(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109262
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】シート制御装置、シート制御方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230801BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20230801BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010682
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 晃史
(72)【発明者】
【氏名】片山 陽太
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀和
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BD03
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗員の挟み込みの発生を低減して安全を確保する。
【解決手段】シート制御装置2は、電動シート30の前後方向への移動を制御する制御部21a、21bと、電動シート30に隣接する前方または後方の他のシートに乗員が着座しているか否かを検出する着座検出部23とを備えている。制御部21a、21bは、電動シート30が他のシートの方向へ移動する際に、着座検出部23が他のシートにおける乗員の着座を検出した場合は、両シート間に乗員が挟み込まれるのを抑制するための処理(たとえば移動距離の制限)を含む第1の制御態様で、電動シート30を他のシートの方向へ移動させる。また、制御部21a、21bは、電動シート30が他のシートの方向へ移動する際に、着座検出部23が他のシートにおける乗員の着座を検出しなかった場合は、前記の処理を含まない第2の制御態様で、電動シート30を他のシートの方向へ移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作に基づいて所定の位置まで移動する電動シートの制御装置であって、
前記電動シートの前後方向への移動を制御する制御部と、
前記電動シートに隣接する前方または後方の他のシートに、乗員が着座しているか否かを検出する着座検出部と、を備え、
前記制御部は、
前記電動シートが前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出した場合は、前記両シート間に乗員が挟み込まれるのを抑制するための処理を含む第1の制御態様で、前記電動シートを前記他のシートの方向へ移動させ、
前記電動シートが前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出しなかった場合は、前記処理を含まない第2の制御態様で、前記電動シートを前記他のシートの方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記制御部は、前記電動シートに備わる前後方向に直進が可能な座部の動作を制御する第1制御部を含み、
前記第1制御部は、
前記座部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出した場合は、前記第1の制御態様に従って、前記座部を所定距離より小さい距離だけ前記他のシートの方向へ移動させ、
前記座部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出しなかった場合は、前記第2の制御態様に従って、前記座部を前記所定距離だけ前記他のシートの方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記制御部は、前記電動シートに備わる前後方向に傾斜が可能な背もたれ部の動作を制御する第2制御部を含み、
前記第2制御部は、
前記背もたれ部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出した場合は、前記第1の制御態様に従って、前記背もたれ部を所定角度より小さい角度だけ前記他のシートの方向へ移動させ、
前記背もたれ部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出しなかった場合は、前記第2の制御態様に従って、前記背もたれ部を前記所定角度だけ前記他のシートの方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記他のシートに着座している乗員に対して警報を発するための警報指令出力部をさらに備え、
前記制御部は、前記電動シートに備わる前後方向に直進が可能な座部の動作を制御する第1制御部を含み、
前記第1制御部は、
前記座部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出した場合は、前記第1の制御態様に従って、前記警報指令出力部により前記警報を発した状態で、前記座部を前記他のシートの方向へ移動させ、
前記座部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出しなかった場合は、前記第2の制御態様に従って、前記警報指令出力部による前記警報を発することなく、前記座部を前記他のシートの方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記他のシートに着座している乗員に対して警報を発するための警報指令出力部をさらに備え、
前記制御部は、前記電動シートに備わる前後方向に傾斜が可能な背もたれ部の動作を制御する第2制御部を含み、
前記第2制御部は、
前記背もたれ部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出した場合は、前記第1の制御態様に従って、前記警報指令出力部により前記警報を発した状態で、前記背もたれ部を前記他のシートの方向へ移動させ、
前記背もたれ部が前記他のシートの方向へ移動する際に、前記着座検出部が前記他のシートにおける乗員の着座を検出しなかった場合は、前記第2の制御態様に従って、前記警報指令出力部による前記警報を発することなく、前記背もたれ部を前記他のシートの方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項6】
所定の操作に基づいて所定の位置まで移動する電動シートの制御方法であって、
前記電動シートに隣接する前方または後方の他のシートに、乗員が着座しているか否かを検出する手順と、
前記電動シートが前記他のシートの方向へ移動する際に、前記他のシートにおける乗員の着座が検出された場合は、前記両シート間に乗員が挟み込まれるのを抑制するための処理を含む第1の制御態様で、前記電動シートを前記他のシートの方向へ移動させる手順と、
前記電動シートが前記他のシートの方向へ移動する際に、前記他のシートにおける乗員の着座が検出されなかった場合は、前記処理を含まない第2の制御態様で、前記電動シートを前記他のシートの方向へ移動させる手順と、を含むことを特徴とするシート制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに装備された電動式のシートを制御するシート制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動四輪車のような車両には、モータの回転により座部や背もたれ部が前後に移動する電動式のシートが装備されているものがある。このようなシートにおいて、座部や背もたれ部の位置を調整する場合、従来はシートの近傍に設けられた操作部を操作して位置調整を行っていた。一方、近年では、座部や背もたれ部の位置を、利用者の好みに応じた目標位置として予め登録しておき、乗車時にその目標位置まで座部や背もたれ部を自動的に移動させる、オート駆動機能を備えた車両が登場している。
【0003】
このようなオート駆動機能を備えた車両にあっては、たとえば、前席のシートと後席のシートとの間に人や物が存在している状態で、前席のシートの座部が自動的に後方へ移動(直進)すると、前後のシートの間に人や物が挟み込まれて、安全が脅かされるおそれがある。前席のシートの背もたれ部が自動的に後方へ移動(傾斜)する場合も同様である。このため、シート制御装置には、挟み込みを検出して、座部や背もたれ部を移動方向と逆の方向へ反転させる機能が備わっている。
【0004】
挟み込みが発生すると、モータに加わる荷重の増加に伴って、モータに流れる電流が増加するとともに、モータの回転数が低下する。そこで、所定期間におけるモータの電流や回転数の変化量(差分)を検出し、その検出値を閾値と比較することにより、挟み込みが発生したか否かを判定することができる。特許文献1~6には、シートの位置制御における挟み込み検出の技術が開示されている。特許文献7には、シートクッションの跳ね上げに伴って発生する挟み込みが検出された場合の、シート位置の制御方法が記載されている。特許文献8には、シートに乗員が着座している場合は挟み込み検出の閾値を大きくすることで、シートが駆動不能となるのを防止する技術が記載されている。
【0005】
図9および
図10は、電動シート30による挟み込みが発生した場合の、基本的な動作を示している。電動シート30は、前後方向に直進が可能な座部31と、前後方向に傾斜が可能な背もたれ部32とを備えている。矢印Fは前方を表し、矢印Rは後方を表している。以下、座部31の前後方向の直進動作を「スライド動作」といい、背もたれ部32の前後方向の傾斜動作を「リクライニング動作」という。
【0006】
図9は、座部31のスライド動作中に挟み込みが発生した場合を示している。(a)はスライド動作前の状態であって、乗員50が着座した前席(ここでは運転席)の電動シート30は、乗員60が着座している後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。ここではシート40は固定シートであるが、電動シートであってもよい(以下同様)。
【0007】
この状態で、乗員50が、座部31を後方Rの所定位置(目標位置)まで自動的に移動させるオート操作を行うと、(b)のように、座部31がスライド動作によりP方向へ移動するとともに、背もたれ部32も座部31と連動して移動する。つまり、電動シート30全体が後方Rへ移動する。このとき、目標位置が後席40に接近していると、破線aで示すように、移動中の電動シート30の一部が後席の乗員60の脚に当たる。このため、電動シート30がそれ以上移動できなくなって、両シート30、40の間に脚が挟み込まれた状態となる。この挟み込みが検出されると、モータは(b)の状態でいったん停止した後、逆転する。このため、電動シート30の座部31は、(b)の位置から反転して、(c)のようにP方向と逆のP’方向へ移動する。これによってシート30、40の間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【0008】
図10は、背もたれ部32のリクライニング動作中に挟み込みが発生した場合を示している。(a)はリクライニング動作前の状態であって、乗員50が着座した前席(運転席)の電動シート30は、後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。
【0009】
この状態で、乗員50が、背もたれ部32を後方Rの所定位置(目標位置)まで自動的に移動させるオート操作を行うと、(b)のように、背もたれ部32がリクライニング動作によりQ方向へ移動する(座部31は移動しない)。このとき、背もたれ部32の傾斜角度が一定以上であると、破線bで示すように、移動中の背もたれ部32が後席の乗員60の脚に当たる。このため、背もたれ部32がそれ以上移動できなくなって、両シート30、40の間に脚が挟み込まれた状態となる。この挟み込みが検出されると、モータは(b)の状態でいったん停止した後、逆転する。このため、背もたれ部32は、(b)の位置から反転して、(c)のようにQ方向と逆のQ’方向へ移動する。これによってシート30、40の間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2020-0065312号
【特許文献2】韓国特許公開第10-2020-0065302号
【特許文献3】韓国特許公開第10-2013-0039104号
【特許文献4】中国特許公開第109278594号
【特許文献5】特開2016-129449号公報
【特許文献6】特開2007-131138号公報
【特許文献7】特開2004-210159号公報
【特許文献8】特開2021-95085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、前後のシート30、40の間で挟み込みが発生した場合、座部31や背もたれ部32を逆方向に反転させることによって、挟み込みを解消することができる。しかるに、この反転動作は、実際に挟み込みが発生した後に行われる事後的な動作であるから、挟み込みによって乗員の安全が脅かされるという問題の根本的な解決策とはならない。
【0012】
本発明の課題は、乗員の挟み込みの発生を低減して安全を確保できるシート制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るシート制御装置は、電動シートの前後方向への移動を制御する制御部と、電動シートに隣接する前方または後方の他のシートに、乗員が着座しているか否かを検出する着座検出部とを備えている。制御部は、電動シートが他のシートの方向へ移動する際に、着座検出部が他のシートにおける乗員の着座を検出した場合は、両シート間に乗員が挟み込まれるのを抑制するための処理を含む第1の制御態様で、電動シートを他のシートの方向へ移動させる。また、制御部は、電動シートが他のシートの方向へ移動する際に、着座検出部が他のシートにおける乗員の着座を検出しなかった場合は、前記の処理を含まない第2の制御態様で、電動シートを他のシートの方向へ移動させる。
【0014】
このようにすれば、電動シートに隣接する他のシートに乗員が着座している場合は、第1の制御態様によって、乗員の挟み込みを抑制するための処理が実行されるので、両シート間における乗員の挟み込みの発生を低減することができる。一方、電動シートに隣接する他のシートに乗員が着座していない場合は、上記処理を含まない第2の制御態様により電動シートを移動させても、乗員を挟み込むおそれはない。
【0015】
本発明において、制御部は、電動シートに備わる前後方向に直進が可能な座部の動作を制御する第1制御部を含んでいてもよい。この場合、第1制御部は、第1の制御態様として、座部を所定距離より小さい距離だけ他のシートの方向へ移動させ、第2の制御態様として、座部を前記所定距離だけ他のシートの方向へ移動させる。
【0016】
本発明において、制御部は、電動シートに備わる前後方向に傾斜が可能な背もたれ部の動作を制御する第2制御部を含んでいてもよい。この場合、第2制御部は、第1の制御態様として、背もたれ部を所定角度より小さい角度だけ他のシートの方向へ移動させ、第2の制御態様として、背もたれ部を前記所定角度だけ他のシートの方向へ移動させる。
【0017】
本発明において、他のシートに着座している乗員に対して警報を発するための警報指令出力部が設けられていてもよい。また、制御部は、電動シートに備わる前後方向に直進が可能な座部の動作を制御する第1制御部を含んでいてもよい。この場合、第1制御部は、第1の制御態様として、警報指令出力部により警報を発した状態で、座部を他のシートの方向へ移動させ、第2の制御態様として、警報指令出力部による警報を発することなく、座部を他のシートの方向へ移動させる。
【0018】
また、上記の警報指令出力部を設けた場合、制御部は、電動シートに備わる前後方向に傾斜が可能な背もたれ部の動作を制御する第2制御部を含んでいてもよい。この場合、第2制御部は、第1の制御態様として、警報指令出力部により警報を発した状態で、背もたれ部を他のシートの方向へ移動させ、第2の制御態様として、警報指令出力部による警報を発することなく、背もたれ部を他のシートの方向へ移動させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電動シートに隣接する他のシートに乗員が着座している場合は、電動シートの移動による乗員の挟み込みを抑制するための処理が実行され、他のシートに乗員が着座していない場合は、乗員を挟み込むおそれはないので、挟み込みの発生を低減して乗員の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態の制御手順を示したフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の制御手順を示したフローチャートである。
【
図9】座部の移動による挟み込みを説明する図である。
【
図10】背もたれ部の移動による挟み込みを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。図面を通して、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。以下では、車両に搭載されるシート制御装置を例に挙げる。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態によるシート制御装置2と、これを用いた電動シートシステム100を示している。電動シートシステム100は、たとえば自動四輪車のような車両に搭載されている。電動シートシステム100には、スライド操作部1a、リクライニング操作部1b、シート制御装置2、第1モータ駆動回路3a、第2モータ駆動回路3b、第1モータ電流検出部4a、第2モータ電流検出部4b、第1モータ回転数検出部5a、第2モータ回転数検出部5b、第1モータ6a、第2モータ6b、スライド機構7、リクライニング機構8、着座センサ9、および電動シート30が備わっている。
【0023】
スライド操作部1aには、2つのスイッチ11a、12aが設けられている。第1スイッチ11aは、電動シート30の座部31をα方向の目標位置まで自動でスライド動作させる際に操作する、オート駆動用のスイッチである。第2スイッチ12aは、座部31をα方向の任意の位置まで手動でスライド動作させる際に操作する、マニュアル駆動用のスイッチである。
【0024】
リクライニング操作部1bにも、2つのスイッチ11b、12bが設けられている。第1スイッチ11bは、電動シート30の背もたれ部32をβ方向の目標位置まで自動でリクライニング動作させる際に操作する、オート駆動用のスイッチである。第2スイッチ12bは、背もたれ部32をβ方向の任意の位置まで手動でリクライニング動作させる際に操作する、マニュアル駆動用のスイッチである。
【0025】
シート制御装置2は、第1制御部21a、第2制御部21b、挟み込み検出部22、着座検出部23、シート移動量算出部24、および目標位置記憶部25を備えている。
【0026】
第1制御部21aは、スライド操作部1aの各スイッチ11a、12aの操作状態、挟み込み検出部22の検出結果、着座検出部23の検出結果、およびシート移動量算出部24で算出された座部31の移動量などに基づいて、第1モータ6aの回転を制御するための制御信号を第1モータ駆動回路3aへ出力する。
【0027】
第2制御部21bは、リクライニング操作部1bの各スイッチ11b、12bの操作状態、挟み込み検出部22の検出結果、着座検出部23の検出結果、およびシート移動量算出部24で算出された背もたれ部32の移動量などに基づいて、第2モータ6bの回転を制御するための制御信号を第2モータ駆動回路3bへ出力する。
【0028】
挟み込み検出部22は、電流検出部4a、4bでそれぞれ検出された、第2モータ6a、6bの電流に基づいて、電動シート30による物体の挟み込みを検出する。モータ電流に基づく挟み込み検出の詳細については、よく知られているので説明を省略する。
【0029】
着座検出部23は、着座センサ9の検出信号に基づいて、電動シート30と前後方向に隣接する他のシート(
図2等に示すシート40)に乗員が着座しているか否かを検出する。
【0030】
シート移動量算出部24は、モータ回転数検出部5a、5bでそれぞれ検出された、モータ6a、6bの回転数に基づいて、座部31と背もたれ部32の各移動量を算出する。座部31の移動量は距離であり、背もたれ部32の移動量は角度である。モータ回転数検出部5a、5bは、たとえば、モータ6a、6bの回転と同期してパルス信号を出力する回転センサから構成されている。
【0031】
目標位置記憶部25には、各操作部1a、1bの第1スイッチ11a、11bにより電動シート30がオート駆動される場合の、目標位置が設定されている。各操作部1a、1bの第2スイッチ12a、12bを操作して、座部31や背もたれ部32の位置を好みの位置に調整した後、図示しない設定スイッチを操作することによって、当該位置が目標位置として目標位置記憶部25に記憶される。
【0032】
なお、シート制御装置2はマイクロコンピュータから構成されており、第1制御部21a、第2制御部21b、挟み込み検出部22、着座検出部23、およびシート移動量算出部24のそれぞれの機能は、実際にはソフトウェアによって実現されるが、ここでは便宜上、ハードウェアのブロックとして図示している。
【0033】
第1モータ駆動回路3aは、第1モータ6aを回転させるための駆動電圧を生成し、これを第1モータ6aへ供給する。第1モータ6aは、この駆動電圧により回転し、スライド機構7を介して電動シート30の座部31をα方向にスライド動作させる。スライド機構7は、第1モータ6aと座部31に連結されていて、第1モータ6aの回転運動を直線運動に変換する。
【0034】
第2モータ駆動回路3bは、第2モータ6bを回転させるための駆動電圧を生成し、これを第2モータ6bへ供給する。第2モータ6bは、この駆動電圧により回転し、リクライニング機構8を介して電動シート30の背もたれ部32をβ方向にリクライニング動作させる。リクライニング機構8は、第2モータ6bと背もたれ部32に連結されていて、第2モータ6bの回転をギア等を介して背もたれ部32へ伝達する。着座センサ9は、
図2に示すように後席のシート40に設けられており、乗員60の着座の有無に応じた検出信号を出力する。着座センサ9としては、たとえば圧力センサを用いることができる。
【0035】
次に、上述した第1実施形態における制御の詳細について、
図2~
図4を参照しながら説明する。
【0036】
図2は、電動シート30の座部31が移動する場合の動作を示している。(a)は、スライド動作前の状態であって、乗員50が着座した前席の電動シート30は、乗員60が着座した後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。このときの座部31の位置(ここでは後端位置)をX1とする。X1は、基準位置からの距離として表される。基準位置は、たとえばスライド機構7(
図1)に備わるレールの端部の位置である。後述するX2、X3についても同様である。
【0037】
この状態で、乗員50がスライド操作部1aの第1スイッチ11aを操作すると、座部31がスライド動作により目標位置に向って移動する。このとき、座部31の移動方向が後方R、すなわち後席のシート40の方向であれば、シート40に乗員60が着座しているか否かによって、制御の態様が異なる。
【0038】
詳しくは、
図2(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座している場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力され、この信号に基づいて着座検出部23が乗員60の着座を検出する。すると、第1制御部21aは、第1の制御態様に従って、電動シート30の座部31を後席のシート40の方向(P方向)へ移動させる。第1の制御態様は、シート30、40間に乗員60が挟み込まれるのを抑制するための処理を含む制御態様である。
【0039】
具体的には、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aにより第1モータ6aを回転させて、座部31をX1からX2まで距離Aだけ移動させ、X2の位置で停止させる。ここで距離Aは、後述する
図2(c)における距離Bより小さい距離に設定されている(A<B)。また、X2は、座部31の移動方向であるP方向に向って、目標位置X3よりも手前の位置であって、前席の電動シート30と後席のシート40との間に乗員60が挟み込まれるおそれの少ない位置である。したがって、座部31がX2の位置で停止した状態では、両シート30、40の間に乗員60の脚が挟み込まれる事態は発生しにくい。
【0040】
一方、
図2(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していない場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力されず、着座検出部23は乗員60の着座を検出しない。このため、第1制御部21aは、第2の制御態様に従って、電動シート30の座部31を後席のシート40の方向(P方向)へ移動させる。第2の制御態様は、第1の制御態様のような挟み込み抑制の処理を含まない制御態様である。
【0041】
具体的には、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aにより第1モータ6aを回転させて、座部31をX1から目標位置であるX3まで距離Bだけ移動させ、目標位置X3で停止させる。目標位置X3は、後席のシート40に近い位置であるが、シート40に乗員60が着座していないため、座部31が目標位置X3で停止した状態で、乗員60の挟み込みが発生することはない。
【0042】
このように第1実施形態において、座部31がスライド動作を行う場合、
図2(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座しておれば、座部31の移動距離が短い距離Aに制限されるので、両シート30、40間における乗員60の挟み込みを抑制することができる。一方、
図2(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していなければ、座部31が目標位置X3まで長い距離Bを移動しても、乗員60の挟み込みは生じない。
【0043】
図3は、電動シート30の背もたれ部32が移動する場合の動作を示している。(a)は、リクライニング動作前の状態であって、乗員50が着座した前席の電動シート30は、乗員60が着座した後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。このときの背もたれ部32の位置をY1とする。Y1は、基準面に対する角度として表される。基準面は、たとえば座部31の座面である。後述するY2、Y3についても同様である。
【0044】
この状態で、乗員50がリクライニング操作部1bの第1スイッチ11bを操作すると、背もたれ部32がリクライニング動作により目標位置に向って移動する。このとき、背もたれ部32の移動方向が後方R、すなわち後席のシート40の方向であれば、シート40に乗員60が着座しているか否かによって、制御の態様が異なる。
【0045】
詳しくは、
図3(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座している場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力され、この信号に基づいて着座検出部23が乗員60の着座を検出する。すると、第2制御部21bは、第1の制御態様に従って、電動シート30の背もたれ部32を後席のシート40の方向(Q方向)へ移動させる。この場合も、第1の制御態様は、シート30、40間に乗員60が挟み込まれるのを抑制するための処理を含む制御態様である。
【0046】
具体的には、第2制御部21bは、第2モータ駆動回路3bにより第2モータ6bを回転させて、背もたれ部32をY1からY2まで角度θaだけ移動させ、Y2の位置で停止させる。ここで角度θaは、後述する
図3(c)における角度θbより小さい角度に設定されている(θa<θb)。また、Y2は、背もたれ部32の移動方向であるQ方向に向って、
図3(c)の目標位置Y3よりも手前の位置であって、前席の電動シート30と後席のシート40との間に乗員60が挟み込まれるおそれの少ない位置である。したがって、背もたれ部32がY2の位置で停止した状態では、両シート30、40の間に乗員60の脚が挟み込まれる事態は発生しにくい。
【0047】
一方、
図3(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していない場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力されず、着座検出部23は乗員60の着座を検出しない。このため、第2制御部21bは、第2の制御態様に従って、電動シート30の背もたれ部32を後席のシート40の方向(Q方向)へ移動させる。この場合も、第2の制御態様は、第1の制御態様のような挟み込み抑制の処理を含まない制御態様である。
【0048】
具体的には、第2制御部21bは、第2モータ駆動回路3bにより第2モータ6bを回転させて、背もたれ部32をY1から目標位置であるY3まで角度θbだけ移動させ、目標位置Y3で停止させる。目標位置Y3は、後席のシート40に近い位置であるが、シート40に乗員60が着座していないため、背もたれ部32が目標位置Y3で停止した状態で、乗員60の挟み込みが発生することはない。
【0049】
このように第1実施形態において、背もたれ部32がリクライニング動作を行う場合、
図3(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座しておれば、背もたれ部32の移動角度が小さな角度θaに制限されるので、両シート30、40間における乗員60の挟み込みを抑制することができる。一方、
図3(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していなければ、背もたれ部32が目標位置Y3まで大きな角度θbを移動しても、乗員60の挟み込みは生じない。
【0050】
以上の説明では、第1スイッチ11a、11bの操作により電動シート30をオート駆動して、座部31や背もたれ部32を目標位置X3、Y3まで自動的に移動させる例を挙げた。しかるに、第2スイッチ12a、12bの操作により電動シート30をマニュアル駆動して、座部31や背もたれ部32を任意の位置まで移動させる場合も、同様の原理に基づいて、挟み込みを抑制することができる。
【0051】
具体的には、後席のシート40に乗員60が着座しておれば、第2スイッチ12a、12bが操作中であっても、座部31や背もたれ部32が一定量移動した時点でこれらを停止させる(第1の制御態様)。また、後席のシート40に乗員60が着座していなければ、第2スイッチ12a、12bの操作が解除されるまで、座部31や背もたれ部32を移動させる(第2の制御態様)。
【0052】
図4は、上述した第1実施形態のシート制御装置2による制御手順を示したフローチャートである。
【0053】
ステップS1では、スライド操作部1aまたはリクライニング操作部1bにおいて、座部31または背もたれ部32を後方Rへ移動させるスイッチ操作が行われる。続くステップS2では、第1制御部21aまたは第2制御部21bの制御の下で、第1モータ駆動回路3aまたは第2モータ駆動回路3bが動作して、第1モータ6aまたは第2モータ6bが回転し、前席シート(電動シート30)の座部31または背もたれ部32が、後方(P方向またはQ方向)へ駆動される。
【0054】
次に、ステップS3において、着座検出部23の検出結果に基づき、後席のシート40に乗員60が着座しているか否かを判定する。判定の結果、乗員60が着座していない場合は(ステップS3:NO)、ステップS5へ進んで、後述する停止条件が成立するのを待つ。一方、乗員60が着座している場合は(ステップS3:YES)、ステップS4へ進んで、前席の座部31または背もたれ部32の位置が所定範囲内か否かを判定する。たとえば、
図2(b)において、座部31がX2の位置に至るまで、または、
図3(b)において、背もたれ部32がY2の位置に至るまでは、座部31や背もたれ部32の位置が所定範囲内と判定される。
【0055】
ステップS4で、座部31または背もたれ部32の位置が所定範囲内と判定された場合は(ステップS4:YES)、ステップS5へ進む。ステップS5では、座部31または背もたれ部32を停止させる条件が成立したか否かを判定する。たとえば、オート操作によって座部31または背もたれ部32が目標位置に達した場合や、座部31または背もたれ部32の移動中にマニュアル操作が解除された場合は、停止条件が成立したと判定される。停止条件が成立するまでは(ステップS5:NO)、ステップS2~S5が繰り返される。
【0056】
ステップS5で停止条件が成立すると(ステップS5:YES)、ステップS6へ進む。ステップS6では、第1制御部21aまたは第2制御部21bにより第1モータ6aまたは第2モータ6bを停止させて、前席シートの座部31または背もたれ部32を停止させる。また、ステップS4で、座部31または背もたれ部32の位置が所定範囲内でないと判定された場合も(ステップS4:NO)、ステップS6へ進んで、座部31または背もたれ部32を停止させる。
【0057】
以上のように、第1実施形態においては、座部31や背もたれ部32が後方Rへ移動する際に、後席のシート40に乗員60の着座があれば、座部31や背もたれ部32の移動量が制限されるので、両シート30、40間に乗員60が挟み込まれるのを抑制することができる。一方、後席のシート40に乗員60の着座がなければ、座部31や背もたれ部32の移動量を大きくしても、乗員60の挟み込みが発生するおそれはない。
【0058】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態によるシート制御装置20と、これを用いた電動シートシステム200を示している。
図5においては、第1実施形態の
図1の構成に、警報器10と警報指令出力部26とが追加されている。警報器10は、スピーカまたはブザーなどから構成されており、車室内の所定の場所に設けられている。警報指令出力部26は、シート制御装置20に設けられている。その他の構成に関しては
図1と変わりがないので、
図1と同じ部分についての説明は省略する。
【0059】
以下、第2実施形態における制御の詳細について、
図6~
図8を参照しながら説明する。
【0060】
図6は、電動シート30の座部31が移動する場合の動作を示している。(a)は、スライド動作前の状態であって、乗員50が着座した前席の電動シート30は、乗員60が着座した後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。このときの座部31の位置をX1とする。この状態で、乗員50がスライド操作部1aの第1スイッチ11aを操作すると、座部31がスライド動作により目標位置に向って移動する。このとき、座部31の移動方向が後方R、すなわち後席のシート40の方向であれば、シート40に乗員60が着座しているか否かによって、制御の態様が異なる。
【0061】
詳しくは、
図6(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座している場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力され、この信号に基づいて着座検出部23が乗員60の着座を検出する。すると、第1制御部21aは、第1の制御態様に従って、電動シート30の座部31を後席のシート40の方向(P方向)へ移動させる。第2実施形態においても、第1の制御態様は、シート30、40間に乗員60が挟み込まれるのを抑制するための処理を含む制御態様であるが、その内容は第1実施形態の場合と異なる。
【0062】
具体的には、第1制御部21aは、警報指令出力部26により警報器10へ警報指令を出力し、警報器10から後席のシート40の乗員60に警報音を発した状態で、第1モータ駆動回路3aにより第1モータ6aを回転させて、座部31をX1の位置から目標位置X3まで移動させる。この間は、警報器10から警報音が継続して発せられるので、後席のシート40の乗員60は、姿勢を直したり席を移動するなどして、両シート30、40間に挟み込まれるのを回避することができる。
【0063】
一方、
図6(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していない場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力されず、着座検出部23は乗員60の着座を検出しない。このため、第1制御部21aは、第2の制御態様に従って、電動シート30の座部31を後席のシート40の方向(P方向)へ移動させる。第2実施形態においても、第2の制御態様は、挟み込み抑制の処理を含まない制御態様であるが、その内容は第1実施形態の場合と異なる。
【0064】
具体的には、第1制御部21aは、警報指令出力部26から警報器10へ警報指令を出力せず、警報器10が警報音を発しない状態で、第1モータ駆動回路3aにより第1モータ6aを回転させて、座部31をX1の位置から目標位置X3まで移動させる。目標位置X3は、後席のシート40に近い位置であるが、シート40に乗員60が着座していないため、座部31が目標位置X3で停止した状態で、乗員60の挟み込みが発生することはない。
【0065】
このように第2実施形態において、座部31がスライド動作を行う場合、
図6(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座しておれば、座部31の移動の間、警報器10から警報音が発せられるので、乗員60に対して挟み込み回避のための行動を促すことができる。一方、
図6(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していなければ、座部31が目標位置X3まで移動しても、乗員60の挟み込みは生じない。
【0066】
図7は、電動シート30の背もたれ部32が移動する場合の動作を示している。(a)は、リクライニング動作前の状態であって、乗員50が着座した前席の電動シート30は、乗員60が着座した後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。このときの背もたれ部32の位置をY1とする。この状態で、乗員50がリクライニング操作部1bの第1スイッチ11bを操作すると、背もたれ部32がリクライニング動作により目標位置に向って移動する。このとき、背もたれ部32の移動方向が後方R、すなわち後席のシート40の方向であれば、シート40に乗員60が着座しているか否かによって、制御の態様が異なる。
【0067】
詳しくは、
図7(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座している場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力され、この信号に基づいて着座検出部23が乗員60の着座を検出する。すると、第2制御部21bは、第1の制御態様に従って、電動シート30の背もたれ部32を後席のシート40の方向(Q方向)へ移動させる。この場合も、第1の制御態様は、シート30、40間に乗員60が挟み込まれるのを抑制するための処理を含む制御態様であるが、その内容は第1実施形態の場合と異なる。
【0068】
具体的には、第2制御部21bは、警報指令出力部26により警報器10へ警報指令を出力し、警報器10から後席のシート40の乗員60に警報音を発した状態で、第2モータ駆動回路3bにより第2モータ6bを回転させて、背もたれ部32をY1の位置から目標位置Y3まで移動させる。この間は、警報器10から警報音が継続して発せられるので、後席のシート40の乗員60は、姿勢を直したり席を移動するなどして、両シート30、40間に挟み込まれるのを回避することができる。
【0069】
一方、
図7(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していない場合は、着座センサ9から着座検出信号が出力されず、着座検出部23は乗員60の着座を検出しない。このため、第2制御部21bは、第2の制御態様に従って、電動シート30の背もたれ部32を後席のシート40の方向(Q方向)へ移動させる。第2実施形態においても、第2の制御態様は、挟み込み抑制の処理を含まない制御態様であるが、その内容は第1実施形態の場合と異なる。
【0070】
具体的には、第2制御部21bは、警報指令出力部26から警報器10へ警報指令を出力せず、警報器10が警報音を発しない状態で、第2モータ駆動回路3bにより第2モータ6bを回転させて、背もたれ部32をY1の位置から目標位置Y3まで移動させる。目標位置Y3は、後席のシート40に近い位置であるが、シート40に乗員60が着座していないため、背もたれ部32が目標位置Y3で停止した状態で、乗員60の挟み込みが発生することはない。
【0071】
このように第2実施形態において、背もたれ部32がリクライニング動作を行う場合、
図7(b)のように、後席のシート40に乗員60が着座しておれば、背もたれ部32の移動の間、警報器10から警報音が発せられるので、乗員60に対して挟み込み回避のための行動を促すことができる。一方、
図7(c)のように、後席のシート40に乗員60が着座していなければ、背もたれ部32が目標位置Y3まで移動しても、乗員60の挟み込みは生じない。
【0072】
以上の説明では、第1スイッチ11a、11bの操作により電動シート30をオート駆動して、座部31や背もたれ部32を目標位置X3、Y3まで自動的に移動させる例を挙げた。しかるに、第2スイッチ12a、12bの操作により電動シート30をマニュアル駆動して、座部31や背もたれ部32を任意の位置まで移動させる場合も、同様の原理に基づいて、乗員60に挟み込み回避のための行動を促すことで、挟み込みを抑制することができる。
【0073】
具体的には、後席のシート40に乗員60が着座しておれば、第2スイッチ12a、12bが操作されている間、すなわち座部31や背もたれ部32の移動の間、警報器10からの警報出力を継続する(第1の制御態様)。また、後席のシート40に乗員60が着座していなければ、警報器10から警報を発することなく、第2スイッチ12a、12bの操作が解除されるまで、座部31や背もたれ部32を移動させる(第2の制御態様)。
【0074】
図8は、上述した第2実施形態のシート制御装置20による制御手順を示したフローチャートである。
【0075】
ステップS11では、スライド操作部1aまたはリクライニング操作部1bにおいて、座部31または背もたれ部32を後方Rへ移動させるスイッチ操作が行われる。続くステップS12では、第1制御部21aまたは第2制御部21bの制御の下で、第1モータ駆動回路3aまたは第2モータ駆動回路3bが動作して、第1モータ6aまたは第2モータ6bが回転し、前席シート(電動シート30)の座部31または背もたれ部32が、後方(P方向またはQ方向)へ駆動される。
【0076】
次に、ステップS13において、着座検出部23の検出結果に基づき、後席のシート40に乗員60が着座しているか否かを判定する。判定の結果、乗員60が着座していない場合は(ステップS13:NO)、ステップS14で警報音が出力されないまま、ステップS16へ進んで、後述する停止条件が成立するのを待つ。一方、乗員60が着座している場合は(ステップS13:YES)、ステップS15へ進んで、警報指令出力部26の警報指令に基づき、警報器10が警報音を出力する。
【0077】
この警報音が出力されている状態で、ステップS16において、座部31または背もたれ部32を停止させる条件が成立したか否かを判定する。たとえば、オート操作によって座部31または背もたれ部32が目標位置に達した場合や、座部31または背もたれ部32の移動中にマニュアル操作が解除された場合は、停止条件が成立したと判定される。停止条件が成立するまでは(ステップS16:NO)、ステップS12~S16が繰り返される。この間に、後席のシート40の乗員が席を移動したり降車したりした場合は、ステップS13の判定がNOとなり、ステップS14で警報器10の警報音が停止する。
【0078】
ステップS16で停止条件が成立すると(ステップS16:YES)、ステップS17へ進む。ステップS17では、第1制御部21aまたは第2制御部21bにより第1モータ6aまたは第2モータ6bを停止させて、前席シートの座部31または背もたれ部32を停止させる。そして、ステップS18において、警報指令出力部26が警報指令を出力しなくなって、警報器10からの警報音が停止する。
【0079】
以上のように、第2実施形態においては、座部31や背もたれ部32が後方Rへ移動する際に、後席のシート40に乗員60の着座があれば、警報器10から警報音が出力される。このため、乗員60に対して挟み込み回避のための行動を促すことができ、これによって、両シート30、40間に乗員60が挟み込まれるのを抑制することができる。一方、後席のシート40に乗員60の着座がなければ、警報音を出力しなくても乗員60の挟み込みが発生するおそれはない。
【0080】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0081】
前記の実施形態では、座部31のスライド動作と、背もたれ部32のリクライニング動作とを分けて説明したが、本発明は、座部31のスライド動作と背もたれ部32のリクライニング動作とが並行して行われる場合にも適用することができる。
【0082】
前記の実施形態では、前席のシート30と、これに隣接する後席のシート40との間の挟み込みを例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、前席と中間席と後席の3列のシートを備えた車両において、前席とこれに隣接する中間席との間、あるいは中間席とこれに隣接する後席との間の挟み込みに対しても、本発明を適用することができる。また、前席は運転席に限らず、助手席であってもよい。
【0083】
前記の実施形態では、後席の乗員60の脚の挟み込みを回避する例を挙げたが、後席のシート40に置かれた荷物の挟み込みを回避する場合にも、本発明は有効である。この場合、着座センサ9は前述のとおり圧力センサから構成されており、圧力センサは物の重量を検出できるため、着座センサ9によって後席のシート40に荷物が置かれていることが検出される。
【0084】
前記の実施形態では、着座センサ9に圧力センサを用いた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、乗員60の健康状態を監視するためにシート40に設けられた心拍センサや血圧センサなどを、着座センサ9として用いてもよい。また、他の手段として、車内に設置された監視カメラの撮影画像に基づいて、乗員60の着座有無を検出してもよい。
【0085】
前記の実施形態では、警報器10から出力される警報音により、後席の乗員60の注意を喚起する例を挙げたが、音に代えて(または音に加えて)、たとえばランプの発光により乗員60の注意を喚起してもよい。
【0086】
前記の実施形態では、
図1および
図5において、モータ駆動回路3a、3bがシート制御装置2、20の外部に設けられているが、これらのモータ駆動回路3a、3bをシート制御装置2、20に含めてもよい。また、モータ電流検出部4a、4b、モータ回転数検出部5a、5b、および着座センサ9なども、シート制御装置2、20に含めてもよい。
【0087】
前記の実施形態では、車両に搭載されるシート制御装置を例に挙げたが、本発明は、車両以外の分野で用いられるシート制御装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1a スライド操作部
1b リクライニング操作部
2、20 シート制御装置
3a 第1モータ駆動回路
3b 第2モータ駆動回路
6a 第1モータ
6b 第2モータ
7 スライド機構
8 リクライニング機構
9 着座センサ
10 警報器
21a 第1制御部
21b 第2制御部
23 着座検出部
26 警報指令出力部
30 電動シート
31 座部
32 背もたれ部
40 後席のシート(他のシート)
50、60 乗員
A 所定距離より小さい距離
B 所定距離
θa 所定角度より小さい角度
θb 所定角度