IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙クレシア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-股部フィットサポーター 図1
  • 特開-股部フィットサポーター 図2
  • 特開-股部フィットサポーター 図3
  • 特開-股部フィットサポーター 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109275
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】股部フィットサポーター
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/84 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
A61F13/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010698
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱野 椋子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA11
3B200BB03
3B200BB06
3B200BB11
3B200CA08
3B200DA06
3B200DE14
3B200DF20
(57)【要約】
【課題】紙おむつ製品に良好な着用感を付与し、着用者の股間部と紙おむつ製品の股部とのフィット性を向上させて隙間を失くして、体液の横漏れ、脇漏れを防止できる股下フィットサポーターの提供。
【解決手段】パンツ型紙おむつ50を着用したときに、パンツ型紙おむつ50の上から装着する股下フィットサポーター1であって、パンツ型紙おむつ50の着用者の主に下腹部に当接する前側部Aと、着用者の主に股間部に当接する股部Bと、着用者の主に臀部に当接する後側部Cと、をこの順に長手方向に連接したものであり、股部Bは幅方向両側の縁辺が幅方向内側に湾曲状に凹んでおり、前側部A及び後側部Cの裏面に配置された1又は複数のフックテープ2と、股部Bの幅方向両側の縁辺に沿って、裏面に湾曲状に配置された一対の伸縮部材3と、を有する、股下フィットサポーター1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙おむつ製品を着用したときに、前記紙おむつ製品の上から装着する股下フィットサポーターであって、
前記紙おむつ製品の着用者の主に下腹部に当接する前側部と、前記着用者の主に股間部に当接する股部と、前記着用者の主に臀部に当接する後側部と、をこの順に長手方向に連接したものであり、
前記股部は幅方向両側の縁辺が幅方向内側に湾曲状に凹んでおり、
前記前側部及び前記後側部の裏面に配置された1又は複数のフックテープと、
前記股部の幅方向両側の縁辺に沿って、裏面に湾曲状に配置された一対の伸縮部材と、を有する、股下フィットサポーター。
【請求項2】
前記前側部と前記後側部とは長手方向に対称な平面形状である、請求項1に記載の股下フィットサポーター。
【請求項3】
長さは寸法が40cm以上60cm以下、前記前側部及び前記後側部の各幅寸法が20cm以上30cm以下、及び前記股部の幅寸法が10cm以上15cm以下である、請求項1又は請求項2に記載の股下フィットサポーター。
【請求項4】
織布、編布、不織布及びこれらの積層体から構成される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の股下フィットサポーター。
【請求項5】
前記フックテープは、前記前側部及び前記後側部にそれぞれ2枚ずつ配置され、前記フックテープ1枚の面積は16cm以上である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の股下フィットサポーター。
【請求項6】
前記伸縮部材の張力は、前記股下フィットサポーター本体の長さ寸法が自然状態で30%以上縮む張力である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の股下フィットサポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股部フィットサポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型紙おむつ等の紙おむつ製品は、乳幼児、成人等の代替下着として広く利用されている。成人用の、パンツ型紙おむつを選ぶ際は、乳幼児とは異なり、体形が人それぞれで大きく異なるため、自身に最適なサイズのパンツ型紙おむつを見つけるのは困難である。サイズが合わない場合でも、経済的な観点から、購入したパンツ型紙おむつをそのまま使用する人が多い。しかしながら、サイズの合わないパンツ型紙おむつを着用すると、フィット性やサイズ不適合による漏れが発生するだけでなく、着用感も低下するという課題がある。このような課題に対し、従来から種々の提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、吸収体を有する吸収性本体と、吸収性本体が取り付けられて、この吸収性本体とともに着用者の脚周りに接触する脚周り部及び胴周りに接触する胴周り部を形成する外装体と、胴周り部外面に一端部が固定され他端部が止着可能とされた止着テープと、を有し、止着テープの他端部の止着位置を変えることで胴周り部のサイズを調節することができ、他端部の止着可能範囲が胴周り部の非肌側表面の腹側であるパンツ型紙おむつが開示されている。特許文献1によれば、ウエストサイズを容易に調節することができると記載されている(段落0007)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-80026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のパンツ型紙おむつは、胴周り部の肌側表面に一端部が固定され他端部が止着可能である止着テープを備え、他端部の止着位置を変えることによって胴周り部のサイズを調節できるように構成したものである。しかしながら、止着テープの一端部がパンツ型紙おむつに固定され、ウエストサイズの調節域が限定されることから、パンツ型おむつを構成する素材の偏りが起こってフィット感、着用感が低下し、着用者の身体とパ紙おむつとの間に隙間を生じ、体液の脇漏れが生じ易い。
【0006】
また、パンツ型紙おむつの胴周り部のサイズを調節しても、着用者の股間部とパンツ型紙おむつの股部とのフィット性が十分向上するとは言えない。このフィット性が十分ではないと、着用者の股間部とパンツ型紙おむつの股部との間に隙間が生じ易く、このような隙間は体液の横漏れに直結する。特許文献1には、着用者の股間部とパンツ型紙おむつの股部とのフィット性を向上させる手段について、記載がない。
【0007】
本発明の目的は、紙おむつ製品に良好な着用感を付与し、着用者の股間部と紙おむつ製品の股部とのフィット性を向上させて隙間を失くして、体液の横漏れ、脇漏れを防止できる股下フィットサポーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、所定の構造を採用することで、着用者の股間部と紙おむつ製品とのフィット性や着用感を向上させ、紙おむつ製品のサイズを着用者の体型に合わせて調整することができ、体液の横漏れ、脇漏れの防止にも有効な、股下フィットサポーターを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記の股下フィットサポーターに係る。
【0009】
(1)紙おむつ製品を着用したときに、前記紙おむつ製品の上から装着する股下フィットサポーターであって、
前記紙おむつ製品の着用者の主に下腹部に当接する前側部と、前記着用者の主に股間部に当接する股部と、前記着用者の主に臀部に当接する後側部と、をこの順に長手方向に連接したものであり、
前記股部は幅方向両側の縁辺が幅方向内側に湾曲状に凹んでおり、
前記前側部及び前記後側部の裏面に配置された1又は複数のフックテープと、
前記股部の幅方向両側の縁辺に沿って、裏面に湾曲状に配置された一対の伸縮部材と、を有する、股下フィットサポーター。
(2)前記前側部と前記後側部とは長手方向に対称な平面形状である、上記(1)の股下フィットサポーター。
(3)長さは寸法が40cm以上60cm以下、前記前側部及び前記後側部の各幅寸法が20cm以上30cm以下、及び前記股部の幅寸法が10cm以上15cm以下である、上記(1)又は(2)の股下フィットサポーター。
(4)織布、編布、不織布及びこれらの積層体から構成される、上記(1)乃至(3)のいずれかの股下フィットサポーター。
(5)前記フックテープは、前記前側部及び前記後側部にそれぞれ2枚ずつ配置され、前記フックテープ1枚の面積は16cm以上である、上記(1)乃至(4)のいずれかの股下フィットサポーター。
(6)前記伸縮部材の張力は、前記股下フィットサポーター本体の長さ寸法が自然状態で30%以上縮む張力である、上記(1)乃至(5)のいずれかの股下フィットサポーター。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紙おむつ製品に良好な着用感を付与し、着用者の股間部と紙おむつ製品の股部とのフィット性を向上させて隙間を失くして、体液の横漏れ、脇漏れを防止できる股下フィットサポーターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る股下フィットサポーターの紙おむつ製品への装着の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る股下フィットサポーターの構成を模式的に示す平面図である。(a)は表側表面を示し、(b)は裏側表面を示す。
図3】紙おむつ製品の模式的展開図である。
図4図3に示すX-X切断線による模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、パンツ型紙おむつ50の着用とは、体液吸収の前後を問わず、着用者の身体に装着した状態をいう。パンツ型紙おむつ50の、長手方向とは、パンツ型紙おむつ50を着用したときに着用者の股間部を介して前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して略直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。パンツ型紙おむつ50及びその各構成部材の肌側表面とは着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であり、非肌側表面とは着用者の衣類に当接する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0013】
<股下フィットサポーター>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の股下フィットサポーター1について説明する。図1は、股下フィットサポーター1のパンツ型紙おむつ50への装着例を示す。図2は、股下フィットサポーター1を示す。図3は、パンツ型紙おむつ50を示す。図4はパンツ型紙おむつ50に備わる吸収体51を示す。各図は、股下フィットサポーター1並びにパンツ型紙おむつ50及び各構成部材の形状や、寸法の大小関係等を規定するものではない。本実施形態の股下フィットサポーター1は、主に、成人用及び高齢者用のパンツ型紙おむつ、失禁用使い捨ておむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品着用者の体型へのフィット性の調整に好適に使用できる。
【0014】
股下フィットサポーター1は、図1に示すように、例えば、パンツ型紙おむつ50の非肌側表面において、前側部Aをパンツ型紙50の着用者の主に下腹部に当接させ、股部Bを着用者の主に股間部に当接させ、後側部Cを着用者の主に臀部に当接させ、前側部A及び後側部Bの各裏面に配置されたフックテープ2によりパンツ型紙おむつの非肌側表面に固定し、股部Bの裏面に配置された一対の伸縮部材により着用者の太腿部及び股間部にフィット性良く密着するように装着される。
【0015】
本実施形態の股下フィットサポーター1によれば、紙おむつ製品の着用者の体型に合わせて、紙おむつ製品の股部及び足回りをフィットさせることができ、更に紙おむつ製品の着用者の体型やその時の体調に合わせてサイズを調節することができ、また、足回りがフィットしていないことに起因する体液の横漏れ、脇漏れ等を防止することができる。
【0016】
(構造)
本実施形態の股下フィットサポーター1は、パンツ型紙おむつ50の着用者の体型に合わせて、パンツ型紙おむつ50、特にその股部を着用者にフィットさせる帯状ベルトであり、図2に示すように、パンツ型紙おむつ50の着用者の主に下腹部に当接する前側部Aと、着用者の主に股間部に当接する股部Bと、着用者の主に臀部に当接する後側部Cと、をこの順に長手方向に連接したものであり、股部Bは幅方向両側の縁辺が湾曲状に幅方向内側に凹んでおり、前側部A及び後側部Cの裏面に配置された1又は複数のフックテープ2と、股部Bの幅方向両側の縁辺に沿って、裏面に湾曲状に配置された一対の伸縮部材3と、を有する。
【0017】
好ましい実施形態では、前側部Aと後側部Bとは長手方向に対称な平面形状に構成される。前側部A及び後側部Bを同形状とすることで、前後フリーとなり、着用者への利便性を向上させることができる。また、フックテープ2により、股下フィットサポーター1をパンツ型紙おむつ50の非肌側表面に固着させることができる。一対の伸縮部材3は、着用者の太腿部及び股間部とのフィット性を向上させ、隙間を失くして体液の横漏れ、脇漏れを防止できる。股部Bは、前側部A及び後側部Cとの境界に向けて幅が徐々に又は連続的に広がるように構成することで、パンツ型紙おむつ50と着用者の太腿部及び股間部との密着性が一層向上する。
【0018】
(サイズ)
股下フィットサポーター1のサイズは、着用者の身長や体型等に応じて、例えば、3Sサイズ、SSサイズ、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ、LLサイズ、3Lサイズ等の数種類に区分してもよいが、例えば、全体として、図2(a)に示すように、後側部A及び後側部Bの幅方向寸法(最大幅寸法)aは例えば20cm以上30cm以下の範囲であり、股部Bの幅方向寸法(最小幅寸法)bは例えば10cm以上15cm以下の範囲であり、股部Bの長手方向寸法cは例えば30cm以上70cm以下の範囲である。このような数値範囲を有することで、股下フィットサポーター1を、着用者の身体サイズに関係なく、多くの着用者に良好に適合させやすくなるとともに、特に股部Bと着用者の大腿部や股間部とのフィット性が向上する。
【0019】
(材質)
股下フィットサポーター1としては、例えば、織布、編布、不織布、これらの同種又は異種の積層体等の布材料を使用できる。股下フィットサポーター1は、洗濯可能に構成される。好ましい実施形態では、股部B等のサポート部分を構成する材料として布材料を用いる場合、布材料を構成する繊維としてはポリエステル繊維、ナイロン繊維、熱可塑性ポリウレタン繊維等の合成繊維、綿、絹等の天然繊維を使用する。また、股部Bを伸縮性のある布材料を用いて構成してもよい。股下フィットサポーター1は、前側部A及び後側部Cを同じ布材料で構成し、股部Bを前側部A及び後側部Cとは異なる布材料と構成してもよく、前側部A、股部B及び後側部Cを同じ布材料で一体的に構成してもよい。
【0020】
(フックテープ)
フックテープ2は、股下フィットサポーター1をパンツ型紙おむつ50の上から装着したときに、股下フィットサポーター1の前側部A及び後側部Cの各裏側表面(肌側表面)に位置するように配置され、少なくともその肌側表面がパンツ型紙おむつ50の非肌側表面に係合可能である。フックテープ2の他に、例えば、股下フィットサポーター1の前側部A及び後側部Cの裏側表面(肌側表面)とパンツ型紙おむつ50の非肌側表面の両方に、面ファスナー等のメカニカルファスナーを配設してもよい。フックテープ2の個数は、フックテープ2の寸法や平面視形状、前側部A及び後側部Cの寸法等に応じて適宜選択できるが、例えば、図2(b)に示すように、方形で4角が丸まった形状のフックテープ2を幅方向に2つずつ並べて配置するのが好ましい。フックテープ2の1枚の面積は、パンツ型紙おむつ50の非肌側表面への固着性等の観点から、例えば16cm以上の範囲である。フックテープ2の平面視形状としては、例えば、正方形、長方形、六角形、八角形、円形等が挙げられる。
【0021】
(伸縮部材)
伸縮部材3は、股下フィットサポーター1をパンツ型紙おむつ50の上から装着したときに、股下フィットサポーター1の股部Bの裏側表面(肌側表面)において、股部Bの湾曲状の幅側縁辺に沿って位置するように配置され、着用者の股間部及び大腿部上部とパンツ型紙おむつ50との密着性を向上させ、体液の横漏れ、脇漏れ等を防止する。伸縮部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。伸縮部材の中でも、その張力は、股下フィットサポーター1の長さが自然状態で30%以上縮む程度ものが好ましい
【0022】
<パンツ型紙おむつ>
以下、本実施形態の股下フィットサポーター1を装着可能なパンツ型紙おむつ50について、更に具体的に説明する。パンツ型紙おむつ50は、図1及び図3に示すように、着用者の腹側に主に当接する腹側部13と、着用者の背側に主に当接する背側部15と、腹側部13と背側部15との間に介在し、着用者の股間部を長手方向に覆う略帯状の形状を有する股部14とを含み、パンツ型紙おむつ50の外形形状を構成する外装体60と、股部14の肌側表面に支持されて、体液を吸収及び保持する吸収体51と、を備えている。股下フィットサポーター1の前側部A及び後側部Cの裏側表面に設けられた各フックテープ2は、図1に示すように、外装体60の腹側部13及び背側部15の各非肌側表面に係止して固定され、股下フィットサポーター1の股部Bは、パンツ型紙おむつ50の股部14を覆い、伸縮部材3によりパンツ型紙おむつ50の股部14と着用者の股間部及び大腿部上部との隙間をなくすように装着される。
【0023】
パンツ型紙おむつ50の図3に示す展開時の長手方向寸法は例えば600mm以上1000mm以下の範囲であり、幅方向寸法は例えば450mm以上900mm以下の範囲である。この展開時寸法を有するパンツ型紙おむつ50は、必要に応じて所定領域に弾性伸縮部材を配設した後、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの大人用のパンツ型紙おむつ50とすることができる。
【0024】
本実施形態のパンツ型紙おむつ50の外装体60、及び吸収体51は、例えば、以下の構成を有する。
【0025】
<外装体>
図1及び図3に示す外装体60は、着用者の腹部に主に当接する腹側部13と、着用者の背部に主に当接する背側部15と、腹側部13と背側部15との間に介在し、着用者の股間部に主に当接する股下部14と、に区分される。股下部14はその肌側表面で吸収体51のバックシート30側の大部分又は全部を支持する。
【0026】
外装体60は、図1及び図3に示すように、股下部14の長手方向中央で幅方向に延びる仮想中心線に対して略対称な腹側部13と背側部15とを有し、吸収体51も仮想中心線に対して略対称に配置されている。そして、吸収体51が内側となるように仮想中心線で二つ折りにされ、腹側部13及び背側部15の幅方向両側縁が一対のサイドシール部65で接合されている。サイドシール部65は、外装体60の所定領域の不織布等をヒートシール溶着、超音波溶着等の溶着方法で接合したものであり、これにより、胴周り開口部11と、左右一対の脚周り開口部12とを形成し、パンツ型紙おむつ50を全体として着脱可能なパンツ状の外形に構成する。
【0027】
外装体60は、1枚又は2枚以上の不織布により構成されている。本実施形態の外装体60は、図1及び図3のように、外装不織布シート70と、外装不織布シート70の肌側に配置される内装不織布シート69と、必要に応じて配置される補助不織布シート68とを含む。補助不織布シート68は、例えば、吸収体51の端部を覆い、吸収体51の肌へのあたりを和らげる。腹側部13の長手方向端部の幅方向一縁では、長手方向に沿って、外装不織布シート70と内装不織布シート69とを2層に積層した領域と、補助不織布シート68を含んで3層に積層した領域と、が存在してもよい。このような不織布積層構造は、図示しないが、腹側部13の幅方向他縁、及び背側部15の幅方向両縁でも同様である。外装体60の不織布積層構造は本実施形態に限定されず、従来から公知の種々の実施形態を特に限定なく採用できる。
【0028】
外装不織布シート70、内装不織布シート69及び補助不織布シート68には、それぞれ、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を使用できる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、例えば、10g/m以上40g/m以下の範囲である。
【0029】
外装体60の所定の領域には、図1及び図3に示すように必要に応じて、1又は複数の弾性伸縮部材61、62、63、64等を配設してもよい。例えば、腹側胴周り領域3Aと背側胴周り領域15Aには幅方向に沿って複数の胴周り領域弾性伸縮部材63を配設し、腹側胴周り領域13Bと背側胴周り領域15Bには幅方向に沿って複数の胴周り領域弾性伸縮部材61を配設し、脚周り開口部12の縁辺に沿って脚周り弾性伸縮部材64を配設している。弾性伸縮部材の配設により、外装体60の表面に複数のギャザーが形成される。弾性伸縮部材61、62、63、64としては公知のものをいずれも使用でき、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
<吸収体>
吸収体51は、図3及び図4に示すように、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置される吸収コア20と、漏れ防止を目的に設けられた立体ギャザー40と、を含む。なお、本実施形態の吸収体51は、トップシート10、吸収コア20、及びバックシート30を基本構成単位とするものであり、必要に応じて、立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収コア20との間への液透過性のトランスファシート(不図示)や液透過性のセカンドシート(不図示)の配設等の、公知の様々な改変を施すことができる。以下、吸収コア20の構成部材について、トップシート10、吸収コア20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0031】
(トップシート)
トップシート10は、吸収コア20に向けて体液を速やかに通過させて吸収コア20の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。
【0032】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m)以上40g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収コア20に誘導するために必要とされる、吸収コア20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0033】
(吸収コア)
吸収コア20は、例えば、トップシート10とバックシート30との間に配置され、トップシート10を透過してきた体液を吸収及び保持する。吸収コア20は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収コア20の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収コア20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上800mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅方向寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅方向寸法が90mm以上250mm以下の範囲である。吸収コア20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収コア20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
吸収コア20には、例えば、吸収基材として、吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)とを含有するものがある。
【0034】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。吸収コア20に吸収性繊維としてフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m以上800g/m以下の範囲又は325g/m以上615g/m以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。
【0035】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
高吸収性ポリマーは、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収コア20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0037】
吸収コア20中のSAPの坪量は、例えば、60g/m以上450g/m以下の範囲、又は245g/m以上445g/m以下の範囲である。SAPの坪量を前述の数値範囲内とすることで、吸収コア20でのゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収コア20に多量の体液を吸収させることができる。また、吸収コア20において、吸収コア20全体の重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、(高吸収性ポリマーの重量/吸収コア20全体の重量)×100(%)は、例えば、15重量%以上の範囲、又は15重量%以上70重量%以下の範囲である。
【0038】
吸収コア20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。また、別形態の吸収コア20として、複数枚の親水性不織布と、親水性不織布間に固着された高吸収性ポリマーと、を含む吸収性シートを用いることもできる。
【0039】
(キャリアシート)
本実施形態では、吸収コア20全体をキャリアシート(不図示)で包んでもよい。キャリアシートとしては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。また、キャリアシートの厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m以上40g/m以下の範囲である。
【0040】
(バックシート)
バックシート30は、吸収コア20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた通気性又は非通気性の基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0041】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m以上60g/m以下の範囲、又は15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく実施できる。
【0042】
(立体ギャザー)
立体ギャザー40は、例えば、パンツ型紙おむつ50の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために、吸収体51の幅方向両端付近で吸収体51の長さ方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0043】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長さ方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収コア20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0044】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの目付は、例えば、13g/m以上20g/m以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0045】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1 股下フィットサポーター
2 フックテープ
3 伸縮部材
10 トップシート
11 胴周り開口部
12 脚周り開口部
13 腹側部
14 股下部
15 背側部
20 吸収コア
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 弾性伸縮部材
40b シート部材
50 吸収性物品
51 吸収体
60 外装体
61、62、63、64 弾性伸縮部材
65 サイドシール部
68 補助不織布シート
69 内装不織布シート
70 外装不織布シート
図1
図2
図3
図4