(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109362
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】交通運行監視システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20230801BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20230801BHJP
B61L 29/30 20060101ALI20230801BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20230801BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H04N7/18 D
B61L25/02 Z
B61L29/30
B61L23/00 Z
G08G1/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010828
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】322000030
【氏名又は名称】株式会社光パスコミュニケーションズ
(72)【発明者】
【氏名】小川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松浦 裕之
【テーマコード(参考)】
5C054
5H161
5H181
【Fターム(参考)】
5C054DA00
5C054DA10
5C054FC00
5C054FE28
5C054FF05
5C054HA18
5C054HA26
5H161AA01
5H161BB02
5H161DD20
5H161FF07
5H161GG03
5H161GG12
5H161GG13
5H161GG23
5H161MM02
5H161MM05
5H161MM14
5H161MM15
5H161NN10
5H161QQ03
5H181AA01
5H181AA27
5H181CC04
5H181EE08
5H181EE11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】交通機関において鉄道のプラットホームや踏切、高速自動車国道・自動車専用道路の橋梁やトンネルといった地点で車両運行に支障をきたす事態が発生した場合に、その影響の低減化する交通運行監視システムを提供する。
【解決手段】方法は、鉄道や自動車道路の監視対象地点の高精細映像を監視用カメラ100で撮像し、監視用カメラから出力される映像電気信号を光信号へ遅延を加えることなく光トランスミッタ101で変換したのち、光ファイバ120~122を含む光伝送路で遠隔地へ低遅延で伝送する。遠隔地では、伝送された光信号を光レシーバ103、104で映像電気信号に遅延を加えることなく変換し、それを表示する監視用モニタ105で監視員に提示すると同時に画像解析機器106に印加して危険事象の有無を検出し、危険事象を検知した際には警報信号を自動的に発生する。警報信号は、監視対象地点に伝送され、警報発出機器から警報を発出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道ないしは自動車道路の監視対象に対してフルHDと同等もしくはそれ以上の解像度を有する高精細映像を撮像し、撮像した情報を解析して交通運行に関わる危険事象を自動的に検出し、警報を発出して事故を未然に防ぐ交通監視システムにおいて、
監視対象地点の映像を撮像する監視用カメラ、
前記監視用カメラから出力される第一の映像電気信号を第一の光信号へ変換する電気光変換器、
前記電気光変換器から出力される前記第一の光信号を伝送し、伝送後に第二の光信号を生成する光ファイバを含む光伝送路、
前記第二の光信号を印加し第二の映像電気信号へ変換する1ないし複数の光電気変換器、
前記第二の映像電気信号を印加し映像を表示する監視用モニタ、
前記第二の映像電気信号を印加し危険事象の有無を検出して警報信号を発生する画像解析機器、
前記画像解析機器から発せられた前記警報信号から前記監視対象地点に警報を発出する警報発出機器、
から構成されることを特徴とする交通運行監視システム
【請求項2】
前記第一の映像電気信号、前記第一の光信号、前記第二の光信号、前記第二の映像電気信号は非圧縮信号であることを特徴とする請求項1に記載の交通運行監視システム
【請求項3】
前記画像解析機器は機械学習ないしは深層学習の機能を具備し、画像解析の度数を重ねる毎に運行を妨げる事態の予兆を学習し、危険予知精度を段階的に高められることを特徴とする請求項1から2に記載の交通運行監視システム
【請求項4】
前記監視用モニタの監視者または前記画像解析機器のいずれか少なくとも一方が緊急と判断した場合に、前記監視対象地点の近傍に加え交通管制センタに設置した第二の警報発出機器から警報を発出することを行うことを特徴とする請求項1から3に記載の交通運行監視システム
【請求項5】
前記監視用モニタの監視者または前記画像解析機器のいずれか少なくとも一方から発出された警報が車両の運行システムと連動し、車両の緊急停止ならびに必要な対応を行うことを特徴とする請求項1から4に記載の交通運行監視システム
【請求項6】
前記光伝送路の少なくとも一部分が、交通機関事業者によって交通機関施設内に敷設された事業者光伝送路を経由していることを特徴とする請求項1から5に記載の交通運行監視システム
【請求項7】
前記事業者光伝送路において当該交通運行システム以外の商用に供せられる光波長とは別波長、または多芯光ファイバケーブルのうち当該交通運行システム以外の商用に供せられる芯線とは別芯線を光伝送路とすることを特徴とする請求項1から6に記載の交通運行監視システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視用カメラを用いて建造物や公共施設、交通機関や河川・盛り土等の土木災害ハザードマップ箇所といった地点を監視者が監視用モニタを介して監視する監視システムいわゆるITV(industrial television)システムに係り、特に交通機関において鉄道のプラットホームや踏切、高速自動車国道・自動車専用道路の橋梁やトンネルといった地点で車両運行に支障をきたし得る事態が発生した場合、その影響の低減化を可能とする交通運行監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の監視システムは監視対象地点の映像をアナログの電気信号で伝送するアナログ方式と、デジタル信号に変換しIPネットワークを経由して伝送するデジタル方式に大別される。
図1にそれらの概念を示す。
図1において1はアナログ方式の監視用カメラ、2はアナログ方式の監視用モニタ、3は監視用カメラ1と監視用モニタ2を接続する同軸ケーブル、4は監視用モニタ2の監視者、5はデジタル方式の監視用カメラ、6は監視用カメラ5の映像データ容量を圧縮するエンコーダ、7はそれを復元するデコーダ、8はデジタル方式の監視用モニタ、9はIPネットワーク、10は監視用カメラ1とエンコーダ6を接続するケーブル、11はエンコーダ6とIPネットワーク9を接続するケーブル、12はIPネットワーク9とデコーダ7を接続するケーブル、13はデコーダ7と監視用モニタ8を接続するケーブル、14は監視用モニタ8の監視者である。
【0003】
アナログ方式はテレビジョンのNTSC方式に準拠し、監視用カメラ1の撮像素子上の画像を順に走査して読み出していき、読み出し信号を逐次テレビジョン用の同軸ケーブル3を経由して監視用モニタ2上を順に走査して画像を表示する。このため原理的に遅延が生じにくく、極めて短い遅延時間すなわち小さいレイテンシで映像を伝送させる目的に好適である。
【0004】
一方、現在主流になりつつあるデジタル方式は、監視用カメラ5で取得したデジタル画像データをイーサネット、さらにルータを経由したインターネット等IPネットワーク9を経由してフレーム毎に伝送させている。従来のアナログ方式と比べてフルHD画質(1980×1080ピクセル)や4K画質ないしはウルトラHD(3840×2160ピクセル)の高画質映像を、画面比率16:9、対角43インチや55インチないしそれ以上の大画面モニタへIPネットワーク9経由で伝送することが可能である。
【0005】
特許文献1にはデジタル方式を用い圧縮符号化する装置が示されている。圧縮符号化することによって伝送の際に遅延時間が増えてしまうが、遅延時間を短くするため撮像方向や撮像範囲を限定することを行っており、広範囲の映像を扱うことができない。
【0006】
特許文献2には鉄道駅プラットホームの監視にIPネットワークを用いることが示されている。データ量を抑えるためにカメラ映像全てを伝送表示するのではなく、対象範囲に限定を加えているのでカメラでとらえた情報が減少している。
【0007】
非特許文献1には、監視用カメラの高精細化が監視システム全般にとって必要な条件であることが述べられているが、それを低遅延で伝送することに関しては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-284051号公報
【特許文献2】特開2020-184767号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】大手一郎, 新保直之, 影広達彦, 伊藤誠也, “映像監視システムの最新動向,” 日立評論2009年12月号、pp. 54-pp. 59.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
監視システムは交通機関事業者に広く利用されているが、鉄道を例に取るとプラットホームへ入線してくる鉄道車両、鉄道車両ドアやホームドアの開閉、また混雑したプラットホーム上での乗客の人流の安全を監視するためフルHD画質(1980×1080ピクセル)や4K画質(3840×2160ピクセル)の高精細映像を、画面比率16:9、対角43インチや55インチないしそれ以上の大画面モニタへできるだけ小さいレイテンシで伝送させる必要性が生じつつある。
【0011】
従来のアナログ方式の場合、伝送がNTSC方式に準拠しているためレイテンシが極めて小さい映像伝送が可能であるが、ノイズ等の影響によりピクセルを細分化させるのが困難なため、QVGA画質(352×240ピクセル)、VGA画質(640×480ピクセル)、D1画質(740×480ピクセル)といった低画質レベルに留まっていた。またこの理由により、大画面化が困難という課題があった。
【0012】
一方、デジタル方式のIPネットワークカメラは回線を圧迫しない様に画像フレームのデータにエンコーダによって圧縮処理を施して伝送容量を減じた後、データをパケットに分割してIPネットワーク経由で伝送を行っている。IPネットワーク上を流れるパケットはスイッチまたはルータでのコリジョンを避けるためにバッファリング処理が必要となりキューイング遅延が発生する。その結果、伝送先へパケットを均一なタイミングで到着させるのが困難である。また圧縮した画像データのデコーダによる復元処理にも時間が必要となる。このためアナログ方式と比べて高画質・大画面の映像が得られるものの、映像伝送のレイテンシが数100ミリ秒から数秒程度と大幅に増大する傾向があった。
【0013】
本発明の目的は交通機関事業者に対し、車両運行時や乗客の乗降時に運行に支障をきたし得る監視対象に対し、撮像ならびに表示を含め遠隔地点からも映像伝送のレイテンシが数10ミリ秒程度と超低遅延かつ高画質・大画面な映像での監視を可能にし、必要に応じ速やかな警報発出が行える交通運行監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来方法の問題点の解決手段を鉄道へ応用した場合を例に説明する。
【0015】
図2にその詳細を示す。
図2において100は色深度が4:2:0/8ビット、有効画素数が4K (3840×2160ピクセル)、フレームレートが60フレーム/毎秒で鉄道施設の駅プラットホームや踏切を監視するデジタル方式の4K監視用カメラ、101は4K監視用カメラの出力信号を波長1550 nm帯の非圧縮の光信号に変換する光トランスミッタ、102は光信号を2分岐させる光分配器、103、104は4K監視用カメラとは別地点に設置され受信した非圧縮の光信号を4K映像信号に変換する光レシーバ、105はフレームレートが60フレーム/毎秒、画面比率16:9、対角43インチ、デジタル方式の4K監視用モニタ、106は4K映像から取得した映像の機械学習ないしは深層学習の機能を有する画像解析機器、110、111、112はHDMI(HDMIは登録商標、以下同様)ケーブル等メタルケーブル、120、121、122はシングルモード光ファイバ、130は4K監視用モニタ105を監視する駅務員、131、132は駅務員130または画像解析機器106の少なくとも一方から4K監視用カメラ100が設置された地点近傍または鉄道運行指令所に対し発出される警報信号、133は警報発出機器である。
【0016】
図2の例ではデータ伝送量が数ギガビット/毎秒から10ギガビット/毎秒で出力される4K監視用カメラ100の出力信号がHDMIケーブル等メタルケーブル110を経由して光トランスミッタ101でシリアルな非圧縮の光信号に変換される。非圧縮の光信号は光ファイバ120によって光分配器102に伝送され2分岐される。さらに光ファイバ121、122を経由して鉄道施設へ伝送され、光トランスミッタ103、104で60フレーム/毎秒の4K映像に再変換された後、4K監視用モニタ105へ映像表示、また画像解析機器106で必要な解析・記録が行われる。画像解析機器106が危険を検出した際には警報信号132が発出され、警報発出機器133が作動することにより、事故を未然に防ぐことが可能であった。また、駅務員130が4K監視用モニタ105の映像から異常を察知した場合には警報信号131によって警報発出機器を作動させ、事故を防ぐことも可能であった。
【発明の効果】
【0017】
これらの結果、従来のIPネットワーク伝送を経由して4K監視用カメラ映像を4K監視用モニタへ伝送させる場合、映像伝送遅延は約500ミリ秒であったのに対し、本システムでは4K映像伝送遅延を約30ミリ秒に低減できた。
【0018】
この結果、例えば混雑した駅プラットホーム上で乗客が駆け込み乗車を試みて鉄道車両ドアやホームドアでの荷物挟まり等の予兆が発生した場合、駅務室またはプラットホーム上の高画質・大画面4K監視用モニタを複数の駅務員や車掌が視聴できることから、鉄道車両ドアやホームドアで荷物挟まり等の事態が発生し、センサ作動あるいはプラットホーム上の非常停止ボタン作動が行われる以前にドアの再開放が行えるため、鉄道車両の定時運行が可能となる。また万一運行に支障をきたす事態が発生した場合でも駅務員の現場急行、後続車両を停車させるための警報発出機器133の動作を迅速に行うことが可能である。
【0019】
また駅務員130が緊急と判断する事態を画像解析機器106が繰り返し学習することによって、画像解析機器106から当該駅や鉄道運行指令所へ鉄道車両ドアの開放や発車停止、後続車両の緊急停止といった運行信号を自動的に発出することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来の監視システムの概念を説明する図面である。
【
図3】本発明で鉄道施設の1地点を多地点から監視する例を説明する図面である。
【
図4】本発明で光スイッチを用いて鉄道施設の複数地点を1地点から監視する例を説明する図面である。
【
図5】高速道路の複数地点を光ファイバの波長多重伝送技術を用いて1地点から監視する例を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0021】
以下、本発明の実施例1では鉄道施設の1地点を多地点から監視する例について
図3を用いて説明する。
図3において200は鉄道路線、201は鉄道駅、202、203は駅201に隣接する駅、204、205、206は駅201、202、203の駅務室、207は駅201のプラットホーム、208はプラットホーム207上のホームドア、209はプラットホーム207に入線中の鉄道車両、210はプラットホーム207上の乗客である。
【0022】
211はプラットホーム207に設置された色深度が4:2:0/8ビット、フレームレートが60フレーム/毎秒、データ伝送量が数ギガビット/毎秒から10ギガビット/毎秒、近赤外光にも感度を有するデジタル方式の4K監視用カメラ、212は後続の鉄道車両、213は鉄道車両212の進行方向、220は4K監視用カメラ用211の映像出力信号を波長1550 nmの非圧縮光信号に変換する4K非圧縮光トランスミッタ(DPN9042B、株式会社光パスコミュニケーションズ製)、221は光信号を8分岐する光分配器(DPN9049A、株式会社光パスコミュニケーションズ製)、230、231、232、233、234は光ファイバを経由して送信された非圧縮の光映像信号を4K監視用モニタならびに画像解析機器用映像信号に変換する4K非圧縮光レシーバ(DPN9044A、株式会社光パスコミュニケーションズ製)、240、241、242は駅務室204、205、206に設置された画面比率16:9、対角55インチ、デジタル方式の4K監視用モニタ、243はプラットホーム207上に設置された画面比率16:9、対角43インチ、デジタル方式の4K監視用モニタ、244は4K監視用カメラ211と光トランスミッタ220を接続するHDMIケーブル、250、251、252、253は光レシーバ230、231、232、233と4K監視用モニタ240、241、242、243を接続するHDMIケーブル、260は鉄道運転指令所等に設置され4K映像による緊急事態の機械学習ないしは深層学習の機能を有する画像解析機器、254は光レシーバ234と画像解析機器260を接続するHDMIケーブル、270は光トランスミッタ220と光分配器221を接続するシングルモード光ファイバ、271、272、273、274は光分配器221と光レシーバ230、231、232、233を接続するシングルモード光ファイバ、275は光分配器221と画像解析機器260を接続するシングルモード光ファイバ、280、281、282は4K監視モニタ用240、241、242を監視する駅務員である。
【0023】
従来は乗客210が鉄道車両209に駆け込み乗車を試みる際、例えば鉄道車両209ドアやホームドア208に挟まれる事態が発生すると、ドアに設けられたセンサがこれを検知してドアを開放すると共に、プラットホーム207上や駅務室204の駅務員、鉄道車両209の車掌が目視またはプラットホーム207上の監視用モニタで乗客の安全を確認して運行を再開していたが、従来の監視用カメラを介してプラットホームの安全を確認する場合、アナログ方式では分解能が十分ではなく、またIPネットワークカメラでは映像の伝送遅延が大きいため迅速な対応が取りにくいという問題があった。さらに朝夕の過密ダイヤ時には各駅での僅かな運行の遅れが大きな鉄道ダイヤの乱れの原因となっていた。
【0024】
一方、本発明の鉄道運行監視システムによれば、映像遅延が約30ミリ秒かつ4K高画質・大画面な監視用モニタ240、243映像でプラットホーム207の監視を行うことができるため、プラットホーム207で上記の様な運行に係わる事態が発生した場合、これをプラットホーム107上の駅務員や鉄道車両109の車掌も4K監視用モニタ243を介して迅速に発見し迅速に対応することが可能となった。また隣接駅202、203からも映像遅延が約30ミリ秒かつ4K高画質・大画面な監視用モニタ241、242を介してプラットホーム107の監視が可能なことから、4K監視用モニタを監視する駅務員は鉄道駅202、203に配置し、鉄道駅201のプラットホーム207上で安全運行に係わる事態が発生した場合には、鉄道駅201のプラットホーム207上の駅務員に無線等を介した手段で通報し緊急対応させることが可能となり、駅務員の合理的な配置が可能であった。
【0025】
画像解析機器260が危険事象を検知した場合に警報信号が発出され、警報発出機器が作動することによって、事故を未然に防ぐことが可能であった。また、監視用モニタ240、241、242の画面から異常を察知した駅務員が警報発出機器を作動させ、事故を防ぐことも可能であった。
【0026】
4K監視用カメラ211の映像は画像解析機器260にも伝送させ駅務員が危険と判断する映像を学習させることによって、乗客の事前の動きから危険を予測してプラットホーム207に入線中の鉄道車両209の発車停止、後続の鉄道車両212の緊急停止といった警報を自動的に発出して運行をスムーズに行うことが可能であった。なお画像解析機器260は高画質の4K映像によって低画質の映像と比べ、機械学習ないしは深層学習の効果を高めることが可能であった。
【0027】
本実施例では鉄道会社が線路敷や側溝等、鉄道施設内に敷設している自社光ファイバないしその波長を使っているため、通信キャリアの光ファイバでは迂回する様な場合と比べて短い距離での接続を実現でき、自社光ファイバのため通信事業者の光ファイバを借用する場合と比べ低コストの運用が可能であった。
【0028】
本実施例では映像伝送用の光ファイバ270、271、272、273、274、275にはシングルモード光ファイバ、伝送用の光波長には1550 nm帯域を用いたが、伝送距離に応じて1310 nm帯等他の波長帯域、マルチモード光ファイバ等他の線種を用いることが可能であった。また超高画質の8K映像を伝送させる必要が生じた場合、伝送データ量が増大するため、波長ないし芯線を複数に分けて伝送させることが可能であった。さらにシングルモード光ファイバ272、273、275の接続区間が長距離になった場合、途中に光増幅器を設置して光信号の減衰を補いこれを伝送させることが可能であった。
【0029】
上記の説明では光分配器221を用いたが、これを設けることなく光信号を、4K非圧縮光レシーバ230で映像電気信号に変換したのち、映像電気信号を適宜複製して、4K監視用モニタならびに画像解析機器に印加するようにしても良い。
310、311は踏切303、304を監視する色深度が4:2:0/8ビット、フレームレートが60フレーム/毎秒、データ伝送量が数ギガビット/毎秒から10ギガビット/毎秒、近赤外光にも感度を有するデジタル方式の4K監視用カメラ、312は駅305のプラットホームを監視する色深度が4:2:0/8ビット、フレームレートが60フレーム/毎秒、データ伝送量が数ギガビット/毎秒から10ギガビット/毎秒、デジタル方式の4K監視用カメラ、320、321、322は4K監視用カメラの映像出力信号を波長1550 nmの非圧縮光信号に変換する4K非圧縮光トランスミッタ(DPN9042A、株式会社光パスコミュニケーションズ製)、323は非圧縮の光映像信号を4K監視用モニタ用映像信号に変換する4K非圧縮光レシーバ(DPN9044A、株式会社光パスコミュニケーションズ製)、330、331は鉄道路線300内に敷設されたシングルモード光ファイバ、332、333は駅305施設内に敷設されたシングルモード光ファイバ、340、341、342は4K監視用カメラ310、311、312と光トランスミッタ320、321、322を接続するHDMIケーブル、350は駅務室306に設置された画面比率16:9、対角55インチのデジタル方式の4K監視用モニタ、343は光レシーバ323と4K監視用モニタ350を接続するHDMIケーブル、351は3×1切替用光スイッチ、352は4K監視用モニタ351を監視する駅務員である。
鉄道車両301が鉄道運行の600 m条項で定められた踏切303の600 m手前に接近する1分前に光スイッチ351を手動または自動で切替え、踏切303上の4K監視用カメラ310映像の4K監視用モニタ350への伝送を開始した。この結果、駅務員352は駅務室306から踏切303上の障害物の有無をレイテンシが30ミリ秒程度の4K映像で確認し、障害が確認された場合は警報発出を行うことが十分可能であった。
次に鉄道車両301が駅305のプラットホームの600 m手前に接近する1分前に光スイッチ350を手動または自動で切替え、駅305プラットホーム上の4K監視用カメラ312映像の4K監視用モニタ350への伝送を開始した。この結果、駅務員352は駅務室306からプラットホーム上の乗客の人流をレイテンシが30ミリ秒程度の4K映像で確認し、乗客の安全な乗降を確認できた。
さらに鉄道車両301が駅305を出発後、踏切304の600 m手前に接近する1分前に光スイッチ351を手動または自動で切替え、踏切304上の4K監視用カメラ映像の4K監視用モニタ350への伝送を開始した。その結果、駅務員352は駅務室306から踏切304上の障害物の有無をレイテンシが30ミリ秒程度の4K映像で確認し、障害が確認された場合は警報発出を行うことが十分可能であった。
この結果、当該駅前後での鉄道運行の安全監視が当該駅の駅務員1名で行えるため、運行の安全に掛かる駅務員の合理的な配置が可能になった。また駅務室306の4K監視用モニタ350が対角55インチのため複数の駅務員が同時に4K映像を共有し、運行に支障が生じる事態を早期に検知することが可能であった。なお路線長が短ければ全路線の監視が1ヵ所で可能であるが全路線を複数のエリアに分割し、エリア毎に同様な監視を行うことも可能であった。さらに踏切303、304の4K監視用カメラのレンズ、フィルタ、画像センサ等を近赤外光にも透過能・感度を有する仕様にすることによって、昼夜を問わず駅務室306から超低遅延かつ4K映像で踏切303、304の監視が可能であった。
実施例2は上記の説明に加え、実施例1同様に例えば駅務室に設置した画像解析機器に高精細映像を印加し、画像解析機器は必要な解析・記録を行う。画像解析機器が危険事象を検出した際には、画像解析機器から警報信号が発出され、警報発出機器を作動させて警報を発出させるようにすることで、事故を未然に防止する効果を有する。