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特開2023-109354トレッド部材、押出機用口金及び空気入りタイヤの製造方法
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  • 特開-トレッド部材、押出機用口金及び空気入りタイヤの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109354
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】トレッド部材、押出機用口金及び空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/52 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B29D30/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010816
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】水谷 嘉孝
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VD03
4F215VK32
4F215VM06
(57)【要約】
【課題】トレッドアンダー貼り成形工法において、トレッド部材のトレーへの密着を抑制できる、トレッド部材、押出機用口金及び空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】トレッド部材1は、路面に接地するプロファイル面2と、円筒状のベルトドラム40に貼り付けられる貼付け面3と、プロファイル面2の幅方向中央部に位置するベース部2aと、プロファイル面2をベース部2aから隆起させることで形成されて、ベース部2aよりも厚さが大きい肉厚部2bと、を備え、肉厚部2bには、タイヤ径方向外側に突出する突起5が複数設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接地するプロファイル面と、
円筒状のベルトドラムに貼り付けられる貼付け面と、
前記プロファイル面の幅方向中央部に位置するベース部と、
前記プロファイル面を前記ベース部から隆起させることで形成されて、前記ベース部よりも厚さが大きい肉厚部と、を備え、
前記肉厚部には、タイヤ径方向外側に突出する突起が複数設けられているトレッド部材。
【請求項2】
前記突起は、最も厚さが大きくなる最厚部の厚さの70%以上の厚さを有する領域に設けられている請求項1に記載のトレッド部材。
【請求項3】
前記突起は、最も厚さが大きくなる最厚部に設けられた基準突起を基準に、幅方向両側に所定の間隔で6個以上設けられている請求項1に記載のトレッド部材。
【請求項4】
径方向外側で路面に接地するキャップゴム領域と、前記キャップゴム領域よりも幅方向外側に位置するウィングゴム領域とを備え、
前記突起は、前記ウィングゴム領域にも設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトレッド部材。
【請求項5】
前記突起の断面形状は、三角形状である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトレッド部材。
【請求項6】
前記突起の頂点間の間隔は、前記突起の幅に対して同等以上6倍以下に設定されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のトレッド部材。
【請求項7】
前記突起の頂点間の間隔は、3mm以上6mm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のトレッド部材。
【請求項8】
前記突起の前記断面形状において、
前記幅方向の一方側に向かって第1傾斜角度で傾斜する第1傾斜辺と、
前記幅方向の他方側に向かって第2傾斜角度で傾斜する第2傾斜辺と
を有し、
前記第1傾斜角度および前記第2傾斜角度は、60°以上90°未満に設定されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のトレッド部材。
【請求項9】
前記複数の突起は、前記貼付け面から前記突起の頂点までの高さが一定に設定されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のトレッド部材。
【請求項10】
開口上面と、
開口底面と、
前記開口上面の幅方向中央部に位置するベース部と、
前記開口上面を前記ベース部から上方に窪ませることで形成されて、前記ベース部よりも前記開口底面からの離間距離が大きい肉厚部形成部と、を備え、
前記肉厚部形成部には、切欠きが複数設けられている、押出機用口金。
【請求項11】
路面に接地するプロファイル面と、
円筒状のベルトドラムに貼り付けられる貼付け面と、
前記プロファイル面の幅方向中央部に位置するベース部と、
前記プロファイル面を前記ベース部から隆起させることで形成されて、前記ベース部よりも厚さが大きい肉厚部と、を備え、
前記肉厚部には、タイヤ径方向外側に突出する突起が複数設けられているトレッド部材を準備し、
前記トレッド部材の前記プロファイル面をトレー上に載置し、
前記ベルトドラムを前記トレー上の前記トレッド部材に押し当てながら回転させて、前記トレッド部材を前記ベルトドラムに巻き付けてトレッドバンドを形成し、
径方向内側に配置されたカーカスプライを含むカーカスバンドを膨出させて、前記トレッドバンドに貼り合わせて生タイヤを形成し、
前記生タイヤをタイヤ加硫金型内で加硫成型することを含む、空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部材、押出機用口金及び空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般に、インナーライナ、カーカスプライ、ビードコア、ビードフィラ、サイドウォールゴム、ベルト部材、トレッド部材などの複数のタイヤ構成部材をバンドドラムおよびベルトドラム等の成形ドラム上に積層させて生タイヤを製造し、その後、生タイヤをモールド内にて加熱及び加圧して加硫成形することにより製造される。
【0003】
生タイヤは以下のように成形する。カーカスプライ等のバンド部材をバンドドラムに巻き付けてカーカスバンドを成形する。一方で、ベルト、トレッド部材等のバンド部材をベルトドラムに巻き付けてトレッドバンドを成形する。次いで、カーカスバンドの外側にトレッドバンドを位置させて、カーカスバンドをトロイダル状に外径側に膨出させてトレッドバンドの内周面に結合させ、カーカスバンドに組付けられたビードを包み込むようにカーカスバンドを折り返すことによって、生タイヤが成形される。
【0004】
特許文献1には、トレッド部材をベルトドラムの下方から貼り付ける、いわゆるトレッドアンダー貼り成形工法が開示されている。トレッドアンダー貼り成形工法では、トレッド部材は、ベルトドラムに貼り付けられる貼付け面が上側となるようにトレー上に載置される。ベルトドラムをトレー上のトレッド部材に押し当てながら回転させることで、トレッド部材がベルトドラムに巻き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-74890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トレッドアンダー貼り成形工法では、ベルトドラムをトレー上のトレッド部材に押し当てながら回転させるトレッド部材が、プロファイル面においてトレーに密着しやすい。その結果、トレッド部材をベルトドラムに巻き付ける際に、トレッド部材が均一に巻き付けられず、タイヤのユニフォミティが悪化する虞がある。
【0007】
本発明は、トレッドアンダー貼り成形工法において、トレッド部材のトレーへの密着を抑制できる、トレッド部材、押出機用口金及び空気入りタイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、路面に接地するプロファイル面と、円筒状のベルトドラムに貼り付けられる貼付け面と、前記プロファイル面の幅方向中央部に位置するベース部と、前記プロファイル面を前記ベース部から隆起させることで形成されて、前記ベース部よりも厚さが大きい肉厚部と、を備え、前記肉厚部には、タイヤ径方向外側に突出する突起が複数設けられているトレッド部材を提供する。
【0009】
本発明によれば、トレッド部材をトレッドアンダー貼り成形工法でベルトドラムに巻き付けるときに、トレー上にプロファイル面が当接するように載置されたトレッド部材は、自重によって特に、肉厚部がトレーに張り付きやすい。また、肉厚部は、ベース部に比べて厚いので、トレッド部材をベルトドラムに巻き付けるときに、ベルトドラムにより強く押圧されやすいことからトレーに張り付きやすい。これに対して、本願発明のトレッド部材には、トレーに対向するプロファイル面側に突起が設けられているので、突起が設けられていない場合に比べて、トレッド部材のトレーに対する接地面積が低減され、トレッド部材のトレーへの密着を抑制できる。
【0010】
前記突起は、最も厚さが大きい最厚部の厚さの70%以上の厚さを有する領域に設けられてもよい。
【0011】
本構成によれば、トレー密着防止の突起を適切な領域に設けることができる。より詳しくは、70%未満の部位に設けた場合、突起を設ける領域が拡大し、厚さが薄い部分においては所定のプロファイル面が得られなくなる。
【0012】
前記突起は、最も厚さが大きくなる最厚部に設けられた基準突起を基準に、幅方向両側に所定の間隔で6個以上設けられてもよい。
【0013】
本構成によれば、トレー密着防止の突起を適切な領域に設けることができる。6個未満の場合、接触面積の低減が図りにくい。
【0014】
径方向外側で路面に接地するキャップゴム領域と、前記キャップゴム領域よりも幅方向外側に位置するウィングゴム領域とを備え、
前記突起は、前記ウィングゴム領域にも設けられていてもよい。
【0015】
本構成によれば、ウィングゴム領域に用いられるゴムは、一般に、キャップゴム領域に用いられるゴムよりも粘着性が高い。このためトレッド部材の保管中にウィングゴム領域が自重でトレーに接地し、そのままトレーに密着してしまう現象が起こり易い。ウィングゴム領域の垂れ下がりによって、トレッド部材のプロファイル面がトレーに密着しやすくなるが、ウィングゴム領域にも突起が設けられているので、ウィングゴム領域の垂れ下がりが生じた場合も、接地面積の低減によりトレッド部材のトレーに対する密着を抑制できる。
【0016】
前記突起の断面形状は、三角形状であってもよい。
【0017】
本構成によれば、例えば、突起の断面形状が矩形状である場合に比べて、トレーに対する接触面積が低減され、密着を抑制できる。
【0018】
前記突起の頂点間の間隔は、前記突起の幅に対して同等以上6倍以下に設定されてもよい。
【0019】
本構成によれば、突起の幅に対する頂点間の間隔が適切に設定されているので、突起のトレーに対する接触面積の低減が図られ、密着を抑制できる。突起の頂点間の間隔が、突起の幅に対して狭い場合、突起の底辺同士の幅方向位置がオーバラップして、トレッド部材の表面高さが高くなり、所望のプロファイル面が得られない。突起の頂点間の間隔が、突起の幅に対して6倍を超過すると、トレッド部材が突起間においてトレーに密着して接触面積の低減が図りにくい。
【0020】
前記突起の頂点間の間隔は、3mm以上6mm以下である。
【0021】
本構成によれば、突起の頂点間の間隔が3mm以上6mm以下であるので、トレッド部材のトレーに対する接触面積を低減できる。突起の頂点間の間隔が3mm未満であるとトレッド厚みに対する突起の断面積割合が高くなり、目標となるレイアウトゴム厚みを確保することが難しくなる。突起の頂点間の間隔が6mmを超過すると、トレッド部材が突起間においてトレーに密着して接地面積の低減が図りにくい。
【0022】
前記突起の前記断面形状において、前記幅方向の一方側に向かって第1傾斜角度で傾斜する第1傾斜辺と、前記幅方向の他方側に向かって第2傾斜角度で傾斜する第2傾斜辺とを有し、前記第1傾斜角度および前記第2傾斜角度は、60°以上90°未満に設定されてもよい。
【0023】
本構成によれば、第1傾斜角度および前記第2傾斜角度が60°以上90°未満であるので、トレッド部材のトレーに対する接触面積を低減できる。第1傾斜角度及び第2傾斜角度が60°未満であると、突起の突出高さが低く接触面積を低減しにくい。
【0024】
前記複数の突起は、前記貼付け面から前記突起の頂点までの高さが一定に設定されてもよい。
【0025】
本構成によれば、プロファイル面の形状によって、プロファイル面からトレーまでの高さが変化する場合においても、貼付け面からトレーまでの高さを一定にすることができる。したがって、例えば、突起のプロファイル面からの高さを一定にした場合に比べて、トレーにトレッド部材を載置したときの所定の突起に対して、過剰に圧力が作用することが抑制できる。接地圧を分散させることで、トレーに対するトレッド部材の密着を緩和できる。
【0026】
本発明の他の態様は、開口上面と、開口底面と、前記開口上面の幅方向中央部に位置するベース部と、前記開口上面を前記ベース部から上方に窪ませることで形成されて、前記ベース部よりも前記開口底面からの離間距離が大きい肉厚部形成部と、を備え、前記肉厚部形成部には、切欠きが複数設けられている、押出機用口金を提供する。
【0027】
本発明によれば、上記トレッド部材と同様の効果が得られる。
【0028】
本発明の他の態様は、路面に接地するプロファイル面と、円筒状のベルトドラムに貼り付けられる貼付け面と、前記プロファイル面の幅方向中央部に位置するベース部と、前記プロファイル面を前記ベース部から隆起させることで形成されて、前記ベース部よりも厚さが大きい肉厚部と、を備え、前記肉厚部には、タイヤ径方向外側に突出する突起が複数設けられているトレッド部材を準備し、前記トレッド部材の前記プロファイル面をトレー上に載置し、前記ベルトドラムを前記トレー上の前記トレッド部材に押し当てながら回転させて、前記トレッド部材を前記ベルトドラムに巻き付けてトレッドバンドを形成し、径方向内側に配置されたカーカスプライを含むカーカスバンドを膨出させて、前記トレッドバンドに貼り合わせて生タイヤを形成し、前記生タイヤをタイヤ加硫金型内で加硫成型することを含む、空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【0029】
本発明によれば、上記トレッド部材と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、トレッドアンダー貼り成形工法において、トレッド部材のトレーへの密着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るトレッド部材の押出機用口金の正面図。
図2図1のトレッド部材の押出機用口金の幅方向一方側の要部拡大正面図。
図3】トレッド部材の斜視図。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図。
図5図3のIV-IV線に沿った断面図において、トレッド部材のゴムの界面を示す説明図。
図6】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法を示す工程図。
図7】成形ドラムにトレッド部材を巻回する工程を概略的に示す図。
図8図7のVIII-VIII線に沿った断面図。
図9】生タイヤを概略的に示す斜視図。
図10図8の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
図1は本実施形態におけるトレッド部材1を製造する押出機(図示せず)の押出機用口金(以下、「口金」ともいう)20の正面図である。口金20は、横長の開口21を有している。開口21は、押出方向に直交する左右方向(幅方向)に延びる開口上面22及び開口底面23と、上下方向に延びる一対の開口側面24とを有している。開口上面22は、開口底面23より左右方向に短い。一対の開口側面24は、開口上面22の左右両側部と開口底面23の左右両側部とをそれぞれ接続している。開口21は、左右方向における中心線CLに対して左右対称となる略台形状に形成されている。ゴム材料は、口金20の開口21を通して略台形状の断面形状で押し出される。
【0034】
開口上面22は、幅方向中央部に位置するベース部22aと、幅方向両側に位置する肉厚部形成部22bとを有する。肉厚部形成部22bは、ベース部22aよりも上方に窪んで、ベース部22aよりも開口底面23から離間している。
【0035】
図2に示すように、肉厚部形成部22bは、開口底面23からの離間距離が最も大きくなる最厚部形成部22cを有する。本実施形態において、肉厚部形成部22bは、最厚部形成部22cの開口底面23からの離間距離H1の70%以上の厚さH2を有する領域R1である。
【0036】
肉厚部形成部22bには、上方に窪んでおり押出方向に延びる複数の切欠き25が形成されている。本実施形態では、切欠き25は例えば6個設けられているが、切欠き25は6個以上設けられていればよい。切欠き25は、例えば開口上面22を押出方向に切り取ることによって断面三角形状に形成されている。切欠き25は、最厚部形成部22cに設けられた基準切欠き26を基準に、中心線CLを挟んで所定の間隔で幅方向の両側に均等に設けられている。
【0037】
本実施形態では、基準切欠き26の幅方向位置は、基準切欠き26の頂点26aが、最厚部形成部22cの幅方向位置と一致するように設定されている。切欠き25の頂点25a間の間隔W2は、切欠き25の幅W1に対して同等以上6倍以下に設定されている。本実施形態においては、切欠き25の頂点25a間の間隔W2は、切欠き25の幅W1に対して2倍に設定されている。より詳しくは、切欠き25の幅W1は1.5mm、切欠き25の頂点25a間の間隔W2は3mmで設定されている。これに限定されるものではなく、切欠き25の頂点25a間の間隔W2は3mm以上6mm以下で設定されていてもよい。また、頂点25a間の間隔W2が3mmの場合、切欠き25の幅は、1.5mm以下に設定されていればよい。
【0038】
切欠き25は、押出方向に直交する断面形状において、幅方向の中心線側で傾斜する第1傾斜辺25bと、幅方向の外側に向かって傾斜する第2傾斜辺25cとを有する。開口上面22に対する第1傾斜辺25bの第1傾斜角度K1及び第2傾斜辺25cの第2傾斜角度K2は、60°以上90°未満に設定されている。
【0039】
切欠き25は、開口底面23から切欠き25の頂点25aまでの高さH3が、一定になるように形成されている。より詳しくは、肉厚部形成部22bは、最厚部形成部22cを中心に幅方向両側に開口底面23からの離間距離(窪み量)が小さくなっているので、基準切欠き26の高さ(上面22から頂点26aまでの距離)が他の切欠き25よりも低い。肉厚部形成部22bは、最厚部形成部22cを中心に幅方向両側にむかって下方に傾斜しているので、最厚部形成部22cから最も離れた切欠き25の高さが最も高くなる。
【0040】
図3は、トレッド部材1の斜視図である。トレッド部材1は、口金20の開口21の形状に対応する断面形状を有しており、開口上面22により形成されたプロファイル面2と、開口底面23により形成された貼付け面3と、一対の開口側面24により形成された一対のトレッド側面4とを有している。図3において、プロファイル面2及び貼付け面3は左右方向(幅方向)に延びている。プロファイル面2は、貼付け面3よりも左右方向に短い。一対のトレッド側面4は、プロファイル面2の左右両側部と貼付け面3の左右両側部とを上下方向に接続している。トレッド部材1は、横長の断面形状で押出方向に延びる長尺状の押出形材である。プロファイル面2には、押出方向に延びる複数の突起5が形成されている。
【0041】
図4に示すように、トレッド部材1は、プロファイル面2の幅方向中央部に位置するベース部2aと、ベース部2aの幅方向両側に位置する肉厚部2bとを有する。肉厚部2bは、プロファイル面2をベース部2aから隆起させることで形成されて、ベース部2aよりも貼付け面3からの厚さが大きくなっている。換言すると、肉厚部2bは、ベース部2aよりも上方に膨出している。
【0042】
肉厚部2bは、貼付け面3からの厚さが最も大きくなる最厚部2cを有する。本実施形態において、肉厚部2bは、最厚部2cの貼付け面3からの厚さH11の70%以上の厚さH12を有する領域R2である。
【0043】
肉厚部2bには、上方に突出しており押出方向に延びる複数の突起5が形成されている。本実施形態では、突起5は例えば6個設けられているが、突起5は6個以上設けられていればよい。突起5は、例えば断面三角形状に形成されている。突起5は、最厚部2cに設けられた基準突起6を基準に、所定の間隔で幅方向の両側に均等に設けられている。
【0044】
本実施形態では、基準突起6の幅方向位置は、基準突起6の頂点6aが、最厚部2cの幅方向位置と一致するように設定されている。突起5の頂点5a間の間隔W12は、突起5の幅W11に対して同等以上6倍以下に設定されている。本実施形態においては、突起5の頂点5a間の間隔W12は、突起5の幅W11に対して2倍に設定されている。より詳しくは、突起5の幅W11は1.5mm、突起5の頂点5a間の間隔W12は3mmで設定されている。突起5の幅W11及び突起5の頂点5a間の間隔W12は、これに限定されるものではなく、突起5の頂点5a間の間隔W12は3mm以上6mm以下で設定されていてもよい。また、頂点25a間の間隔W2が3mmの場合、突起5の幅W11は、3mm以下に設定されていればよい。
【0045】
突起5は、押出方向に直交する断面形状において、幅方向の一方側に向かって傾斜する第1傾斜辺5bと、幅方向の他方側に向かって傾斜する第2傾斜辺5cとを有する。プロファイル面2に対する第1傾斜辺5bの第1傾斜角度K11及び第2傾斜辺5cの第2傾斜角度K12は、60°以上90°未満に設定されている。
【0046】
突起5は、貼付け面3から突起5の頂点5aまでの高さH13が、一定になるように形成されている。肉厚部2bは、最厚部2cを中心に幅方向両側に貼付け面3からの厚さが小さくなっているので、最厚部2cに設けられた基準突起6の高さ(プロファイル面2から頂点6aまでの距離)が他の突起5よりも低い。肉厚部2bは、最厚部2cを中心に幅方向両側に向かって下方に傾斜しているので、最厚部2cから最も離れた突起5の高さが最も高くなる。
【0047】
図5には、図4の断面図において、トレッド部材1のゴムの界面が示されている。図5では、トレッド部材1の幅方向一方側のみが示されているが、トレッド部材1は幅方向に対称であるので、幅方向他方側においても同様の構成を有する。図5に示されるように、トレッド部材1は、タイヤ性能を向上させるために、断面が複数のゴム領域に区分されて形成されている。
【0048】
本実施形態におけるトレッド部材1は、プロファイル面を形成する径方向外側のキャップゴム領域Yaと、キャップゴム領域Yaの径方向内側に配置されたベースゴム領域Ybと、ベースゴム領域Ybのさらに径方向内側に配置されたクッションゴム領域Ycと、タイヤ幅方向外側に配置されてトレッド側面4を構成するウィングゴム領域Ydとを有する。
【0049】
キャップゴム領域Yaは、耐摩耗性に優れたゴムGaで形成されている。ベースゴム領域Ybは、転がり抵抗の抑制を図るためにキャップゴム領域Yaよりも低発熱性に優れたゴムGbで形成されている。クッションゴム領域Ycは、トレッド部材1よりもタイヤ径方向内側に配置されている図示しないベルト層等との接着性に優れるゴムGbで形成されている。ウィングゴム領域Ydは、サイドウォールゴム(図示せず)との接着性に優れるゴムGdで形成されている。
【0050】
ウィングゴム領域YdのゴムGdは、キャップゴム領域YaのゴムGaに比べて粘着性が高く設定されている。より詳しくは、ウィングゴム領域YdのゴムGdの粘着性(タック性)は押出直後6N以上9N以下で形成されている。ここでのタック性の評価方法は、株式会社東洋精機製作所製の粘着力測定装置(型式商品名:HTC-1)を使用し、被測定ゴムからなる試験片(幅100mm、厚さ2.0mm、長さ100mm)を圧着荷重10N及び圧着時間3sの条件で樹脂平板に圧着させ、該平板から接触子移動速度:2.3mm/secの条件で引き剥がすのに要する力を測定した。
【0051】
突起5は、キャップゴム領域YaのゴムGaと同じ材料、ウィングゴム領域YdについてはゴムGdと同じ材料で形成されている。突起5は、キャップゴム領域Yaからウィングゴム領域Ydに亘って設けられている。本実施径帝において、複数の突起5のうち、幅方向外側に位置する第1外側突起7a及び第2外側突起7bがウィングゴム領域Ydに配置されている。
【0052】
ウィングゴム領域Ydは、肉厚部2bの幅方向外側と貼付け面3の幅方向外側の端部とを接続する斜辺部8を備え、第1外側突起7a及び第2外側突起7bは斜辺部8に設けられている。斜辺部8は、幅方向外側に向かって径方向内側に位置するように傾斜しているので、斜辺部8から第1外側突起7aの頂点までの高さH14よりも第2外側突起7bの頂点までの高さH15が高い。
【0053】
図6は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法を示す工程図である。カーカスバンド成形工程61において形成されたカーカスバンド53(図9参照)と、トレッドバンド成形工程62において形成されたトレッドバンド51(図9参照)とが、生タイヤ成形工程63において結合されて生タイヤ50(図9参照)が成形される。次いで、タイヤ加硫工程64において、生タイヤ50を不図示のタイヤ加硫金型で加硫成型することにより空気入りタイヤが製造される。
【0054】
生タイヤ50の製造方法は、カーカスプライ等のバンド部材をバンドドラムに巻き付けてカーカスバンド53を成形する。一方で、ベルト、トレッド部材等のバンド部材をベルトドラムに巻き付けてトレッドバンドを成形する。次いで、カーカスバンドの外側にトレッドバンドを位置させて、カーカスバンドをトロイダル状に外径側に膨出させてトレッドバンドの内周面に結合させ、カーカスバンドに組付けられたビードを包み込むようにカーカスバンドを折り返すことによって、生タイヤが成形される。
【0055】
図7は、プロファイル面2に複数の突起5を有するトレッド部材1を、ベルトドラム40上で円筒状に巻回してトレッドバンド51を形成する工程を概略的に示している。図6に示されるように、トレッドアンダー貼り成形工法では、トレッド部材1は、ベルトドラム40の下方から貼り付けられる。
【0056】
図7に示すように、ベルトドラム40は、中心軸線O1回りに回転して、外周部にトレッド部材1を巻き取る。ベルトドラム40上には、ベルト52が予め巻回されている。トレッド部材1は、ベルト52の外周面上に巻回される。
【0057】
より詳しくは、トレッド部材1はトレー41に載置されており、トレー41上のトレッド部材1と、ベルトドラム40に巻き付けられたベルト52とを接触させ、ベルトドラム40を回転させながらトレー41を水平に移動させることで、トレッド部材1をベルトドラム40に対して転動させて、ベルト52に巻き付ける。換言すると、ベルトドラム40をトレー41上のトレッド部材1に押し当てながら回転させることで、トレッド部材1がベルトドラム40に巻き付けられる。
【0058】
このとき、トレッド部材1は、プロファイル面2が外周側に位置する姿勢で、長手方向をベルトドラム40の円周方向に沿わせて巻回されている。これによって、トレッド部材1は、複数の突起5が外周面上においてベルトドラム40の外周に沿って延びるように円筒状に巻回される。
【0059】
図8に示すように、トレッド部材1は、ベルトドラム40に貼り付けられる貼付け面3が上側となるようにトレー41上に載置される。換言すると、トレッド部材1は、プロファイル面2がトレー41に対向するように、トレー41上に載置される。
【0060】
図9は、別に成形したカーカスバンド53をトロイダル状に外径側に膨出させて、トレッドバンド51の内周面に付着させることによって形成された、生タイヤ50の斜視図である。図8に示されるように、生タイヤ50の外周面50aには、トレッド部材1のプロファイル面2によって構成されており、複数の突起5が生タイヤ50の周方向に延びている。複数の突起5は、生タイヤ50をモールド内にて加熱及び加圧して加硫成形することにより、空気入りタイヤの状態では消失する。
【0061】
上記実施形態に係る、トレッド部材1、押出機用口金20及び空気入りタイヤの製造方法によれば、次の作用効果を奏する。
【0062】
図10に仮想線で示すように、トレッド部材1は、トレー41上に載置された自重によって、特に、肉厚部2bがトレー41に張り付きやすい。また、肉厚部2bは、ベース部2aに比べて厚いので、トレッド部材1をベルトドラム40に巻き付けるときに、ベルトドラムにより強く押圧されやすいことからトレー41に張り付きやすい。これに対して、本実施形態に係るトレッド部材1には、プロファイル面2側に複数の突起5が設けられているので、突起5が設けられていない場合に比べて、トレッド部材1のトレー41に対する接地面積が低減され、トレッド部材1のトレー41への密着を抑制できる。
【0063】
図4に示すように、突起5は、肉厚部2bのうち最も厚さが大きくなる最厚部2cの厚さの70%以上の厚さを有する領域に設けられているので、トレー41密着防止の突起5を適切な領域に設けることができる。より詳しくは、70%未満の部位に設けた場合、突起5を設ける領域が拡大し、厚さが薄い部分においては所定のプロファイル面2が得られなくなる。
【0064】
突起5は、肉厚部2bのうち最も厚さが大きくなる最厚部2cに設けられた基準突起6を中心に、幅方向に所定の間隔で6個以上設けられているので、トレー密着防止の突起5を適切な領域に設けることができる。6つ未満の場合、接触面積の低減が図ることが困難となる。
【0065】
ウィングゴム領域Ydに用いられるゴムGdは、キャップゴム領域Yaに用いられるゴムGaよりも粘着性が高く、図10の矢印で示すように、トレッド部材1の保管中にウィングゴム領域Ydがトレー41側に垂れ下がりやすい。このウィングゴム領域Ydの垂れ下がりによって、トレッド部材1のプロファイル面2がトレー41により密着しやすくなるが、ウィングゴム領域Ydにも突起7a,7bが設けられているので、プロファイル面2及びウィングゴム領域Ydのトレー41に対する密着を抑制できる。
【0066】
突起5の断面形状は、三角形状であるので、例えば、突起5の断面形状が矩形状である場合に比べて、トレー41に対する接触面積が低減され、密着を抑制できる。
【0067】
突起5の頂点5a間の間隔W12は、突起5の幅W11に対して同等以上6倍以下に設定されているので、突起5の幅W11に対する頂点5a間の間隔W12が適切に設定でき、突起5のトレー41に対する接触面積の低減が図られ、密着を抑制できる。突起5の頂点5a間の間隔W12が、突起5の幅W11に対して同等未満の場合、突起5の底辺同士の幅方向位置がオーバラップして、トレッド部材1の表面高さが高くなり、所望のプロファイル面2が得られない。突起5の頂点5a間の間隔W12が、突起5の幅W11に対して6倍を超過すると、トレッド部材1が突起5間においてトレー41に密着して接触面積の低減が図りにくい。
【0068】
突起5の頂点5a間の間隔W12は、3mm以上6mm以下であるので、トレッド部材1のトレー41に対する接触面積を低減できる。突起5の頂点5a間の間隔W12が3mm未満であるとトレッド厚みに対する突起の断面積割合が高くなり、目標となるレイアウトゴム厚みを確保することが難しくなる。突起5の頂点5a間の間隔W12が6mmを超過すると、トレッド部材が突起間においてトレーに密着して接地面積の低減が図りにくい。
【0069】
第1傾斜角度K11および第2傾斜角度K12は、60°以上90°未満に設定されているので、トレッド部材1のトレー41に対する接触面積を低減できる。第1傾斜角度K11及び第2傾斜角度K12が60°未満であると、突起5の突出高さが低く接触面積を低減しにくい。
【0070】
複数の突起5は、貼付け面3から突起5の頂点5aまでの高さH13が一定に設定されているので、プロファイル面2の形状によって、プロファイル面2からトレー41までの高さが変化する場合においても、貼付け面3からトレー41までの高さH13を一定にすることができる。したがって、例えば、突起5のプロファイル面2からの高さを一定にした場合に比べて、トレー41にトレッド部材1を載置した際に所定の突起5に過剰に圧力が作用することが抑制できる。接地圧を分散させることで、トレー41に対するトレッド部材1の密着を緩和できる。
【0071】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、突起5及び切欠き25の第1傾斜角度K11,K1と第2傾斜角度K12,K2は異なっていてもよいし、突起5及び切欠き25の頂点5a,24a間の間隔W12,W2は均等でなくてもよいし、突起5及び切欠き25は6個未満であってもよいし、突起5及び切欠き25は矩形状、台形状、半円状、及び曲面状等、任意の断面形状に構成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 トレッド部材
2 プロファイル面
2a ベース部
2b 肉厚部
2c 最厚部
3 貼付け面
5 突起
5a 頂点
5b 第1傾斜辺
5c 第2傾斜辺
6 基準突起
20 押出機用口金
22 開口上面
22a ベース部形成部
22b 肉厚部形成部
23 開口底面
25 切欠き
40 ベルトドラム
41 トレー
50 空気入りタイヤ
H13 高さ
K11 第1傾斜角度
K12 第2傾斜角度
W11 幅
W12 間隔
Ya キャップゴム領域
Yd ウィングゴム領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10