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  • 特開-正極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109298
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】正極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20230801BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20230801BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230801BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230801BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230801BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010733
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】長尾 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】上武 央季
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH01
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA17
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA10
5H050EA08
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】電池の低抵抗化および高耐久化が可能な正極を提供することを目的とする。
【解決手段】正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する正極であって、
前記接着剤層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む、正極。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する正極であって、
前記接着剤層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む、正極。
【請求項2】
前記正極層は、正極活物質を含み、
前記正極活物質は、LiNi1-xで表されるリチウム遷移金属複合酸化物であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物においてxは0.5≦x<1を満たし、MはCo、Mn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である、請求項1に記載の正極。
【請求項3】
前記正極層は、前記導電材として前記球状炭素と前記繊維状炭素を含み、
前記正極層の総体積を100体積%としたとき、前記正極層中の前記導電材の体積割合は、3~6体積%である、請求項2に記載の正極。
【請求項4】
前記正極層中の前記球状炭素と前記繊維状炭素の総質量を100質量%としたとき、前記球状炭素の質量割合は、7~12質量%である、請求項2又は3に記載の正極。
【請求項5】
前記球状炭素は、アセチレンブラックである、請求項1~4のいずれか一項に記載の正極。
【請求項6】
前記接着剤層の総体積を100体積%としたとき、前記接着剤層中の前記アクリル系バインダーの体積割合は、50~80体積%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の正極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、電極の集電箔として、基材粒子と、基材粒子の表面上に配置されており、かつ銀又は銅により形成された第1の導電層と、第1の導電層の外表面上に配置されており、かつニッケルにより形成された第2の導電層とを含む導電粒子と、バインダーと、を含む接着剤層を有する集電箔を用いる旨が開示されている。
【0004】
特許文献2には、100nm未満の直径を有する微細な繊維状炭素と100nm以上の直径を有する繊維状炭素を組み合わせた導電材を含む電極が開示されている。
【0005】
特許文献3には、炭素繊維と粒子状炭素を組み合わせた導電材を含む正極合剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-021635号公報
【特許文献2】特開2010-238575号公報
【特許文献3】特開2016-058277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池の低抵抗化および高耐久化が求められる。従来のカーボンコート箔を正極集電体として使用した際は、正極層への導電材の過剰添加により正極層の正極集電体(正極集電箔)との接触抵抗(箔接触抵抗)は低下するが、電池の耐久性が低いという課題がある。正極層内の導電材の割合を増やすと、箔接触抵抗は低減可能だが、正極層内の複数のイオン伝導経路の内の一部の経路を遮断してしまうので、電池の内部抵抗が逆に増大してしまう。また固体電解質と導電材の副反応により電池の耐久性の低下を促進してしまう。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電池の低抵抗化および高耐久化が可能な正極を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の正極は、正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する正極であって、
前記接着剤層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む。
【0010】
本開示の正極においては、前記正極層は、正極活物質を含み、
前記正極活物質は、LiNi1-xで表されるリチウム遷移金属複合酸化物であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物においてxは0.5≦x<1を満たし、MはCo、Mn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であってもよい。
【0011】
本開示の正極においては、前記正極層は、前記導電材として前記球状炭素と前記繊維状炭素を含み、
前記正極層の総体積を100体積%としたとき、前記正極層中の前記導電材の体積割合は、3~6体積%であってもよい。
【0012】
本開示の正極においては、前記正極層中の前記球状炭素と前記繊維状炭素の総質量を100質量%としたとき、前記球状炭素の質量割合は、7~12質量%であってもよい。
【0013】
本開示の正極においては、前記球状炭素は、アセチレンブラックであってもよい。
【0014】
本開示の正極においては、前記接着剤層の総体積を100体積%としたとき、前記接着剤層中の前記アクリル系バインダーの体積割合は、50~80体積%であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示は、電池の低抵抗化および高耐久化が可能な正極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本開示の正極の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない正極の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、数値範囲における上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0018】
本開示の正極は、正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する正極であって、
前記接着剤層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む。
【0019】
正極層と正極集電体との接着のためにアクリル系バインダーと炭素系導電材を含む接着剤層を用いることで、正極層の正極集電体(正極集電箔)との接触抵抗(箔接触抵抗)を大幅に低減することができ、正極層内に導電材を過剰に添加する必要がなくなり、正極層内の導電材量を低減することが可能になり、電池の低抵抗化及び耐久性能の向上を実現することができる。
【0020】
図1は、本開示の正極の一例を示す断面模式図である。
図1に示すように本開示の正極100は、正極集電体11と正極層12とを有し、正極集電体11と正極層12は、接着剤層13により接着されている。
【0021】
[正極]
本開示の正極は、正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する。
正極集電体と正極層とは、接着剤層により接着されていてもよい。
【0022】
[接着剤層]
接着剤層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む。導電材として球状炭素と繊維状炭素の複合化物を用いてもよい。
球状炭素としては、カーボンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック及びケチェンブラック等が挙げられる。
球状炭素は、アセチレンブラックであってもよい。球状炭素がアセチレンブラックを含んでいる場合には、正極における電子伝導度をより向上させることができる。
繊維状炭素材料としては、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーなどの繊維状炭素が挙げられる。
接着剤層の総体積を100体積%としたとき、接着剤層中の導電材の体積割合は、20~50体積%であってもよい。
【0023】
接着剤は、アクリル系バインダーであれば特に限定されない。アクリル系バインダーとしては、例えば、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、及び、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)等が挙げられる。アクリル系バインダーは温度に対して弾性率の変化が大きいため、正極集電体と正極層とを接着させやすい。
接着剤層の総体積を100体積%としたとき、接着剤層中のアクリル系バインダーの体積割合は、50~80体積%であってもよい。
接着剤層の厚みは特に限定されないが、0.5~5μmであってもよい。
【0024】
[正極層]
正極層は、正極活物質を含み、任意成分として、導電材、固体電解質、及びバインダー等が含まれていてもよい。
【0025】
正極活物質の種類について特に制限はなく、電池の活物質として使用可能な材料をいずれも採用可能である。正極活物質は、例えば、リチウム合金、LiCoO、LiNi1-x(xは0.5≦x<1を満たし、MはCo、Mn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である)、LiMnO、異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム、リン酸金属リチウム、LiCoN、LiSiO、LiSiO、遷移金属酸化物、TiS、Si、SiO、Si合金、及び、リチウム貯蔵性金属間化合物等を挙げることができる。
異種元素置換Li-Mnスピネルは、例えばLiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Al0.5、LiMn1.5Mg0.5、LiMn1.5Co0.5、LiMn1.5Fe0.5、及びLiMn1.5Zn0.5等である。
チタン酸リチウムは、例えばLiTi12等である。
リン酸金属リチウムは、例えばLiFePO、LiMnPO、LiCoPO、及びLiNiPO等である。
遷移金属酸化物は、例えばV、及びMoO等である。リチウム貯蔵性金属間化合物は、例えばMgSn、MgGe、MgSb、及びCuSb等である。
リチウム合金としては、Li-Au、Li-Mg、Li-Sn、Li-Si、Li-Al、Li-B、Li-C、Li-Ca、Li-Ga、Li-Ge、Li-As、Li-Se、Li-Ru、Li-Rh、Li-Pd、Li-Ag、Li-Cd、Li-In、Li-Sb、Li-Ir、Li-Pt、Li-Hg、Li-Pb、Li-Bi、Li-Zn、Li-Tl、Li-Te、及びLi-At等が挙げられる。Si合金としては、Li等の金属との合金等が挙げられ、その他、Sn、Ge、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属との合金であってもよい。
正極活物質は、中でもLiNi1-xで表されるリチウム遷移金属複合酸化物であってもよい。リチウム遷移金属複合酸化物として、リチウムニッケルコバルトアルミネート(LiNi1-x-yCoAl、x=0.05~0.2、y=0.05~0.2、NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiCoMn1-x-y、x=0.5~0.8、y=0.1~0.2、NCM)等が挙げられ、NCMとしては、NCM-523、NCM-622、NCM-811等が挙げられる。
正極活物質の形状は特に限定されるものではないが、粒子状であってもよい。正極活物質が粒子状である場合、正極活物質は一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。
正極活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有するコート層が形成されていても良い。正極活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。
Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO、LiTi12、及び、LiPO等が挙げられる。コート層の厚さは、例えば、0.1nm以上であり、1nm以上であっても良い。一方、コート層の厚さは、例えば、100nm以下であり、20nm以下であっても良い。コート層は、例えば、正極活物質の表面の70%以上を被覆していてもよく、90%以上を被覆していてもよい。
【0026】
導電材としては、正極層の電子伝導性向上の観点から、接着剤層に含まれる導電材として例示した球状炭素及び繊維状炭素等を用いてもよく、これらの混合物及び複合化物等を用いてもよい。導電材としては、その他公知のものを用いることができ、金属粒子等を用いてもよい。金属粒子としては、Ni、Cu、Fe、及びSUS等の粒子が挙げられる。
正極層の総体積を100体積%としたとき、正極層中の導電材の体積割合は、3体積%以上6体積%以下であってもよく、3.51体積%以上であってもよく、5.59体積%以下であってもよく、4.72体積%以下であってもよい。
正極層中の球状炭素と繊維状炭素の総質量を100質量%としたとき、球状炭素の質量割合は、7質量%以上12質量%以下であってもよく、8.3質量%以上であってもよく、11.4質量%以下であってもよい。
正極層中の正極活物質の総質量を100質量%としたとき、正極活物質に対する球状炭素の質量割合は、0.3質量%であってもよい。
正極層中の正極活物質の総質量を100質量%としたとき、正極活物質に対する繊維状炭素の質量割合は、2.34質量%以上4質量%以下であってもよく、3.30質量%以下であってもよい。
【0027】
固体電解質としては、固体電解質層において例示するものと同様のものを例示することができる。
正極層における固体電解質の含有量は、特に限定されないが、正極層の総質量を100質量%としたとき、例えば1質量%~80質量%の範囲内であってもよい。
【0028】
結着剤(バインダー)としては、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、及び、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。
結着剤(バインダー)としては、中でもスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、及び、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)等であってもよい。
正極層におけるバインダーの含有量は特に限定されるものではない。
【0029】
正極層の厚みについては特に限定されるものではないが、例えば、10~100μmであってもよい。
【0030】
正極層は、従来公知の方法で形成することができる。
例えば、正極活物質、及び、必要に応じ他の成分を溶媒中に投入し、撹拌することにより、正極層形成用ペーストを作製し、当該正極層形成用ペーストを支持体の一面上に塗布して乾燥させることにより、正極層が得られる。
溶媒は、例えば酢酸ブチル、酪酸ブチル、メシチレン、テトラリン、ヘプタン、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
支持体の一面上に正極層形成用ペーストを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びスクリーン印刷法等が挙げられる。
支持体としては、自己支持性を有するものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えばCu及びAlなどの金属箔等を用いることができる。
【0031】
また、正極層の形成方法の別の方法として、正極活物質及び必要に応じ他の成分を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を形成してもよい。正極合剤の粉末を加圧成形する場合には、通常、面圧としては1MPa以上2000MPa以下、線圧としては1ton/cm以上100ton/cm以下のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、及びロールプレス等を用いて圧力を付加する方法等が挙げられる。
【0032】
[正極集電体]
正極集電体としては、電池の集電体として使用可能な公知の金属を用いることができる。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、及びInからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。正極集電体としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等が挙げられる。
正極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、及びメッシュ状等、種々の形態とすることができる。正極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm~50μmの範囲内であってもよく、5μm~20μmの範囲内であってもよい。
【0033】
[電池]
本開示の正極は、種々の電池の正極として用いることができる。
本開示の電池は、正極、電解質層、負極を備えていてもよい。
【0034】
[負極]
負極は、負極層、及び、負極集電体を含む。
【0035】
[負極層]
負極層は、少なくとも負極活物質を含有し、必要に応じ、固体電解質、導電材、及び、結着剤等を含有する。
負極活物質としては、グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン、リチウム単体、リチウム合金、Si単体、Si合金、及びLiTi12等が挙げられる。リチウム合金及びSi合金としては、正極活物質において例示したものと同様のものを用いることができる。
負極活物質の形状は特に限定されず、粒子状、及び板状等が挙げられる。負極活物質が粒子状である場合、負極活物質は一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。
負極層に用いられる導電材、及び、結着剤は、正極層において例示したものと同様のものを用いることができる。負極層に用いられる固体電解質は、固体電解質層において例示するものと同様のものを例示することができる。
負極層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~100μmであってもよい。
負極層における負極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば、20質量%~90質量%であってもよい。
負極層を形成する方法としては、負極活物質を含む負極層形成用ペーストを支持体上に塗布して乾燥する方法等が挙げられる。支持体は、正極層において例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0036】
[負極集電体]
負極集電体の材料は、Liと合金化しない材料であってもよく、例えばSUS、銅、及び、ニッケル等を挙げることができる。負極集電体の形態としては、例えば、箔状及び、板状等を挙げることができる。負極集電体の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、円状、楕円状、矩形状及び、任意の多角形状等を挙げることができる。また、負極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm~50μmの範囲内であってもよく、5μm~20μmの範囲内であってもよい。
【0037】
[電解質層]
電解質層は、少なくとも電解質を含む。
電解質には、水系電解液、非水系電解液、ゲル電解質、及び固体電解質等を用いることができる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
水系電解液の溶媒は主成分として水を含む。すなわち、電解液を構成する溶媒(液体成分)の全量を基準(100mol%)として、50mol%以上、特に70mol%以上、さらに90mol%以上を水が占めていてもよい。一方、溶媒に占める水の割合の上限は特に限定されない。
【0039】
溶媒は水を主成分として含むものであるが、水以外の溶媒を含んでいてもよい。水以外の溶媒としては、例えば、エーテル類、カーボネート類、ニトリル類、アルコール類、ケトン類、アミン類、アミド類、硫黄化合物類及び炭化水素類から選ばれる1種以上が挙げられる。水以外の溶媒は、電解液を構成する溶媒(液体成分)の全量を基準(100mol%)として、50mol%以下であってもよく、特に30mol%以下であってもよく、さらに10mol%以下であってもよい。
【0040】
本開示に使用される水系電解液は電解質を含む。水系電解液用の電解質は従来公知のものを用いることができる。電解質としては、例えば、イミド酸化合物のリチウム塩、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等が挙げられる。具体的な電解質としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI;CAS No.171611-11-3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI;CAS No.90076-65-6)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI;CAS No.132843-44-8)、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(CAS No.119229-99-1)、リチウムノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド(CAS No.176719-70-3)、リチウムN,N-ヘキサフルオロ-1,3-ジスルホニルイミド(CAS No.189217-62-7)、CHCOOLi、LiPF、LiBF、LiSO、LiNO等が挙げられる。
【0041】
水系電解液における電解質の濃度は、溶媒に対する電解質の飽和濃度を超えない範囲において、求める電池の特性に応じて、適宜設定することができる。水系電解液中に固体の電解質が残る場合には、その固体が電池反応を阻害するおそれがあるためである。
例えば、電解質としてLiTFSIを用いる場合、水系電解液は、上記水1kgあたりLiTFSIを1mol以上含んでいてもよく、特に5mol以上であってもよく、さらに7.5mol以上であってもよい。上限は特に限定されるものではなく、例えば、25mol以下であってもよい。
【0042】
非水系電解液としては、通常、リチウム塩及び非水溶媒を含有したものを用いる。
リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO及びLiAsF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(SOCF(Li-TFSI)、LiN(SO及びLiC(SOCF等の有機リチウム塩等を挙げることができる。
非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル(AcN)、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,3-ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの混合物等を挙げることができ、高誘電率、低粘度を確保する観点から、高誘電率、高粘度を有するEC、PC、BC等の環状カーボネート化合物と、低誘電率、低粘度を有するDMC、DEC、EMC等の鎖状カーボネート化合物の混合物であってもよく、ECとDECの混合物であってもよい。
非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.3~5Mであってもよい。
【0043】
ゲル電解質は、通常、非水系電解液にポリマーを添加してゲル化したものである。
ゲル電解質として、具体的には、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド(PVdF)、ポリウレタン、ポリアクリレート、及びセルロース等のポリマーを添加し、ゲル化することにより得られる。
【0044】
電解質層には、上述した水系電解液等の電解質を含浸させ、且つ、正極層と負極層との接触を防止するセパレータを用いてもよい。
セパレータの材料としては、多孔質膜であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース及びポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリエチレン及びポリプロピレンであってもよい。また、上記セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であっても良い。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、又は、PP/PE/PP若しくはPE/PP/PEの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。
セパレータは、樹脂不織布、及び、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。
【0045】
[固体電解質層]
電解質層は、固体で構成される固体電解質層であってもよい。
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含む。
固体電解質層に含有させる固体電解質としては、全固体電池に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができ、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、及び、窒化物系固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。硫化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、硫黄(S)を含有してもよい。酸化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、酸素(O)を含有してもよい。水素化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、水素(H)を含有してもよい。ハロゲン化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、ハロゲン(X)を含有してもよい。窒化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、窒素(N)を含有してもよい。
【0046】
硫化物系固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラス(ガラスセラミックス)であってもよく、原料組成物に対する固相反応処理により得られる結晶質材料であってもよい。
硫化物系固体電解質の結晶状態は、例えば、硫化物系固体電解質に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
【0047】
硫化物ガラスは、原料組成物(例えばLiSおよびPの混合物)を非晶質処理することにより得ることができる。非晶質処理としては、例えば、メカニカルミリングが挙げられる。
【0048】
ガラスセラミックスは、例えば、硫化物ガラスを熱処理することにより得ることができる。
熱処理温度は、硫化物ガラスの熱分析測定により観測される結晶化温度(Tc)よりも高い温度であればよく、通常、195℃以上である。一方、熱処理温度の上限は特に限定されない。
硫化物ガラスの結晶化温度(Tc)は、示差熱分析(DTA)により測定することができる。
熱処理時間は、ガラスセラミックスの所望の結晶化度が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば1分間~24時間の範囲内であり、中でも、1分間~10時間の範囲内が挙げられる。
熱処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
【0049】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li元素、Y元素(Yは、Nb、B、Al、Si、P、Ti、Zr、Mo、W、Sの少なくとも一種である)、および、O元素を含有する固体電解質が挙げられる。酸化物系固体電解質の具体例としては、LiLaZr12、Li7-xLa(Zr2-xNb)O12(0≦x≦2)、LiLaNb12等のガーネット型固体電解質;(Li,La)TiO、(Li,La)NbO、(Li,Sr)(Ta,Zr)O等のペロブスカイト型固体電解質;Li(Al,Ti)(PO、Li(Al,Ga)(POのナシコン型固体電解質;LiPO、LIPON(LiPOのOの一部をNで置換した化合物)等のLi-P-O系固体電解質;LiBO、LiBOのOの一部をCで置換した化合物等のLi-B-O系固体電解質が挙げられる。
本開示において、化学式中の表記「(A,B,C)」は、「A、B、及びCからなる群より選ばれる少なくとも1つ」を意味する。
【0050】
水素化物系固体電解質は、例えば、Liと、水素を含有する錯アニオンと、を有する。錯アニオンとしては、例えば、(BH、(NH、(AlH、及び(AlH3-等が挙げられる。
【0051】
ハロゲン化物系固体電解質としては、例えば、以下の組成式(1)により表される。
Liαβγ・・・式(1)
組成式(1)において、α、β、及びγは、それぞれ独立して、0より大きい値である。Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む。Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
本開示において、「半金属元素」とは、B、Si、Ge、As、Sb及びTeである。「金属元素」とは、水素を除く周期表1族から12族中に含まれるすべての元素、ならびに、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、及びSeを除く周期表13族から16族中に含まれるすべての元素である。すなわち、「半金属元素」または「金属元素」とは、ハロゲン元素と無機化合物を形成した際に、カチオンとなりうる元素群である。
ハロゲン化物系固体電解質として、より具体的には、例えば、LiYX、LiMgX、LiFeX、LiAlX、LiGaX、LiInX、LiAlX、LiGaX、及び、LiInX等が挙げられる。ここで、Xは、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0052】
窒化物系固体電解質としては、例えばLiN等が挙げられる。
【0053】
固体電解質の形状は、取扱い性が良いという観点から粒子状であってもよい。
固体電解質の粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、固体電解質の粒子の平均粒径は、例えば25μm以下であり、10μm以下であってもよい。
【0054】
本開示において、粒子の平均粒径は、特記しない限り、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される体積基準のメディアン径(D50)の値である。また、本開示においてメディアン径(D50)とは、粒径の小さい粒子から順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体の体積の半分(50%)となる径(体積平均径)である。
【0055】
固体電解質は、1種単独で、又は2種以上のものを用いることができる。また、2種以上の固体電解質を用いる場合、2種以上の固体電解質を混合してもよく、又は2層以上の固体電解質それぞれの層を形成して多層構造としてもよい。
固体電解質層中の固体電解質の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、60質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、70質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、100質量%であってもよい。
【0056】
固体電解質層には、可塑性を発現させる等の観点から、結着剤を含有させることもできる。そのような結着剤としては、正極層に用いられる結着剤として例示した材料等を例示することができる。ただし、高出力化を図り易くするために、固体電解質の過度の凝集を防止し且つ均一に分散された固体電解質を有する固体電解質層を形成可能にする等の観点から、固体電解質層に含有させる結着剤は5質量%以下としてもよい。
【0057】
固体電解質層の厚みは特に限定されるものではなく、通常0.1μm以上1mm以下である。
固体電解質層を形成する方法としては、固体電解質を含む固体電解質層形成用ペーストを支持体上に塗布して乾燥する方法、及び、固体電解質を含む固体電解質材料の粉末を加圧成形する方法等が挙げられる。支持体は、正極層において例示したものと同様のものを挙げることができる。固体電解質材料の粉末を加圧成形する場合には、通常、1MPa以上2000MPa以下程度のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、正極層の形成において例示した加圧方法が挙げられる。
【0058】
電池は、必要に応じ、正極集電体、正極層、電解質層、負極層および負極集電体をこの順に備えた積層体を収容する外装体及び拘束部材等を備える。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
拘束部材は、積層体に、積層方向の拘束圧力を与えることができればよく、電池の拘束部材として使用可能な公知の拘束部材を用いることができる。例えば、積層体の両表面を挟む板状部と、2つの板状部を連結する棒状部と、棒状部に連結され、ねじ構造等により拘束圧力を調整する調整部を有する拘束部材が挙げられる。調整部によって、積層体に所望の拘束圧力を与えることができる。
拘束圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1MPa以上であってもよく、1MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよい。拘束圧力を大きくすることで、各層の接触を良好にしやすいという利点があるためである。一方、拘束圧力は、例えば、100MPa以下であってもよく、50MPa以下であってもよく、20MPa以下であってもよい。拘束圧力が大きすぎると、拘束部材に高い剛性が求められ、拘束部材が大型化する可能性があるためである。
【0059】
電池は、上記積層体を1つのみ有するものであってもよいし、積層体を複数個積層してなるものであってもよい。
電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であってもよい。二次電池は繰り返し充放電が可能である。二次電池は、例えば車載用電池として有用である。
電池は、水系電池、非水系電池、及び、全固体電池等であってもよい。
また、電池は、リチウム電池、及び、リチウムイオン電池等であってもよい。
さらに、全固体電池は、全固体リチウム二次電池、及び、全固体リチウムイオン二次電池等であってもよい。
電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられてもよい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0060】
本開示の電池が全固体電池の場合の全固体電池の製造方法は、例えば、まず、固体電解質層形成用ペーストを支持体に塗布して乾燥することにより固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層の一面上で正極活物質を含む正極層形成用ペーストを塗布して乾燥することにより正極層を得る。その後、支持体を固体電解質層から剥がし、固体電解質層のもう一方の一面上に負極層形成用ペーストを塗布して乾燥させ負極層を形成し、必要に応じて正極層の固体電解質層とは反対側の面上に正極集電体を取り付け、負極層の固体電解質層とは反対側の面上に負極集電体を取り付けて全固体電池としてもよい。
【実施例0061】
[接着剤層コートアルミニウム箔の作製]
導電材としてのVGCF及びABと接着剤としてアクリル系バインダー(アロンタックS1551、東亜合成社製)を、導電材と接着剤の体積比が、導電材:接着剤=25:75vol%となるように秤量した。その後NMPを入れ接着剤層組成物を作製した。次にアルミニウム箔(正極集電体)の片面に接着剤層組成物を塗工し、接着剤層組成物を100℃で1時間乾燥し接着剤層コートアルミニウム箔とした。
【0062】
[従来のカーボンコートアルミニウム箔の作製]
導電材としてのVGCF及びABと接着剤としてのPVdFを、導電材と接着剤の体積比が、導電材:接着剤=25:75vol%となるように秤量した。その後NMPを入れカーボンコート組成物を作製した。次にアルミニウム箔(正極集電体)の片面にカーボンコート組成物を塗工し、カーボンコート組成物を100℃で1時間乾燥しカーボンコートアルミニウム箔とした。
【0063】
(実施例1)
[正極層形成用ペーストの作製]
正極活物質としてLiNi0.8Co0.2Al0.2(以下、NCAと表記する)を使用した。転動流動式コーティング装置(パウレック社製)を用いて、大気雰囲気下において正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.2Al0.2を主相とする粒子)にニオブ酸リチウムをコーティングし、大気雰囲気下で焼成を行うことで、ニオブ酸リチウムの被覆層を有する複合活物質粒子を得た。
上記複合活物質粒子、導電材としてのVGCF及びAB、固体電解質、バインダーとしてのSBR、溶媒を秤量し、超音波ホモジナイザー(SMT社製UH-50)を用いて混合したものを正極層形成用ペーストとした。
得られる正極層の総体積を100体積%としたとき、正極層中の導電材の体積割合は、3.51体積%となるように調整した。
正極活物質を100質量%としたとき、球状炭素ABの質量割合は、0.3質量%となるように調整した。
正極活物質を100質量%としたとき、繊維状炭素VGCFの質量割合は、2.34質量%となるように調整した。
正極層中の球状炭素ABと繊維状炭素VGCFの総質量を100質量%としたとき、球状炭素ABの質量割合は、11.4質量%となるように調整した。
【0064】
[負極層形成用ペーストの作製]
負極活物質としてLiTi12粒子、導電材としての炭素材料、バインダー、酪酸ブチルを所定量混合し、超音波ホモジナイザー(SMT社製UH-50)を使用して30分間混合した。その後、混合して得られたスラリーに固体電解質を添加し、再度、超音波ホモジナイザー(SMT社製UH-50)を用いて30分混合したものを負極層形成用ペーストとした。
【0065】
[固体電解質層形成用ペーストの作製]
ポリプロピレン製容器に、ヘプタンと、ブタジエンゴム系バインダーを5質量%含んだヘプタン溶液と、硫化物系固体電解質として平均粒径2.5μmのLiI-LiBr-LiS-P系ガラスセラミックとを加え、超音波ホモジナイザー(SMT社製UH-50)を用いて、30秒間混合した。次に、容器を振とう器で3分間振とうさせて、固体電解質層形成用ペーストを得た。
【0066】
[負極の作製]
同様にしてアプリケーターを使用してブレード法にて負極集電体上に負極層形成用ペーストを塗工した。塗工後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させて、負極集電体上に負極層を有する負極を得た。
実施例及び比較例すべてにおいて、正極の充電比容量200mAh/gとした時に対する負極容量充電比容量が1倍となるように負極層目付を調整した。
【0067】
[固体電解質層の作製]
アルミニウム箔上に、ブレード法により固体電解質層形成用ペーストを塗工し、100℃のホットプレート上で、30分間乾燥させた。その後、1ton/cmでロールプレスを行って、負極層上に固体電解質層を備える負極側積層体を得た。
【0068】
[正極の作製]
アルミニウム箔上にアプリケーターを使用してブレード法にて正極層形成用ペーストを塗工した。塗工後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させて、アルミニウム箔上に正極層を有するアルミニウム箔-正極層積層体を得た。
上記負極側積層体の固体電解質層上に、正極層が固体電解質層と接するようにアルミニウム箔-正極層積層体を積層し、130℃にて、5ton/cmでプレスした。その後、アルミニウム箔-正極層積層体のアルミニウム箔を剥離し、露出した正極層上に上記[接着剤層コートアルミニウム箔の作製]にて作製した接着剤層コートアルミニウム箔を接着剤層が正極層と接するように接地させて、接着剤層コートアルミニウム箔と正極層を有する正極を得た。これにより、正極と固体電解質層と負極とをこの順に有する発電要素を得た。発電要素をラミネートに封入し、80℃、5MPaで20h拘束することで、接着剤層コートアルミニウム箔を正極層に貼り付けた。
【0069】
[全固体リチウムイオン二次電池の作製]
その後発電要素を25℃に冷却し、拘束圧0.5MPaとなるように調整し、評価用セルの全固体リチウムイオン二次電池とした。
【0070】
(実施例2~6)
上記[正極層形成用ペーストの作製]において、導電材の量を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様の方法で正極、及び、全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0071】
(比較例1~6)
上記[正極層形成用ペーストの作製]において、導電材の量を表1に示す値とした。
[正極の作製]において、アルミニウム箔-正極層積層体のアルミニウム箔を剥離し、露出した正極層上に接着剤層コートアルミニウム箔の代わりに上記[従来のカーボンコートアルミニウム箔の作製]にて作製した従来のカーボンコートアルミニウム箔をカーボンコートが正極層と接するように接地させて、従来のカーボンコートアルミニウム箔と正極層を有する正極を得た。これにより、正極と固体電解質層と負極とをこの順に有する発電要素を得た。発電要素をラミネートに封入し、80℃、5MPaで20h拘束することで、従来のカーボンコートアルミニウム箔を正極層に貼り付けた。これらのこと以外は、実施例1と同様の方法で正極、及び、全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0072】
[正極層の電子伝導度測定]
実施例1~6および比較例1~6の正極を用い、以下の条件で、正極層の電子伝導度の評価を実施した。
上記[正極の作製]にて作製したラミネートに封入する前の発電要素から取り出した正極を2枚準備し、2枚の正極を対抗し重ね合わせ、5ton/cmでロールプレスを行った。得られた対向正極を打ち抜き、厚み測定を実施したのち、ラミネート封入し、5MPaで拘束することで、電子伝導度評価用の対称セルとした。
得られた対称セルに-0.10~+0.10Vの一定電圧を印加した際の、流れる電流値を読み取り、オームの法則により抵抗を算出し、得られた抵抗と上記厚みから正極層の電子伝導度を算出した。その結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
[箔接触抵抗測定]
実施例1~6の正極を用い、以下の条件で、正極層の正極集電箔との箔接触抵抗の評価を実施した。
上記[正極の作製]にて作製したラミネートに封入する前の発電要素から取り出した正極を1枚準備し、当該正極を5ton/cmでロールプレスを行った。プレスした正極をラミネートに封入し、80℃、5MPaで20h拘束することで、接着剤層コートアルミニウム箔を正極層に貼り付けた。その後25℃に冷却し、拘束圧0.5MPaとなるように調整し、箔接触抵抗評価用セルとした。得られた箔接触抵抗評価用セルに-0.10~+0.10Vの一定電圧を印加した際の、流れる電流値を読み取り、オームの法則により抵抗を算出した。得られた抵抗値から、正極層内の電子伝導由来の抵抗値を除することで、正極層の正極集電箔との箔接触抵抗を算出した。その結果を表2に示す。
比較例1~6においては、接着剤層コートアルミニウム箔の代わりに上記[従来のカーボンコートアルミニウム箔の作製]にて作製した従来のカーボンコートアルミニウム箔を正極層に貼り付けたこと以外は、比較例1~6の正極を用い、上記と同じ条件で、正極層の正極集電箔との箔接触抵抗を算出した。
各実施例及び各比較例の箔接触抵抗は後述する「評価用セルの耐久前の直流抵抗(DC-IR)の測定」で測定した実施例1の耐久前直流抵抗を100%としたときの、実施例1の耐久前直流抵抗に対する比率(%)として算出した。その結果を表2に示す。
【0075】
[評価用セルの充放電]
実施例1~6および比較例1~6の評価用セルの全固体リチウムイオン二次電池を用い、以下の条件で、評価用セルの充放電を実施した。
充電:0.3C相当電流で定電流充電し、セル電圧が2.7V到達後、定電圧充電し、充電電流が0.01C相当に到達した時点で充電を終了した。
放電:0.3C相当電流で定電流放電し、セル電圧が1.5Vに到達後、定電圧放電し、放電電流が0.01C相当に到達した時点で放電を終了した。
【0076】
[評価用セルの耐久前の直流抵抗(DC-IR)の測定]
実施例1~6および比較例1~6の評価用セルの全固体リチウムイオン二次電池を用い、以下の条件で、耐久前直流抵抗(DC-IR)を測定した。
60C相当電流で定電流充電し、充電前電圧と10秒充電後電圧の差を60C相当電流で割ることで算出した。
各実施例及び各比較例の耐久前直流抵抗は、実施例1の耐久前直流抵抗を100%としたときの、実施例1の耐久前直流抵抗に対する比率(%)として算出した。その結果を表2に示す。
【0077】
[評価用セルの耐久前の全抵抗の測定]
実施例1~6および比較例1~6の評価用セルの全固体リチウムイオン二次電池について、上記で算出した、箔接触抵抗と耐久前直流抵抗を合算して、評価用セルの耐久前の全抵抗を算出した。その結果を表2に示す。
【0078】
[評価用セルの耐久後の直流抵抗(DC-IR)の測定]
実施例1~6および比較例1~6の評価用セルの全固体リチウムイオン二次電池を用い、以下の条件で、耐久後直流抵抗(DC-IR)を測定した。
上記[評価用セルの充放電]の条件と同条件で所定の回数の充放電を実施し、その後、60C相当電流で定電流充電し、充電前電圧と10秒充電後電圧の差を60C相当電流で割ることで、耐久後直流抵抗を算出した。
各実施例及び各比較例の耐久後直流抵抗は、実施例1の耐久前直流抵抗を100%としたときの、実施例1の耐久前直流抵抗に対する比率(%)として算出した。その結果を表2に示す。
【0079】
[評価用セルの耐久後の全抵抗の測定]
実施例1~6および比較例1~6の評価用セルの全固体リチウムイオン二次電池について、上記で算出した、箔接触抵抗と耐久後直流抵抗を合算して、評価用セルの耐久後の全抵抗を算出した。その結果を表2に示す。
【0080】
[評価用セルの耐久後の直流抵抗(DC-IR)の増大率の測定]
実施例1~6および比較例1~6の評価用セルの全固体リチウムイオン二次電池について、上記で算出した、各実施例及び各比較例の耐久後直流抵抗を各実施例及び各比較例の耐久前直流抵抗で除することにより、評価用セルの耐久後の直流抵抗の増大率を算出した。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
[評価結果]
表1~2に示すように、実施例1~6では、接着剤層コートアルミニウム箔の使用により、比較例1~6の従来のカーボンコートアルミニウム箔よりも正極層の正極集電箔との箔接触抵抗を大幅に低減できることが実証された。
また、表2に示すように、実施例1~6の耐久前全抵抗及び耐久後全抵抗は、正極層の正極集電箔との箔接触抵抗を低減した分だけ比較例1~6よりも低減することができることがわかる。
さらに、表1~2に示すように、実施例6及び比較例6では、実施例1~5及び比較例1~5と比較して耐久後の直流抵抗(DCIR)の増大率が大きいことがわかる。このことから、正極層内の導電材の量を大きくすれば、正極層の電子伝導度を向上させることができるが、正極層内の導電材の量を大きくし過ぎると背反として電池の耐久性が低下することが分かる。したがって、正極層内の導電材の量を所定の範囲内にすることにより、電池の耐久後の直流抵抗の増加を低減し、電池の耐久性を向上させることができる。
以上のことから、本開示によれば、接着剤層コートアルミニウム箔の使用により、正極層の正極集電箔との箔接触抵抗を低減させ、その低減分、正極層内の導電材量を低減することができるため、電池の低抵抗化及び高耐久化を実現することができる。
【符号の説明】
【0083】
11 正極集電体
12 正極層
13 接着剤層
100 正極
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する正極であって、
前記正極層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、
前記接着剤層は、導電材として炭素系導電材を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む、正極。
【請求項2】
前記正極層は、正極活物質を含み、
前記正極活物質は、LiNi1-xで表されるリチウム遷移金属複合酸化物であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物においてxは0.5≦x<1を満たし、MはCo、Mn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である、請求項1に記載の正極。
【請求項3】
前記接着剤層は、前記導電材として前記球状炭素と前記繊維状炭素を含、請求項1又は2に記載の正極。
【請求項4】
前記正極層の総体積を100体積%としたとき、前記正極層中の前記導電材の体積割合は、3~6体積%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の正極。
【請求項5】
前記正極層中の前記球状炭素と前記繊維状炭素の総質量を100質量%としたとき、前記球状炭素の質量割合は、7~12質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の正極。
【請求項6】
前記球状炭素は、アセチレンブラックである、請求項1~のいずれか一項に記載の正極。
【請求項7】
前記接着剤層の総体積を100体積%としたとき、前記接着剤層中の前記アクリル系バインダーの体積割合は、50~80体積%である、請求項1~のいずれか一項に記載の正極。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示の正極は、正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する正極であって、
前記正極層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、
前記接着剤層は、導電材として炭素系導電材を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本開示の正極においては、前記接着剤層は、前記導電材として前記球状炭素と前記繊維状炭素を含んでいてもよい。
本開示の正極においては、前記正極層の総体積を100体積%としたとき、前記正極層中の前記導電材の体積割合は、3~6体積%であってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本開示の正極は、正極集電体、接着剤層、及び、正極層をこの順に有する正極であって、
前記正極層は、導電材として球状炭素と繊維状炭素を含み、
前記接着剤層は、導電材として炭素系導電材を含み、且つ、接着剤としてアクリル系バインダーを含む。