(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109117
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ロードカーブ管理システム、配電系統管理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230731BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/18 135
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010534
(22)【出願日】2022-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年(第39回)電気設備学会全国大会 開催日 令和3年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 武志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 昂洋
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064AC10
5G064CB03
5G064CB08
5G064CB13
5G064DA03
5G066FA01
5G066FB02
5G066FC04
(57)【要約】
【課題】需要家の電力量の計量値を利用した配電系統の監視制御の処理負荷を軽減することができるロードカーブ管理システムを得ること。
【解決手段】センサ開閉器8によって区切られた配電線の範囲ごとに、範囲に接続されるスマートメータ6によって計量された需要家の電力量の計量値を用いて力率を算出する力率置換部14と、力率置換部14によって算出された力率と、センサ開閉器8によって計測された電流とを用いて、センサ開閉器8における有効電流および無効電流を算出し、範囲ごとに、範囲の各点の計量値を用いてセンサ開閉器8における有効電流から算出される範囲に対応する有効電流を各点に按分することにより各点の有効電流を算出するとともに、範囲の各点の計量値を用いてセンサ開閉器8における無効電流から算出される範囲に対応する無効電流を各点に按分することにより各点の無効電流を算出する電流按分部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線における電圧、電流および力率を計測するセンサ開閉器によって区切られた前記配電線の範囲ごとに、前記範囲に接続される計量装置によって計量された需要家の電力量の計量値を用いて力率を算出する力率算出部と、
前記力率算出部によって算出された前記力率と、前記センサ開閉器によって計測された電流とを用いて、前記センサ開閉器における有効電流および無効電流を算出し、前記範囲ごとに、前記範囲の各点の前記計量値を用いて前記センサ開閉器における前記有効電流から算出される前記範囲に対応する有効電流を前記各点に按分することにより前記各点の有効電流を算出するとともに、前記範囲の各点の前記計量値を用いて前記センサ開閉器における前記無効電流から算出される前記範囲に対応する無効電流を前記各点に按分することにより前記各点の無効電流を算出する電流按分部と、
を備えることを特徴とするロードカーブ管理システム。
【請求項2】
前記範囲は、前記センサ開閉器である第1開閉器から前記第1センサ開閉器に隣接する前記センサ開閉器である第2開閉器までの範囲であり、
前記ロードカーブ管理システムは、
前記第2開閉器に欠測が生じた場合、欠測の生じていない前記センサ開閉器まで、前記範囲を拡張する按分範囲拡張部、
を備え、
前記力率算出部および前記電流按分部は、前記按分範囲拡張部による拡張が行われた後の前記範囲を用いることを特徴とする請求項1に記載のロードカーブ管理システム。
【請求項3】
前記計量装置に欠測が生じた場合、欠測の生じた日より前の日に取得された同一時刻の前記計量装置の前記計量値を欠測に対応する日時の計量値とする欠測補完を行う計量値欠測補完部、
を備え、
前記力率算出部および前記電流按分部は、前記計量値欠測補完部による前記欠測補完後の前記計量値を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のロードカーブ管理システム。
【請求項4】
前記計量値欠測補完部は、欠測の生じた日の前日に取得された同一時刻の前記計量装置の前記計量値を欠測に対応する日時の計量値とすることを特徴とする請求項3に記載のロードカーブ管理システム。
【請求項5】
前記計量装置に欠測が生じた場合、前記計量装置に対応する前記需要家の契約電力に基づいて算出した値を欠測に対応する日時の計量値とする欠測補完を行う計量値欠測補完部、
を備え、
前記力率算出部および前記電流按分部は、前記計量値欠測補完部による前記欠測補完後の前記計量値を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のロードカーブ管理システム。
【請求項6】
前記電流按分部は、前記範囲ごとに、前記計量値に基づいて有効電力および無効電力を算出し、前記範囲内の前記計量装置における前記無効電力の正負符号が同一ではない場合、正の値の前記計量装置における前記無効電力の和の絶対値と、負の値の前記計量装置における前記無効電力の和の絶対値とのうち小さい方の絶対値に対応する正負符号を固定対象符号とし、前記無効電力を前記範囲に対応する前記センサ開閉器によって計測された電圧で除すことにより前記固定対象符号に対応する前記計量装置における無効電流である固定対象無効電流を算出し、前記センサ開閉器における前記無効電流から算出される前記範囲に対応する無効電流に前記固定対象無効電流を加えた値を、前記固定対象符号以外の正負符号である按分対象符号の前記無効電力に基づいて各点に按分することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のロードカーブ管理システム。
【請求項7】
前記電流按分部は、前記範囲内の前記計量装置における前記有効電力の正負符号が同一ではない場合、正の値の前記計量装置における前記有効電力の和の絶対値と、負の値の前記計量装置における前記有効電力の和の絶対値とのうち小さい方の絶対値に対応する正負符号を固定対象符号とし、前記有効電力を前記範囲に対応する前記センサ開閉器によって計測された電圧で除すことにより前記固定対象符号に対応する前記計量装置における有効電流である固定対象有効電流を算出し、前記センサ開閉器における前記有効電流から算出される前記範囲に対応する有効電流に前記固定対象有効電流を加えた値を、前記固定対象符号以外の正負符号である按分対象符号の前記有効電力に基づいて各点に按分することを特徴とする請求項6に記載のロードカーブ管理システム。
【請求項8】
前記電流按分部は、配電線において一時的な切替が生じた場合、一時的な切替が生じている間の前記センサ開閉器における電流を、当該センサ開閉器より下流の前記計量装置の前記計量値と当該センサ開閉器によって計測された電圧とに基づいて算出することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載のロードカーブ管理システム。
【請求項9】
前記電流按分部によって算出された各点の電流を用いて、前記配電線単位での電流の合計値を算出し、時刻ごとの定められた期間における前記合計値の最大値を電圧降下の算出のための最大電流とする期間最大電流算出部、
を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載のロードカーブ管理システム。
【請求項10】
前記期間最大電流算出部は、前記電流按分部によって算出された各点の電流を用いて、時刻ごとの、定められた期間における電流の最大値を点ごとに抽出し、抽出した最大値を通過電流の算出のための最大電流とすることを特徴とする請求項9に記載のロードカーブ管理システム。
【請求項11】
配電線における電流分布を算出するロードカーブ管理システムと、
前記電流分布とインピーダンスとを用いて電圧降下を算出する配電線監視制御システムと、
を備え、
前記ロードカーブ管理システムは、
前記配電線における電圧、電流および力率を計測するセンサ開閉器によって区切られた前記配電線の範囲ごとに、前記範囲に接続される計量装置によって計量された需要家の電力量の計量値を用いて力率を算出する力率算出部と、
前記力率算出部によって算出された前記力率と、前記センサ開閉器によって計測された電流とを用いて、前記センサ開閉器における有効電流および無効電流を算出し、前記範囲ごとに、前記範囲の各点の前記計量値を用いて前記センサ開閉器における前記有効電流から算出される前記範囲に対応する有効電流を前記各点に按分することにより前記各点の有効電流を算出するとともに、前記範囲の各点の前記計量値を用いて前記センサ開閉器における前記無効電流から算出される前記範囲に対応する無効電流を前記各点に按分することにより前記各点の無効電流を算出する電流按分部と、
前記電流按分部によって算出された各点の有効電流および無効電流を電流分布として前記配電線監視制御システムへ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする配電系統管理システム。
【請求項12】
配電線における各点の電流を用いて、前記配電線単位での前記電流の合計値を算出し、時刻ごとの定められた期間における前記合計値の最大値を電圧降下の算出のための最大電流とする期間最大電流算出部、
を備えることを特徴とする配電系統管理システム。
【請求項13】
前記期間最大電流算出部は、前記配電線における各点の電流を用いて、時刻ごとの、定められた期間における最大値を点ごとに抽出し、抽出した最大値を通過電流の算出のための最大電流とすることを特徴とする請求項12に記載の配電系統管理システム。
【請求項14】
コンピュータシステムに、
配電線における電圧、電流および力率を計測するセンサ開閉器によって区切られた前記配電線の範囲ごとに、前記範囲に接続される計量装置によって計量された需要家の電力量の計量値を用いて力率を算出するステップと、
算出された前記力率と、前記センサ開閉器によって計測された電流とを用いて、前記センサ開閉器における有効電流および無効電流を算出し、前記範囲ごとに、前記範囲の各点の前記計量値を用いて前記センサ開閉器における前記有効電流から算出される前記範囲に対応する有効電流を前記各点に按分することにより前記各点の有効電流を算出するとともに、前記範囲の各点の前記計量値を用いて前記センサ開閉器における前記無効電流から算出される前記範囲に対応する無効電流を前記各点に按分することにより前記各点の無効電流を算出するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配電系統における電流分布を求めるロードカーブ管理システム、配電系統管理システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
計測機能を有する開閉器であるセンサ開閉器の配電系統への導入が進められており、センサ開閉器によって計測された計測値が許容範囲を逸脱していないかの監視、計測値を用いた電圧制御など様々な監視制御が行われている。
【0003】
近年、需要家の電力量の自動検針のための計量装置であるスマートメータが普及しつつある。スマートメータによって計量された計量値を配電系統における監視制御に用いることも検討されている。特許文献1には、各スマートメータで収集した電力量および力率の合計値と、配電用変電所の計測器によって計測された電力量および電圧と、高圧配電線のインピーダンスとを用いて潮流計算により、高圧配電線における電圧を推定する配電系統監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の配電系統監視システムでは、電圧を求めるために潮流計算を行う必要がある。潮流計算を行うと、処理に時間を要し、また、収束せずに解が算出できないことがある。このため、需要家の電力量の計量値を利用した配電系統の監視制御の処理負荷を軽減することが望まれる。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、需要家の電力量の計量値を利用した配電系統の監視制御の処理負荷を軽減することができるロードカーブ管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかるロードカーブ管理システムは、配電線における電圧、電流および力率を計測するセンサ開閉器によって区切られた配電線の範囲ごとに、範囲に接続される計量装置によって計量された需要家の電力量の計量値を用いて力率を算出する力率算出部、を備える。ロードカーブ管理システムは、さらに、力率算出部によって算出された力率と、センサ開閉器によって計測された電流とを用いて、センサ開閉器における有効電流および無効電流を算出し、範囲ごとに、範囲の各点の計量値を用いてセンサ開閉器における有効電流から算出される範囲に対応する有効電流を各点に按分することにより各点の有効電流を算出するとともに、範囲の各点の計量値を用いてセンサ開閉器における無効電流から算出される範囲に対応する無効電流を各点に按分することにより各点の無効電流を算出する電流按分部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかるロードカーブ管理システムは、需要家の電力量の計量値を利用した配電系統の監視制御の処理負荷を軽減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる配電系統管理システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1の按分処理の概念を説明するための図
【
図3】実施の形態1のロードカーブ管理システムにおける処理手順の一例を示すフローチャート
【
図4】実施の形態1の按分範囲の拡張の一例を示す図
【
図5】実施の形態1の計量値の欠測補完の一例を示す図
【
図7】実施の形態1の電流按分部における処理手順の一例を示すフローチャート
【
図8】実施の形態1の電流按分部における処理を説明するための図
【
図9】一時的な切替が発生する場合の実施の形態1の電流分布の算出方法を説明するための図
【
図10】実施の形態1のロードカーブ管理システムを実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
【
図11】実施の形態2にかかる配電系統管理システムの構成例を示す図
【
図12】実施の形態2の第1の方法による最大値の算出の一例を示す図
【
図13】実施の形態2の第2の方法による最大値の算出の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかるロードカーブ管理システム、配電系統管理システムおよびプログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる配電系統管理システムの構成例を示す図である。本実施の形態の配電系統管理システム5は、ロードカーブ管理システム1と、配電業務総合支援システム2と、配電線監視制御システム3と、を備える。配電系統管理システム5は、管理対象の配電系統における監視および制御を行うことで配電系統を管理する。
【0012】
配電業務総合支援システム2は、管理対象の配電系統における情報を総合的に管理し、配電系統管理システム5内の情報の連係を支援する。配電業務総合支援システム2は、例えば、設備情報、系統情報、契約情報などの配電系統に関する情報を、図示しない他の装置から取得しまたはオペレータからの入力により取得して保持する。設備情報は、配電系統における配電設備、発電設備などの各設備の接続位置、設備の種類などを示す情報である。系統情報は、系統の構成などを示す情報である。契約情報は、配電系統から電力の供給を受ける需要家の電力の契約を示す情報であり、契約電力、スマートメータ(図では、SMと略す)6の接続位置などの情報を含む。
【0013】
また、配電業務総合支援システム2は、配電系統における各種の計測値を取得する。例えば、配電業務総合支援システム2は、配電線監視制御システム3を介してセンサ開閉器8によって計測された計測データである開閉器計測データを取得し、スマートメータ管理システム(図では、SM管理システムと略す)4を介してスマートメータ6の計量値であるSM計量値を取得する。開閉器計測データおよびSM計量値については後述する。配電業務総合支援システム2は、設備情報、系統情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値をロードカーブ管理システム1へ送信する。
【0014】
図1に示すように、配電業務総合支援システム2は、受信部21、記憶部22および送信部23を備える。受信部21は、他の装置から受信した情報を記憶部22に格納する。受信部21は、例えば、スマートメータ管理システム4から受信したSM計量値、および配電線監視制御システム3から受信した開閉器計測データを記憶部22に格納する。また、設備情報、系統情報および契約情報のうち図示しない他の装置から受信する情報がある場合、受信部21は、当該情報を受信して記憶部22に格納する。また、受信部21は、ロードカーブ管理システム1から受信した電流分布を電流分布情報として記憶部22に格納する。送信部23は、記憶部22に格納されている情報を他の装置へ送信する。例えば、送信部23は、設備情報、系統情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値をロードカーブ管理システム1へ送信する。送信部23は、例えば、記憶部22に格納されている情報が更新されると、更新された情報をロードカーブ管理システム1へ送信する。
【0015】
ロードカーブ管理システム1は、配電業務総合支援システム2から受信した設備情報、系統情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値を用いて、配電系統における電流分布を求め、求めた電流分布を配電線監視制御システム3へ送信する。なお、
図1では、ロードカーブ管理システム1が設備情報、系統情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値を配電業務総合支援システム2から受信する例を記載しているが、ロードカーブ管理システム1は、これらのうちの少なくとも一部を配電業務総合支援システム2以外の装置から受信してもよい。例えば、ロードカーブ管理システム1は、設備情報、系統情報および契約情報のうちの少なくとも1つを、図示しない他の装置から受信してもよい。また、例えば、ロードカーブ管理システム1は、開閉器計測データを、配電線監視制御システム3から受信してもよいし、センサ開閉器8から受信してもよい。また、例えば、ロードカーブ管理システム1は、SM計量値をスマートメータ管理システム4から受信してもよい。ロードカーブ管理システム1の詳細については後述する。
【0016】
配電線監視制御システム3は、配電系統における電圧の監視および制御を行う。例えば、配電線監視制御システム3は、ロードカーブ管理システム1から受信した電流分布を用いて電圧降下(電圧降下の量)を求め、電圧降下とセンサ開閉器8から受信した開閉器計測データとを用いて配電系統における電圧を求め、電圧が適正範囲から逸脱しているか否かを監視し、電圧が適正範囲内となるように配電系統における図示しない各電圧制御器を制御する。また、配電線監視制御システム3は、開閉器計測データを配電業務総合支援システム2へ送信する。
【0017】
センサ開閉器8は、センサ付開閉器とも呼ばれ、配電系統における高圧(電圧レベルが例えば6600V)の配電線に設けられ、配電線路を開閉する機能を有するとともに、計測機能を有する。センサ開閉器8は、配電線における電圧、電流(皮相電流)および力率を計測し、計測したデータである開閉器計測データを配電線監視制御システム3へ送信する。開閉器計測データは、計測結果とセンサ開閉器8の識別情報と対応する時刻(計測された時刻または送信された時刻)とを含む。
【0018】
スマートメータ管理システム4は、スマートメータ6からSM計量値を受信し、受信したSM計量値を配電業務総合支援システム2へ送信する。スマートメータ6は、自動検針のために、需要家の電力量を計量する計量装置である。スマートメータ6が設置される需要家は、高圧需要家および低圧需要家のうち少なくとも一方を含む。高圧需要家は、高圧の電力を受電する需要家であり、低圧需要家は、高圧の配電線に接続される柱上変圧器などの変圧器によって低圧(電圧レベルが例えば100V~200V)に変換された電力を受電する需要家である。低圧需要家のSM計量値は、変圧器単位で集約される。スマートメータ6は、各需要家の受電点における電力量を計量する。詳細には、スマートメータ6は、各需要家の受電点における例えば30分ごとの有効電力量および無効電力量を計量し、有効電力量および無効電力量の計量結果とスマートメータ6の識別情報と計量値に対応する時刻とを含むSM計量値をスマートメータ管理システム4へ送信する。
【0019】
なお、
図1では、スマートメータ6およびセンサ開閉器8を、2台ずつ図示しているが、スマートメータ6およびセンサ開閉器8の各々の数は、
図1に示した例に限定されない。
【0020】
次に、本実施の形態のロードカーブ管理システム1の詳細について説明する。本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、上述したように配電系統における電流分布を求める。この電流分布を用いることで、下記の式(1)に示す簡易電圧降下計算によって、潮流計算を行うことなく、電圧降下の量であるΔVを算出することができる。Iは電流を示し、Rはインピーダンスのレジスタンス成分を示し、Xはインピーダンスのリアクタンス成分を示し、cosθは力率を示す。
ΔV=√3×(I×cosθ×R+I×sinθ×X) …(1)
【0021】
一方、電流分布を算出する際に、センサ開閉器8が計測する点は限られているため、電流分布をより細かい単位で把握するためには、センサ開閉器8が設置されている箇所以外の各点の電流を求める必要がある。本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、SM計量値を用いて、センサ開閉器8が設置されている箇所以外の各点(高圧需要家のスマートメータ6、変圧器)の電流を算出する。詳細には、ロードカーブ管理システム1は、スマートメータ6によって計量されたSM計量値を、当該スマートメータ6の直近のセンサ開閉器8の電圧値で除したものを電流値として算出し、隣接するセンサ開閉器8の間の範囲に存在するスマートメータ6の電流値の和と、センサ開閉器8の計測値との差の絶対値がしきい値以下の場合には、算出した電流値をそのまま採用する。隣接するセンサ開閉器8の間の範囲に存在するスマートメータ6の電流値の和と、センサ開閉器8の計測値との差の絶対値がしきい値を超える場合には、SM計量値で按分した結果を電流値として採用する。しきい値は0であってもよいし、0以外の小さな値が設定されてもよい。
【0022】
図2は、本実施の形態の按分処理の概念を説明するための図である。
図2に示した例では、配電用変電所に設けられる配電用変圧器7に接続される配電線にセンサ開閉器8-1~8-4が設けられている。センサ開閉器8-1~8-4は、いずれも
図1に示したセンサ開閉器8である。センサ開閉器8-1とセンサ開閉器8-2との間にはスマートメータ6-1~6-3が接続され、センサ開閉器8-2とセンサ開閉器8-3との間にはスマートメータ6-4~6-6が接続され、センサ開閉器8-3とセンサ開閉器8-4との間にはスマートメータ6-7~6-9が接続されている。スマートメータ6-1~6-9は、いずれも
図1に示したスマートメータ6である。
図2では、高圧から低圧に電圧を変換する変圧器の図示を省略しているが、スマートメータ6-1~6-9は、高圧需要家に設置されたものであってもよいし、低圧需要家に設置されたものであってもよい。なお、
図2に示したように、各センサ開閉器8-1~8-4は、「入」すなわち閉の状態の場合と、「切」すなわち開の状態の場合とで、異なる図形により示されている。
【0023】
図2に示した例では、センサ開閉器8-2における電圧の計測値(図ではVと略す)が6500[V]であり、センサ開閉器8-2における電流の計測値(図ではIと略す)が250[A]である。また、センサ開閉器8-3における電圧の計測値が6450[V]であり、センサ開閉器8-3における電流の計測値が160[A]である。また、スマートメータ6-4~6-6の計量値を電力に換算した値は、それぞれ200[kW],400[kW],300[kW]である。
【0024】
ロードカーブ管理システム1は、スマートメータ6-4のSM計量値に対応する200[kW]を、スマートメータ6-4の直近の上流のセンサ開閉器8-2の電圧の計測値6500[V]に√3を乗じた値で除算することで、電流値17.8[A]を求めることができる。同様に、スマートメータ6-5,6-6の電流値は35.6[A],26.7[A]となる。
図2の上側の図には、このようにして算出された電流値、すなわち按分されていない電流値が示されている。
【0025】
図2に示した例では、センサ開閉器8-3とセンサ開閉器8-2との電流値の差は、90[A]であるのに対し、スマートメータ6-4~6-6の電流値の合計は、80.1[A]であり、両者に差がある。しきい値が0であるとすると、この例では按分が必要ということになる。このため、本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、下記の式(2)により、電流を按分する。I
aは、隣接するセンサ開閉器8間の範囲における上流側の端部のセンサ開閉器8の電流の計測値であり、I
bは、当該範囲における下流側の端部のセンサ開閉器8の電流の計測値であり、P
iは、範囲内のi番目のスマートメータ6の電力量を電力に換算した値であり、Σは、範囲内の全てのスマートメータ6に関する総和を示す。IS
iは、i番目のスマートメータ6に対応する点の按分後の電流値を示す。
IS
i=(I
a-I
b)×P
i÷(ΣP
i) …(2)
【0026】
例えば、
図2に示した例において、スマートメータ6-4をi=1のスマートメータ6であるとすると、上記式(2)の(I
a-I
b)は90[A]であり、上記式(2)のP
1は200[kW]であり、上記式(2)のΣP
iは、200[kW]+400[kW]+300[kW]=900[kW]である。このため、スマートメータ6-4に対応する点の按分後の電流値であるIS
1は、20[A]となる。同様に、スマートメータ6-5,6-6に対応する点の按分後の電流値は、それぞれ40[A],30[A]となる。
図2の下側の図には、按分後の電流値が示されている。
【0027】
図2では、センサ開閉器8-2とセンサ開閉器8-3との間の範囲の按分について説明したが、同様に、隣接するセンサ開閉器8の間の範囲ごとに、SM計量値を用いて電流値が算出され、按分が必要な場合には按分が行われる。本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、このようにして各点の電流値を求めることで配電系統における電流分布を求めることができる。この電流分布と、上記式(1)を用いれば、潮流計算を行うことなく、配電系統における電圧分布を算出することができるため、本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、需要家の電力量の計量値であるSM計量値を利用した配電系統の監視制御の処理負荷を軽減することができる。
【0028】
また、上記式(1)によって配電系統における各点の電圧を算出する際に、cosθとして、センサ開閉器8が計測する力率を利用すると、この力率の計測値には、線路損失分が含まれているため、ΔVの計算結果に誤差が含まれることになる。そこで、本実施の形態では、その地点の負荷側に存在するすべてのSM計量値の合計値から求めた力率を利用することで、当該計算誤差を無くしΔVの精度を向上させる。力率の算出方法の詳細については後述する。
【0029】
次に、ロードカーブ管理システム1の構成例について説明する。ロードカーブ管理システム1は、
図1に示すように、受信部11、記憶部12、按分範囲拡張部13、力率置換部14、電流按分部15、送信部16および計量値欠測補完部17を備える。
【0030】
受信部11は、配電業務総合支援システム2から、設備情報、系統情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値を受信し、受信した設備情報、系統情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値を記憶部12へ格納する。なお、上述したように、設備情報、系統情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値は、配電業務総合支援システム2から送信される例に限定されず、これらの情報のうちの少なくとも一部が配電業務総合支援システム2以外の他の装置から送信されてもよい。この場合、受信部11は、他の装置から受信した情報を記憶部12に格納する。
【0031】
計量値欠測補完部17は、記憶部12に格納されているSM計量値に欠測がある場合に、欠測補完を行い、補完した結果を記憶部12のSM計量値に反映する。欠測補完の詳細については後述する。
【0032】
按分範囲拡張部13は、記憶部12に格納されている開閉器計測データを用いて、開閉器計測データに欠測があるか否かを判断し、欠測がある場合、上述した電流を按分する範囲を拡張し、拡張した範囲を力率置換部14へ通知する。按分範囲拡張部13における処理については後述する。
【0033】
力率置換部14は、センサ開閉器8によって区切られた配電線の範囲ごとに、当該範囲に接続されるスマートメータ6によって計量された需要家の電力量の計量値(SM計量値)を用いて力率を算出する力率算出部である。詳細には、力率置換部14は、記憶部12に格納されている設備情報、契約情報およびSM計量値を用いて、開閉器計測データにおける力率の計測値を、SM計量値を用いて算出した力率に置換する。力率置換部14は、按分範囲が拡張されている場合には拡張した範囲のSM計量値を用いて力率を算出する。SM計量値を用いて算出した力率の算出方法の詳細については後述する。また、力率置換部14は、按分範囲拡張部13から通知された拡張した範囲を電流按分部15へ通知する。
【0034】
電流按分部15は、記憶部12に格納されている設備情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値を用いて、配電系統の各点における電流値を算出し、按分が必要な場合には、上述したように電流の按分処理を実施する。電流按分部15は、按分範囲が拡張されている場合には拡張した範囲の開閉器計測データおよびSM計量値を用いて按分処理を実施する。電流按分部15は、各点の電流値を示す電流分布を、送信部16へ出力する。
【0035】
送信部16は、電流分布を配電線監視制御システム3および配電業務総合支援システム2へ送信する。配電線監視制御システム3は、上述したように、電流分布を用いて上記式(1)によりΔVを算出し、配電系統の電圧の監視および制御を行う。
【0036】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
図3は、本実施の形態のロードカーブ管理システム1における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、ロードカーブ管理システム1は、データを受信する(ステップS1)。詳細には、受信部11が、SM計量値および開閉器計測データを配電業務総合支援システム2から受信し、受信したSM計量値および開閉器計測データを記憶部12に格納する。例えば、ロードカーブ管理システム1は、設備情報、系統情報および契約情報を、1日に1回受信する。また、ロードカーブ管理システム1は、SM計量値および開閉器計測データも1日に1回、前日分をまとめて受信し、
図3に示した処理を1日に1回行う。なお、ステップS2以降の処理は時間断面ごとに行われる。なお、これに限らず、設備情報、系統情報および契約情報については、情報が更新された場合に、受信部11は、更新された情報を受信し、受信した情報で記憶部12に格納されている情報を更新するようにしてもよい。また、SM計量値および開閉器計測データの受信は、1日より短い単位で周期的に行われてもよい。
【0037】
次に、ロードカーブ管理システム1は、按分区間の拡張を行う(ステップS2)。詳細には、按分範囲拡張部13が、まず、記憶部12に格納されている開閉器計測データを用いて、開閉器計測データに欠測があるか否かを判断する。ここでは、配電線監視制御システム3が、欠測を判定し、1日分の開閉器計測データにおいて、例えば、欠測の生じた対応するデータは、空白またはnullなど、欠測を示す情報として格納されているとする。欠測を示すデータは、空白またはnullに限定されない。または、配電線監視制御システム3が、センサ開閉器8の識別情報および対応する時刻とともに欠測が生じたことを示す情報を送信してもよい。また、ロードカーブ管理システム1が、センサ開閉器8から開閉器計測データを受信する場合には、按分範囲拡張部13が、例えば、各センサ開閉器8から周期的に受信すべき時刻から一定時間以上経過しても開閉器計測データを受信しない場合に欠測と判定する。按分範囲拡張部13は、開閉器計測データに欠測がある場合、電流を按分する範囲である按分範囲を拡張する。例えば、按分範囲を、センサ開閉器8である第1開閉器から第1センサ開閉器に隣接するセンサ開閉器8である第2開閉器までの範囲とするとき、按分範囲拡張部13は、第2開閉器に欠測が生じた場合、欠測の生じていないセンサ開閉器8まで、按分範囲を拡張する。力率置換部14および電流按分部15は、按分範囲拡張部13による拡張が行われた後の按分範囲を用いる。
【0038】
図4は、本実施の形態の按分範囲の拡張の一例を示す図である。
図4に示した例では、
図2に示した例と同様の配電系統において、センサ開閉器8-2の開閉器計測データが欠測となった例を示している。
図2を用いて例示したように、隣接するセンサ開閉器8間の範囲である按分範囲ごとに、電流の按分が行われる。一方、センサ開閉器8の開閉器計測データに欠測があると、上述した方法ではSM計量値に基づく電流値が算出できない。
図4に示した例では、センサ開閉器8-2の開閉器計測データが欠測であるため、センサ開閉器8-1とセンサ開閉器8-2との間の按分範囲と、センサ開閉器8-2とセンサ開閉器8-3との間の按分範囲とに関して、上述した方法ではSM計量値に基づく電流値が算出できないことになる。このため、本実施の形態では、
図4に示すように、按分範囲を、センサ開閉器8-1からセンサ開閉器8-3までに拡張する。このように、開閉器計測データに欠測がある場合には、開閉器計測データが得られるセンサ開閉器8まで按分範囲を格納することで、拡張した按分範囲を用いて、
図2に示した例と同様に、各点の電流値を求めることができる。
【0039】
図3の説明に戻る。ロードカーブ管理システム1は、計量値(SM計量値)の欠測補完を行う(ステップS3)。詳細には、計量値欠測補完部17は、記憶部12に格納されているSM計量値に欠測がある場合に、SM計量値の欠測補完を行い、補完した結果を記憶部12のSM計量値に反映する。ここではスマートメータ管理システム4が、SM計量値の欠測を判定し、1日分の開閉器計測データにおいて、例えば、欠測の生じた対応するデータは、空白またはnullなど、欠測を示す情報として格納されているとする。欠測を示すデータは、空白またはnullに限定されない。または、スマートメータ管理システム4が、欠測であることを示す情報を、スマートメータ6の識別情報および対応する時刻とともに送信してもよい。
【0040】
図5は、本実施の形態の計量値の欠測補完の一例を示す図である。
図5に示した例では、
図5の下側の当日の図に示すように、
図2に示した例と同様の配電系統において、スマートメータ6-6のSM計量値が欠測となった例を示している。この場合、計量値欠測補完部17は、例えば、
図5の上側に示した、前日のスマートメータ6-6のSM計量値(スマートメータ6-6の前日の同日時間帯のSM計量値)を、欠測のあったスマートメータ6-6のSM計量値として用いることで欠測補完を行う。なお、欠測補完の方法は、前日のSM計量値を用いる例に限定されず、例えば、前年の同月同日の同時刻の値を用いてもよいし、前年の同月の同時刻の平均値を用いてもよい。また、計量値欠測補完部17は、記憶部12に格納されている契約情報を用いて、スマートメータ6に対応する需要家の契約電力を求め、契約電力に補正係数を乗算した値を補完値として用いてもよい。補正係数は、例えば、過去の電力需要の実績値と契約電力とに基づいて定められるが、補正係数の算出方法はこれに限定されない。
【0041】
このように、計量値欠測補完部17は、スマートメータ6に欠測が生じた場合、欠測の生じた日より前の日に取得された同一時刻のスマートメータ6のSM計量値を欠測に対応する日時のSM計量値とする欠測補完を行う。例えば、計量値欠測補完部17は、欠測の生じた日の前日に取得された同一時刻のスマートメータ6のSM計量値を欠測に対応する日時のSM計量値とする。また、計量値欠測補完部17は、スマートメータ6に欠測が生じた場合、スマートメータ6に対応する需要家の契約電力に基づいて算出した値を欠測に対応する日時のSM計量値としてもよい。
【0042】
図3の説明に戻る。ロードカーブ管理システム1は、センサ開閉器8の力率置換を行う(ステップS4)。詳細には、力率置換部14は、記憶部12に格納されている設備情報、契約情報およびSM計量値を用いて、開閉器計測データにおける力率の計測値を、SM計量値を用いて算出した力率に置換する。
【0043】
図6は、本実施の形態の力率置換の一例を示す図である。
図6では、
図2に示した例と同様の配電系統の一部を示している。
図6に示した例では、センサ開閉器8-1における電圧の計測値が6500[V]であり、センサ開閉器8-1における電流の計測値が250[A]であり、センサ開閉器8-1における力率の計測値が96%である。上述したように、この力率の計測値には、線路損失分が含まれている。このため、力率置換部14は、センサ開閉器8-1に対応する範囲内のスマートメータ6-1~6-3のSM計量値を用いて力率を算出する。センサ開閉器8-1に対応する範囲は、上述した按分範囲と同一である。具体的には、力率置換部14は、センサ開閉器8-1に対応する範囲内のスマートメータ6-1~6-3のそれぞれのSM計量値の有効電力量および無効電力量から、有効電力および無効電力を算出する。そして、力率置換部14は、算出した有効電力の和(範囲内のスマートメータ6に関する和)であるPSと、算出した無効電力の和(範囲内のスマートメータ6に関する和)であるQSとを用いて、下記の式(3)により力率Fを算出する。
F=PS÷√(PS
2+QS
2) …(3)
【0044】
力率置換部14は、記憶部12に格納されている開閉器計測データのうちセンサ開閉器8-1の力率の計測値を、算出した力率Fで置き換える。
図6に示した例では、PSは100[kW]であり、QSは40[kVar]であるため、力率Fは93%となる。このため、力率置換部14は、センサ開閉器8-1の力率の計測値である96%を93%の値に置き換える。
【0045】
図3の説明に戻る。次に、ロードカーブ管理システム1は、電流按分を行い(ステップS5)、処理を終了する。ステップS5では、詳細には、電流按分部15は、記憶部12に格納されている設備情報、契約情報、開閉器計測データおよびSM計量値を用いて、配電系統の各点における電流値を算出し、按分が必要な場合には、
図2を用いて例示したように電流の按分処理を実施する。電流按分部15は、処理によって得られた各点の電流値を電流分布として送信部16へ出力し、送信部16は電流分布を配電線監視制御システム3へ送信する。電流分布は、各点の有効電流および無効電流を含む。
【0046】
なお、
図2を用いて説明した例では、SM計量値がいずれも正の値である例を説明したが、SM計量値には正の値と負の値とが混在すると、正負が相殺されて按分する際の総和が小さくなり実体と乖離する可能性がある。このため、電流按分部15は、ステップS5において、以下に述べる固定化を含む按分処理を行うことで、正の値と負の値とが混在する場合の誤差を低減することができる。
【0047】
図7は、本実施の形態の電流按分部15における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6では1つの按分範囲を示しており、各按分範囲について
図7に示した処理が行われる。電流按分部15は、センサ開閉器8の計測データ、すなわち開閉器計測データからセンサ開閉器8の有効電流IW
Aおよび無効電流IW
Rを算出する(ステップS11)。詳細には、センサ開閉器8によって計測される電流は皮相電流であるため、開閉器計測データにおける電流の計測値IWと、開閉器計測データにおける力率の計測値FWとを用いて、下記の式(4)により有効電流および無効電流を算出する。なお、開閉器計測データにおける力率の計測値FWは、上述したステップS4において置換されているため、上述した力率Fである。
IW
A=IW×FW
IW
R=IW×√(1-FW
2) …(4)
【0048】
次に、電流按分部15は、スマートメータ6の計量値、すなわちSM計量値からスマートメータ6の有効電流および無効電流を算出する(ステップS12)。詳細には、電流按分部15は、SM計量値を用いて算出した有効電力および無効電力を、それぞれスマートメータ6の直近のセンサ開閉器8によって計測された電圧で除すことで、各スマートメータ6の有効電流および無効電流を算出する。
【0049】
次に、電流按分部15は、固定対象符号の判定を行う(ステップS13)。本実施の形態では、電流の按分を行う際に固定対象符号と判定された正負符号の電流値は、按分の対象とせずにそのままの電流値を固定値として用い、固定対象符号と判定されない正負符号の電流値を按分の対象とする。ステップS13では、正負のどちらを固定対象符号とするかを判定する。詳細には、電流按分部15は、按分範囲におけるスマートメータ6のSM計量値における無効電力量の符号が全て同一であるか否かを判定する。そして、電流按分部15は、按分範囲における正の値の無効電力の和と負の値の無効電力の和とを算出し、両者の絶対値である|正の値の無効電力の和|と|負の値の無効電力の和|とを比較し、絶対値の小さい方の正負符号を固定対象符号とする。電流按分部15は、有効電力についても、按分範囲におけるスマートメータ6のSM計量値における有効電力の符号が全て同一ではない場合には、同様に、固定対象符号の判定を行う。
【0050】
次に、電流按分部15は、按分処理の実施条件を満たすか否かを判断する(ステップS14)。詳細には、有効電流と無効電流とのそれぞれに関して、センサ開閉器8の電流の計測値と按分範囲のスマートメータ6の電流値とが整合しているか否かを判断し、有効電流と無効電流との両方について整合している場合、ステップS14でNoと判断し、有効電流と無効電流との少なくとも一方が整合していない場合にステップS14でYesと判断する。より具体的には、按分範囲のスマートメータ6の有効電力、無効電力のそれぞれに関して、正の値と負の値とが混在していない場合には、按分範囲の両端のセンサ開閉器8の電流値の差すなわち各按分範囲の区間電流の値が、当該按分範囲のスマートメータ6の電流値の合計との差の絶対値がしきい値以上であるか否かを判断する。また、正の値と負の値とが混在している場合には、固定分(固定対象符号の電流値の合計)を上乗せした按分範囲の区間電流が、当該按分範囲のスマートメータ6の按分対象の電流値の合計との差の絶対値がしきい値以上であるか否かを判断する。
【0051】
按分処理の実施条件を満たさない場合(ステップS14 No)、電流按分部15は、ステップS12で算出した有効電流および無効電流を各点の電流値とし、処理を終了する。按分処理の実施条件を満たす場合(ステップS14 Yes)、電流按分部15は、按分処理を実施し(ステップS15)、処理を終了する。ステップS15では、有効電流および無効電流のそれぞれに関して、固定対象符号が定められていない場合には、上記式(2)により、按分処理を行う。また、有効電流に関して固定対象符号が定められている場合には、電流按分部15は、固定対象符号の電流値はそのまま固定とし、按分範囲の固定対象符号ではないスマートメータ6の電流値を按分の対象として、上記式(2)と同様に、区間電流に固定分を上乗せした値を按分対象のスマートメータ6に按分する。無効電流に関して固定対象符号が定められている場合も、同様に、固定対象符号の電流値はそのまま固定とし、按分範囲の固定対象符号ではないスマートメータ6の電流値を按分の対象として、上記式(2)と同様に、区間電流に固定分を上乗せした値を按分する。
【0052】
以上のように、本実施の形態の電流按分部15は、力率置換部14によって算出された力率と、センサ開閉器8によって計測された電流とを用いて、センサ開閉器8における有効電流および無効電流を算出し、範囲(按分範囲)ごとに、範囲の各点のSM計量値を用いてセンサ開閉器8における有効電流から算出される範囲に対応する有効電流を各点に按分することにより各点の有効電流を算出する。また、電流按分部15は、範囲の各点のSM計量値を用いてセンサ開閉器8における無効電流から算出される範囲に対応する無効電流を各点に按分することにより各点の無効電流を算出する。
【0053】
また、電流按分部15は、範囲ごとに、SM計量値に基づいて有効電力および無効電力を算出し、範囲におけるスマートメータ6における無効電力の正負符号が同一ではない場合、正の値のスマートメータ6における無効電力の和の絶対値と、負の値のスマートメータ6における無効電力の和の絶対値とのうち小さい方の絶対値に対応する正負符号を固定対象符号とする。そして、電流按分部15は、無効電力を、範囲に対応するセンサ開閉器8によって計測された電圧で除すことにより固定対象符号に対応するスマートメータ6における無効電流である固定対象無効電流を算出する。さらに、電流按分部15は、センサ開閉器8における無効電流から算出される範囲に対応する無効電流に固定対象無効電流を加えた値を、固定対象符号以外の正負符号である按分対象符号の無効電力に基づいて各点に按分する。電流按分部15は、有効電力についても同様に、範囲内のスマートメータ6における有効電力の正負符号が同一ではない場合、正の値のスマートメータ6における有効電力の和の絶対値と、負の値のスマートメータ6における有効電力の和の絶対値とのうち小さい方の絶対値に対応する正負符号を固定対象符号とし、有効電力を、範囲に対応するセンサ開閉器8によって計測された電圧で除すことにより固定対象符号に対応する計量装置における有効電流である固定対象有効電流を算出する。そして、電流按分部15は、センサ開閉器8における有効電流から算出される範囲に対応する有効電流に固定対象有効電流を加えた値を、固定対象符号以外の正負符号である按分対象符号の有効電力に基づいて各点に按分する。
【0054】
図8は、本実施の形態の電流按分部15における処理を説明するための図である。
図8では、
図5に示した例と同様に配電系統におけるセンサ開閉器8-1とセンサ開閉器8-2との間の按分範囲を例示している。
図8に示した例では、
図8の最上段に示すように、スマートメータ6-1のSM計量値から算出された有効電力(
図8では「有」と記載)は300[kW]であり、スマートメータ6-1のSM計量値から算出された無効電力(
図8では「無」と記載)は100[kVar]である。また、スマートメータ6-2のSM計量値から算出された有効電力は400[kW]であり、スマートメータ6-2のSM計量値から算出された無効電力は-40[kVar]であり、スマートメータ6-3のSM計量値から算出された有効電力は300[kW]であり、スマートメータ6-3のSM計量値から算出された無効電力は100[kVar]である。また、センサ開閉器8-1における電圧の計測値は6500[V]であり、センサ開閉器8-1における電圧の計測値は6500[V]であり、センサ開閉器8-1における電流(皮相電流)の計測値は110[A]であり、センサ開閉器8-1における力率の計測値は99%である。
【0055】
図8に示した例では、按分範囲内の正の値の無効電力の和は、200[kVar]であり、按分範囲内の負の値の無効電力の和は-40[kVar]である。|正の値の無効電力の和|が、|負の値の無効電力の和|より大きいため、
図8に示した例では、負が固定対象符号となる。
図8における中段には、ステップS12で算出した有効電流(
図8では「有」と記載)および無効電流(
図8では「無」と記載)を固定対象であるか否かとともに示している。スマートメータ6-1の有効電流は有効電力300[kW]を、√3×6500[V]で除すことにより、26.6[A]となる。同様に、スマートメータ6-1の無効電流は8.9Aとなり、スマートメータ6-2の有効電流は35.5[A]となり、スマートメータ6-2の無効電流は-3.5[A]となり、スマートメータ6-3の有効電流は26.6[A]となり、スマートメータ6-3の無効電流は8.9[A]となる。また、上述したように無効電力の固定対象符号は負であるため、スマートメータ6-2の無効電流は固定対象であり、スマートメータ6-1,6-3の無効電流は按分の対象である。また、
図8の中段に示したように、センサ開閉器8-1における有効電流は108.9[A]となり、センサ開閉器8-1における無効電流は15.5[A]となる。
【0056】
このため、ステップS14では、電流按分部15は、有効電流に関しては、センサ開閉器8-1の有効電流108.9[A]が、スマートメータ6-1~6-3の有効電流の和88.7[A]と整合していないと判断する。また、ステップS14では、電流按分部15は、無効電流に関しても、センサ開閉器8-1の無効電流15.5[A]に固定分であるスマートメータ6-2の無効電流-3.5[A]を上乗せした値、15.5[A]-3.5[A]が、按分対象のスマートメータ6-1,6-3の無効電流の和17.8[A]と整合していないと判断する。したがって、
図8に示した例では、有効電流と無効電流との両方が按分処理の対象となる。
【0057】
このため、ステップS15で按分処理が行われる。
図8の最下段に示すように、有効電流については、上述した式(2)により按分処理が行われ、スマートメータ6-1~6-3の有効電流はそれぞれ32.7[A],43.6[A],32.7[A]となる。また、無効電流に関しては、15.5[A]-3.5[A]が按分対象のスマートメータ6-1,6-3で按分され、スマートメータ6-1,6-3の無効電流は、(15.5[A]-3.5[A])×8.9[A]÷(8.9[A]+8.9[A])=9.6Aとなる。
【0058】
次に、配電線の一時的な切替が発生した場合について説明する。配電線に、一時的な切替により、区間が分割または拡張されたり、設備の所属が変更になったりすることがある。このような場合、一時的な切替が行われている間の開閉器計測データをそのまま電流分布として用いる場合には、一時的な切替が行われている期間の電流分布は求めることができなかった。本実施の形態では、一時的な切替が発生した場合でも、標準的な系統範囲のスマートメータ6のSM計量値を用いて電流分布を算出する。すなわち、電流按分部15は、配電線において一時的な切替が生じた場合、一時的な切替が生じている間のセンサ開閉器8における電流を、当該センサ開閉器8より下流のスマートメータ6のSM計量値と当該センサ開閉器8によって計測された電圧とに基づいて算出する。
【0059】
図9は、一時的な切替が発生する場合の本実施の形態の電流分布の算出方法を説明するための図である。
図9に示した例では、
図2に示した例と同様の配電系統において、一時的な切替が発生する例を示している。
図9の最上段および中段の図では、スマートメータ6の図示を省略しているが、
図9の最下段と同様に、スマートメータ6-1~6-9が配電線に接続されている。
図9の最上段に示すように、例えば、4/6の10:00には、配電線は標準系統であり、4/6の11:00に一時的な切替によりセンサ開閉器8-3が、閉(入)から開(切)へ切り替えられたとする。この場合、切替の影響を受け、センサ開閉器8-1~8-3の電流の計測値が変化する。このため、4/6の11:00については、開閉器計測データは、標準的な系統状態における値ではない。本実施の形態では、センサ開閉器8-1からセンサ開閉器8-4の区間のスマートメータ6-1~6-9のSM計量値を、対応する按分区間のセンサ開閉器8-1~8-3の電圧の計測値で除すことにより、スマートメータ6-1~6-9の電流値を算出する。そして、この電流値を積み上げることでセンサ開閉器8-1~8-3の電流値を算出することができる。例えば、スマートメータ6-7~6-9の電流値の和を求めることでセンサ開閉器8-3の電流値-100[A]を算出でき、スマートメータ6-4~6-9の電流値の和を求めることでセンサ開閉器8-2の電流値-200[A]を算出でき、スマートメータ6-1~6-9の電流値の和を求めることでセンサ開閉器8-1の電流値-300[A]を算出できる。このようにして算出された各センサ開閉器8の電流値は、例えば、配電線の負荷状況をマクロ的に把握するために使用することができる。また、これらの電流値を、送電系統を管理している給電制御所などへ連系することで、送電系統の監視や運用計画等に用いることもできる。以上のように、本実施の形態では、一時的な切替が発生したとしても、各センサ開閉器8における電流値を求めることができる。
【0060】
次に、本実施の形態のロードカーブ管理システム1のハードウェア構成について説明する。本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、コンピュータシステム上で、ロードカーブ管理システム1における処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムがロードカーブ管理システム1として機能する。
図10は、本実施の形態のロードカーブ管理システム1を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。
図10に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0061】
図10において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態のロードカーブ管理システム1における処理が記述されたプログラムを実行する。なお、制御部101の一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用ハードウェアにより実現されてもよい。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタ、スピーカなどである。なお、
図10は、一例であり、コンピュータシステムの構成は
図10の例に限定されない。
【0062】
ここで、本実施の形態のプログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、コンピュータプログラムが記憶部103にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、記憶部103から読み出されたプログラムが記憶部103の主記憶領域に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態のロードカーブ管理システム1としての処理を実行する。
【0063】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、ロードカーブ管理システム1における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0064】
本実施の形態のプログラムは、例えば、コンピュータシステムに、配電線の範囲ごとに、範囲に接続されるスマートメータ6によって計量された需要家の電力量の計量値を用いて力率を算出するステップ、を実行させる。また、本実施の形態のプログラムは、算出された力率と、センサ開閉器8によって計測された電流とを用いて、センサ開閉器8における有効電流および無効電流を算出し、範囲ごとに、範囲の各点の計量値を用いてセンサ開閉器8における有効電流から算出される範囲に対応する有効電流を各点に按分することにより各点の有効電流を算出するとともに、範囲の各点の計量値を用いてセンサ開閉器8における無効電流から算出される範囲に対応する無効電流を各点に按分することにより各点の無効電流を算出するステップ、をコンピュータシステムに実行させる。
【0065】
図1に示した按分範囲拡張部13、力率置換部14、電流按分部15および計量値欠測補完部17は、
図10に示した記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムが
図10に示した制御部101により実行されることにより実現される。
図1に示した按分範囲拡張部13、力率置換部14、電流按分部15および計量値欠測補完部17の実現には、
図10に示した記憶部103も用いられる。
図1に示した受信部11および送信部16は、
図10に示した通信部105により実現される。
図1に示した記憶部12は、
図10に示した記憶部103の一部である。また、ロードカーブ管理システム1は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。例えば、ロードカーブ管理システム1は、クラウドコンピュータシステムにより実現されてもよい。
【0066】
また、
図1に示した配電業務総合支援システム2および配電線監視制御システム3も、
同様に、例えば、
図10に示した構成のコンピュータシステムにより実現される。
図1に示した受信部21および送信部23は、
図10に示した通信部105により実現される。
図1に示した記憶部22は、
図10に示した記憶部103の一部である。
【0067】
以上述べたように、本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、按分範囲ごとに、スマートメータ6の計量値を用いて力率を算出し、算出した力率とセンサ開閉器8によって計測された電流値とを用いてセンサ開閉器8の有効電流および無効電流を算出する。そして、本実施の形態のロードカーブ管理システム1は、按分範囲ごとに、センサ開閉器8の有効電流に基づく按分範囲の電流値を、スマートメータ6の計量値を用いて按分範囲の各スマートメータ6に按分することにより算出する。ロードカーブ管理システム1によって算出された各点の電流値である電流分布を用いると、簡易電圧降下計算により配電系統の電圧降下の量であるΔVを求めることができる。このため、本実施の形態では、潮流計算を行う必要が無く、需要家の電力量の計量値を利用した配電系統の監視制御の処理負荷を軽減することができる。また、スマートメータ6の計量値を用いて力率を算出するため、センサ開閉器8によって計測された力率を用いる場合に比べて、ΔVの算出精度を向上させることができる。
【0068】
実施の形態2.
図11は、実施の形態2にかかる配電系統管理システムの構成例を示す図である。本実施の形態の配電系統管理システム5aは、配電業務総合支援システム2の代わりに配電業務総合支援システム2aを備える以外は、実施の形態1の配電系統管理システム5と同様である。配電業務総合支援システム2aは、期間最大電流算出部24が追加される以外は実施の形態1の配電業務総合支援システム2と同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態と異なる点を主に説明する。
【0069】
実施の形態1では、SM計量値を用いて電流分布を算出する例を説明した。一方、SM計量値を用いて算出される電流値の数は膨大であり、そのまま利用すると、配電線監視制御システム3における最大電圧降下計算処理、最大通過電流算出処理に時間がかかる。なお、最大通過電流算出処理は、配電設備を通過する電流が、配電設備の許容値を超えていないかを確認するために、通過電流を算出する処理である。
【0070】
このため、本実施の形態では、配電業務総合支援システム2aの期間最大電流算出部24が、期間ごとに、供給範囲(配電線単位)の電流値の合計値の最大値を算出する。期間は、例えば、1か月(30日)または1年(365日)であるが、これに限定されない。この最大値の算出方法は、例えば、最大電圧降下計算処理のための第1の方法と、最大通過電流の算出のための第2の方法と、の2つにより行われる。
【0071】
図12は、本実施の形態の第1の方法による最大値の算出の一例を示す図である。
図12に示した例では、図の簡略化のため供給範囲においてスマートメータ6-1~6-3の3つのスマートメータが設けられる例を示しているが、供給範囲のスマートメータ6の数はこれに限定されない。
図12の左側は、電流分布情報として格納されている各点の有効電流および無効電流から算出される皮相電流の電流値であり、右側は、期間最大電流算出部24が算出した最大電流を示す最大電流情報を示している。供給範囲合計電流値Itは、区間内の有効電流の和(
図12に示した例ではSM6-1~SM6-3の有効電流の和)をIaとし、区間内の無効電流の和(
図12に示した例ではSM6-1~SM6-3の無効電流の和)をIbとするとき、下記の式(5)により算出される。
It=√(Ia
2+Ib
2) …(5)
【0072】
第1の方法では、時間断面すなわち1日における時刻が同一の1か月分の供給範囲合計電流値のうちの最大値が抽出される。例えば、時間断面0:00の2021/8/1~2021/8/31の電流値201のうち最も大きいものは2021/8/2の74[A]であるとし、時間断面0:30の2021/8/1~2021/8/31の電流値202のうち最も大きいものは2021/8/30の100[A]であるとする。この場合、
図12の右側に示したように、期間最大電流算出部24は、最大電圧降下計算処理のための最大電流として、時間断面0:00については、2021/8/2のスマートメータ6-1~6-3の電流値および供給範囲合計電流値を抽出し、時間断面0:30については、2021/8/30のスマートメータ6-1~6-3の電流値および供給範囲合計電流値を抽出する。このように、第1の方法では、時間断面ごとの、供給範囲合計電流が最大値となる日を基準日とし、基準日の電流値を期間の最大電流として抽出する。
【0073】
このように、期間最大電流算出部24は、電流分布である各点の電流を用いて、配電線単位での電流の合計値を算出し、時刻ごとの定められた期間における合計値の最大値を電圧降下の算出のための最大電流とする。
【0074】
図13は、本実施の形態の第2の方法による最大値の算出の一例を示す図である。
図13に示した例では、図の簡略化のため供給範囲においてスマートメータ6-1~6-3の3つのスマートメータ6が設けられる例を示しているが、供給範囲のスマートメータ6の数はこれに限定されない。
図13の左側は、電流分布情報として格納されている各点の皮相電流の電流値であり、右側は、期間最大電流算出部24が算出した最大電流を示す最大電流情報を示している。第2の方法では、スマートメータ6ごとに、時間断面すなわち1日における時刻が同一の1か月分の最大値が抽出される。例えば、時間断面0:00の2021/8/1~2021/8/31のスマートメータ6-1の電流値204のうち最も大きいものは2021/8/30の32[A]であるとする。また、時間断面0:00の2021/8/1~2021/8/31のスマートメータ6-2の電流値205のうち最も大きいものは2021/8/31の31[A]であるとする。また、時間断面0:00の2021/8/1~2021/8/31のスマートメータ6-3の電流値206のうち最も大きいものは2021/8/2の32[A]であるとする。
【0075】
図13の右側に示したように、この場合、期間最大電流算出部24は、最大通過電流の算出のための最大電流として、時間断面0:00については、2021/8/30のスマートメータ6-1の電流値32[A]と、2021/8/31のスマートメータ6-2の電流値31[A]と、2021/8/2のスマートメータ6-3の電流値32[A]と、を抽出する。図示は省略しているが、上述したように電流分布には各点の有効電流および無効電流が含まれており、抽出した皮相電流に対応する有効電流の区間単位での和をIcとし、抽出した皮相電流に対応する無効電流の区間単位での和をIdとすると、期間最大電流算出部24は、下記式(6)により、各時間断面の供給範囲合計電流値Itを算出する。例えば、
図13に示した例では、時間断面0:00については、2021/8/30 0:00のスマートメータ6-1に対応する有効電流と、2021/8/31 0:00のスマートメータ6-2に対応する有効電流と、2021/8/2 0:00のスマートメータ6-3に対応する有効電流との和をIcとし、2021/8/30 0:00のスマートメータ6-1に対応する無効電流と、2021/8/31 0:00のスマートメータ6-2に対応する無効電流と、2021/8/2 0:00のスマートメータ6-3に対応する無効電流との和をIdとする。
It=√(Ic
2+Id
2) …(6)
【0076】
このように、期間最大電流算出部24は、電流分布である各点の電流を用いて、時刻ごとの、定められた期間における最大値を点ごとに抽出し、抽出した最大値を通過電流の算出のための最大電流とする。
【0077】
第1の方法で算出された最大電流情報および第2の方法で算出された最大電流情報は、送信部23によって、配電線監視制御システム3へ送信される。配電線監視制御システム3は、第1の方法で算出された最大電流情報を用いて最大電圧降下計算処理を行い、第2の方法で算出された最大電流情報を用いて通過電流の算出を行う。これにより、配電線監視制御システム3における処理負荷を軽減することができる。
【0078】
本実施の形態の配電業務総合支援システム2aは、実施の形態1の配電業務総合支援システム2と同様にコンピュータシステムにより実現される。
図11に示した期間最大電流算出部24は、
図10に示した記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムが
図10に示した制御部101により実行されることにより実現される。
図11に示した期間最大電流算出部24の実現には、
図10に示した記憶部103も用いられる。
【0079】
なお、
図11に示した例では、配電業務総合支援システム2aが期間最大電流算出部24を備えるが、期間最大電流算出部24はロードカーブ管理システム1に設けられてもよい。この場合には、ロードカーブ管理システム1の期間最大電流算出部24によって算出された最大電流情報は送信部16により、配電線監視制御システム3へ送信される。
【0080】
また、上述した例では、第1の方法と第2の方法との両方で最大電流を算出したが、いずれか一方のみが行われてもよい。また、上述した例では、実施の形態1で述べた処理によって算出された電流分布における各点の電流値から最大電流を算出したが、本実施の形態の処理は、これに限らず任意の方法で算出された各点の電流値から最大電流を算出する場合に適用可能である。
【0081】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 ロードカーブ管理システム、2,2a 配電業務総合支援システム、3 配電線監視制御システム、4 スマートメータ管理システム、5,5a 配電系統管理システム、6,6-1~6-9 スマートメータ、7 配電用変圧器、8,8-1~8-4 センサ開閉器、11,21 受信部、12,22 記憶部、13 按分範囲拡張部、14 力率置換部、15 電流按分部、16,23 送信部、17 計量値欠測補完部、24 期間最大電流算出部。