(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109179
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】脚立
(51)【国際特許分類】
E06C 1/18 20060101AFI20230731BHJP
E06C 1/397 20060101ALI20230731BHJP
E06C 1/39 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
E06C1/18
E06C1/397
E06C1/39 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010507
(22)【出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022010468
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512098382
【氏名又は名称】ディビーシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】前迫 義幸
【テーマコード(参考)】
2E044
【Fターム(参考)】
2E044AA04
2E044BA04
2E044BA05
2E044BB02
2E044BC23
2E044CA01
2E044CB03
2E044CC01
2E044DA04
2E044DB01
2E044EB01
2E044EC06
2E044EC09
2E044EE13
(57)【要約】
【課題】使用者が安定した姿勢で作業を行うことができ且つ安全に昇り降りできる脚立を提供すること。
【解決手段】脚立1は、第1支柱11及び12の間に複数の第1踏板13が固定された第1脚部10と、第2支柱21及び22の間に複数の第2踏板23が固定された第2脚部20と、第1脚部10の一端側が回動自在に連結されると共に、第2脚部20の一端側が回動自在に連結される天板30と、第1脚部10を天板30に回動自在に連結する第1回動部40と、第2脚部20を天板30に回動自在に連結する第2回動部50と、天板30の側縁に設けられ、天板30の板面から上側に向けて突出する門形の手摺部32と、を備え、第1脚部10と第2脚部20を開脚した使用状態において、第1脚部10の他端側の端部と第2脚部20の他端側の端部とが接地面に支持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に間隔を空けて配置された一対の第1支柱の間に、長手方向に沿って互いに間隔を空けて複数の第1踏板が固定された第1脚部と、
幅方向に間隔を空けて配置された一対の第2支柱の間に、長手方向に沿って互いに間隔を空けて複数の第2踏板が固定された第2脚部と、
前記第1脚部の一端側が回動自在に連結されると共に、前記第2脚部の一端側が回動自在に連結される天板と、
前記第1脚部の一端側を前記天板に回動自在に連結する第1回動部と、
前記第2脚部の一端側を前記天板に回動自在に連結する第2回動部と、
前記天板の側縁に設けられ、前記天板の板面から上側に向けて突出する門形の手摺部と、
を備え、
前記第1脚部と前記第2脚部を開脚した使用状態において、前記第1脚部の他端側の端部と前記第2脚部の他端側の端部とが接地面に支持される脚立。
【請求項2】
前記天板は、板面を法線方向から視た平面視において矩形状であり、幅方向の長さと奥行き方向の長さとの比率が1:07~1:1.5であり、
前記第1脚部の前記第1踏板及び前記第2脚部の前記第2踏板は、板面を法線方向から視た平面視において矩形状であり、幅方向の長さと奥行き方向の長さとの比率がそれぞれ1:1~1:1.3であり、
前記第1踏板の幅方向の両端は、一対の前記第1支柱に固定され、
前記第2踏板の幅方向の両端は、一対の前記第2支柱に固定される請求項1に記載の脚立。
【請求項3】
前記第1脚部の複数の前記第1踏板と前記第2脚部の複数の前記第2踏板とは、高さ方向の位置がそれぞれ異なる請求項1又は2に記載の脚立。
【請求項4】
前記使用状態において、前記第1踏板と前記第2踏板は、高さ方向において10~50mmの間隔を有する請求項1~3までのいずれかに記載の脚立。
【請求項5】
前記手摺部に設けられ、前記第1脚部と前記第2脚部とを閉脚した収納状態において、前記手摺部が接地面側となる使用形態で前記脚立を移動する際に用いられる車輪と、
前記第1脚部及び/又は前記第2脚部の他端側に設けられた把持部と、
を備える請求項1~4までのいずれかに記載の脚立。
【請求項6】
前記把持部は、
前記第1脚部と前記第2脚部とを閉脚した収納状態において、前記第1脚部と前記第2脚部のそれぞれの他端側を連結可能に構成される請求項5に記載の脚立。
【請求項7】
前記手摺部は、使用時に前記天板の板面と間隔を空けて略平行に突出し、収納時に前記天板の板面から回避するテーブルを備える請求項1~6までのいずれかに記載の脚立。
【請求項8】
前記テーブルは、使用時における上面の外周部分の少なくとも一部に側壁を有する請求項7に記載の脚立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚立に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化が進む一方、若年層の人口減少により、高齢者が脚立の上で高所の作業を行う状況が増えている。高齢者の多くは、足腰が衰えていたり、バランス感覚が低下していたりするため、脚立から転落する事故も発生している(例えば、年間8千~1万人程度:2020年調べ)。そこで、脚立を補助的に支持する転倒防止具が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の転倒防止具によれば、脚立を設置する面が傾斜していても、支持部材により脚立を安定的に支持することができる。しかし、脚立自体が安定していても、使用者の足腰が衰えていたり、バランス感覚が低下していたりした場合、脚立上で安定した姿勢で作業を行ったり、安全に昇り降りしたりすることが難しい。例えば、脚立の上でバランスを崩し、転倒防止具の取り付け側とは反対側から転倒してしまうことも考えられる。
【0005】
本発明に係る脚立によれば、使用者が安定した姿勢で作業を行うことができ且つ安全に昇り降りすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、幅方向に間隔を空けて配置された一対の第1支柱の間に、長手方向に沿って互いに間隔を空けて複数の第1踏板が固定された第1脚部と、幅方向に間隔を空けて配置された一対の第2支柱の間に、長手方向に沿って互いに間隔を空けて複数の第2踏板が固定された第2脚部と、前記第1脚部の一端側が回動自在に連結されると共に、前記第2脚部の一端側が回動自在に連結される天板と、前記第1脚部の一端側を前記天板に回動自在に連結する第1回動部と、前記第2脚部の一端側を前記天板に回動自在に連結する第2回動部と、前記天板の側縁に設けられ、前記天板の板面から上側に向けて突出する門形の手摺部と、を備え、前記第1脚部と前記第2脚部を開脚した使用状態において、前記第1脚部の他端側の端部と前記第2脚部の他端側の端部とが接地面に支持される脚立に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用者が安定した姿勢で作業を行うことができ且つ安全に昇り降りできる脚立を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る脚立1の開脚状態を示す斜視図である。
【
図3A】第1踏板13の踏み面に設けられる凹凸形状を説明する図である。
【
図3B】第1踏板13の踏み面に設けられる凹凸形状を説明する図である。
【
図4】第1回動部40の構成を示す部分断面図である。
【
図5】脚立1の高さを1100mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
【
図6】脚立1の高さを1600mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
【
図7】脚立1の高さを2000mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
【
図8】脚立1を手持ちにより移動する形態の一例を示す説明図である。
【
図9】手摺部32の第2の構成を説明する図である。
【
図10】(A)~(B)は、手摺部32の第3の構成を説明する図である。
【
図11】手摺部32の第4の構成を説明する図である。
【
図12】手摺部32の第4の構成を説明する図である。
【
図13A】テーブル35の構成を説明する図である。
【
図13B】テーブル35の構成を説明する図である。
【
図13C】テーブル35の構成を説明する図である。
【
図14】脚立1の高さを500mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
【
図15】脚立1の高さを700mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る脚立の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば、「平行」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ平行、概ねその方向とみなせる範囲を含む。
【0010】
本明細書等では、
図1に示す脚立1の使用状態において、左右方向を奥行き方向X(X1-X2)、上下方向を高さ方向Y(Y1-Y2)、前後方向を幅方向Z(Z1-Z2)として説明する。なお、本明細書においては、脚立1のZ1側を「正面側」、その反対側となるZ2側を「背面側」ともいう。また、本明細書においては、「~方向」を適宜に「~側」ともいう。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る脚立1の開脚状態を示す斜視図である。
図2は、脚立1の閉脚状態を示す正面図である。
図1及び
図2では、例えば、実施品として想定される高さを1100mmの脚立1において、第1踏板13と第2踏板23を、それぞれ3枚配置した例を示すが、同じく実施品として想定される高さ1600mmの脚立1において、第1踏板13と第2踏板23は、それぞれ4枚配置される(後述の
図6参照)。また、同じく実施品として想定される高さ2000mmの脚立において、第1踏板13と第2踏板23は、それぞれ5枚配置される(後述の
図7参照)。実施品として想定される高さの脚立における第1踏板13と第2踏板23との位置関係については、後述する。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態の脚立1は、第1脚部10、第2脚部20、天板30を備える。また、脚立1は、第1回動部40、第2回動部50、開き止め金具60、連結部70等を備える。以下の説明においては、第1脚部10と第2脚部20を開脚した使用状態を「開脚状態」、第1脚部10と第2脚部20を閉脚した収納状態を「閉脚状態」ともいう。また、第1踏板13と第2踏板23を総称して「踏板」ともいう。更に、第1脚部10と第2脚部20を総称して「脚部」ともいう。
【0013】
第1実施形態の脚立1は、使用状態において、第1脚部10の他端側となる下側(Y2側)と第2脚部20の他端側となる下側の端部とが、接地面C(
図4参照)に支持される。すなわち、第1実施形態の脚立1は、使用状態において、両方の脚部が接地面Cに支持されるものであり、梯子のように、いずれか一方の脚部が接地面Cに支持される形態で使用されることはない。
【0014】
第1脚部10は、脚立1を正面側から視て右側(X1側)に設けられる脚部である。第1脚部10は、一対の第1支柱11及び12と、複数枚(本例では、3枚)の第1踏板13とを備える。第1支柱11及び12は、幅方向(Z方向)に間隔を空けて配置される部材である。第1支柱11及び12は、例えば、アルミニュウム製の角パイプにより構成される。第1支柱11及び12の下側(Y2側)の端部には、ゴム製の滑り止めキャップ14が装着されている。後述するように、第1脚部10の一端側となる上側(Y1側)の端部は、第1回動部40により、天板30に回動自在に連結されている。
【0015】
第1踏板13は、使用者が昇降時に足を載せる部材である。第1踏板13は、例えば、アルミニュウム製の板材により箱枠形に構成されている。第1踏板13の幅方向(Z方向)の両端は、第1支柱11及び12に、それぞれリベット15により固定されている。具体的には、第1踏板13は、Z1側の端部が第1支柱11に固定され、Z2側の端部が第1支柱12に固定されている。第1踏板13は、
図1に示す開脚状態において、板面が水平となるように第1支柱11及び12に固定されている。第1踏板13の両端は、第1支柱11及び12に対して、それぞれ2つのリベット15で固定されている(
図1参照)。そのため、第1踏板13の板面は、第1支柱11及び12に対する角度が変わることがなく、開脚状態(
図1)であっても、閉脚状態(
図2)であっても、常に同じ角度を維持する。第1脚部10において、高さ方向(Y方向)における各第1踏板13の間隔については、後述する。
【0016】
第1踏板13は、板面を法線方向(Y方向)から視た平面視において矩形状であり、幅方向(Z方向)の長さW1と奥行き方向(X方向)の長さD1との比率が1:1~1:1.3となるように構成される。例えば、第1踏板13の幅方向の長さW1が400mmであれば、奥行き方向の長さD1は、400mm~520mmの範囲で選択することができる。なお、奥行き方向の長さD1は、足のサイズの1.1~2倍程度とすることが望ましい。脚立の上で作業する人の標準的な足のサイズを240mm~270mmとし、奥行き方向の長さD1を足のサイズの2倍と仮定すると、長さD1は480mm~540mmとなる。このように、奥行方向の長さD1を基準として、幅方向の長さW1を選択してもよい。また、第1踏板13の厚さT1は、例えば、15mm~20mm程度の範囲で選択することができる。第1踏板13の厚さT1は、各段で同じでもよいし、異なっていてもよい。なお、第1踏板13の厚さT1は、上記の例に限定されない。
【0017】
図1には示していないが、第1踏板13において、踏み面となる上側(Y1側)の板面は、滑り止めのための凹凸形状を有する。
図3A及び
図3Bは、第1踏板13の踏み面に設けられる凹凸形状を説明する図である。なお、
図3A及び
図3Bにおいて、踏み面の縦横に対する各形状部分の大きさ、個数等は、図示の例に限定されない。
【0018】
図3Aは、第1踏板13の踏み面に、ハニカム構造の滑り止めを設けた例を示している。
図3Aに示すようなハニカム構造の滑り止めは、例えば、金属板の表面に切削やエッチング処理を施すことにより作製できる。ハニカム構造の滑り止めを、例えば、ゴム、プラスチック等で構成する場合、ハニカム構造の滑り止めシートを踏み面の上に接着してもよい。また、ハニカム構造の滑り止めを、金属で構成する場合、ハニカム構造の滑り止め板を、踏み面の上に接着、ねじ止め等により固定してもよいし、ハニカム構造の滑り止め板自体を第1踏板13としてもよい。
【0019】
図3Bは、第1踏板13の踏み面に、複数のL字形部分(単位形状)からなる滑り止めを設けた例を示している。
図3Bに示す滑り止めは、複数のL字形部分がランダムに配置されている。L字形部分は、断面視において、表面に向けて凸形状となるように構成されている。本例においても、滑り止めを、例えば、ゴム、プラスチック等で形成する場合、滑り止めシートを踏み面の上に接着してもよい。また、滑り止めを、金属板で形成する場合(例えば、金属板にプレス成型で凹凸形状を形成する場合)、凹凸形状を有する滑り止め板を、踏み面の上に接着、ねじ止め等により固定してもよいし、滑り止め板自体を第1踏板13としてもよい。
【0020】
なお、踏み面に設けられる凹凸形状は、上記例に限らず、どのような形状であってもよい。例えば、円形、三角形、四角形、波形等の単位形状を規則的又は不規則に配置した形状であってもよい。後述する第2踏板23及び天板30の板面についても、踏み面に同様に滑り止めのための凹凸形状が設けられている。また、踏み面に凹凸形状を設けない構成としてもよい。
【0021】
第2脚部20は、脚立1において、第1脚部10と反対側の左側(X2側)に設けられる脚部である。第2脚部20は、一対の第2支柱21及び22と、複数枚(本例では、3枚)の第2踏板23とを備える。第1実施形態の脚立1において、第2脚部20の構成は、複数枚の第2踏板23が配置される位置が第1脚部10と相違する。それ以外の構成は、実質的に第1脚部10と同じである。すなわち、第2脚部20の第2支柱21及び22は、第1脚部10の第1支柱11及び12に対応する。その他、第1脚部10と同じ部材、同じ箇所には、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0022】
第2踏板23は、板面を法線方向(Y方向)から視た平面視において矩形状であり、幅方向(Z方向)の長さW2と奥行き方向(X方向)の長さD2との比率は、第1踏板13(第1脚部10)の長さW1とD1との比率と同じである。第2踏板23の厚さT2は、第1踏板13の厚さT1と同じく、15mm~30mm程度の範囲で選択することができる。第2踏板23の厚さT2は、各段で同じでもよいし、異なっていてもよい。なお、第2踏板23の厚さT2は、上記の例に限定されない。第2踏板23は、第2脚部20の長手方向(高さ方向Y)において固定される位置が第1脚部10の第1踏板13と異なる。言い換えると、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、脚部の長手方向において固定される位置がそれぞれ異なる。第1踏板13と第2踏板23の高さ方向(Y方向)の位置関係については、後述する。
【0023】
天板30は、脚立1において、上側(Y1側)の端部に設けられる部材である。一般的な脚立は、天板の幅方向(Z方向)の長さに対して奥行き方向(X方向)の長さが短いため、使用者の足先が幅方向又は奥行き方向のいずれに向いても足元が不安定になりやすく、天板の上に載ることは推奨されていない。そのため、使用者は、高所での作業が難しいという課題があった。しかし、本実施形態の脚立1において、天板30は、後述するように幅方向の長さW3と奥行き方向の長さD3との比率が1:07~1:1.5となるように構成されている。これにより、使用者は、足先が幅方向又は奥行き方向のいずれに向いていても、天板30の上に安定した姿勢で載ることができるため、高所での作業を行うことができる。天板30は、例えば、アルミニュウム製の板材により一体の箱枠形に構成されている。そのため、天板が折り畳み可能となるように分割式とした構成に比べて、使用者はバランスを保ちやすいため、足元を安定させることができる。天板30は、板面を法線方向(Y方向)から視た平面視において矩形状であり、幅方向(Z方向)の長さW3と奥行き方向(X方向)の長さD3との比率が1:07~1:1.5となるように構成される。例えば、第1踏板13の幅方向の長さW3が450mmであれば、奥行き方向の長さD3は、315mm~675mmの範囲で選択することができる。天板30の奥行き方向長さD3は、使用者が天板上で直立した姿勢を安定して保てるように、例えば、一般的な成人男性の足幅の2倍以上とすることが望ましい。第1踏板13の幅方向の長さW3は、例えば、300mm~450mm程度の範囲で選択することができる。天板30の厚さT3は、例えば、10mm~30mm程度の範囲で選択することができる。なお、天板30の厚さT3は、上記の例に限定されない。
【0024】
天板30には、第1回動部40及び第2回動部50が設けられている。第1回動部40は、脚立1を正面側から視て右側(X1側)に設けられている。第2回動部50は、第1回動部40と反対側の左側(X2側)に設けられている。第1回動部40は、第1脚部10の一端側となる上側(Y1側)の端部を、天板30に回動自在に連結する機構である。第2回動部50は、第2脚部20の一端側となる上側(Y1側)の端部を、天板30に回動自在に連結する機構である。
【0025】
第1回動部40は、
図4に示すように構成されている。
図4は、第1回動部40において、天板30と第1脚部10の第1支柱11を連結する機構を示している。
図4に示すように、第1脚部10において、第1支柱11の上側(Y1側)の端部11aは、軸部41により天板30の正面側(Z1側)の側面30a(
図1参照)に回動自在に連結されている。一方、天板30の内側であって、正面側から視て右側(X1側)には、傾斜部31が設けられている。第1脚部10の第1支柱12についても、天板30の背面側(Z2側)において、同様に構成されている。上記構成において、第1脚部10を、軸部41を中心として反時計回りに回動させると、第1支柱11の上側の側面11bと天板30の傾斜部31とが当接して、第1脚部10が開脚した状態となる。また、開脚した第1脚部10を、軸部41を中心として時計回りに回動させると、第1支柱11の上側の側面11bと天板30の傾斜部31とが離間して、第1脚部10が閉脚した状態となる。図示していないが、第2回動部50についても、第1回動部40と同様に構成されている。なお、第1回動部40及び第2回動部50の構成は、
図4に示す例に限らず、同等に機能し得るものであれば、どのような構成を適用してもよい。
【0026】
図1に示すように、天板30は、背面側(Z2側)の側縁に、手摺部32を備える。手摺部32は、天板30の板面から上側(Y1側)に突出する門形(逆凹形)の部材である。手摺部32は、使用者が脚立1を昇降する際に、バランスを崩さないようにするための部材である。
図1及び
図2は、手摺部32の第1の構成を示している。天板30の板面から手摺部32の中心までの高さH1は、例えば、300mm~700mm程度である。手摺部32の高さH1は、脚立1の高さに応じて設定されることが望ましい。例えば、脚立1の高さが1100mmであれば、300mm~400mm程度としてもよい。また、脚立1の高さが2000mmであれば、600mm~700mm程度としてもよい。
【0027】
手摺部32の奥行方向(X方向)の略中央には、グリップ33が設けられている。グリップ33は、使用者が脚立1を昇降する際に手で掴む部分である。グリップ33は、例えば、ゴム、スポンジ、プラスチック等により構成される。手摺部32にグリップ33を設けることにより、グリップ33を掴んだ使用者の手が滑りにくくなる。そのため、使用者は、手摺部32をより確実に掴むことができる。
【0028】
また、手摺部32において、グリップ33の両側には、2つの車輪34が設けられている。車輪34は、閉脚状態(収納状態)とした脚立1を移動する際に用いられる回転部材である。後述するように、使用者は、閉脚状態(収納状態)とした脚立1を移動する際に、車輪34を転がすようにして脚立1を押したり、引っ張ったりすることにより、脚立1を容易に移動させることができる。
【0029】
開き止め金具60は、開脚させた第1脚部10と第2脚部20との開き角度を固定するための部材である。開き止め金具60は、第1脚部10と第2脚部20の正面側(Z1側)の側面に設けられている。
図1に示すように、開き止め金具60は、フック61、軸部62、つまみねじ63及び64を備えている。フック61は、鉤状の先端部61aを備える細長い板状の部材である。フック61において、先端部61aと反対側は、第1支柱11に設けられた軸部62により回動自在に連結されている。開き止め金具60を使用していない状態において、フック61の先端部61aは、第1支柱11に設けられたつまみねじ63と係合している。フック61の先端部61aと係合しているつまみねじ63を締め込むことにより、フック61を第1支柱11に固定することができる。また、フック61の先端部61aと係合しているつまみねじ63を緩めることにより、フック61の先端部61aをつまみねじ63から開放することができる。これにより、フック61を、軸部62を中心として回動させることができる。なお、フック61をつまみねじ63から開放した状態で、フック61を手前側(Z1側)に引き込んで少し撓ませることにより、フック61を反時計回りに回動させることができる。
【0030】
つまみねじ64は、フック61の先端部61aと係合する部材である。つまみねじ64は、水平方向において、第1脚部10に設けられた軸部62とほぼ同じ位置に設けられている。
図1に示すように、第1脚部10と第2脚部20とを開脚した状態において、開き止め金具60のフック61(先端部61a)とつまみねじ64とを係合させ、つまみねじ64を締め込むことにより、第1脚部10と第2脚部20との開き角度を固定することができる。また、この状態でつまみねじ64を緩めることにより、フック61の先端部61aをつまみねじ64から開放することができる。これにより、第1脚部10と第2脚部20とを閉脚して、第1脚部10と第2脚部20とを互いに近接させることができる。本実施形態の開き止め金具60によれば、第1脚部10と第2脚部20とを閉脚した際、金具の内部に使用者の指等が挟まれることを抑制できる。なお、開き止め金具60は、脚立1の正面側(Z1側)に設けられる例に限らず、脚立1の背面側(Z2側)の側面に設けられていてもよいし、脚立1の正面側と背面側の両方に設けられていてもよい。また、開き止め金具60は、他の構成であってもよい。
【0031】
連結部70は、第1脚部10と第2脚部20を閉脚した収納状態において、第1脚部10と第2脚部20のそれぞれの他端側となる下側(Y2側)を連結する機構である。また、本実施形態の連結部70は、後述するように、脚立1を移動させる際に、使用者が手で掴む把持部(持ち手)を兼ねている。使用者は、閉脚した脚立1の連結部70を掴んで引っ張ったり、押したりすることにより、脚立1を所望の方向に移動させることができる。連結部70は、フック71と、軸部72、つまみねじ73及び74、グリップ75を備えている。
【0032】
図1に示すように、フック71は、鉤状の先端部71aを備える板状の部材である。先端部71aは、
図2に示すように、第1脚部10と第2脚部20とを閉脚して、連結部70のフック71と軸部72とを係合させた場合に、鉤状の部分がY2側に開口するように構成されている。Y2側は、脚立1を手持ちにより移動させる際の進行方向に相当する。フック71において、先端部71aと反対側は、第1支柱11の下側(Y2側)に、軸部72により回動自在に連結されている。連結部70を使用していない状態において、フック71の先端部71aは、第1支柱11に設けられたつまみねじ73に係合している。フック71の先端部71aと係合しているつまみねじ73を締め込むことにより、フック71を第1支柱11に固定することができる。また、フック71の先端部71aと係合しているつまみねじ73を緩めることにより、先端部71aをつまみねじ73から開放することができる。これにより、フック71を、軸部72を中心として回動させることができる。なお、フック71をつまみねじ73から開放した状態で、フック71を手前側(Z1側)に引き込んで少し撓ませることにより、フック71を反時計回りに回動させることができる。
【0033】
フック71には、グリップ75が設けられている。グリップ75は、閉脚状態(収納状態)とした脚立1を移動する際に用いられる部材である。グリップ75は、例えば、ゴム、スポンジ、プラスチック等により構成される。後述するように、使用者は、閉脚状態(収納状態)とした脚立1を移動する際に、閉脚した第1脚部10と第2脚部20のそれぞれの他端側を連結部70で連結し、車輪34を接地面に接触させた状態でグリップ75を手で掴み、上側へ持ち上げることにより、車輪34を転がしながら、接地面上を移動させることができる。また、連結部70にはグリップ75が設けられているため、グリップ75を掴んだ使用者の手が滑りにくくなる。そのため、使用者は、連結部70をより確実に掴むことができる。
【0034】
つまみねじ74は、フック71の先端部71aと係合する部材である。つまみねじ74は、第2支柱21(第2脚部20)の下側(Y2側)に設けられている。
図2に示すように、第1脚部10と第2脚部20を閉脚した状態において、連結部70のフック71(先端部71a)とつまみねじ74とを係合させ、つまみねじ74を締め込むことにより、第1脚部10と第2脚部20との開き角度を固定することができる。なお、連結部70は、
図1に示すように、脚立1の正面側(Z1側)に設けられる例に限らず、脚立1の背面側(Z2側)に設けられていてもよいし、脚立1の正面側と背面側の両方に設けられていてもよい。
【0035】
次に、
図5~
図7を参照して、脚立1に設けられる踏板の間隔の一例について説明する。なお、以下に示す踏板の間隔は、脚立1をそれぞれの高さとした場合の標準的又は好ましいと考えられる数値であり、実際には+100~-100mm程度の範囲で適宜に調整される(後述する変形形態の脚立についても同様とする)。
【0036】
(脚立1の高さ1100mm)
図5は、脚立1の高さを1100mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。なお、
図5~
図7は、脚立1の踏板の間隔を説明するための概念図であり、踏板の間隔に関係しない構成を一部簡略化又は省略している。例えば、
図5~
図7では、手摺部、車輪、連結部等の記載を省略している。また、以下の説明では、脚立1の最上段に位置する踏板を1段目、その下に位置する踏板を2段目というように、最上段から最下段に向けて段数を示す数値を増やすものとする。例えば、踏板を4枚配置した場合、最下段の位置する踏板を4段目と呼称する。なお、天板は段数に算入していない。
【0037】
図5は、脚立1の高さを1100mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
図5に示す脚立1において、接地面Cからの天板30の板面までの高さH2は、1100mmである。
図5に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、それぞれ3枚配置されている。
図5に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、高さ方向(Y方向)において、段違いとなるように配置されている。第1脚部10の各第1踏板13に対して、第2脚部20の各第2踏板23は、高さ方向において、間隔S10が10~50mm低い位置に設けられている。間隔S10は、高さ方向の各位置において、一方の支柱に設けられる踏板の下面と、他方の支柱に設けられ、前記踏板よりも下側に位置する踏板の上面との距離である。天板30と最下段に位置する踏板との間に配置された踏板の間隔(S11+S12+S13、S21+S22+S23)は、高さ方向において、上側に位置する天板又は踏板の上面と下側に位置する踏板の上面との間の距離である。最下段に位置する踏板と接地面Cとの間隔(S14、S24)は、踏板の上面と接地面Cとの間の距離である。なお、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23との位置関係は、逆であってもよい。
【0038】
図5に示す脚立1において、第1脚部10に設けられた各踏板の間隔S11~S14は、例えば、以下のように設定される。ここでは、
図5に示す脚立1において、各第1踏板13の厚さT1と各第2踏板23の厚さT2をそれぞれ20mm、間隔S10を10mmとした例について説明する(他の実施形態及び変形形態も同じとする)。なお、天板30の厚さT3は、前述したように10~30mmとすればよい(他の実施形態及び変形形態も同じ)。
【0039】
間隔S11:230mm
間隔S12:280mm
間隔S13:280mm
間隔S14:310mm
【0040】
また、
図5に示す脚立1において、第2脚部20に設けられた各踏板の間隔S21~S24は、例えば、以下のように設定される。
間隔S21:260mm
間隔S22:280mm
間隔S23:280mm
間隔S24:280mm
【0041】
なお、
図5の右下に示すように、踏板が支柱(第1支柱/第2支柱)に固定される位置の中心ctから内側(X2側)に突出する長さL1と外側(X1側)に突出する長さL2との比率は、1:1でもよいし、例えば、1:1.2~1:1.5程度としてもよい。このように、踏板が支柱の中心から内側に突出する長さL1よりも外側に突出する長さL2を長くすることにより、脚立1を昇降する使用者の足元をより安定させることができる。
【0042】
(脚立1の高さ1600mm)
図6は、脚立1の高さを1600mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
図6に示す脚立1において、接地面Cからの天板30の板面までの高さH3は、1600mmである。
図6に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、それぞれ4枚配置されている。
図6に示すように、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、高さ方向(Y方向)において、段違いとなるように配置されている。
図6に示す例では、第1脚部10の各第1踏板13に対して、第2脚部20の各第2踏板23は、高さ方向において、間隔S10が10~50mm低い位置に設けられている。間隔S10は、
図6に示すように、脚立1を開脚状態(使用状態)とした場合の数値である。なお、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23との位置関係は、逆であってもよい。
【0043】
図6に示す脚立1において、第1脚部10に設けられた各踏板の間隔S11~S15は、例えば、以下のように設定される。
間隔S11:280mm
間隔S12:320mm
間隔S13:320mm
間隔S14:320mm
間隔S15:360mm
【0044】
また、
図6に示す脚立1において、第2脚部20に設けられた各踏板の間隔S21~S25は、例えば、以下のように設定される。
間隔S21:310mm
間隔S22:320mm
間隔S23:320mm
間隔S24:320mm
間隔S25:330mm
【0045】
(脚立1の高さ2000mm)
図7は、脚立1の高さを2000mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
図7に示す脚立1において、接地面Cからの天板30の板面までの高さH4は、2000mmである。
図7に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、それぞれ5枚配置されている。
図7に示す脚立1においても、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、高さ方向(Y方向)において、段違いとなるように配置されている。第1脚部10の各第1踏板13に対して、第2脚部20の各第2踏板23は、高さ方向において、間隔S10が10~50mm低い位置に設けられている。なお、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23との位置関係は、逆であってもよい。
【0046】
図7に示す脚立1において、第1脚部10に設けられた各踏板の間隔S11~S16は、例えば、以下のように設定される。
間隔S11:300mm
間隔S12:330mm
間隔S13:330mm
間隔S14:330mm
間隔S15:330mm
間隔S16:380mm
【0047】
また、
図7に示す脚立1において、第2脚部20に設けられた各踏板の間隔S21~S26は、例えば、以下のように設定される。
間隔S21:330mm
間隔S22:330mm
間隔S23:330mm
間隔S24:330mm
間隔S25:330mm
間隔S26:350mm
【0048】
上述した各数値は、脚立1の高さを、1100mm、1600mm、2000mmとした場合の一例であり、本発明に係る脚立において、脚立1の高さや各踏板の間隔は、上記数値に限定されない。
【0049】
次に、脚立1を手持ちにより移動させる場合について説明する。
図8は、脚立1を手持ちにより移動する形態の一例を示す説明図である。脚立1を手持ちにより移動させる場合、
図2に示すように、第1脚部10と第2脚部20を閉脚して、連結部70のフック71(先端部71a)とつまみねじ74とを係合させて、第1脚部10と第2脚部20とを連結させる。これにより、移動中に第1脚部10と第2脚部20とが開脚してしまい、運びづらくなる不具合を抑制することができる。使用者は、
図8に示すように、手摺部32の車輪34を接地面Cに接触させた状態でグリップ75を手で掴み、上側へ持ち上げて進行方向(本例では右方向)に向けて引っ張ることにより、車輪34を転がしながら脚立1を移動させることができる。
【0050】
前述したように、フック71の先端部71aは、第1脚部10と第2脚部20とを閉脚して、連結部70のフック71と軸部72とを係合させた場合に、鉤状の部分がY2側(
図8の進行方向)に開口するように構成されている。そのため、脚立1を手持ちにより移動させた際に、フック71の先端部71aがつまみねじ74から外れてしまう不具合を抑制できる。
【0051】
なお、
図8において、使用者がグリップ75を手で掴み、上側へ持ち上げて進行方向(例えば、左方向)に向けて押すことにより、車輪34を転がしながら脚立1を移動させるようにしてもよい。なお、連結部70を脚立1の背面側(図中下側)に設けた場合、使用者は、グリップ75をより低い位置で掴むことができる。そのため、特に背の低い使用者が脚立1を移動する場合に適している。
【0052】
上記のように構成された第1実施形態の脚立1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
第1実施形態の脚立1は、天板30の板面から上側(Y1側)に向けて突出する門形の手摺部32を備えている。本構成によれば、使用者は、脚立1を昇る際に、手摺部32に手が届く位置に達した時点で、手摺部32を手で掴みながら昇ることにより、バランスを崩すことなく、天板30の上まで安全に昇ることができる。また、使用者は、手摺部32を掴みながら作業することにより、バランスを崩しにくくなるため、安全に作業を行うことができる。更に、使用者は、天板30から降りる際に、最初の第1歩から接地面に近づくまでの間、手摺部32を手で掴みながら降りることにより、接地面までバランスを崩すことなく、安全に降りることができる。また、昇り降りの際にバランスを崩した場合でも、手摺部32を掴むことにより、脚立からの落下を抑制することができる。したがって、第1実施形態の脚立1によれば、使用者の足腰が衰えていたり、バランス感覚が低下していたりしても、使用者が安定した姿勢で作業を行うことができ且つ安全に昇り降りすることができる。
【0053】
第1実施形態の脚立1において、第1踏板13、第2踏板23及び天板30は、それぞれの板面を法線方向(Y方向)から視た平面視において矩形状であり、板面の幅方向(Z方向)の長さと奥行き方向(X方向)の長さは、それぞれ前述のような比率となるように設定されている。本構成によれば、使用者が天板30の上で作業する際の足場及び昇り降りする際の足場を、従来の脚立と比べてより広く確保できる。そのため、使用者が天板30の上で作業したり、脚立1を昇り降りしたりする際に、足場の上において、バランスをより一層保ちやすくすることができる。
【0054】
第1実施形態の脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、高さ方向(Y方向)において、段違いとなるように配置されている。本構成によれば、2つの脚部を閉脚した場合に、踏板同士が衝突しないため、2つの脚部を奥行き方向(開閉方向)に、より近接させることができる。したがって、第1実施形態の脚立1は、踏板や天板の大きさを確保しつつ、収納性にも優れている。なお、従来の脚立において、踏板を折り畳み式とする構成も知られているが、踏板を折り畳み式にした場合、踏板の構造が複雑になるため、長期間に亘って開閉を繰り返すと壊れるおそれがある。また、踏板を折り畳み式にすると、閉脚時に使用者の指等が折り畳み機構の一部に挟まれたりするおそれもある。これに対して、第1実施形態の脚立1は、踏板が各脚部に固定されているため、長期間に亘って開閉を繰り返しても壊れにくく、閉脚時に使用者が指等を挟まれたりすることがない。
【0055】
第1実施形態の脚立1は、開脚状態(使用状態)において、第1踏板13と第2踏板23が、高さ方向に10~50mmの間隔S10を有する。本構成によれば、2つの脚部を閉脚した際の踏板同士の衝突を回避すると共に、第1踏板13と第2踏板23の高さ方向の差を最小限に抑えることができる。そのため、使用者が脚立1の第1脚部10を昇り降りした場合と、第2脚部20を昇り降りした場合において、踏板の高さの違いによる違和感を少なくすることができる。
【0056】
第1実施形態の脚立1は、第1脚部10と第2脚部20を閉脚した収納状態において、第1脚部10と第2脚部20のそれぞれの他端側を連結する連結部70を備える。本構成によれば、
図8に示すように、使用者が閉脚した脚立1を移動する場合に、第1脚部10と第2脚部20とが不用意に開脚してしまうことがないため、使用者は、閉脚した脚立1を、より安全に移動させることができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る脚立1について説明する。
図9は、手摺部32の第2の構成を説明する図である。第2実施形態の手摺部32は、可動式のテーブル35を備える点が第1実施形態の手摺部32(第1の構成)と異なる。第2実施形態において、その他の構成は、第1実施形態(
図1)と同じである。そのため、
図9においては、脚立全体の図示を省略する。また、第2実施形態では、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
図9に示すように、第2実施形態の手摺部32(第2の構成)は、テーブル35を備えている。テーブル35は、ワンウェイクラッチ機構(不図示)を介して手摺部32に取り付けられている。本例において、ワンウェイクラッチ機構は、図中の矢印方向に空転し、逆方向には回動が規制されるように構成されている。
図9に想像線(二点鎖線)で示すように、テーブル35が手摺部32から突出しない位置にある収納状態から、時計回りに90度回動させると、テーブル35は、天板30の板面と間隔を空けて平行(X-Z面と平行)に突出した使用状態となる。テーブル35は、ワンウェイクラッチ機構により、実線で示す位置から反時計回り(反矢印方向)には回動しない。そのため、使用者は、テーブル35が手摺部32から突出した状態において、テーブル35の上に荷物を置くことができる。また、テーブル35を、実線で示す位置から更に時計回りに270度回転させることにより、再び手摺部32から突出しない位置まで移動させることができる。なお、テーブル35を、天板30の板面と間隔を空けて平行に突出させる機構は、ワンウェイクラッチ機構に限らず、後述するように、他の機構を適用してもよい。
【0059】
図10(A)~(C)は、手摺部32の第3の構成を説明する図である。
図10(A)に示すように、本形態のテーブル35は、上側(Y1側)の一端が手摺部32の軸部36に回動自在に支持されている。図示していないが、軸部36には、グリップ33及び車輪34が同軸で取り付けられている。また、テーブル35は、裏面側の板面35aにテーブル脚80を備えている。テーブル脚80は、脚部81、回動部82を備えている。脚部81は、使用時にテーブル35の下側を支える棒状の部材である。回動部82は、脚部81を回動自在且つ固定可能に支持する機構である。以下、本形態におけるテーブル35の使用方法について説明する。
【0060】
テーブル35を使用状態とする場合、
図10(A)に示す収納位置から、テーブル35を、軸部36を中心として反時計回りに回動させる。テーブル35を回動させる角度は、例えば、90~180度程度でよい。次に、
図10(B)に示すように、テーブル脚80の脚部81を、軸部83を中心として時計回りに90度回動させる。脚部81を90度回動させることにより、回動部82において、脚部81がロックされた状態となる。次に、
図10(C)に示すように、テーブル35を、軸部36を中心として反時計回りに回動させ、脚部81の先端を天板30の板面に当接させる。これにより、テーブル35は、天板30の板面と間隔を空けて平行に突出した使用状態となる。
図10(C)に示す使用状態において、使用者は、テーブル35の表面側の板面35b上に荷物を置くことができる。
【0061】
図10(C)に示す使用状態からテーブル35を収納状態にする場合、テーブル35を、軸部36を中心として、例えば、
図10(B)の位置まで時計回りに回動させる。次に、回動部82の解除ボタン84を操作して、脚部81のロック状態を解除する。脚部81のロック状態を解除することにより、脚部81を反時計回りに回動させて、脚部81をテーブル35の裏面側の板面35aに沿わせることができる。この後、テーブル35を、軸部36を中心として時計回りに回動させることにより、テーブル35を
図10(A)に示す収納位置に戻すことができる。
【0062】
なお、手摺部32の高さH1(
図1参照)の寸法が大きい場合、例えば、高さH1が500mm以上ある場合、テーブル35を支持する軸部36は、グリップ33及び車輪34と同軸でなくてもよい。すなわち、軸部36を、グリップ33及び車輪34よりも下側(Y2側)に設けてもよい。
図9に示すワンウェイクラッチ機構についても同様に構成してもよい。
【0063】
図11及び
図12は、手摺部32の第4の構成を説明する図である。
図11は、テーブル35の使用状態を示す斜視図である。
図12は、テーブル35の収納状態を示す斜視図である。
図13A~
図13Cは、テーブル35の構成を説明する図である。
図13Aは、テーブル35の表面側を示す平面図である。
図13Bは、テーブル35の裏面側を示す平面図である。
図13Cは、テーブル35を
図13Aの右側(X1側)から見た側面図である。
【0064】
図11及び
図12に示すように、第4の構成の手摺部32は、テーブル35、ステー37、支持バー38等を備える。
テーブル35は、
図13A~
図13Cに示すように、本体部351と、支持部352と、を備える。本形態において、本体部351と支持部352とは、一体に形成されているが、別部品として形成した本体部351と支持部352を連結した構成としてもよい。また、テーブル35の裏面側を逆凹形状とし、補強のためのリブを設けた構成としてもよい。
【0065】
本体部351には、工具、部品等の小物や荷物を載せることができる。本体部351は、
図13Aに示すように、使用時における上面の外周部分に、その上面から上側に突き出た側壁353を有する。側壁353は、本体部351の外周部分となる4辺に設けられている。本体部351の外周部分に側壁353を設けることにより、本体部351は、トレイ(盆)状となる。そのため、脚立1に振動等が加わることにより、テーブル35に載せた小物や荷物が落下することを抑制することができる。特に、本形態の本体部351は、球状の転がりやすい小物を載せておくのに好適である。本形態では、本体部351の外周部分となる4辺に側壁353を設けた例を示すが、側壁353は、本体部351の外周部分の少なくとも一部に設けられていればよい。なお、テーブル35をトレイ状にする形態は、上述した第2の構成(
図9参照)、第3の構成(
図10参照)のテーブル35に適用してもよいし、支持部352の一部をトレイ状としてもよい。
【0066】
図13Aに示すように、本体部351の支持部352とは反対側の端部近傍の左右方向(X方向)の両側には、軸部354が設けられている。軸部354は、ステー37(後述)の一方の端部と回動自在に連結される部分である。
図13Bに示すように、本体部351の裏面側には、第1溝部355が設けられている。第1溝部355は、テーブル35を収納状態とする際に、支持バー38(後述)と係合する溝である。第1溝部355は、本体部351の左右方向(X方向)に沿って直線状に設けられている。
【0067】
支持部352は、ステー37、支持バー38と共に、本体部351を、天板30の板面と間隔を空けて平行に突出した使用状態に支持する部分である(
図11参照)。
図13Bに示すように、支持部352の裏面側には、第2溝部356が設けられている。第2溝部356は、テーブル35を使用状態とする際に、支持バー38(後述)と係合する溝である。第2溝部356は、支持部352の左右方向(X方向)に沿って直線状に設けられている。
【0068】
図11に戻り、ステー37は、本体部351の前側(Z1側、支持部352側とは反対側)を支持する細長い板状の部材である。ステー37は、本体部351の左右方向(Y方向)の両端を支持するように一対設けられている。ステー37の一方の端部は、本体部351の軸部354と回動自在に連結されている。ステー37の他方の端部は、手摺部32の手摺支柱321に設けられた軸部322に回動自在に連結されている。手摺支柱321は、手摺部32の左右方向(Y方向)に一対設けられている。
【0069】
支持バー38は、テーブル35を使用状態とする際に、支持部352(テーブル35)の第2溝部356と係合し、テーブル35を収納状態とする際に、本体部351(テーブル35)の第1溝部355と係合する部材である。本形態の支持バー38は、細長い棒状の部材により構成される。支持バー38の一方の端部は、手摺部32の右側(X1側)に設けられた手摺支柱321に軸部を介して回動自在に連結されている。支持バー38の他方の端部は、手摺部32の左側(X2側)に設けられた手摺支柱321に連結されている。
【0070】
上記のように構成された本形態の手摺部32において、テーブル35を使用状態とする場合、
図12に示す収納状態から、テーブル35の下側(Y2側)を左右のステー37と共に上側(Y1側)に引き上げる。次に、支持部352(テーブル35)の第2溝部356を、支持バー38と係合させる。これにより、
図11に示すように、テーブル35は、天板30の板面と間隔を空けて平行に突出した使用状態となる。
図11に示す使用状態において、使用者は、テーブル35の本体部351上に工具、部品等の小物や荷物を載せることができる。
【0071】
一方、テーブル35を収納状態とする場合、
図11に示す使用状態から、テーブル35の支持部352を上側(Y1側)に持ち上げて、支持バー38との係合を解除する。次に、テーブル35を、テーブル35の上面が高さ方向(Y方向)と略平行となるように、軸部354を中心として回動させる。更に、テーブル35とステー37を、手摺部32の軸部322を中心として回動させて、本体部351の第1溝部355を、支持バー38と係合させる。これにより、
図12に示すように、テーブル35が天板30の板面から回避した収納状態に戻すことができる。
【0072】
手摺部32にテーブル35を設けた場合、以下のような効果を奏する。
一般的な脚立において、使用者が荷物と共に昇り降りする場合、使用者は、荷物を保持しながら昇り降りすることになる。この場合、使用者は、いずれか一方の手が塞がるため、バランスを崩しやすくなり、荷物を持ったまま脚立から転落する可能性が高くなる。一方、第2実施形態の脚立1において、使用者は、荷物と共に脚立1に昇り降りする場合、踏板の上で足場が確保できるまでの間又は足が地面に着くまでの間、手摺部32に設けたテーブル35に荷物を仮置きすることができる。これにより、使用者においては、足場が確保できるまでの間又は足が地面に着くまでの間、両手が塞がれることがなく、バランスを崩しにくくなるため、荷物と共に脚立1から転落する事態を抑制することができる。また、第4の形態(
図11参照)に示すように、テーブル35を、側壁353を有するトレイ状とすることにより、テーブル35に載せた小物や荷物の落下を抑制することができる。その他、第2実施形態及びその他の実施形態(後述)の脚立1は、第1実施形態の脚立1と同等の効果を得ることできる。
【0073】
(その他の実施形態)
図14は、脚立1の高さを500mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
図14及び
図15(後述)は、その他の実施形態において、脚立1の踏板の間隔を説明するための概念図であり、踏板の間隔に関係しない構成を一部簡略化又は省略している。例えば、
図14及び
図15では、手摺部、車輪、連結部等の記載を省略している。
【0074】
図14に示す脚立1において、接地面Cから天板30の板面までの高さH2は、500mmである。
図14に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、それぞれ1枚配置されている。
図14に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、高さ方向(Y方向)において、段違いとなるように配置されている。第1脚部10の各第1踏板13に対して、第2脚部20の各第2踏板23は、高さ方向において、間隔S10が10~50mm低い位置(本形態では10mm)に設けられている。なお、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23との位置関係は、逆であってもよい。
【0075】
図14に示す脚立1において、第1脚部10に設けられた踏板の間隔S11、S12は、例えば、以下のように設定される。
間隔S11:220mm
間隔S12:280mm
【0076】
また、
図14に示す脚立1において、第2脚部20に設けられた踏板の間隔S21、S22は、例えば、以下のように設定される。
間隔S21:250mm
間隔S22:250mm
【0077】
図15は、脚立1の高さを700mmとした場合の踏板の間隔を説明する図である。
図15に示す脚立1において、接地面Cから天板30の板面までの高さH2は、700mmである。
図15に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、それぞれ2枚配置されている。
図15に示す脚立1において、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23は、高さ方向(Y方向)において、段違いとなるように配置されている。第1脚部10の各第1踏板13に対して、第2脚部20の各第2踏板23は、高さ方向において、間隔S10が10~50mm低い位置(本形態では10mm)に設けられている。なお、第1脚部10の第1踏板13と第2脚部20の第2踏板23との位置関係は、逆であってもよい。
【0078】
図15に示す脚立1において、第1脚部10に設けられた踏板の間隔S11~S13は、例えば、以下のように設定される。
間隔S11:200mm
間隔S12:230mm
間隔S13:270mm
【0079】
また、
図15に示す脚立1において、第2脚部20に設けられた踏板の間隔S21~S23は、例えば、以下のように設定される。
間隔S21:230mm
間隔S22:230mm
間隔S23:240mm
【0080】
以上、本発明に係る脚立の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0081】
(変形形態)
実施形態の第1踏板13において、幅方向(Z方向)の長さW1と奥行き方向(X方向)の長さD1は、第1脚部10に固定される位置に係わらず同じでもよいし、異なっていてもよい。同様に、第2踏板23において、幅方向(Z方向)の長さW1と奥行き方向(X方向)の長さD1は、第2脚部20に固定される位置に係わらず同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、1段目から下がるにつれて、踏板の奥行方向の長さD1が大きくなるようにしてもよい。このような構成とすることにより、使用者が脚立から降りる際の安定性をより向上させることができる。
【0082】
実施形態の第1脚部10と第2脚部20において、それぞれの踏板の数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
実施形態の第1脚部10と第2脚部20において、それぞれの踏板が脚部の長手方向において固定される位置(高さ方向の位置)は、同じであってもよい。すなわち、間隔S10(
図5参照)をゼロとしてもよい。
第1踏板13及び第2踏板23において、矩形状の板面の4隅(角部)にR形状の面取りを施してもよい。
【0083】
実施形態では、連結部70が把持部を兼ねる例について説明したが、これに限定されない。連結部70は、持ち手の機構を備えず、閉脚した第1脚部10と第2脚部20のそれぞれの他端側を連結する機能のみを備える構成としてもよい。また、第1脚部10及び/又は第2脚部20の他端側に、連結の機構を備えず、使用者が手で掴む部分(例えば、グリップ75)のみを備えた把持部を設けてもよい。
【0084】
実施形態では、手摺部32にグリップ33を設ける例について説明したが、グリップ33を設けない構成としてもよいし、グリップ33を設ける代わりに、手摺部32の全体に滑り止め加工を施してもよい。
第2実施形態では、手摺部32に2つの車輪34を設ける例について説明したが、車輪34は、1つだけ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1:脚立
10:第1脚部
11、12:第1支柱
13:第1踏板
20:第2脚部
21、22:第2支柱
23:第2踏板
30:天板
32:手摺部
33:グリップ
34:車輪
35:テーブル
40:第1回動部
50:第2回動部
60:開き止め金具
70:連結部
80:テーブル脚
81:脚部
82:回動部
353:側壁