(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109160
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】音声出力装置
(51)【国際特許分類】
H04M 1/00 20060101AFI20230731BHJP
H04M 1/21 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H04M1/00 S
H04M1/21 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208314
(22)【出願日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022010098
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519410024
【氏名又は名称】秋葉 美隆
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 美隆
【テーマコード(参考)】
5K023
5K127
【Fターム(参考)】
5K023EE02
5K023EE11
5K023MM04
5K023MM22
5K023PP12
5K023QQ04
5K023QQ05
5K127AA22
5K127BA01
5K127BA03
5K127BB01
5K127BB15
5K127GB64
(57)【要約】 (修正有)
【課題】音声通信装置が備える受話部に設けられ、警告音を確実に出力する音声出力装置を提供する。
【解決手段】互いに離間した第1発話者および第2発話者間での通信回線を介した音声通信を可能とする固定電話機200が備える受話器220に設けられる音声出力装置であって、第1発話者により把持される筐体10と、筐体10に設けられ、受話器220の第1マイク222aを介して第2発話者に向けて警告するための警告音を出力する第2スピーカ20と、筐体10に設けられ、第1発話者により把持されたとき、第1発話者の把持に応じて身体の一部にて押圧するとともに、身体の一部にて押圧したことを感知する感知部30と、筐体10に設けられ、感知部30による感知に基づいて、第2スピーカ20から警告音を出力する出力制御を行う制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間した第1発話者および第2発話者間での通信回線を介した音声通信を可能とする音声通信装置が備える受話部であって、少なくとも前記第1発話者の発話音声を前記受話部に設けられた第1マイクにより集音するとともに、前記第2発話者の発話音声を前記受話部に設けられた第1スピーカにより出力するよう構成された受話部
に設けられる音声出力装置において、
前記受話部に支持され、前記第1発話者により把持される筐体と、
前記筐体に設けられ、前記第1マイクを介して前記第2発話者に向けて警告するための警告音を出力する第2スピーカと、
前記筐体に設けられ、前記第1発話者により把持されたとき、前記第1発話者の把持に応じて身体の一部にて押圧するとともに、前記身体の一部にて押圧したことを感知する感知部と、
前記筐体に設けられ、前記感知部による感知に基づいて、前記第2スピーカから前記警告音を出力する出力制御を行う制御部と、
を備えた
音声出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声出力装置において、
前記筐体は、
前記受話部の一面であって前記第1マイク及び前記第1スピーカが設けられる側とは反対側の面に、対向する第1面を有し、
前記感知部は、
前記筐体における前記第1面とは異なる第2面に設けられた
音声出力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音声出力装置において、
前記筐体は、
前記受話部の一面であって前記第1マイク及び前記第1スピーカが設けられる側とは反対側の面に、対向する第1面を有し、
前記受話部は、
前記受話部における前記第1スピーカから前記第1マイクに向かう軸線方向と直交し且つ前記軸線から遠ざかる方向である第1方向と、前記第1面に対向する一面における前記第1方向の端部である受話部端部と、がそれぞれ規定されるよう構成され、
前記感知部は前記第1方向と逆方向に押圧することで感知する
音声出力装置。
【請求項4】
請求項1に記載の音声出力装置において、
前記筐体は、
前記受話部の一面であって前記第1マイク及び前記第1スピーカが設けられる側とは反対側の面に、対向する第1面を有し、
前記受話部は、
前記受話部における前記第1スピーカから前記第1マイクに向かう軸線方向と直交し且つ前記軸線から遠ざかる方向である第1方向と、前記第1面に対向する一面における前記第1方向の端部である受話部端部と、がそれぞれ規定されるよう構成され、
前記筐体は、前記第1方向における前記筐体の外郭を形成する第1外郭部を有し、
前記第1外郭部に前記感知部を配した
音声出力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の音声出力装置において、
前記感知部は、前記第1方向において前記規定される前記受話部端部よりも前記軸線から遠くに位置する
音声出力装置。
【請求項6】
請求項1に記載の音声出力装置において、
前記受話部の一部を覆い、前記筐体を前記受話部に支持するカバーを備えた
音声出力装置。
【請求項7】
請求項1から6に記載の音声出力装置において、
前記筐体に設けられ、前記発話音声を集音する第2マイクと、
前記筐体に設けられ、前記第2マイクにより集音された前記発話音声を記録する記録部と、
を備え、
前記制御部は、
前記出力制御に加え、前記感知部による感知に基づいて、前記第2マイクにより集音された前記発話音声を記録する記録制御を行う
音声出力装置。
【請求項8】
請求項7に記載の音声出力装置において、
前記第2マイクは、前記第1スピーカから出力された前記発話音声を集音するマイクと前記第1発話者の発話音声を集音するマイクとを各々有する
音声出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声通信を可能とする音声通信装置が備える受話部に設けられる音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、悪意ある発呼者により、音声通信装置を介して行われる詐欺等犯罪行為を、抑制するための技術が知られている。特許文献1は、詐欺電話警報装置を開示している。この装置は、少なくとも、本体部、音声出力部、及び、制御部を備えている。本体部は、電話機の受話器に固定される。音声出力部は、電話をかけてきた発呼者に対して、警告に相当する応答音声(以下、単に警告音とも称呼することもある。)を出力可能となっている。制御部は、本体部の動きが検出された場合、音声出力部に対して、警告音の出力指示を行う。これにより、機械に不慣れな者(例えば、高齢者等)であっても、簡易な操作にて、発呼者に対して警告を促すことができる。
【0003】
また、特許文献2も、詐欺電話警報装置を開示している。この装置は、特許文献1の装置構成に加え、傾斜センサを更に備えている。傾斜センサにより、1軸の傾斜が検知されるようになっている。制御部は、上記傾斜が検知された場合、音声出力部に対して、上記応答音声の出力指示を行う。これにより、上述した特許文献1の効果に加え、例えば、ユーザが受話器を耳にあてる際、受話器を捻る動作を精度良く検出でき、誤作動を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3219600号
【特許文献2】実用新案登録第3222594号
【発明の概要】
【0005】
特許文献1,2に記載の詐欺電話警報装置においては、傾斜センサを備える等により、本体部の傾斜や作動が検出されるようになっている。そして、当該検出により、警告音が出力される。一方で、詐欺電話警報装置が固定される受話器としては、機能やデザインの多様化に応じて、受信待ちの受話器の載置態様は、水平載置であったり、子機として直立載置であったりと、非常に幅広い。
【0006】
受話器を用いて通話する際、ユーザにより受話器を持ち上げる場合の傾斜度合いも様々となる。このため、特許文献1,2に記載の技術にて、警告音を確実に出力させるには、困難な場合が生じる。以上より、様々な態様の受話器においても、警告音を確実に出力できる構成が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、音声通信装置が備える受話部に設けられる音声出力装置において、警告音を確実に出力できるものを提供することにあり、賛同者との協働により当該音声出力装置の効果を広め、ひいてはこの不幸な被害撲滅の一助となることにある。
【0008】
本発明による音声出力装置は、互いに離間した第1発話者および第2発話者間での通信回線を介した音声通信を可能とする音声通信装置が備える受話部に設けられる。
【0009】
前記受話部は、少なくとも前記第1発話者の発話音声を前記受話部に設けられた第1マイクにより集音するとともに、前記第2発話者の発話音声を前記受話部に設けられた第1スピーカにより出力するよう構成される。
【0010】
本発明による音声出力装置の特徴は、前記受話部に支持され、前記第1発話者により把持される筐体と、前記筐体に設けられ、前記第1マイクを介して前記第2発話者に向けて警告するための警告音を出力する第2スピーカと、前記筐体に設けられ、前記第1発話者により把持されたとき、前記第1発話者の把持に応じて身体の一部にて押圧するとともに、前記身体の一部にて押圧したことを感知する感知部と、前記筐体に設けられ、前記感知部による感知に基づいて、前記第2スピーカから前記警告音を出力する出力制御を行う制御部と、が備えられたことにある。
【0011】
本発明によれば、受話部に支持された音声出力装置の筐体は、第1発話者により把持されるようになっている。第1発話者により筐体が把持されたとき、当該把持に応じて、第1発話者の身体の一部にて感知部が押圧されて、押圧したことが感知される。そして、感知部の押圧感知に基づいて、第2スピーカから警告音が出力される。このため、例えば、傾斜センサ等のモーションセンサにより、受話器自体の動きを検出する場合に比して、より確実に警告音を出力できる。
【0012】
特に、第1発話者として機械に不慣れな者(例えば、高齢者等)であっても、特段の操作が不要で、警告音を第2スピーカから出力できる。従って、悪意ある音声通信装置越しの第2発話者に対し、より確実に、警告を促すことができる。
【0013】
本発明に係る音声出力装置においては、前記筐体は、前記受話部の一面であって前記第1マイク及び前記第1スピーカが設けられる側とは反対側の面に、対向する第1面を有し、前記感知部は、前記筐体における前記第1面とは異なる第2面に設けられると、好適である。
また、発明に係る音声出力装置において、前記筐体は、前記受話部の一面であって前記第1マイク及び前記第1スピーカが設けられる側とは反対側の面に、対向する第1面を有し、前記受話部は、前記受話部における前記第1スピーカから前記第1マイクに向かう軸線方向と直交し且つ前記軸線から遠ざかる方向である第1方向と、前記第1面に対向する一面における前記第1方向の端部である受話部端部と、がそれぞれ規定されるよう構成され、前記感知部は前記第1方向と逆方向に押圧することで感知するものであると、好適である。
【0014】
本発明に係る音声出力装置においては、前記筐体は、前記受話部の一面であって前記第1マイク及び前記第1スピーカが設けられる側とは反対側の面に、対向する第1面を有し、前記受話部は、前記受話部における前記第1スピーカから前記第1マイクに向かう軸線方向と直交し且つ前記軸線から遠ざかる方向である第1方向と、前記第1面に対向する一面における前記第1方向の端部である受話部端部と、がそれぞれ規定されるよう構成され、前記筐体は、前記第1方向における前記筐体の外郭を形成する第1外郭部に前記感知部を配したものであると、好適である。
また、本発明に係る音声出力装置においては、前記感知部は、前記第1方向において前記規定される前記受話部端部よりも前記軸線から遠くに位置すると、好適である。
【0015】
本発明に係る音声出力装置においては、前記受話部の一部を覆い、前記筐体を前記受話部に支持するカバーが備えられると、好適である。
【0016】
本発明に係る音声出力装置においては、前記筐体に設けられ、前記発話音声を集音する第2マイクと、前記筐体に設けられ、前記第2マイクにより集音された前記発話音声を記録する記録部と、を備え、前記制御部は、前記出力制御に加え、前記感知部による感知に基づいて、前記第2マイクにより集音された前記発話音声を記録する記録制御を行うと、好適である。
【0017】
本発明に係る音声出力装置においては、前記第2マイクは、前記第1スピーカから出力された前記発話音声を集音するマイクと前記第1発話者の発話音声を集音するマイクとを各々有すると、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る音声出力装置を固定電話機に適用した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための斜視図である。
【
図3】
図1に示す音声出力装置の機能を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す音声出力装置の軸線に沿った縦断面図、及び、当該音声出力装置の底面図である。
【
図5】
図1に示す音声出力装置を適用した受話器をユーザが持ち上げた状態を説明するための図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の変形例に係る音声出力装置を子機に適用した状態を示す斜視図及び側視図である。
【
図7】
図1に示す音声出力装置が用いられる場合の作動を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る音声出力装置を固定電話機に適用した状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための斜視図である。
【
図10】
図8に示す音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【
図11】
図8に示す音声出力装置の機能を示すブロック図である。
【
図12】
図8に示す音声出力装置の軸線に沿った縦断面図、及び、当該音声出力装置の底面図である。
【
図13】
図8に示す音声出力装置が用いられる場合の作動を示すフローチャートである。
【
図14】
図8に示す音声出力装置を適用した受話器をユーザが持ち上げた状態を説明するための図である。
【
図15】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置を子機に適用した状態を示す斜視図及び側視図である。
【
図16】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【
図17】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【
図18】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【
図19】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【
図20】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【
図21】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器をユーザが持ち上げた状態を説明するための図である。
【
図22】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【
図23】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための側視図である。
【
図24】本発明の第2実施形態の変形例に係る音声出力装置及び受話器の位置関係を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による音声出力装置の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<固定電話機の構成>
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る音声出力装置100は、固定電話機(音声通信装置)200に適用される。固定電話機200は、本体210、受話器(受話部)220、及び、コード230を備えている。
【0021】
本体210は、扁平略長方形状の筐体で形成されている。本体210の筐体は、樹脂で構成されている。本体210の頂面右側には、複数のボタン211が配置されている。ボタン211は、ユーザにより押圧されることで、通話先の番号を入力可能となっている。ボタン211は、本第1実施形態では、3個×4個の行列となるよう配置されて、各ボタン211が略円形となっているが、個数、配列、形状等、これに限定されない。
【0022】
受話器220は、一軸的に伸びる略直方体状の筐体で形成されている。受話器220の筐体は、樹脂で構成されている。受話器220は、本体210の頂面左側であってボタン211の左隣に、長軸が設置面に略水平となるよう、載置されている。受話器220の一端部221及び他端部222は、載置状態において、本体210方向(鉛直下方向)にそれぞれ伸長している。一端部221及び他端部222は、それぞれ対応する本体210における凹部と、嵌合可能になっている。これらの嵌合により、受話器220は、載置状態において本体210からずれ落ちることが抑制される。なお、受話器220の載置位置、姿勢等、一端部221及び他端部222の形状等は、これに限定されない。例えば、一端部221及び他端部222は、上述のように伸長せずにフラット形状を呈していてもよい。
【0023】
受話器220の背面223は、載置状態においては受話器220の頂面となり、ユーザにより把持される場合には、ユーザの掌と対向する。背面223は、一端部221から他端部222にかけて、曲率を有している。受話器220の側面224,225は、背面223の左右側から下方向に立設している。また、背面223には、後に詳述する音声出力装置100が支持される。このように構成された受話器220は、載置状態から、音声出力装置100がユーザにより把持されて、音声出力装置100と一体的に容易に持ち上げることができるようになっている。なお、背面223、側面224,225の形状等は、これに限定されない。例えば、背面223は、上述のように曲率を有さず、一端部221から他端部222にかけてストレート形状を呈していてもよい。
【0024】
一端部221には、第1スピーカ221aが内蔵されている。ユーザが、音声出力装置100を把持し受話器220にて通話する際、第1スピーカ221aは、耳元に対向するように、一端部221に配置されている。第1スピーカ221aは、通話先からの発話音声を出力する。他端部222には、第1マイク222aが内蔵されている。ユーザが音声出力装置100を把持して通話する際、第1マイク222aは、口元に対向するように、他端部222に配置されている。第1マイク222aは、ユーザの発話音声を集音する。なお、第1スピーカ221a及び第1マイク222aの配置等は、これに限定されない。第1スピーカ221a及び第1マイク222aは、ある程度離間していれば配置は任意であり、必ずしも両端部に配置されなくてもよい。
【0025】
コード230は、弾性変形可能な螺旋形状に構成されている。コード230は、受話器220の他端部222と、本体210の左側面部と、の間に介装されている。受話器220に内蔵された第1スピーカ221a及び第1マイク222aは、コード230と電気的に接続されている。本体210に内蔵される回路基板は、コード230と電気的に接続されるとともに、モジュラケーブルを介して、外部の電話回線網にも電気的に接続されている。なお、通信態様はこれに限定されない。例えば、本体210及び受話器220の間において、コード230を要さない無線通信が確立されてもよいし、本体210は、LANケーブル又はWi-Fi(登録商標)を介して、外部のインターネット回線網に接続されてもよい。
【0026】
以上のように構成された固定電話機200は、互いに離間した当該固定電話機200のユーザ(第1発話者)および他者(第2発話者)の間での、通信回線を介した音声通信を可能とする。受話器220は、ユーザにより音声出力装置100を介して把持された状態、又は、直接的に把持された状態で、ユーザの発話音声を第1マイク222aにより集音するとともに、他者の発話音声を第1スピーカ221aにより出力するよう構成されている。
【0027】
音声出力装置100は、
図5に示すように、受話器220の一部を覆うことで、筐体10を受話器220に支持するカバー300を備えている。本第1実施形態では、カバー300により、一端部221(第1スピーカ221a)及び他端部222(第1マイク222a)が、カバー300から露出するよう、受話器220が被覆される。カバー300の両端は、筐体10の一部に貫入して固定されている。これにより、音声出力装置100は、受話器220に支持されるようになっている。筐体10はカバー300に覆われず、露出しているため、ユーザが把持可能である。
図5においては感知部30が押圧された状態を示している。感知部30は、押圧されていない状態において
図5に破線により示すように、筐体10から大きく出っ張っているため、ユーザは容易に感知部30を押圧することができる。
【0028】
カバー300による支持の態様は、
図5に記載の状態に限られず、例えば、音声出力装置100が、受話器220の背面223、側面224,225、その他の面等、何れにおいて配置されてもよい。また、カバー300による受話器220及び音声出力装置100の被覆領域は、第1スピーカ221aから出力される音声、第1マイク222aへ集音される音声、及び、第2スピーカ20から出力される音声が、それぞれ遮蔽されない範囲であれば任意である。ここにおいて「音声が遮蔽されない」とは、可聴なように音声が伝播し得ることを、意味している。
【0029】
カバー300は、
図6に示す変形例のように、開口上端310から開口下端320まで連通する筒形状を呈していても良い。カバー300は、伸縮性素材で構成されており、その上下方向長軸の長さは、受話器220の長軸方向の長さよりも短く、音声出力装置100の長軸方向の長さと略同一となっている。なお、カバー300の長軸方向の長さは、上述の被覆領域の範囲に応じて調整可能である。感知部30はカバー300に形成された長孔より露出し、外側に大きく出っ張っている。カバー300には、第3マイク61による集音を阻害しないように、第3マイク61に対応した位置に、内外を連通した空隙又は穴部が形成されている。
【0030】
カバー300にて受話器220及び音声出力装置100を被覆する際、先ず、開口上端310及び開口下端320を径方向に広げ、開口下端320より、一端部221を先端としてカバー300内部に侵入させる。次いで、開口上端310から一端部221を露出させるとともに、径方向に広げた状態のカバー300内部に、開口上端310及び開口下端320のうち何れか一方から、音声出力装置100を進入させる。音声出力装置100を、カバー300内部にて、受話器220と接するよう所定部位に配置した後、カバー300の復元力を利用して、カバー300の内壁を、受話器220及び音声出力装置100の外面とフィットさせる。
図6に示す例によれば、音声出力装置100は、受話器220の背面223に配置された状態で、音声出力装置100及び受話器220は、カバー300の内壁との摩擦力で保持される。このように、音声出力装置100の受話器220への支持は、カバー300にて被覆されることで達成される。
【0031】
カバー300は、開口下端320の近傍の壁面に、貫通孔330を有してもよい。音声出力装置100がカバー300により被覆された状態において、音声出力装置100の第2スピーカ20が、貫通孔330を介して外側に向けて露出するように、貫通孔330が位置すると好適である。なお、貫通孔330は、開口下端320に対応する縁部に設けられる切り欠きであってもよい。
【0032】
カバー300を構成する伸縮性素材としては、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム、NBR、合成ラテックス、エラストマ(TPE、TPR)等の合成高分子系材料や、天然ゴム、天然ラテックス等の天然高分子系材料や、網材や、布材等であってもよく、これに限定されない。また、カバー300の色彩は任意であるが、例えば、受話器220の外観に調和する色彩や、視認透過性等を、素材に備えさせてもよい。また、カバー300の機能性も任意であるが、例えば、把持した際に滑り難い高摩擦性や、把持した際に温かみを感じる低熱伝導性や、外力による衝撃を吸収分散しやすい耐衝撃性や、殺菌・抗菌性等を、素材に備えさせてもよい。
【0033】
なお、本変形例においては、音声出力装置100の受話器220への支持は、両者がカバー300にて被覆されることで達成されるが、これに代えて、受話器220のみカバーにて被覆されて、カバーの外表面に音声出力装置100を接続することで、音声出力装置100が支持されてもよい。また、カバー300が用いられなくてもよい。具体的には、受話器220と音声出力装置100とを接続する接続具や、接着する接着部材などを用いて、音声出力装置100を受話器220に支持してもよい。
【0034】
<音声出力装置の構成>
図1乃至
図5に示すように、音声出力装置100は、筐体10、第2スピーカ20、感知部30、制御部40、記録部50、第2マイク60、及び、音声伝達部70を備えている。また、
図2及び
図4において、前・後方向、左・右方向、上・下方向は、矢印にて示される前・後方向、左・右方向、上・下方向にそれぞれ対応している。
【0035】
樹脂製の筐体10は、略直方体形状を呈しており、上面11、左側面12、及び、下面13が、それぞれ規定される。筐体10の長手方向は、前後方向に対応している。上面11における後方端部であって、左右方向の略中央部位には、第2スピーカ20が設けられている。第2スピーカ20は、筐体10内部に内蔵されたムービングコイル、振動板等を有する汎用的なスピーカである。第2スピーカ20は、制御部40からの電気信号を変換して、音声を上面11から上方向に出力するようになっている。
【0036】
下面13(第1面)とは異なる筐体10の面である左側面12(第2面)には、感知部30が設けられている。四角柱状の感知部30は、左側面12に沿って、前後方向に伸長している。感知部は図示しない弾発付勢材にて往復動(又は枢動)可能に支持され、最も出張った突出位置と最も後退した後退位置の間を移動する。突出位置以外の位置において後述する制御部40が作動信号を受ける。感知部30は、ユーザにより筐体10が把持されたとき、把持に応じてユーザの身体の一部にて押圧されて、当該押圧したことを感知するようになっている。感知部30は、静電容量式のタッチセンサ、荷重を感知するロードセル、押圧式の物理スイッチ(プッシュボタンなど)等であり、ユーザにより押圧されたとき、検出した電気信号を制御部40に送出するようになっている。感知部30は、本第1実施形態では、左側面12に配置されて、略矩形状となっているが、個数、配列、形状等、これに限定されない。
【0037】
また、感知部30においては、ユーザにより容易に操作可能なよう、例えば、左側面12に占める押圧面積を比較的大きくし、変形例のようにカバー300にて覆われた場合であっても押圧感知可能なように構成してもよい。また、感知部30がカバー300にて覆われる場合、感知部30が視認容易となるように、カバー300の色彩を透過色とし、感知部30に視認可能な色彩を付してもよい。また、意匠上の違和感を抑制するよう、感知部30を、左側面12と面一となる構造としてもよい。
【0038】
本第1実施形態では、感知部30が、左側面12に設けられているが、これに限定されず、ユーザが筐体10を介して受話器220を持ち上げる際、筐体10が把持されるのとともに、ユーザの手指や掌等が、感知部30の外表面を押圧(接触)できればよい。従って、下面13とは異なる筐体10の何れの面に、感知部30が設けられてもよい。
【0039】
図2(a)の斜視図、及び、
図5の正面図に示すように、筐体10は、下面13(第1面)が背面223の一面と接するように、設置される。
図2(b)の斜視図に示すように、受話器220においては、領域A、軸線K、及び、受話器端部AL,AR(受話部端部)が、それぞれ規定される。領域Aは、背面223の一部であり、下面13と対向する一面である。換言すると、下面13は、受話器220において、第1マイク222a及び第1スピーカ221aが設けられる面とは反対側の背面223における領域Aに、対向する。軸線Kは、第1スピーカ221aから第1マイク222aに向かう方向の軸であり、軸線Kの方向は、前後方向に対応している。受話器端部AL,ARは、領域Aにおける、軸線Kの方向と直行し且つ軸線Kから遠ざかる方向(第1方向、左右方向に対応)の端部である。即ち、受話器端部ALは、領域Aの左端部であり、受話器端部ARは、領域Aの右端部である。
図5に示すように、受話器220の幅よりも、筐体10の幅の方が大きい。
【0040】
本第1実施形態においては、筐体10が受話器220に支持された状態において、下面13及び領域Aが互いに接触するようになっているが、これに代えて、下面13及び領域Aの間に、所定部材を介装させてもよい。介装する所定部材としては、例えば、下面13及び領域A間の振動伝播を促進する観点では、所定部材の音響インピーダンスを、筐体10及び受話器220の材料のものに近づけると、有効である。一方、当該振動伝播を抑制する観点では、所定部材の音響インピーダンスを、筐体10及び受話器220の材料のものと異ならせると、有効である。
【0041】
制御部40及び記録部50は、筐体10内部に内蔵されている。制御部40は、マイコン、電気回路等を有し、記録部50は、メモリ、電気回路等を有している。
【0042】
機能ブロック図である
図3に示すように、制御部40は、第2スピーカ20、感知部30、記録部50、第2マイク60、第3マイク61、及び、これらの駆動源となるバッテリ(図示せず)と、それぞれ電気的に接続されている。バッテリは、ボタン電池等のように交換可能なものでもよいし、交換不要な充電式バッテリでもよい。また、バッテリの搭載に代えて、固定電話機200への給電を分岐させて、分岐したものを駆動用電源としてもよい。制御部40は、感知部30から送出された電気信号を受けて、第2スピーカ20を介した音声出力と、第2マイク60、第3マイク61を介した記録部50での音声記録と、を制御するようになっている。即ち、制御部40は、感知部30にて押圧感知された場合に、制御処理として、第2スピーカ20への音声出力と、記録部50への音声記録と、を指示する。
【0043】
記録部50のメモリには、第2スピーカ20にて出力される音声に対応する第1音声データ、プログラム等が記憶されており、制御部40のマイコンにより読み出し、参照が可能となっている。また、記録部50は、制御部40及びインターフェイスを介して第2マイク60と電気的に接続されており、第2マイク60により集音された発話音声に対応する第2音声データを、メモリにて記録可能に構成されている。第2マイクは相手の音声を収音するのに対し、第3マイク61は使用者の音声を収音する。第2マイク60は構成上、使用者の音声を集音しにくいため、第3マイク61は使用者の口元の近く(第1マイクの近く)に配置する。感知部30を押圧して後退位置の状態でも
図4及び
図5に示すように段差があり、身体の一部で第3マイク61がふさがれることはない。使用者の肉声を録音できるのでメモ取りの代用となる機能を果たす。
【0044】
上記第1音声データは、固定電話機200越しの他者(第2発話者)に向けて警告するための警告音に対応するデータである。当該警告音は、例えば、悪意を挫くための文言の音声等であり、具体的には「通話は全て録音されています」、「ただ今通報中」など、これらに限定されない。なお、出力される警告音は、1種類のみでもよいし、複数種類でもよい。警告音を複数種類とする場合、例えば、複数の第1音声データを予め記録部50のメモリに記憶しておき、感知部30の押圧時間の長さや押圧回数等に応じて、出力する警告音を選択・切替できるようにしてもよい。また、これに代えて、感知部30が、音声データの種類と同数のボタンを備え、複数の音声データに対応する各ボタンを押し分けることで、上記出力音声の切替を指示するようにしてもよい。
【0045】
上記第2音声データは、固定電話機200越しの他者(第2発話者)の発話音声であって、第1スピーカ221aから出力されて第2マイク60にて集音される音声と、第3マイク61にて集音されるユーザ(第1発話者)の発話音声であって、第2マイク60にて集音される音声と、第3マイク61にて集音される音声に対応するデータである。記録部50に記録された第2音声データは、メモリから抽出可能となっており、別の音声再生装置等を用い再生可能でもよいし、図示しない操作部の操作により第2スピーカ20からの出力でもよい。
【0046】
上記プログラムは、感知部30の押圧感知に応じて、第1音声データの音声出力の実行、及び、第2音声データの音声記録の実行が、制御部40により達成されるようになっている。
【0047】
図4(a)は、
図2(a)の軸線Kに沿って切断された音声出力装置100の縦断面図である。
図4(b)は、音声出力装置100の底面図である。第2マイク60、及び、音声伝達部70は、筐体10内部に配置されている。音声伝達部70は、リム部70a、ダイヤフラム部71、及び、パイプ部72を備えている。リム部70aは、下面13略中央部よりも前側の円形貫通孔13aにおける縁部位に配設されている。ダイヤフラム部71は、筐体10の下面13に配したリム部70aを介し、下面13の円形貫通孔13aから露出しつつ受話器220の領域Aと接続される。パイプ部72の一端は、ダイヤフラム部71に接続されており、パイプ部72の他端は、第2マイク60に接続されている。これにより、第1スピーカ221aからの音声が、受話器220の領域Aから、ダイヤフラム部71で増幅されパイプ部72を伝達して、第2マイク60に到達する。即ち、音声伝達部70は、受話器220に接続され、第1スピーカ221aから出力された発話音声を、第2マイク60まで伝達するようになっている。下面13から露出したリム部70aは前述したカバー300の伸縮力によって確りと受話器220の領域Aの面に密着しており、受話器220からの高効率での収音を可能にしている。
【0048】
<音声出力装置の作動>
音声出力装置100における作動を表すフローチャートである
図7に示すように、本第1実施形態の音声出力装置を固定電話機200に適用した状態において、先ず、ステップ600から開始する。次に、ステップ601にて、固定電話機200に呼び出しがあったか否かが、ユーザにより判定される。固定電話機200に呼び出しがない限り、「No」と判定されて、ステップ601に留まる。一方、固定電話機200に呼び出しがあった場合、「Yes」と判定されて、ステップ602に進む。
【0049】
ステップ602にて、ユーザにより本体210から受話器220が持ち上げられ、一端部221及び他端部222を、それぞれ耳元及び口元に位置させる。
図10に示すように、音声出力装置100の筐体10においては、左側端部13Lが、受話器端部ALより左方向側に位置し、右側端部13Rが、受話器端部ARよりも右方向側に位置する。このため、
図14に示すように、ユーザが受話器220を持ち上げようとする際、筐体10のみ、又は、筐体10を含みつつ受話器220を把持せざるを得なくなる。つまり、筐体10以外の箇所は、一端部221又は、他端部222となり、狭い領域を安定して把持できないので、心理的にその箇所を避けて、筐体10を含んだ把持となる。筐体10を把持すると、ユーザの把持力をもって手指にて感知部30を押圧することになる。
【0050】
次に、ステップ603にて、感知部30が押圧されたことを感知して、制御部40は、第1音声データの音声出力、及び、第2音声データの音声記録を開始する。
【0051】
次に、ステップ604にて、ユーザ及び固定電話機200越しの他者の間で会話が実施される。この際、第2スピーカ20から、第1音声データに対応する警告音が出力される。第2スピーカ20から出力された警告音は、ユーザの掌等に反響して、第1マイク222aに到達する。当該到達した警告音は、第1マイク222aにて集音されて、ユーザの発話音声とともに、固定電話機200越しの他者へ送信される。これと同時に、第1スピーカ221aから出力された発話音声は、音声伝達部70により伝達されて、第2マイク60に到達する。当該到達した発話音声は、第2マイク60にて集音されて、第3マイク61にて集音されたユーザの発話音声とともに、第2音声データとして記録部50に記録される。
【0052】
そして、ステップ605にて、ユーザ及び固定電話機200越しの他者の間で会話を完了し、受話器220を本体210に載置して、把持されていた筐体10からユーザの手が離間する。これにより、感知部30からも手指が離間して、押圧感知されなくなり、制御部40は、第1音声データの音声出力、及び、第2音声データの音声記録を完了する。
【0053】
<第1実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る音声出力装置100によれば、受話器220に支持された音声出力装置100の筐体10は、ユーザ(第1発話者)により把持されるようになっている。ユーザの手により筐体10が把持されたとき、当該把持に応じて、ユーザの身体の一部にて感知部30が押圧されて、押圧したことが感知される。そして、感知部30の押圧感知に基づいて、第2スピーカ20から警告音が出力される。このため、例えば、特許文献1や特許文献2で開示の傾斜センサ等のモーションセンサにより、受話器自体の動きを検出する場合に比して、より確実に警告音を出力できる。
【0054】
特に、ユーザとして機械に不慣れな者(例えば、高齢者等)であっても、特段の操作が不要で、警告音を第2スピーカ20から出力できる。従って、悪意ある固定電話機200越しの他者に対し、より確実に、警告を促すことができる。
【0055】
また、本第1実施形態では特に、筐体10は、受話器220の領域Aと対向する下面13(第1面)を有し、感知部30は、下面13(第1面)とは異なる筐体10の面(第2面)に設けられている。第2面は、ユーザが筐体10を把持した際に、ユーザの手指、掌等の身体の一部にて、押圧され易い部位や、構造上押圧せざるを得ない部位となり得る。これによれば、感知部30を、押圧され易い部位や、構造上押圧せざるを得ない部位に設置できる。従って、筐体10が把持される際に、より確実に感知部30を押圧できる。感知部30が感知する荷重を、受話部を把持するために必要な荷重より低く設定することで、受話部を把持するためにはおのずと設定荷重以上の荷重で把持することとなり、よって感知部は把持時に必ず感知することができる。
【0056】
また、本第1実施形態では特に、筐体10は、受話器220の領域Aと対向する下面13(第1面)を有し、受話器220においては、軸線K、及び、受話器端部AL,ARが、それぞれ規定される。第1面は、左側端部13L(第1端部)及び右側端部13R(第1端部)を有しており、左側端部13Lは、左方向において受話器端部ALよりも、軸線Kから遠ざかるよう(左方向側に)位置する。右側端部13Rは、右方向において受話器端部ARよりも、軸線Kから遠ざかるよう(右方向側に)位置する。これによれば、筐体10を、ユーザにより受話器220が持ち上げられる際に、把持され易く、又は、構造上把持せざるを得ないよう構成することができる。従って、受話器220が持ち上げられる際に、より確実に筐体10を把持できる。
【0057】
また、本第1実施形態の変形例では特に、音声出力装置100は、受話器220の一部と、筐体10の一部とを覆うことで、筐体10を受話器220に支持するカバー300を備えている。これによれば、カバー300により、筐体10を受話器220に、簡易且つ確実に支持できる。特許文献1,2では貼り付けており離脱するリスクがあるが、この離脱するリスクを抑制できる。
【0058】
また、変形例のカバー300は、受話器220及び筐体10を把持し易くしたり、受話器220及び筐体10を保護したり、意匠性を向上させる等の役割を達成しつつ、筐体10を受話器220に支持する構造をとり得る。筐体10を支持するカバー300の構造は任意であるが、例えば、カバー300で筐体10を受話器220ごと被覆したり、受話器220を被覆したカバー300に筐体10を締結させることができる。この様なカバー300の構造をとりつつ、例えば、第2スピーカ20に対応する部位に、貫通孔330を有してもよい。
【0059】
従って、本第1実施形態の効果として、筐体10を受話器220にて確実に支持でき、且つ、貫通孔330により警告音が遮られ難いカバー300を実現できる。更に、カバー300及び音声出力装置100の他の構成は、廉価な部品・材料を活用できるとともに、簡易な構成をとり得、製造コストを抑制できるため、全体として非常に安価なものとすることができる。
【0060】
また、カバー300は、伸縮性素材にて構成されてもよい。この場合、伸縮性素材の弾性的な復元力を利用でき、受話器220及び筐体10に対して、カバー300の着脱を容易にすることができるとともに、カバー300を一旦着装すると、受話器220及び筐体10に、確実に保持され得る。更に、カバー300を、受話器220及び筐体10に着装する場合、筐体10の受話器220に対する相対配置を、容易に且つ任意回数で、調整および変更することができる。
【0061】
また、本第1実施形態では特に、音声出力装置100は、第1スピーカ221aから出力された発話音声を集音する第2マイク60及びユーザの肉声を収音する第3マイク61と、第2マイク60及び第3マイク61により集音された発話音声を記録する記録部50と、を備える。制御部40は、第2スピーカ20の出力制御に加え、感知部30による感知に基づいて、第2マイク60により集音された発話音声を記録する記録制御を行う。これによれば、感知部30の押圧感知に基づいて、より確実に発話音声を記録できる。従って、悪意ある固定電話機200越しの他者からの発話音声を記録し、確実な証拠保全が可能となる。これに対し、特許文献1,2に記載の警報装置においては、傾斜センサを備える等により、本体部の傾斜や作動が検出されるようになっているが、発話音声を記録する記録制御の停止手段はタイマーである。タイマーの場合、通話の継続又は、終了に関わらず設定時間に達すると強制的に停止するため発話音声記録の過不足や消費電力の無駄が生じ、確実な証拠保全ができない。一方、本第1実施形態は、ユーザが通話中に行う筐体10の把持行為の期間に限定し記録できるので、過不足なく証拠保全され、上記先行技術の問題はない。この点が大きな優位点である。
【0062】
また、本第1実施形態では特に、音声出力装置100は、受話器220に接続され、第1スピーカ221aから出力された発話音声を第2マイク60まで伝達する音声伝達部70を備える。これによれば、第1スピーカ221aから出力された発話音声を、第2マイク60に効率よく伝達できる。従って、第2マイク60にて、感度良く集音できるため、第1スピーカ221aの出力ゲインが小さい場合であっても、ノイズを抑制できる。さらに特許文献1と特許文献2においては、収音部が筐体から別体で延在しており、受話部のスピーカ近傍に張り付けられるため、収音部が受話器使用の邪魔となる。また、離脱しやすい欠点を有していた。本発明の第1実施形態では、収音部を筐体10に内蔵したので先行技術の上述の欠点を解決できる。また、特許文献1,2においては、電話機の操作性を損ねないよう装置の小型化が求められるが、本第1実施形態では筐体10を把持させる特性上、小型化の必要性は限定的である。従い、装置を一定程度大きくできるので、部品の選択肢が広がると共に、配置設計に余裕ができ、結果として製造コストの抑制と信頼性の高い設計が成されることを可能にする。加えて、装置を一定程度大きくできることにより、高齢者には小さすぎて扱いにくいボタン電池ではなく、安価でかつ、扱いやすい単四または単三電池が搭載可能となり、電池切れで作動できない状態で放置されるリスクを抑制できる。
【0063】
以下、本発明による音声出力装置の第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0064】
<固定電話機の構成>
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る音声出力装置100は、固定電話機(音声通信装置)200に適用される。固定電話機200は、上記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0065】
音声出力装置100は、受話器220の一部と、筐体10の一部とを覆うことで、筐体10を受話器220に支持するカバー300を備えている。受話器220は、音声出力装置100と一体的に、カバー300により被覆される。本第2実施形態では、カバー300により、一端部221(第1スピーカ221a)及び他端部222(第1マイク222a)が、カバー300から露出するよう、受話器220及び音声出力装置100が被覆される。これにより、音声出力装置100は、受話器220に支持されるようになっている。
【0066】
カバー300による支持の態様は、
図8に記載の状態に限られず、例えば、音声出力装置100が、受話器220の背面223、側面224,225、その他の面等、何れにおいて配置されてもよい。また、カバー300による受話器220及び音声出力装置100の被覆領域は、第1スピーカ221aから出力される音声、第1マイク222aへ集音される音声、及び、第2スピーカ20から出力される音声が、それぞれ遮蔽されない範囲であれば任意である。ここにおいて「音声が遮蔽されない」とは、可聴なように音声が伝播し得ることを、意味している。
【0067】
カバー300は、開口上端310から開口下端320まで連通する筒形状を呈している。カバー300は、伸縮性素材で構成されており、その上下方向長軸の長さは、受話器220の長軸方向の長さよりも短く、音声出力装置100の長軸方向の長さと略同一となっている。なお、カバー300の長軸方向の長さは、上述の被覆領域の範囲に応じて調整可能である。
【0068】
カバー300にて受話器220及び音声出力装置100を被覆する際、先ず、開口上端310及び開口下端320を径方向に広げ、開口下端320より、一端部221を先端としてカバー300内部に侵入させる。次いで、開口上端310から一端部221を露出させるとともに、径方向に広げた状態のカバー300内部に、開口上端310及び開口下端320のうち何れか一方から、音声出力装置100を進入させる。音声出力装置100を、カバー300内部にて、受話器220と接するよう所定部位に配置した後、カバー300の復元力を利用して、カバー300の内壁を、受話器220及び音声出力装置100の外面とフィットさせる。
図8に示す例によれば、音声出力装置100は、受話器220の背面223に配置された状態で、音声出力装置100及び受話器220は、カバー300の内壁との摩擦力で保持される。このように、音声出力装置100の受話器220への支持は、カバー300にて被覆されることで達成される。
【0069】
カバー300は、開口下端320の近傍の壁面に、貫通孔330を有してもよい。音声出力装置100がカバー300により被覆された状態において、音声出力装置100の第2スピーカ20が、貫通孔330を介して外側に向けて露出するように、貫通孔330が位置すると好適である。なお、貫通孔330は、開口下端320に対応する縁部に設けられる切り欠きであってもよい。
【0070】
カバー300を構成する伸縮性素材としては、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム、NBR、合成ラテックス、エラストマ(TPE、TPR)等の合成高分子系材料や、天然ゴム、天然ラテックス等の天然高分子系材料や、網材や、布材等であってもよく、これに限定されない。また、カバー300の色彩は任意であるが、例えば、受話器220の外観に調和する色彩や、視認透過性等を、素材に備えさせてもよい。また、カバー300の機能性も任意であるが、例えば、把持した際に滑り難い高摩擦性や、把持した際に温かみを感じる低熱伝導性や、外力による衝撃を吸収分散しやすい耐衝撃性や、殺菌・抗菌性等を、素材に備えさせてもよい。
【0071】
なお、本第2実施形態においては、音声出力装置100の受話器220への支持は、両者がカバー300にて被覆されることで達成されるが、これに代えて、受話器220のみカバーにて被覆されて、カバーの外表面に音声出力装置100を接続することで、音声出力装置100が支持されてもよい。また、カバー300が用いられなくてもよい。具体的には、受話器220と音声出力装置100とを接続する接続具や、接着する接着部材などを用いて、音声出力装置100を受話器220に支持してもよい。
【0072】
<音声出力装置の構成>
図8乃至
図12に示すように、音声出力装置100は、筐体10、第2スピーカ20、感知部30、制御部40、記録部50、第2マイク60、及び、音声伝達部70を備えている。なお、
図8及び
図10においては、説明のためにカバー300が図示されていないが、実際には、音声出力装置100及び受話器220は、カバー300に被覆されている。また、
図8、
図10、及び、
図12において、前・後方向、左・右方向、上・下方向は、矢印にて示される前・後方向、左・右方向、上・下方向にそれぞれ対応している。
【0073】
樹脂製の筐体10は、略直方体形状を呈しており、上面11、左側面12、及び、下面13が、それぞれ規定される。筐体10の長手方向は、前後方向に対応している。上面11における後方端部であって、左右方向の略中央部位には、第2スピーカ20が設けられている。第2スピーカ20は、筐体10内部に内蔵されたムービングコイル、振動板等を有する汎用的なスピーカである。第2スピーカ20は、制御部40からの電気信号を変換して、音声を上面11から上方向に出力するようになっている。
【0074】
下面13(第1面)とは異なる筐体10の面である左側面12(第2面)には、感知部30が設けられている。矩形状の感知部30は、左側面12に沿って、前後方向に伸長している。感知部30は、ユーザにより筐体10が把持されたとき、把持に応じてユーザの身体の一部にて押圧されて、当該押圧したことを感知するようになっている。感知部30は、静電容量式のタッチセンサ、荷重を感知するロードセル、押圧式の物理スイッチ(プッシュボタンなど)等であり、ユーザにより押圧されたとき、検出した電気信号を制御部40に送出するようになっている。感知部30は、本第2実施形態では、左側面12に配置されて、略矩形状となっているが、個数、配列、形状等、これに限定されない。
【0075】
また、感知部30においては、ユーザにより容易に操作可能なよう、例えば、左側面12に占める押圧面積を比較的大きくし、カバー300にて覆われた場合であっても押圧感知可能なように構成してもよい。また、感知部30がカバー300にて覆われる場合、感知部30が視認容易となるように、カバー300の色彩を透過色とし、感知部30に視認可能な色彩を付してもよい。また、感知部30の配置部位に対応して、カバー300に貫通孔を設け、感知部30がカバー300から露出するようにしてもよい。更に、押圧の感触を確認し易いよう、感知部30を、左側面12よりある程度突出する構造としてもよいし、意匠上の違和感を抑制するよう、感知部30を、左側面12と面一となる構造としてもよい。
【0076】
本第2実施形態では、感知部30が、左側面12に設けられているが、これに限定されず、ユーザが筐体10を介して受話器220を持ち上げる際、筐体10が把持されるのとともに、ユーザの手指や掌等が、感知部30の外表面を押圧(接触)できればよい。従って、下面13とは異なる筐体10の何れの面に、感知部30が設けられてもよい。
【0077】
図8(a)の斜視図、及び、
図10の正面図に示すように、筐体10は、下面13(第1面)が背面223の一面と接するように、設置される。
図9(b)の斜視図に示すように、受話器220においては、領域A、軸線K、及び、受話器端部AL,AR(受話部端部)が、それぞれ規定される。領域Aは、背面223の一部であり、下面13と対向する一面である。換言すると、下面13は、受話器220において、第1マイク222a及び第1スピーカ221aが設けられる面とは反対側の背面223における領域Aに、対向する。軸線Kは、第1スピーカ221aから第1マイク222aに向かう方向の軸であり、軸線Kの方向は、前後方向に対応している。受話器端部AL,ARは、領域Aにおける、軸線Kの方向と直行し且つ軸線Kから遠ざかる方向(第1方向、左右方向に対応)の端部である。即ち、受話器端部ALは、領域Aの左端部であり、受話器端部ARは、領域Aの右端部である。
【0078】
図10に示すように、下面13は、左側端部13L(第1端部)及び右側端部13R(第1端部)を有する。筐体10が受話器220に支持された状態において、左側端部13Lは、左方向において受話器端部ALよりも、軸線Kから遠ざかるよう(左方向側に)位置する。右側端部13Rは、右方向において受話器端部ARよりも、軸線Kから遠ざかるよう(右方向側に)位置する。この場合、左右方向において、受話器220の幅よりも、筐体10の幅の方が大きい。
【0079】
本第2実施形態においては、筐体10が受話器220に支持された状態において、下面13及び領域Aが互いに接触するようになっているが、これに代えて、下面13及び領域Aの間に、所定部材を介装させてもよい。介装する所定部材としては、例えば、下面13及び領域A間の振動伝播を促進する観点では、所定部材の音響インピーダンスを、筐体10及び受話器220の材料のものに近づけると、有効である。一方、当該振動伝播を抑制する観点では、所定部材の音響インピーダンスを、筐体10及び受話器220の材料のものと異ならせると、有効である。
【0080】
制御部40及び記録部50は、筐体10内部に内蔵されている。制御部40は、マイコン、電気回路等を有し、記録部50は、メモリ、電気回路等を有している。
【0081】
機能ブロック図である
図11に示すように、制御部40は、第2スピーカ20、感知部30、記録部50、第2マイク60、及び、これらの駆動源となるバッテリ(図示せず)と、それぞれ電気的に接続されている。バッテリは、ボタン電池等のように交換可能なものでもよいし、交換不要な充電式バッテリでもよい。また、バッテリの搭載に代えて、固定電話機200への給電を分岐させて、分岐したものを駆動用電源としてもよい。制御部40は、感知部30から送出された電気信号を受けて、第2スピーカ20を介した音声出力と、第2マイク60を介した記録部50での音声記録と、を制御するようになっている。即ち、制御部40は、感知部30にて押圧感知された場合に、制御処理として、第2スピーカ20への音声出力と、記録部50への音声記録と、を指示する。
【0082】
記録部50のメモリには、第2スピーカ20にて出力される音声に対応する第1音声データ、プログラム等が記憶されており、制御部40のマイコンにより読み出し、参照が可能となっている。また、記録部50は、制御部40及びインターフェイスを介して第2マイク60と電気的に接続されており、第2マイク60により集音された発話音声に対応する第2音声データを、メモリにて記録可能に構成されている。
【0083】
上記第1音声データは、固定電話機200越しの他者(第2発話者)に向けて警告するための警告音に対応するデータである。当該警告音は、例えば、悪意を挫くための文言の音声等であり、具体的には「通話は全て録音されています」、「ただ今通報中」など、これらに限定されない。なお、出力される警告音は、1種類のみでもよいし、複数種類でもよい。警告音を複数種類とする場合、例えば、複数の第1音声データを予め記録部50のメモリに記憶しておき、感知部30の押圧時間の長さや押圧回数等に応じて、出力する警告音を選択・切替できるようにしてもよい。また、これに代えて、感知部30が、音声データの種類と同数のボタンを備え、複数の音声データに対応する各ボタンを押し分けることで、上記出力音声の切替を指示するようにしてもよい。
【0084】
上記第2音声データは、固定電話機200越しの他者(第2発話者)の発話音声であって、第1スピーカ221aから出力されて第2マイク60にて集音される音声と、ユーザ(第1発話者)の発話音声であって、第2マイク60にて集音される音声と、に対応するデータである。記録部50に記録された第2音声データは、メモリから抽出可能となっており、別の音声再生装置等を用い再生可能である。
【0085】
上記プログラムは、感知部30の押圧感知に応じて、第1音声データの音声出力の実行、及び、第2音声データの音声記録の実行が、制御部40により達成されるようになっている。
【0086】
図12(a)は、
図10(a)の軸線Kに沿って切断された音声出力装置100の縦断面図である。
図12(b)は、音声出力装置100の底面図である。第2マイク60、及び、音声伝達部70は、筐体10内部に配置されている。音声伝達部70は、リム部70a、ダイヤフラム部71、及び、パイプ部72を備えている。リム部70aは、下面13略中央部よりも前側の円形貫通孔13aにおける縁部位に配設されている。ダイヤフラム部71は、筐体10の下面13に配したリム部70aを介し、下面13の円形貫通孔13aから露出しつつ受話器220の領域Aと接続される。パイプ部72の一端は、ダイヤフラム部71に接続されており、パイプ部72の他端は、第2マイク60に接続されている。これにより、第1スピーカ221aからの音声が、受話器220の領域Aから、ダイヤフラム部71で増幅されパイプ部72を伝達して、第2マイク60に到達する。即ち、音声伝達部70は、受話器220に接続され、第1スピーカ221aから出力された発話音声を、第2マイク60まで伝達するようになっている。下面13から露出したリム部70aは前述したカバー300の伸縮力によって確りと受話器220の領域Aの面に密着しており、受話器220からの高効率での収音を可能にしている。
【0087】
<音声出力装置の作動>
音声出力装置100における作動を表すフローチャートである
図13に示すように、本第2実施形態の音声出力装置を固定電話機200に適用した状態において、先ず、ステップ600から開始する。次に、ステップ601にて、固定電話機200に呼び出しがあったか否かが、ユーザにより判定される。固定電話機200に呼び出しがない限り、「No」と判定されて、ステップ601に留まる。一方、固定電話機200に呼び出しがあった場合、「Yes」と判定されて、ステップ602に進む。
【0088】
ステップ602にて、ユーザにより本体210から受話器220が持ち上げられ、一端部221及び他端部222を、それぞれ耳元及び口元に位置させる。
図10に示すように、音声出力装置100の筐体10においては、左側端部13Lが、受話器端部ALより左方向側に位置し、右側端部13Rが、受話器端部ARよりも右方向側に位置する。このため、
図14に示すように、ユーザが受話器220を持ち上げようとする際、筐体10のみ、又は、筐体10を含みつつ受話器220を把持せざるを得なくなる。つまり、筐体10以外の箇所は、一端部221又は、他端部222となり、狭い領域を安定して把持できないので、心理的にその箇所を避けて、筐体10を含んだ把持となる。筐体10を把持すると、ユーザの把持力をもって手指にて感知部30を押圧することになる。
【0089】
次に、ステップ603にて、感知部30が押圧されたことを感知して、制御部40は、第1音声データの音声出力、及び、第2音声データの音声記録を開始する。
【0090】
次に、ステップ604にて、ユーザ及び固定電話機200越しの他者の間で会話が実施される。この際、第2スピーカ20から、第1音声データに対応する警告音が出力される。第2スピーカ20から出力された警告音は、ユーザの掌等に反響して、第1マイク222aに到達する。当該到達した警告音は、第1マイク222aにて集音されて、ユーザの発話音声とともに、固定電話機200越しの他者へ送信される。これと同時に、第1スピーカ221aから出力された発話音声は、音声伝達部70により伝達されて、第2マイク60に到達する。当該到達した発話音声は、第2マイク60にて集音されて、ユーザの発話音声とともに、第2音声データとして記録部50に記録される。
【0091】
そして、ステップ605にて、ユーザ及び固定電話機200越しの他者の間で会話を完了し、受話器220を本体210に載置して、把持されていた筐体10からユーザの手が離間する。これにより、感知部30からも手指が離間して、押圧感知されなくなり、制御部40は、第1音声データの音声出力、及び、第2音声データの音声記録を完了する。
【0092】
<第2実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る音声出力装置100によれば、受話器220に支持された音声出力装置100の筐体10は、ユーザ(第1発話者)により把持されるようになっている。ユーザの手により筐体10が把持されたとき、当該把持に応じて、ユーザの身体の一部にて感知部30が押圧されて、押圧したことが感知される。そして、感知部30の押圧感知に基づいて、第2スピーカ20から警告音が出力される。このため、例えば、傾斜センサ等のモーションセンサにより、受話器自体の動きを検出する場合に比して、より確実に警告音を出力できる。
【0093】
特に、ユーザとして機械に不慣れな者(例えば、高齢者等)であっても、特段の操作が不要で、警告音を第2スピーカ20から出力できる。従って、悪意ある固定電話機200越しの他者に対し、より確実に、警告を促すことができる。
【0094】
また、本第2実施形態では特に、筐体10は、受話器220の領域Aと対向する下面13(第1面)を有し、感知部30は、下面13(第1面)とは異なる筐体10の面(第2面)に設けられている。第2面は、ユーザが筐体10を把持した際に、ユーザの手指、掌等の身体の一部にて、押圧され易い部位や、構造上押圧せざるを得ない部位となり得る。これによれば、感知部30を、押圧され易い部位や、構造上押圧せざるを得ない部位に設置できる。従って、筐体10が把持される際に、より確実に感知部30を押圧できる。感知部30が感知する荷重を、受話部を把持するために必要な荷重より低く設定することで、受話部を把持するためにはおのずと設定荷重以上の荷重で把持することとなり、よって感知部は把持時に必ず感知することができる。
【0095】
また、本第2実施形態では特に、筐体10は、受話器220の領域Aと対向する下面13(第1面)を有し、受話器220においては、軸線K、及び、受話器端部AL,ARが、それぞれ規定される。第1面は、左側端部13L(第1端部)及び右側端部13R(第1端部)を有しており、左側端部13Lは、左方向において受話器端部ALよりも、軸線Kから遠ざかるよう(左方向側に)位置する。右側端部13Rは、右方向において受話器端部ARよりも、軸線Kから遠ざかるよう(右方向側に)位置する。これによれば、筐体10を、ユーザにより受話器220が持ち上げられる際に、把持され易く、又は、構造上把持せざるを得ないよう構成することができる。従って、受話器220が持ち上げられる際に、より確実に筐体10を把持できる。
【0096】
また、本第2実施形態では特に、音声出力装置100は、受話器220の一部と、筐体10の一部とを覆うことで、筐体10を受話器220に支持するカバー300を備えている。これによれば、カバー300により、筐体10を受話器220に、簡易且つ確実に支持できる。特許文献1,2では貼り付けており離脱するリスクがあるが、この離脱するリスクを抑制できる。
【0097】
また、カバー300は、受話器220及び筐体10を把持し易くしたり、受話器220及び筐体10を保護したり、意匠性を向上させる等の役割を達成しつつ、筐体10を受話器220に支持する構造をとり得る。筐体10を支持するカバー300の構造は任意であるが、例えば、カバー300で筐体10を受話器220ごと被覆したり、受話器220を被覆したカバー300に筐体10を締結させることができる。この様なカバー300の構造をとりつつ、例えば、第2スピーカ20に対応する部位に、貫通孔330を有してもよい。
【0098】
従って、本第2実施形態の効果として、筐体10を受話器220にて確実に支持でき、且つ、貫通孔330により警告音が遮られ難いカバー300を実現できる。更に、カバー300及び音声出力装置100の他の構成は、廉価な部品・材料を活用できるとともに、簡易な構成をとり得、製造コストを抑制できるため、全体として非常に安価なものとすることができる。
【0099】
また、カバー300は、伸縮性素材にて構成されてもよい。この場合、伸縮性素材の弾性的な復元力を利用でき、受話器220及び筐体10に対して、カバー300の着脱を容易にすることができるとともに、カバー300を一旦着装すると、受話器220及び筐体10に、確実に保持され得る。更に、カバー300を、受話器220及び筐体10に着装する場合、筐体10の受話器220に対する相対配置を、容易に且つ任意回数で、調整および変更することができる。
【0100】
また、本第2実施形態では特に、音声出力装置100は、第1スピーカ221aから出力された発話音声を集音する第2マイク60と、第2マイク60により集音された発話音声を記録する記録部50と、を備える。制御部40は、第2スピーカ20の出力制御に加え、感知部30による感知に基づいて、第2マイク60により集音された発話音声を記録する記録制御を行う。これによれば、感知部30の押圧感知に基づいて、より確実に発話音声を記録できる。従って、悪意ある固定電話機200越しの他者からの発話音声を記録し、確実な証拠保全が可能となる。これに対し、特許文献1,2に記載の警報装置においては、傾斜センサを備える等により、本体部の傾斜や作動が検出されるようになっているが、発話音声を記録する記録制御の停止手段はタイマーである。タイマーの場合、通話の継続又は、終了に関わらず設定時間に達すると強制的に停止するため発話音声記録の過不足や消費電力の無駄が生じ、確実な証拠保全ができない。一方、本第2実施形態は、ユーザが通話中に行う筐体10の把持行為の期間に限定し記録できるので、過不足なく証拠保全され、上記先行技術の問題はない。この点が大きな優位点である。
【0101】
また、本第2実施形態では特に、音声出力装置100は、受話器220に接続され、第1スピーカ221aから出力された発話音声を第2マイク60まで伝達する音声伝達部70を備える。これによれば、第1スピーカ221aから出力された発話音声を、第2マイク60に効率よく伝達できる。従って、第2マイク60にて、感度良く集音できるため、第1スピーカ221aの出力ゲインが小さい場合であっても、ノイズを抑制できる。さらに特許文献1と特許文献2においては、収音部が筐体から別体で延在しており、受話部のスピーカ近傍に張り付けられるため、収音部が受話器使用の邪魔となる。また、離脱しやすい欠点を有していた。本発明の第2実施形態では、収音部を筐体10に内蔵したので先行技術の上述の欠点を解決できる。また、特許文献1,2においては、電話機の操作性を損ねないよう装置の小型化が求められるが、本第2実施形態では筐体10を把持させる特性上、小型化の必要性は限定的である。従い、装置を一定程度大きくできるので、部品の選択肢が広がると共に、配置設計に余裕ができ、結果として製造コストの抑制と信頼性の高い設計が成されることを可能にする。加えて、装置を一定程度大きくできることにより、高齢者には小さすぎて扱いにくいボタン電池ではなく、安価でかつ、扱いやすい単四または単三電池が搭載可能となり、電池切れで作動できない状態で放置されるリスクを抑制できる。
【0102】
<変形例>
上述した第2実施形態に係る音声出力装置100は、本体210に載置可能な受話器220に支持されるようになっているが(
図8を参照)、これに代えて、例えば、固定電話機200が子機(受話部)240を備え、当該子機240に音声出力装置100が支持されるようにしてもよい。
【0103】
図15に示すように、子機240は、1軸的に伸びる略直方体状の筐体で形成されている。子機240の筐体は、樹脂で構成されている。なお、子機240において、本体210及び受話器220がそれぞれ備える構成要素と同一・等価なものについては、同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0104】
図15(a)及び
図15(b)は、子機240の斜視図及び側視図を示している。子機240は、水平面に対して、直立して載置可能なよう構成されている。子機240を水平面に載置する場合には、第1スピーカ221a側の一端部221を上方に向け、第1マイク222a側の他端部222を底面として水平面に接地させる。また、子機240は、本体210から離間して、本体210と無線通信可能となっている。
【0105】
音声出力装置100は、例えば、子機240の背面223に配置されてもよい。この変形例の場合にも、感知部30の押圧感知に基づいて、第2スピーカ20から警告音が出力される。このため、例えば、傾斜センサ等のモーションセンサにより、受話器自体の動きを検出する場合に比して、より確実に警告音を出力できる。仮に、子機240に傾斜センサを設け、傾斜動作を検出するようにした場合には、子機240を持ち上げる際の傾斜度合いは大きくないため、傾斜動作の検出が困難になる場合がある。この変形例によれば、傾斜度合いに関係なく、確実に警告音を出力できる点で、優位である。
【0106】
また、上述した第2実施形態に係る音声出力装置100においては、筐体10の左側端部13Lは、左方向において受話器端部ALよりも、軸線Kから遠ざかるよう(左方向側に)位置し、筐体10の右側端部13Rは、右方向において受話器端部ARよりも、軸線Kから遠ざかるよう(右方向側に)位置する(
図10を参照)。これに代えて、例えば、
図16乃至
図20に示すように、筐体10の左側端部13L、右側端部13Rの位置をそれぞれ変更してもよい。なお、
図16乃至
図20においては、説明のためにカバー300が図示されていないが、実際には、音声出力装置100及び受話器220は、カバー300に被覆されている。
図16乃至
図20における何れの変形例であっても、上述した第2実施形態と同様に、受話器220が持ち上げられる際に、より確実に筐体10を把持できる。
【0107】
図16に示すように、左方向において、軸線Kから筐体10の左側端部13Lまでの距離と、軸線Kから受話器端部ALまでの距離とが、略同じであってもよい。右方向において、軸線Kから筐体10の右側端部13Rまでの距離と、軸線Kから受話器端部ARまでの距離とが、略同じであってもよい。この場合、左右方向において、受話器220の幅と、筐体10の幅とが、略同じとなる。
【0108】
図17に示すように、筐体10の左側端部13Lは、左方向において受話器端部ALよりも、軸線Kから遠ざかるよう(左方向側に)位置し、右方向において、軸線Kから筐体10の右側端部13Rまでの距離と、軸線Kから受話器端部ARまでの距離とが、略同じであってもよい。この場合、左右方向において、受話器220の幅より、筐体10の幅の方が大きくなる。
【0109】
図18に示すように、筐体10の左側端部13Lは、左方向において受話器端部ALよりも、軸線Kから遠ざかるよう(左方向側に)位置し、左右方向において、受話器220の幅と、筐体10の幅とが、略同じとなっていてもよい。この場合、筐体10の右側端部13Rは、右方向において受話器端部ARよりも、軸線Kに近づくよう(左方向側に)位置する。
【0110】
図19に示すように、
図18に示す構成から、左右方向において、受話器220の幅より、筐体10の幅の方が小さくなるように、変更してもよい。
【0111】
図20に示すように、
図18に示す構成から、筐体10の左側端部13Lが、受話器220の左側面に沿って、下方向に延出するように構成されてもよい。
【0112】
図21に示すように、筐体10の左側端部13Lと右側端部13Rの間の幅が大きくなることを避けた形態としてもよい。軸線Kからの距離は、受話器端部AL,ARよりも、筐体10の左側端部13L、右側端部13Rは共に近い。筐体10の下面13から上面11までの高さを確保しているため、把持領域は高さ方向(上方向)に十分にある。感知部30は、
図16から
図20と同様に筐体10の側面12に設けており、筐体10を把持することで自ずと感知部30は押圧される。感知部30はカバー300で覆われず外部に露出しているので、押圧力が直接伝達され、感知されやすい。カバー300の端部15は碇形状を成しており、筐体10の係止孔14に嵌入して碇部で抜け止めされ筐体10に支持されている。
【0113】
図22に示すように音声出力装置100の感知部30は筐体10の上面11から筐体の厚み方向(上方向)に延長し、かつ屈曲しては筐体左側面12よりも外側に第1方向に沿って延在させた形態としてもよい。受話器220を把持すると感知部30が身体の一部により軸線K方向つまり、第1方向と逆方向に押圧される。その結果、筐体10内で第1実施形態及び第2実施形態と同様に制御部40による出力制御が成される。感知部30の形状は感知しやすくなるよう自在である。
【0114】
図23に示すように、音声出力装置100の感知部30は筐体10の前側面から筐体の前方向に延長し、かつ屈曲しては筐体左側面12よりも外側に前記第1方向に沿って延在させた形態としてもよい。
【0115】
図24に示すように、左方向において、軸線Kから筐体10の左側端部13Lまでの距離が、軸線Kから受話器端部ALまでの距離より短くても、軸線Kから感知部30の位置は、軸線Kから受話器端部ALまでの距離より遠くにある形態でもよい。把持時に最も外側にある感知部30が軸線K方向つまり、第1方向と逆方向に押圧され、音声出力装置100が作動する。
【符号の説明】
【0116】
10…筐体、12…左側面、13…下面、13L…左側端部、13R…右側端部、14…係止孔、15…端部、20…第2スピーカ、30…感知部、40…制御部、50…記録部、60…第2マイク、61…第3マイク、70…音声伝達部、71…ダイヤフラム部、72…パイプ部、100…音声出力装置、200…固定電話機、220…受話器、221a…第1スピーカ、222a…第1マイク、223…背面、300…カバー、A…領域、AL…受話器端部、AR…受話器端部、K…軸線