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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109225
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】成形方法および射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/20 20060101AFI20230801BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20230801BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20230801BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B29C45/20
B22D17/20 M
B22D17/20 J
B22D17/20 L
B22D17/32 J
B22D17/32 Z
B22D18/02 C
B22D18/02 S
B22D18/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010626
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】千葉 英貴
(72)【発明者】
【氏名】中島 英昭
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM32
4F206AP03
4F206AP05
4F206AP06
4F206AR03
4F206AR06
4F206AR07
4F206JA07
4F206JD03
4F206JL02
4F206JM03
4F206JM04
4F206JN06
4F206JP14
4F206JP17
4F206JQ51
4F206JQ69
(57)【要約】
【課題】ハナタレせず適切に成形品を成形することができる成形方法を提供する。
【解決手段】プラグ形成工程S1と、予備加圧工程S3と、射出ノズル加熱工程S4とを備える成形方法とする。プラグ形成工程S1は、射出ノズル(22)内にプラグ(37)を形成させてハナタレを防止する。予備加圧工程S3はスクリュ(17)を規定圧力の圧力制御により駆動し、スクリュ(17)の前進の有無を監視する。射出ノズル加熱工程S4は、射出ノズル(22)を金型(28)にタッチさせた状態で射出ノズル(22)を加熱する。そしてスクリュ(17)の前進を検出したらスクリュ(17)を位置制御により駆動する射出動作に切り替えるようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に射出ノズルが設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内に入れられているスクリュと、を備えた射出成形機において成形品を成形する成形方法であって、
前記成形方法は、前記射出ノズル内にプラグを形成させて樹脂流路を閉鎖するプラグ形成工程と、
前記スクリュを圧力制御により駆動して射出材料を規定圧力に加圧すると共に前記スクリュの前進の有無を監視する予備加圧工程と、
前記射出ノズルを金型にタッチさせた状態で前記射出ノズルを加熱する射出ノズル加熱工程と、を備え、
前記予備加圧工程と前記射出ノズル加熱工程とを並行して実施するようにし、前記スクリュの前進を検出したら前記スクリュを位置制御により駆動する射出動作に切り替えて成形品を成形する成形方法。
【請求項2】
前記規定圧力は、前記プラグが存在するとき前記スクリュの前進が阻止されると共に前記プラグが溶融すると前記スクリュが前進するような圧力である、請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記射出材料は非鉄金属である、請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記非鉄金属は錫である、請求項3に記載の成形方法。
【請求項5】
前記射出成形機は竪型射出成形機である、請求項1~4のいずれかの項に記載の成形方法。
【請求項6】
前記スクリュの前進の検出は、スクリュ位置が規定長さを超えて変化したか否かで判断する、請求項1~5のいずれかの項に記載の成形方法。
【請求項7】
前記射出ノズル加熱工程は、前記射出ノズルの温度を測定し目標温度になるように制御する、請求項1~6のいずれかの項に記載の成形方法。
【請求項8】
前記成形方法は、前記射出ノズル加熱工程に先立って実施する予備加熱工程を備え、
前記予備加熱工程は前記射出ノズルを金型から離間させて前記射出ノズルを加熱する工程であり、
前記プラグが溶融する前に前記予備加熱工程を完了して前記射出ノズルを金型にタッチさせ前記射出ノズル加熱工程に移行する、請求項1~7のいずれかの項に記載の成形方法。
【請求項9】
金型を型締する型締装置と、
射出材料を射出する射出装置と、
コントローラと、を備え、
前記射出装置は、先端に射出ノズルが設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内に入れられているスクリュと、を備えており、
前記コントローラには、予備加圧制御手段と、射出ノズル加熱制御手段とが設けられ、
前記予備加圧制御手段は、前記射出ノズル内にプラグが形成されて樹脂流路が閉鎖された状態のときに前記スクリュを圧力制御により駆動して前記射出材料に規定圧力に加圧すると共に前記スクリュの前進の有無を監視する制御手段であり、
前記射出ノズル加熱制御手段は、前記射出ノズルを金型にタッチさせた状態で前記射出ノズルを加熱する制御手段であり、
前記コントローラにおいて前記予備加圧制御手段と前記射出ノズル加熱制御手段とが並行して実施され、前記スクリュの前進が検出されたら前記スクリュを位置制御により駆動する射出動作に切り替えるようになっている、射出成形機。
【請求項10】
前記規定圧力は、前記プラグが存在するとき前記スクリュの前進が阻止されると共に前記プラグが溶融すると前記スクリュが前進するような圧力である、請求項9に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記射出材料は非鉄金属である、請求項9または10に記載の射出成形機。
【請求項12】
前記非鉄金属は錫である、請求項11に記載の射出成形機。
【請求項13】
前記射出成形機は竪型射出成形機である、請求項9~12のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項14】
前記スクリュの前進の検出は、スクリュ位置が規定長さを超えて変化したか否かで判断されるようになっている、請求項9~13のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項15】
前記射出ノズル加熱制御手段は、前記射出ノズルの温度を測定し目標温度になるように制御するようになっている、請求項9~14のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項16】
前記コントローラは、前記射出ノズル加熱制御手段に先立って実施される予備加熱制御手段を備え、
前記予備加熱制御手段は前記射出ノズルを金型から離間させて前記射出ノズルを加熱する制御手段であり、
前記プラグが溶融する前に前記予備加熱制御手段を完了して前記射出ノズルを金型にタッチさせ前記射出ノズル加熱制御手段に移行する、請求項9~15のいずれかの項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に射出材料を射出して成形品を成形する成形方法、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は型締装置と射出装置とを備えている。型締装置により金型を型締めし、そして射出装置においてスクリュを回転して射出材料を溶融・計量する。計量が完了したらスクリュを軸方向に駆動する。すなわち射出する。射出材料は金型内に形成されているキャビティに充填される。射出材料の固化を待って金型を開くと、成形品が得られる。射出材料として樹脂材料が広く利用されているが、特許文献1に記載されているようにマグネシウム合金等の非鉄金属も利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-279728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形に利用される射出材料には、色々な物性の射出材料があるが、溶融時の粘度が低いものもある。このような射出材料は射出装置の先端に設けられている射出ノズルから漏れ出す、いわゆるハナタレを起こしやすい。ハナタレを防止するために射出ノズルの先端における射出材料の温度を低下させ、いわゆるプラグを形成することもできる。つまりプラグによってハナタレを一時的に防止し、射出時において射出ノズルを加熱してプラグを溶融する方法である。しかしながら、プラグの溶融のタイミングを正確に得ることは難しい。特に、わずかな温度の変化で粘度が大きく変化するような射出材料の場合、急激に粘度が低下するので実質的に溶融のタイミングを予測することができない。そうすると射出動作をする前に射出材料が漏れ出すおそれがある。そうすると、成形不良が発生してしまう。
【0005】
本開示において、ハナタレを防止すると共に確実に射出材料を金型に射出することができる成形方法、および射出成形機を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の成形方法は、プラグ形成工程と、予備加圧工程と、射出ノズル加熱工程とを備える。プラグ形成工程は、射出ノズル内にプラグを形成させて樹脂流路を閉鎖するようにする。予備加圧工程はスクリュを圧力制御により駆動して射出材料を規定圧力に加圧すると共にスクリュの前進の有無を監視するようにする。射出ノズル加熱工程は、射出ノズルを金型にタッチさせた状態で射出ノズルを加熱する。そして、本開示の成形方法は、予備加圧工程と射出ノズル加熱工程とを並行して実施し、スクリュの前進を検出したらスクリュを位置制御により駆動する射出動作に切り替えるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、ハナタレを防止できると共に、確実に射出材料を金型に射出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る竪型射出成形機を示す正面図である。
図2A】本実施の形態に係る射出装置の一部と、金型とを示す正面断面図である。
図2B】本実施の形態に係る射出装置の一部と、金型とを示す正面断面図である。
図2C】本実施の形態に係る射出装置の一部と、金型とを示す正面断面図である。
図2D】本実施の形態に係る射出装置の一部と、金型とを示す正面断面図である。
図2E】本実施の形態に係る射出装置の一部と、金型とを示す正面断面図である。
図2F】本実施の形態に係る射出装置の一部と、金型とを示す正面断面図である。
図2G】本実施の形態に係る射出装置の一部と、金型とを示す正面断面図である。
図3】本実施の形態に係る成形方法のフローチャートである。
図4】本実施の第2の形態に係る成形方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
本実施の形態を説明する。
<竪型射出成形機>
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、図1に示されているように、型締装置2と、この型締装置2の上部に設けられている射出装置3と、これらを制御するコントローラ4と、を備えている。
【0012】
<型締装置>
型締装置2は、筐体7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、図示されていないが筐体7内に設けられている下可動盤とを備えている。上可動盤10と下可動盤は3本のタイバー12、12、…によって連結されており、下可動盤と固定盤9の間に設けられている図示されない型締機構を駆動すると上可動盤10が上下に駆動されるようになっている。このような型締装置2には、必須な部材ではないがターンテーブル14が設けられている。ターンテーブル14は固定盤9の上に設けられ、中央の1本のタイバー12を中心に180度回転、つまり反転するようになっている。
【0013】
<射出装置>
射出装置3は、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、加熱シリンダ16と、加熱シリンダ16内に設けられているスクリュ17と、スクリュ17を駆動する駆動機構19と、射出装置3全体を昇降する昇降装置20と、を備えている。加熱シリンダ16にはその先端に射出ノズル22が設けられている。そして加熱シリンダ16と射出ノズル22には、図2Aに示されているように、それぞれ加熱シリンダバンドヒータ23と、射出ノズルヒータ24とが設けられている。加熱シリンダ16と射出ノズル22には、それぞれ熱電対からなる加熱シリンダ温度センサ25と射出ノズル温度センサ26とが設けられている。なお、図2Aには加熱シリンダバンドヒータ23と加熱シリンダ温度センサ25は、それぞれ1個ずつしか示されていないが、加熱シリンダ16に複数個が設けられている。
【0014】
加熱シリンダ温度センサ25と射出ノズル温度センサ26によって温度を検出しながら加熱シリンダバンドヒータ23と射出ノズルヒータ24とによって加熱シリンダ16と射出ノズル22とを加熱する。スクリュ17を回転すると射出材料が溶融され、計量されるようになっている。そしてスクリュ17を軸方向に駆動すると溶融した射出材料が射出されるようになっている。射出材料には樹脂を採用することもできるが、本実施の形態においては錫、マグネシウム合金等の非鉄金属が採用されている。つまり本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、金属射出成形機になっている。
【0015】
<コントローラ>
本実施の形態に係る竪型射出成形機1のコントローラ4には、本実施の形態に係る成形方法を実施するための複数個のプログラムが格納されている。具体的には、予備加圧制御手段と、射出ノズル加熱制御手段と、予備加熱制御手段である。これらは本実施の形態に係る成形方法を実施するとき、それぞれ予備加圧工程、射出ノズル加熱工程、そして予備加熱工程を実施するようになっているが、具体的な制御の内容については後で説明する。
【0016】
<金型>
本実施の形態に係る型締装置2において、ターンテーブル14の上には下側金型27が設けられ、そして上可動盤10には上側金型28が、それぞれ設けられている。下側金型27は、図2Aに示されているように、パーティングラインにおいてその中央から飛び出ている凸部30が形成されている。そして上側金型28には、パーティングラインのその中央に凹部31が形成され、凹部31にはスプル32が接続されている。下側金型27と上側金型28とが型締めされると、図2Aに示されているように凸部30と凹部31とからキャビティ34が形成されるようになっている。
【0017】
<本実施の形態に係る成形品の成形方法>
本実施の形態に係る成形品の成形方法を説明する。本実施の形態に係る成形方法は、図3に示されているように、最初にステップS1としてプラグ成形工程を実施する。図2Aに示されているように、射出ノズル22を上側金型28にタッチさせ、射出ノズルヒータ24の出力を抑制する。そうすると射出ノズル22の先端の温度は低温の上側金型28によって冷却される。加熱シリンダ16と射出ノズル22内において溶融状態の射出材料36は、射出ノズル22の先端において固化されプラグ37が形成される。これによって射出材料が射出ノズル22の先端から漏れるハナタレが防止される。
【0018】
次いで図3に示されているように、ステップS2として計量工程を実施する。図2Bに示されているようにスクリュ17を回転して射出材料を溶融する。そうすると溶融した射出材料はスクリュ17によって前方に送られる。プラグ37によって射出ノズル22の出口が閉鎖されているので、スクリュ17は後退すなわち上昇する。つまり射出材料が計量される。
【0019】
計量が完了したら、図3に示されているようにステップS3として予備加圧工程を開始する。予備加圧工程は、図2Cに示されているようにスクリュ17を圧力制御により駆動して、射出材料を予めコントローラ4に予め設定されている所定の圧力である規定圧力になるように加圧する。この規定圧力は、射出工程における射出圧力よりも十分に小さいが、プラグ37が存在しなければ溶融した射出材料が射出ノズル22から押し出されるような大きさとする。このように規定圧力を印可した状態で、コントローラ4はスクリュ17の前進、すなわちスクリュ位置の変化の監視を開始する。
【0020】
予備加圧工程を継続した状態で、図3に示されているように、ステップS4として射出ノズル加熱工程を開始する。射出ノズル加熱工程は、射出ノズルヒータ24により射出ノズル22を加熱して、プラグ37を溶融させる。このとき、射出ノズル温度センサ26によって検出される射出ノズル22の温度が、射出材料の溶融温度より高めになるように制御する。
【0021】
このように予備加圧工程と射出ノズル加熱工程とを並行して実施し、図3においてステップS5として示されているようにスクリュ17の前進の有無を監視する。前進の有無は、スクリュ位置がコントローラ4において予め設定された規定長さを超えたか否かで判断することができる。つまりスクリュ17の位置の変化の大きさにより前進の有無を判断する。あるいは、規定時間内に規定長さを超えて変化したか否かで判断してもよい。この場合はスクリュ17の速度の大きさで前進の有無を判断することになる。スクリュ17の前進が検出されない場合は、図3に示されているようにステップS6により処理を繰り返す。つまり予備加圧工程と射出ノズル加熱工程を継続する。
【0022】
やがて、射出ノズル22の温度は上昇し、図2Cに示されているプラグ37は溶融する。そうすると図2Dに示されているように、射出ノズル22の先端から射出材料が漏れ出す。漏れ出した分だけスクリュ17は前進する。図3に示されているステップS5においてスクリュ17の前進が検出される。コントローラはステップS7として射出成形工程を実施する。すなわち、予備加圧工程を停止してスクリュ17の駆動を圧力制御から位置制御に切り替える。コントローラ4において予め設定された射出速度にてスクリュ17を駆動する。そうすると図2Eに示されているようにキャビティ34に射出材料36が充填される。スクリュ17の前進の検出によって射出成形工程に移行するので、溶融した射出材料は固化することなくスプル32を流れ、確実にキャビティ34に入れられる。つまり成形不良を防止できる。
【0023】
必要に応じて保圧を実施してヒケを防止する。保圧完了後、射出ノズルヒータ24の出力を絞って射出ノズル22の温度を低下させる。射出ノズル22に比して金型27、28の温度は低いので、キャビティ34内の射出材料36は固化する。図2Fには、キャビティ34内において固化した成形品40が示されている。成形品40が固化するとき、射出ノズル22の先端においてプラグ37が形成される。これによって溶融した射出材料36が射出ノズル22から漏れ出すことが防止される。なお、プラグ37を形成させるためにエアジェット等により射出ノズル22を強制的に冷却してもよい。
【0024】
いずれにしても射出成形工程S7では、プラグ37が形成されるので、次の成形サイクルにおいてプラグ形成工程S1を実施する必要がない。金型27、28を型開きすると、図2Gに示されているように、成形品40が得られる。射出成形工程S7が完了する。図3に示されているように、次の成形サイクルを繰り返す。すなわちステップS2の計量工程に移行する。
【0025】
<第2の実施の形態に係る成形方法>
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば成形方法を変形することができる。変形した第2の実施の形態に係る成形方法を説明する。第2の実施の形態に係る成形方法も、図4に示されているように、ステップS1としてプラグ成形工程を実施し、次いでステップS2として計量工程を実施する。計量工程が完了した後の処理が、第1の実施の形態と相違している。すなわち、第2の実施の形態に係る成形方法では、ステップS10として予備加熱工程を実施する。予備加熱工程では、まず射出ノズル22を上側金型28から離間させる。離間させた状態で射出ノズルヒータ24により射出ノズル22を加熱する。射出ノズル22を上側金型28から離間させると、熱が上側金型28に伝導しないので速やかに加熱することができる。ただし、この予備加熱工程ではプラグ37が溶融しない程度に加熱するようにする。
【0026】
次いで、ステップS4として射出ノズル加熱工程を開始する。つまり射出ノズル22を上側金型28にタッチさせる。そして射出ノズルヒータ24により射出ノズル22を加熱させる。続いてステップS3として予備加圧工程を開始する。つまり、第1の実施の形態で説明したように、スクリュ17を圧力制御により駆動して、射出材料を予めコントローラ4に予め設定されている所定の圧力である規定圧力になるように加圧する。ところで、第1の実施の形態においては、図3に示されているように、ステップS3として予備加圧工程を開始してから、ステップS4として射出ノズル加熱工程を開始していた。しかしながら、第2の実施の形態に係る成形方法では、ステップS3とステップS4の順番が入れ替わっている。ステップS3とステップS4はどちらを先に実施してもよく、同時に実施してもよい。
【0027】
第2の実施の形態に係る成形方法においても、ステップS5によりスクリュ17の前進を監視して、前進がなければステップS6により処理を継続する。前進が検出されたらすでに説明した射出成形工程をステップS7として実施する。以下同様にして成形する。第2の実施の形態に係る成形方法は、射出ノズル22を加熱するとき予備加熱工程S10により予め加熱するので、加熱時間を短縮することができる。
【0028】
<他の変形>
本実施の形態において竪型射出成形機1は金属射出成形機である旨説明した。しかしながら、本実施の形態に係る成形方法は、射出材料として樹脂を使用する竪型射出成形機であっても実施することができる。さらに本実施の形態に係る成形方法は、竪型射出成形機1だけでなく横置き型の射出成形機でも実施することができる。
【実施例0029】
錫は融点が約232℃であり、融点の近傍で固体から急激に液体に遷移すると共に液体における粘度が小さい。つまり、ハナタレし易い射出材料である。そして竪型射出成形機1は射出ノズル22の開口部が下方を向いているのでハナタレし易い射出成形機になっている。したがって、錫を射出材料として採用すると共に竪型射出成形機1を使用して成形品を成形する場合、一般に成形は困難である。そこで、本実施の形態に係る竪型射出成形機1を使用すると共に射出材料として錫を採用し、本実施の形態に係る成形方法を実施する実験を行った。本実施の形態に係る成形方法によって適切に成形品が成形できることを確認するためである。
【0030】
実験方法:
図3に示されている本実施の形態に係る成形方法により成形を実施した。計量工程S2においては、加熱シリンダ16(図2A参照)と射出ノズル22の温度はそれぞれ260℃、220℃になるようにした。予備加圧工程は規定圧力として5MPaを採用し、射出材料にこの圧力が印可されるようにスクリュ17を駆動して圧力制御を実施した。なお、予備加圧工程の開始にあたっては射出ノズル22にプラグ37が確実に形成されている必要がある。そこで、プラグ37が形成されていることを確認するために、0.5秒毎にスクリュ17のスクリュ位置を監視して、0.01mm以上スクリュ17が移動しないことを確認し、その後予備加圧工程を実施するようにした。
【0031】
射出ノズル加熱工程は、射出ノズル温度センサ26で温度を検出しながら射出ノズル22が310℃になるよう射出ノズル22を加熱した。そしてスクリュ17の前進の監視は0.05秒毎に実施し、スクリュ位置が0.3mmを超えて変化したら前進したと判断するようにした。射出成形工程S7においては、スクリュ17の速度つまり射出速度を70mm/sとし、保圧は10MPaにて実施した。
【0032】
実験結果:
本実施の形態に係る成形方法によって成形サイクルを繰り返したが、ハナタレは発生せず、成形不良も発生しなかった。つまり本実施の形態に係る成形方法は、成形が困難な射出材料である錫を採用し竪型射出成形機1を使用しているにもかかわらず、適切に成形品を成形することができた。
【0033】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 コントローラ
7 筐体 9 固定盤
10 上可動盤 12 タイバー
14 ターンテーブル 16 加熱シリンダ
17 スクリュ 19 駆動機構
20 昇降装置 22 射出ノズル
23 加熱シリンダバンドヒータ 24 射出ノズルヒータ
25 加熱シリンダ温度センサ 26 射出ノズル温度センサ
27 下側金型 28 上側金型
30 凸部 31 凹部
32 スプル 34 キャビティ
36 射出材料 37 プラグ
40 成形品
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4