FrMGは、ケース32内において、電動機連結軸48に動力伝達可能に連結されている。フロント電動機FrMGは、エンジン12と前輪14との間の動力伝達経路、特にはK0クラッチ34と入力クラッチ36との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。従って、フロント電動機FrMGは、K0クラッチ34を介することなく、入力クラッチ36および自動変速機38に動力伝達可能に接続されている。
【0026】
自動変速機38は、例えば不図示の1組または複数組の遊星歯車装置と、複数個の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路52から供給される調圧されたCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。自動変速機38は、係合装置CBの係合状態に応じて動力伝達状態が切り替えられるため、係合装置CBは、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路に介挿され、前記動力伝達経路における動力伝達を断接する機能を有する。なお、係合装置CBが本発明の変速機に備えられている変速用係合装置に対応している。
【0027】
自動変速機38は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかの変速段が形成される有段変速機である。自動変速機38は、後述する電子制御装置100によって、ドライバ(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成される変速段が切り替えられる、すなわち複数の変速段が選択的に形成される。AT入力回転速度Niは、自動変速機38の変速機入力軸50の回転速度であり、自動変速機38の入力回転速度である。AT出力回転速度Noは、自動変速機38の変速機出力軸40の回転速度であり、自動変速機38の出力回転速度である。なお、変速機入力軸50が本発明の変速機の入力軸に対応し、AT入力回転速度Niが本発明の入力軸の回転速度に対応している。また、変速機出力軸40が本発明の変速機の出力軸に対応し、AT出力回転速度Noが本発明の出力軸の回転速度に対応している。
【0028】
K0クラッチ34は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される、湿式または乾式の摩擦係合装置である。K0クラッチ34は、後述する電子制御装置100により係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。K0クラッチ34は、油圧制御回路52から供給されるK0油圧PRk0によりK0クラッチ34のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、制御状態が切り替えられる。
【0029】
入力クラッチ36は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される、湿式または乾式の摩擦係合装置である。入力クラッチ36は、後述する電子制御装置100により係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。入力クラッチ36は、油圧制御回路52から供給されるWSC油圧PRwscにより入力クラッチ36のトルク容量であるWSCトルクTwscが変化させられることで、制御状態が切り替えられる。
【0030】
K0クラッチ34の係合状態では、エンジン連結軸46および電動機連結軸48を介して、エンジン12とフロント電動機FrMGとが動力伝達可能に接続される。すなわち、K0クラッチ34は、係合されることにより、エンジン12とフロント電動機FrMGとを動力伝達可能に接続する。一方、K0クラッチ34の解放状態では、エンジン12とフロント電動機FrMGとの間の動力伝達が遮断される。すなわち、K0クラッチ34は、解放されることにより、エンジン12とフロント電動機FrMGとの間の連結を切り離す。つまり、K0クラッチ34は、係合されることによってエンジン12とフロント電動機FrMGとを連結する一方で、解放されることによってエンジン12とフロント電動機FrMGとの間を遮断する断接クラッチである。
【0031】
入力クラッチ36の係合状態では、電動機連結軸48と変速機入力軸50とが接続される。このとき、フロント電動機FrMGが、電動機連結軸48、入力クラッチ36、変速機入力軸50、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を介して前輪14に動力伝達可能に接続される。また、K0クラッチ34および入力クラッチ36の係合状態では、フロント電動機FrMGに加えて、エンジン12が、電動機連結軸48、入力クラッチ36、変速機入力軸50、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を介して前輪14に動力伝達可能に接続される。一方で、入力クラッチ36の解放状態では、電動機連結軸48と変速機入力軸50との間が遮断される。すなわち、入力クラッチ36は、係合されることによりエンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間を接続する一方、解放されることによりエンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間を遮断する断接クラッチである。
【0032】
フロントユニット18において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ34および入力クラッチ36が係合されている場合には、エンジン連結軸46、電動機連結軸48、変速機入力軸50、自動変速機38、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を順次経由して前輪14に伝達される。また、フロント電動機FrMGから出力される動力は、入力クラッチ36が係合されている場合には、電動機連結軸48、変速機入力軸50、自動変速機38、変速機出力軸40、デファレンシャル装置42、および前輪車軸44を順次経由して前輪14に伝達される。
【0033】
一方、入力クラッチ36が解放されている場合、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路が遮断され、エンジン12およびフロント電動機FrMGの動力が前輪14に伝達されなくなる。また、K0クラッチ34が解放される一方で、入力クラッチ36が係合されている場合、フロント電動機FrMGの動力が自動変速機38等を介して前輪14に伝達される一方で、エンジン12の動力が前輪14に伝達されなくなる。また、K0クラッチ34が係合される一方で、入力クラッチ36が解放されている場合、エンジン12およびフロント電動機FrMGの動力が前輪14に伝達されないものの、エンジン12とフロント電動機FrMGとが動力伝達可能に連結される。このとき、エンジン12の動力によってフロント電動機FrMGで発電することができる。
【0034】
リヤユニット20は、リヤ電動機RrMGの動力を後輪16に伝達可能に構成されている。リヤユニット20は、後述する電子制御装置100によって制御されるリヤインバータ30、リヤ電動機RrMG、および左右の後輪16に連結されている左右一対の後輪車軸54等を備えている。リヤ電動機RrMGは、直接または図示しない減速機等を介して左右一対の後輪車軸54に連結されている。従って、リヤ電動機RrMGは、後輪車軸54等を介して後輪16に動力伝達可能に接続されることで、リヤ電動機RrMGから出力される動力が、後輪車軸54等を介して後輪16に伝達される。なお、後輪16が本発明の第2車輪に対応し、リヤ電動機RrMGが本発明の第2電動機に対応している。
【0035】
車両10は、機械式オイルポンプ58(MOP)および電動オイルポンプ60(EOP)を備えている。機械式オイルポンプ58は、例えば電動機連結軸48に歯車、ベルト、またはチェーン等を介して動力伝達可能に接続されており、エンジン12およびフロント電動機FrMGの少なくとも一方により駆動させられてフロントユニット18にて用いられる作動油を吐出する。電動オイルポンプ60は、図示しないポンプ用モータにより回転駆動させられて作動油を吐出する。機械式オイルポンプ58および電動オイルポンプ60が吐出した作動油は、油圧制御回路52に供給される。油圧制御回路52は、機械式オイルポンプ58および電動オイルポンプ60が吐出した作動油を元にして、各々調圧したCB油圧PRcb、K0油圧PRk0、WSC油圧PRwscなどを供給する。
【0036】
車両10は、さらに、走行制御などに関連する車両10の制御装置を含む電子制御装置100(制御装置)を備えている。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、油圧制御用等の各ECUを含んで構成される。
【0037】
電子制御装置100には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、入力回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、FrMG回転速度センサ76、RrMG回転速度センサ78、アクセル開度センサ80、スロットル弁開度センサ82、ブレーキスイッチ84、バッテリセンサ86、油温センサ88など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、自動変速機38の変速機入力軸50の回転速度であるAT入力回転速度Ni、自動変速機38の変速機出力軸40の回転速度であり、車速Vに対応するAT出力回転速度No、フロント電動機FrMGの回転速度であるFrMG回転速度NmFr、リヤ電動機RrMGの回転速度であるRrMG回転速度NmRr、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、HEVバッテリ28のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、油圧制御回路52内の作動油の温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。
【0038】
電子制御装置100からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置22、フロントインバータ24、リヤインバータ30、油圧制御回路52、システムメインリレー26など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、フロント電動機FrMGを制御する為のFrMG制御指令信号SmFr、リヤ電動機RrMGを制御する為のRrMG制御指令信号SmRr、係合装置CBを制御する為のCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ34を制御する為のK0油圧制御指令信号Sk0、入力クラッチ36を制御する為のWSC油圧制御指令信号Swsc、システムメインリレー26の断接状態を切り替える為のリレー切替指令信号Ssmrなど)が、それぞれ出力される。システムメインリレー26は、例えば車両10の電源スイッチがオン状態に切り替えられるとリレー切替指令信号Ssmrによって接続状態に切り替えられ、HEVバッテリ28からの電力供給が可能になる。
【0039】
電子制御装置100は、車両10における各種走行制御を実現する為に、ハイブリッド制御手段として機能するハイブリッド制御部102、クラッチ制御手段として機能するクラッチ制御部104、変速制御手段として機能する変速制御部106、クラッチ遮断判定手段として機能するクラッチ解放判定部108を、備えている。なお、クラッチ解放判定部108が、本発明の制御部に対応している。
【0040】
ハイブリッド制御部102は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段として機能するエンジン制御部102aと、フロントインバータ24を介してフロント電動機FrMGの作動を制御するFr電動機制御手段として機能するFr電動機制御部102bと、リヤインバータ30を介してリヤ電動機RrMGの作動を制御するRr電動機制御手段として機能するRr電動機制御部102cと、を機能的に含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12、フロント電動機FrMG、およびリヤ電動機RrMGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
【0041】
ハイブリッド制御部102は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θaccおよび車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である。前記駆動要求量は、例えば前輪14および後輪16における要求駆動トルクTrdemである。要求駆動トルクTrdem[Nm]は、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。前記駆動要求量としては、要求駆動力Frdem[N]、自動変速機38の変速機出力軸40における要求AT出力トルク等を用いることもできる。前記駆動要求量の算出において、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良い。
【0042】
ハイブリッド制御部102は、伝達損失、補機負荷、自動変速機38の変速比γat、HEVバッテリ28の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Seと、フロント電動機FrMGを制御する為のFrMG制御指令信号SmFrと、リヤ電動機RrMGを制御する為のRrMG制御指令信号SmRrと、を出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。FrMG制御指令信号SmFrは、例えばそのときのFrMG回転速度NmFrにおけるFrMGトルクTmFrを出力するフロント電動機FrMGの消費電力WmFrの指令値である。また、RrMG制御指令信号SmRrは、例えばそのときのRrMG回転速度NmRrにおけるRrMGトルクTmRrを出力するリヤ電動機RrMGの消費電力WmRrの指令値である。
【0043】
HEVバッテリ28の充電可能電力Winは、HEVバッテリ28の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、HEVバッテリ28の入力制限を示している。HEVバッテリ28の放電可能電力Woutは、HEVバッテリ28の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、HEVバッテリ28の出力制限を示している。HEVバッテリ28の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbatおよびHEVバッテリ28の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置100により算出される。HEVバッテリ28の充電状態値SOCは、HEVバッテリ28の充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibatおよびバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置100により算出される。
【0044】
ハイブリッド制御部102は、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGの少なくとも一方の出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、走行モードをモータ走行(=BEV走行)モードとする。ハイブリッド制御部102は、BEV走行モードでは、K0クラッチ34の解放状態および入力クラッチ36の係合状態で、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGの少なくとも一方を駆動力源として走行するBEV(Battery Electric Vehicle)走行を行う。
【0045】
一方で、ハイブリッド制御部102は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、走行モードをエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行(=HEV走行)モードとする。ハイブリッド制御部102は、HEV走行モードでは、K0クラッチ34および入力クラッチ36の係合状態で、少なくともエンジン12を駆動力源として走行するエンジン走行すなわちHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行を行う。また、ハイブリッド制御部102は、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGの少なくとも一方の出力で要求駆動トルクTrdemを賄える場合であっても、HEVバッテリ28の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12の暖機が必要な場合などには、HEV走行モードを成立させる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してHEVバッテリ28を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。このように、ハイブリッド制御部102は、要求駆動トルクTrdemや要求駆動パワーPrdem等に基づいて、HEV走行中にエンジン12を自動停止したり、そのエンジン停止後にエンジン12を再始動したり、BEV走行中にエンジン12を始動したりして、BEV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。
【0046】
また、ハイブリッド制御部102は、車両10の走行状態に応じて、前輪14および後輪16の駆動力を分配し、適切な走行性能が得られるように制御する。ハイブリッド制御部102は、例えば車両発進時、加速時、滑りやすい低μ路の走行時などにおいては、前輪14の駆動に加えて後輪16を駆動させて車両10を走行させる、四輪駆動走行を実行する。このとき、ハイブリッド制御部102は、車両10の走行状態に基づいて適切な前後輪の駆動力配分比を算出し、前後輪の駆動力配分が算出された駆動力配分比となるように、エンジン12、フロント電動機FrMG、およびリヤ電動機RrMGの出力を制御する。例えば、HEV走行モードで走行中において、エンジン12の動力を駆動力として前輪14に伝達するとともに、エンジン12の動力の一部をフロント電動機FrMGに伝達することで、フロント電動機FrMGによる発電が可能になる。さらに、フロント電動機FrMGで発電された発電電力WgFrがリヤ電動機RrMGに供給されることで、リヤ電動機RrMGが駆動されて車両10が走行させられる。
【0047】
また、ハイブリッド制御部102は、低車速領域や低負荷領域において、K0クラッチ34が係合される一方で、自動変速機38における動力伝達が遮断された状態、すなわち係合装置CBが解放された状態で、エンジン12の動力を用いてフロント電動機FrMGを回転させることによる発電制御を行い、フロント電動機FrMGによって発電された発電電力WgFrをリヤ電動機RrMGに供給してリヤ電動機RrMGを駆動させて走行する、シリーズ走行を実行することができる。このとき、自動変速機38の動力伝達が遮断されているため、前輪14にはエンジン12およびフロント電動機FrMGの動力が伝達されない。上述したような、エンジン12の動力が専らフロント電動機FrMGの発電に使用され、発電された発電電力WgFrがリヤ電動機RrMGに供給されてリヤ電動機RrMGの動力で車両10が走行させられる走行態様をシリーズ走行モードと称する。シリーズ走行モードは、例えば車両10に何らかの異常が検出された場合の退避走行時などにおいても実行される。
【0048】
ハイブリッド制御部102は、シリーズ走行中において、HEVバッテリ28の充電状態値SOC等から要求発電電力WgFr*を決定し、決定された要求発電電力WgFr*に基づいて、エンジン12の目標エンジン回転速度Ne*および目標エンジントルクTe*、フロント電動機FrMGの目標FrMG回転速度NmFr*および目標FrMGトルクTmFr*(回生トルク)を決定する。ハイブリッド制御部102は、決定された目標エンジン回転速度Ne*および目標エンジントルクTe*でエンジン12が作動させられるようにエンジン12の出力を制御するとともに、決定された目標FrMG回転速度NmFr*および目標FrMGトルクTmFr*でフロント電動機FrMGが作動させられるようにフロント電動機FrMGの出力を制御する。例えば、Fr電動機制御部102bは、フロント電動機FrMGの目標FrMG回転速度NmFr*と実際のFrMG回転速度NmFrとの差分(=NmFr*-NmFr)を偏差とするフィードバック制御(F/B制御)を実行する。前記F/B制御が実行されることで、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrが、目標FrMG回転速度NmFr*に追従する。なお、FrMG回転速度NmFrが本発明の第1電動機の回転速度に対応し、目標FrMG回転速度NmFr*が本発明の第1電動機の目標回転速度に対応している。
【0049】
クラッチ制御部104は、少なくともエンジン12を駆動力源として走行するHEV走行中には、K0クラッチ34および入力クラッチ36を係合させることで、エンジン12の動力を前輪14に動力伝達可能な状態に切り替える。また、クラッチ制御部104は、モータ走行時には、K0クラッチ34を解放する一方で入力クラッチ36を係合させることで、フロント電動機FrMGおよびリヤ電動機RrMGによる走行を可能な状態に切り替える。また、クラッチ制御部104は、減速走行時には、フロント電動機FrMGによる回生が可能になるように、入力クラッチ36を係合させてフロント電動機FrMGと前輪14との間を動力伝達可能な状態に切り替える。また、クラッチ制御部104は、シリーズ走行モードで走行時には、K0クラッチ34および入力クラッチ36を係合させる。本実施例では、シリーズ走行モードで走行中は、自動変速機38がニュートラル状態に制御されることで、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路が遮断されるように構成されている。
【0050】
変速制御部106は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機38の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機38の変速制御を実行する為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路52へ出力する。前記変速マップは、例えば車速Vおよび要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機38の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。前記変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、また、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。
【0051】
ところで、車両10では、走行中に所定の異常が検出されると、退避走行としてシリーズ走行に切り替えられる。このとき自動変速機38の係合装置CBが解放されることで自動変速機38がニュートラル状態に切り替えられるが、係合装置CBの係合状態を制御するソレノイドバルブの固着などが発生した場合には、係合装置CBを制御的に解放することができない。このとき、シリーズ走行時に発電用の動力を出力しているエンジン12のエンジントルクTeの一部が、自動変速機38を経由して前輪14側に伝達されてしまう虞がある。
【0052】
上述したような走行状態を回避するため、クラッチ解放判定部108は、シリーズ走行が開始されると、自動変速機38がニュートラル状態(動力伝達遮断状態)であるか否か、言い換えれば、自動変速機38に備えられている係合装置CBが解放されているか否か、を常時判定する。
【0053】
クラッチ解放判定部108は、シリーズ走行が開始されると、自動変速機38のAT入力回転速度Niと、自動変速機38のAT出力回転速度Noおよび自動変速機38の変速比γatに基づいて算出されるAT入力回転速度Niの推定値(以下、推定AT入力回転速度Niest)と、の回転速度差ΔNi(=|Ni-Niest|)を算出し、回転速度差ΔNiが予め設定されている第1所定値α1以下であるかを判定する。第1所定値α1は、実験的または設計的に求められ、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestと一致または略一致していると判断できる閾値に設定されている。なお、推定AT入力回転速度Niestが、本発明の入力軸の推定回転速度に対応している。
【0054】
ここで、自動変速機38の変速比γatは、自動変速機38の変速段に応じて変化し、係合装置CBの係合状態によって何れの変速段にも変速される可能性がある。従って、推定AT入力回転速度Niestは、各変速段の変速比γat毎に算出され、算出された各推定AT入力回転速度Niestの全てについて、AT入力回転速度Niとの回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下か否かが判定される。
【0055】
AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとの回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下であった場合、自動変速機38において何れかの変速段が成立するため、自動変速機38の何れかの係合装置CBによって断接される入力回転部材90と出力回転部材92との間の回転速度差ΔNcbが、係合装置CBが係合していると判断できる程度の微小な値になる。従って、係合装置CBによって断接される入力回転部材90および出力回転部材92間の回転速度差ΔNcbが、AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとの回転速度差ΔNiに基づいて推定される。
【0056】
クラッチ解放判定部108は、回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下になったと判定されると、判定された時点を基準とした経過時間tの測定を開始し、回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下の状態が第1所定時間β1以上継続したか否かを判定する。第1所定時間β1は、予め実験的または設計的に求められ、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestと一時的に一致した場合などが排除される値に設定されている。従って、回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下の状態が第1所定時間β1に到達しなかった場合、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestに一致したのは一時的なものであって誤差の範囲と判断される。クラッチ解放判定部108は、回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下にならなかった場合、および、回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下の状態が第1所定時間β1に到達しなかった場合、自動変速機38の係合装置CBが解放されているものと判定する。
【0057】
一方、クラッチ解放判定部108は、回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下の状態が第1所定時間β1以上継続した場合、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestと一致または略一致したものと判定する。ここで、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestと一致または略一致すると、自動変速機38の係合装置CBが係合された状態であると推測されるが、車両10にあっては、前輪14と後輪16とが独立して駆動するため、係合装置CBが係合していないにも拘わらず、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestと偶然一致または略一致する可能性がある。
【0058】
そこで、クラッチ解放判定部108は、シリーズ走行中にAT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestと一致または略一致したと判定された場合、さらに、フロント電動機FrMGの回転状態に基づいて、係合装置CBが解放されているか否かを判定する。クラッチ解放判定部108は、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestと一致または略一致したと判定されると、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrが、目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離しているか否かを判定する。なお、フロント電動機FrMGの目標FrMG回転速度NmFr*は、フロント電動機FrMGによる要求発電電力WgFr*等に基づいて随時算出される値である。
【0059】
フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離しているか否かを判定するに当たって、先ず、クラッチ解放判定部108は、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrと目標FrMG回転速度NmFr*との乖離量ΔNmFr(=|NmFr-NmFr*|)を算出し、算出された乖離量ΔNmFrが予め設定されている第2所定値α2以上であるか否かを判定する。第2所定値α2は、予め実験的または設計的に求められ、FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離したと判断できる値に設定されている。
【0060】
クラッチ解放判定部108は、乖離量ΔNmFrが第2所定値α2以上になったと判定されると、判定された時点を基準とした経過時間tの測定を開始し、乖離量ΔNmFrが第2所定値α2以上の状態が第2所定時間β2以上継続したか否かを判定する。第2所定時間β2は、予め実験的または設計的に求められ、FrMG回転速度NmFrが一時的に目標FrMG回転速度NmFr*から乖離した場合などが排除される値に設定されている。従って、乖離量ΔNmFrが第2所定値α2以上の状態が第2所定時間β2に到達しなかった場合、FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*から乖離したのは一時的なものであって誤差の範囲と判断される。クラッチ解放判定部108は、乖離量ΔNmFrが第2所定値α2以上にならない場合、および、乖離量ΔNmFrが第2所定値α2以上の状態が第2所定時間β2に到達しなかった場合、FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*と乖離していないものと判定する。FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*と乖離していない場合には、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestに一致または略一致したのは偶然であり、係合装置CBは解放されているものと判断される。
【0061】
一方、クラッチ解放判定部108は、回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下の状態が、第1所定時間β1以上継続し、且つ、FrMG回転速度NmFrと目標FrMG回転速度NmFr*との乖離量ΔNmFrが第2所定値α2以上の状態が、第2所定時間β2以上継続した場合、係合装置CBが係合しているものと判定する。シリーズ走行中は、上述したF/B制御が実行されることで、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に追従するが、このとき自動変速機38の係合装置CBが係合していると、エンジン12の動力が自動変速機38を経由して前輪14側に伝達される。このとき、FrMG回転速度NmFrの追従性が悪くなり、FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離した状態になる。従って、FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*と乖離していると判定された場合、係合装置CBが係合しているものと判断される。
【0062】
クラッチ解放判定部108によって係合装置CBが係合していると判断されると、ハイブリッド制御部102は、シリーズ走行を中止し、リヤ電動機RrMGによるリヤモータ走行を実行する。リヤモータ走行では、エンジン12が停止されてフロント電動機FrMGによる発電が停止される。すなわち、フロントユニット18から出力される動力がゼロとされ、HEVバッテリ28の電力を使用したリヤ電動機RrMGによる走行が実行される。このように、自動変速機38において係合装置CBが係合している場合には、シリーズ走行からHEVバッテリ28の電力を使用したリヤモータ走行に切り替えられることで、安全な状態での走行が担保される。
【0063】
図2は、電子制御装置100の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであり、シリーズ走行中において自動変速機38の係合装置CBが解放された状態であるかを判定する制御作動を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、シリーズ走行中において繰り返し実行される。
【0064】
先ず、クラッチ解放判定部108の制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略)S10において、シリーズ走行に切り替えられると自動変速機38の係合装置CBが解放された状態であるかを監視する制御が開始される。次いで、クラッチ解放判定部108の制御機能に対応するステップS20では、自動変速機38において何れかの変速段が形成されたか否かが判定される。具体的には、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niest(=No×γat)に一致または略一致した状態、すなわちAT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとの回転速度差ΔNiが第1所定値α1以下の状態、が第1所定時間β1以上継続したか否かが判定される。S20の判定が否定された場合、S20に戻り、自動変速機38において何れかの変速段が形成されたか否かが継続して判定される。S20の判定が肯定された場合、クラッチ解放判定部108の制御機能に対応するS30において、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離した状態、すなわちFrMG回転速度NmFrと目標FrMG回転速度NmFr*との乖離量ΔNmFrが第2所定値α2以上の状態、が第2所定時間β2以上継続したか否かが判定される。S30の判定が否定された場合、S20に戻り、自動変速機38において何れかの変速段が形成されたか否かが継続して判定される。S30の判定が肯定された場合、自動変速機38において何れかの変速段が形成された状態、すなわち自動変速機38の係合装置CBが係合された状態と判断される。このとき、ハイブリッド制御部102の制御機能に対応するS40において、シリーズ走行が中断され、HEVバッテリ28の電力を使用したリヤ電動機RrMGによるリヤモータ走行に切り替えられる。このように、シリーズ走行中において、係合装置CBが解放されているか否かが、AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとの回転速度差ΔNiと、FrMG回転速度NmFrと目標FrMG回転速度NmFr*との乖離量ΔNmFrと、に基づいて判定されることで、係合装置CBが解放されているか否かが正確に判定される。
【0065】
図3は、電子制御装置100による制御結果の一態様を示すタイムチャートである。具体的には、図3に示すタイムチャートは、シリーズ走行中に自動変速機38の係合装置CBが係合された場合の態様を示している。なお、本実施例では、シリーズ走行中は入力クラッチ36が係合されることから、図3に示すAT入力回転速度NiおよびFrMG回転速度NmFrは同じ回転速度となる。
【0066】
図3のタイムチャートでは、t1時点以前からシリーズ走行が実行されている。また、図3に示すように、t1時点以前からAT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestに一致した状態が継続することで、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestに一致した状態となる経過時間tが測定されている。これに関連して、経過時間tの増加を表すXXth変速段成立カウンタが増加している。t1時点において、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestに一致した状態となる経過時間tが第1所定時間β1に到達すると、自動変速機38において所定の変速段が成立したものと判定され、図3に示す変速段成立判定がOFFからONに切り替わる。次いで、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離した状態であるか否かの判定が開始される。図3では、t2時点において、FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離している。このとき、t2時点を基準にして経過時間tの測定が開始されている。これに関連して、経過時間tの増加を表すMG回転乖離カウンタが増加している。t3時点において、t2時点からの経過時間tが第2所定時間β2に到達すると、FrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離した状態と判定される。このとき、シリーズ走行が中断され、退避走行パターンがシリーズ走行からリヤモータ走行に切り替えられる。このように、AT入力回転速度Niが推定AT入力回転速度Niestに一致した場合であっても、さらに、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrが目標FrMG回転速度NmFr*に対して乖離しているか否かが判定されることで、係合装置CBが解放されているか否かを正確に判定することができる。
【0067】
上述のように、本実施例によれば、係合装置CBを解放した状態で、リヤ電動機RrMGの動力で車両10を走行させるシリーズ走行モードで走行中に、係合装置CBが解放されているかを判定するに当たって、AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとの間の回転速度差ΔNiと、フロント電動機FrMGの回転状態と、に基づいて判定されるため、係合装置CBが解放されているにも拘わらず、AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとが偶然一致した場合であっても、フロント電動機FrMGの回転状態から係合装置CBが解放されているかが判定されることで、係合装置CBが解放されているかを正確に判定することができる。
【0068】
また、本実施例によれば、自動変速機38に備えられる係合装置CBの入力回転部材90と出力回転部材92との間の回転速度差ΔNcbが、自動変速機38のAT入力回転速度Niと、AT出力回転速度Noおよび自動変速機38の変速比γatから算出される推定AT入力回転速度Niestと、の回転速度差ΔNiに基づいて推定されるため、係合装置CBの入力回転部材90の回転速度および出力回転部材92の回転速度を検出するセンサを追加することなく、従前より設けられているセンサによって係合装置CBの回転速度差ΔNcbを推定することができる。また、シリーズ走行が実行されると、エンジン12から出力される動力によってフロント電動機FrMGが回転させられることで、係合装置CBが解放されているにも拘わらず、AT入力回転速度Niと推定AT入力回転速度Niestとが偶然一致する場合がある。このような場合であっても、係合装置CBが解放されているかが、フロント電動機FrMGの回転状態からも判断されるため、係合装置CBが解放されているかを正確に判定することができる。
【0069】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例0070】
図4は、本発明の他の実施例に対応するハイブリッド車両120(以下、車両120)の概略構成を説明する図である。車両120では、前述した実施例の車両10に備えられている自動変速機38に代わって、変速比が一定の減速機122が設けられている。車両120において、減速機122の減速機入力軸124が入力クラッチ36に接続されている。また、減速機122の減速機出力軸126がデファレンシャル装置42に接続されている。なお、車両120に関するその他の構造については、前述した実施例の車両10と変わらないため、その説明を省略する。また、車両120の走行制御等を実行する電子制御装置130は、前述した実施例の変速制御部106を機能的に備えないことを除いて基本的には変わらない。なお、減速機入力軸124が本発明の入力回転部材に対応し、減速機出力軸126が本発明の出力回転部材に対応する。
【0071】
車両120では、シリーズ走行中において、入力クラッチ36が解放されることで、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達が遮断される。これに関連して、クラッチ解放判定部108は、シリーズ走行中において、減速機入力軸124および減速機出力軸126間の回転速度差に基づいて、入力クラッチ36が解放されているか否かを判定する。また、クラッチ解放判定部108は、減速機入力軸124の回転速度と減速機出力軸126の回転速度とが一致または略一致したと判断された場合には、フロント電動機FrMGの回転状態に基づいて入力クラッチ36が解放されているか否かを判定する。上記のように制御される場合であっても、シリーズ走行中において、入力クラッチ36が解放されているか否かを正確に判定できることから、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【0072】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0073】
例えば、前述の実施例では、フロント電動機FrMGのFrMG回転速度NmFrと目標FrMG回転速度NmFr*との乖離量ΔNmFrに基づいて係合装置CBが解放されているかを判定するものであったが、これに代わって、エンジン12のエンジン回転速度Neと目標エンジン回転速度Ne*との乖離量に基づいて、係合装置CBが解放されているかを判定するものであっても構わない。
【0074】
また、前述の実施例では、自動変速機38の係合装置CBまたは入力クラッチ36が解放されているとき、エンジン12の動力を用いてフロント電動機FrMGを回転させることによる発電制御が実行されていたが、この発電制御が実行されなくても構わない。
【0075】
また、前述の実施例2では、車両120は、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間に減速機122を備えて構成されていたが、減速機122は必ずしも必要ではなく、減速機122を備えないものであっても構わない。或いは、減速機122に代わって、増速機を備えるものであっても構わない。
【0076】
また、前述の実施例では、車両10では、エンジン12およびフロント電動機FrMGが前輪14に動力伝達可能に接続され、リヤ電動機RrMGが後輪16に動力伝達可能に接続されるものであったが、フロント電動機FrMGが前輪14に動力伝達可能に接続され、エンジン12およびリヤ電動機RrMGが後輪16に動力伝達可能に接続されるものであっても構わない。この場合には、シリーズ走行中は、エンジン12の動力によってリヤ電動機RrMGを駆動させることによる発電制御が行われ、リヤ電動機RrMGによって発電された電力がフロント電動機FrMGに供給されることによるシリーズ走行が実行される。また、エンジン12およびリヤ電動機RrMGと後輪16との間の動力伝達経路に自動変速機38または所定の係合装置が介挿され、シリーズ走行中は自動変速機38の係合装置CBまたは所定の係合装置が解放される。
【0077】
また、前述の実施例では、自動変速機38は、1組または複数組の遊星歯車装置と、複数個の係合装置CBを備えて構成される有段変速機であったが、本発明は、必ずしも上述した自動変速機38の構成に限定されない。例えば、前後進切替装置およびベルト式無段変速機からなる変速機であっても構わない。この場合には、シリーズ走行中において前後進切替装置に備えられる係合装置が解放されることで、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達が遮断される。要は、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達経路に介挿され、シリーズ走行中において前記動力伝達経路の動力伝達を遮断できる変速機であれば、本発明を適用することができる。
【0078】
また、前述の実施例では、シリーズ走行中において、自動変速機38の動力伝達が遮断されることで、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達が遮断されるように構成されるものであったが、入力クラッチ36が解放されることで、エンジン12およびフロント電動機FrMGと前輪14との間の動力伝達が遮断されるものであっても構わない。この場合には、シリーズ走行中において、電動機連結軸48の回転速度(すなわちFrMG回転速度NmFr)と変速機入力軸50の回転速度(すなわちAT入力回転速度Ni)との間の回転速度差に基づいて、入力クラッチ36が解放されているか否かが判定される。
【0079】
また、前述の実施例では、フロント電動機FrMGと自動変速機38との間に入力クラッチ36(WSC)が介挿されていたが、入力クラッチ36は必ずしも必要なく、入力クラッチ36が省略されても構わない。
【0080】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
10、120:ハイブリッド車両
12:エンジン
14:前輪(第1車輪)
16:後輪(第2車輪)
38:自動変速機(変速機)
40:変速機出力軸(出力軸)
50:変速機入力軸(入力軸)
90:入力回転部材
92:出力回転部材
100:電子制御装置(制御装置)
108:クラッチ解放判定部(制御部)
124:減速機入力軸(入力回転部材)
126:減速機出力軸(出力回転部材)
FrMG:フロント電動機(第1電動機)
RrMG:リヤ電動機(第2電動機)
CB:係合装置(変速用係合装置)
Ni:AT入力回転速度(入力軸の回転速度)
Niest:推定AT入力回転速度(入力軸の推定回転速度)
No:AT出力回転速度(出力軸の回転速度)
NmFr:FrMG回転速度(第1電動機の回転速度)
NmFr*:目標FrMG回転速度NmFr(第1電動機の目標回転速度)
ΔNi:回転速度差(=|Ni-Niest|)
ΔNmFr:乖離量(=|NmFr-NmFr*|)
α1:第1所定値
α2:第2所定値
β1:第1所定時間
β2:第2所定時間
図1
図2
図3
図4