(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109247
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】宇宙探査機のサンプル搬送装置及びそれを備えた宇宙探査機
(51)【国際特許分類】
B64G 4/00 20060101AFI20230801BHJP
B64G 1/10 20060101ALI20230801BHJP
B64G 1/64 20060101ALI20230801BHJP
G01N 1/08 20060101ALI20230801BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B64G4/00 105
B64G1/10 471
B64G1/64 600
G01N1/08 C
G01N1/04 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010658
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多賀 啓介
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA19
2G052AB01
2G052AB11
2G052AC07
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA29
2G052CA02
2G052CA08
2G052EC07
2G052GA08
2G052GA09
2G052JA06
2G052JA07
(57)【要約】
【課題】宇宙探査機において、サンプル搬送装置の信頼性を高めるとともに軽量化及び低コスト化を図る。
【解決手段】宇宙探査機のサンプル搬送装置は、リンク機構と、前記リンク機構に接続されるキャリアと、前記リンク機構を駆動するアクチュエータと、を備える。第1支軸から第1連結軸までの距離をA、前記第1支軸から第2支軸までの距離をB、前記第2支軸から第2連結軸までの距離をC、前記第1連結軸から前記第2連結軸までの距離をDとすると、下記数式(1)を満たす。前記リンク機構は、前記キャリアが移動経路における下位置と上位置との間の中間位置にある状態において、前記第1支軸の軸線方向から見て、前記第1支軸と前記第2支軸と前記第2連結軸とが同一直線上に並ぶ状態に配置されている。
A+B<C+D ・・・・・(1)
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙探査機のサンプルレシーバの投入口にサンプルを投入するためのサンプル搬送装置であって、
リンク機構と、
前記リンク機構に接続され、前記サンプルを搬送するキャリアと、
前記リンク機構を駆動するアクチュエータと、を備え、
前記リンク機構は、
第1支軸と、
第2支軸と、
前記第1支軸に接続された基端部を有する第1アームと、
前記第2支軸に接続された基端部を有する第2アームと、
前記第1アームの先端部に第1連結軸を介して接続される第1端部と、前記第2アームの先端部に第2連結軸を介して接続された第2端部と、を有し、前記キャリアを支持する連結アームと、を含み、
前記第1支軸又は前記第2支軸は、前記アクチュエータによって駆動され、
前記リンク機構は、前記アクチュエータの駆動によって、前記キャリアがサンプルを受ける下位置と、前記下位置よりも上方の前記投入口に前記キャリアが前記サンプルを投入する上位置と、の間の移動経路を前記キャリアが移動する状態に配置され、
前記第1支軸から前記第1連結軸までの距離をA、前記第1支軸から前記第2支軸までの距離をB、前記第2支軸から前記第2連結軸までの距離をC、前記第1連結軸から前記第2連結軸までの距離をDとすると、下記数式(1)を満たし、
A+B<C+D ・・・・・(1)
前記リンク機構は、前記キャリアが前記移動経路における前記下位置と前記上位置との間の中間位置にある状態において、前記第1支軸の軸線方向から見て、前記第1支軸と前記第2支軸と前記第2連結軸とが同一直線上に並ぶ状態に配置されている、宇宙探査機のサンプル搬送装置。
【請求項2】
前記第1支軸は、鉛直方向及び水平方向の両方において、前記下位置と前記上位置との間に配置されている、請求項1に記載の宇宙探査機のサンプル搬送装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、前記キャリアが前記下位置から前記中間位置側とは反対側に向かうのを阻止し且つ前記キャリアが前記上位置から前記中間位置側とは反対側に向かうのを阻止する少なくとも1つのストッパを更に含む、請求項1又は2に記載の宇宙探査機のサンプル搬送装置。
【請求項4】
前記キャリアは、収容空間と、前記収容空間に連通する開口と、を有し、
前記キャリアは、前記下位置にある状態で前記開口が上方を向き且つ前記上位置にある状態で前記開口が下方を向く姿勢にて前記連結アームに接続されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の宇宙探査機のサンプル搬送装置。
【請求項5】
前記キャリアは、前記収容空間及び前記開口を画定する周壁を有し、
前記周壁は、前記開口に向けて先細った形状を有する、請求項4に記載の宇宙探査機のサンプル搬送装置。
【請求項6】
宇宙探査機のサンプルレシーバの投入口にサンプルを投入するためのサンプル搬送装置であって、
前記サンプルを搬送するキャリアと、
一端を揺動中心とし、他端に前記キャリアを回動可能に支持するアームを有するリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、前記アームの揺動に伴って前記キャリアが回動することにより、前記キャリアの姿勢が変化し、前記キャリアを、前記サンプルを受け入れる下位置と、前記下位置よりも上方の前記投入口に前記サンプルを投入する上位置との間の移動経路を移動させ、
前記移動経路のうち前記下位置と前記上位置との間の所定の位置を中間位置としたとき、前記下位置から前記中間位置までの下側領域を前記アームが角変位するとき、前記キャリアの角変位量は、前記アームの角変位量よりも小さく、
前記移動経路のうち前記中間位置から前記上位置までの上側領域を前記アームが角変位するとき、前記キャリアの角変位量は、前記アームの角変位量よりも大きい、宇宙探査機のサンプル搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の前記サンプル搬送装置と、
前記サンプルが投入される前記投入口を有する前記サンプルレシーバと、
前記サンプルを地中から掘り出し、前記下位置にある前記キャリアに前記サンプルを落下させるサンプル掘出装置と、を備える、宇宙探査機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、宇宙探査機のサンプル搬送装置及びそれを備えた宇宙探査機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、月や惑星での探査活動に用いられる宇宙探査機を開示している。前記宇宙探査機は、地中の岩石や砂等のサンプルを採取する穴掘り装置を備える。前記穴掘り装置は、互いに連結された複数のアームを含むリンク機構と、前記リンク機構の下部に設けられたシャベルとを有する。前記リンク機構は、アーム用アクチュエータとチルト用アクチュエータとシャベル用アクチュエータとによって駆動され、前記シャベルを上下動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記宇宙探査機には、サンプル搬送に用いる1つのシャベルに対して多数のアクチュエータが設けられている。アクチュエータが多くなると、その数だけ故障発生の可能性が増え、重量及びコストの観点でも不利となる。
【0005】
そこで本開示は、宇宙探査機において、サンプル搬送装置の信頼性を高めるとともに軽量化及び低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る宇宙探査機のサンプル搬送装置は、宇宙探査機のサンプルレシーバの投入口にサンプルを投入するためのサンプル搬送装置であって、リンク機構と、前記リンク機構に接続され、前記サンプルを搬送するキャリアと、前記リンク機構を駆動するアクチュエータと、を備える。前記リンク機構は、第1支軸と、第2支軸と、前記第1支軸に接続された基端部を有する第1アームと、前記第2支軸に接続された基端部を有する第2アームと、前記第1アームの先端部に第1連結軸を介して接続される第1端部と、前記第2アームの先端部に第2連結軸を介して接続された第2端部と、を有し、前記キャリアを支持する連結アームと、を含む。前記第1支軸又は前記第2支軸は、前記アクチュエータによって駆動される。前記リンク機構は、前記アクチュエータの駆動によって、前記キャリアがサンプルを受ける下位置と、前記下位置よりも上方の前記投入口に前記キャリアが前記サンプルを投入する上位置と、の間の移動経路を前記キャリアが移動する状態に配置される。前記第1支軸から前記第1連結軸までの距離をA、前記第1支軸から前記第2支軸までの距離をB、前記第2支軸から前記第2連結軸までの距離をC、前記第1連結軸から前記第2連結軸までの距離をDとすると、下記数式(1)を満たす。前記リンク機構は、前記キャリアが前記移動経路における前記下位置と前記上位置との間の中間位置にある状態において、前記第1支軸の軸線方向から見て、前記第1支軸と前記第2支軸と前記第2連結軸とが同一直線上に並ぶ状態に配置されている。
A+B<C+D ・・・・・(1)
【0007】
本開示の一態様に係る宇宙探査機のサンプル搬送装置は、宇宙探査機のサンプルレシーバの投入口にサンプルを投入するためのサンプル搬送装置であって、前記サンプルを搬送するキャリアと、一端を揺動中心とし、他端に前記キャリアを回動可能に支持するアームを有するリンク機構と、を備える。前記リンク機構は、前記アームの揺動に伴って前記キャリアが回動することにより、その姿勢が変化し、前記キャリアを、サンプルを受け入れる下位置と、前記下位置よりも上方の前記投入口に前記サンプルを投入する上位置との間の移動経路を移動させる。前記移動経路のうち前記下位置と前記上位置との間の所定の位置を中間位置としたとき、前記下位置から前記中間位置までの下側領域を前記アームが角変位するとき、前記キャリアの角変位量は、前記アームの角変位量よりも小さい。前記移動経路のうち前記中間位置から前記上位置までの上側領域を前記アームが角変位するとき、前記キャリアの角変位量は、前記アームの角変位量よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、キャリアの移動経路の下側領域ではキャリアの角変位量が小さくなるため、キャリアからサンプルがこぼれ落ちることを避けることができる。また、キャリアの移動経路の上側領域ではキャリアの角変位量が大きくなるため、サンプルレシーバの投入口の近傍にてキャリアから投入口にサンプルを投入できる。従って、アクチュエータが第1支軸又は第2支軸の一方を回転させれば、キャリアに所望のサンプル搬送動作をさせることができ、アクチュエータの数を低減することができる。その結果、サンプル搬送装置の信頼性を高めながら、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る宇宙探査機の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1のサンプル搬送装置の動作を説明する図面である。
【
図6】
図6は、
図1のサンプル搬送装置の動作を説明する図面である。
【
図7】
図7は、
図1のサンプル搬送装置の動作を説明する図面である。
【
図8】
図8は、
図1のサンプル搬送装置の動作を説明する図面である。
【
図9】
図9は、
図1のサンプル搬送装置の動作を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る宇宙探査機1の斜視図である。
図1に示すように、宇宙探査機1は、天体の探査に利用され、天体の地表を走行する移動体である。宇宙探査機1は、例えば、無人機であり、天体の地中の物質をサンプルとして採取して分析する。宇宙探査機1は、ボディ2、車輪3、サンプル掘出装置4、サンプル分析器5、サンプルレシーバ6、原動機7、コントローラ8、サンプル搬送装置10等を備える。ここで、サンプル掘出装置4が延在する方向を鉛直方向Vとし、鉛直方向Vは宇宙探査機1の鉛直上下方向と一致する。鉛直下方向は、ボディ2に対して天体の地表が存在する方向である。また、鉛直方向Vに直交する方向を宇宙探査機1の水平方向Hとする。
【0012】
ボディ2は、車輪3によって支持される。ボディ2は、サンプル掘出装置4、サンプル分析器5、サンプルレシーバ6、原動機7、コントローラ8、及び、サンプル搬送装置10を支持する。宇宙探査機1は、原動機7に駆動される車輪3によって天体の地表を走行する。なお、車輪3の代わりに歩行脚や無限軌道が適用されてもよい。サンプル分析器5は、前記サンプルの成分等を分析する機器である。サンプルレシーバ6は、ボディ2に設けられ、前記サンプルが投入される投入口6aを有する。サンプルレシーバ6は、受け入れたサンプルをサンプル分析器5に導く。原動機7は、例えば電動モータとし得る。コントローラ8は、処理回路を含み、サンプル掘出装置4、原動機7、サンプル搬送装置10等を制御する。前記処理回路は、前記処理回路は、例えば、プログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサとし得る。
【0013】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0014】
図2は、
図1のサンプル掘出装置4の縦断面図である。
図1及び
図2に示すように、サンプル掘出装置4は、天体の地中の物質をサンプルとして掘り出す。サンプル掘出装置4は、管11、ドリル12、昇降モータ13、ベース14、及び、ドリルモータ15を備える。昇降モータ13及びドリルモータ15は、コントローラ8(
図1参照)によって制御される。管11は鉛直方向Vに延びている。管11の内部空間には、鉛直方向Vに延びるドリル12が収容されている。昇降モータ13は、鉛直方向Vに管11及びドリル12を昇降させる。ベース14は、管11、ドリル12及び昇降モータ13を支持した状態でボディ2に支持されている。
【0015】
ドリル12は、ドリルモータ15に駆動されてドリル12の軸線周りに回転した状態で、昇降モータ13に駆動されて地中に挿入される。これにより、ドリル12が掘り出したサンプルが管11の下開口11aから管11の内部に取り入れられる。サンプル掘出し後、サンプルを保持した管11は、昇降モータ13によってドリル12とともに上昇する。ドリルモータ15が逆回転されると、管11内のサンプルが下開口11aから下方に落下する。即ち、管11の下開口11aは、サンプル掘出装置4のサンプル排出口である(以下、符号11aをサンプル排出口とも称する。)。なお、サンプル掘出装置4の構成は特に限定されず、探査対象の地中のサンプルを捕捉し、これを探査対象の地表まで引き上げることができればよい。例えばサンプル掘出装置4は、スコップと前記スコップを駆動するアクチュエータとを有する構成であってもよい。
【0016】
図1に示すように、サンプル搬送装置10は、サンプル掘出装置4が地中から掘り出して地表より上方に引き上げたサンプルを受け取り、サンプルレシーバ6の投入口6aに向けて搬送する。サンプル搬送装置10は、ボディ2の水平方向Hの側方に配置されている。サンプル搬送装置10は、リンク機構21、アクチュエータ22、キャリア23及びサポート24を備える。リンク機構21は、サポート24を介してボディ2に支持されている。後述の通り、リンク機構21はその動作によってキャリア23の位置および姿勢を変化させる装置である。この動作に際してボディ2との相対位置が変化しない部分をリンク機構21の基端部とし、リンク機構21におけるキャリア23の接続部分をリンク機構21の先端部とする。また後述の第1アーム33及び第2アーム34は一端部および他端部を持ち、前記一端部はリンク機構21の基端部に接続される基端部、前記他端部を先端部とする。
【0017】
アクチュエータ22は、リンク機構21の基端部に接続されてリンク機構21を駆動する。アクチュエータ22は、コントローラ8によって制御される。キャリア23はリンク機構21の先端部に接続され、リンク機構21の動作によりサンプル掘出装置4から受け入れたサンプルを搬送してサンプルレシーバ6の投入口6aに投入する。なお、キャリア23は、目的等に応じてリンク機構21の先端部以外の部分に接続されていてもよい。
【0018】
図3は、
図1のサンプル搬送装置10の拡大図である。
図3に示すように、サンプル搬送装置10のリンク機構21は、ベースプレート30、第1支軸31、第2支軸32、第1アーム33、第2アーム34、連結アーム35及びストッパ39を備える。ベースプレート30は、サポート24(
図1参照)を介してボディ2に支持されている。ベースプレート30は一端側と他端側を持つ板形状であり、リンク機構21の基端部を構成する。第1支軸31は、ベースプレート30の一端部に回動自在に接続されている。第1支軸31は、アクチュエータ22の駆動軸と共回転するようにアクチュエータ22に接続されている。なお、第1支軸31は、アクチュエータ22の駆動軸であってもよい。第2支軸32は、ベースプレート30の他端部に取り付けられている。ベースプレート30は、水平方向Hに沿った方向に延びている。
【0019】
第1アーム33は、その基端部33aにおいて第1支軸31に固定されている。第1支軸31が自己の軸線周りに回動すると、第1アーム33が基端部33aを揺動中心として揺動する。第2アーム34は、その基端部34aにおいて第2支軸32に接続されている。第2支軸32がベースプレート30に固定されている場合には、第2アーム34は、第2支軸32に回動自在に接続されている。第2支軸32がベースプレート30に回動自在に接続されている場合には、第2アーム34は、第2支軸32に固定されていても回動自在に接続されていてもよい。
【0020】
第2アーム34は、その基端部24aと先端部34bとの間の中間部34cがサンプル掘出装置4(
図1参照)から離れるように曲がった形状を有する。即ち、第2アーム34は、その中間部34cが第1アーム33に近づくように曲がった形状を有する。本実施形態では、第2アーム34は、中間部34cにおいて屈曲した形状を有するが、全体として湾曲した形状を有してもよい。
【0021】
なお、アクチュエータ22は第1支軸31の代わりに第2支軸32を駆動するように配置されてもよい。その場合には、アクチュエータ22で駆動される第2支軸32が第2アーム34と共回転し、第1支軸31が第1アーム33と回動自在に接続されてもよい。本実施形態のアクチュエータ22はサーボモータであるが、例えばステッピングモータでもよく、アクチュエータ22の種類はこれらに限定されない。
【0022】
連結アーム35は、第1端部35aと、第1端部35aとは反対側の端部である第2端部35bと、を有する。連結アーム35の第1端部35aは、第1アーム33の先端部33bに、第1連結軸36を介して回動自在に接続されている。連結アーム35の第2端部35bは、第2アーム34の先端部34bに、第2連結軸37を介して回動自在に接続されている。
【0023】
即ち、連結アーム35は、第1アーム33の先端部33bと第2アーム34の先端部34bとを互いに連結している。第1支軸31、第2支軸32、第1連結軸36及び第2連結軸37の各軸線は、同じ方向に延びている。連結アーム35は、キャリア23を支持する。即ち、第1アーム33及び第2アーム34の先端部33b,34bは、連結アーム35を介してキャリア23を回動可能に支持する。本実施形態では、連結アーム35は、ブラケット38を介してキャリア23を支持している。なお、ブラケット38を省略して、連結アーム35が直接的にキャリア23を支持してもよい。
【0024】
ここで、第1支軸31から第1連結軸36までの距離をA、第1支軸31から第2支軸32までの距離をB、第2支軸32から第2連結軸37までの距離をC、第1連結軸36から第2連結軸37までの距離をDと定義する。ここでの軸間距離は、軸心間の距離とする。リンク機構21は、下記数式(1)を満たすように構成されている。
【0025】
[数式1]
A+B<C+D ・・・・・(1)
【0026】
図4は、
図1のサンプル搬送装置10の側面図である。
図4に示すように、第2アーム34は、第1支軸31の軸線方向Xにおいて、第1アーム33に対してずれて配置されている。即ち、第2アーム34は、軸線方向Xに直交する方向から見て、第1アーム33に重ならないように配置されている。ベースプレート30から第2アーム34までの軸線方向Xの距離は、ベースプレート30から第1アーム33までの軸線方向Xの距離よりも長い。
【0027】
第1アーム33には、第1アーム33から軸線方向Xに突出するストッパ39が固定されている。ストッパ39は、軸線方向Xに直交し且つ第1アーム33の延在方向に直交する方向から見て、第2アーム34に重なる。言い換えると、ストッパ39は、リンク機構21の動作時における第2アーム34の移動経路上に配置されている。
【0028】
サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aとサンプルレシーバ6の投入口6aとは、水平方向Hにおいて互いにずれて配置されている。言い換えると、キャリア23のサンプル受取位置とサンプルレシーバ6の投入口6aとは、水平方向Hにおいて互いにずれて配置されている。サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aは、サンプルレシーバ6の投入口6aよりもボディ2から水平方向Hに離れている。なお、サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aは下方向に向けて開口しており、サンプルレシーバ6の投入口6aは上方向に向けて開口している。
【0029】
リンク機構21は、第1支軸31の軸線方向Xが水平方向Hに対して傾斜する姿勢で配置されている。具体的には、サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aの下方の位置、すなわち下位置P1にあるときのキャリア23が、サンプルレシーバ6の投入口6aの上方の位置、即ち上位置P2にあるときのキャリア23よりも、ボディ2から水平方向Hに離れるように、軸線方向Xが水平方向Hに対して傾斜している。なお、
図5に示すように、下位置P1はキャリア23がサンプル掘出装置4のサンプル排出口11aの鉛直下方にある位置であり、上位置P2はキャリア23がサンプルレシーバ6の投入口6aの鉛直上方にある位置である。
【0030】
キャリア23は、底壁23a、周壁23b、開口23c及び収容空間Sを有する。底壁23aは、連結アーム35に設けたブラケット38に固定されている。周壁23bは、底壁23aの周縁部から突出している。底壁23a及び周壁23bは、収容空間Sを画定している。周壁23bの先端は、収容空間Sに連通する開口23cを画定している。周壁23bは、開口23cに向けて先細った形状を有する。なお、キャリア23の形状は特に限定されず、下位置P1においてサンプル排出口11aから下方向に放出されるサンプルを受け取ることができ、且つ上位置P2においてキャリア23の回転によってサンプルをサンプルレシーバ6の投入口6aに投入できる形状であればよい。キャリア23の形状は、例えばトレイのようなものでもよい。
【0031】
図5乃至
図9は、
図2のサンプル搬送装置10の動作を説明する図面である。
図5は、サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aからサンプル100を受け取る下位置にキャリア23がある状態を示している。
図5に示すように、サンプルレシーバ6は、
図4にて示した軸線方向Xから見て、サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aに対して水平方向Hにずれている。サンプル搬送装置10のキャリア23は、アクチュエータ22によるリンク機構21の動作によって、所定の移動経路Pに沿って移動する。第1アーム33は、第1支軸31を揺動中心として揺動する。第2アーム34は、第2支軸32を揺動中心として揺動する。
【0032】
ここで、サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aの下方にあるキャリア23の位置を下位置P1と称し、サンプルレシーバ6の投入口6aの上方にあるキャリア23の位置を上位置P2と称し、移動経路Pにおける下位置P1と上位置P2との間のキャリア23の所定位置を中間位置P3と称する。
【0033】
第1支軸31は、鉛直方向V及び水平方向Hの両方において、下位置P1と上位置P2との間に配置されている。第1支軸31は、鉛直方向V及び水平方向Hの両方において、サンプル掘出装置4のサンプル排出口11aとサンプルレシーバ6の投入口6aとの間に配置されている。第1支軸31は、水平方向Hにおいて第2支軸32よりもサンプルレシーバ6の投入口6aに近くなるように配置されている。キャリア23が下位置P1にあるとき、第1アーム33及び第2アーム34は、
図4にて示した軸線方向Xから見て第1支軸31の軸心と第2支軸32の軸心とを結ぶ仮想線Lの下側において、第1支軸31及び第2支軸32からそれぞれ下方に延びている。
【0034】
ストッパ39は、キャリア23が下位置P1にある状態では、第2アーム34と干渉することでキャリア23が下位置P1から中間位置P3側とは反対側に向かうことを阻止する。キャリア23が上位置P2にある状態では、ストッパ39は、第2アーム34と干渉することでキャリア23が上位置P2から中間位置P3側とは反対側に向かうことも阻止する。即ち、ストッパ39は、キャリア23の下位置P1及び上位置P2における位置合わせに用いられ、アクチュエータ22の制御による位置決めと共に、キャリア23を物理的に位置決めできる。なお、キャリア23が下位置P1を越えて移動することを阻止するストッパと、キャリア23が上位置P2を越えて移動することを阻止するストッパとは、互いに別のものでもよい。
【0035】
キャリア23は、下位置P1にある状態で開口23cが上方を向く姿勢にて連結アーム35に接続されている。キャリア23は、下位置P1にある状態でサンプル排出口11aから落下するサンプル100を、開口23cを介して受け入れる。
【0036】
図6に示すように、アクチュエータ22によって第1支軸31が回動すると、第1アーム33が基端部33aを揺動中心として揺動し、キャリア23が移動経路Pに沿って移動する。キャリア23は、移動経路Pにおける下位置P1と中間位置P3との間において開口23cが上方を向く姿勢が保たれる。
【0037】
図7に示すように、アクチュエータ22によって第1支軸31が更に回動すると、キャリア23が所定の中間位置P3に到達する。この状態では、第1支軸31の軸線方向Xから見て、第1支軸31と第2支軸32と第2連結軸37とが同一直線、すなわち仮想線L上に並ぶ。即ち、第2アーム34は、軸線方向Xから見て、キャリア23が下位置P1から上位置P2に向かう過程で第1支軸31を横切る。キャリア23が中間位置P3にある状態では、軸線方向Xから見て、第2アーム34の少なくとも一部は、ベースプレート30及び第1アーム33と重なる。キャリア23は、中間位置P3において開口23cが上方を向く姿勢が保たれている。
【0038】
このように、第1アーム33が第1支軸31を軸として角変位することによって、キャリア23は移動経路Pにおける下位置P1から中間位置P3までの下側領域(P1-P3)を移動する。このとき、第1アーム33の角変位によりキャリア23が第1連結軸36を軸として角変位しても、第1連結軸36を軸とした相対座標系でのキャリア23の角変位量は、第1支軸31を軸とした絶対座標系での第1アーム33の角変位量よりも小さくなる。
【0039】
図8に示すように、アクチュエータ22によって第1支軸31が更に回動すると、第2アーム34は、第1支軸31よりも上方に移動し、第1支軸31の軸線方向Xから見て第1アーム33と交差する。第1アーム33及び第2アーム34は、仮想線Lの上側において、第1支軸31及び第2支軸32からそれぞれ上方に延びる。この状態では、キャリア23は、開口23cをやや斜め上方に向けた姿勢になっている。リンク機構21は、キャリア23が移動経路Pにおける中間位置P3よりも上方に移動すると、キャリア23が傾斜し始めるように構成されている。即ち、キャリア23の姿勢は、第1連結軸36を軸としたキャリア23の角変位によって、移動経路Pにおける中間位置P3と上位置P2との間において開口23cが下方の投入口6aに向く姿勢に向けて変化する。
【0040】
図9に示すように、アクチュエータ22によって第1支軸31が更に回動すると、キャリア23の開口23cは、サンプルレシーバ6の投入口6aの上方に配置される。このとき、キャリア23は、開口23cが斜め下方に向く姿勢になる。そのため、キャリア23に収容されたサンプル100は、開口23cから投入口6aに投入され、サンプルレシーバ6に受け止められる。サンプルレシーバ6が受け止めたサンプル100は、サンプル分析器5(
図1参照)に導かれる。なお、キャリア23が上位置P2にある状態において、ストッパ39は、第2アーム34と干渉することでキャリア23が上位置P2を越えること、即ち、中間位置P3側とは反対側に移動することを阻止する。
【0041】
そのため、
図1に示すコントローラ8は、下位置P1及び上位置P2において高精度の位置決め制御を行わずともよい。具体的には、コントローラ8は、アクチュエータ22に動作量、即ち角変位量を指令するのではなく、一定速度での動作開始と、ストッパ39に起因した動作抵抗の検知に基づく動作停止とを制御するだけでもよい。
【0042】
このように、キャリア23が移動経路Pにおける中間位置P3から上位置P2までの上側領域(P3-P2)を移動するとき、第1アーム33の角変位によりキャリア23が第1連結軸36を軸として角変位する。その際、第1支軸31を軸とした絶対座標系でのキャリア23の角変位量は、第1連結軸36を軸とした相対座標系での第1アーム33の角変位量よりも大きくなっている。
【0043】
以上に説明した構成によれば、キャリア23の移動経路Pの下側領域(P1-P3)ではキャリア23の角変位量が小さくなるため、キャリア23からサンプル100がこぼれ落ちることを避けることができる。また、キャリア23の移動経路Pの上側領域(P3-P2)ではキャリア23の角変位量が大きくなるため、サンプルレシーバ6の投入口6aの近傍にてキャリア23から投入口6aにサンプル100を投入できる。
【0044】
従って、アクチュエータ22が第1支軸31を回転させれば、キャリア23に所望のサンプル搬送動作をさせることができ、アクチュエータ22の数を低減することができる。その結果、サンプル搬送装置10の信頼性を高めながら、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0045】
第1支軸31は、鉛直方向V及び水平方向Hの両方において、移動経路Pの下位置P1と上位置P2との間に配置されているので、リンク機構21をコンパクトにできる。
【0046】
ストッパ39は、キャリア23が下位置P1を超えて中間位置P3側とは反対側に向かうのを阻止し且つキャリア23が上位置P2を越えて中間位置P3側とは反対側に向かうのを阻止するので、簡易な制御によってもキャリア23を下位置P1及び上位置P2に正確に位置決めできる。
【0047】
キャリア23は、下位置P1にある状態で開口23cが上方を向き且つ上位置P2にある状態で開口23cが下方を向く姿勢にて連結アーム35に接続されているので、キャリア23がサンプル100の受入と投入とを安定して行うことができる。
【0048】
キャリア23の周壁23bは、開口23cに向けて先細った形状を有するので、キャリア23の開口23cが完全に鉛直上方に向かなくてもキャリア23からサンプル100がこぼれ落ちることを抑止できる。
【0049】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 宇宙探査機
4 サンプル掘出装置
6 サンプルレシーバ
6a 投入口
10 サンプル搬送装置
11a 下開口(サンプル排出口)
21 リンク機構
22 アクチュエータ
23 キャリア
23a 底壁
23b 周壁
23c 開口
24 サポート
30 ベースプレート
31 第1支軸
32 第2支軸
33 第1アーム
33a 基端部
33b 先端部
34 第2アーム
34a 基端部
34b 先端部
35 連結アーム
35a 第1端部
35b 第2端部
36 第1連結軸
37 第2連結軸
39 ストッパ
100 サンプル
L 仮想線
P 移動経路
P1 下位置
P2 上位置
P3 中間位置
S 収容空間
X 軸線方向