(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109217
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】発光装置及びセンシングシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20230801BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20230801BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20230801BHJP
F21K 9/27 20160101ALI20230801BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20230801BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230801BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230801BHJP
【FI】
H01L33/50
G01N21/359
G01N21/01 D
F21K9/27
A61B5/1455
A61B5/02 310B
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010608
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 省吾
(72)【発明者】
【氏名】新田 充
(72)【発明者】
【氏名】鴫谷 亮祐
【テーマコード(参考)】
2G059
4C017
4C038
5F142
【Fターム(参考)】
2G059AA06
2G059BB04
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2G059KK01
2G059MM01
4C017AA09
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5F142AA22
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5F142HA01
5F142HA05
(57)【要約】
【課題】酸素飽和度などの高精度な測定を支援する。
【解決手段】発光装置2は、出力光Lを発する発光装置であって、発光素子21及び第1蛍光体を含み、第1光L1を発する第1発光部20と、発光素子31及び第2蛍光体を含み、第2光L2を発する第2発光部30と、を備える。発光素子31は、発光素子21が発する光と同じ色の光を発する。出力光Lは、第1光L1及び第2光L2を含む。第1光L1は、白色光である。第2光L2は、720nm以上900nm以下の波長範囲全体に亘って所定値以上である。720nm以上900nm以下の波長範囲内における第2光L2の光強度の最大値に対する第2光L2の720nmにおける光強度の比、及び、第2光L2の850nmにおける光強度の比はそれぞれ、0.1以上である。第1光L1の光強度の最大値に対する、第2光L2の光強度の最大値の比は、0.05以上20以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力光を発する発光装置であって、
第1発光素子及び第1蛍光体を含み、第1光を発する第1発光部と、
第2発光素子及び第2蛍光体を含み、第2光を発する第2発光部と、を備え、
前記第2発光素子は、前記第1発光素子が発する光と同じ色の光を発し、
前記出力光は、前記第1光及び前記第2光を含み、
前記第1光は、白色光であり、
前記第2光は、720nm以上900nm以下の波長範囲全体に亘って所定値以上であり、
720nm以上900nm以下の波長範囲内における前記第2光の光強度の最大値に対する前記第2光の720nmにおける光強度の比、及び、前記最大値に対する前記第2光の850nmにおける光強度の比はそれぞれ、0.1以上であり、
前記第1光の光強度の最大値に対する、前記第2光の光強度の最大値の比は、0.05以上20以下である、
発光装置。
【請求項2】
前記第2発光部は、前記第2発光素子が発する光の少なくとも一部を吸収又は反射するフィルタをさらに含む、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2蛍光体は、Cr3+を含む近赤外蛍光体である、
請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
基板をさらに備え、
前記第1発光部及び前記第2発光部は、前記基板に配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1発光素子及び前記第2発光素子は、青色光を発する青色LED(Light Emitting Diode)である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2光は、白色光を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2発光部は、前記第1蛍光体と同じ種類の第3蛍光体をさらに含む、
請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2光の出力エネルギーに対する前記第2光が含む白色光の出力エネルギーの割合は、50%未満である、
請求項6又は7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2光の出力エネルギーは、5mW以上であり、
前記第2光が含む白色光の光束は、100lm未満である、
請求項6~8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2光が含む白色光は、JIS Z 9112:2004で規定されている白色光の色度座標範囲の発光色を有する、
請求項6~9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1発光部及び前記第2発光部の各々の点灯を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第1時間帯では、前記第1発光部及び前記第2発光部を点灯させ、前記第1時間帯とは異なる第2時間帯では、前記第2発光部を点灯させ、かつ、前記第1発光部を前記第1時間帯よりも弱い出力で点灯させる、
請求項1~10のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の発光装置と、
前記出力光の反射光を検知する検知装置と、を備える、
センシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びセンシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、近紫外から青色領域の励起光を発する発光素子と、励起光によって励起されて赤色光を発する第1蛍光体と、励起光によって励起されて近赤外光を発する第2蛍光体と、を備える発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、酸素飽和度などの高精度な測定を支援することができる発光装置及びセンシングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る発光装置は、出力光を発する発光装置であって、第1発光素子及び第1蛍光体を含み、第1光を発する第1発光部と、第2発光素子及び第2蛍光体を含み、第2光を発する第2発光部と、を備える。前記第2発光素子は、前記第1発光素子が発する光と同じ色の光を発する。前記出力光は、前記第1光及び前記第2光を含む。前記第1光は、白色光である。前記第2光は、720nm以上900nm以下の波長範囲全体に亘って所定値以上である。720nm以上900nm以下の波長範囲内における前記第2光の光強度の最大値に対する前記第2光の720nmにおける光強度の比、及び、前記最大値に対する前記第2光の850nmにおける光強度の比はそれぞれ、0.1以上である。前記第1光の光強度の最大値に対する、前記第2光の光強度の最大値の比は、0.05以上20以下である。
【0006】
本発明の一態様に係るセンシングシステムは、上記一態様に係る発光装置と、前記出力光の反射光を検知する検知装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素飽和度などの高精度な測定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る発光装置を備える照明装置の外観を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る発光装置の一部を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る発光装置の一部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る発光装置が発する第1光のスペクトルを示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る発光装置が発する第2光のスペクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る発光装置が発する出力光のスペクトルを示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る発光装置の一部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る発光装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る発光装置の動作例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係る発光装置の一部を示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態3に係る発光装置が発する第2光のスペクトルの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3に係る発光装置が発する第2光のスペクトルの別の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態3に係る発光装置が発する第2光(白色光)の色を示す色度図である。
【
図14】
図14は、実施の形態3に係る発光装置の動作例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施の形態4に係るセンシングシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本発明の実施の形態に係る発光装置及びセンシングシステムについて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0011】
また、本明細書において、要素間の関係性を示す用語、及び、要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0012】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数又は順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0013】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る発光装置の構成について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る発光装置2を備える照明用光源1の外観の一例を示す一部切り欠き斜視図である。
図2及び
図3は、本実施の形態に係る発光装置2の一部を示す平面図及び断面図である。
図3は、
図2のIII-III線における断面を表している。
【0015】
図1に示される照明用光源1は、例えば、直管ランプであり、発光装置2と、発光装置2を覆う透光性の筐体と、当該筐体の端部に設けられた口金と、を備える。
図1では、筐体の一部を切り欠いて図示している。照明用光源1は、例えば、天井に固定された器具本体に取り付けられて使用される。口金を介して器具本体から供給される電力によって、発光装置2が点灯する。なお、発光装置2は、ダウンライト、スポットライト、シーリングライト、ペンダントライト、ウォールライト又はフロアライトに備えられてもよい。
【0016】
発光装置2は、出力光を発する。出力光は、
図3に示される第1光L1及び第2光L2を含む。第1光L1は、第1発光部20が発する白色光である。第2光L2は、第2発光部30が発する近赤外光である。
【0017】
発光装置2は、
図2に示されるように、基板10と、第1発光部20と、第2発光部30と、を備える。本実施の形態では、発光装置2は、複数の第1発光部20と、複数の第2発光部30と、を備える。第1発光部20と第2発光部30とは、1つずつ交互に一列に並んで配置されている。なお、第1発光部20及び第2発光部30の個数及び配置は特に限定されない。
【0018】
基板10は、第1発光部20及び第2発光部30を実装するための実装用基板である。基板10には、第1発光部20及び第2発光部30に電力を供給するための金属配線(図示せず)が設けられている。基板10は、例えば、セラミックスからなるセラミックス基板、樹脂からなる樹脂基板、又は、ガラス基板などの絶縁基板である。あるいは、基板10は、金属板に絶縁膜が被膜されたメタルベース基板(金属基板)でもよい。
【0019】
第1発光部20は、
図3に示されるように、発光素子21と、第1蛍光体を含む蛍光体層22と、パッケージ23と、を含む。第1発光部20は、表面実装型(SMD:Surface Mount Device)の発光部である。
【0020】
発光素子21は、第1発光素子の一例であり、1次光L1aを発する。発光素子21は、例えば、LED(Light Emitting Diode)チップであり、パッケージ23の凹部内に配置されている。なお、パッケージ23は、例えば、樹脂材料を用いて所定形状に成形された容器である。
【0021】
発光素子21は、例えば、中心波長(発光スペクトルのピーク波長)が430nm以上495nm以下の範囲にある青色LEDチップである。一例として、発光素子21は、1次光L1aとして、ピーク波長が約440nmの青色光を発する青色LEDチップである。
【0022】
発光素子21の1個あたりの1次光L1aの出力エネルギーは、例えば、5mW以上であるが、10mW以上でもよく、30mW以上でもよい。発光装置2が備える全ての発光素子21からの1次光L1aの合計での出力エネルギーは、例えば10mW以上である。1次光L1aの合計での出力エネルギーは、100mW以上でもよく、1W以上でもよく、5W以上でもよく、10W以上でもよい。1次光L1aの出力エネルギーが大きくなるにつれて、2次光L1bの出力エネルギーも大きくなる。
【0023】
蛍光体層22は、第1蛍光体と、樹脂層と、を含む。樹脂層の内部に第1蛍光体が分散されている。樹脂層は、可視光及び近赤外光に対して透光性を有する。例えば、樹脂層は、シリコーン樹脂を用いて形成されるが、これに限定されない。蛍光体層22は、パッケージ23の凹部内を埋めるように設けられている。
【0024】
第1蛍光体は、1次光L1aの少なくとも一部を2次光L1bに変換する波長変換体である。第1蛍光体は、黄色光を発する黄色蛍光体である。黄色蛍光体としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系の蛍光体を利用することができる。
【0025】
第1発光部20が発する第1光L1は、1次光L1aと、2次光L1bと、を含む。つまり、1次光L1aと2次光L1bとの合成光が第1光L1である。1次光L1aが青色光であり、2次光L1bが黄色光であるので、第1光L1は白色光となる。
【0026】
なお、蛍光体層22は、複数種類の第1蛍光体を含んでもよい。複数種類の第1蛍光体は、例えば、黄色蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体などの可視光蛍光体を含んでいてもよい。蛍光体層22が黄色蛍光体以外の可視光蛍光体を含むことで、第1光L1の色温度を変更することができる。
【0027】
第2発光部30は、
図3に示されるように、発光素子31と、第2蛍光体を含む蛍光体層32と、パッケージ33と、を含む。第2発光部30は、SMD型の発光部である。
【0028】
発光素子31は、第2発光素子の一例であり、1次光L2aを発する。発光素子31は、LEDチップであり、パッケージ33の凹部内に配置されている。なお、パッケージ33は、例えば、樹脂材料を用いて所定形状に成形された容器である。
【0029】
発光素子31は、発光素子21が発する1次光L1aと同じ色の1次光L2aを発する。本実施の形態では、発光素子31は、青色光を発する青色LEDチップである。例えば、発光素子31は、発光素子21と同じ種類のLEDチップである。発光素子31が発する1次光L2aの出力エネルギーは、例えば、発光素子21が発する1次光L1aの出力エネルギーと同じである。
【0030】
例えば、発光素子31の1個あたりの1次光L2aの出力エネルギーは、5mW以上であるが、10mW以上でもよく、30mW以上でもよい。発光装置2が備える全ての発光素子31からの1次光L2aの合計での出力エネルギーは、例えば10mW以上である。1次光L2aの合計での出力エネルギーは、100mW以上でもよく、1W以上でもよく、5W以上でもよく、10W以上でもよい。1次光L2aの出力エネルギーが大きくなるにつれて、2次光L2bの出力エネルギーも大きくなる。
【0031】
蛍光体層32は、第2蛍光体と、樹脂層と、を含む。樹脂層の内部に第2蛍光体が分散されている。樹脂層は、可視光及び近赤外光に対して透光性を有する。例えば、樹脂層は、シリコーン樹脂を用いて形成されるが、これに限定されない。蛍光体層32は、パッケージ33の凹部内を埋めるように設けられている。
【0032】
第2蛍光体は、1次光L2aの少なくとも一部を2次光L2bに変換する波長変換体である。第2蛍光体は、近赤外光を発する近赤外蛍光体である。つまり、2次光L2bは、近赤外帯域の光を含んでいる。
【0033】
近赤外蛍光体としては、例えば、780nm以上2500nm未満、好ましくは800nm以上2500nmの波長範囲内に蛍光強度のピークを有する蛍光体を使用することができる。これにより、第2光L2は、人の目に見えない赤外光成分を含むことができる。そして、この場合、近赤外蛍光体に吸収される1次光L2aとしては、380nm以上700nm未満の可視光の波長範囲内に強度最大値を示す光(例えば、青色光)を使用することができる。
【0034】
なお、少なくとも780nm以上2500nm未満の波長範囲内に、蛍光強度を有する光を放つものであれば、近赤外蛍光体として、780nm未満の波長範囲内に蛍光強度のピークを有する蛍光体を使用することもできる。
【0035】
近赤外蛍光体としては、希土類イオン及び遷移金属イオンの少なくとも一方で賦活され、近赤外の光成分を含む蛍光を放つ蛍光体を利用することができる。希土類イオンは、Nd3+、Eu2+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+からなる群より選ばれる少なくとも1つである。遷移金属イオンはTi3+、V4+、Cr4+、V3+、Cr3+、V2+、Mn4+、Fe3+、Co3+、Co2+及びNi2+からなる群より選ばれる少なくとも1つである。そして、近赤外蛍光体としては、上述のイオンを発光中心として含有し、母体として、酸化物、硫化物、窒化物、ハロゲン化物、酸硫化物、酸窒化物及び酸ハロゲン化物の少なくとも1つを含有した蛍光体を使用することができる。
【0036】
本実施の形態では、近赤外蛍光体として、例えばCr3+を含む蛍光体を利用することができる。これにより、可視光、特に青色光又は赤色光を吸収して近赤外の光成分に変換する性質を持つ近赤外蛍光体を容易に実現することができる。また、母体の種類によって、光吸収ピーク波長及び/又は蛍光ピーク波長を変えることも容易となるので、励起スペクトル形状及び/又は蛍光スペクトル形状を変えるうえで有利になる。
【0037】
また、青色光又は赤色光を吸収して近赤外の蛍光成分に変換するCr3+賦活蛍光体は、数多く知られている。このため、発光素子31の選択の幅が広がるだけでなく、2次光L2bの蛍光ピーク波長を変えることが容易となるため、第2光L2の分光分布の制御に有利となる。
【0038】
例えば、近赤外蛍光体としては、ガーネット型の結晶構造を有し、Cr3+で賦活された複合酸化物蛍光体を利用することができる。このようなCr3+賦活ガーネット蛍光体は、例えば、希土類アルミニウムガーネット蛍光体及び希土類ガリウムガーネット蛍光体の少なくとも一方である。具体的には、Cr3+賦活ガーネット蛍光体は、例えば、Y3Al2(AlO4)3:Cr3+、La3Al2(AlO4)3:Cr3+、Gd3Al2(AlO4)3:Cr3+、Y3Ga2(AlO4)3:Cr3+、La3Ga2(AlO4)3:Cr3+、Gd3Ga2(AlO4)3:Cr3+、Y3Sc2(AlO4)3:Cr3+、La3Sc2(AlO4)3:Cr3+、Gd3Sc2(AlO4)3:Cr3+、Y3Ga2(GaO4)3:Cr3+、La3Ga2(GaO4)3:Cr3+、(Gd,La)3Ga2(GaO4)3:Cr3+、Gd3Ga2(GaO4)3:Cr3+、Y3Sc2(GaO4)3:Cr3+、La3Sc2(GaO4)3:Cr3+、Gd3Sc2(GaO4)3:Cr3+、及び(Gd,La)3(Ga,Sc)2(GaO4)3:Cr3+からなる群より選ばれる少なくとも1つである。また、Cr3+賦活ガーネット蛍光体は、これらの蛍光体を端成分としてなる固溶体であってもよい。
【0039】
また、近赤外蛍光体としては、ガーネット型以外の結晶構造を有するCr3+賦活蛍光体であってもよい。ガーネット型以外の結晶構造を有するCr3+賦活蛍光体は、820nm以上の波長範囲に蛍光強度のピークを有しやすいので、酸素飽和度などを高精度で測定できる光を放つ発光装置を提供できる。
【0040】
このような近赤外蛍光体は、高出力に対する耐久性が高い。励起光(1次光L2a)の出力エネルギーが高い程、近赤外蛍光体による波長変換の際に発生する熱も多くなり、温度が上昇する。上述した近赤外蛍光体は、高温での劣化がしにくく、高い出力エネルギーの1次光L2aを効率良く2次光L2bに変換することができる。
【0041】
1個あたりの蛍光体層32が発する2次光L2bの出力エネルギーは、例えば5mW以上である。あるいは、1個あたりの蛍光体層32が発する2次光L2bの出力エネルギーは、10mW以上でもよく、30mW以上でもよい。発光装置2が備える全ての蛍光体層32からの2次光L2bの合計での出力エネルギーは、例えば10mW以上である。2次光L2bの合計での出力エネルギーは、30mW以上でもよく、500mW以上でもよく、1W以上でもよく、2W以上でもよい。2次光L2bの出力エネルギーが大きくなる程、酸素飽和度などのバイタルの測定精度を高めることができる。
【0042】
近赤外光を含む第2光L2は、人の血液の酸素飽和度、及び、脈波などのバイタルの測定(非接触センシング)に利用可能である。例えば、酸素飽和度の測定は、血液中のヘモグロビンによる光の吸収を利用して行われる。具体的には、酸素と結びついたヘモグロビン(HbO2)と、酸素を離したヘモグロビン(Hb)とでは、波長毎の吸光度を表す吸光度曲線が相違する。例えば、720nmの波長及びその近傍では、Hbの吸光度がHbO2の吸光度よりも大きい。また、850nmの波長及びその近傍では、HbO2の吸光度がHbの吸光度よりも大きい。
【0043】
このため、この2つの波長を含む出力光Lを照射して、血管からの反射光を受光し、受光した光の強度の比率を算出することにより、HbとHbO2との比率、すなわち、酸素飽和度を算出することができる。また、同様に、動脈血の時間的な変動を検出することにより、脈波の測定も可能である。十分な強度の光を照射することで、ノイズなどの影響を抑制し、酸素飽和度又は脈波などのバイタルの測定精度を高めることができる。
【0044】
[第1光、第2光及び出力光のスペクトル]
次に、第1光L1、第2光L2及び出力光Lの各々のスペクトルについて、
図4~
図6を用いて説明する。
【0045】
図4は、本実施の形態に係る発光装置2の第1光L1のスペクトルを示す図である。
図4において、横軸は波長(単位:nm)を表し、縦軸は発光強度を表している。これは、
図5及び
図6でも同様である。
【0046】
図4に示されるように、第1光L1は、発光素子21から発せられる1次光L1a(青色光)の発光ピークと、黄色蛍光体から発せられる2次光L1bのブロードなピークと、を含んでいる。1次光L1aのピーク及び2次光L1bのピークはいずれも、可視光帯域に含まれている。なお、可視光帯域は、例えば380nm以上780nm以下の範囲とみなすことができる。
【0047】
具体的には、1次光L1aのピーク波長は、約440nmであり、半値幅は約20nmである。2次光L1bは、約560nmと約630nmとに2つのピークを含んでいる。2次光L1bは、約490nm以上約680nm以下の波長範囲の全体に亘って、ピーク強度(約630nmのピーク強度)の50%以上の強度を有する。
【0048】
このように、第1光L1は、可視光帯域のほぼ全域に亘って高い光強度を有する白色光である。なお、第1蛍光体の種類及び含有量などを調整することによって、白色光のスペクトル及び色温度を調整することが可能である。第1光L1のスペクトルは、
図4に示される例には限定されない。
【0049】
図5は、本実施の形態に係る発光装置2の第2光L2のスペクトルを示す図である。
【0050】
図5に示されるように、第2光L2は、発光素子31から発せられる1次光L2a(青色光)の発光ピークと、近赤外蛍光体から発せられる2次光L2bのピークと、を含んでいる。1次光L2aのピーク波長は、
図4に示される1次光L1aのピーク波長と同じである。
【0051】
第2光L2は、720nm以上900nm以下の波長範囲全体に亘って所定値以上の光強度を有する。つまり、第2光L2は、ブロードな近赤外成分を含んでいる。
【0052】
なお、第2光L2は、720nm以上850nm以下の波長範囲全体に亘って所定値以上の光強度を有するものであってもよい。
【0053】
所定値は、例えば、ピーク強度の0.05倍以上である。所定値は、ピーク強度の0.1倍以上であってもよく、0.2倍以上であってもよく、0.3倍以上であってもよく、0.4倍以上であってもよく、0.5倍以上であってもよい。なお、ピーク強度は、720nm以上900nm以下の波長範囲内に含まれる最大ピークの強度である。所定値が大きい程、第2光L2が含む近赤外光成分の強度が大きくなるので、酸素飽和度などの測定精度を高めることができる。また、第2光L2が720nm以上900nm以下の波長範囲全体で高い光強度を有するので、受光器(光検出器)の特性が変化しても、測定精度の低下を抑制することができる。つまり、光検出器の特性に厳しい測定条件が要求されないので、汎用性が高いセンシングシステムに対する発光装置2の適用が可能である。
【0054】
また、720nm以上900nm以下の波長範囲内における第2光L2の光強度の最大値(すなわち、2次光L2bのピーク強度)に対する第2光L2の720nmにおける光強度の比は、0.1以上である。同様に、720nm以上900nm以下の波長範囲内における第2光L2の光強度の最大値(ピーク強度)に対する第2光L2の850nmにおける光強度の比は、0.1以上である。720nmより大きく900nmより小さい波長範囲では、第2光L2の光強度は、720nmにおける光強度及び850nmにおける光強度の少なくとも一方よりも高い。
【0055】
例えば、第2光L2のピーク波長は、約730nmである。当該ピーク波長の光強度を1とした場合、720nmの光強度は、約0.9であり、850nmの光強度は、約0.17である。第2光L2のピークの半値幅は、約90nmである。
【0056】
図6は、本実施の形態に係る発光装置2の出力光Lのスペクトルを示す図である。本実施の形態では、出力光Lは、第1光L1と第2光L2との合成光である。このため、
図6に示されるように、出力光Lのスペクトルは、
図4に示されるスペクトルと
図5に示されるスペクトルとを重ねたものになる。
【0057】
本実施の形態では、第1光L1の光強度の最大値(ピーク強度)に対する、第2光L2の光強度の最大値(ピーク強度)の比は、0.05以上20以下である。例えば、第1光L1のピーク強度に対する第2光L2のピーク強度の比は、0.05以上1未満であってもよい。すなわち、第1光L1のピーク強度は、第2光L2のピーク強度よりも低くてもよい。簡単に言えば、発光装置2は、白色光よりも強い近赤外光を含む出力光Lを出力してもよい。これにより、空間照明装置として発光装置2を有効に利用することができる。
【0058】
あるいは、第1光L1のピーク強度に対する第2光L2のピーク強度の比は、1よりも大きく、20以下であってもよい。すなわち、第1光L1のピーク強度は、第2光L2のピーク強度よりも高くてもよい。簡単に言えば、発光装置2は、近赤外光よりも強い白色光を含む出力光を出力してもよい。これにより、酸素飽和度などの測定を支援する装置として発光装置2を有効に利用することができる。
【0059】
なお、実施の形態2で後述するように、第1発光部20と第2発光部30とは、独立して点灯が制御される。すなわち、発光装置2は、(i)第1発光部20を点灯し、第2発光部30を消灯するモード(可視光点灯モード)、(ii)第1発光部20を消灯し、第2発光部30を点灯するモード(近赤外光点灯モード)、及び(iii)第1発光部20及び第2発光部30の両方を点灯するモード(両点灯モード)の3つの動作モードを切り替えて実行可能である。
【0060】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る発光装置2は、出力光Lを発する発光装置であって、発光素子21及び第1蛍光体を含み、第1光L1を発する第1発光部20と、発光素子31及び第2蛍光体を含み、第2光L2を発する第2発光部30と、を備える。発光素子31は、発光素子21が発する光と同じ色の光を発する。出力光Lは、第1光L1及び第2光L2を含む。第1光L1は、白色光である。第2光L2は、720nm以上900nm以下の波長範囲全体に亘って所定値以上である。720nm以上900nm以下の波長範囲内における第2光L2の光強度の最大値に対する第2光L2の720nmにおける光強度の比、及び、第2光L2の850nmにおける光強度の比はそれぞれ、0.1以上である。第1光L1の光強度の最大値に対する、第2光L2の光強度の最大値の比は、0.05以上20以下である。
【0061】
これにより、酸素飽和度などの高精度な測定を支援することができる。具体的には、HbとHbO2とで吸光度が異なる720nm及び850nmの各々の波長の光強度が高いので、SN比を高くすることができ、酸素飽和度などの測定精度を高めることができる。また、第2光L2が720nm以上900nm以下の波長範囲全体で高い光強度を有するので、受光器の特性が変化しても、測定精度の劣化を抑制することができる。つまり、受光器の特性に厳しい測定条件が要求されないので、汎用性が高いセンシングシステムに対する発光装置2の適用が可能である。また、発光装置2は、第1光L1及び第2光L2の両方を発することができるので、照明装置として、及び、センシングを支援する装置として利用することができる。
【0062】
また、例えば、第2蛍光体は、Cr3+を含む近赤外蛍光体である。
【0063】
これにより、高温での劣化が少ない蛍光体を実現することができる。このため、励起光である1次光L2aの出力エネルギーを利用することができ、高い効率で所望の出力光Lを発することができる。また、1つの発光素子31からの1次光L2aの出力エネルギーを高くすることができるので、発光素子31の数を減らすことができる。これにより、発光装置2の小型化を実現することができる。
【0064】
また、例えば、発光装置2は、基板10を備える。第1発光部20及び第2発光部30は、基板10に配置されている。
【0065】
これにより、第1発光部20及び第2発光部30が同一の基板10に配置されているので、発光装置2の小型化を実現することができる。
【0066】
また、例えば、発光素子21及び31は、青色光を発する青色LEDである。
【0067】
これにより、発光素子21及び31として、同じ種類のLEDチップを利用することができる。よって、駆動回路の回路設計及び放熱設計を簡単にすることができ、低コスト化も実現することができる。
【0068】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0069】
実施の形態2に係る発光装置では、実施の形態1と比較して、第2発光部がフィルタを備える点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0070】
図7は、本実施の形態に係る発光装置102の断面図である。
図7に示されるように、発光装置102は、基板10と、第1発光部20と、第2発光部130と、を備える。第2発光部130は、
図4に示される第2発光部30の構成に加えて、フィルタ134を備える。
【0071】
フィルタ134は、1次光L2a及び2次光L2bの少なくとも一方の少なくとも一部を吸収又は反射する。本実施の形態では、フィルタ134は、1次光L2aのほぼ全てと、2次光L2bのうちの可視光成分と、を吸収又は反射する可視光カットフィルタである。このため、フィルタ134を介して出射される第2光L2は、1次光L2aを含まず、2次光L2bとほぼ同じスペクトルを有する。
【0072】
フィルタ134は、例えば、樹脂又はガラスなどの基材の内部に分散された吸収色素を含む。あるいは、フィルタ134は、基材の表面に形成された、可視光成分を反射する反射膜を含む。反射膜は、例えば誘電体多層膜であってもよい。なお、反射膜は、蛍光体層32及びパッケージ33の表面に直接設けられていてもよい。目的の波長成分の透過を抑制することができれば、フィルタ134の構成は特に限定されない。
図7では、フィルタ134は、蛍光体層32及びパッケージ33に直接接触して設けられているが、離れて配置されていてもよい。
【0073】
以上のように、本実施の形態に係る発光装置102では、第2発光部130は、発光素子31が発する光の少なくとも一部を吸収又は反射するフィルタ134をさらに含む。
【0074】
これにより、第2光L2に含まれる可視光成分を除去することができる。つまり、酸素飽和度などの測定に不要な光を除去することができるので、SN比を高めて測定精度を高めることができる。
【0075】
また、第2光L2に含まれる可視光成分を十分に小さくすることで、空間デザインへの影響を抑制することができる。実験室などの特殊な環境ではなく、生活空間などの一般的な環境に発光装置102を設置しても、既存の照明環境を変化させないようにすることができる。よって、人の酸素飽和度又は脈波などのバイタルの測定を生活空間で日常的に行うことが可能になる。近赤外光を利用したバイタルの測定は、非接触で行うことが可能であるので、生活の妨げにならず、人に測定を意識させずに負担なく行うことができる。
【0076】
また、第2光L2に含まれる可視光成分は、
図5にも示したように、長波長側の赤色光である。例えば、夜間において就寝中の人物の酸素飽和度を測定する目的で第2発光部130を点灯させた場合、赤色光が暗闇を照らすことになり、空間デザインを損なうおそれがある。本実施の形態によれば、フィルタ134が赤色光を除去することができるので、空間デザインに与える影響を抑制することができる。
【0077】
一方で、第2光L2に可視光成分が含まれないため、第2発光部130のみを点灯させた場合には、目視による発光の確認が難しい。これに対して、本実施の形態に係る発光装置102では、第2発光部130を点灯させる場合には、第1発光部20も弱い強度で点灯させる。以下では、発光装置102の機能構成について、
図8を用いて説明する。
【0078】
図8は、本実施の形態に係る発光装置102の機能構成を示すブロック図である。
【0079】
図8に示されるように、発光装置102は、第1発光部20と、第2発光部130と、第1駆動回路40と、第2駆動回路50と、制御部60と、を備える。
【0080】
第1駆動回路40は、第1発光部20の点灯を制御する。具体的には、第1駆動回路40は、第1発光部20の発光素子21に電流を供給することで、発光素子21を点灯させる。なお、複数の第1発光部20は、例えば互いに電気的に直列接続されている。
【0081】
第2駆動回路50は、第2発光部130の点灯を制御する。具体的には、第2駆動回路50は、第2発光部130の発光素子31に電流を供給することで、発光素子31を点灯させる。なお、複数の第2発光部130は、例えば互いに電気的に直列接続されている。
【0082】
制御部60は、第1発光部20及び第2発光部130の各々の点灯を制御する。具体的には、制御部60は、第1駆動回路40及び第2駆動回路50の各々を制御することによって、第1発光部20及び第2発光部130の各々に供給される電流量を調整する。供給される電流量に応じて、第1発光部20及び第2発光部130の各々の点灯及び消灯、並びに、発光量が制御される。
【0083】
図9は、本実施の形態に係る発光装置102の動作例を示す図である。
図9に示されるように、制御部60は、時間帯に応じて、第1発光部20及び第2発光部130の各々の点灯を制御する。具体的には、制御部60は、活動時間帯か就寝時間帯かに応じて、第1発光部20及び第2発光部130の各々の点灯を制御する。
【0084】
活動時間帯は、第1時間帯の一例である。活動時間帯は、例えば、起床から就寝までの時間であり、一般的に照明を点灯させる時間である。活動時間帯は、例えば、朝6時から夜11時までの17時間のように、予め定められた固定の時間であってもよい。制御部60は、活動時間帯には、第1発光部20及び第2発光部130の両方を点灯させる。これにより、第1発光部20から発せられる第1光L1(白色光)によって空間照明を実現しながら、第2発光部130から発せられる第2光L2(近赤外光)によって酸素飽和度又は脈波などのバイタル測定を行うことができる。
【0085】
就寝時間帯は、第1時間帯とは異なる第2時間帯の一例である。就寝時間帯は、例えば、就寝から起床までの時間であり、一般的に照明を点灯させずに消灯している時間である。就寝時間帯は、例えば、夜11時から朝6時までの7時間のように、予め定められた固定の時間であってもよい。制御部60は、就寝時間帯には、第2発光部130を点灯させ、かつ、第1発光部20を活動時間帯よりも弱い出力で点灯させる。簡単に言えば、第1発光部20は、就寝時間帯には、微弱な白色光である第1光L1を発する。
【0086】
これにより、就寝時間帯には、微弱な白色光が発光装置102から発せられるので、ユーザは目視により発光装置102の発光を確認することができる。また、赤色光などの単色光ではなく、白色光が可視光として出射されるので、空間デザインに与える影響を抑制することができる。
【0087】
本実施の形態では、制御部60は、現在時刻を取得するタイマ機能を有し、取得した現在時刻が属する時間帯に応じて第1発光部20及び第2発光部130の各々の点灯を制御する。あるいは、制御部60は、操作スイッチ(図示せず)を介したユーザからの指示に基づいて発光部の制御を切り替えてもよい。
【0088】
例えば、発光装置102の照明機能のオンオフを切り替え可能な操作スイッチが、患者若しくは入居者又は看護師若しくは介護士その他の人物などによって操作可能な場所に設置されていてもよい。操作スイッチを介して照明機能がオンされた場合には、制御部60は、“活動時間帯”の動作モードを実行し、第1発光部20及び第2発光部130の両方を点灯させる。操作スイッチを介して照明機能がオフされた場合には、制御部60は、“就寝時間帯”の動作モードを実行し、第2発光部130を点灯させた状態で、第1発光部20の発光量を小さくする。これにより、ユーザが希望するタイミングで照明機能のオンオフの切り替えが可能にしつつ、バイタルの監視を継続して行うことができる。
【0089】
なお、制御部60は、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)によって実現される。なお、集積回路は、LSIに限られず、専用回路又は汎用プロセッサであってもよい。例えば、制御部60は、マイクロコントローラであってもよい。マイクロコントローラは、例えば、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを含んでいる。また、制御部60は、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサであってもよい。制御部60が実行する機能は、ソフトウェアで実現されてもよく、ハードウェアで実現されてもよい。
【0090】
以上のように、本実施の形態に係る発光装置102では、例えば、第1発光部20及び第2発光部130の各々の点灯を制御する制御部60を備える。制御部60は、第1時間帯では、第1発光部20及び第2発光部130を点灯させ、第1時間帯とは異なる第2時間帯では、第2発光部130を点灯させ、かつ、第1発光部20を第1時間帯よりも弱い出力で点灯させる。
【0091】
これにより、空間デザインへ与える影響を抑制しながら、発光装置102の発光を目視により確認することができる。
【0092】
このような発光装置102は、病院又は介護施設などにおいて、照明設備とセンシングシステムとを兼ねることができる。例えば、患者又は入居者のベッドを照らす照明装置として発光装置102を適用することにより、照明だけでなく、24時間のバイタルの監視(センシング)を行うことができる。
【0093】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
【0094】
実施の形態3に係る発光装置では、実施の形態1と比較して、第2発光部が近赤外光だけでなく、白色光を発する点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0095】
図10は、本実施の形態に係る発光装置202の断面図である。
図10に示される発光装置202は、基板10と、第1発光部20と、第2発光部230と、を備える。第2発光部230は、
図4に示される第2発光部30の構成に加えて、蛍光体層235を備える。
【0096】
蛍光体層235は、第1発光部20の蛍光体層22が含む第1蛍光体と同じ種類の第3蛍光体を含む層である。蛍光体層235は、樹脂層を含み、当該樹脂層の内部に第3蛍光体が分散されている。樹脂層は、可視光及び近赤外光に対して透光性を有する。例えば、樹脂層は、シリコーン樹脂を用いて形成されるが、これに限定されない。
【0097】
第3蛍光体は、1次光L2aの少なくとも一部を2次光L2cに変換する波長変換体である。第3蛍光体は、黄色光を発する黄色蛍光体である。黄色蛍光体としては、例えば、YAG系の蛍光体を利用することができる。なお、蛍光体層235は、第3蛍光体とは異なる可視光蛍光体をさらに含んでもよい。例えば、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を含んでいてもよい。蛍光体層235が第3蛍光体以外の可視光蛍光体を含むことで、2次光L2cの色温度を変更することができる。
【0098】
本実施の形態に係る第2発光部230が発する第2光L2は、1次光L2a(青色光)と、2次光L2b(近赤外光)と、2次光L2c(黄色光)と、を含む。第2光L2は、青色光と黄色光との合成光である白色光と、近赤外光と、を含む。
【0099】
第2光L2に含まれる白色光の出力エネルギーは、第2光L2に含まれる近赤外光の出力エネルギーよりも低い。具体的には、第2光L2(白色光+近赤外光)の出力エネルギーに対する第2光L2が含む白色光の出力エネルギーの割合は、80%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、20%未満であることがさらに好ましい。
【0100】
1個あたりの第2発光部230が発する第2光L2の出力エネルギーは、例えば5mW以上である。あるいは、1個あたりの第2発光部230が発する第2光L2の出力エネルギーは、10mW以上でもよく、30mW以上でもよい。発光装置202が備える第2発光部230からの第2光L2の合計での出力エネルギーは、例えば10mW以上である。第2光L2の合計での出力エネルギーは、100mW以上でもよく、1W以上でもよく、5W以上でもよく、10W以上でもよい。第2光L2の出力エネルギーが大きくなる程、酸素飽和度などのバイタルの測定精度を高めることができる。
【0101】
図11及び
図12はそれぞれ、本実施の形態に係る発光装置202が発する第2光L2のスペクトルの一例を示す図である。具体的には、
図11は、蛍光体層235として、厚さ170μmのシリコーン樹脂層内に10vol%のYAG蛍光体を含む層を利用した場合の第2光L2のスペクトルを示している。
図12は、蛍光体層235として、厚さ190μmシリコーン樹脂層内に30vol%のYAG蛍光体を含む層を利用した場合を示している。
【0102】
図11に示される例では、1次光L2aのピーク(約445nm)が僅かに残っているが、
図12に示される例では、1次光L2aのピークはほぼ存在していない。いずれの場合においても、可視光帯域内に強い単色光成分(半値幅が狭く、かつ、光強度が高い非ピーク)が含まれていない。第2光L2に含まれる可視光成分は、弱い白色光である。例えば、第2光L2が含む白色光の光束は、300lm未満であることが好ましく、100lm未満であることがより好ましく、50lm未満であることがさらに好ましい。このような弱い白色光は、常夜灯として有用である。
【0103】
図13は、本実施の形態に係る発光装置202が発する第2光L2の白色成分を示す色度図である。
図13では、JIS Z 9112:2004で規定されている白色光の色度座標範囲を、四角形の5つの枠で表している。当該5つの枠は、黒体軌跡上に位置しており、具体的には、以下の表1に示される昼光色、昼白色、白色、温白色及び電球色にそれぞれ対応している。なお、表1は、白色光の色度座標範囲を表す四角形の枠の4つの頂点の座標を表している。
【0104】
【0105】
本実施の形態では、第2光L2が含む白色光は、JIS Z 9112:2004で規定されている白色光の色度座標範囲の発光色を有する。すなわち、第2光L2が含む白色光の色は、
図13に示される5つの枠内のいずれかに位置している。これにより、第2光L2の可視光成分の色が白色になるので、既存の照明による空間デザインを損なわないようにすることができる。なお、第1発光部20が発する第1光L1も、JIS Z 9112:2004で規定されている白色光の色度座標範囲の発光色を有してもよい。
【0106】
本実施の形態に係る発光装置202は、実施の形態2と同様に、時間帯に応じた制御が可能である。具体的には、制御部60(
図8を参照)は、活動時間帯か就寝時間帯かに応じて、第1発光部20及び第2発光部230の各々の点灯を制御する。
【0107】
図14は、本実施の形態に係る発光装置202の動作例を示す図である。
図14に示されるように、就寝時間帯では、制御部60は、第2発光部230を点灯させ、かつ、第1発光部20を消灯する。本実施の形態では、第2発光部230からの第2光L2が白色光を含むので、ユーザは目視により発光装置202の発光を確認することができる。また、赤色光などの単色光ではなく、白色光が可視光として出射されるので、空間デザインに与える影響を抑制することができる。
【0108】
以上のように、本実施の形態に係る発光装置202では、第2光L2は、白色光を含む。
【0109】
これにより、第2発光部230を点灯させた場合に、第1発光部20を点灯させなくても、目視により第2発光部230の発光を確認することができる。あるいは、第1発光部がなくても、目視により第2発光部230の発光を確認することができる。
【0110】
つまり、本実施の形態に係る発光装置202は、出力光を発する発光装置であって、第2発光素子及び第2蛍光体を少なくとも含み、第2光を発する第2発光部を少なくとも備え、出力光は、第2光を少なくとも含み、第2光は、720nm以上900nm以下の波長範囲全体に亘って所定値以上であり、720nm以上900nm以下の波長範囲内における第2光の光強度の最大値に対する第2光の720nmにおける光強度の比、及び、上記最大値に対する第2光の850nmにおける光強度の比はそれぞれ、0.1以上であり、第2光は、白色光を含む、発光装置であってもよい。
【0111】
このような発光装置は、バイタル測定機能も有する、弱い白色光を放つ常夜灯専用の照明に使用することができる。
【0112】
また、例えば、第2発光部230は、第1蛍光体と同じ種類の第3蛍光体をさらに含む。
【0113】
これにより、同じ種類の蛍光体を利用することで、製造コストを削減することができる。なお、第2発光部230が白色光を発することができれば、第2発光部230は、第1蛍光体とは異なる種類の蛍光体を含んでもよい。
【0114】
また、例えば、第2光L2の出力エネルギーに対する第2光L2が含む白色光の出力エネルギーの割合は、50%未満である。
【0115】
これにより、白色光を目立たないようにすることができるので、バイタルの測定に利用するだけでなく、発光装置202を常夜灯などとしても有効に利用することができる。
【0116】
また、例えば、第2光L2の出力エネルギーは、5mW以上である。第2光L2が含む白色光の光束は、100lm未満である。
【0117】
これにより、バイタルの測定に必要な光強度を確保しながら、白色光を目立たないようにすることができる。生活空間などの一般的な環境に発光装置202を設置しても、既存の照明環境を変化させないようにしながら、バイタルの測定を生活空間で日常的に行うことが可能になる。
【0118】
また、例えば、第2光L2が含む白色光は、JIS Z 9112:2004で規定されている白色光の色度座標範囲の発光色を有する。
【0119】
これにより、空間デザインに与える影響を抑制することができる。
【0120】
なお、本実施の形態では、蛍光体層235は、蛍光体層32及びパッケージ33に接触して設けられているが、これに限定されない。蛍光体層235は、蛍光体層32及びパッケージ33から離れて配置されていてもよい。あるいは、蛍光体層235は、パッケージ33の凹部内に配置されていてもよい。例えば、蛍光体層235は、発光素子31と蛍光体層32との間に配置されていてもよい。
【0121】
なお、第3蛍光体は、蛍光体層32の内部に配置されてもよい。つまり、第2蛍光体と第3蛍光体とは、同じ樹脂層内に分散して配置されてもよい。
【0122】
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。
【0123】
実施の形態4に係るセンシングシステムは、実施の形態1~3に係る発光装置を備える。以下では、実施の形態1~3との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0124】
図15は、本実施の形態に係るセンシングシステム300の構成を示す図である。
【0125】
図15に示されるセンシングシステム300は、対象物301の特性値を測定する。対象物301は、例えば、人などの生物である。センシングシステム300は、人の酸素飽和度又は脈波などのバイタルを非接触で測定する。
【0126】
図15に示されるように、センシングシステム300は、発光装置2と、検知装置302と、を備える。なお、センシングシステム300は、発光装置2の代わりに、実施の形態2に係る発光装置102又は実施の形態3に係る発光装置202を備えてもよい。
【0127】
検知装置302は、発光装置2から発せられた出力光Lの反射光Lrを検知する。反射光Lrは、対象物301が出力光Lを反射させることで発生する光である。
【0128】
酸素飽和度又は脈波を測定する場合、上述したように、近赤外帯域に含まれる複数の波長の光を利用する。このため、検知装置302は、例えば、複数の波長の光を受光可能な光検出器を含む。光検出器は、受光した反射光Lrの強度に応じた電気信号を出力する。
【0129】
光検出器は、例えば、光が半導体のPN接合に入射したときに生じる電荷を検出する量子型の光検出器を用いることができる。具体的には、光検出器は、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトIC(Integrated Circuit)、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどである。また、光検出器としては、光を受光したときの発生熱による温度上昇によって生じる電気的性質の変化を検知する熱型の光検出器、又は光に感光する赤外線フィルムなども用いることができる。熱型の光検出器としては、熱電効果を利用するサーモパイル、焦電効果を利用する焦電素子などを利用することができる。
【0130】
検知装置302は、光検出器から出力される電気信号を処理する信号処理回路(図示せず)を含む。信号処理回路は、例えば、光検出器で受光された2つの波長の反射光Lrの強度の比率を算出することにより、HbとHbO2との比率、すなわち、酸素飽和度を算出する。あるいは、信号処理回路は、脈波を算出してもよい。
【0131】
以上のように、本実施の形態に係るセンシングシステム300は、発光装置2と、出力光Lの反射光Lrを検知する検知装置302と、を備える。
【0132】
これにより、酸素飽和度又は脈波などを高精度に測定することができる。
【0133】
また、センシングシステム300では、空間デザインへ与える影響が少ないため、発光装置2を生活空間に配置することができる。このため、人が意識的に測定を行わなくても、日常的な生活を送る中で無意識で酸素飽和度などの測定を行うことができる。このように、ユーザにとっての利便性が高いセンシングシステム300が実現できる。
【0134】
(その他)
以上、本発明に係る発光装置及びセンシングシステムについて、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0135】
例えば、第1発光部及び第2発光部はそれぞれ、樹脂内に分散された波長変換体の代わりに、波長変換体の焼結体を備えてもよい。具体的には、発光装置は、蛍光体粒子の焼結体(セラミック蛍光体)を備えてもよい。
【0136】
また、例えば、各発光部が互いに異なる複数種類の蛍光体を含む場合において、当該複数種類の蛍光体は、1つの蛍光体層内に分散して混合されて配置されていてもよく、蛍光体毎に層が分かれていてもよい。例えば、蛍光体層は、複数の樹脂層の積層構造を有し、樹脂層毎に異なる種類の蛍光体が分散して配置されていてもよい。発光素子側からの1次光が複数種類の蛍光体を順に通過して2次光に変換されることで、変換効率を高めることができる。例えば、第1種類の蛍光体からの2次光が第2種類の蛍光体に吸収される場合には、1次光の通過順で第1種類の蛍光体を第2種類の蛍光体よりも後に配置する。これにより、第1種類の蛍光体から発せられる2次光を、第2種類の蛍光体で吸収されずに外部に出射させることができる。
【0137】
また、例えば、上記の実施の形態では、第1発光部及び第2発光部がそれぞれ、SMD型の発光部である例を示したが、これに限らない。第1発光部及び第2発光部の少なくとも1つでは、LEDチップが基板10に直接実装されていてもよい。つまり、発光装置は、LEDチップが基板10に直接実装されたCOB(Chip On Board)モジュールであってもよい。
【0138】
また、発光素子は、青色LEDでなくてもよい。例えば、発光素子は、紫色LEDでもよく、紫外LEDでもよい。つまり、1次光は、青色光でなくてもよく、紫色光又は紫外光であってもよい。
【0139】
また、発光素子は、LEDでなくてもよい。例えば、発光素子は、レーザ素子又は有機EL(Electroluminescence)素子であってもよい。
【0140】
また、例えば、発光装置は、酸素飽和度又は脈波などのバイタルの測定以外に利用されてもよい。例えば、赤外線を利用したガスセンサ若しくは距離センサ、又は、監視カメラなどに利用されてもよい。
【0141】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
2、102、202 発光装置
10 基板
20 第1発光部
21、31 発光素子
22、32 蛍光体層
30、130、230 第2発光部
60 制御部
134 フィルタ
235 蛍光体層
300 センシングシステム
302 検知装置
L 出力光
L1 第1光
L1a、L2a 1次光
L1b、L2b、L2c 2次光
L2 第2光
Lr 反射光