(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109377
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】麺帯案内装置及び麺帯案内方法
(51)【国際特許分類】
A21C 3/02 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
A21C3/02 Z
A21C3/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010853
(22)【出願日】2022-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】593008748
【氏名又は名称】株式会社豊製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉知 雅休
(72)【発明者】
【氏名】近江 英人
【テーマコード(参考)】
4B031
【Fターム(参考)】
4B031CA01
4B031CD02
4B031CD07
4B031CD20
(57)【要約】
【課題】麺帯の先端部を圧延ローラのような加工装置へ案内する麺帯案内装置において、麺帯の先端部の加工装置への案内をロボットにより行うことにより、上記案内を複雑な機構を用いることなく簡単に行う。
【解決手段】長尺で帯状の麺帯Mの先端部を重力方向に垂れ下げて支持する支持部材822と、ロボットのアーム部の先端に固定され、支持部材822により垂れ下げて支持された麺帯Mの先端部より支持部材822側に位置する中間部を実線のように把持し、麺帯Mの先端部を重力方向に垂れ下げた状態で麺帯Mを圧延加工する圧延ローラ84に向けて破線のように移動する把持部30と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺で帯状の麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げて支持する支持部材と、
ロボットのアーム部の先端に固定され、前記支持部材により垂れ下げて支持された麺帯の先端部より前記支持部材側に位置する中間部を把持し、麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げた状態で麺帯を加工する加工装置に向けて移動する把持部と、
を備える麺帯案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の麺帯案内装置であって、
前記把持部は、
麺帯の幅を超える長さを有する棒状の長尺棒と、
該長尺棒より短い長さで前記長尺棒と協働して麺帯を把持する棒状の短尺棒と、
前記長尺棒及び前記短尺棒間で麺帯を挟持した状態、又は前記挟持を解放した状態とするべく、前記長尺棒及び前記短尺棒の各長手方向を麺帯の幅方向とした状態で、前記長尺棒及び前記短尺棒を、その太さ方向に互いに接近又は離間させる把持機構と、
を備える麺帯案内装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の麺帯案内装置であって、
前記加工装置を複数備え、
該複数の加工装置同士間を結ぶように配置され、前記ロボットを前記複数の加工装置に順次移動可能として前記把持部による前記複数の加工装置に向けた麺帯の案内を可能とするレールを備える麺帯案内装置。
【請求項4】
請求項2に記載の麺帯案内装置を用いる麺帯案内方法であって、
前記支持部材上で麺帯の先端部が重力方向に垂れ下がるように麺帯を搬送し、前記支持部材の端部から垂れ下がる麺帯の先端部が予め決められた位置に到達したとき、前記支持部材上での麺帯の搬送を停止する第1工程と、
前記支持部材の端部から垂れ下がった状態の麺帯に対し、麺帯の厚さ方向の両側に前記把持部の前記長尺棒及び前記短尺棒が位置し、麺帯より前記支持部材側に前記長尺棒、麺帯より前記加工装置側に前記短尺棒が位置するように前記把持部を移動させる第2工程と、
前記把持部の前記長尺棒及び前記短尺棒の太さ方向で対向する隙間を小さくして、前記長尺棒及び前記短尺棒間に麺帯を把持するように前記把持機構を作動して前記長尺棒及び前記短尺棒の少なくともいずれか一方を、その太さ方向に移動する第3工程と、
前記長尺棒及び前記短尺棒で麺帯を挟み、前記把持部を前記加工装置の麺帯受入部の上方に向けて移動しつつ、前記把持部の前記長尺棒が麺帯の下側、前記短尺棒が麺帯の上側に位置を転換するように前記把持部を回動する第4工程と、
を備える麺帯案内方法。
【請求項5】
請求項4に記載の麺帯案内方法であって、
前記把持部により麺帯を把持した状態で、前記加工装置の麺帯受入部に向けて麺帯の先端部を送り込むように前記把持部を下方に移動させる第5工程と、
前記把持部の前記長尺棒により麺帯を支持した状態で、前記短尺棒が麺帯から離れるように前記把持機構を作動して前記長尺棒及び前記短尺棒の少なくともいずれか一方を、その太さ方向に移動する第6工程と、
前記加工装置の麺帯受入部に受け入れられた麺帯が前記加工装置内に送り込まれるのに合わせて、前記支持部材上部と前記加工装置の麺帯受入部との間に渡された麺帯の張力を緩めて前記支持部材と前記加工装置の麺帯受入部との間で麺帯が下方に撓んだ状態となるように前記把持部を下方、且つ前記支持部材方向へ移動させる第7工程と、
前記把持部の前記長尺棒及び前記短尺棒が両者間に麺帯を介在させた状態から介在させない状態へ移行するように前記把持部が麺帯を解放する第8工程と、
を備える麺帯案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うどん、そば等の麺、若しくは餃子、ワンタン等の皮、等になる麺帯を加工装置へ案内する麺帯案内装置及び麺帯案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺帯を所望の厚さに圧延するため、長尺の帯状に形成された麺帯は、その先端部を一対のローラが組み合わされて成る圧延ローラの入り口に案内される。その麺帯の案内は、作業者の手作業で行われることが多いが、特許文献1には、麺帯を無端コンベアに載せて圧延ローラの入り口に案内する発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように麺帯を無端コンベアに載せて圧延ローラの入り口に案内するためには、無端コンベアの先端から垂れ下がった麺帯の先端部を圧延ローラの入り口に接近させる必要がある。そのため、無端コンベアを圧延ローラの入り口の上部に接近して配置する必要がある。しかし、無端コンベアは、上記案内の役割を終えると、連続的に圧延される麺帯の動きを妨げないように圧延ローラの下部に退避する必要ある。そのため、無端コンベアは、圧延ローラの上部と下部との間を移動し、しかも移動中に圧延ローラに干渉しないように圧延ローラから離れて移動する必要がある。従って、無端コンベアを移動させるための機構は複雑な構成となり、故障し易く、且つ大型化する問題がある。
【0005】
本発明の課題は、麺帯の先端部を圧延ローラのような加工装置へ案内する麺帯案内装置において、麺帯の先端部の加工装置への案内をロボットにより行うことにより、上記案内を複雑な機構を用いることなく簡単に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明の麺帯案内装置は、長尺で帯状の麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げて支持する支持部材と、ロボットのアーム部の先端に固定され、前記支持部材により垂れ下げて支持された麺帯の先端部より前記支持部材側に位置する中間部を把持し、麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げた状態で麺帯を加工する加工装置に向けて移動する把持部と、を備える。
【0007】
第1発明によれば、支持部材により先端部が垂れ下がった状態に支持された麺帯の中間部を把持部により把持して加工装置へ案内する。そのため、把持部による麺帯の把持を容易に行うことができる。しかも、無端コンベアを移動させる複雑な機構も不要となり、機構の故障の問題や大型化の問題を解消することができる。更に、複雑な機構を備えないため、機構に絡みつく麺帯のくずを除去する作業も省くことができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明に記載の麺帯案内装置であって、前記把持部は、麺帯の幅を超える長さを有する棒状の長尺棒と、該長尺棒より短い長さで前記長尺棒と協働して麺帯を把持する棒状の短尺棒と、前記長尺棒及び前記短尺棒間で麺帯を挟持した状態、又は前記挟持を解放した状態とするべく、前記長尺棒及び前記短尺棒の各長手方向を麺帯の幅方向とした状態で、前記長尺棒及び前記短尺棒を、その太さ方向に互いに接近又は離間させる把持機構と、を備える。
【0009】
第2発明によれば、麺帯の中間部を把持する把持部は、長尺棒及び短尺棒を備え、長尺棒は、その長さが麺帯の幅よりも長くされている。そのため、長尺棒と短尺棒とにより麺帯を挟持したとき、長尺棒が麺帯を幅方向の全体で支持して麺帯が変形するのを抑制することができる。また、短尺棒は、その長さが長尺棒より短くされている。そのため、長尺棒と短尺棒とにより麺帯を把持したとき、短尺棒により麺帯を圧迫する面積を小さくして短尺棒による麺帯の変形を抑制することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1又は第2発明に記載の麺帯案内装置であって、前記加工装置を複数備え、該複数の加工装置同士間を結ぶように配置され、前記ロボットを前記複数の加工装置に順次移動可能として前記把持部による前記複数の加工装置に向けた麺帯の案内を可能とするレールを備える。
【0011】
第3発明によれば、ロボットがレールにより複数の加工装置に順次移動可能とされる。そのため、ロボットのハンド部の把持部は複数の加工装置のそれぞれに向けて麺帯の案内を行うことができる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第2発明に記載の麺帯案内装置を用いる麺帯案内方法であって、前記支持部材上で麺帯の先端部が重力方向に垂れ下がるように麺帯を搬送し、前記支持部材の端部から垂れ下がる麺帯の先端部が予め決められた位置に到達したとき、前記支持部材上での麺帯の搬送を停止する第1工程と、前記支持部材の端部から垂れ下がった状態の麺帯に対し、麺帯の厚さ方向の両側に前記把持部の前記長尺棒及び前記短尺棒が位置し、麺帯より前記支持部材側に前記長尺棒、麺帯より前記加工装置側に前記短尺棒が位置するように前記把持部を移動させる第2工程と、前記把持部の前記長尺棒及び前記短尺棒の太さ方向で対向する隙間を小さくして、前記長尺棒及び前記短尺棒間に麺帯を把持するように前記把持機構を作動して前記長尺棒及び前記短尺棒の少なくともいずれか一方を、その太さ方向に移動する第3工程と、前記長尺棒及び前記短尺棒で麺帯を挟み、前記把持部を前記加工装置の麺帯受入部の上方に向けて移動しつつ、前記把持部の前記長尺棒が麺帯の下側、前記短尺棒が麺帯の上側に位置を転換するように前記把持部を回動する第4工程と、を備える。
【0013】
第4発明によれば、第1工程で麺帯が支持部材の端部から垂れ下がった状態とされ、第2工程では、麺帯の厚さ方向の両側に把持部の長尺棒及び短尺棒が位置し、長尺棒は麺帯の支持部材側、短尺棒は麺帯の加工装置側に位置される。その後、第3工程では、長尺棒及び短尺棒の太さ方向で対向する隙間を小さくして、長尺棒及び短尺棒間に麺帯を把持する。更に第4工程では、長尺棒が麺帯の下側、短尺棒が麺帯の上側に位置するように把持部を回動させる。そのため、麺帯を加工装置の麺帯受入部に向けて案内するに当たり、麺帯に無理な力が加わらない状態で、把持部の長尺棒及び短尺棒により麺帯を把持して、麺帯を加工装置の麺帯受入部に向けて移動することができる。
【0014】
本発明の第5発明は、上記第4発明に記載の麺帯案内方法であって、前記把持部により麺帯を把持した状態で、前記加工装置の麺帯受入部に向けて麺帯の先端部を送り込むように前記把持部を下方に移動させる第5工程と、前記把持部の前記長尺棒により麺帯を支持した状態で、前記短尺棒が麺帯から離れるように前記把持機構を作動して前記長尺棒及び前記短尺棒の少なくともいずれか一方を、その太さ方向に移動する第6工程と、前記加工装置の麺帯受入部に受け入れられた麺帯が前記加工装置内に送り込まれるのに合わせて、前記支持部材と前記加工装置の麺帯受入部との間に渡された麺帯の張力を緩めて前記支持部材上部と前記加工装置の麺帯受入部との間で麺帯が下方に撓んだ状態となるように前記把持部を下方、且つ前記支持部材方向へ移動させる第7工程と、前記把持部の前記長尺棒及び前記短尺棒が両者間に麺帯を介在させた状態から介在させない状態へ移行するように前記把持部が麺帯を解放する第8工程と、を備える。
【0015】
第5発明によれば、第5工程で麺帯の先端部が加工装置の麺帯受入部に送り込まれ、第6工程では、把持部の短尺棒が麺帯から離間される。そのため、麺帯が加工装置の麺帯受入部に受け入れられて加工装置内に送り込まれるとき、麺帯が把持部に把持された状態のままとならないようにされる。その後、第7工程では、把持部が下方、且つ支持部材方向へ移動される。そのため、支持部材と加工装置の麺帯受入部との間で麺帯が下方に撓んだ状態となり、支持部材と加工装置の麺帯受入部との間に渡された麺帯の張力が緩められる。最後に、第8工程では、把持部が麺帯の幅方向外側に移動されて把持部の長尺棒及び短尺棒間に麺帯を挟んだ状態から挟まない状態へ移行される。そのため、麺帯は把持部に把持された状態から解放され、加工装置の麺帯受入部への麺帯の案内を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態としての麺帯案内装置を含む麺の製造装置の正面図である。
【
図7】第1実施形態において麺帯を加工装置に案内する際の作動説明図である。
【
図8】
図7と同様の作動説明図であり、上方から見た図である。
【
図9】第1実施形態において把持部を麺帯から解放する際の作動説明図である。
【
図10】
図9と同様の作動説明図であり、前方から見た図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の
図10に対応する作動説明図である。
【
図12】
図11と同様の作動説明図であり、把持部が麺帯を解放した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態の構成>
図1~3は、本発明の第1実施形態としての麺帯案内装置を含む麺の製造装置を示す。
図1~3では、麺の製造装置がフロア上に置かれた状態における前後、上下、左右の各方向を矢印により示している。このような方向を示す矢印については、他の図においても統一して表示している。この場合の麺の製造装置は、前側から後側へ直線状に各工程を成す複数の装置が並べて構成されている。具体的には、前側から麺帯製造装置2、圧延ローラ4、麺帯熟成装置6、連続圧延装置8、麺線製造装置10、粉体散布機12、及び幅寄せローラ14の順に並べられて、麺の製造装置が構成されている。
【0018】
麺の製造装置の各装置の左方には直線状のレール18が配置されている。レール18は、連続圧延装置8等を支持する機台40上に固定されている。レール18は、ロボット16を移動させるガイドレールとして機能する。ロボット16がレール18に沿って移動することにより麺の製造装置の各装置に対してロボット16が予め与えられた作業をこなすことができるようにされている。従って、レール18の位置は、ロボット16が与えられた作業を行うことができるように各装置に沿って設定されている。ここでは、レール18は一定の高さに支持された直線状のものとされたが、与えられた作業に応じて高さや位置が変化する非直線状のものとされてもよい。ロボット16は、一般的な協働ロボットである。ロボット16に与えられた作業は、麺線製造装置10の切刃(図示略)の交換、粉体散布機12への粉体の補充、各部の掃除など多数あるが、この場合の重要な作業は、後述するように麺帯Mを加工装置の麺帯受入部に案内することである。
【0019】
図1のように、麺帯製造装置2では、ドウを受け入れて2枚の長尺で帯状の麺帯M1、M2を製造する。2枚の麺帯M1、M2は、コンベアにより構成された支持部材22上で互いに厚さ方向に重ねられて、圧延ローラ4に向けて送られる。圧延ローラ4では、2枚の麺帯M1、M2を圧延しながら一体化して1枚の麺帯Mとする。支持部材22上の麺帯M1、M2の先端部を圧延ローラ4に向けて案内する作業はロボット16により行われる。
【0020】
麺帯Mは、麺帯熟成装置6の前段で糸巻形状の麺帯巻取棒62に一定長さ毎に巻き付けられる。麺帯熟成装置6では、麺帯巻取棒62に巻き付けられた麺帯Mがラップに包まれた状態で移動しながら熟成される。熟成を終えた麺帯Mは、麺帯熟成装置6の後段で麺帯巻取棒62から巻き戻される。そのため、熟成を終えてラップを剥がされ、麺帯巻取棒62に巻かれた前後2つの麺帯Mが、連続圧延装置8の手前で、前後方向に並べられた状態で保持される。この状態で、2つの麺帯Mのうち後側の麺帯MAが連続圧延装置8の圧延ローラ82に送られる。麺帯MAの圧延ローラ82による圧延が終わる直前のタイミングで、2つの麺帯Mのうち前側の麺帯MBが圧延ローラ82に送られる。そのため、圧延ローラ82の入り口の麺帯受入部824で麺帯MAの後端部と麺帯MBの先端部が厚さ方向に重なった状態で圧延ローラ82により圧延される。この圧延により2枚の麺帯MA、MBは、1枚につながった麺帯Mとされる。麺帯MAの先端部を圧延ローラ82に向けて案内する作業、及び麺帯MBの先端部を圧延ローラ82に向けて案内する作業は、いずれもロボット16により行われる。
【0021】
麺帯MAが巻き付けられていた麺帯巻取棒62は、巻き付けられていた麺帯MAがなくなると、ロボット16により麺帯熟成装置6の前段位置に戻される。こうして麺帯MAが巻き付けられていた麺帯巻取棒62が除去されると、その位置に、麺帯MBが巻き付けられていた麺帯巻取棒62が移動する。即ち、麺帯MBが巻き付けられていた麺帯巻取棒62が
図1、2にて前側に移動する。その移動により空いた位置に、麺帯熟成装置6により熟成された麺帯M付きの次の麺帯巻取棒62が移動される。
【0022】
圧延ローラ82により圧延された麺帯Mは、複数の圧延ローラ84、86、88の麺帯受入部844、864、884に順次送られ、次第に厚さが薄くされる。各圧延ローラ82、84、86、88の麺帯Mの出口側には、後述のように麺帯Mの先端部を重力方向に垂れ下げて支持するための支持部材822、842、862、882が設けられている。麺帯Mの先端部を複数の圧延ローラ84、86、88の麺帯受入部844、864、884に向けて順次案内する作業は、ロボット16により行われる。
【0023】
圧延ローラ88から出た麺帯Mは、麺線製造装置10に送られる。麺線製造装置10は、上部に圧延ローラ104を備え、その圧延ローラ104の入り口の麺帯受入部102に圧延ローラ88からの麺帯Mを受け入れる。麺帯Mの先端部を圧延ローラ104の麺帯受入部102に向けて案内する作業は、ロボット16により行われる。麺線製造装置10では、内部に備える刃物により麺帯Mが、その幅方向に並ぶ複数本の麺線にカットされる。また、麺線製造装置10では、内部に備えるカッタにより長手方向で所定長さの麺線にカットされる。このように2方向からカットされて出来た複数本の麺線は、コンベア13に載せられて幅寄せローラ14に向けて搬送される。コンベア13上には、粉体散布機12があり、麺線が粉体散布機12の下方を通過するとき、粉体散布機12により麺線に片栗粉のような粉体が麺線にまぶされる。幅寄せローラ14では、コンベア13上を搬送される麺線をコンベア13の中央部に寄せて出荷の準備が行われる。
【0024】
図3のように、ロボット16は、複数の関節で自由に角度を変更可能とされたアーム部164を備え、しかもアーム部164は、上述のようにレール18に沿って移動自在とされている。
図4~6に拡大して示すように、アーム部164の先端のグリッパ162には、把持部30を成す長尺棒32及び短尺棒34が互いに対向して固定されている。しかも、グリッパ162は、長尺棒32及び短尺棒34の太さ方向の対向隙間を変更可能とされている。グリッパ162は、本発明の把持機構を構成している。
【0025】
図3のように、長尺棒32は、麺帯Mの幅を超える長さを有する丸棒であり、詳細にはパイプ体である。短尺棒34は、長尺棒32より短い長さを有する丸棒であり、長尺棒32と同様にパイプ体である。そのため、長尺棒32及び短尺棒34の間に麺帯Mを挟んで長尺棒32及び短尺棒34を接近させると、長尺棒32及び短尺棒34が協働して麺帯Mを把持することができる。なお、長尺棒32及び短尺棒34は、中実の棒状体であってもよい。
【0026】
<麺帯を加工装置の麺帯受入部に案内する作動>
ロボット16は、麺帯Mを加工装置(圧延ローラ82等に相当)の麺帯受入部に案内する作業を行うようにティーチングされる。本実施形態の場合、加工装置は複数あり、圧延ローラ4、82、84、86、88、及び麺線製造装置10が該当する。
図7、8は、圧延ローラ82から送り出された麺帯Mを圧延ローラ84の麺帯受入部844に案内する作業を上記案内作業の代表例として示している。
【0027】
図7の実線で示すように、圧延ローラ82で圧延されて送り出された麺帯Mは、支持部材822上で先端部を重力方向に垂れ下げた状態で支持される。このとき、圧延ローラ82による麺帯Mの送り出しは、麺帯Mの先端部が予め決められた位置に到達すると停止される。これは把持部30による麺帯Mの把持操作を容易にするためである。この工程は、本発明における第1工程に相当する。
【0028】
この麺帯Mに対し、
図8に矢印で示すように把持部30を麺帯Mの左側から麺帯Mに向けて移動して、
図7の実線のように麺帯Mの先端部より支持部材822側に位置する中間部を挟むように麺帯Mの厚さ方向の両側に長尺棒32及び短尺棒34を位置させる。このとき、長尺棒32は麺帯Mの前側(支持部材822側)に位置させ、短尺棒34は麺帯Mの後側(圧延ローラ84側)に位置させる。この工程は、本発明における第2工程に相当する。
【0029】
その後、
図7の仮想線で示すように、長尺棒32と短尺棒34との対向隙間を小さくして長尺棒32及び短尺棒34により麺帯Mを把持する。このとき、グリッパ162内の把持機構により長尺棒32及び短尺棒34の少なくともいずれか一方がグリッパ162に対して移動される。ここでは、短尺棒34が移動される。長尺棒32は麺帯Mを支持する機能を果たしているため、長尺棒32を移動させるより短尺棒34を移動させる方が容易である。この工程は、本発明における第3工程に相当する。同時に、把持部30を
図7にて反時計回りに回転させながら上方且つ後方に移動させる。このとき、圧延ローラ82による麺帯Mの送り出しは再開されている。そのため、麺帯Mは把持部30に把持されて圧延ローラ84の麺帯受入部844に向けて移動される。その間、麺帯Mは把持部30と圧延ローラ82との間の中間部が下方に撓んだ状態とされ、麺帯Mへの張力が過大とならないようにされている。この工程は、本発明における第4工程に相当する。
【0030】
図7の破線で示すように、把持部30に把持された麺帯Mの先端部が圧延ローラ84の麺帯受入部844に到達すると、把持部30の移動が停止される。このとき、把持部30は、長尺棒32が下、短尺棒34が上の位置関係とされている。長尺棒32が麺帯Mの下に位置することにより麺帯Mの幅方向全体を長尺棒32の長手方向で支持して麺帯Mの幅方向の変形を抑制している。
【0031】
<麺帯を麺帯受入部に案内後、把持部を麺帯から離間させる作動>
図9の仮想線で示すように、圧延ローラ84の麺帯受入部844に移動された麺帯Mの先端部は、圧延ローラ84に引き込まれる。麺帯Mが圧延ローラ84に引き込まれるのに合わせて把持部30を下方に移動して、把持部30と圧延ローラ84との間の麺帯Mに過大な張力が加えられないようにする。この工程は、本発明における第5工程に相当する。また、それと同時、若しくはそれに先立って、長尺棒32と短尺棒34との対向隙間を大きくして長尺棒32及び短尺棒34による麺帯Mの把持を解放する。即ち、グリッパ162内の把持機構により長尺棒32及び短尺棒34の少なくともいずれか一方がグリッパ162に対して移動される。ここでは、短尺棒34が矢印のように移動される。長尺棒32は麺帯Mを支持する機能を果たしているため、長尺棒32を移動させるより短尺棒34を移動させる方が容易である。この工程は、本発明における第6工程に相当する。
【0032】
その後、継続的に把持部30を下方、且つ前方に移動して、
図9の実線で示すように、麺帯Mが圧延ローラ82から圧延ローラ84に安定して送り込まれる状態とされる。把持部30が移動するとき、長尺棒32は麺帯Mを下方から支持しながら摺動する。その結果、麺帯Mは、支持部材822の上部から圧延ローラ84に渡され、それらの中間部が下方に撓んだ状態となる。この工程は、本発明における第7工程に相当する。把持部30が麺帯Mの撓みの最下端付近に到達したとき、
図10に矢印で示すように、把持部30が矢印のように麺帯Mの左側に移動して、麺帯Mを把持部30から解放する。即ち、麺帯Mは、把持部30の長尺棒32と短尺棒34との間に挟まれた状態から挟まれない状態へ移行される。この工程は、本発明における第8工程に相当する。
【0033】
このように圧延ローラ84に案内され送り込まれた麺帯Mは、麺帯Mの終端部が圧延ローラ82を通過するまで連続して圧延ローラ82から圧延ローラ84へ送り込まれる。
【0034】
圧延ローラ84から圧延ローラ86への麺帯Mの先端部の案内は、ロボット16がレール18上を移動することにより、上述した圧延ローラ82から圧延ローラ84への麺帯Mの先端部の案内と同様に行われる。以降、各圧延ローラ86、88、104間での麺帯Mの先端部の案内も同様に行われる。また、麺帯製造装置2から送り出される麺帯M1、M2も2枚重ねとされ、支持部材22の後端から垂れ下がった状態で把持部30により把持されて圧延ローラ4の麺帯受入部42に送り込まれる。麺帯M1、M2が把持部30により把持されて支持部材22から圧延ローラ4に送り込まれる作動は、上述した圧延ローラ82から圧延ローラ84への麺帯Mの先端部の案内と同様に行われる。更にまた、麺帯巻取棒62に巻き取られた麺帯MA、MBは、その外周側の先端部が垂れ下げられた状態で把持部30に把持されて圧延ローラ82の麺帯受入部824に案内され送り込まれる。従って、この場合の2つの麺帯巻取棒62は支持部材としても機能している。
【0035】
第1実施形態によれば、支持部材22、822等の支持部材により先端部が垂れ下がった状態に支持された麺帯Mの中間部をロボット16の把持部30により把持して圧延ローラ4、82、84等の加工装置へ案内する。そのため、把持部30による麺帯Mの把持を容易に行うことができる。しかも、従来のように無端コンベアそのものや無端コンベアを移動させる複雑な機構も不要となり、機構の故障の問題や大型化の問題を解消することができる。更に、複雑な機構を備えないため、機構に絡みつく麺帯のくずを除去する作業も省くことができる。更にまた、麺の製造装置にロボット16を導入することにより麺の製造を無人化することができ、安全、衛生面で優れた装置とすることができる。
【0036】
<第2実施形態の構成>
図11は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、把持部30の構成を変更した点である。その他の構成は、両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0037】
第2実施形態では、ロボット16のグリッパ162に下方(反グリッパ162側)開放の枠体36が固定されており、枠体36の下部(反グリッパ162側)には、長尺棒322及び短尺棒342が固定されている。短尺棒342は左右に一対の構成とされ、枠体36の下端部(反グリッパ162側端部)に回動自在に固定されている。また、長尺棒322は、短尺棒342より上側(グリッパ162側)で、短尺棒342との間に麺帯Mを挟持可能とされている。即ち、長尺棒322と短尺棒342との上下方向での隙間は、麺帯Mの厚さより僅かに大きくされている。各短尺棒342は、各外側に位置する端部が枠体36に対して回動することにより、
図11のように長尺棒322との間に麺帯Mを挟んだ状態と、
図12のように長尺棒322との間に麺帯Mを挟まず解放した状態とに切り換え可能とされている。従って、各短尺棒342は、長尺棒322の長手方向軸を内包する面に沿って回動される。枠体36は、3枚の板体を門型に組み合わせて構成されており、長尺棒322及び短尺棒342は、第1実施形態の長尺棒32及び短尺棒34と同様にパイプ状の丸棒により構成されている。
【0038】
<第2実施形態の作用>
第2実施形態の作用を上述の
図7、9を参照しながら説明する。支持部材822に支持され先端部が垂れ下げられた麺帯Mを把持部30が把持するときは、短尺棒342を
図12のように回動した状態で麺帯Mの後側から把持部30を接近させ、長尺棒322の長手方向を麺帯Mの幅方向の面に沿って位置させる。その後、短尺棒342を
図11のように回動して、長尺棒322と短尺棒342との間に麺帯Mを挟持する。従って、このとき長尺棒322は、麺帯Mの後側(圧延ローラ84側)に位置し、短尺棒342は麺帯Mの前側(支持部材822側)に位置する。
【0039】
この状態から麺帯Mの先端部を圧延ローラ84の麺帯受入部844に向けて移動させるときは、把持部30を
図7にて反時計回りに回転して、
図11のように短尺棒342が麺帯Mを下方から支持して長尺棒322との間に把持した状態とする。
【0040】
図9のように麺帯Mの先端部が圧延ローラ84に送り込まれた後は、把持部30は下方、且つ前方に移動されて、麺帯Mが
図9の実線で示す状態となると、短尺棒342を
図12のように回動して麺帯Mを把持部30から解放する。
【0041】
第2実施形態の把持部30によれば、第1実施形態の把持部30と同様、支持部材822等の支持部材に支持された麺帯Mを把持して圧延ローラ84等の加工装置に麺帯Mの先端部を案内することができる。
【0042】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、ロボットを複数の加工装置に順次移動可能とするために複数の加工装置同士間を結ぶようにレールを設けたが、レールに代えて、ロボットを搭載して複数の加工装置同士間を結ぶようにフロア上を走行するAGV(無人搬送車)、又はAMR(自立走行型搬送車)を設けてもよい。また、上記実施形態では、麺の製造装置の左側にロボットを1台配置して麺帯を加工装置に案内するものとしたが、麺の製造装置の両側にロボットを1台ずつ、合計2台配置して麺帯を両側から支持して加工装置に案内する構成としてもよい。その場合、把持部の長尺棒は、その長手方向長さを短尺棒と同程度とされる。更にまた、把持部は、空気圧を利用した吸着器を麺帯の表面に吸着させて麺帯を把持するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 麺帯製造装置
22 支持部材
4 圧延ローラ(加工装置)
42 麺帯受入部
6 麺帯熟成装置
62 麺帯巻取棒(支持部材)
8 連続圧延装置
82、84、86、88 圧延ローラ(加工装置)
822、842、862、882 支持部材
824、844、864、884 麺帯受入部
10 麺線製造装置(加工装置)
102 麺帯受入部
104 圧延ローラ
12 粉体散布機
13 コンベア
14 幅寄せローラ
16 ロボット
162 グリッパ(把持機構)
164 アーム部
18 レール
30 把持部
32、322 長尺棒
34、342 短尺棒
36 枠体
40 機台
M、M1、M2、MA、MB 麺帯
【手続補正書】
【提出日】2023-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
長尺で帯状の麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げて支持する支持部材と、
ロボットのアーム部の先端に固定され、前記支持部材により垂れ下げて支持された麺帯の先端部より前記支持部材側に位置する中間部を把持し、麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げた状態で麺帯を加工する加工装置に向けて移動する把持部と、
を備え、
前記把持部は、
麺帯の幅を超える長さを有する棒状の長尺棒と、
該長尺棒より短い長さで前記長尺棒と協働して麺帯を把持する一対の棒状の短尺棒と、
前記長尺棒及び前記短尺棒間で麺帯を挟持した状態、又は前記挟持を解放した状態とするべく、前記長尺棒及び前記短尺棒を互いの太さ方向で対向させて、前記長尺棒及び前記短尺棒の間に麺帯を厚さ方向で把持可能とするように、前記短尺棒を、前記長尺棒の長手方向両端に対応する位置で、前記短尺棒の各長手方向端部を中心として、前記長尺棒の長手方向軸を内包する面と平行に回動可能とする枠体と、
を備える麺帯案内装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
長尺で帯状の麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げて支持する支持部材と、
ロボットのアーム部の先端に固定され、前記支持部材により垂れ下げて支持された麺帯の先端部より前記支持部材側に位置する中間部を把持し、麺帯の先端部を重力方向に垂れ下げた状態で麺帯を加工する加工装置に向けて移動する把持部と、
を備え、
前記把持部は、
麺帯の幅を超える長さを有する棒状の長尺棒と、
該長尺棒より短い長さで前記長尺棒と協働して麺帯を把持する棒状の短尺棒と、
前記長尺棒及び前記短尺棒間で麺帯を挟持した状態、又は前記挟持を解放した状態とするべく、前記長尺棒及び前記短尺棒の各長手方向を麺帯の幅方向とした状態で、前記長尺棒及び前記短尺棒を、その太さ方向に互いに接近又は離間させる把持機構と、
を備える麺帯案内装置。