(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109112
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】安定化工法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
E02D17/20 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010529
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 幸整
(72)【発明者】
【氏名】三上 登
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA07
2D044DA11
(57)【要約】
【課題】施工現場の崩落を防止し或いは不陸を抑制する等の安定化を実現すると共に、施工直後から景観を保護することが出来る表面安定化工法の提供。
【解決手段】本発明の表面安定化工法は、安定化するべき表面(S:例えば法面)に植物生育用マット(1)を敷設する工程と、当該植物生育用マット(1)を人工芝(2)で被覆する工程を含んでいる。また、本発明の表面安定化工法において、ネット(3)で被覆する工程を含むことが出来る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化するべき表面に植物生育用マットを敷設する工程と、
当該植物生育用マットを人工芝で被覆する工程を含むことを特徴とする表面安定化工法。
【請求項2】
ネットで被覆する工程を含む請求項1の工法。
【請求項3】
前記ネットは、安定化するべき表面に張設され、植物生育用マットがネットを被覆する請求項2の工法。
【請求項4】
前記ネットは人工芝を被覆して張設される請求項2の工法。
【請求項5】
選択工程及び施工工程を有し、
選択工程では、
施工現場を特定し、
人工芝の条件を選択し、
植物生育用マットの条件を選択し、
ネットで被覆するか否かを決定し、被覆する場合にはネットの条件を選択する請求項1~3の何れか1項の工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば法面その他の地盤等の施工現場の崩落等を防止して安定する安定化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば法面の崩落等を防止し、或いは、不陸を抑制する安定化技術(例えば法面保護技術)は種々提案されており、植生基材吹付工、植生マット工、高強度ネット工等が存在する。
法面に植生基材を吹き付ける植生基材吹付工によれば、吹き付けられた植生基材が法面表面を被覆し、植生の根系が発達することにより、法面を保護することが出来る。
しかし、植生基材における植物の生育に時間を要するため、施工直後には法面保護機能を発揮することが出来ず、景観回復するまで長時間が必要になる。また、植物が生育しても、気象条件の不良に起因して生育した植物が枯死する恐れがあり、枯死した場合には法面保護機能及び景観回復機能は発揮することが出来ない。
植物生育用マットを法面に敷設する植生マット工によれば浸食防止効果は担保される。しかし、施工直後には植物が生えないので、やはり景観の回復には長時間が必要となる。
【0003】
高強度ネット工の様な法面安定化工法によれば、高耐力を有する金網と補強材により法面は安定する。しかし、金網を張設するのみでは施工現場の景観は回復しない。そのため景観回復のためには別の工法と組み合わせて植生工を施さなければならず、植生工と組み合わせる分だけ労力及びコストが嵩んでしまう。
その他の従来技術として、防護網を法面に配置して、その後、植生基材を吹き付ける技術も存在する(例えば、特許文献1参照)。
しかし、植生基材吹付工と同様に、吹付直後に植物は生育していないので、施工から長時間が経過しなければ景観保護機能は発揮されない、という問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、施工現場の崩落を防止し或いは不陸を抑制する等の安定化を実現すると共に、施工直後から景観を保護することが出来る表面安定化工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表面安定化工法は、安定化するべき表面(S:施工現場の表面:例えば法面)に植物生育用マット(1:植生マット)を敷設する工程と、
当該植物生育用マット(1)を人工芝(2)で被覆する工程を含むことを特徴としている。
【0007】
本発明は法面の安定化のみならず、芝等で緑化する必要がある地盤、例えば野球場やサッカー場の様な競技場、ゴルフ場、一般家屋の庭等であれば適用することが出来る。
ここで、「安定化」は、法面の崩落等の防止に加えて、安定化するべき表面(S:施工現場の表面:例えば法面S)の不陸を抑制すること或いは平滑化することも包含する文言として、本明細書では用いられている。
また、植物生育用マット(1)としては、安定化用材料(土砂等)に植物の種子を混合して構成することが出来る。その際に、安定化用材料に植物生育用の栄養剤を混合することも出来る。或いは、不織布に植物の種子を包含させて構成することが出来る。その際に、不織布に植物生育用の栄養剤を包含させることも出来る。
【0008】
本発明の表面安定化工法において、ネット(3)で被覆する工程を含むことが好ましい。
このネット(3)は金属製の網(金網:ラス金網も含む)や、合成樹脂製ネット或いはその他の材料で構成されたネットを含む。本発明の実施に際しては、高強度ネットを選択することが好ましい。施工直後から法面(S)の落石防止等の法面保護機能を発揮できるからである。
そして前記ネット(3)は、安定化するべき表面(S:例えば法面)に張設され、植物生育用マット(1)がネット(3)を被覆するのが好ましい。
或いは、前記ネット(3)は人工芝(2)を被覆して張設されるのが好ましい。
【0009】
本発明の表面安定化工法において、
選択工程(S1)及び施工工程(S2)を有し、
選択工程(S1)では、
施工現場を特定し(S1-1)、
人工芝(2)の条件を選択し(S1-2)、
植物生育用マット(1)の条件を選択し(S1-3)、
ネット(3)で被覆するか否かを決定し、被覆する場合にはネット(3)の条件を選択する(S1-4)のが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成を具備する本発明によれば、安定化するべき表面(S:施工現場の表面:例えば法面)に植物生育用マット(1:植生マット)を敷設し、当該植物生育用マット(1)を人工芝(2)で被覆するので、安定化するべき表面(S)の不陸が植物生育用マット(1)及び人工芝(2)により抑制され、安定化するべき表面(S)が平滑化される。そして、施工後に時間が経過して植物生育用マット(1)から植物が生育すると、その植物の根により安定化するべき表面(S)が保持或いは保護される。
それと共に、人工芝(2)が安定化するべき表面(S:例えば法面)を被覆するので、人工芝(2)により、当該安定化するべき表面(S)の景観が、施工直後から回復する。
【0011】
本発明の実施に際して、例えば施工現場が法面の場合には、ネット(3)を地山(G)の表面(S:法面)に敷設(張設)して、植物生育用マット(1)をネット(3)に被せれば、当該ネット(3)が地山(G)を押圧することとなり、落石防止等の地山保護を図ることが出来る。
一方、植物生育用マット(1)を地山(G)の表面(S、法面)に敷設し、人工芝(2)の上方から人工芝(2)を被覆して前記ネット(3)を張設すれば、地山(G)と植物生育用マット(1)の間に介在物が存在しないので、地山(G)の表面(S:法面)と植物生育用マット(1)の間に隙間が形成されず、植物生育用マット(1)が所謂「浮いた」状態にはならない。そのため、植物生育用マット(1)は地山(G)に確実に接触し、地山(G)から水分が供給され易くなる。そして、人工芝(2)を被覆してネット(3)が張説されることにより、落石防止等の地山保護機能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す説明断面図である。
【
図2】第1実施形態において植物生育後の状態を示す説明断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態を示す説明断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態を示す説明断面図である。
【
図5】第3実施形態の変形例を示す説明断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態は、法面Sに施工する法面保護工法に本発明を適用した場合を示している。
第1実施形態を示す
図1において、安定化するべき地山Gの表面S(法面)に植物生育用マット1が敷設され、植物生育用マット1の上方を人工芝2が被覆している。すなわち、
図1においては、安定化するべき地山Gの法面Sに植物生育用マット1を敷設する工程と、当該植物生育用マット1を人工芝2で被覆する工程を有している。
【0014】
植物生育用マット1は、例えば土砂等の安定化用材料に、植物の種子及び植物生育用の栄養剤を混合している。或いは、安定化用材料である不織布に、植物の種子及び植物生育用の栄養剤を包含させて、植物生育用マット1を構成することも出来る。ここで、植物生育用マット1は植物の栄養剤を含まない場合もある。また、植物生育用マット1は植生シートを含む。
ここで、凍上抑制のため、植物生育用マット1に発熱繊維(図示せず)や断熱性能を持つ資材(図示しない)を使用することも出来る。発熱繊維や断熱性能を持つ資材を使用する場合は、発熱繊維、断熱性能を持つ資材は、植物生育用マット1の上方の領域(地山Gと反対側の領域)に配置する。
植物生育用マット1に発熱繊維や断熱性能を持つ資材を使用することにより、凍上を抑制するため、人工芝2により地山側に押圧された植物生育用マット1は地山に接触して地山から水分を吸収できる状態が保持される。それにより、植物の生育が凍上によって阻害されることを防止出来る。
【0015】
人工芝層を構成する人工芝2として、耐候性のある材料製の人工芝を選択することが出来る。或いは、生分解性のある材料製の人工芝を選択することも出来る。
人工芝2として耐候性のある材料製の人工芝を選択した場合、植物が生育し難い環境でも人工芝が長持ちして、長期間に亘って工芝による景観の保持が行われる、というメリットがある。一方、人工芝2として生分解性のある材料製の人工芝を選択した場合、所定期間が経過すると当該人工芝は生分解するので、植物生育用マット1の植物が景観を保持できる程度まで生育した際に人工芝2が生分解する。そのため、人工芝2が植物生育用マット1の植物の生育を妨げることがなく、生育した植物による景観保持が好適に行われる。
明確に図示はされていないが、図示の実施形態では、人工芝2の密度を例えば通常の人工芝よりも密にしている。人工芝2の密度としては、人工芝2の層によって被覆された植物生育用マット1に植物が生える程度の密度であることが要求されるが、具体的な人工芝2の密度は、施工現場や施工条件毎にケース・バイ・ケースで決定される。ここで、人工芝2が「密」過ぎると、植物生育用マット1の植物の生育が阻害される。人工芝2の密度は、施工直後の景観として求められる条件に対応して決定される。
図1の実施形態では、法面Sに植物生育用マット1を敷設し、当該植物生育用マット1を人工芝2で被覆しているので、安定化するべき法面Sの不陸を植物生育用マット1及び人工芝2によって抑制して平滑化している。それと共に、施工直後は人工芝2が安定化するべき法面Sを被覆するので、法面Sの景観が施工直後から回復する。
【0016】
図1で示す第1実施形態の施工後、一定時間が経過して、植物生育用マット1の植物が生育した状態を示している
図2において、人工芝2の間から植物生育用マット1中の植物が発芽し生育している。また、周辺からも飛来種子が侵入して人工芝2に留まる場合もあり、施工箇所は周辺環境を乱すことがない。
図2において、符号1Aは生育した植物を示し、符号1Bは生育した植物1Aの根を示している。
図2では、植物生育用マット1の植物1Aが生育して、安定化するべき地山G中に根1Bを張って、法面Sを保持或いは保護している。また、人工芝2による景観は、植物生育用マット1から生育した植物1Aの花や葉による自然の植生による景観に置き換わるので、
図1で示す状態よりも景観が向上している。
ここで、
図1、
図2の第1実施形態は、図示の様な法面Sの安定化のみならず、芝等で緑化する必要がある地盤、例えば野球場やサッカー場の様な各種競技場、ゴルフ場、一般家屋の庭等であれば適用することが出来る。
図1、
図2の第1実施形態において、人工芝2と植物生育用マット1(例えば不織布層)が一体化してロール状に巻き回されており、当該一体となっている人工芝2と植物生育用マット1のロールを施工現場に持ち込んで敷設することが可能である。或いは、植物生育用マット1と人工芝2を別個に施工現場に持ち込み、植物生育用マット1と人工芝2を別々に敷設することも出来る。
【0017】
本発明の第2実施形態、第3実施形態を、
図3、
図4を参照して説明する。
図3及び
図4では、共にネット3(網)を張設している。
図3の第2実施形態ではネット3は人工芝2の上方に張設しており、
図4の第3実施形態ではネット3は地山Gを覆う様に、地山Gと植物生育用マット1の間に張設されている。
第2実施形態を示す
図3において、安定化するべき地山Gの法面Sに植物生育用マット1が敷設され、植物生育用マット1の上から人工芝2により植物生育用マット1を被覆し、さらに人工芝2の上方にネット3(網)を張設し、ネット3で人工芝2及び植物生育用マット1を被覆している。ネット3は、例えば図示しない鉄筋により、従来公知の方法で保持されている。或いは、ネット3に突起等を形成し、当該突起等により植物生育用マット1を保持することも可能である。
【0018】
図示の実施形態では、ネット3として硬鋼線から成る高強度ネット(高強度ネット工のネット)を採用している。高強度ネットであれば、施工直後から法面の落石防止等の法面保護機能を発揮できる。ただし、金属製の金網(ラス金網も含む)や、合成樹脂製ネット或いはその他の材料で構成されたネットを選択することも可能である。
ラス金網を使用することも可能である。ラス金網は一時的な法面表層の崩壊程度なら抑える用途に用いられるが、図示の実施形態では、例えば植物生育用マット1を保持するのに用いられる。
表面安定化工法で使用するネット3に必要な強度(許容張力は)、施工現場や施工条件毎に、ケース・バイ・ケースで異なり、適宜選択し対応する。JIS規格を参考にすることが可能である。
【0019】
図4の第3実施形態では、法面Sに張設されたネット3を植物生育用マット1が被覆している。図示の簡略化と、法面Sと植物生育用マット1とネット3の相対的な位置関係を明示するため、
図4では、法面Sと植物生育用マット1の間に空間が存在し、当該空間にネット3が張設されている様に示されている。しかし、実際は、ネット3は法面Sと接触する様に張力を付加して配置されており、その様なネット3に植物生育用マット1が密着して被覆している。
図4の第3実施形態において、植物生育用マット1及びネット3を一体的にロール状に纏めて、施工現場以外の場所、例えば工場等で製造して、ロール状に纏めた状態で施工現場に運搬し、一体となった植物生育用マット1とネット3を地山Gの表面S(法面)に敷設することが出来る。ただし、植物生育用マット1及びネット3を一体的に纏めたロールの重量が重いため、運搬費用が高騰する恐れがある。そのため、植物生育用マット1のロールと、ネット3のロールは、施工現場以外で別々に製造して、それぞれを施工現場まで運搬して施工することが出来る。また、
図4の第3実施形態の変形例として、
図5で示す様に、植物生育用マット1の内部にネット3を織り込むことが可能である。
図3の第2実施形態においても、植物生育用マット1、人工芝2、ネット3を予め工場等でひとまとめのロールに製造し、施工現場に運搬し、一体となった植物生育用マット1、人工芝2及びネット3を表面S(法面)に敷設することも出来る。ただし、その様に施工した場合、
図4の第3実施形態よりも、さらにロールの重量が増加してしまう。
【0020】
図3~
図5の実施形態において、ネット3の目合(めあい)を大きくすれば、不織布層(植物生育用マット1)を保持する効果が向上する。同じ強度(許容張力)のネットであれば、目合の大きいネットを選択することが好適である。
また、ネット3は、その厚さ方向寸法が小さいもの、すなわち出っ張りや窪み(凹凸)の寸法が小さいものを選択することが好適である。例えば、同じ条件のネットであれば、ネット(金網)の線材の径寸法程度の厚さしかないネット(例えば亀甲金網の様なネット)が好適である。
【0021】
図3を参照して、第2実施形態の施工手順(工程)を説明する。
先ず、安定化するべき地山Gの表面S(法面)に植物生育用マット1を敷設する。植物生育用マット1は、例えば植物生育用マット1を施工現場以外で予めロール状に製造され、施工現場まで運搬されたものを敷設することが出来る。
次に、地山Gの表面S(法面)に敷設した植物生育用マット1を人工芝2で被覆する。ここまでは、
図1、
図2の第1実施形態と同様である。
図3の第2実施形態では、植物生育用マット1を人工芝2で被覆した後、人工芝2の上からネット3(例えば高強度ネット)を被覆する。
図3の第2実施形態において、物生育用マット1、人工芝2、ネット3を予め工場等でひとまとめのロールに製造することにより、植生工(植物生育用マット1及び人工芝2を敷設する工程)とネット3の張設を同時に施工することが可能であり、その様に施工した場合には工期が短縮できる。
図4の第3実施形態でも同様である。
【0022】
地山Gの法面Sと植物生育用マット1の間に隙間が出来てしまうと、植物生育用マット1が法面Sから離隔して(マット1が浮いてしまい)、植物生育用マット1に地山Gから水が供給されない恐れがある。それに対して、
図3の第2実施形態では、植物生育用マット1を被覆する人工芝2にネット3を被せているので、法面Sと植物生育用マット1の間に介在物が存在しない。そのため、地山Gの法面Sと植物生育用マット1の間に隙間が形成されず、植物生育用マット1が「浮いた」状態にはならない。そのため、植物生育用マット1は地山Gに確実に接触し、地山Gから植物生育用マット1に水分が確実に供給される。そのため、植物の生育には好適である。そして、植物生育用マット1と地山Gの間にネット3がある
図4の第3実施形態に比較して、地山Gに植物生育用マット1を押し付ける効果は
図3(第2実施形態)の方が良好である。
また、
図3の第2実施形態によれば、ネット3が人工芝2、植物生育用マット1を介して法面Sを押圧して抑えるので、ネット3による地山保護(落石防止など)の効果も奏される。
【0023】
図4を参照して、第3実施形態の施工手順(工程)を説明する。
先ず、ネット3(例えば高強度ネット)を地山Gに張設する。ネット3を地山Gに敷設することで地山Gの法面Sを保護することが出来るので、施工の初期から法面Sにおける落石防止或いは崩落防止の効果を発揮する。
ネット3張設したならば、植物生育用マット1をネット3に被せる。すなわち、植物生育用マット1により、ネット3を被覆する。植物生育用マット1を敷設する際に、植物生育用マット1の保持とネットの保持は、既存技術を適用して鉄筋により行う。ただし、
図4の第3実施形態でも、ネット3が植物生育用マット1を保持して、植物生育用マット1を法面Sに保持する効果が期待できる。
植物生育用マット1をネット3に被せたならば、植物生育用マット1の上から人工芝2を被せ、植物生育用マット1を人工芝2で被覆する。
図3、
図4の第2実施形態、第3実施形態では、ネット3を人工芝2の上方、或いは法面Sと植物生育用マット1の間に張設している。ここで、ネット3を法面Sと植物生育用マット1の間に張設すると共に、人工芝2の上方から被せる様に張設することも可能である。
【0024】
上述した様に、
図4の第3実施形態において、植物生育用マット1の内部にネット3を織り込むことが可能である。その様な変形例(第3実施形態の変形例)を示す
図5において、ネット3は植物生育用マット1内に織り込まれて、保護するべき法面Sと平行に延在している。
図5のその他の構成及び作用効果については、
図4の第3実施形態と同様である。
【0025】
次に、
図6を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
第4実施形態の手順を示すフローチャートである
図6において、第4実施形態に係る表面安定化工法は、選択工程S1と施工工程2を含んでいる。
選択工程S1は、施工現場を選択、設定或いは決定する工程(S1-1)と、人工芝2を選択、設定或いは決定する工程(S1-2)、植物生育用マット1を選択、設定或いは決定する工程(S1-3)、ネット3について選択、設定或いは決定する工程(S1-4)を含んでいる。
施工工程S2では、選択工程S1(S1-1~S1-4)で選択、設定或いは決定された施工現場の条件、人工芝2の条件、植物生育用マット1の条件、ネット3の仕様その他の条件に従って、必要な作業を実行する。
【0026】
上述した様に、ステップS1-1で施工現場が選択或いは特定される。具体的には、施工現場が法面か、競技場(野球場、サッカー場、陸上競技場その他)か、或いは他の施設(例えば、ゴルフ場、一般家屋の庭)なのか、が選択される。ステップS1-1の選択(特定)の結果は、施工工程S2の内容に反映することは勿論、選択工程S1におけるステップS1-2以下の工程にも反映される。
例えば、施工現場が法面の場合、ステップS1-4でネット3が必要となる可能性が高くなるが、施工現場が法面以外であれば、ステップS1-4ではネット3が不要と判定される可能性が高くなる。また施工現場が法面の場合、法面の勾配や周辺環境がネット3の材料や許容張力等の各種仕様に影響を与える。
また、施工現場により、人工芝2の芝の長さ等、人工芝2の仕様、条件が相違する。さらに、施工現場如何により、植物生育用マット1に包含される植物の種類、寒冷地仕様にする必要性の有無等の条件も影響する。
【0027】
図6において、ステップS1-2の工程では、人工芝2の条件を選択し、特定する。人工芝2の条件の選択は、例えば人工芝2として特性の選択(すなわち、耐候性を重視するか、或いは生分解性を重視するか)、人工芝2の密度の選択、その他がある。
人工芝2の特性に関し、耐候性を重視する場合、耐候性のある材料製の人工芝2を選択することにより、上述した様に、施工現場における人工芝2が長持ちして、人工芝2による景観保持機能が長期間に亘って発揮される。一方、生分解性のある材料製の人工芝2を選択すると、一定期間が経過すると人工芝2が生分解するので、植物生育用マット1の植物が生育すると人工芝2が分解し、植物生育用マット1の植物の生育を妨げることなく、生育した植物による景観を保持するのにも好ましい。
また、人工芝2が「密」過ぎると植物生育用マット1の植物の生育を阻害するので、人工芝2の密度については、施工直後の景観として求められる条件に対応して決定される。例えば通常の施行に比較して「密」にすることが出来る。さらに人工芝2の密度は、施工条件等に基づきケース・バイ・ケースで決定される。
【0028】
ステップS1-3で植物生育用マット1の条件を選択し、特定する工程において、植物生育用マット1の選択には、例えば植物生育用マット1の植物の種類の選択、植物の栄養剤に関する選択、植物生育用マット1に使用する資材の特性に関する選択等がある。
植物の種類の選択では、安定化材料(土砂等)に種子を混合する植物の種類を施工現場の原位置に生育している植物とするのか、或いは他の特別な植物とするのかを選択する。
植物の栄養剤に関して、例えば、選択された植物の生育に必要な栄養剤の選択が含まれる。植物の栄養剤を包含する植物生育用マット1を採用するか否かを選択することも含まれる。
植物生育用マット1に使用する資材の特性に関して、植物の生育に適した土壌の選択が含まれる。
また、植物生育用マット1に発熱繊維や断熱性能を持つ資材を使用するか否かの選択も含まれる。上述した様に、発熱繊維や断熱性能を持つ資材を植物生育用マット1に包含すれば、植物生育用マット1の凍上抑制に効果があり、寒冷地仕様として有効である。
【0029】
図6において、ステップS1-4の工程では、上述したステップS1-1~ステップS1-3の選択結果に基づいて、図示の実施形態に係る表面安定化工法においてネット3で被覆することが必要か否かを選択し、ネット3で被覆することが必要な場合、ネット3の条件を選択し、特定する。
ネット3の条件の選択は、例えばネット3の材料(金網、合成樹脂、その他)の選択、目合(めあい)の選択、ネットの厚さ方向の寸法の選択、予め施工現場以外で植物生育用マット1にネット3が組み合わされるのか否かの選択等がある。
ネット3が必要か否かの選択は、施工現場が法面か、競技場(野球場、サッカー場、陸上競技場の様な各種競技場その他)か、或いは他の施設(例えば、ゴルフ場、一般家屋の庭)なのかに大きく依存する。
施工現場が法面の場合も、勾配の大きさ等の各種条件に基づいて、植物生育用マット1をネット3で保持する必要があるか否かを選択する。さらに、法面の施工現場でネット3を使用する場合、
図3の第2実施形態の様にするか、或いは、
図4の第3実施形態の様にするかを選択する。
そして、すなわち施工方法に係る条件により、ネット3の仕様も調整する必要がある。
【0030】
図6のステップS1-4において、ネット3の材料(金網、合成樹脂、その他)の選択は、ネット3に必要な強度(許容張力)も、施工現場や施工条件に基づき、ケース・バイ・ケースで選択される。例えば、大きな強度が必要な場合は硬鋼線から成る高強度ネットが選択され、強度が要求されない現場であれば、軽量なネット、例えば合成樹脂製のネットが選択される。もちろん、ラス金網、その他を選択することも出来る。
ネット3の目合(めあい)の選択は、植物生育用マット1をネット3で保持する効果を考慮して行う。同じ強度(許容張力)のネットがあれば、目合の大きいネットを選択する。
ネット3の厚さ方向の寸法については、基本的に、出っ張りや窪み(凹凸)の寸法が小さいネットが選択される。例えば、亀甲金網は線材の径寸法程度の厚さしかないので好適である。
【0031】
さらに
図6のステップS1-4では、予め施工現場以外の場所で植物生育用マット1とネット3を一体的に組み合わせて、ひとまとめのロールに製造して、施工現場に運搬するのか否かを選択することが出来る。例えば、施工コストの低減が要求される施工であれば、ネット3と植物生育用マット1はそれぞれ別々に施工現場に搬送し、施工現場で組み合わせる方が、運搬費用を節減できる可能性が高い。
しかし、施工条件その他によっては、予め施工現場以外で植物生育用マット1にネット3を組み合わせて一目的にロール状に製造し、施工現場で地山Gに敷設することを選択する場合も存在する。例えば、植物生育用マット1にネット3を組み合わせてロール状に製造しても、当該ロールの重量が大きくない場合は、施工現場への運搬コストも低廉になり、施工現場での敷設が容易になるので、選択される場合がある。
【0032】
図6において、ステップS2では、ステップS1の選択工程(S1-1~S1-4)で選択、設定或いは決定された条件(施工現場、人工芝2、植物生育用マット1、ネット3の条件)に従って表面安定化工法の施工工程を実行する。
図6の第4実施形態によれば、多種にわたって商品が存在する人工芝2、植物生育用マット1、ネット3について、施工現場の条件に合致した好適な組み合わせをシステム工学の手法に沿って効率的に決定することが出来る。
【0033】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態は本発明を法面保護に適用した場合を説明しているが、本発明は法面保護(法面の安定化)に限定される訳ではなく、芝等の植物で緑化する必要がある地盤(例えば野球場、サッカー場、陸上競技場の様な各種競技場の様な各種競技場、ゴルフ場、一般家屋の庭)の安定化に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1・・・植物生育用マット
2・・・人工芝
3・・・ネット
G・・・地山
S・・・安定化するべき表面(例えば地山の法面)