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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109239
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20230801BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G02B6/125 301
G02B6/124
G02B6/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010648
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡山 秀彰
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AA02
2H147AB15
2H147BB02
2H147BB09
2H147BC03
2H147BC05
2H147BD01
2H147BD02
2H147BD03
2H147BE15
2H147BE16
2H147BE17
2H147BG08
2H147CD01
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FC03
(57)【要約】
【課題】単峰性の波長特性を持ち、屈折率変化に対する高い応答性を有した干渉計型の素子を得る。
【解決手段】下部クラッド20上に光導波路コア30を設けて形成された光導波路素子であって、検出部50を有している。検出部は、第1導波路100と、第1導波路に近接配置され、スロットが形成された第2導波路200と、第1導波路及び第2導波路の少なくとも一方に、第1導波路を伝搬する光を、第2導波路に移行させるグレーティングとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部クラッド上に光導波路コアを設けて形成された光導波路素子であって、
第1導波路と、
前記第1導波路に近接配置され、スロットが形成された第2導波路と、
前記第1導波路及び前記第2導波路の少なくとも一方に、前記第1導波路を伝搬する光を、前記第2導波路に移行させるグレーティングと
を備える検出部を有する
ことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
下部クラッド上に光導波路コアを設けて形成された光導波路素子であって、
N(Nは2以上の整数)の検出部を有し、
各検出部は、
第1導波路と、
前記第1導波路に近接配置され、スロットが形成された第2導波路と、
前記第1導波路及び前記第2導波路の少なくとも一方に、前記第1導波路を伝搬する光を、前記第2導波路に移行させるグレーティングと
を備え、
前記各検出部が備える前記第1導波路の、一方の端部に入力導波路が接続され、他方の端部に出力導波路が接続され、
第k(kは1以上N-1以下の整数)検出部に接続された出力導波路は、第k+1検出部に接続された入力導波路と接続される
ことを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
下部クラッド上に光導波路コアを設けて形成され、リング共振器を構成する、第1入出力導波路、リング状導波路、及び、第2入出力導波路を備える光導波路素子であって、
第1導波路と、
前記第1導波路に近接配置され、スロットが形成された第2導波路と、
前記第1導波路及び前記第2導波路の少なくとも一方に、前記第1導波路を伝搬する光を、前記第2導波路に移行させるグレーティングと
を備える検出部を有し、
前記第1導波路の一方の端部に入力導波路が接続され、他方の端部に出力導波路が接続され、
前記入力導波路と前記出力導波路が曲線導波路で接続されて、前記リング状導波路を構成し、
前記第2導波路が、前記第1入出力導波路を構成し、
前記第2入出力導波路は、前記リング状導波路と近接配置されている
ことを特徴とする光導波路素子。
【請求項4】
前記グレーティングが、前記第2導波路の両側面に設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記グレーティングが、前記第1導波路の、前記第2導波路側の側面に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記検出部が設けられていない領域において、前記光導波路コアは、前記下部クラッドと同じ材質の上部クラッドで覆われ、
前記検出部が設けられている領域において、前記光導波路コアは、上部クラッドで覆われていない
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光導波路素子、特に、導波路周囲の屈折率変化を検知する素子として用いることができる光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路デバイスのプラットフォーム技術として、従来、シリコン(Si)フォトニクスが注目を集めている。Siフォトニクスの特徴は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの半導体装置の製造プロセスを利用することによる、光導波路とそれに準ずる変調器や受光器など光デバイスの小型・集積性、及び、既存の半導体製造技術を流用して提供される200mmあるいは300mmウェハープロセスによる生産性の高さである。また、Siをコア、Si酸化膜(SiO)をクラッドとするSi導波路は比屈折率差が40%に達するので、高い光の閉じ込め効果が得られる。特にSi細線導波路では、曲げ導波路の曲率半径や並走配線ピッチを数ミクロンオーダーまで小さくでき、光回路レイアウトの小型化が可能となる。
【0003】
Si導波路の用途の一例として、導波路周囲の屈折率変化を検知する素子への適用が検討されている(例えば、非特許文献1又は非特許文献2参照)。導波路壁面付近でのエバネッセント波を用いれば、導波路表面へ吸着させた生体物質を検出することができる。
【0004】
生体物質の検出に用いられる素子は、リング共振器などの光の共振を用いる共振器型と、マッハツェンダ干渉計などの干渉を用いる干渉計型とに分離できる。生体物質の吸着による屈折率変化を高感度で検出するには、干渉器型が有利であるという報告もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Advanced Material Technologies vol.5, p.1901138, 2020年
【非特許文献2】Sensors vol.16, p.285, 2016年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、共振器型及び干渉計型のいずれにおいても、その波長応答特性が周期的であるために、大きな屈折率変化では周期を超えて波長特性が変化して、小さな屈折率変化と区別できない欠点がある。共振器型では、Braggグレーティングや1次元フォトニック結晶などの単峰性の波長特性を持つ素子が存在するが、干渉計型では、簡易な構造の素子が知られていない。
【0007】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、単峰性の波長特性を持ち、屈折率変化に対する高い応答性を有した干渉計型の素子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、この発明の光導波路素子は、下部クラッド上に光導波路コアを設けて形成された光導波路素子であって、検出部を有している。検出部は、第1導波路と、第1導波路に近接配置され、スロットが形成された第2導波路と、第1導波路及び第2導波路の少なくとも一方に、第1導波路を伝搬する光を、第2導波路に移行させるグレーティングとを備える。
【0009】
また、この発明の光導波路素子の他の実施形態によれば、N(Nは2以上の整数)の上述の検出部を有する。各検出部が備える第1導波路の、一方の端部に入力導波路が接続され、他方の端部に出力導波路が接続される。第k(kは1以上N-1以下の整数)検出部に接続された出力導波路は、第k+1検出部に接続された入力導波路と接続される。
【0010】
また、この発明の光導波路素子の他の実施形態によれば、下部クラッド上に光導波路コアを設けて形成され、リング共振器を構成する、第1入出力導波路、リング状導波路、及び、第2入出力導波路を備え、上述の検出部を有する。
【0011】
第1導波路の一方の端部に入力導波路が接続され、他方の端部に出力導波路が接続され、入力導波路と出力導波路が曲線導波路で接続されて、リング状導波路を構成する。検出部の第2導波路が、第1入出力導波路を構成し、第2入出力導波路は、リング状導波路と近接配置されている。
【0012】
この発明の光導波路素子では、グレーティングが、第2導波路の両側面に設けられる構成にしてもよい。また、グレーティングが、第1導波路の、第2導波路側の側面に設けられる構成にしてもよい。
【0013】
この発明の光導波路素子のさらなる好適実施形態によれば、検出部が設けられていない領域において、光導波路コアは、下部クラッドと同じ材質の上部クラッドで覆われ、検出部が設けられている領域において、光導波路コアは、上部クラッドで覆われていない。
【発明の効果】
【0014】
この発明の光導波路素子によれば、単峰性の波長特性を持ち、屈折率変化に対する高い応答性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1導波路素子を説明するための模式図である。
図2】第1導波路素子の特性を示す図である。
図3】第2導波路素子を説明するための模式図である。
図4】第2導波路素子の特性を示す図である。
図5】第3導波路素子を説明するための模式図である。
図6】第4導波路素子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0017】
(第1導波路素子の構成)
図1を参照して、この発明の第1実施形態に係る光導波路素子(以下、第1導波路素子とも称する。)を説明する。図1は、第1導波路素子を説明するための模式図である。図1(A)は、第1導波路素子の概略的平面図であって、後述する支持基板及び下部クラッドを省略し、光導波路コアのみを示している。なお、他の概略的平面図においても支持基板及び下部クラッドを省略し、光導波路コアのみを示している。図1(B)は、第1光導波路素子の一部領域の切断端面図である。
【0018】
第1光導波路素子は、支持基板10上に下部クラッド20と、下部クラッド20上に光導波路コア30を備えて構成される。
【0019】
光導波路コア30を伝搬する光が、支持基板10へ逃げるのを防止するため、支持基板10と光導波路子30の距離、すなわち、下部クラッド20の厚みは、1μm以上であるのがよい。また、光導波路コア30の厚みは、深さ方向でシングルモード条件を達成できる値である、200~400nmであることが望ましい。ここでは、光導波路コア30の厚みが220nmであるとする。
【0020】
光導波路コア30の平面形状に応じて、光が伝搬し、所望の機能を実現する。
【0021】
第1導波路素子は、第1導波路100及び第2導波路200を備えて構成される検出部50を有する。
【0022】
第1導波路100及び第2導波路200は、互いに平行に近接配置された直線導波路である。第1導波路100の幅Wは、例えば、600nmであり、第2導波路200の幅Wは、例えば、700nmである。また、第1導波路100及び第2導波路200の長さLは、例えば、約99μmである。第1導波路100と第2導波路200の間隙gは、例えば、300nmである。
【0023】
第1導波路100の一方の端部には、入力導波路110が接続されている。また、第1導波路100の他方の端部には、出力導波路120が接続されている。
【0024】
第2導波路200の一方の端部には、第1曲線導波路210が接続されている。また、第2導波路200の他方の端部には、第2曲線導波路220が接続されている。第1曲線導波路210及び第2曲線導波路220は、第2導波路200から離れるに従って、第1導波路100からの距離が大きくなるように設けられる。なお、入力導波路110、出力導波路120も曲線導波路であって良い。
【0025】
第2導波路200の中央には、第2導波路200の長手方向に沿ってスロット202が設けられている。スロット202の幅Wは、例えば、150nmである。また、第2導波路の側壁には、グレーティング204が形成されている。グレーティング204は、例えば、周期Λが2.78μmである三角関数的な形状で構成される。三角関数の振幅の2倍に対応する、グレーティング204の幅Wは、長手方向の一方の端部及び他方の端部付近で最小であり、長手方向の中央付近に向けて、徐々に大きくなり、最大幅は、例えば、130nmである。
【0026】
なお、光導波路コア30を伝搬する光の伝搬損失は、光導波路コア30の周囲に、下部クラッド20と同じ材料の上部クラッドがあるほうが低い傾向がある。したがって、生体物質の検出に必要な検出部50が設けられているセンシング領域以外の部分に、光導波路コア30を覆う上部クラッドを、下部クラッド20と同じ材料であるSiOで設けるのが良い。
【0027】
一方、検出部50が設けられている領域は、生体物質の吸着による屈折率変化を高感度で検出するために、光導波路コア30を覆う上部クラッドを設けないのが良い。
【0028】
(第1導波路素子の動作)
第1導波路素子の動作を説明する。入力導波路110に入力された光は、主に、第1導波路100に光が集中するモードを励起する。第2導波路200に設けられたグレーティング204により、第1導波路100を伝搬する光と、第2導波路200を伝搬するモー
ドとの位相整合が実現されると、第1導波路100を伝搬する光は、第2導波路200を伝搬する光に変換される。第1導波路100を伝搬する光の等価屈折率N、第2導波路200を伝搬する光の等価屈折率N、及び、グレーティング周期Λの間には、以下の式(1)の関係が成立する。
【0029】
Λ=λ/(N-N) (1)
第1導波路100及び第2導波路200の周囲の屈折率が変化すると、等価屈折率N及びNが変化するので、位相整合する波長λが変化する。この位相整合する波長λの変化を検出して、導波路の周囲の屈折率変化を検出する。
【0030】
ここで、第2導波路200には、スロット202が形成されているので、導波路の両側面及び上面よりも、スロット内部の屈折率変化の影響をより多く受ける。このため、スロット202が形成されている第2導波路200は、スロットが形成されていない第1導波路100よりも、周囲の屈折率変化に敏感である。従って、主に、第2導波路200の等価屈折率Nが、位相整合する波長λの変化に寄与する。
【0031】
上記式(1)から、第2導波路の屈折率Nの変化ΔNに対する波長変化Δλは、以下の式(2)で与えられる関係を満たす。
【0032】
Δλ/λ=-ΔN/(N1g-N2g) (2)
ここで、N1g及びN2gは、それぞれ、第1導波路100及び第2導波路200の群屈折率である。上記式(2)から、N1g-N2gが小さければ、大きな波長変化が得られることがわかる。
【0033】
図2は、第1導波路素子の特性を示す図である。図2は、横軸に波長[単位:μm]をとり、縦軸に測定値として、光強度(a.u.)をとって示している。図2は、3次元FDTD(Finite Difference Time Domain)法によるシミュレーションの結果を示している。図2中、曲線Iは、入力導波路110に入力される光強度を示し、曲線IIは、出力導波路120から出力される光強度を示し、曲線IIIは、第2曲線導波路220から出力される光強度を示している。ここで、各数値条件は、上述の例で示したものである。
【0034】
図2に示されるように、第1導波路素子の出力導波路220からの出力強度(曲線II)に、きれいな形状のくぼみ(ピークディップ)(図2中、Aで示す部分)を得ることができる。このとき、導波路周囲の屈折率変化に対する波長変化は、1500nm/RIU(Refractive Index Unit)であり、通常のセンサに比べて一桁以上大きな感度が得られる。
【0035】
(第1導波路素子の製造方法)
第1光導波路素子は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を利用することによって、簡単に製造することができる。
【0036】
以下、第1導波路素子の製造方法の一例を説明する。
【0037】
先ず、支持基板層、SiO層、及びSi層が順次積層されて構成されたSOI基板を用意する。次に、例えばドライエッチングを行い、Si層をパターニングする。このドライエッチングは、SiO層に達したところで終了する。この結果、支持基板10、下部クラッド20、及び、光導波路コア30を備える光導波路の基本構造を得ることができる。
【0038】
(第2導波路素子の構成)
図3を参照して、この発明の第2実施形態に係る光導波路素子(以下、第2導波路素子とも称する。)を説明する。図3は、第2導波路素子を説明するための模式図である。図3は、第2導波路素子の概略的平面図である。
【0039】
第2導波路素子は、光導波路コアの平面形状が第1導波路素子と異なっている。それ以外の構成は、第1導波路素子と同様なので、重複する説明を省略することもある。
【0040】
第2導波路素子は、第1導波路101及び第2導波路201を備えて構成される検出部51を有する。
【0041】
第1導波路101及び第2導波路201は、互いに平行に近接配置された直線導波路である。第1導波路101の幅は、例えば、600nmであり、第2導波路201の幅は、例えば、700nmである。また、第1導波路101及び第2導波路201の長さは、例えば、約91μmである。第1導波路101と第2導波路201の間隙は、例えば、300nmである。
【0042】
第1導波路101の一方の端部には、テーパ導波路134を介して入力導波路110が接続されている。また、第1導波路101の他方の端部には、テーパ導波路136を介して出力導波路120が接続されている。第2導波路201の一方の端部には、テーパ導波路234を介して第1曲線導波路210が接続されている。また、第2導波路201の他方の端部には、テーパ導波路236を介して第2曲線導波路220が接続されている。第1曲線導波路210及び第2曲線導波路220は、第2導波路201から離れるに従って、第1導波路101との距離が大きくなるように設けられる。各テーパ導波路134、136、234及び236の長さは、例えば、15μmである。
【0043】
第2導波路201の中央には、第2導波路201の長手方向に沿ってスロット202が設けられている。スロット202の幅は、例えば、150nmである。また、スロット204及び206は、第2導波路201に接続されているテーパ導波路234及び236にも延在して設けられている。テーパ導波路234及び236に設けられているスロット204及び206は、第1及び第2曲線導波路210及び220に近づくにつれて、徐々に一方の側面に寄っていく形状で、形成されている。
【0044】
第1導波路101の側壁には、グレーティング104が形成されている。グレーティング104は、第1導波路101の、第2導波路201側の側壁にのみ設けられている。グレーティング104は、例えば、周期が2.28μmである三角関数的な形状で構成される。三角関数の振幅の2倍に対応する、グレーティングの幅Wは、長手方向の一方の端部及び他方の端部付近で最小であり、長手方向の中央付近に向けて、徐々に大きくなり、最大幅は、例えば、130nmである。
【0045】
第1導波路101の第2導波路201側の側壁は、第1導波路101に主に光界分布が集中するモードの、光強度が大きい場所である。従って、この第2導波路201側の側壁にグレーティング104を設けることで、より高いモード変換効率を得ることができる。また、第2導波路201と第1及び第2曲線導波路210及び220との間のテーパ導波路234及び236を設け、さらに、テーパ導波路234及び236にもスロット204及び206を設けることで、光の損失を抑えることができる。第2導波路201と同様に、第1導波路101と、入力導波路110及び出力導波路120の間にも、テーパ導波路134及び136を設けることで、光の損失が抑えられる。
【0046】
(第2導波路素子の動作)
図4を参照して、第2導波路素子の特性を説明する。図4は、第2導波路素子の特性を示す図である。図4は、横軸に波長[単位:μm]をとり、縦軸に測定値として、光強度(a.u.)をとって示している。図4は、図2と同様に3次元FDTD法によるシミュレーションの結果を示している。図4中、曲線Iは、入力導波路に入力される光強度を示し、曲線IIは、出力導波路から出力される光強度を示し、曲線IIIは、第2曲線導波路から出力される光強度を示している。ここで、各数値条件は、上述の例で示したものである。
【0047】
図4に示されるように、第2導波路素子の出力導波路からの出力強度(曲線II)に、きれいな形状のくぼみ(ピークディップ)を得ることができる。このとき、導波路周囲の屈折率変化に対する波長変化は、1400nm/RIU(Refractive Index Unit)であり、通常のセンサに比べて一桁以上大きな感度が得られる。
【0048】
(第3導波路素子)
図5を参照して、この発明の第3実施形態に係る光導波路素子(以下、第3導波路素子とも称する。)を説明する。図5は、第3導波路素子を説明するための模式図である。
【0049】
第3導波路素子は、N(Nは2以上の整数)の検出部51を直列に接続して構成される。図5では、Nが3の例を示している。ここでは、各検出部51が、それぞれ第2導波路素子と同様に構成される例を説明するが、これに限定されない。各検出部を第1導波路素子と同様に構成してもよい。
【0050】
各検出部51が備える第1導波路の、一方の端部に入力導波路110が接続され、他方の端部に出力導波路120が接続されている。第1検出部51-1に接続された入力導波路110-1は、第3導波路素子の入力導波路として機能する。第k(kは1以上N-1以下の整数)検出部51-kに接続された出力導波路120-kは、曲線導波路140を介して、第k+1検出部51-(k+1)に接続された入力導波路110-(k+1)と接続される。第N検出部51-Nに接続された出力導波路120-Nは、第3導波路素子の出力導波路として機能する。
【0051】
各検出部51の第2導波路に接続される第2曲線導波路(図示を省略する。)から出力される光は、ピークディップを得るために用いられる。この第2曲線導波路から出力される光は捨ててもよいし、モニタに用いてもよい。
【0052】
また、ここでは、第k検出部51-kに接続された出力導波路120-kは、曲線導波路140を介して、第k+1検出部51-(k+1)に接続された入力導波路110-(k+1)と接続されている例を説明したがこれに限定されない。第k検出部51-kに接続された出力導波路120-kは、第k+1検出部51-(k+1)に接続された入力導波路110-(k+1)と、直接接続されてもよいし、直線導波路を介して接続されてもよい。
【0053】
多段にする効果を説明する。線形応答が得られるスロープでの応答は、ax+bを1段の応答として、T=(ax+b)で表される。ここで、xは波長変化である。1段のときは、出力が0~1の間で変化するとして、b=0.5である。このとき、N=3の場合、Tの線形部分の応答は、T≒3abx+bの形になる。線形応答が得られるスロープでは、b=0.5なので、a=1とすると、T≒1.9x+0.5となる。この結果、3段にすると、1段に比べて、約2倍の感度が得られる。Nが大きくなれば、bは1に近づき、T≒NbN-1x+bとなる。従って、Nが十分大きければ、1段に比べてN倍の感度が得られる。
【0054】
(第4導波路素子)
図6を参照して、この発明の第4実施形態に係る光導波路素子(以下、第4導波路素子とも称する。)を説明する。図6は、第4導波路素子を説明するための模式図である。
【0055】
第4導波路素子は、リング共振器を構成する、第1入出力導波路、リング状導波路、及び、第2入出力導波路を備えて構成される。ここでは、検出部51を第2導波路素子と同様に構成する例を説明するがこれに限定されない。検出部を第1導波路素子と同様に構成してもよい。
【0056】
検出部51が備える第1導波路101の、一方の端部に入力導波路110が接続され、他方の端部に出力導波路120が接続されている。入力導波路110と出力導波路120が曲線導波路150で接続され、リング状導波路を構成する。
【0057】
検出部51が備える第2導波路201が第1入出力導波路を構成する。
【0058】
第2入出力導波路300は、リング状導波路を構成する曲線導波路150と近接配置される。この近接配置された部分310は、カプラ構造であり、リング状導波路を周回する光を適切に一部取り除くことで、共振ピークの高さを調整する。
【0059】
リング状導波路を周回する光は、検出部51を繰り返し通過するので、検出部51を多段に接続して構成された第3導波路素子と同様の、多段の効果を得ることができる。
【0060】
10 支持基板
20 下部クラッド
30 光導波路コア
50、51 検出部
100、101 第1導波路
104、204 グレーティング
110 入力導波路
120 出力導波路
134、136、234、236 テーパ導波路
140、150 曲線導波路
200、201 第2導波路
202、204、206 スロット
210 第1曲線導波路
220 第2曲線導波路
300 第2入出力導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6