(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109152
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピースのエアタービンの羽車、歯科用ハンドピースおよびチェアーユニットシステム
(51)【国際特許分類】
A61C 1/05 20060101AFI20230731BHJP
A61C 1/12 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61C1/05 A
A61C1/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022199814
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022138655
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022041903
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022020854
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052CC02
(57)【要約】
【課題】 歯科医師がエアタービン式の歯科用ハンドピースを用いて、チェアユニットのペダルを操作して虫歯の切削を行う際に、切削用刃具に強い回転力が得られるようにする。
【解決手段】 歯科用ハンドピースの羽車10を、比重6.0のジルコニア(ZrO
2)を材料として構成した。またこの羽車10を備えた歯科用ハンドピース3とした。
更に、チェアーユニットに付属する給気回路の2つの供給口に、別々のゴムチューブを介して接続される第1の接続口51と第2の接続口52とを備え、これ等の接続口を内部にある三又の通気路53を介して第3の接続口50に接続して、昇圧用のアダプタ5とした。そうして第3の接続口50を給気チューブ41を介して、上記羽車10に通ずる給気パイプ4に接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の切削用刃具を回転させるためのエアタービンを備えた筐体と、この筐体に取り付けたエアタービンのための給気通路や排気通路を内蔵するハンドル側筐体とから成る、エアタービン式の歯科用ハンドピースの、前記エアタービンが備える羽車であって、この羽車がセラミックス製に成るもの。
【請求項2】
歯の切削用刃具を回転させるためのエアタービンを備えた筐体と、この筐体に取り付けたエアタービンのための給気通路や排気通路を内蔵するハンドル側筐体とから成る、エアタービン式の歯科用ハンドピースの、前記エアタービンが備える羽車であって、この羽車が重金属製に成るもの。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の羽車を備えたエアタービンが内蔵されている、歯科用ハンドピース。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の羽車を備えた歯科用ハンドピースの前記給気通路に、チェアーユニットの給気回路の2つの供給口に接続するための第1の接続口および第2の接続口と、歯科用ハンドピースの給気口に接続するための第3の接続口と、これ等3つの接続口を通気させるための三又の通気路とから成る昇圧用のアダプタの、前記第3の接続口が接続されている、歯科用ハンドピース。
【請求項5】
チェアーユニットの給気回路の2つの供給口に接続するための第1の接続口および第2の接続口と、歯科用ハンドピースの給気口に接続するための第3の接続口と、これ等3つの接続口を通気させるための三又の通気路とから成る、昇圧用のアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエアタービン式の歯科用ハンドピースに用いられる弾み車兼用の羽車、この羽車が組み込まれた歯科用ハンドピース、およびこの歯科用ハンドピースの給気口に取り付ける昇圧用のアダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアタービン式の歯科用ハンドピースは、コンプレッサからの圧搾空気によりエアタービン内部の羽車を高速回転させて、この羽車に一般的には同軸で取り付けられている切削用刃具によって、虫歯の切削や除去を行う器具である。より詳しくは、筐体と、該筐体に内蔵された、歯の切削用刃具が設けられたエアタービンと、この筐体に取り付けた、エアタービンのための給気通路や排気通路などを内蔵するハンドル側筐体と、から成るものが一般的である。さらに洗浄水の噴霧口への洗浄水路や噴霧気路が設けられているものもある。なお噴霧気路に排気通路が接続される構成とする場合もある。
【0003】
上記給気通路の給気口には、コンプレッサからの圧搾空気が、チェアユニットのペダル等を含んで給気量を制御するための給気回路の、供給口に接続された給気チューブを介して供給される。
【0004】
なおエアタービン式の歯科用ハンドピースは、歯科医師の繊細にして絶妙な手業の妨げとならないように、より軽量であることが求められている。このためエアタービン内部の羽車には、例えば比重が2.6~2.8のアルミニウム合金などの軽金属製のものが使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら現実に治療に当る歯科医師が、チェアユニットのペダルを操作して虫歯の切削を行っている内に、切削用刃具の回転がもっとパワフルだったら良いのにと思うような限界に至ることがある。
【0006】
従ってこの発明の課題は、エアタービン式の歯科用ハンドピースの上記限界を破ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決に先立ち当発明者は、切削用刃具に更に強い回転力を加えることが出来るようにするためには、エアタービンの回転軸に、別途弾み車を付加すれば良いと考えたが、弾み車を取り付けるスペースを確保するなど、歯科用ハンドピース側の大幅な改良が必要であるとの知見を得た。或いはチェアユニット側で空気圧を高めるようにすれば良いと思考したが、それにはチェアユニットの大幅な改良が必要であることを知った。歯科用ハンドピース側に於いてもチェアユニット側に於いても、改良には多大なコストが掛かるため、更なる研究が必要であった。
【0008】
而して上記課題は、切削用刃具を回転させるためのエアタービンを備えた筐体と、この筐体に取り付けたエアタービンのための給気通路や排気通路を内蔵するハンドル側筐体とから成る、エアタービン式の歯科用ハンドピースの、前記エアタービンが備える羽車が、セラミックス製または重金属製に成るものとすることによって達成される。エアタービンの羽車をセラミックス製のものや重金属製のものにして弾み車の役目を担わせた点が重要である。
【0009】
すなわちエアタービン式の歯科用ハンドピースに備えられた、従来より用いられて来た軽金属製のタービンの羽車、例えば純粋アルミニウム製(比重2.7)やジュラルミン製(比重2.8)などの各種アルミニウム合金製(比重2.6~2.8)の羽車を取り外して、この発明のセラミックス製(比重3.0~6.0)の羽車に新しく付け替えるのである。あるいはこの発明のセラミックス製の羽車を用いた歯科用ハンドピースを新たに設計しても良い。この発明で利用が可能なセラミックスには、例えば比重3.0のフォルステライト(2MgO・SiO2)、比重3.16の炭化ケイ素(SiC)、比重3.3の窒化ケイ素(Si3N4)、比重3.4の窒化アルミ(AlN)、比重3.8のアルミナ(Al2O3)、比重4.9のイットリア(Y2O3)、比重6.0のジルコニア(ZrO2)、金属複合材料である比重6.0のサーメット(TiC・TiN)を上げる。セラミックを羽車にする複雑形状成形技術が存在している。さらに大きな慣性力を得たいのであれば重金属製の羽車に新しく付け替えると良い。重金属には比重4以上の鉄(比重7.9)、ニッケル(比重8.8)、銅(比重8.9)などを適宜に選択して良い。またこれ等の合金を用いることも可能である。クロム製や鉛製のものであれば、全体に銀やニッケルなどと言った無害な金属による鍍金を施すことが望まれる。あるいはエアタービンの羽車部分を重金属製にして、それ以外の部位をセラミックス製にした構成とすることが可能である。
【0010】
何れにせよこの発明のセラミックス製羽車や重金属製羽車は、エアタービンのこれまでと同じスペースに納めることが出来て、それ自体が弾み車の役割を担い得るものであるために、他に弾み車を必要としない点が特長である。セラミックス製羽車や重金属製羽車は従来の羽車に比して、回転当初こそ幾分回転が重いものの、間もなく力強く頼もしい回転トルクが得られるようになる。従ってセラミックス製の羽車に設けた切削用刃具の回転が従来よりもパワフルなものになるのである。
【0011】
しかしながら、更に高いパワーを必要とするのであれば、次のような解決手段を提供することが出来る。すなわちチェアーユニットの給気回路の2つの供給口に接続するための第1の接続口および第2の接続口と、歯科用ハンドピースの給気口に接続するための第3の接続口と、これ等3つの接続口を通気させるための三又の通気路とから成る、昇圧用のアダプタを提供して、上記第3の接続口を、この発明の歯科用ハンドピースの給気通路に接続するのである。
【0012】
チェアユニットには2つの圧搾空気の供給口があるものが多いが、この場合には各々の供給口に別々に給気チューブを介して歯科用ハンドピースを接続することが出来るため、このチェアユニットには2台のエアタービン式の歯科用ハンドピースを備えることが可能である。従来のこの方式に対して本発明では、2つの圧搾空気の供給口から別々に引いた2本の給気チューブを、昇圧用のアダプタの一方の給気チューブは第1の接続口に、他方の給気チューブは第2の接続口に接続する。そして昇圧用のアダプタの第3の接続口から引いた1本の給気チューブを、この発明の歯科用ハンドピースの給気口に接続するのである。これ等の3つの接続口は、昇圧用のアダプタの内部の三又の通気路で繋がっている。
【0013】
チェアユニットの2つある圧搾空気の供給口の、一方の供給口だけを開けた場合には、歯科用ハンドピースには従来と同様の最大圧力になる圧搾空気が供給される。これに対して両方の供給口を開けた場合には、歯科用ハンドピースには従来の2倍近くの圧力の圧搾空気が供給されることになる。すなわちチェアユニットに大幅な改良を加えずとも、この発明の歯科用ハンドピースに、この発明の昇圧用のアダプタを適用するだけで、切削用刃の回転をよりパワフルなものにすることが出来るのである。
【0014】
このような作用効果を有するのであるから、この発明の昇圧用のアダプタを単独で提供して、従来のエアタービン式の歯科用ハンドピースに用いることには、十分な価値があると認めることが出来る。なお上記第1の接続口と前記第2の接続口との何れか一を選択的に使用するための切り替え手段を内蔵するものとしても良い。極弱い圧搾空気を使用したいと言うような場合があれば、この昇圧用のアダプタの所で、供給口を一つに絞ることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、歯科用ハンドピースのエアタービンにこの発明の羽車を適用するだけで、羽車そのものが弾み車の作用を発揮して、切削用刃具をより力強く回転させることが出来るようになった。
【0016】
またこの発明の歯科用ハンドピースにこの発明の昇圧用のアダプタを適用するだけで、同時に2つの供給口から圧搾空気の供給を受けることが出来るようになり、更に2倍近くの圧力でエアタービンを回転させることが出来るようになった。なおこの発明の昇圧用のアダプタは従来の歯科用ハンドピースにも十分適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1のエアタービン式の歯科用ハンドピースの説明図である。
【
図3】実施例2の昇圧用のアダプタの説明図である。
【
図5】実施例3のエアタービン式の歯科用ハンドピースの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下ではこの発明の実施例を図面に基づいて説明するが、この発明はこれ等に限定されるものではない。
【実施例0019】
図2に表した羽車10は、比重6.0のジルコニア(ZrO
2)を材料として成るものである。切削、焼成、研削と進んで所望の羽車10を得る。この羽車10は回転軸21の上部に形成され、下部には回転軸21と同軸の切削用刃具2が段部22に於いて一体的に形成されている。なお切削用刃具2の先端部にはやすり部20が設けられている。
【0020】
図1に表した歯科用ハンドピース3は、切削用刃具2を回転させるためのエアタービン1を備えた筐体30と、この筐体に取り付けたエアタービン1のための給気通路34や、給水通路35を内蔵するハンドル側筐体31とから成る。切削用刃具2が一体的に設けられた回転軸21に取り付けられているセラミックス製の羽車10は、筐体30内でボールベアリング32によって回転自在である。切削用刃具2は筐体30の底部の開口部33から筐体30外に突出している。
【0021】
ハンドル側筐体31では、給気パイプ4が接続された給気通路34が、エアタービン1の羽車10に向けて設けられている。エアタービン1は排気のために噴霧口36に通じているが、この噴霧口36には、歯の冷却のための水を通す給水通路35が接続され、またこの給水通路35には給水パイプ40が接続されている。すなわちエアタービン1からの排気が給水通路35からの水に合流して、噴霧口36からは霧状の冷却水が放出されるように構成されている。
【0022】
エアタービン1ではセラミックス製の羽車10自体が弾み車の役割を担っており、給気通路34からの圧搾空気により高速回転を行ってパワフルな駆動力を発揮する。なおエアタービン1の排気のための排気専用通路を、ハンドル側筐体31の給気パイプ4に添設するような構成も可能である。
【0023】
この実施例のジルコニア(ZrO2)製の羽車10は、これまでと同じエアタービン1のスペースに納めることが出来、それ自体が弾み車の役割を担い得るものであるために、他に弾み車を必要としない。すなわちこれだけで、力強く頼もしい回転トルクが得られる効果がある。従って羽車10に設けた切削用刃具2の回転も、従来よりもパワフルなものになるのである。
【0024】
なおこの実施例の羽車10のブレードの形状は自由に設計することが可能である。また羽車10と切削用刃具2との段部22に於いて、羽車10に対して切削用刃具2を一体的にではなく別体として構成することが可能である。
【0025】
さて、それ自体が弾み車の役割を有している羽車10であり、これはこれで十分な役割を果たすものではあるが、歯科医師が更に高いパワーを必要とする場合には、この発明では次に説明する実施例2のような解決手段を提供することが出来る。
なおこの実施例の昇圧用のアダプタ5は、この発明のものではない、これまで使用中の従来の歯科用ハンドピースにそのまま適用することが可能である。これにより従来の2倍近くの高圧力でエアタービンを回転させられるため、従来のものであってもパワフルなものにすることが出来る。