(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109211
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】グラスウールボード
(51)【国際特許分類】
D21H 13/40 20060101AFI20230801BHJP
D21H 13/26 20060101ALI20230801BHJP
D04H 1/4218 20120101ALI20230801BHJP
F16L 59/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
D21H13/40
D21H13/26
D04H1/4218
F16L59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010598
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重松 俊広
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 昌利
【テーマコード(参考)】
3H036
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
3H036AA08
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB24
3H036AC01
4L047AA05
4L047AA21
4L047AA24
4L047AA27
4L047BA09
4L047CC08
4L055AF04
4L055AF13
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4L055AG07
4L055AG34
4L055CB13
4L055CD13
4L055FA11
4L055FA30
4L055GA21
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、軽量で、ハンドリング性に優れ、断熱性と耐火性と打ち抜き加工性に優れたグラスウールボードを提供することにある。
【解決手段】グラスウール、ガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物及び熱融着性バインダー繊維を含有していることを特徴とするグラスウールボード。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラスウール、ガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物及び熱融着性バインダー繊維を含有していることを特徴とするグラスウールボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラスウールボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラスウール成形体は、軽量性、断熱性、遮音性、吸音性等の性能を有するため、建築用資材;自動車、船舶、航空機等の輸送手段;冷蔵庫、冷凍庫等の電化製品等の多分野で広く使用されている。グラスウール成形体は、バインダーを用いてグラスウールを成形して製造するのが一般的である。バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スターチなどの有機バインダー;水ガラス、ホウ酸、コロイダルシリカなどの無機バインダーが知られている。しかし、バインダーを用いた低密度なグラスウール成形体は、バーナーを照射した場合、穴が開いてしまい、耐火性に劣る問題があった。また、断熱性を高めるには、グラスウール成形体を厚くする必要があり、空間に制限のある部分では使用できない問題があった。さらには、バインダーを用いた低密度なグラスウール成形体は、ブロック状に断裁することは可能であるが、特殊な形状に打ち抜き加工する場合、正確な寸法に打ち抜けない問題があった。
【0003】
そこで、空間に制限のある部分においては、グラスウール成形体を気密性のパック内に入れて、当該パック内を減圧状態として断熱性を高めた真空断熱材が広く用いられている。真空断熱材では、長期にわたって真空が維持できるように、複数の層をラミネートした外皮に、グラスウール成形体からなる芯材を入れ、内部を真空状態にしており、ここでもハンドリング性を向上させるために、バインダーを用いたグラスウール成形体が用いられている。
【0004】
しかし、有機バインダーを使用すると、バインダーからの揮発成分により真空断熱材の真空度が低下するという問題があり、また、有機バインダーの耐熱性の問題から、グラスウールを成形する際に高温を掛けられないという問題がある。また、無機バインダーを使用すると、特に、ホウ酸を使用した場合には、結合水の揮発により真空度が低下して断熱性を維持できないという問題がある。このため、バインダーを使用する場合には、真空断熱材の性能を長期安定化させるため、ガス成分吸着剤の増量や高性能吸着剤の充填を必要としていた。
【0005】
以上の理由から、バインダーを用いず、かつハンドリング性も良好な真空断熱材用の芯材を製造する方法が種々開発されてきた。
【0006】
例えば、特許文献1には、グラスウールの熱変形温度以上の温度で加圧成形し、ガラス繊維の集合体を加圧時の状態に塑性変形させることでその形状を保持する方法が開示されている。特許文献2には、積層されたガラスホワイトウール(バインダーを含まないグラスウール)を、その変形点よりも20℃高い温度で成形する方法が開示されている。しかし、特許文献1及び2の方法では、グラスウールの熱変形温度以上の温度で加圧成形するため、莫大なエネルギーを必要とする他、繊維強度が低下し、グラスウールが粉末化しやすくなるという問題があった。
【0007】
特許文献3には、無機繊維同士がSi-OH基に起因する分子間相互作用により密着された芯材が開示されているが、この発明においては、無機繊維同士の接着が不十分なため、圧縮後の一定時間後にグラスウール成形体の厚みが膨らみ、寸法変化によるハンドリング性の低下が問題となる。
【0008】
また、特許文献4及び5には、スピンナー法によってグラスウールを製造する際に、スピンナーの小孔から噴出して堆積する前の空中を舞っている状態のグラスウールに霧状の水を掛けることで、グラスウール表面に水分を付着させ、付着した水分でグラスウールを形成するガラス中に含まれる酸化ナトリウムを溶出させ、溶出した酸化ナトリウムは、周囲の付着水に溶けて水酸化ナトリウムを生成し、この水酸化ナトリウムがグラスウールの主成分である二酸化ケイ素と容易に反応してケイ酸ナトリウムを生成し、このケイ酸ナトリウムは無機バインダーとしてよく知られる水ガラスであるので、バインダーを添加することなく繊維同士を結合することができる製造方法が開示されている。しかしながら、水ガラスは高アルカリ性であり、グラスウールに含水率0.05~10.0質量%となるようにし、これを250~450℃の高温でプレス成形するため、莫大なエネルギーを必要とし、安全面、設備面、及びコスト面の問題があった。
【0009】
また、特許文献6には、グラスウールの中にバインダーを含浸する含浸工程、前記含浸工程で得られたバインダーを含むグラスウールを成形する成形工程、前記成形工程で成形したグラスウールから水分を除去する乾燥工程、を含み、前記バインダーが無機バインダーであり、前記乾燥工程で得られた成形体が、JIS A 1322の防炎1級相当の難燃性基準及び/又は建築基準法第2条第9号に規定される燃焼試験において不燃材料の基準を満たしている成形体とその製造方法が開示されている。しかしながら、この製造方法では、乾燥に時間が掛かり過ぎ、生産性とコスト面で問題があった。また、バーナー等の火炎を照射した場合、成形体が火炎により溶けて、厚みが減少してしまうため、断熱性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3580315号公報
【特許文献2】特表2003-532845号公報
【特許文献3】特許第3578172号公報
【特許文献4】特許第3712129号公報
【特許文献5】特開2007-84971号公報
【特許文献6】特開2016-160553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、軽量で、ハンドリング性に優れ、断熱性と耐火性と打ち抜き加工性に優れたグラスウールボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
【0013】
グラスウール、ガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物及び熱融着性バインダー繊維を含有していることを特徴とするグラスウールボード。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグラスウールボードは、グラスウール、ガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物及び熱融着性バインダー繊維を含有している。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物がグラスウールとガラス繊維の繊維間に入り込み、乾燥により、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の結晶構造内に存在する水分が除去される際に、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が大きく収縮し、繊維ネットワークを強固にするバインダー効果が発現するため、軽量でハンドリング性に優れたボード形状を形成することができる。さらに、熱融着性バインダー繊維を含有することで、グラスウールとガラス繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物との接着点がより強固になり、グラスウールボードの機械強度が向上する。また、グラスウールボード表面に存在する熱融着性バインダー繊維の融着により、表面強度が向上し、格段に打ち抜き加工性が向上すると共に、グラスウールボード表面の毛羽が抑えられ、ボードからの繊維落ちが抑えられるという効果が得られる。
【0015】
また、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は、耐熱性が高いことから、グラスウールボードが、ボード形状を維持しつつ、優れた耐火性を有するという効果を達成できる。さらに、ガラス繊維は、グラスウールよりも耐熱性が高く、単繊維強度が強く、剛直なため、グラスウールボードの厚みを確保しやすくなり、高密度化を防ぎ、ボードの硬さやこしを向上させる効果があるため、打ち抜き加工性が向上すると共に、軽量で、ハンドリング性及び断熱性に優れたグラスウールボードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のグラスウールボードの電子顕微鏡写真(表面観察画像)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のグラスウールボードは、グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物及び熱融着性バインダー繊維を含有している。
【0018】
本明細書において、「グラスウールボード」を「ボード」と略記する場合がある。
【0019】
本発明において、グラスウールとは、繊維径が約1~7μmのガラス繊維が綿状になったものである。グラスウールは、周囲に1mm程度の小孔を多数設けたスピナーを高速回転させて、溶融したガラスを噴出することにより製造される。この製造プロセスは一般に遠心法と呼ばれ、溶融したガラスの粘度及び回転速度を調整することで、1~7μm程度の細いグラスウールを経済的に製造することができる。
【0020】
本発明において、ガラス繊維としては、例えば、チョップドストランド、グラスフレークが挙げられる。折れ難く、ボードの形成能があればいずれのガラス繊維でも良い。ガラス繊維の繊維径は、4~15μmであることが好ましく、6~14μmであることがより好ましく、8~13μmであることがさらに好ましい。繊維径が4μm未満の場合、細か過ぎて湿式抄造時にボードからガラス繊維が脱落する場合があり、ボードの強度、厚み及び硬さが不十分となる場合がある。繊維径が15μmを超えた場合、ガラス繊維が太くなり過ぎて、ボードの隙間が大きくなり、断熱性が悪化する場合がある。ガラス繊維の繊維径が4~15μmである場合、ボードの機械強度が良好で、厚みを維持し易く、硬さやこしが良好となり、ボードのハンドリング性や打ち抜き加工性が向上する。また、ボードの隙間が細かく、均一となるため、断熱性、耐火性が優れたボードになる。ガラス繊維の繊維径は、JIS R 3420:2013の単繊維直径である。
【0021】
また、本発明において、グラスウールとガラス繊維の繊維長は、1~20mmであることが好ましく、5~18mmであることがより好ましく、6~15mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満では、ボードの強度が不足する場合やグラスウール又はガラス繊維がボード表面から脱落しやすくなる場合があり、繊維長が20mmを超えた場合、繊維の分散に時間が掛かり、生産性が悪化する場合や、繊維のもつれや塊が発生しやすく、地合が悪くなる場合がある。
【0022】
グラスウールの含有率は、ボードに含まれる全ての繊維成分に対して、45~80質量%であることが好ましく、50~75質量%であることがより好ましく、55~68質量%であることがさらに好ましい。含有率が45質量%未満であると、ボードの空隙が大きくなり、断熱性が低下する場合があり、含有率が80質量%を超えると、ボードに火炎を当てた場合、ボードが変形や損傷する場合やボードが柔らかくなり、ボードのこしが低下し、打ち抜き加工性が低下する場合がある。
【0023】
また、ガラス繊維の含有率は、ボードに含まれる全ての繊維成分に対して、12~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。含有率が12質量%未満であると、ボードが薄くなり過ぎる場合や、ボードが柔らかくなり易く、ボードの硬さやこしが低下するため、ハンドリング性や打ち抜き加工性が悪化する場合があり、含有率が40質量%を超えると、ボードが硬くなり過ぎ、断裁性が悪化する場合や、空隙が大きくなり過ぎるため、断熱性が低下する場合がある。
【0024】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物としては、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタルアミド)樹脂等からなるパルプ状物が挙げられる。
【0025】
また、本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物とは、抄紙機を用いて紙に似た構造物を作ることができる多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状又は燐片状の小片であり、繊維の結晶構造が強固に形成されることなく、非結晶状態で水分子又は水分が結晶構造内に存在する微細な耐熱繊維を指す。
図1は、本発明のグラスウールボードの電子顕微鏡(SEM)写真であり、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状又は燐片状の小片である。
【0026】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は、繊維形成性高分子重合体溶液を水系凝固浴に導入して得られた形成物を、乾燥することなく回収し、必要に応じて叩解等のフィブリル化をすることにより得られる。例えば、ポリマー重合体溶液をその沈殿剤とせん断力の存在する系において混合することにより製造されるフィブリッドや、光学的異方性を示す高分子重合体溶液から形成した分子配向性を有する非晶質含水形成物であり、例えば、特公昭35-11851号公報、特公昭37-5732号公報などに記載の製造方法により製造される。必要に応じて叩解処理を施すことができる。
【0027】
叩解処理としては、パルプ状物をリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転式ホモジナイザー、高速の回転する円筒の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、繊維にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いた処理が挙げられる。
【0028】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は結晶構造内に存在する水分子又は水分が加熱・減圧などにより除去される際に大きく収縮し、繊維ネットワークを強固にするため、ボードの強度を向上させる効果がある。
【0029】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の質量加重平均繊維長は、0.10mm以上1.50mm以下であることが好ましい。また、パルプ状物の長さ加重平均繊維長は、0.10mm以上1.00mm以下であることが好ましい。平均繊維長が好ましい範囲よりも短い場合、ボードからパルプ状物が脱落する場合がある。平均繊維長が好ましい範囲よりも長い場合、パルプ状物のもつれや分散不良が発生する場合がある。
【0030】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が、上記の質量加重平均繊維長と長さ加重平均繊維長を持つ場合、ボードに含まれるパルプ状物の含有率が少ない場合でも、パルプ状物間やパルプ状物とグラスウール、ガラス繊維及び熱融着性バインダー繊維との間において、繊維による緻密なネットワーク構造が形成され、引張強度が強いボードが得られやすく、湿紙を複数枚積層し、一体化させた場合、層間剥離が発生し難くなる。
【0031】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の平均繊維幅は、5μm以上40μm以下が好ましく、8μm以上35μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下がさらに好ましい。平均繊維幅が40μmを超えた場合、繊維同士のネットワークが低下し、ボードの引張強度が低下する場合や無機粒子が浸透しにくくなる場合がある。一方、平均繊維幅が5μm未満の場合、パルプ状物を叩解する処理時間が長くなり過ぎる場合があり、生産性が著しく低下する場合がある。
【0032】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の質量加重平均繊維長、長さ加重平均繊維長及び平均繊維幅は、「JIS P 8226-2:2011、パルプ-光学自動分析法による繊維長測定方法 第2部:非偏光法」に基づき、OpTest Equipment Inc.社製ファイバークオリティーアナライザー(FQA-360)を使用して測定した値である。
【0033】
本発明において、ボードを構成する全繊維に対して、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率は5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、6質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が15質量%を超えた場合、ボードの耐火性が悪化する場合や、ボードの密度が高くなり過ぎる場合がある。一方、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%未満である場合、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物間やパルプ状物とグラスウールとガラス繊維と熱融着性バインダー繊維との緻密なネットワーク構造が形成されにくく、ボードの機械強度が低下しやすく、ハンドリング性や打ち抜き加工性の低下を招く場合や湿紙を複数枚積層し、熱プレス加工し、一体化させる工程で、層間剥離が発生する場合がある。
【0034】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の変法濾水度は0~300mlであることが好ましく、より好ましくは50~200mlであり、さらに好ましくは80~150mlである。変法濾水度が300mlを超えた場合、パルプ状物の繊維幅が太く、フィブリル化があまり進んでいないため、グラスウールやガラス繊維や熱融着性バインダー繊維との緻密なネットワークが少なくなるため、ボードの引張強度が低下する場合がある。一方、変法濾水度が0ml未満の場合、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物のファイン分が増え過ぎて、ボードから脱落する割合が増え、歩留まりが低下する場合がある。また、繊維のフィブリル化処理に時間が掛かり過ぎ、非常に高価なものになる。また、ボードが薄くなりやすく、高密度化しやすくなるため、断熱性が悪化する場合がある。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後も、さらにフィブリル化すると、繊維がメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。本発明では、このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。
【0035】
本発明において、変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P 8121-2:2012に準拠して測定した値である。
【0036】
本発明において、熱融着性バインダー繊維とは、抄紙した湿紙を乾燥する際に熱融着して接着機能を発現する繊維のことを言う。熱融着性バインダー繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型の複合繊維、あるいは単繊維等が挙げられ、特に芯鞘型熱融着性バインダー繊維を含有することが好ましい。芯鞘型熱融着性バインダー繊維は、芯部の繊維形状を維持しつつ、鞘部のみを軟化、溶融させて繊維同士を接着させるのに好適である。熱融着性バインダー繊維の具体例としては、ポリプロピレンの単繊維、ポリエチレンの単繊維、低融点ポリエステルの単繊維、芯成分がポリプロピレン、鞘成分がポリエチレンの複合繊維、芯成分がポリエステル、鞘成分がポリエチレンの複合繊維、芯成分がポリプロピレン、鞘成分がエチレンビニルアルコール共重合体の複合繊維、芯成分が高融点ポリエステル、鞘成分が低融点ポリエステルの複合繊維等が挙げられる。
【0037】
本発明において、熱融着性バインダー繊維の繊度は、0.1~5.6デシテックスであることが好ましく、0.6~3.3デシテックスであることがより好ましく、0.8~2.2デシテックスであることがさらに好ましい。0.1デシテックス未満の場合、繊維自体が非常に高価になり、ボードが緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、グラスウールやガラス繊維やメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物との接着点が少なくなり、機械強度の向上効果が低下する場合がある。また、ボード表面に存在する熱融着性バインダー繊維の本数が減少するため、表面強度や打ち抜き加工性の向上効果が得られにくく、ボード表面の毛羽や繊維落ちの抑制効果も得られにくくなる。
【0038】
本発明において、熱融着性バインダー繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、3~5mmであることがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちる場合があり、十分な引張強度が得られない場合がある。一方、15mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こす場合があり、均一な地合いが得られないことがある。
【0039】
本発明において、熱融着性バインダー繊維の含有量は、ボードを構成する全繊維に対して、3~15質量%であることが好ましく、4~12質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。熱融着性バインダー繊維の含有量が15質量%を超えた場合、ボードの耐火性が悪化する場合がある。一方、熱融着性バインダーの含有率が3質量%未満である場合、グラスウールとガラス繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の接着点が減少し、ボードの機械強度や表面強度の向上効果が発現しにくくなり、打ち抜き加工性の低下を招く場合や湿紙を複数枚積層し、熱プレス加工し、一体化させる工程で、層間剥離防止効果が低下する場合がある。
【0040】
本発明において、グラスウール、ガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物及び熱融着性バインダー繊維に加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、各種繊維を配合することができる。その結果、さらに細かい空隙部を増やすことができ、断熱性、耐火性及び不燃性を向上させることができる。このような繊維としては、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、これらの誘導体等の合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、アルミナ、シリカ、セラミックス、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。必要に応じて配合することができる繊維の含有率は、グラスウールボードに含まれる全ての繊維成分に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であっても問題無い。
【0041】
合成樹脂繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。また、本発明のグラスウールボードに含むことができる上記各種繊維は、1種でも良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0042】
本発明において、ボードの厚さは、1mm以上であり、3mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましい。また、25mm以下であり、23mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることがさらに好ましい。ボードの厚さを上記の範囲とした場合において、本発明におけるボードは、軽量でありながら、ハンドリング性に優れ、断熱性と耐火性に優れたものになる。また、各工程の作業性が良好なものになる。ボードの厚さが25mmを超えると、ボードが重くなり過ぎ、取り扱い難くなる場合や湿紙の乾燥時間が長くなり過ぎて、生産性の悪化を招く場合がある。ボードの厚みが1mm未満であると、ボードの強度面が低下し、ハンドリング性が大きく低下する場合がある。また、断熱性や耐火性や不燃性が大きく損なわれる場合がある。
【0043】
本発明におけるボードの密度は、0.30g/cm3以上であり、0.35g/cm3以上であることがより好ましい。また、0.60g/cm3以下であり、0.55g/cm3以下であることがより好ましい。密度が0.30g/cm3未満である場合、ボードの強度面、例えば、引張強度や表面強度や層間強度が弱くなり、ボード同士を擦り合わせた場合、ボード表面から構成繊維が脱落する場合がある。また、ボードが薄い場合、ボードが撓み、層間剥離が発生する場合や折れる場合がある。一方、ボードの密度が0.60g/cm3を超えた場合、ボードが厚い場合に、ボードが重くなり、軽量感が低下する場合やコストが高くなり過ぎる場合がある。また、ボード製造時において、湿紙を複数枚積層し、熱プレス加工し、一体化させる工程で、ボードが熱プレスの熱板から剥がれにくくなる場合がある。
【0044】
本発明におけるボードの製造方法では、湿式抄造法(抄紙法)によって湿紙を製造する。湿式抄造法は、繊維を水に分散して均一なスラリーとし、このスラリーから抄紙機を使用して湿紙を製造する。抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー、傾斜短網等の抄紙ワイヤーが単独で設置されている抄紙機、同一の抄紙ワイヤー上に2つ以上のヘッドを有した2層以上の多層抄紙可能な抄紙機、抄紙ワイヤーの同種又は異種の2種以上がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等が挙げられる。
【0045】
スラリーには、繊維の他に、必要に応じて、分散剤、紙力増強剤、増粘剤、無機填料、有機填料、消泡剤などを適宜添加することができる。スラリーの固形分濃度は、0.5~0.001質量%程度であることが好ましい。このスラリーを、さらに所定濃度に希釈してから湿式抄造し、湿紙を得る。
【0046】
ついで、湿紙を複数枚積層する。複数枚積層する方法としては、円筒ドラムに湿紙を複数周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、平判の積層した湿紙を得ることができる。また、平判の積層した湿紙をさらに複数枚積層することもできる。
【0047】
ついで、複数枚積層した湿紙を、熱プレス機を用いて、120~180℃のプレス温度で、1~20MPaのプレス圧力でプレス加工することにより、湿紙から水分を脱水し、乾燥させ、所定の厚みを持ったボードを成形することができる。プレス時間は乾燥するまでの時間で適宜調整すれば良い。所定の厚みを持ったボードを得るには、湿紙坪量とプレス圧力を適宜調整すれば良い。
【0048】
図1は、本発明のボードの電子顕微鏡写真(表面観察写真)である。ボードに含有されるグラスウール、ガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物、熱融着性バインダー繊維が確認できる。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状又は燐片状の小片であり、グラスウール、ガラス繊維、熱融着性バインダー繊維の間に入り込み、繊維の隙間を埋めている。
【0049】
本発明において、ボード表面及び内部に無機バインダーを含有しても良い。無機バインダーとしては、例えば、セピオライト、コロイダルシリカ、水ガラス、アルミナゾル、ベントナイトなどが挙げられる。上記無機バインダーは、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0050】
無機バインダーは、ボードに無機バインダー塗工液を塗工後乾燥させることによって、ボード表面及び内部に無機バインダーを含有させることができる。無機バインダー塗工液を調製するための媒体としては、無機バインダーを均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等を必要に応じて用いることができる。また、使用する媒体は、ボードを膨張させない媒体、又は溶解しない媒体が好ましい。
【実施例0051】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りの無い限り全て質量基準である。
【0052】
実施例1
<メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の作製>
硫酸中の対数粘度1.5のポリメタフェニレンイソフタルアミド20部を、塩化リチウム5部を含むN,N-ジメチルアセトアミド90部に溶解し、この溶液を高速回転でかき混ぜているホモミキサー中のグリセリン水溶液に導入してパルプ状物を得て、このパルプ状物をシングルディスクリファイナーに通し、フィブリル化させて変法濾水度を調整し、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml、長さ加重平均繊維長0.519mm、質量加重平均繊維長0.843mm、繊維幅19.9μm)を得た。
【0053】
<ボードの作製>
パラマウント硝子工業社製グラスウールを60部、ガラス繊維(日東紡績社製、繊維径10.5μm、繊維長6mm)を30部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部、熱融着性バインダー繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点:255℃)、鞘成分が非晶性の共重合体ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体、融点:110℃)であり、繊度1.1デシテックス、繊維径11μm、繊維長5mm、芯成分/鞘成分の体積比が50/50の芯鞘型ポリエステル複合繊維5部を、パルパーにより水中で分散し、濃度0.5%の均一なスラリーを調成し、円網抄紙機を用いて、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。湿紙を円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量2000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量2000g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0054】
実施例2
実施例1で使用したグラスウールを70部、実施例1で使用したガラス繊維を20部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を7部、実施例1で使用した芯鞘型ポリエステル複合繊維を3部とし、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量2000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量2000g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0055】
実施例3
実施例1で使用したグラスウールを80部、実施例1で使用したガラス繊維を12部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を5部、実施例1で使用した芯鞘型ポリエステル複合繊維を3部とし、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量2000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量2000g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0056】
実施例4
実施例1で使用したグラスウールを68部、実施例1で使用したガラス繊維を20部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を7部、実施例1で使用した芯鞘型ポリエステル複合繊維を5部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量92.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量925g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量925g/m2の湿紙を4枚積層して、乾燥坪量3700g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量3700g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0057】
実施例5
実施例1で使用したグラスウールを45部、実施例1で使用したガラス繊維を40部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部、実施例1で使用した芯鞘型ポリエステル複合繊維を5部とした以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を4枚積層して、乾燥坪量4000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量4000g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0058】
比較例1
旭ファイバーグラス社製グラスロン(GLASRON、登録商標)ウールボード:GW32(坪量800g/m2、厚さ25mm)をカッターで厚み10mmに切断して比較例1として使用した。
【0059】
比較例2
実施例1で使用したグラスウールを80部、実施例1で使用したガラス繊維を20部、とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量130g/m2の湿紙を得た。この湿紙の上から噴霧器を用いて、コロイダルシリカ(日産化学工業社製、スノーテックス(登録商標)C):セピオライト(昭和KDE社製、ミルコン(登録商標)SP-2)=80:20の20%水溶液を乾燥質量20g/m2となるように塗布した。この乾燥坪量150g/m2の湿紙を25枚積層し、乾燥坪量3750g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱風乾燥機を用いて乾燥し、坪量3750g/m2、厚さ14mmのグラスウールボードを作製した。
【0060】
比較例3
実施例1で使用したグラスウールを60部、実施例1で使用したガラス繊維を30部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量92.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量925g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量925g/m2の湿紙を4枚積層して、乾燥坪量3700g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量3700g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0061】
比較例4
実施例1で使用したガラス繊維を60部、実施例1で使用したガラス繊維を30部、実施例1で使用した芯鞘型ポリエステル複合繊維を10部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量87.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量875g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量875g/m2の湿紙を4枚積層して、乾燥坪量3500g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、3.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量3500g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0062】
比較例5
実施例1で使用したグラスウールを85部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部、実施例1で使用した芯鞘型ポリエステル複合繊維を5部とし、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を4枚積層して、乾燥坪量4000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量4000g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0063】
比較例6
実施例1で使用したガラス繊維を80部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部、実施例1で使用した芯鞘型ポリエステル複合繊維を10部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量92.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量925g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量925g/m2の湿紙を4枚積層して、乾燥坪量3700g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、3.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量3700g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0064】
実施例及び比較例のグラスウールボードについて、下記物性の測定と評価を行い、結果を表1に示した。
【0065】
<グラスウールボードの坪量>
JIS P 8124:2011に準拠して、グラスウールボードの坪量を測定した。
【0066】
<グラスウールボードの厚み>
グラスウールボードの厚みは、ミツトヨ製、M形標準ノギスを用いて、四隅の厚みを測定し、その平均値とした。
【0067】
<ハンドリング性>
グラスウールボードのハンドリング性の評価としては、幅方向910mm×流れ方向1820mmの三六判に4枚切り出し、次の評価基準で評価した。なお、4枚の評価結果のうち、最も低い評価基準を採用した。
【0068】
○:ボードを持ち上げた際にボードが折り曲がることがない。ボードの表面に毛羽立ちが無く、ボード表面を触った際にチクチク感が無い。エッジに損傷やカット不良が無い。
【0069】
△:ボードを持ち上げた際にボードがしなることがある。ボードの表面に毛羽立ちが少し見られ、ボードの表面を触った際に少しチクチク感がある。エッジに損傷やカット不良が見られる場合がある。
【0070】
×:ボードを持ち上げた際にボードが折れ曲がることがある。ボードの表面に毛羽立ちがあり、ボードの表面を触った際にチクチク感がある。エッジに損傷やカット不良が見られる。
【0071】
<断熱性>
グラスウールボードの断熱性の評価としては、各ボードから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を3枚切り出し、各試験片を600℃に設定したホットプレート(商品名:超高温ホットプレートPA8010-CC、MSAファクトリー社製、プレート面積:100mm×100mm)上に置き、ホットプレートに接していないボード上面の20分後の表面温度を測定した。
【0072】
<耐火性>
グラスウールボードの耐火性の評価としては、各シートから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を3枚切り出し、各試験片の中央部にバーナー(商品名:ラボバーナーAPTL、株式会社フェニックスデント製)の火炎を20分間照射した。その後、火炎を当てた側のボード表面を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。バーナーの火炎温度は、1000℃であった。
【0073】
○:ボードに穴や亀裂や溶融が無い。
△:火炎を当てたボードの表面に溶融や凹みがわずかに見られる。
×:ボードに穴や亀裂がある。
【0074】
<打ち抜き加工性>
グラスウールボードの打ち抜き加工性の評価としては、JIS K 6251:2017の2号型ダンベル形状の試料の打ち抜き加工を3回行い、次の評価基準で評価した。
【0075】
〇:打ち抜き加工性が良好。
△:打ち抜き可能であるが、試料に皺や変形が入る場合。
×:うまく打ち抜けない場合や試料に亀裂や割れが入る場合。
【0076】
【0077】
表1に示した通り、実施例1~5で作製したグラスウールボードは、グラスウールとガラス繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物と熱融着性バインダー繊維を含有している。実施例1~5で作製したグラスウールボードは、ハンドリング性、断熱性、耐火性、打ち抜き加工性のいずれの評価も優れていた。
【0078】
比較例1のグラスウールボードは、市販の低密度なグラスウールを樹脂で固めたものであるが、実施例と比較すると、断熱性が低く、バーナー炎を照射した場合、燃え上がることはないが、溶けて10秒以内に穴が開き、打ち抜き加工性に劣る結果であった。
【0079】
比較例2で作製したボードは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物や熱融着性バインダー繊維を含有しておらず、無機バインダーのコロイダルシリカとセピオライトで固めたものである。ハンドリング性は問題ないものの、バーナー炎を照射した場合、表面が溶融して徐々に穴が進行し、耐火性に劣ることが判った。また、硬く、脆いため、打ち抜き加工性に劣っていた。
【0080】
比較例3で作製したボードは、熱融着性バインダー繊維を含有しない場合であるが、打ち抜き加工性がやや劣る結果であった。
【0081】
比較例4で作製したボードは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有しない場合であるが、ハンドリング性、耐火性、打ち抜き加工性にやや劣る結果となった。
【0082】
比較例5で作製したボードは、ガラス繊維を含有していない場合であるが、熱プレス加工工程において、層間剥離が発生しやすく、ハンドリング性も劣る結果であった。また、バーナー試験において、ボード表面に溶融による凹みが見られ、打ち抜き加工性に劣る結果であった。
【0083】
比較例6で作製したボードは、グラスウールを含有していない場合であるが、ボードのエッジや表面を触った際にチクチク感が感じられ、エッジのカット面がぎざぎざになり、ハンドリング性が劣る結果となった。また、実施例4と比較した場合、断熱性と耐火性に劣る結果となった。また、打ち抜き加工性も劣る結果であった。