(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109310
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】意思決定能力評価装置、システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20230801BHJP
G06F 40/216 20200101ALI20230801BHJP
【FI】
G16H50/00
G06F40/216
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010747
(22)【出願日】2022-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 共創の場形成支援 (センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム) 「真の社会イノベーションを実現する革新的『健やか力』 創造拠点」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】成本 迅
【テーマコード(参考)】
5B091
5L099
【Fターム(参考)】
5B091AA15
5B091CA01
5B091CB12
5B091CC05
5L099AA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】商品又はサービスの利用に関する対話から、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力評価装置、システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置20であって、商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部230と、音声データ取得部に230より取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部231と、変換部231により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する判定部233と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置。
【請求項2】
前記検査対象者の音声データは、
前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答、および
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
のうちの少なくとも2つを含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の理解を判定することを含み、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の認識を判定することを含み、
及び
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、請求項1に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項3】
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の選択の表明を判定することを含む、請求項2に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項4】
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、商品又はサービスの利用に関連する対話における検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中に、共起される頻度が高い単語同士が共起されている場合に、検査対象者が「理解」していると判定することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項5】
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、時事に関連するテキストデータで学習された機械学習モデルを用いて作成された、特定の分野の第1の表現と、前記表現と共に出現する頻度が高い第2の表現とを含む文章のうちの第2の表現の穴埋め問題である、請求項1~3のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項6】
音声データ取得部は、検査対象者の認識を評価するための質問と、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答とを含み、
前記意思決定能力判定部は、
前記検査対象者の認識を評価するための質問の音声データを変換したテキストと、前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキストとに、少なくとも一つ同じ単語が共通して出現していること、
前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキスト中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせが、前記検査対象者の認識を評価するための質問中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせと異なっていること、及び
検査対象者に関連する単語が前記検査対象者の回答を変換したテキスト中に出現していること
を判定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項7】
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータが、比較を表す単語、又は類似した事物の提示、並列、もしくは列挙を示す単語を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項8】
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の理解を評価するための質問を変換したテキストデータと、それに対する検査対象者の回答を変換したテキストデータとの内容が、ポジティブかネガティブであるかに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項9】
前記1又は複数の質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価装置は、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、視線の軌跡を測定する視線測定部をさらに含み、
前記意思決定能力判定部は、前記視線測定部から受信した視線の軌跡の測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する請求項1~8のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項10】
前記1又は複数の質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価装置は、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、顔の向きを測定する顔向き測定部をさらに含み、
前記意思決定能力判定部は、前記顔向き測定部から受信した顔の向きの測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する請求項1~9のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項11】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するシステムであって、
商品又はサービスの利用に関する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価システム。
【請求項12】
コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象者の意思決定能力を評価するための意思決定能力評価装置、システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化の進展に伴い、高齢者の経済活動に関する問題が浮上してきている。高齢者が日常生活を営む上で最も重要な能力を経済行為能力といい、経済行為能力には食品や日用品の購入や金融機関の利用といった日常的な行為、不動産売買やローンや保険等の契約、書面による契約締結を伴う重要な財産行為が含まれるが、この経済行為能力の低下により、高齢者が詐欺や不当契約等のトラブルに巻き込まれるリスクが増大している。
【0003】
一方で、高齢者がある金融商品を購入した後で、銀行側の説明の時には意思能力については問題がないと判断して取引を行ったが、後に認知症であったという診断書が家族から提出される等のトラブルもある。
【0004】
例えば特許文献1は、ビデオ会議システムを介した検査者と検査対象者との間のビデオ及び音声による双方向の対話に基づいて検査対象者の検査データを取得し、検査データから意思能力判定用データを作成し、検査対象者の経済活動における意思能力判定用データと、検査対象者の金融リテラシーのスコアとの両方に基づいて、検査対象者の経済活動における意思決定能力を遠隔評価するシステム及び方法について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における検査対象者の検査データは、検査者と検査対象者との間のビデオ及び音声による双方向の対話において検査対象者が回答した内容を、検査者側で記録して作成しているものである。また、検査対象者が金融リテラシーを有するかどうかの評価には、金融リテラシーのスコアが意思能力判定用データとは別に必要である。
【0007】
本発明が解決すべき課題は、商品又はサービスの利用に関する質問に対して発話された検査対象者の音声データをリアルタイムで取得し、かかる音声データを用いて検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する、意思決定能力評価装置、システム、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
項1.商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置。
項2.前記検査対象者の音声データは、
前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答、および
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
のうちの少なくとも2つを含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の理解を判定することを含み、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の認識を判定することを含み、
及び
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、項1に記載の意思決定能力評価装置。
項3.前記検査対象者の音声データは、検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の選択の表明を判定することを含む、項2に記載の意思決定能力評価装置。
項4.前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、商品又はサービスの利用に関連する対話における検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中に、共起される頻度が高い単語同士が共起されている場合に、検査対象者が「理解」していると判定することを含む、項1~3のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
項5.前記検査対象者の音声データは、検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、時事に関連するテキストデータで学習された機械学習モデルを用いて作成された、特定の分野の第1の表現と、前記表現と共に出現する頻度が高い第2の表現とを含む文章のうちの第2の表現の穴埋め問題である、項1~3のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
項6.音声データ取得部は、検査対象者の認識を評価するための質問と、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答とを含み、
前記意思決定能力判定部は、
前記検査対象者の認識を評価するための質問の音声データを変換したテキストと、前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキストとに、少なくとも一つ同じ単語が共通して出現していること、
前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキスト中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせが、前記検査対象者の認識を評価するための質問中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせと異なっていること、及び
検査対象者に関連する単語が前記検査対象者の回答を変換したテキスト中に出現していること
を判定する、項1~5のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【0009】
項7.前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータが、比較を表す単語、又は類似した事物の提示、並列、もしくは列挙を示す単語を含む、項1~6のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
項8.前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の理解を評価するための質問を変換したテキストデータと、それに対する検査対象者の回答を変換したテキストデータとの内容が、ポジティブかネガティブであるかに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、項1~7のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
項9.前記1又は複数の質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価装置は、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、視線の軌跡を測定する視線測定部をさらに含み、
前記意思決定能力判定部は、前記視線測定部から受信した視線の軌跡の測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する項1~8のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
項10.前記1又は複数の質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価装置は、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、顔の向きを測定する顔向き測定部をさらに含み、
前記意思決定能力判定部は、前記顔向き測定部から受信した顔の向きの測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する項1~9のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
項11.商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するシステムであって、
商品又はサービスの利用に関する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価システム。
項12.コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、商品又はサービスの利用に関する質問に対して取得した検査対象者の音声データに基づいて、検査対象者の意思決定能力をコンピュータにより迅速かつ高精度に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の意思決定能力評価システムの説明図。
【
図3】金融商品取引能力の評価のための評価項目の説明図。
【
図4】文章中の単語同士の関係に基づく、記憶と連想の説明図。
【
図5】(A)文を分解した単語のうちの出現頻度が高い名詞の代表例。(B)ウェブサイトに掲載されている経済政策記事の例、(C)各単語とその出現頻度のグラフ。
【
図6】(A)経済政策記事中の共起する単語の関係を示すネットワーク図、(B)共起される単語のセットと、その出現頻度のリスト。
【
図8】機械学習を用いた文章ベクトルのクラスタリングの例。
【
図10】検査対象者の「認識」を評価するためのテキストの解析の例。(A)検査対象者の発話の音声データをテキスト化した文章、(B)
図10(A)のテキストを形態素解析により分解し、分類したもののリスト、(C)文章中の主語が省略されている場合のBERTによる推定。
【
図11】検査対象者の「結果についての論理的思考」の能力を評価するための解析の例。(A)検査対象者の発話の音声データをテキスト化した文章、(B)
図11(A)のテキストを形態素解析により分解し、分類したもののリスト、(C)実装例。
【
図12】検査対象者の「比較する論理的思考」の能力を評価するための解析の例。(A)検査者の発話、(B)検査対象者の発話、(C)実装例。
【
図13】検査対象者の「論理的一貫性」の能力を評価するために用いられる発話の例。
【
図14】検査対象者の「論理的一貫性」の能力を評価するために用いられる文書の例。
【
図15】(A)健常者の視線の軌跡、(B)認知機能が低下した人の視線の軌跡。
【
図16】(A)質問文を形態素解析した例、(B)健常者の経時的な視線位置の変化を示す模式的グラフ、(C)認知機能経時的な視線位置の変化を示す模式的グラフ。
【
図17】検査端末10で実行される処理の流れを示すフローチャート。
【
図18】本実施形態の意思決定能力評価装置20で実行される処理の流れを示すフローチャート。
【
図20】意思決定能力評価システムの別例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.検査者による検査対象者の評価
まず、参考例として、自然人である検査者と、検査対象者との間のビデオ及び音声による双方向の対話において、検査対象者が回答した内容を検査者側で記録し、検査者が直接、検査対象者の意思決定能力としての金融取引能力を評価している例について説明する。
【0013】
金融取引能力を評価する上では、医療現場における医療同意能力(手術をするときの同意等)の評価方法を応用することができる。医療同意能力評価のための構造化面接法MacArthur Competence. Assessment Tool for Treatment(MacCAT-T), Appelbaum PS et al: Professional Resource Press; 2001)によると、意思決定能力評価には「理解」、「認識」、「論理的思考」及び「選択の表明」の4つ指標がある。
【0014】
「理解」とは、提示された情報を「記憶」し、その記憶から「連想」する能力である。提示された情報が自分に関連するか否かは関係しない。その情報を用いて、自分自身で文章を生成できることが望ましいが、提示された情報を同じ言葉で繰り返せる場合も、「理解」していると評価してもよい。この理解の機能低下が進むにつれ、表現が曖昧になる、思い出せなくなる。
【0015】
「認識」とは、提示された情報が全部もしくは一部が、「自分自身と関係している」ことを知っている、及び/又は自分自身が提示された情報から「選択したときの結果を連想」していることを表明する。この認識機能の低下が進むにつれ、表現が曖昧になる。
【0016】
「論理的思考」には、(1)結果についての論理的思考及び推測、(2)比較する論理的思考、(3)論理的一貫性が含まれる。
【0017】
(1)の「結果についての論理的思考及び推測」は、自分自身が選択した結果を、「提示された情報の範囲」で連想することができること(結果を導く論理)であり、提示された情報の範囲を超えて連想する(結果を導く論理を基に連想を展開する)ことも含む。
(2)の「比較する論理的思考」は、複数の選択肢を比較する能力を指す。
(3)の「論理的一貫性」は、 (2)の比較結果を導き、話者内、話者間のいずれかの連想に断絶がなく、選択の表明に至るまでの過程である。
【0018】
「選択の表明」は、論理的思考により比較した結果、いずれを選択したのかを、例えば明示的な意思表示等により、証拠づけることである。
【0019】
上記のMacCAT-Tの4つの評価指標に基づいて、金融分野における意思決定能力を評価するには、検査対象者に対するが、金融分野の内容を含むように質問を設定すればよい。また金融分野の質問に対する「理解」を評価することで、「理解」の有無だけでなく、「金融リテラシー」の有無も評価することができる。
【0020】
通常、金融分野の質問に対する「理解」、「論理的思考」及び「選択の表明」(又は「理解」、「認識」、「論理的思考」及び「選択の表明」)がすべて備わっている場合は、検査対象者の金融取引能力が十分であると評価される。また、金融分野の質問に対する「理解」、「論理的思考」及び「選択の表明」(又は「理解」、「認識」、「論理的思考」及び「選択の表明」)のうちの少なくとも一つが備わっていない場合は、検査対象者の金融取引能力が不十分であると評価される。ただし、金融取引能力が十分か不十分かの判定基準は、個々の金融取引に必要とされる金融取引能力に応じて変更することもできる。
【0021】
表1は、検査者と検査対象者との間のビデオ及び音声による双方向の対話において、検査者であるX銀行の職員Yであるが、検査対象者として72歳のAさんの金融取引の意思決定能力、具体的には金融商品の購入の意思決定能力を評価した例である。
【0022】
4つの要素の評価は、医師などの専門家が、能力があると判定する場合を〇、能力がないと判定する場合を×、どちらとも判別がつかない場合を△とした。
【0023】
Aさんは72歳であり、年のせいか「物忘れ」が増えてきているのが心配であるが、周囲にはあまり知られないよう努めている。子どもは、息子と娘が一人ずついるが今は独立して遠方で生活している。3年前に夫に先立たれてから、Aさんは一人暮らしをしている。Aさんの資産状況としては、当行で1,000万、他行にも1,000万預金しており、夫の遺族年金などで生活費も十分に賄えているため、十分な蓄えがある。これまで証券会社で、投資信託と株式を200万円程運用していた。先日、預けていた定期の満期案内が届いたため、先月X銀行に来店し、「投資信託」での運用の提案を受け、満期日まで検討することになり、今回は、満期手続きのためにX銀行へ2回目の来店をしている。
【0024】
表1のNo.1~10の会話中、Aさんの回答から、職員Yは、Aさんの「理解」「認識」「論理的思考」「選択の表明」の有無をそれぞれを評価している。
【0025】
No.2のAさんの回答は、No.3の職員Yの説明に対し、自身の資産状況と照らし合わせて、質問が自分自身と関係していることを知っており、さらには取引をした場合の連想することができている。このため、認識〇と判定される。
【0026】
No.4のAさんの返答は、No.3の職員Yの説明に対し、「記憶」し、その記憶から「連想」している。このため、理解〇と判定される。
【0027】
No.6のAさんの返答は、預ける場合と預けない場合という選択肢を利益・不利益を考慮して整理し、どちらでも一緒という結果を導いている。このため、論理的思考〇と判定される。
【0028】
No.8のAさんの返答は、リスクがないもののデメリットと、リスクがあるものを整理し、職員Yへ良いものを提示するよう依頼している。このため、論理的思考〇と判定される。
【0029】
No.10でAさんは、論理的思考に基づいて比較した結果、新しい金融商品の紹介を前向きに考える明示的な意思表示をしており、選択の表明〇と判定される。
【0030】
表1のNo.1~10のやりとり(特にNo.2,4,6,8,10)から、Aさんには金融取引に関する「理解」「認識」「論理的思考」「選択の表明」の能力が十分備わっていると判定される。このため、検査者は、Aさんに新しい金融商品の紹介をしてもよいと決定することができる。
【0031】
【0032】
表2は、検査者と検査対象者との間のビデオ及び音声による双方向の対話において、検査者であるX銀行の職員Yであるが、検査対象者として72歳のBさんの金融取引の意思決定能力、具体的には金融商品の購入の意思決定能力を評価した例である。
【0033】
Bさんは72歳であり、子どもは、子供は今は独立して遠方で生活している。夫に先立たれてから、Bさんは一人暮らしをしている。Bさんの資産状況としては、当行で1,000万、他行にも1,000万預金しており、生活費も十分に賄えているため、十分な蓄えがある。これまで証券会社で、投資信託と株式を200万円程運用していた。先日、預けていた定期の満期案内が届いたため、先月X銀行に来店し、「投資信託」での運用の提案を受け、満期日まで検討することになり、今回は、満期手続きのためにX銀行へ2回目の来店をしている。
【0034】
表2のNo.1~10の会話中、Bさんの回答から、職員Yは、Bさんの「理解」「認識」「論理的思考」「選択の表明」の有無をそれぞれを評価する。
【0035】
No.2のBさんの回答は、充分な蓄えがあるにも関わらず、生活資金の不足に対する不安を訴えており、自分の生活状況や資産状況を正確に捉えられていない可能性があるため、認識△と判定される。
【0036】
No.4のBさんの返答は、No.3の職員Yの説明に対し、理解できているかどうかの判断に迷う内容であるため、理解が△と判定される。
【0037】
No.6のBさんの返答は、自分の資産状況から、取引がもたらす結果を推測することができていないことを示し、理解×、論理的思考×と判定される。
【0038】
No.8のBさんの返答は、「お任せします」とする発言は、認知症の人によく見られるもので、自分の置かれている状況を把握できていない可能性があり、認識×、論理的思考×と判定される。
【0039】
No.10でBさんは、自分の生活状況・資産状況と照らし合わせることなく、取引を進めることを選択しているため、論理的思考×と判定される。
【0040】
表2のNo.1~10のやりとり(特にNo.2,4,6,8,10)から、Bさんには金融取引に関する「理解」「認識」「論理的思考」(新しい金融商品の紹介を希望すること)の能力が不十分と判定される。このため、最後にポジティブな「選択の表明」がなされていたとしても、その他の能力があると判断できないため、検査者は、Bさんに新しい金融商品の紹介へ移ることを中止するよう決定することができる。
【0041】
【0042】
以上のように、検査対象者の金融における意思決定能力の有無を判定するためには、検査者の訓練が必要であり、充分に検査が行える検査者を養成するには時間もかかる。さらに、検査の内容も複雑であり、検査者によっては検査結果にばらつきも生じる可能性がある。
【0043】
本願発明は、意思決定能力の判定を意思決定能力評価装置又は意思決定能力評価システムが支援することにより、このような対面で検査者が検査対象者の意思決定能力を評価する場合の不利点を解消するものである。
【0044】
2.意思決定能力評価装置又は意思決定能力評価システムによる検査対象者の評価
(1)テキストデータを用いた意思決定能力の評価
以下、図面を参照しながら、意思決定能力評価装置、意思決定能力評価システム、及び意思決定能力評価プログラムを具現化した本発明の実施形態について説明する。
【0045】
図1に示すように、本実施形態の意思決定能力評価システムは、検査端末10と、意思決定能力評価装置20とを備えている。
【0046】
本明細書において、「商品又はサービスの利用に関する対話」は、「検査対象者の意思決定能力を評価するための質問」を含む。
本明細書において、「商品又はサービスの利用に関する質問」とは、商品又はサービスの利用に際して検査対象者が目、耳、指などで接しなければならない利用規約、利用説明書、取扱説明書、使用許諾契約書、保証書、目論見書、同意書等の契約を伴う書類そのもの若しくは該書類の一部を質問形式にしたもの、又は当該商品又は当該サービスと同じ分野の電子データ(例えばオンラインコンテンツから抽出した電子データ、ローカルなデータベース又は電子辞書から抽出した電子データ)に基づいて、意思決定能力評価用に作成された質問を指す。
【0047】
例えば、検査対象者がある金融商品を購入したい場合、当該金融商品に関する書類そのものを利用した質問に限られず、金利に関する質問といったような、金融又は経済のニュース又は記事の電子データから作成した質問も「商品又はサービスの利用に関する質問」に含まれる。
【0048】
検査対象者の意思決定能力を評価するための質問のうち、少なくとも一つの質問が商品又はサービスの利用に関する質問であればよいが、評価の精度を高めるために、すべての質問が商品又はサービスの利用に関する質問であってもよい。検査対象者の意思決定能力を評価するための質問のうち、商品又はサービスの利用に関する質問以外の質問は、検査対象者の意思決定能力を評価できる限りいかなる質問であってもよく、例えば、時事問題などであってもよい。
【0049】
検査対象者の意思決定能力を評価するための質問としては、検査対象者の「理解」、「認識」、「論理的思考」、及び「選択の表明」を評価するための質問が挙げられる。なお、検査対象者の「理解」、「認識」、「論理的思考」、及び「選択の表明」を評価するための質問は、それに対する検査対象者の回答である発話の取得を意図したものであれば、必ずしも検査対象者への問いかけの疑問文の形式になっていなくてもよく、問いかけの形式ではない音声での発話や、紙や表示装置に表示された質問も含まれる。
【0050】
本実施形態において、検査対象者は、意思決定能力の評価を必要とする者であればよく、例えば65歳以上の高齢者が挙げられる。また、検査対象者として、例えば主観的又は客観的に、認知機能に低下があり、意思決定能力に疑いがある者が挙げられる。
【0051】
本実施形態において、検査者は特に限定されず、医師及び臨床心理士などの専門家、その他の認知機能検査の専門的訓練を受けた者、又は商品若しくはサービスを提供する提供業者の従業員が挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、本発明の意思決定能力の評価が、コンピュータにより行われる場合、検査端末10又は意思決定能力評価装置20の制御部により検査が実行され得る。
【0052】
検査端末10は検査対象者の音声、画像などの生体情報を取得して記録する端末である。検査端末10としては、例えばスマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パーソナルコンピューター等が挙げられる。
【0053】
検査端末10は、検査対象者が所有するものであってもよいし、医療機関、金融機関、又は商品若しくはサービスが提供される建物等に配置されているものでもよいが、これらに限定されない。
【0054】
検査端末10は、操作部11と、通信接続部12と、制御部13と、記憶部14と、ディスプレイ等の表示装置15と、スピーカー16と、マイクロフォン17と、撮像装置18とを備える。
【0055】
操作部11としては、キーボード、マウス、ポインティングデバイス等が挙げられる。
【0056】
通信接続部12は、検査端末10を他の外部機器と通信接続するためのインタフェースであり、無線であっても有線であってもよく、LAN、インターネット等が挙げられる。
【0057】
制御部13は、CPU等の制御手段、RAM及びROM等のメモリを備え、被検者端末10における各種処理を行う。
【0058】
記憶部14は、種々のデータを検査端末10に記録する記憶媒体であって、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等が挙げられる。記憶部14は、制御部13が実行するプログラムのデータや、検査端末10が外部機器と送受信するデータ等を記録するために使用することができる。
【0059】
表示装置15は例えば液晶モニタであり、制御部13の命令により出力された種々のデータを表示する。
【0060】
スピーカー16は、検査者からの発話や、商品又はサービスの利用に関する質問を音声として出力する装置である。意思決定能力評価装置20等の外部機器から検査端末10が受信した検査者からの発話や、意思決定能力評価装置20等の外部機器又は検査端末10の制御部13のメモリ又は記憶部14などの記憶部から受信した商品又はサービスの利用に関する質問は、制御部13にて音声に変換されて、スピーカー16から出力される。
【0061】
マイクロフォン17は、検査対象者による発話音声を入力するための装置である。検査対象者の発話はマイクロフォン17にて入力され、制御部13にて音声データへとアナログ-デジタル変換される。この音声データは、制御部13のメモリ又は記憶部14などの記憶部に記録される。また、制御部13の実行処理により音声データは通信接続部12を介して意思決定能力評価装置20へ送信される。
【0062】
撮像装置18は例えば検査端末10に内蔵されているカメラであり、時系列の画像データを取得する。画像データは、検査対象者の少なくとも顔の画像が含まれるデータである。この画像データは、制御部13のメモリ又は記憶部14などの記憶部に記録される。また、制御部13の実行処理により画像データは通信接続部12を介して意思決定能力評価装置20へ送信される。
【0063】
検査端末10には、意思決定能力評価装置20がインターネット等により通信接続している。意思決定能力評価装置20としては、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、サーバ等が挙げられる。
【0064】
図2に示すように、意思決定能力評価装置20は、通信接続部22と、制御部23と、記憶部24と、表示部25とを備える。
【0065】
意思決定能力評価装置20は、検査者又は検査者が所属する組織が所有するものであってもよいし、医療機関、金融機関、不動産会社、又は商品若しくはサービスが提供される建物等に配置されているものでもよいが、これらに限定されない。
【0066】
通信接続部22は、意思決定能力評価装置20を他の外部機器と通信接続するためのインタフェースであり、無線であっても有線であってもよく、LAN、インターネット等が挙げられる。検査端末10と意思決定能力評価装置20は、通信接続部12,22を介して互いに通信接続する。
【0067】
記憶部24は、種々のデータを意思決定能力評価装置20に記録する記憶媒体であって、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等が挙げられる。記憶部24は、制御部23が実行するプログラムのデータや、意思決定能力評価装置20が外部機器と送受信するデータ等を記録するために使用することができる。
【0068】
制御部23は、CPU等の制御手段、RAM及びROM等のメモリを備え、意思決定能力評価装置20における各種処理を行う。
【0069】
制御部23は、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部230と、音声データ取得部230により取得された音声データをテキストデータに変換する変換部231と、変換手段により変換されたテキストデータを解析するテキスト解析部232と、テキスト解析部232により解析されたデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する判定部233とを備えている。判定部233と、テキスト解析部232のうち、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定のために機能する部分と、意思決定能力判定部238を構成する。
【0070】
取得部230は、検査者の発話の音声データと検査対象者の発話の音声データとを取得し、変換部231は、音声データ取得部230により取得された検査者の発話の音声データと検査対象者の発話の音声データの音声認識を行い、個々の発話を特定できる形で、テキストデータに変換する。テキスト解析部232は、変換部231により生成されたテキストデータを解析する。解析としては文を単語に分解する形態素解析などが挙げられる。次に、判定部233は、変換部231により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する。
【0071】
制御部23はさらに、本実施形態では、データ管理部234と、検査対象者の画像データを取得する画像取得部235と、画像取得部235により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、視線の軌跡を測定する視線測定部236と、画像取得部235により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、顔の向きを測定する顔向き測定部237とをさらに備えている。
【0072】
商品又はサービスの利用に関する質問を受けている最中に検査対象者から取得される生体情報としては、例えば、A)音声、B)目の動き(視線の軌跡)、C)顔の向き、又はこれらのうちの2つ又は3つの組み合わせが挙げられるA)音声は音声データとして音声データ取得部230に取得され、B)目の動き(視線の軌跡)及びC)顔の向きは、検査対象者の顔の画像データとして画像取得部234に取得され、のちに解析される。
【0073】
ここで、意思決定能力評価装置20の意思決定能力判定部238による、検査対象者の「理解」「認識」「論理的思考」、及び「選択の表明」のそれぞれの評価方法について説明する。
【0074】
まず、「理解」の評価について説明する。
【0075】
例えば
図3は、MacCAT-TとCANDy(Oda et al., Conversational assessment of cognitive dysfunction among residents living in long-term care facilities
Published online by Cambridge University Press: 21 September 2017)を応用した、金融商品取引能力の評価のための評価項目を示す。
【0076】
ある取引分野におけるリテラシー(ここでは金融リテラシー)の評価は、その分野(ここでは金融分野)に関する適切な単語や、共起される単語を、検査対象者が理解(記憶、連想)しているか否かを判定することにより、評価することができる。
【0077】
一つの実施形態において、検査対象者の金融商品を勧める場面の場合、検査対象者の「理解」を評価するための質問を、「米国の金利が上昇すると、円安になりますか、円高になりますか?」のような金融又は経済の分野の質問とする。この質問に対する回答候補として、「円安になる」をはじめとする「円安」が含まれる回答のデータを「理解」ができていることを示す回答候補としてデータ管理部234又は記憶部24に記憶するとともに、「円高になる」を始めとする「円高」が含まれる回答や「分からない」とする回答のデータを「理解」ができていないことを示す回答候補としてデータ管理部234又は記憶部24に記憶しておく。そして、テキスト解析部232が、商品又はサービスの利用に関連する対話から取得した検査対象者の音声データを変換したテキストを解析する。次に、テキスト解析部232又は判定部233が、そのうちの検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答と、データ管理部234又は記憶部24に記憶された回答候補とを比較し、検査対象者の回答が「円安」が含まれる回答と一致する場合には、検査対象者が「理解」ができていると判定し、「円高」や「分からない」が含まれる回答と一致する場合には、検査対象者が「理解」ができていないと判定することができる。
【0078】
代わりに、「米国の金利が上昇すると、円安になりますか、円高になりますか?」という質問を、音声ではなく、検査端末10の表示装置15にテキストとして表示し、検査対象者に音声で回答してもらってもよい。
【0079】
代わりに、検査対象者の「理解」を評価するための質問を、自然人である検査者が発するのではなく、データ管理部234又は記憶部24に記憶されたかかる質問の音声データを発してもよい。
【0080】
このように、金融分野における理解(記憶、連想)を評価することにより、金融リテラシーの有無を評価することができるだけなく、検査対象者の「理解」を評価することもできる。
【0081】
別の実施形態において、検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中に、単語同士が共起されている場合に、テキスト解析部232又は判定部233が、検査対象者は「理解」していると判定することができる。
【0082】
例えば、金融商品を勧誘する場面では、検査対象者の発話が時事に沿った発話であるか等の点で、検査対象者の記憶の確からしさを判定する。
【0083】
図4の時事に関連する例文に示すように、単語が、同一の文中に同時に出現する単語同士は、連想により出現していると捉えることができる。このため、検査対象者が、ある単語と、その単語に関係する話題(エピソード)を記憶しており、文中で単語同士が共起されているとき、記憶を連想できているとみなすことができる。この単語同士の関係を、検査対象者の「理解」を評価に適用すると、同じ文中で共起される頻度が高い単語同士のデータを意思決定能力評価装置20の制御部23のデータ解析部232により解析し、データ管理部234又は記憶部24に記憶・学習しておく。判定部233は、データ解析部232から取得した検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中の同一の文中に共起される単語同士の組み合わせを、データ管理部234又は記憶部24に記憶された単語同士のデータと比較したり、共起される頻度を求めたりすることにより、検査対象者が、記憶を連想できているかを評価することができる。
【0084】
単語同士のデータを意思決定能力評価装置20のデータ管理部234又は記憶部24に記憶・学習させる、同じ文中で共起される頻度が高い単語同士のデータの取得例を
図5-6に示す。
【0085】
図5(A)に示すような「コロナ」「失業」「生活」「至急」「国」「岸田」「給付金」などの出現頻度が高い単語について、
図5(B)に示す入手可能な電子データ、ここではウェブサイトに掲載されている複数の経済政策記事を制御部23が取得し、その文中に出現している
図5(A)に示したのと同じ単語の数を制御部23のテキスト解析部232がカウントし、各単語の出現頻度を求める(
図5(C))。なお、文を解析し、単語を抽出するための電子データは、テキストデータであれば特に限定されず、例えば、インターネット上の時事に関連するテキストデータに限らず、時事を掲載した新聞、雑誌、研修資料をテキストデータ化したでもよい。また、電子データは時事に関連するものでなくてもよい。
【0086】
また、テキスト解析部232が、ウェブサイトに掲載されている経済政策記事中の文を解析し、同じ文中で共起される単語のセットと、その出現頻度を求めることができる(
図6(A),(B))。
【0087】
このような同じ文中で共起される単語のセットを、任意選択で出現頻度とともに、データ管理部234又は記憶部24に記憶・学習させておき、テキスト解析部232から取得した検査対象者の発話の音声データを変換したテキストの中に、データ管理部234又は記憶部24に記憶・学習させたのと同一の文中に単語同士が共起されている場合には、判定部233が、検査対象者は時事について「理解」していると判定することができる。出現頻度が一定数よりも高い単語同士が共起されている場合に、判定部233が、検査対象者は時事について「理解」していると判定してもよい。
【0088】
なお、理解を容易にするために、上述の説明では、同一の文中に単語同士が共起されている場合を例に挙げたが、同一の文中の共起単語の出現に限らず、商品又はサービスの利用に関連する対話における検査対象者の発話全体の音声データを変換したテキスト中の共起単語の出現を調べてもよい。
【0089】
「記憶」について、認知症者の場合、直近の記憶から忘却することが多いため、直近の時事に関する発言から記憶の有無を判定することができるが、時事が最近の出来事(例えば検査日から1~3ヶ月以内)であれば、そのような時事の電子データを用いた「理解」の評価により、検査対象者には最近の時事に関する記憶があるとみなすことができる。
さらなる実施形態では、意思決定能力評価装置20のテキスト解析部232は、電子テキストデータ中に含まれている頻出表現を日付や期間ごとに群に分け(以下、表現群)、群ごとの頻出表現をベクトルで記述してもよい。テキストデータをベクトル化する方法としては、BERT (Bidirectional Encode r Representations from Transformers) 、USE(Universal Serial Encoder) など、既存の任意の機械学習モデルを利用できる。このとき、検査対象者の発話中に含まれる表現と、学習させた表現群との距離が近い(類似度が高い)と、検査対象者の記憶の確からしさが高くなるよう、表現する。
【0090】
図7は文章のベクトル化の例である。例えば、(1)で、aとbのような文があるとする。(2)で、これらの文を形態素解析により、単語(トークン)に分割する。(3)で、このトークンに出現頻度に依存した値を割り当てる等すると、文章を数字列に変換することができる。(1)のaは天気、bは交通の内容ではあるが、検査対象者による利用が予定される商品又はサービスの分野におけるデータセット(例えば、金融、経済、時事、医療)を参照すれば、当該分野の用語の特徴が反映しやすいベクトルとなる。
【0091】
図8に示すように、特定分野のテキストデータから、共起される単語の組み合わせ含む文章をベクトル化する。例えば、金融・財政の分野のインターネット上の電子テキストデータ50から、共起される単語のセット51を解析し、そのような共起単語を含む文章を多次元ベクトルで記述し、表現群1にクラスタリングする。また、スポーツの分野の分野のインターネット上の電子テキストデータ53から取得した文章も、多次元ベクトルで記述し、表現群2にクラスタリングする。表現群1と表現群2を座標53に示したものがそれぞれ符号54及び符号55である。
【0092】
ある例文56(発話をテキスト化した文章(話題を含んだ文章)の群1からの距離Dが金融・財政の分野との類似度を示す。距離Dは、各群の重心ベクトルから例文のベクトルまでの距離である。例えば、検査者の発話をテキスト化した文章を分解し、解析した内容が、金融・財政の内容であると、表現群1に近づき、スポーツの内容であると、表現群2に近づく。学習しておいた特定分野の表現群からの距離が近いほど、例文56は、話題に沿っており、発話者はかかる分野の内容を記憶しているとみなせるため、記憶の状態の定量指標とすることができる。例えば、検査対象者の発話をテキスト化した、共起単語を含む文章が、ある特定分野の表現群から一定範囲内にある場合に、判定部233は、検査対象者が「理解」の能力を有すると判定することができる。
【0093】
別の実施形態では、ウェブサイト上の時事データなどの電子テキストデータで学習された双方向エンコード表現モデル(BERTモデル)を用いて、文中の[MASK]を埋める、穴埋め問題をテキスト解析部232が作成し、制御部23の命令により印刷された又は表示部25に表示された当該穴埋め問題を、検査対象者に解答させ、その結果をもとに、検査対象者の「理解」の能力を評価してもよい。BERTモデルによると、 [MASK]を含む入力を与えると、確率又は出現頻度の高い順に[MASK]を埋める単語が得られる。例えば、“米国金利が上がると、日本の株価が[MASK]“を入力した場合、[MASK]には、下がる、上がる、上昇、下落、高騰、高まる、飛ぶ、低迷、落ちる、低下などが上位の単語として、回答が得られる。検査対象者の回答が、BERTにより得られる確率又は出現頻度の高い単語と一致する場合には、検査対象者には「理解」の能力があると判定することができる。検査対象者の回答が、BERTにより得られる確率又は出現頻度の高い単語と一致しない場合には、検査対象者には「理解」の能力がないと判定することができる。
【0094】
次に、「認識」の評価と、「論理的思考」のうちの「(1)結果についての論理的思考」の評価について説明する。
【0095】
上述したように、「認識」とは、提示された情報が全部もしくは一部が、「自分自身と関係している」ことを知っている、及び/又は自分自身が提示された情報から「選択したときの結果を連想」していることを表明することである。
【0096】
このため、(1)話者間で、単語が連想されていること、かつ(2)自分が関わっていることを示す単語が、検査対象者の発話を変換したテキスト中に出現しているか、又は、検査対象者の発話を変換したテキストから容易に推定できること、を評価指標にすることができる。
【0097】
【0098】
検査者からの質問60「北野様、満期までお預け入れありがとうございます。 改めて確認になりますが、ご資金のご使用予定などございますか。」に対し、検査対象者の回答61は「そうねえ、(私は※)特に使わない資金だから、また5年程置いておこうかと考えているの。生活資金や老後の入院費用は、預けている分で十分あるので、このお金はすぐに必要ないわね。」である。
【0099】
これらをテキストとして見た場合、検査対象者の回答61には、検査者の質問60の文で共起している単語が、少なくとも一つ(「使う」、「資金」)出現し、また、検査対象者の回答61において、前文と異なる組み合わせで単語が共起している(「使う」、「置く」)。このため、話者間で単語が連想されている。
【0100】
検査対象者の回答61の「特に使わない資金だから、」の前には主語が省略されている場合があり、その場合は前後の文章から推測する必要があるが、「私は」「これは」「今は」などが推定されるが、この場合、「私が」埋められる確率が高いと容易に推測でき、自分が関わっていることを示す単語が検査対象者の発話から変換したテキスト中に出現しているとみなすことできる。
【0101】
したがって、検査対象者は、検査対象者が「認識」の能力を有すると判定することができる。
【0102】
以上の「認識」の評価を、意思決定能力評価装置20が実施する場合について説明する。
図10(A)検査対象者の発話の音声データをテキスト化した文章である。
図10(A)のテキストをテキスト解析部232が形態素解析により分解すると、例えば
図10(B)のように分解され、リスト化される。「使う」と「資金」の単語は、テキスト解析部232又は判定部233が、検査対象者の発話のテキストデータの前の検査者の発話のテキストデータ中に、同じ単語があるかどうかを比較し、比較結果から、この共起単語が話者間で繰り返し出現していると判定することができる。さらに、検査対象者の発話のテキストデータ中の「使う」と「置く」の単語が出現頻度が高い共起単語か否かも、テキスト解析部232又は判定部233が、予め学習及び/又は記憶しておいた共起単語とを比較し、判定することができる。
【0103】
文章中の主語が省略されている場合、
図10(C)に示すように、BERTを用いて主語を推定することができる。
【0104】
テキスト解析部232が、
図10(A)の文章を、主語がない文章であると判定した場合、文頭に、[MASK]は、を追加し、BERTを用いて、[MASK]に入る文言を推定する。本人やその所有物を示す名詞が[MASK]に埋められる場合には、テキスト解析部232又は判定部233は、本人と関連した話題である可能性が高いと推定できる。
【0105】
このように、意思決定能力判定部238は、検査対象者が「認識」の能力を有すると判定することができる。
【0106】
さらに、この検査対象者の回答61の回答(
図11(A))の中には、「特に使わない資金だ
から、」(接続助詞)、「預けている分で十分ある
ので、」(格助詞+助動詞)のような原因、理由、根拠、動機などを示す単語も出現している。
【0107】
図11(A)のテキストを、テキスト解析部232が形態素解析により分解した結果の一部を
図11(B)に示すと、「だから」の「だ」は「助動詞」、「から」は「助詞・接続助詞」に分類されるが、検査対象者の回答のテキストが、検査対象者の回答の前の検査者の発話のテキストと異なる共起単語を含む文章であるにおいて、 「から」、「ので」など、原因、理由などを示す単語を抽出できたときは、その数を「結果についての論理的思考」の能力を評価するための指標とすることができ、例えばその数が一定数以上(例えば1つ以上)である場合に、テキスト解析部232又は判定部233は、検査対象者が「結果についての論理的思考」の能力を有すると判定することができる。
図11(C)は実装例を示す。
【0108】
次に、「論理的思考」のうちの「(2)比較する論理的思考」について説明する。
検査対象者の「比較する論理的思考」の能力の評価では、会話中(すなわち会話を変換したテキストデータ中)に、比較を表す単語や、類似した事物の提示、並列、列挙などを示す単語が出現しているかどうかを評価指標にすることができる。
【0109】
例えば
図12(A)及び(B)は、検査者と、検査対象者の会話である。
【0110】
図12(A)の検査者からの質問「低金利が継続しておりまして、満期の定期金利は0.3%でしたが、現在の金利は5年もので年0.01%です。 100万円で5年後、税金を引いて400円位の受取利息になりますね。金利上昇は望めそうもありません。どのくらいのリターンをご希望でしょうか?」に対し、
図12(B)の検査対象者の回答は、「そうねえ、3%位あるといいわね。 400円じゃあ、預けて
も預けなくて
も一緒よね。」である。
【0111】
検査対象者の回答には、比較を表す単語である係助詞「も」が出現している。2つの「も」の前には並列の単語(名詞)が出現するため選択肢がその文章に内在しているとみなすことができ、検査対象者に「比較する論理的思考」ができていると判定することができる。
【0112】
「比較する論理的思考」の「認識」の評価を、意思決定能力評価装置20が実施する場合、検査対象者の発話の音声データを変換したテキストをテキスト解析部232が形態素解析などにより分解する。次に、分解されたリスト中に、比較を表す単語や、類似した事物の提示、並列、列挙などを示す単語が出現しているときに、テキスト解析部232又は判定部233は、検査対象者が「比較する論理的思考」の能力を有すると判定することができる。
図12(C)は実装例を示す。
【0113】
比較を表す単語としては、「より」(格助詞:AよりB)、「も」(係助詞:AもBも)、「か」(副助詞:AかB)、「が」(接続助詞:Aだが、B)などが挙げられる。
【0114】
次に、「論理的思考」のうちの「(3)論理的一貫性」の判定について説明する。
【0115】
上述のように、「論理的一貫性」は、 (2)の比較結果を導き、会話中を通じて「連想に断絶がなく」、選択の表明に至るまでの過程である。
【0116】
検査対象者の「論理的一貫性」の能力の評価では、話者間の発言のポジティブ(+)・ネガティブ(-)の合理性の有無を評価指標にすることができる。
【0117】
例えば
図13は、検査者と、検査対象者の会話である。
【0118】
検査者の発話62「お客様は米ドル建てでお持ちですから、資産価値が上昇しています。コロナが落ち着いて経済回復が期待できれば、お客様の資産も上昇が期待できそうです。」に対して、検査対象者の発話63は「ワクチン接種が早く広まると、よくなっていくしていくんじゃないかしら。」である。
【0119】
検査者の発話62は、検査対象者が利得を得られる情報を、ポジティブとみなすものした場合に、相手にとってポジティブな内容であり、検査対象者の発話63も、検査者の発話62の内容がポジティブであることを理解した発言である。
【0120】
このため、対話において、話者を超えて、ポジティブ、ネガティブが一致しているとき、会話の論理に一貫性があるとみなすことができる。
【0121】
「論理的一貫性」の評価を、意思決定能力評価装置20が実施する場合、機械学習モデルを使用して、テキスト解析部322が、特定分野(本実施例では金融分野)の電子テキストデータにネガティブ、ニュートラル、ポジティブの3極のラベルを付与し(ネガティブとポジティブの2種のラベルでもよい)、この、予め学習済みデータに基づいて、テキスト解析部322又は判定部323が、話者の発話のテキストの極性を判定し、話者間の極性の整合性から、論理の一貫性を判定することができる。検査者と検査対象者の対話が、ポジティブとポジティブの関係にある場合、あるいはネガティブとネガティブの関係にある場合、テキスト解析部322又は判定部323は、検査対象者の発話に「論理的一貫性」があると判定することができる。それ以外の関係の場合に、テキスト解析部322又は判定部323は、検査対象者の発話に「論理的一貫性」がないと判定することができる。
【0122】
より具体的な例を挙げると、事前にWikipediaを学習済みのBERTモデルを用いて、有価証券報告書に含まれている文章にネガティブ、ニュートラル、ポジティブのラベルを付与して、ネガポジの分類器を作成する。BERTモデルを用いた学習には大量の文(約1000~100000
文など)の電子データを利用する。
図14の符号64は、テストに使用された文である。同一文章内に、ネガティブとポジティブの文章が含まれている場合は、両方のラベルを付与する。
図14の符号65に示すようなモデル文をテキスト解析部322又は判定部323に判定させた場合、ポジティブ(+)と判定される。
【0123】
主に、文中に回復、増収、などの動詞が含まれる場合にはポジティブ、減退、減収などの動詞が含まれる場合にはネガティブとなり、これらの動詞と同時に出現する名詞やその他の固有の表現の組み合わせなどを含めて、文章全体を学習する。
【0124】
なお、一方の話者の発話のテキストの内容が、他方の話者にとってネガティブであるにも関わず、逆接的に解釈し、ポジティブにとらえる場合もある。あるいは、他方の話者にとってポジティブであるにも関わず、逆接的に解釈し、ネガティブにとらえる場合もある。この場合、他方の話者の発話のテキスト中に、逆接の意味を示す「しかし」(接続詞)や、「が」「しかし」「でも」(接続助詞)がなどが含れていることを検出することによっても、ポジティブと、逆説の品詞を含むネガティブの関係から、テキスト解析部322又は判定部323は、検査対象者の発話に「論理的一貫性」があると判定することができる。
【0125】
以上の説明によれば、検査対象者の「理解」「認識」「論理的思考」の能力を評価するためのシステム構成を当業者は容易に理解することができる。
【0126】
「選択の表明」の判定とは、「選択の表明」の有無を判定することである。検査対象者に対してなされる1又は複数の質問は、選択の表明を評価するための質問を含むようにする。選択の表明を評価するための質問とは、例えば、「(この)商品又はサービスの利用についてのより詳しい説明を希望されますか」「(この)商品又はサービスを利用されますか?」というようなものである。
【0127】
変換部231は、選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータのうち、選択の表明に相当するテキストの部分に対してアノテーションを付与する。
【0128】
選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、判定部233は、検査対象者の「選択の表明」を判定する。例えば、「選択の表明」は、「お願いします。」「教えてくれる。」「紹介してくれる。」「話を聞こうかしら。」のような肯定的なテキストデータである場合に、「選択の表明」が有ると判定でき、「結構です。」「不要です。」「要らない。」のような否定的なテキストデータである場合に、「選択の表明」が無いと判定できる。
【0129】
選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答の候補を、データ管理部234又は記憶部24に記憶しておくことにより、検査対象者の回答が、データ管理部234又は記憶部24に記憶された肯定的な回答候補と一致する場合には、判定部233が「選択の表明」が有ると判定し、否定的な回答候補と一致する場合には、判定部233が「選択の表明」が無いと判定する。
【0130】
以上のデータ処理の手順で、判定部233は検査対象者の「理解」、「論理的思考」及び「選択の表明」を判定する。それぞれの項目の判定結果は、制御部23が表示部25に表示させてもよいし、印刷機に印刷させてもよい。
【0131】
「理解」、「認識」、「論理的思考」、及び「選択の表明」のいずれの判定結果も肯定であった場合、判定部233はさらに、検査対象者は商品又はサービスの利用の意思決定能力を有すると判定することができる。また、「理解」、「認識」、「論理的思考」、及び「選択の表明」の少なくともいずれか一つの判定結果が否定であった場合、判定部233はさらに、検査対象者は商品又はサービスの利用の意思決定能力を有しないと判定することができる。このような検査対象者は商品又はサービスの利用の意思決定能力を有するか否かの総合的な判定結果は、制御部23が表示部25に表示させてもよいし、印刷機に印刷させてもよい。
【0132】
以下、検査者と検査対象者の会話の具体例を示す。表3に、定期預金の満期が近づいている顧客C(検査対象者)に、銀行の職員(検査者)が、運用の報告をするとともに、別の金融商品を勧める場面であり、本発明の実施形態の意思決定能力評価装置を用いて、顧客Cが、金融商品を利用するのに十分な意思決定能力があるかどうかを判定する具体例を示す。
【0133】
会話No.1の職員の質問に対して、会話No.2で、顧客Cが回答している。上記認識」の評価と、「論理的思考」のうちの「(1)結果についての論理的思考」の評価に関して説明したように、意思決定能力判定部238は、顧客Cの回答の音声データが変換されたテキストデータに基づいて、顧客Cの「認識」と「論理的思考」の能力が〇であると判定することができる。
【0134】
会話No.3は、職員からの、検査対象者の「論理的思考」のうちの「比較する論理的思考」を評価するための質問であり、会話No.4は、顧客Cからの、それに対する回答である。上記「比較する論理的思考」の評価に関して説明したように、意思決定能力判定部238は、顧客Cの回答の音声データが変換されたテキストデータに基づいて、顧客Cの「論理的思考」が肯定であると判定することができる。
【0135】
会話No.5は、職員からの、検査対象者の「理解」を評価するための質問であり、会話No.6は、顧客Cの応答である。意思決定能力判定部238(テキスト解析部232又は判定部233)は、顧客Cの回答の音声データが変換されたテキストデータに基づいて、顧客Cの「理解」が肯定であると判定することができる。
【0136】
会話No.7と会話No.8のセット、会話No.9と会話No.10のセットは、検査対象者の「論理的思考」のうちの「論理的一貫性」を評価するための質問である。
検査者の会話No.7のテキストの内容と検査対象者の会話No.8のテキストの内容はいずれもポジティブである。また、検査者の会話No.9のテキストの内容と検査対象者の会話No.10のテキストの内容はいずれもポジティブである。
【0137】
このため、意思決定能力判定部238(テキスト解析部232又は判定部233)は、職員-顧客Cの発話のテキストデータのポジティブ-ポジティブな対応から、顧客Cは「論理的思考」の能力がある(肯定)と判定することができる。
【0138】
会話No.9は、職員からの、検査対象者の選択の表明を評価するための質問であり、会話No.10は、顧客Cからの、それに対する回答である。会話No.9の職員の「投信信託などで運用してみてはいかがでしょうか?」との質問に対し、会話No.10で顧客Cは「投資信託で運用しよう」と答えている。このため、意思決定能力判定部238(テキスト解析部232又は判定部233)は、顧客Cの回答のテキストデータに基づいて、顧客Cは「選択の表明」ができている(肯定)であると判定することができる。
【0139】
会話No.1~No.10の時点で、顧客Cの「理解」「認識」「論理的思考」「選択の表明」がいずれも肯定であることが意思決定能力判定部238(テキスト解析部232又は判定部233)により判定されたので、この判定結果をもとに、顧客Cは検査対象者には金融商品(本例では投資信託)の利用を勧めるのに十分であると決定でき、次のステップとして、具体的な金融商品の紹介に移ることができる。
【0140】
このように、本実施形態の意思決定能力評価装置20によれば、商品購入やサービス利用の意思決定過程において、取引に応じた必要なリテラシーを確認できる質問及び回答候補を意思決定能力評価装置20に学習及び記憶しておくことにより、勧誘者が顧客である検査対象者に対し、検査端末10を用いてプロダクト利用の説明し、その様子を生体情報(音声データ)を記録しながら、リアルタイムで可視化(テキスト化、数値化)し、その場で顧客が意思決定能力を有しているかを逐次判定することができるため、検査者の検査技能を不問とし、検査対象者のリテラシーの有無をコンピュータの支援により迅速かつ高精度に確認することができる。
【0141】
【0142】
(2)目の動きのデータを用いた意思決定能力の評価
上記(1)のテキストデータを用いた意思決定能力の評価で説明した検査対象者の「理解」の評価に加えて、あるいはその代わりに、検査対象者の目の動きのデータを用いて、意思決定能力評価装置が、検査対象者の「理解」の評価をしてもよい。上記(1)のテキストデータを用いた意思決定能力の評価に加えて、目の動きのデータを用いた検査対象者の「理解」の評価も行えば、「理解」の評価の精度をさらに高めることができる。
【0143】
一実施形態では、検査者の質問が、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含む。意思決定能力評価装置20は、検査端末10の撮像装置18で検査対象者を時系列で撮影し、リアルタイムで検査端末10から送信される検査対象者の顔の画像データを、画像データ取得部235にて取得する。次に、画像データ取得部235にて取得された検査対象者の顔の画像データを、視線測定部236が解析し、目の動き(視線の軌跡)を抽出し、視線の軌跡を測定する。判定部233は、視線測定部236から受信した視線の軌跡の測定結果に基づいて、検査対象者の「理解」を判定する。つまり、判定部233は、商品又はサービスの利用に関する文書を読んでいる最中の検査対象者の目の動きから推定される視線の軌跡に基づいて、検査対象者の理解の評価として短期記憶(検査者の認知機能が低下しているか否か)を評価する。
【0144】
視線の軌跡を用いた短期記憶の有無の判定は以下の通りである。
【0145】
重要な事項が記載された文書を読解しようとしたとき、直近に記載されていた内容を記憶として蓄積し、論理構造を把握しながら、文字情報を処理して必要がある。しかしながら、認知症者の場合、直近の記憶から忘却することが多いため、読解を進めていくうちに、直前の記憶を忘却するため、前文へ遡って、再度読み直すことになる。
【0146】
図15(A),(B)に、利用規約40を読んでいるときの赤線で各時刻での視線測定部236により測定される被検査者の視線の軌跡を示す。利用規約40は紙の利用規約であってもよいし、表示部25に表示された電子データの利用規約であってもよい。目の動きから推定される視線位置を意思決定能力評価装置20の表示部25の画面上の座標位置(以下、視線位置)で記述する。
図15(A)に示すように、健常者の場合、視線位置の軌跡はほとんど遡ることがない。しかし、
図15(B)に示すように、認知機能が低下した人の場合、直前で示された内容を再度確かめるため、視線位置が一度通過した箇所に再度遡る。
【0147】
図15(A),(B)に示した被検査者の視線の軌跡をさらに解析するに際し、
図16(A)に示すように、原文を形態素ごとに解析し、形態素ごとに番号(以下、視線位置番号)を定める。形態素が存在する領域(以下、形態素領域)を座標位置等で定義する。視線位置が、いずれの各形態素の座標領域に含まれているか時系列に記録する。
図16(B)と
図16(C)は、視線位置番号の時間的な変化を示した模式図である。目の動きから推定される視線位置を意思決定能力評価装置20の表示部25の画面上の座標位置(以下、視線位置)で記述する。
図16(B)が健常者の場合、
図16(C)が認知機能が低下し、記憶が低下した人の視線位置の変化の模式図を示す。
【0148】
視線位置を用いた短期記憶の能力は、例えば、視線が一定の時間以上滞留した単語が、時期特異的な単語か否か、また、その単語と共起する単語を用いて、そのような単語を検査対象者が発話できるか否かで判定する。
【0149】
短期記憶の能力別に、時系列データを分類する。各データを多次元空間で表現する。少なくとも一つ以上あるクラスタの分離境界を関数として定義し、上記時系列データから、短期記憶の能力を推定できる。
【0150】
例えば、視線の軌跡の時系列データを、健常者、MCI患者、認知症患者の3つに分類する。健常者、MCI患者、認知症患者のそれぞれの視線の軌跡の時系列データは、意思決定能力評価装置20のデータ管理部234又は記憶部24に記憶される。これらのデータを、視線の軌跡の基準データとし、判定部233が基準データと検査対象者の視線の軌跡の時系列データとを比較することにより、検査対象者の理解の有無(短期記憶)を認知機能障害を有する患者の基準に基づいて評価することができる。
【0151】
なお、目の動きから推定される視線の軌跡に基づく認知機能の評価には、目の動きにより認知機能を評価する任意の方法を使用してもよい。例えばSci Rep. 2019 Sep 10;9(1):12932. doi: 10.1038/s41598-019-49275-xに記載されたアイトラッキング式認知機能評価法を参照されたい。
【0152】
(3)顔の向きのデータを用いた意思決定能力の評価
上記(1)のテキストデータを用いた意思決定能力の評価で説明した検査対象者の「理解」の評価に加えて、あるいはその代わりに、検査対象者の顔の向きのデータを用いて、意思決定能力評価装置が、検査対象者の「理解」の評価をしてもよい。上記(1)のテキストデータを用いた意思決定能力の評価に加えて、顔の向きのデータを用いた検査対象者の「理解」の評価も行えば、「理解」の評価の精度をさらに高めることができる。
【0153】
一実施形態では、検査者の質問が、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含む。意思決定能力評価装置20は、検査端末10の撮像装置18で検査対象者を時系列で撮影し、リアルタイムで検査端末10から送信される画像データを、画像データ取得部235にて取得する。次に、画像データ取得部235にて取得する。次に、画像データ取得部235にて取得された検査対象者の顔の画像データを、顔向き測定部237が解析し、顔の向きを測定する。判定部233は、顔向き測定部237から受信した顔の向きの測定結果に基づいて、検査対象者の「理解」を判定する。つまり、商品又はサービスの利用に関する質問を受けている最中の検査対象者の顔の向きの時間変化に基づいて、検査対象者の理解の評価として短期記憶(検査者の認知機能が低下しているか否か)を判定する。
【0154】
顔の向きの測定結果を用いた短期記憶の有無の判定は以下の通りである。
【0155】
一般に、認知機能が低下すると、表情がなくなり、眼前の出来事への興味が低下する。したがって、判定基準は適宜設定し得るが、例えば、検査端末に対して顔が正対しているときの向きを基準として、基準角度からの顔の向きのズレを回転角度で記述し、この回転角度に基づいて判定し得る。健常者は、顔の向きの角度が、基準角度に近似している時間が長い。これに対し、注意の強さが下がるにつれて、検査対象者の顔の向きが、基準角度からずれている時間が長くなる。
【0156】
撮影された動画の画像から、顔を抽出し、顔が端末に対し、正対しているときを基準とする。基準から、顔の向きのズレを回転角度で記述する。健常者の場合、重要な事項を説明しているときには、顔の向きの角度は基準角度に近似している時間が長くなる。しかし、注意の強さが下がるにつれ、顔の向きの角度が基準角度からずれている時間が長くなる。この特徴に着目する。顔向き測定部237は、単位時間あたりの顔の向きの角度の時間変化を時系列データで記述する。
【0157】
注意の能力別に、時系列データを分類し、各データを多次元空間で表現する。少なくとも一つ以上あるクラスタの分離境界を関数として定義することで、上記時系列データから、短期記憶の能力を推定できる。
【0158】
例えば、顔の向きの時系列データを、健常者、MCI患者、認知症患者の3つに分類する。健常者、MCI患者、認知症患者のそれぞれの顔の向きの時系列データは、意思決定能力評価装置20のデータ管理部234又は記憶部24に記憶される。これらのデータを、顔の向きの基準データとし、判定部233が基準データと検査対象者の顔の向きの時系列データとを比較することにより、検査対象者の理解の有無(短期記憶)を認知機能障害を有する患者の基準に基づいて評価することができる。
【0159】
なお、顔の表情に基づく認知機能の評価には、任意の方法を使用してもよい。例えば2021 Jan 25;13(2):1765-1772, DOI 10.18632/aging.202545に記載されたAIを用いた顔の表情による認知機能評価法を参照されたい。
【0160】
(4)本実施形態の意思決定能力評価システムを用いて実行される処理
ここで、本実施形態の意思決定能力評価システムを用いて実行される各処理について説明する。
【0161】
本実施の形態では、検査端末10を操作する検査者、例えば検査対象者を検査する医師等が、検査対象者に対して、あらかじめ用意された検査用の質問をする。検査用の質問については、例えば、上記に説明した通りである。
【0162】
質問に対する検査対象者の回答は、検査者又は検査対象者が検査端末10を操作するにより、録音される。
【0163】
図17は、本実施形態の検査端末10で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図17に示す処理は、検査者によって録音の開始が指示されると起動するプログラムとして、制御部13によって実行される。
【0164】
図17に示すように、検査端末10において、検査者又は検査対象者により録音の開始が指示されると、制御部13が、マイクロフォン17を介して入力される音声データを取得して制御部13が備えるメモリ又は記憶部104に記録することにより、検査対象者による発話音声を録音する(S10)。
【0165】
次に、検査者は、操作部11を操作して、検査対象者の検査開始を制御部13に指示する。検査開始の制御部13への指示は、検査対象者への質問を終え、検査対象者からの回答が得られた場合のみに行ってもよいし、検査が開始された後の任意の時点で行ってもよい。検査端末10の制御部13は、検査開始の指示があると判断すると(S20)と、録音した検査対象者の発話内容を示す音声データを通信接続部12を介して意思決定能力評価装置20へ送信する(S30)。
【0166】
意思決定能力評価装置20では、制御部23が、検査端末10から検査対象者の発話内容の音声データを受信すると、検査対象者の意思決定能力評価の処理を開始する。制御部23によって実行される判定処理については後述する。
【0167】
意思決定能力評価装置20が、上述の判定処理によって得た判定結果を通信接続部22を介して検査端末10へ送信すると、検査端末10では、制御部13が判定結果を受信し(S40)、判定結果を表示装置15(S50)へ出力する。例えば、制御部13は、検査対象者が商品又はサービスの利用の意思決定能力を有すると判定された場合は、その内容を表示装置15に表示する。制御部13は、検査対象者が商品又はサービスの利用の意思決定能力を有しないと判定された場合は、その内容を表示装置15に表示する。これによって、検査者は、検査対象者が商品又はサービスの利用の意思決定能力を有するか否かを把握することができる。
【0168】
図18は、本実施形態の意思決定能力評価装置20で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図18に示す処理は、検査端末10から検査対象者の発話内容の音声データを受信すると起動するプログラムとして、制御部23によって実行される。
【0169】
検査対象者は、商品又はサービスの利用に関する質問を受けている最中に、音声で回答する。意思決定能力評価装置20は、制御部23が、検査端末10から検査対象者の発話内容の音声データを受信することにより、検査対象者が発話した音声データを取得する(S110)。
【0170】
次に、変換部231は、音声データ取得部230により取得された検査者の発話の音声データと検査対象者の発話の音声データの音声認識を行い、個々の発話を特定できる形で、テキストデータに変換する(S120)。次に、判定部233は、変換部231により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する(S130)。検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力の、意思決定能力評価装置20による判定の詳細については、「2.意思決定能力評価装置又は意思決定能力評価システムによる検査対象者の評価」の「(1)テキストデータを用いた意思決定能力の評価」「(2)目の動きのデータを用いた意思決定能力の評価」「(3)顔の向きのデータを用いた意思決定能力の評価」で詳細に説明した通りである。
【0171】
次に、制御部23は、判定処理によって得た判定結果を通信接続部22を介して検査端末10へ送信する(S140)。その後、処理を終了する。
【0172】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)制御部23は、検査端末10から、検査対象者の商品又はサービスの利用に関する質問に対する発話または回答を音声データとして取得し、検査対象者の商品又はサービスの利用における意思決定能力を判定するようにした。質問が検査対象者の商品又はサービスの利用に関する質問であるため、単なる認知機能の診断とは異なり、検査対象者の商品又はサービスの利用に応じた検査対象者の意思決定能力を、迅速かつより高精度に評価することができる。
(2)制御部23が「理解」、「認識」、「論理的思考」、及び「選択の表明」の有無を判定することにより、検査対象者が商品又はサービスの利用に関する意思決定能力を有するか否かをより高精度に判定するようにした。これによって、単なる認知機能の診断とは異なり、商品又はサービスの利用における意思決定能力をより高精度に評価することができる。
(3)本実施形態の商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価する意思決定能力評価は、検査対象者の生体情報(音声、目の動き、顔の向き)を用いて行っている。検査対象者は質問に口頭で答えるだけで検査を行うことができる。このため、検査者の訓練は不要であり、意思決定能力評価装置20による自動的な検査を行い、検査者によるばらつきが軽減又は排除された検査結果を得ることができる。
(4)本実施形態の商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価する意思決定能力評価は、検査対象者の生体情報(音声、目の動き、顔の向き)を用いて行っている。検査対象者は質問に口頭で答えるだけで検査を行うことができる。このため、書類への記述を要する検査と比べて、検査対象者の負担を軽減することができる。
(5)制御部23は、検査対象者が商品又はサービスの利用に対する意思決定能力を有するか否かの判定結果を検査端末10へ出力する。これによって検査対象者、検査者、又はその両方が、検査対象者が意思決定能力を有するか否かを把握することができる。
【0173】
本発明は、以上説明してきた実施形態に限られず、以下のような種々の変形が可能である。
(1)商品又はサービスの利用に関する質問は、検査者が発する場合に限られず、他の者が発してもよいし、あるいは意思決定能力評価装置20のデータ管理部234又は記憶部24に記憶されていて、適時に制御部23の命令により自動読み出しされてもよい。
(2)上述の実施形態では、検査端末10と意思決定能力評価装置20とが通信接続されており、意思決定能力評価装置20の制御部23は、検査端末10から検査対象者の発話音声データを受信して、検査対象者の意思決定能力を行っていた。しかしながら、意思決定能力評価装置20を単独で用いてもよい。例えば、
図19に示すように、意思決定能力評価装置20が操作部21、スピーカー2、マイクロフォン27、撮像装置28とを備える。検査者が意思決定能力評価装置20を操作して、意思決定能力評価装置20に検査対象者の発話音声データを入力させ、判定処理の開始を指示するようにし、制御部23が、判定結果を意思決定能力評価装置20の表示装置25へ出力して表示するようにしてもよい。意思決定能力評価装置20を単体で用いることにより、スタンドアロン型の装置として利用することができる。
(3)
図20に示すように、検査対象者が検査端末10を操作し、検査者は検査端末10とは離れた第2の検査端末30を備え、これによって、インターネットなどの通信回線を介して、検査端末10と第2の検査端末30とは互いに通信接続できるとともに、意思決定能力評価装置20とも通信接続することで、クライアントサーバー型やクラウド型の判定システムを構築することもできる。第2の検査端末30は、検査端末10に関して説明したような、操作部31と、通信接続部32と、制御部33と、記憶部34と、ディスプレイ等の表示装置35と、スピーカー36と、マイクロフォン37と、撮像装置38とを備えることができ、検査端末10と第2の検査端末30は音声及び画像を通じて対話を行うことができる。
(4)検査対象者が商品又はサービスの利用における意思決定能力を有するかどうかの判断基準は、商品又はサービスの内容に応じてその商品又はサービスの分野の当業者が適時設定してよい。例えば、金融商品の購入のための判定には、閾値として商品ごとに異なる値を設定するようにしてもよい。
(5)判定部233を省略し、テキスト解析部232とが、判定部233が行う判定処理を行う構成としてもよい。
(6)意思決定能力評価装置20が、「理解」、「認識」、「論理的思考」、並びに「選択の表明」を、全部評価することが意思決定能力の評価の精度の点で好ましいが、4つのすべてを評価しなくてもよい。例えば、意思決定能力評価装置20が「理解」、「認識」、及び「論理的思考」の3つを評価し、「選択の表示」は人の検査者が評価してもよい。あるいは、意思決定能力評価装置20が、「理解」、「認識」、および「論理的思考」のうちの少なくとも2つを評価してもよい。あるいは、意思決定能力評価装置20が「理解」および「認識」のうちの1つと、「論理的思考」とを評価してもよい。あるいは、意思決定能力評価装置20が、「理解」、「論理的思考」、及び「選択の表明」の3つを評価してもよいし、「理解」と「論理的思考」の2つや、「認識」と「論理的思考」の2つを評価してもよい。意思決定能力評価装置20が「理解」、「認識」、又は「論理的思考」のいずれか1つを評価することもあり得る。
【0174】
(7)「論理的思考」の(1)結果についての論理的思考及び推測、(2)比較する論理的思考、(3)論理的一貫性は、全部評価することが意思決定能力の評価の精度の点で好ましいが、3つのすべてを評価しなくてもよい。(1)~(3)のうちのいずれか1つ又は2つを評価してもよい。
(8)抽出されたテキストの一部(単語やフレーズ)を記憶部24に記憶しておき、制御部23が、これを意思決定能力の有無や程度の判定結果と共に、表示部25に表示又はチェックシートや面談録などの紙媒体に印刷するようにしてもよい。
(9)意思決定能力評価装置20による判定結果から、例えば検査対象者である顧客が利用を希望する商品又はサービスの利用(例えば各種取引)に必要なリテラシーに基づき、顧客に強化すべき流動性知能を伝え、顧客がトレーニングを図ることで、取引能力を自主的に強化でき、長期に渡り、意思決定能力を維持できるようにしてもよい。
(10)意思決定能力評価装置20による判定結果を、検査者と検査対象者である顧客が双方で共有し、モバイル端末などで持ち運びできるようにし、他勧誘者との取引で利用できるようにすることもできる。
(11)ある商品の勧誘から購入の決定までの過程以外の目的にも、本発明の意思決定能力評価装置、意思決定能力評価システム、及び意思決定能力評価方法を用いてもよい。
(12)本発明の意思決定能力評価装置、意思決定能力評価システム、又は意思決定能力評価方法を用いてある意思決定能力評価にて検査対象者から収集されたデータを、別の意思決定能力評価にて検査対象者から収集されたデータとともに、将来の本発明の意思決定能力評価装置、意思決定能力評価システム、又は意思決定能力評価方法のために用いてもよい。
(13)上記(12)で連携されたデータを意思決定能力評価装置又は意思決定能力評価システムのいずれかの装置がログとして保存しておき、さらにこれを商品内容、判定結果、及び/又はインシデントと関連付け、かかるデータセットを用いて、商品別の取引の複雑さや難解さを定量化することができる。
(14)上記(12)で連携されたデータを意思決定能力評価装置又は意思決定能力評価システムのいずれかの装置がログとして保存しておき、さらにこれを商品内容、判定結果、及び/又はインシデントと関連付け、例えば判定結果が否定である場合には訴訟リスク等と意思決定能力評価装置を学習させておくことで、かかるデータセットを用いて訴訟リスク予測を推定することができる。
【符号の説明】
【0175】
20…意思決定能力評価装置、230…音声データ取得部、231…変換部、238…意思決定能力判定部。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置において、
前記検査対象者の音声データは、
前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答、および
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
のうちの少なくとも2つを含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の理解を判定することを含み、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の認識を判定することを含み、
及び
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、意思決定能力評価装置。
【請求項2】
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の選択の表明を判定することを含む、請求項1に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項3】
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、商品又はサービスの利用に関連する対話における検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中に、共起される頻度が高い単語同士が共起されている場合に、検査対象者が理解していると判定することを含む、請求項1または2に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項4】
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、時事に関連するテキストデータで学習された機械学習モデルを用いて作成された、特定の分野の第1の表現と、前記表現と共に出現する頻度が高い第2の表現とを含む文章のうちの第2の表現の穴埋め問題である、請求項1または2に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項5】
音声データ取得部は、検査対象者の認識を評価するための質問と、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答とを含み、
前記意思決定能力判定部は、
前記検査対象者の認識を評価するための質問の音声データを変換したテキストと、前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキストとに、少なくとも一つ同じ単語が共通して出現していること、
前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキスト中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせが、前記検査対象者の認識を評価するための質問中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせと異なっていること、及び
検査対象者に関連する単語が前記検査対象者の回答を変換したテキスト中に出現していること
を判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項6】
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータが、比較を表す単語、又は類似した事物の提示、並列、もしくは列挙を示す単語を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項7】
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の理解を評価するための質問を変換したテキストデータと、それに対する検査対象者の回答を変換したテキストデータとの内容が、ポジティブかネガティブであるかに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項8】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置において、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、商品又はサービスの利用に関連する対話における検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中に、共起される頻度が高い単語同士が共起されている場合に、検査対象者が「理解」していると判定することを含む、意思決定能力評価装置。
【請求項9】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置において、
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、時事に関連するテキストデータで学習された機械学習モデルを用いて作成された、特定の分野の第1の表現と、前記表現と共に出現する頻度が高い第2の表現とを含む文章のうちの第2の表現の穴埋め問題である、意思決定能力評価装置。
【請求項10】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置において、
音声データ取得部は、検査対象者の認識を評価するための質問と、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答とを含み、
前記意思決定能力判定部は、
前記検査対象者の認識を評価するための質問の音声データを変換したテキストと、前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキストとに、少なくとも一つ同じ単語が共通して出現していること、
前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキスト中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせが、前記検査対象者の認識を評価するための質問中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせと異なっていること、及び
検査対象者に関連する単語が前記検査対象者の回答を変換したテキスト中に出現していること
を判定する、意思決定能力評価装置。
【請求項11】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置において、
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータが、比較を表す単語、又は類似した事物の提示、並列、もしくは列挙を示す単語を含む、意思決定能力評価装置。
【請求項12】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価装置であって、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
を備える意思決定能力評価装置において、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の理解を評価するための質問を変換したテキストデータと、それに対する検査対象者の回答を変換したテキストデータとの内容が、ポジティブかネガティブであるかに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、意思決定能力評価装置。
【請求項13】
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価装置は、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、視線の軌跡を測定する視線測定部をさらに含み、
前記意思決定能力判定部は、前記視線測定部から受信した視線の軌跡の測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する請求項1に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項14】
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価装置は、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、顔の向きを測定する顔向き測定部をさらに含み、
前記意思決定能力判定部は、前記顔向き測定部から受信した顔の向きの測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する請求項1に記載の意思決定能力評価装置。
【請求項15】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するための意思決定能力評価システムであって、検査端末と、前記検査端末と通信接続された請求項1~14のいずれかに記載の意思決定能力評価装置とを備え、
前記意思決定能力評価装置の音声データ取得部は、前記検査端末から受信した商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する、意思決定能力評価システム。
【請求項16】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価プログラムであって、コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラムにおいて、
前記検査対象者の音声データは、
前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答、および
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答、
のうちの少なくとも2つを含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の理解を判定することを含み、
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の認識を判定することを含み、
及び
前記検査対象者の音声データが前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含む場合には、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、意思決定能力評価プログラム。
【請求項17】
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、前記検査対象者の選択の表明を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータに基づいて、検査対象者の選択の表明を判定することを含む、請求項16に記載の意思決定能力評価プログラム。
【請求項18】
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、商品又はサービスの利用に関連する対話における検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中に、共起される頻度が高い単語同士が共起されている場合に、検査対象者が理解していると判定することを含む、請求項16または17に記載の意思決定能力評価プログラム。
【請求項19】
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、時事に関連するテキストデータで学習された機械学習モデルを用いて作成された、特定の分野の第1の表現と、前記表現と共に出現する頻度が高い第2の表現とを含む文章のうちの第2の表現の穴埋め問題である、請求項16または17に記載の意思決定能力評価プログラム。
【請求項20】
音声データ取得部は、検査対象者の認識を評価するための質問と、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答とを含み、
前記意思決定能力判定部は、
前記検査対象者の認識を評価するための質問の音声データを変換したテキストと、前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキストとに、少なくとも一つ同じ単語が共通して出現していること、
前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキスト中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせが、前記検査対象者の認識を評価するための質問中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせと異なっていること、及び
検査対象者に関連する単語が前記検査対象者の回答を変換したテキスト中に出現していること
を判定する、請求項16~19のいずれか一項に記載の意思決定能力評価プログラム。
【請求項21】
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータが、比較を表す単語、又は類似した事物の提示、並列、もしくは列挙を示す単語を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の意思決定能力評価プログラム。
【請求項22】
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、前記検査対象者の理解を評価するための質問を変換したテキストデータと、それに対する検査対象者の回答を変換したテキストデータとの内容が、ポジティブかネガティブであるかに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の意思決定能力評価プログラム。
【請求項23】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価プログラムであって、コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラムにおいて、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、商品又はサービスの利用に関連する対話における検査対象者の発話の音声データを変換したテキスト中に、共起される頻度が高い単語同士が共起されている場合に、検査対象者が「理解」していると判定することを含む、意思決定能力評価プログラム。
【請求項24】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価プログラムであって、コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラムにおいて、
前記検査対象者の音声データは、検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、時事に関連するテキストデータで学習された機械学習モデルを用いて作成された、特定の分野の第1の表現と、前記表現と共に出現する頻度が高い第2の表現とを含む文章のうちの第2の表現の穴埋め問題である、意思決定能力評価プログラム。
【請求項25】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価プログラムであって、コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラムにおいて、
音声データ取得部は、検査対象者の認識を評価するための質問と、前記検査対象者の認識を評価するための質問に対する検査対象者の回答とを含み、
前記意思決定能力判定部は、
前記検査対象者の認識を評価するための質問の音声データを変換したテキストと、前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキストとに、少なくとも一つ同じ単語が共通して出現していること、
前記検査対象者の回答の音声データを変換したテキスト中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせが、前記検査対象者の認識を評価するための質問中の、前記共通して出現している単語と別の単語との共起の組み合わせと異なっていること、及び
検査対象者に関連する単語が前記検査対象者の回答を変換したテキスト中に出現していること
を判定する、意思決定能力評価プログラム。
【請求項26】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価プログラムであって、コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラムにおいて、
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の論理的思考を評価するための質問に対する検査対象者の回答を変換したテキストデータが、比較を表す単語、又は類似した事物の提示、並列、もしくは列挙を示す単語を含む、意思決定能力評価プログラム。
【請求項27】
商品又はサービスの利用における検査対象者の意思決定能力を評価するために使用される意思決定能力評価プログラムであって、コンピュータを、
商品又はサービスの利用に関連する対話から、検査対象者の音声データを取得する音声データ取得部と、
前記音声データ取得部により取得された検査対象者の音声データをテキストデータに変換する変換部と、
前記変換部により変換されたテキストデータに基づいて、検査対象者の商品又はサービスの利用の意思決定能力を判定する意思決定能力判定部と、
として機能させる意思決定能力評価プログラムにおいて、
前記意思決定能力判定部による意思決定能力の判定は、前記検査対象者の理解を評価するための質問を変換したテキストデータと、それに対する検査対象者の回答を変換したテキストデータとの内容が、ポジティブかネガティブであるかに基づいて、検査対象者の論理的思考を判定することを含む、意思決定能力評価プログラム。
【請求項28】
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価プログラムは、前記コンピュータを、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、視線の軌跡を測定する視線測定部と
としてさらに機能させ、
前記意思決定能力判定部は、前記視線測定部から受信した視線の軌跡の測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する請求項16に記載の意思決定能力評価プログラム。
【請求項29】
前記検査対象者の音声データは、前記検査対象者の理解を評価するための質問に対する検査対象者の回答を含み、
前記検査対象者の理解を評価するための質問は、商品又はサービスの利用に関連する文書を前記検査対象者に読ませる指示を含み、
前記意思決定能力評価プログラムは、前記コンピュータを、
検査対象者の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された検査対象者の顔の画像データを解析して、顔の向きを測定する顔向き測定部と
としてさらに機能させ、
前記意思決定能力判定部は、前記顔向き測定部から受信した顔の向きの測定結果に基づいて、検査対象者の理解を判定する請求項16に記載の意思決定能力評価プログラム。