(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109241
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】通気路兼排水路形成ボード
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20230801BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04B1/80 100L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010652
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】303059990
【氏名又は名称】三昌フォームテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513161852
【氏名又は名称】StoJapan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 正憲
(72)【発明者】
【氏名】若林 竜太
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DD01
2E001FA04
2E001GA12
2E001HD02
2E001HD08
2E001HD09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通気層工法において使用される通気路兼排水路形成ボードにおいて、通気層を形成するための突起を防水上好適な形状のものとすることで、通気層工法で本来求められる防水性、排水性を向上させた通気路兼排水路形成ボードを提供する。
【解決手段】建物壁面の構造面材2に対し、その外側に設けられる板状の合成樹脂発泡体から成る通気路兼排水路形成ボード3であって、該ボードの構造面材に対面する裏側板面3Bには高さ3~30mmの柱状突起10が複数個設けられおり、該柱状突起の上部側面10Aは逆テーパー状に形成され、下部側面10Bはテーパー状に形成されている通気路兼排水路形成ボードとした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁面の構造面材に対し、その外側に設けられる板状の合成樹脂発泡体から成る通気路兼排水路形成ボードであって、該ボードの構造面材に対面する裏側板面には高さ3~30mmの柱状突起が複数個設けられおり、該柱状突起の上部側面は逆テーパー状に形成され、下部側面はテーパー状に形成されていることを特徴とする、通気路兼排水路形成ボード。
【請求項2】
上記柱状突起は正面形状がひし形形状であり、該ひし形形状の角部が上下となるように配されていることを特徴とする、請求項1に記載の通気路兼排水路形成ボード。
【請求項3】
上記柱状突起は複数種の大小異形形状のものから成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の通気路兼排水路形成ボード。
【請求項4】
上記ボードの表側板面には高さ0.5~2mmのかえし形状の突起が形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の通気路兼排水路形成ボード。
【請求項5】
上記ボードの表側板面には上下を示す印しが設けられていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の通気路兼排水路形成ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁に施工される通気層工法において使用される通気路兼排水路形成ボードに関するもので、特に、外壁面をモルタル塗布等の湿式工法で仕上げる際に好適に用いることができる通気路兼排水路形成ボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造住宅では一般的になっている通気層工法という外壁の施工方法がある。この通気層工法は、外壁材の裏側(屋内側)にその一部が外気と連続した非密閉型空気層(通気層)を設け、該通気層内の空気が屋外空気と循環して壁体内を換気し、室内からの貫流透湿、外装材の隙間から浸入した水分等を屋外に排出して、壁体内の乾燥化を図り、壁体の結露被害を防止する防露性能を有している。
また、通気層工法は、その構成上、自動的に防水工法の基本原理である等圧工法となるため、防水性能が大きく、加えて、外装材に隙間ができ、そこから内部への漏水が発生しても、通気層内に浸入した漏水は通気層を通り、重力で下に落ちる排水性能も一般的に有している。
【0003】
一方、建物の断熱工法には、躯体・構造材の屋外側に断熱材を設ける外断熱工法がある。一般に建築物の構造が鉄筋コンクリート造のように熱容量が大きな場合は外断熱工法と呼ばれ、木造や鉄骨造の軸組構造に施される場合は外張断熱工法とも呼ばれている。
いずれも躯体・構造材を屋外側から断熱材ですっぽり覆って断熱欠損を抑え、高い断熱性能を発揮すると共に、屋外の温度変動から構造材を保護できるため、構造体の耐久性向上の観点からも、近年、この外断熱工法は普及している。
【0004】
また、戸建住宅等に代表される中低層の比較的小規模の建物の外装工法は、モルタル等の現場で水練りした湿式材料の塗付工程を含む湿式工法と、湿式材料を使わずにサイディング等を躯体に取り付けて仕上げる乾式工法とに大別できる。
湿式工法は、左官材料の水練りやその塗付等の現場作業が多く、作業者の熟練度等によって仕上がりも左右される点で、現場では乾式材(工場生産品)を取り付けるだけで、仕上がりのばらつきが少ない乾式工法よりも施工性に劣る傾向にあり、また品質を確保することも難しいものであった。
しかし、乾式工法で仕上材として用いるサイディング等は、湿式工法による石材貼り、タイル貼り、塗り壁等の外装仕上面のデザインを真似ただけの擬似っぽい意匠の域を越えにくく、また工場生産品であるが故にデザインのバリエーションも少ないこと等から、湿式工法には依然として根強い人気がある。
【0005】
ここで、上記した壁体の防露性、防水性、排水性に優れた通気層工法と、建物の断熱性向上、耐久性向上に優れた外断熱工法とを組み合わせた工法も、近年、木造住宅のみならず鉄筋コンクリート造でも急速に行われるようになってきている。
この通気層工法と外断熱工法とを併用した工法としては、種々の工法が採用されており、該工法に適した通気層を形成するための部材も、種々創作されている(例えば、特許文献1~3)。
【0006】
特許文献1に開示されたものは、木造建物の外断熱用断熱壁であって、断熱パネルの外面に、ハニカム形状の通気溝を設け、その外面に、複数の下地バーを間隔をあけて埋め込み、該下地バーの外面を断熱パネルの外面と略面一として仕上材の取付面としたものである。
この建物の断熱壁構造によれば、断熱壁自体で通気層を形成することができ、結露の発生を防止することができると共に、断熱パネルをそのままサイディング等の乾式仕上材の下地とすることができ、従来の胴縁が不要となり、部品点数を減らして構造を簡素化することができるものであった。
【0007】
また、特許文献2に開示されたものは、合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通気溝を形成すると共に、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に外装材または外装下地材を設けてなる通気溝付き外断熱パネルである。
この外断熱パネルによれば、やはりこの断熱パネル自体で通気層を形成することができ、しかも形成される通気層は、縦通気溝と斜め通気溝との組み合わせによって開口部などでパネル天端開口が塞がれる場合でも、斜め通気溝から縦通気溝を介して湿気などを排出することが可能となるものであった。
【0008】
更に、特許文献3に開示されたものは、建物壁面の構造面材に対し、その外側に張り付けられる断熱作用を奏する断熱用の部材であって、前記部材は板状の発泡樹脂から成り、本体板部のおもて面側をほぼ平板状にするとともに、構造面材に対面するうら面にはスペーサ突起が設けられている断熱ボードである。
この断熱ボードによれば、スペーサ突起の存在により、断熱ボードの本体板部は構造面材に対し浮き上がり状態に張り付けられるものであり、その間に通気空間が確保され、結露等の発生を防止することが可能となる。またスペーサ突起自体は断熱ボードの本体板部と一体であり、従来と同様の張り付け作業により工程数を増加させることなく通気層工法の施工が可能となるものであった。更に、該断熱ボードは、そのおもて面側をほぼ平板状に形成されているので、モルタル塗布等の湿式工法で化粧仕上下地として利用できるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-169892号公報
【特許文献2】特開2009-263958号公報
【特許文献3】特開2011-163023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した背景技術で述べた通気層を形成する部材にあっては、依然として下記のような課題を有していた。
【0011】
特許文献1~3に開示された技術は、いずれも通気層工法を簡単に施工できるように、断熱板の板面に溝或いは突起を形成することにより、単純に通気層を一体化したものでしかない。ここで、合成樹脂発泡体から成る断熱板は圧縮強度が小さく、通気層を形成するための溝を広く深いものとした場合、或いは突起を高く小さいものとした場合には、外力によって断熱板が変形し易いものとなるため、一般に通気層を形成するための溝を極端に広げたり、突起を極端に小さなものとすることはできず、形成される通気層の経路は細く且つ複雑なものとなっていた。そのため、もともと特許文献1~3に開示された技術は、十分な排気、排水機能を発揮できる通気層を形成できるものではなかった。
【0012】
加えて、特許文献1~3に開示された技術は、外装板の目地等から通気層内に浸入した雨水等の漏水が、通気層を形成するための上記溝、或いは突起の壁面を伝って躯体側へ廻る危険性が高いものとなっていた。これは室内への漏水を発生させず、構造体を水から守るという防水工法の基本から外れる、極めて重要な課題であった。
【0013】
また、特許文献1、2の技術にあっては、断熱板の屋外側板面に通気層を形成するための上記溝を設けたものであるため、その板面はそのままでは外壁面をモルタル塗布等の湿式工法で仕上げる際の化粧仕上下地として利用することはできず、別途、該断熱板の屋外側に化粧仕上下地材を張着する等の作業が必須となるものであった。
【0014】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、通気層工法において使用される通気路兼排水路形成ボードにおいて、通気層を形成するための突起を防水上好適な形状のものとすることで、通気層工法で本来求められる防水性、排水性を向上させた通気路兼排水路形成ボードを提供することにある。また加えて、外壁面をモルタル塗布等の湿式工法で仕上げる際に化粧仕上下地としても好適に用いることができる通気路兼排水路形成ボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕~〔5〕に記載した通気路兼排水路形成ボードとした。
〔1〕建物壁面の構造面材に対し、その外側に設けられる板状の合成樹脂発泡体から成る通気路兼排水路形成ボードであって、該ボードの構造面材に対面する裏側板面には高さ3~30mmの柱状突起が複数個設けられおり、該柱状突起の上部側面は逆テーパー状に形成され、下部側面はテーパー状に形成されていることを特徴とする、通気路兼排水路形成ボード。
〔2〕上記柱状突起は正面形状がひし形形状であり、該ひし形形状の角部が上下となるように配されていることを特徴とする、上記〔1〕に記載の通気路兼排水路形成ボード。
〔3〕上記柱状突起は複数種の大小異形形状のものから成ることを特徴とする、上記〔1〕又は〔2〕に記載の通気路兼排水路形成ボード。
〔4〕上記ボードの表側板面には高さ0.5~2mmのかえし形状の突起が形成されていることを特徴とする、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の通気路兼排水路形成ボード。
〔5〕上記ボードの表側板面には上下を示す印しが設けられていることを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の通気路兼排水路形成ボード。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明に係る通気路兼排水路形成ボードによれば、柱状突起の上部側面は逆テーパー状に形成され、下部側面はテーパー状に形成されたものとしたので、該柱状突起により構造面材との間に画成される通気層を流下する水は、構造面材側(屋内側)を濡らすことなく柱状突起の基部に集められた状態で効率よく流下し、排水されるものとなるため、通気層工法において本来求められる防水性、排水性を向上させることができるものとなる。
また、表側板面に高さ0.5~2mmのかえし形状の突起を設けたものにあっては、外壁面をモルタル塗布等の湿式工法で仕上げる際に化粧仕上下地としてもそのまま好適に用いることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る通気路兼排水路形成ボードを適用して構築した壁面の横断面図である。
【
図2】本発明に係る通気路兼排水路形成ボードの裏側板面の一実施形態を示した図である。
【
図3】
図2に示したA部の柱状突起を拡大して示した図であって、(a)は正面形状を示した図、(b)は側面形状を示した図である。
【
図4】本発明に係る通気路兼排水路形成ボードの表側板面の一実施形態を示した図である。
【
図5】
図4に示したB部の突起を拡大して示した図であって、(a)は正面形状を示した図、(b)は側面形状を示した図である。
【
図6】本発明に係る通気路兼排水路形成ボードを適用して構築した壁面の通気層を示した概念的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る通気路兼排水路形成ボードの実施形態を、図示を示して具体的に説明する。
【0019】
図1は、建物の壁面構造の一例を示した横断面図である。この図示した壁面Wは、建物の骨格部材となる間柱等の構造骨材1に対し、その外側に構造面材2が張設され、その外側に本発明に係る通気路兼排水路形成ボード3が張り付けられ、そしてその通気路兼排水路形成ボード3自体に外壁面としての化粧仕上4が施されている。壁面Wの屋内側は、石膏ボード等の内張りボード5が張設され、その屋内面側に内装クロス6等が張られ、内装化粧が施されている。
【0020】
上記構造面材2は、例えば木質構造用合板やグラスファイバー強化の合成樹脂ボード等が適用され、それ自体で一定の構造材としての強度を有するものである。また、化粧仕上4は、モルタル塗布等の湿式工法で形成されたのである。具体的には、
図1において拡大して示したように、まず通気路兼排水路形成ボード3の表側板面にグラスファイバー強化のベースコート7を設ける。これは、例えば施工手順としては、ベースコート素材7aをまず通気路兼排水路形成ボード3に塗布した後、グラスファイバーメッシュから成る芯材7bを張り付け、更にその状態で、その上から更に同一のベースコート素材7aを塗布することにより形成できる。続いて、ベースコート7上に適宜の化粧効果を有するトップコート8を吹き付け或いは塗布等により施工する。
【0021】
上記した壁面Wの構造は、一例を示したに過ぎず、例えば必要に応じて、上記間柱等の構造骨材1間にグラスウール、発泡合成樹脂板等の断熱材を充填した構造とすること、上記構造面材2と本発明の通気路兼排水路形成ボード3との間に防水シート及び/又は断熱板を更に介在させた構造とすること等は、更に断熱性及び防水性に優れた壁面Wとなるために好ましい。
【0022】
続いて、本発明に係る上記通気路兼排水路形成ボード3について詳述する。この通気路兼排水路形成ボード3は、板状の合成樹脂発泡体から成る。発泡合成樹脂としては、スチレン樹脂発泡体、エチレン・スチレン共重合樹脂発泡体等のスチレン系樹脂発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂発泡体、硬質ポリウレタン発泡体、フェノール系樹脂発泡体、或いは、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂発泡体等の合成樹脂発泡体を挙げることができる。これらの中でも、経済性、断熱性等の観点から、スチレン系樹脂発泡体、更にスチレン樹脂発泡体を用いることが好ましい。
【0023】
上記合成樹脂発泡体は、合成樹脂粒子の発泡倍率が20~150倍に、好ましくは25~125倍に発泡させたもので、密度が0.0067~0.05g/cm3、好ましくは0.008~0.040g/cm3のものである。これは発泡倍率が20倍未満のものや150倍を超えるものは熱伝導倍率が高くなる傾向がある。特に独立気泡率の高い発泡体であることが好ましい。この様な発泡合成樹脂製のボードは、熱伝導率が0.060W/m・k以下、好ましくは0.020~0.050W/m・kのものである。
【0024】
通気路兼排水路形成ボード3は、上記したように全体として板状を成し、その構造面材に対面する裏側板面3Bには、高さ3~30mmの柱状突起10が複数個設けられている。この3~30mmの高さの柱状突起10の存在により、構造面材2との間に通気層X、即ち通気路兼排水路が形成される(
図1及び
図6参照)。
【0025】
上記柱状突起10は、その正面形状が円形、楕円形、四角形、ひし形、三角形等の種々の形状のものを採用できるが、
図2に示したように、正面形状がひし形形状であり、該ひし形形状の角部が上下となるように配されているものであることが好ましい。このような柱状突起は、水の流下がし易いために好ましい。
【0026】
また、柱状突起10は、
図3に示したように、上部側面10Aは先端側ほど外方に突出した逆テーパー状に形成され、下部側面10Bは基部側ほど外方に突出したテーパー状に形成されている。このような側面形状の柱状突起とすることにより、該柱状突起を伝わって流下する水は、構造面材側(屋内側)を濡らすことなく柱状突起の基部側に集められた状態で効率よく流下し、排水されるものとなる。テーパー角度αは、5~20度が好ましく、7~15度がより好ましい。
【0027】
上記柱状突起10は、複数種の大小異形形状のものから成ることが好ましい。複数種の大小異形形状の柱状突起とすることにより、板面に柱状突起を偏りなく配置することができ、ビス等による留め付けによる変形を低減することができる。
図2に示したものにあっては、大きさ及び形状が異なる正面形状がひし形形状の3種類の柱状突起10が、該ひし形形状の角部が上下に向くようにそれぞれ配されている。また、柱状突起10のボードの裏側板面3Bに対する面積割合(柱状突起10の突出端面の総面積/ボードの裏側板面3Bの板面総面積)は、形成される通気層Xの排気及び排水性と断熱ボードとしての強度との兼ね合いから、7~50%であることが好ましく、10~25%であることがより好ましい。
図2に示したものにあっては、14%となる面積割合の柱状突起10が形成されている。
【0028】
通気路兼排水路形成ボード3の表側板面3Aは、凹凸のない平板状に形成されていても良いが、外壁面をモルタル塗布等の湿式工法で仕上げる際に化粧仕上下地としてそのまま好適に利用できるよう、化粧材が定着し易い微細な凹凸が形成されたものとすることが好ましい。
図4、
図5に示したものにあっては、通気路兼排水路形成ボード3の表側板面3Aに、高さ0.5~2mmのかえし形状の突起11が満遍なく形成されている。かかる突起を形成したものとすることにより、化粧材が定着し易いものとなると共に、突起が目印となって化粧材の塗布量の過不足を確認できるものとなる。
【0029】
また、通気路兼排水路形成ボード3の表側板面3Aには、施工時の取付上下を示す印しが設けられていることが好ましい。これは、本発明に係る通気路兼排水路形成ボード3は、上記したように通気層を形成する柱状突起10の上部側面10Aは逆テーパー状に形成し、下部側面10Bはテーパー状に形成することにより、該柱状突起10を伝わって流下する水を構造面材側(屋内側)を濡らすことなく柱状突起の基部側に集められた状態で効率よく流下させ、排水されるものとしたことから、かかる作用効果を奏するものとするためには該ボードの取付上下は間違えることができず、施工時の作業性を向上させることのできる上下を示す印しの存在は好ましいものとなる。
図4に示したものにあっては、通気路兼排水路形成ボード3の表側板面3Aに、張り方向を示す矢印12が溝により形成されている。更に、通気路兼排水路形成ボード3の周縁部には、該ボード3を隣接して貼り合わせる際の納まりを向上させる相じゃくり13を形成することが好ましい。
【0030】
上記した構成の本発明に係る通気路兼排水路形成ボード3の外形寸法は、適宜の寸法がとり得るが、例えば汎用されている合板寸法や、構造骨材1の配列ピッチを考慮すると、幅×長さは、尺モジュールを基本とする606mm×910mm、910mm×1820mmと、メーターモジュールに対応する500mm×1000mmを基準として設計することができ、厚み(柱状突起を除く厚み)は、10~100mm程度が適当である。
【0031】
本発明に係る通気路兼排水路形成ボード3は、上記した構成を有するものであり、次のように作用する。
まず上記のように構成された通気路兼排水路形成ボード3は、すでに
図1の壁面Wの説明において述べたように、構造面材2に対し通気路兼排水路形成ボード3が、その柱状突起10を当接させた状態で固定される。この固定にあたっては、ビス等の緊結具を用いて行われるが、通気路兼排水路形成ボード3の上下方向は、該ボードの表側板面3Aに設けられた矢印12により容易に認識でき、間違えることなく施工できる。
【0032】
続いて、張り付けられた通気路兼排水路形成ボード3の表面に化粧仕上4を施す。この化粧仕上4の施工に際しては、湿式仕上げの下地としてそのままの通気路兼排水路形成ボード3の表側板面3Aが使用される。通気路兼排水路形成ボード3の表側板面3Aには、高さ0.5~2mmのかえし形状の突起11が満遍なく形成されているため、化粧材が定着し易いものとなると共に、突起が目印となって化粧材の塗布量の過不足を確認できるものとなる。
【0033】
化粧仕上4は、具体的には次のように施工される。まず通気路兼排水路形成ボード3の表側板面3Aにベースコート素材7aを塗布する。この際、形成した突起11が目印となりベースコート素材7aの塗布量の過不足を確認でき、均一厚さのベースコートを形成できる。続いて、グラスファイバーメッシュから成る芯材7bを形成したベースコート上に張り付け、更にその状態で、その上から更に同一のベースコート素材7aを塗布することにより、グラスファイバー強化のベースコート7を設ける。続いて、ベースコート7上に適宜の化粧効果を有するトップコート8を吹き付け或いは塗布等により施工し、屋外壁面となる化粧仕上4が完成する(
図1参照)。
【0034】
壁面Wの屋内側は、通常と同様に石膏ボード等の内張りボード5が張設され、その屋内面側に内装クロス6等が張られ、内装化粧が施される。
【0035】
しかして、上記のようにして構築された壁面Wは、本発明に係る通気路兼排水路形成ボード3は、板状の合成樹脂発泡体から成るものであるので、断熱材として機能し、外断熱工法を実現したものとなると共に、該通気路兼排水路形成ボード3の構造面材2に対面する裏側板面3Bには、高さ3~30mmの柱状突起10が形成されているので、
図6に示したように、構造面材2との間に通気層Xが画成され、通気層工法をも実現したものとなる。
【0036】
しかも、通気層Xを画成するための柱状突起10は、上部側面10Aは先端側ほど外方に突出した逆テーパー状に形成され、下部側面10Bは基部側ほど外方に突出したテーパー状に形成されているので、該柱状突起10を伝わって流下する水は構造面材2側(屋内側)を濡らすことなく柱状突起の基部側に集められた状態で効率よく流下し、排水されるものとなり、通気層工法において本来求められる防水性、排水性を向上させることができるものとなる(
図6参照)。
【0037】
以上、本発明に係る通気路兼排水路形成ボードの実施形態を具体的に説明したが、本発明は、何ら既述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る通気路兼排水路形成ボードは、建物の外壁に施工される通気層工法、外断熱工法、更には外壁面をモルタル塗布等の湿式工法で仕上げる際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
W 壁面
1 構造骨材
2 構造面材
3 通気路兼排水路形成ボード
3A 通気路兼排水路形成ボードの表側板面
3B 通気路兼排水路形成ボードの裏側板面
4 化粧仕上
5 内張りボード
6 内装クロス
7 グラスファイバー強化のベースコート
7a ベースコート素材
7b グラスファイバーメッシュから成る芯材
8 トップコート
10 柱状突起
10A 柱状突起の上部側面
10B 柱状突起の下部側面
11 かえし形状の突起
12 張り方向を示す矢印
13 相じゃくり
X 通気層