(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109401
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20230801BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230801BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20230801BHJP
A61F 13/02 20060101ALI20230801BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230801BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230801BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20230801BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20230801BHJP
A61L 15/58 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61F7/08 334P
C09J7/38
C09J7/20
A61F13/02 310J
A61F13/02 310Z
A61F7/08 334H
A61M37/00
A61P17/00
A61K9/70 401
A61K45/00
A61K47/02
A61L15/22 310
A61L15/44 100
A61L15/58 310
A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010891
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雅彦
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C099
4C267
4J004
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD21
4C076EE10
4C076FF70
4C081AA03
4C081AA12
4C081BB03
4C081BB04
4C081CE02
4C081CF162
4C081CG08
4C081DC03
4C084AA17
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4C084NA05
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4C084ZA891
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4C099AA01
4C099CA19
4C099EA09
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4C099JA04
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4C099NA20
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4C267AA72
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA07
4J004CC03
4J004CD10
4J004CE01
4J004FA10
(57)【要約】
【課題】皮膚への貼付用として利用可能であり、貼付箇所に対する保温効果を有する粘着シートの提供。
【解決手段】皮膚への貼付用である粘着シート1であって、粘着シート1は、粘着層11と、粘着層11の一方の面11a上に設けられた保温層12と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚への貼付用である粘着シートであって、
前記粘着シートは、粘着層と、前記粘着層の一方の面上に設けられた保温層と、を備えている、粘着シート。
【請求項2】
前記保温層が発熱性を有する、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記保温層が断熱性を有する、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着層が、経皮吸収可能な薬剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着シートが、さらに、水蒸気バリア性を有するバリア基材を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
発熱性を有する前記保温層が、鉄粉、水、保水剤及び活性炭を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
断熱性を有する前記保温層の熱伝導率が、0.3W/(m・K)以下である、請求項3~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
JIS K 7129に準拠して、条件Bで測定された、前記バリア基材の水蒸気透過量が、1.5g/m2・day以下である、請求項5に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、産業界の幅広い分野で利用されている。なかでも近年は、皮膚への貼付用の粘着シートが種々検討されている。
このような用途の粘着シートとしては、経皮吸収薬剤シートがよく知られている。経皮吸収薬剤シートは、粘着シートの粘着面に薬剤を含有させ、粘着面を皮膚に貼付することで、使用される。この場合、薬剤が粘着シートの粘着面から皮膚の表面へ移行し、さらに皮膚の表面から生体内へ移行して、生体内で薬効を発揮する。
【0003】
皮膚への貼付用の粘着シートとしては、回路を備えたものも、注目されている。このような粘着シートは、ヒトが身に着けて利用する、所謂ウエアラブルデバイスを構成するものとして有用である。
【0004】
これら粘着シートは、皮膚への貼付用のものとしての一例であるが、皮膚へ貼付するという目的に沿って、他の分野の粘着シートとは、異なる特性を有することが求められる場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような中、皮膚への貼付用の粘着シートのうち、保温効果を有するものは、特に有用性が高い。これは、皮膚での貼付箇所を温めるという効果自体が有用であるのに加え、その他の付随的な効果も期待されるからである。例えば、経皮吸収薬剤シートの場合には、皮膚での貼付箇所の温度が上昇することで、薬剤の生体内への移行量が増大することが期待される。これに対して、このような保温効果を有する貼付シートは、従来知られていない。
【0007】
本発明は、皮膚への貼付用として利用可能であり、貼付箇所に対する保温効果を有する粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].皮膚への貼付用である粘着シートであって、前記粘着シートは、粘着層と、前記粘着層の一方の面上に設けられた保温層と、を備えている、粘着シート。
[2].前記保温層が発熱性を有する、[1]に記載の粘着シート。
[3].前記保温層が断熱性を有する、[1]に記載の粘着シート。
[4].前記粘着層が、経皮吸収可能な薬剤を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[5].前記粘着シートが、さらに、水蒸気バリア性を有するバリア基材を備えている、[1]~[4]のいずれか一項に記載の粘着シート。
【0009】
[6].発熱性を有する前記保温層が、鉄粉、水、保水剤及び活性炭を含む、[2]~[5]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[7].断熱性を有する前記保温層の熱伝導率が、0.3W/(m・K)以下である、[3]~[5]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[8].JIS K 7129に準拠して、条件Bで測定された、前記バリア基材の水蒸気透過量が、1.5g/m2・day以下である、[5]に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮膚への貼付用として利用可能であり、貼付箇所に対する保温効果を有する粘着シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】皮膚へ貼付された状態の本実施形態の粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】皮膚へ貼付され、粘着層が硬化された状態の、本実施形態の粘着シートの一例を、模式的に示す断面図である。
【
図4】本実施形態の粘着シートを、皮膚から剥離させた状態の一例を、模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<粘着シート>>
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、皮膚への貼付用であって、前記粘着シートは、粘着層と、前記粘着層の一方の面上に設けられた保温層と、を備えている。
本実施形態の粘着シートは、このような構成を有することにより、貼付箇所に対する保温効果を有する。
【0013】
本実施形態の粘着シートは、その貼付対象である皮膚での貼付箇所を温めることが可能である。また、例えば、前記粘着シートの前記粘着層が活性成分を含む場合には、このように皮膚での貼付箇所を温めることで、前記粘着シートから皮膚の表面への前記活性成分の移行量が増大することがある。さらに、前記活性成分が経皮吸収可能な薬剤である場合には、皮膚の表面から生体内への前記薬剤の移行量が増大することがある。特に、粘着シートの貼付箇所に毛穴が存在する場合には、前記薬剤の毛穴からの吸収が促進されることで、生体内への前記薬剤の移行量がさらに増大することがある。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施形態の粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す粘着シート1は、粘着層11と、粘着層11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a上に設けられた保温層12と、を備えている。
【0016】
粘着シート1は、さらに、基材13を備えている。粘着シート1において、基材13は、粘着層11と、保温層12と、の間に配置されている。より具体的には、粘着シート1においては、粘着層11の第1面11a上に基材13が設けられ、基材13の粘着層11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に保温層12が設けられている。
【0017】
粘着シート1は、さらに、粘着層11の他方の面(保温層12側とは反対側の面、本明細書においては、「第2面」と称することがある)11b上に、剥離フィルム14を備えている。
【0018】
粘着シート1を、その保温層12側の上方から見下ろして平面視したとき、剥離フィルム14は、粘着層11よりも、大きさが大きくなっており、剥離フィルム14の周縁部は、粘着層11に覆われていない。
また、粘着シート1を同様に平面視したとき、基材13も、粘着層11よりも、大きさが大きくなっている。
【0019】
すなわち、粘着シート1は、その周縁部を除いて、剥離フィルム14、粘着層11、基材13及び保温層12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。そして、粘着シート1の周縁部においては、剥離フィルム14及び基材13が、粘着層11を介さずに、直接積層されている。
【0020】
粘着シート1において、剥離フィルム14及び粘着層11からなる積層物は、その基材13に対向する側の面がすべて、基材13の保温層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13bによって覆われている。より具体的には、粘着層11の第1面11aと、粘着層11の側面11cと、剥離フィルム14の粘着層11側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)14aのうち、粘着層11が積層されていない領域と、のすべてが、基材13の第2面13bによって、覆われている。
【0021】
<粘着層>
粘着層11は、その粘着力によって、粘着シート1を皮膚等の貼付対象に貼付するための層である。
【0022】
粘着層11は、例えば、外部からの刺激によって粘着力が低下する易剥離性粘着層であってもよいし、このような特性を示さない(すなわち、外部から刺激が加えられても、粘着力が低下しない)、公知の非易剥離性粘着層であってもよい。
易剥離性の粘着層11は、その粘着力が低下する前は、貼付対象からの粘着シート1の剥離を高度に抑制するとともに、その粘着力が低下した後は、貼付対象からの粘着シート1の剥離を容易とする。
【0023】
粘着層11が易剥離性粘着層である場合、粘着層11に対して、その外部から刺激が加えられることによって、粘着層11の粘着力が低下する。
このような易剥離性の粘着層11としては、例えば、外部からの刺激として、光の照射又は加熱が施されることによって硬化する硬化性成分を含み、前記硬化性成分の硬化によって、粘着力が低下する層が挙げられる。すなわち、易剥離性の粘着層11としては、例えば、光硬化性粘着層、熱硬化性粘着層が挙げられる。
【0024】
前記光硬化性粘着層としては、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性粘着層、電子線の照射により硬化する電子線硬化性粘着層等が挙げられる。
前記紫外線硬化性粘着層又は電子線硬化性粘着層としては、例えば、ベース樹脂、放射線重合性化合物、及び放射線重合開始剤等を含む粘着層が挙げられる。
【0025】
前記光硬化性粘着層が含む前記ベース樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂(粘着剤)、シリコーン系樹脂(粘着剤)、ポリエステル系樹脂(粘着剤)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂(粘着剤)、スチレン系エラストマー樹脂(粘着剤)、ポリイソプレン系樹脂(粘着剤)、ポリイソブチレン系樹脂(粘着剤)、ウレタン系樹脂(粘着剤)等の、粘着層の含有成分(粘着剤)として公知のものが挙げられる。
これらの中でも、前記ベース樹脂は、耐熱性に優れるアクリル系樹脂(粘着剤)であることが好ましい。
前記アクリル系樹脂は、モノマーとしての主成分が(メタ)アクリル酸エステルであるポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)である。
【0026】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0027】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられる。前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合には、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
前記アクリル系樹脂が有する、(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0028】
前記アクリル系樹脂は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の、他のモノマーから誘導された構成単位を有していてもよい。
【0029】
前記アクリル系樹脂を構成する前記他のモノマーで好ましいものとしては、その1分子中に1個の重合性基と、1個又は2個以上の反応性官能基と、を共に有する反応性官能基含有モノマーが挙げられる。前記反応性官能基は、他の化合物と反応可能な、重合性基以外の基である。このような反応性官能基含有モノマーを用いて得られたアクリル系樹脂は、その凝集力、耐熱性等の改質等が可能である。
【0030】
前記反応性官能基含有モノマーは、特に限定されない。
前記反応性官能基含有モノマーとして、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等のヒドロキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシ基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー(アミド基含有モノマー);(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸(tert-ブチルアミノ)エチル等のアミノ基又は置換アミノ基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;イソプレン、ブタジエン等のオレフィン系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基含有モノマー;N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルイミダゾール等の窒素原子含有環を有するモノマー等が挙げられる。
前記アクリル系樹脂が有する、反応性官能基含有モノマーから誘導された構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0031】
前記反応性官能基含有モノマーから誘導された構成単位を有するアクリル系樹脂において、前記反応性官能基含有モノマーから誘導された構成単位は、アクリル系樹脂中の主鎖の末端部のみに存在していてもよいし、主鎖の非末端部のみに存在していてもよいし、主鎖の末端部及び非末端部の両方に存在していてもよい。
【0032】
前記アクリル系樹脂を構成する前記他のモノマーとしては、ポリマー同士を架橋するための多官能性モノマーも挙げられる。
前記多官能性モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、多官能性モノマーは、エポキシ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
前記アクリル系樹脂が有する、前記多官能性モノマーから誘導された構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
前記光硬化性粘着層が含む前記ベース樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0034】
前記光硬化性粘着層が含む前記放射線重合性化合物としては、例えば、紫外線、電子線等の放射線の照射によって三次元架橋可能な重合性炭素-炭素二重結合を、1分子中に2個以上有する低分子量化合物が挙げられる。
【0035】
前記放射線重合性化合物として、より具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;エステルアクリレートオリゴマー、2-プロペニル-ジ-3-ブテニルシアヌレート等の炭素-炭素二重結合含有基を有するシアヌレート系化合物;トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、2-ヒドロキシエチルビス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2-アクリロキシエチル)2-[(5-アクリロキシヘキシル)-オキシ]エチルイソシアヌレート、トリス(1,3-ジアクリロキシ-2-プロピル-オキシカルボニルアミノ-n-ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(1-アクリロキシエチル-3-メタクリロキシ-2-プロピル-オキシカルボニルアミノ-n-ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(4-アクリロキシ-n-ブチル)イソシアヌレート等の炭素-炭素二重結合含有基を有するイソシアヌレート系化合物;市販のオリゴエステルアクリレート;芳香族系ウレタンアクリレート;脂肪族系ウレタンアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、前記放射線重合性化合物は、官能基数が6以上(6官能以上)のオリゴマーであることが好ましく、官能基数が15以上(15官能以上)であるオリゴマーであることがより好ましい。このような放射線重合性化合物を用いることにより、放射線の照射によって前記ベース樹脂(硬化性樹脂)をより確実に硬化させることができる。また、このときのベース樹脂(硬化性樹脂)は、ウレタンアクリレートであることが好ましい。ウレタンアクリレートを用いることにより、光硬化性粘着層は、適度な柔軟性を有し、その貼付対象からの剥離時に、割れが抑制される効果が高い。
【0036】
前記ウレタンアクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル型又はポリエーテル型等のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4-ジイソシアネート等)と、を反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等)を反応させて得られたもの等が挙げられる。
【0037】
前記光硬化性粘着層が含む前記放射線重合性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0038】
光硬化性粘着層は、前記放射線重合性化合物として、例えば、重量平均分子量が異なる2種以上の硬化性樹脂を含有していることが好ましい。このような場合、硬化性樹脂を利用すれば、放射線の照射による硬化性樹脂の架橋度を容易に制御でき、粘着シート1を貼付対象から容易に剥離できる。
重量平均分子量が異なる2種以上の硬化性樹脂は、例えば、第1硬化性樹脂と、前記第1硬化性樹脂よりも重量平均分子量が大きい第2硬化性樹脂と、の組み合わせであってもよい。
【0039】
前記光硬化性粘着層が含む前記放射線重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ミヒラーズケトン、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾイン、ジベンジル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2-ナフタレンスルホニルクロリド、1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、o-アクリルオキシベンゾフェノン、p-アクリルオキシベンゾフェノン、o-メタクリルオキシベンゾフェノン、p-メタクリルオキシベンゾフェノン、p-(メタ)アクリルオキシエトキシベンゾフェノン、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2-エタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアクリレートのベンゾフェノン-4-カルボン酸エステル、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、アゾビスイソブチロニトリル、β-クロールアンスラキノン、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート、ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、2,4,5-トリアリ-ルイミダゾール二量体等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、反応性が高く、放射線重合開始剤としての機能をより高く発揮できる点では、前記放射線重合開始剤は、ベンゾフェノン誘導体又はアルキルフェノン誘導体であることが好ましい。
【0041】
本明細書においては、ある特定の化合物において、1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造が想定される場合、このような置換された構造を有する化合物を、上述の特定の化合物の「誘導体」と称する。
本明細書において、「基」とは、特に断りのない限り、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0042】
前記光硬化性粘着層が含む前記放射線重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0043】
前記光硬化性粘着層は、例えば、粘着付与剤、架橋剤等を含んでいてもよい。
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂等が挙げられる。これら粘着付与剤は、可塑剤を含まないことが好ましい。
【0044】
前記架橋剤は特に限定されない。
前記架橋剤として、具体的には、例えば、イソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤)、エポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤)、尿素樹脂系架橋剤、メチロール系架橋剤(メチロール基を有する架橋剤)、キレート系架橋剤(キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)、メラミン系架橋剤(メラミン誘導体である架橋剤)、多価金属キレート系架橋剤(多価金属イオンを含むキレート構造を有する架橋剤)、酸無水物系架橋剤(酸無水物誘導体である架橋剤)、ポリアミン系架橋剤(ポリアミン誘導体である架橋剤)、カルボキシル基含有ポリマー系架橋剤等が挙げられる。
【0045】
前記光硬化性粘着層が含む前記粘着付与剤及び架橋剤は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0046】
前記光硬化性粘着層は、前記ベース樹脂と、前記放射線重合性化合物と、前記放射線重合開始剤と、前記粘着付与剤と、前記架橋剤と、前記活性成分(活性成分については、後で詳細に説明する)と、のいずれにも該当しない、他の成分を含んでいてもよい。
【0047】
前記他の成分としては、例えば、後述の活性成分の吸収促進剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0048】
光硬化性粘着層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0049】
光硬化性粘着層における前記他の成分の含有量は、特に限定されず、他の成分の種類に応じて任意に選択できる。
【0050】
粘着層11が前記光硬化性粘着層(光硬化性の易剥離性粘着層)である場合、粘着層11において、前記ベース樹脂の含有量100質量部に対する、前記放射線重合性化合物の含有量の割合は、50~200質量部であることが好ましく、60~160質量部であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11の光硬化性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、放射線重合性化合物の過剰使用が抑制される。
【0051】
粘着層11が前記光硬化性粘着層(光硬化性の易剥離性粘着層)である場合、粘着層11において、前記ベース樹脂の含有量100質量部に対する、前記放射線重合開始剤の含有量の割合は、0.1~25質量部であることが好ましく、1~12質量部であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11の光硬化性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、放射線重合性化合物の過剰使用が抑制される。
【0052】
粘着層11が前記光硬化性粘着層(光硬化性の易剥離性粘着層)である場合、粘着層11において、粘着層11の総質量に対する、前記ベース樹脂、放射線重合性化合物、及び放射線重合開始剤の合計含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、85質量%以上、90質量%以上、及び95質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11の光硬化物の特性が、より良好となる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する粘着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記ベース樹脂、放射線重合性化合物、及び放射線重合開始剤の合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0053】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0054】
粘着層11が前記光硬化性粘着層(光硬化性の易剥離性粘着層)であり、前記架橋剤を含む場合、粘着層11において、前記ベース樹脂の含有量100質量部に対する、前記架橋剤の含有量の割合は、0.1~20質量部であることが好ましく、3~12質量部であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、粘着シート1の取り扱い性がより良好となる。
【0055】
粘着層11が前記光硬化性粘着層(光硬化性の易剥離性粘着層)であり、前記架橋剤を含む場合、粘着層11において、粘着層11の総質量に対する、前記ベース樹脂、放射線重合性化合物、放射線重合開始剤、及び架橋剤の合計含有量の割合は、90質量%以上であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11の光硬化物の特性が、より良好となる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する粘着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記ベース樹脂、放射線重合性化合物、放射線重合開始剤、及び架橋剤の合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0056】
前記熱硬化性粘着層としては、例えば、ベース樹脂、及び熱硬化性成分等を含む粘着層が挙げられる。
【0057】
前記熱硬化性粘着層が含む前記ベース樹脂としては、例えば、先に説明した、前記光硬化性粘着層が含むベース樹脂と同様のものが挙げられる。
【0058】
前記熱硬化性粘着層が含む前記ベース樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0059】
前記熱硬化性粘着層が含む前記熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等の各種の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0060】
前記熱硬化性粘着層が含む前記熱硬化性成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0061】
粘着層11が前記熱硬化性粘着層(熱硬化性の易剥離性粘着層)である場合、粘着層11において、前記ベース樹脂の含有量100質量部に対する、前記熱硬化性成分の含有量の割合は、30~200質量部であることが好ましく、50~150質量部であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11の熱硬化性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、熱硬化性成分の過剰使用が抑制される。
【0062】
前記熱硬化性粘着層は、前記ベース樹脂と、前記熱硬化性成分と、前記活性成分と、のいずれにも該当しない、他の成分を含んでいてもよい。
【0063】
前記他の成分としては、例えば、後述の活性成分の吸収促進剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0064】
熱硬化性粘着層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0065】
熱硬化性粘着層における前記他の成分の含有量は、特に限定されず、他の成分の種類に応じて任意に選択できる。
【0066】
粘着層11が前記熱硬化性粘着層(熱硬化性の易剥離性粘着層)である場合、粘着層11において、粘着層11の総質量に対する、前記ベース樹脂、及び熱硬化性成分の合計含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、85質量%以上、90質量%以上、及び95質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11の熱硬化物の特性が、より良好となる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する粘着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記ベース樹脂、及び熱硬化性成分の合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0067】
粘着層11の易剥離性の程度は、例えば、特定の貼付対象に対する、粘着力が低下する前の粘着層11の粘着力と、粘着力が低下した後の粘着層11の粘着力と、を比較することで、判定できる。
本明細書においては、「粘着力が低下する前の粘着層の粘着力」とは、「硬化させる前の粘着層の粘着力」と同義であり、「硬化前粘着力」と称することがある。また、「粘着力が低下した後の粘着層の粘着力」とは、「硬化させた後の粘着層の粘着力」と同義であり、「硬化後粘着力」と称することがある。
【0068】
粘着層11が易剥離性粘着層である場合、粘着層11が前記光硬化性粘着層及び熱硬化性粘着層のいずれであるかによらず、貼付対象がステンレス板である場合の、粘着力が低下する前の粘着層11の粘着力(前記硬化前粘着力)は、0.1N/25mm以上であることが好ましく、例えば、0.5N/25mm以上であってもよい。前記硬化前粘着力が前記下限値以上であることで、目的外のタイミングでの、貼付箇所からの粘着シート1の剥離を抑制する効果が、より高くなる。
【0069】
前記硬化前粘着力の上限値は、特に限定されない。粘着層11の形成がより容易である点では、前記硬化前粘着力は100N/25mm以下であることが好ましい。
【0070】
粘着層11が易剥離性粘着層である場合、粘着層11が前記光硬化性粘着層及び熱硬化性粘着層のいずれであるかによらず、貼付対象がステンレス板である場合には、粘着層11においては、低下する前の粘着力に対する、低下した後の粘着力の割合([粘着層11の前記硬化後粘着力]/[粘着層11の前記硬化前粘着力]×100)が、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、目的とするタイミングでの、貼付箇所からの粘着シート1の剥離が、より容易となる。
本明細書においては、粘着層における、「低下する前の粘着力に対する、低下した後の粘着力の割合」を「硬化後粘着力の割合」と称することがある。
【0071】
粘着層11における、前記硬化後粘着力の割合の下限値は、特に限定されない。粘着層11の形成がより容易である点では、前記硬化後粘着力の割合は0.1%以上であることが好ましい。
【0072】
粘着層11の前記硬化前粘着力と前記硬化後粘着力は、いずれも、後述する実施例に記載の方法で、測定できる。
【0073】
前記非易剥離性粘着層としては、例えば、非硬化性樹脂等を含む粘着層が挙げられる。
【0074】
前記非易剥離性粘着層が含む前記非硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂(粘着剤)、シリコーン系樹脂(粘着剤)、ポリエステル系樹脂(粘着剤)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂(粘着剤)、スチレン系エラストマー樹脂(粘着剤)、ポリイソプレン系樹脂(粘着剤)、ポリイソブチレン系樹脂(粘着剤)、ウレタン系樹脂(粘着剤)等の、粘着層の含有成分(粘着剤)として公知のものが挙げられる。
【0075】
前記非易剥離性粘着層が含む前記非硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0076】
前記非易剥離性粘着層は、前記非硬化性樹脂に該当しない、他の成分を含んでいてもよい。
非易剥離性粘着層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
非易剥離性粘着層における前記他の成分の含有量は、特に限定されず、他の成分の種類に応じて任意に選択できる。
【0077】
粘着層11が前記非易剥離性粘着層である場合、粘着層11において、粘着層11の総質量に対する、前記非硬化性樹脂の含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、85質量%以上、90質量%以上、及び95質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11の特性が、より良好となる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する粘着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記非硬化性樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0078】
粘着層11は、これが易剥離性粘着層及び非易剥離性粘着層のいずれであるかによらず、粘着シート1に新たな機能を付与するための活性成分を含んでいてもよい。
前記活性成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0079】
好ましい活性成分としては、例えば、生体に対して薬効等の何らかの使用効果を示す薬剤が挙げられる。
前記薬剤は、例えば、皮膚の表面から皮膚を介して生体内に吸収される性質を有する、経皮吸収可能な薬剤であってもよいし、このような性質を有しない、経皮吸収不能な薬剤であってもよい。すなわち、粘着シート1は、経皮吸収薬剤シートであってもよいし、それ以外の粘着シートであってもよい。
【0080】
前記経皮吸収可能な薬剤としては、ロキソプロフェンナトリウム、フルルビプロフェン等の消炎剤;イブプロフェン等の鎮痛剤;l-メントール等が挙げられる。
前記経皮吸収不能な薬剤としては、日焼け止め剤等が挙げられる。
【0081】
前記活性成分は、水和物及び非水和物のいずれであってもよい。
【0082】
皮膚は、その表面温度が上昇することで、血流量が増大し、経皮吸収可能な成分の生体内への移行量の増大が期待されるため、経皮吸収可能な薬剤は、より好ましい活性成分である。すなわち、粘着層11が経皮吸収可能な薬剤を含む粘着シート1は、より好ましいものの一例として挙げられる。
一方、経皮吸収不能な薬剤であっても、皮膚に対する外用薬、化粧料等は、皮膚の表面温度が上昇することで、皮膚へ馴染む特性の向上が期待されるため、経皮吸収不能な薬剤も、好ましい活性成分である。
【0083】
粘着層11が含む前記活性成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0084】
粘着層11が前記易剥離性粘着層であり、前記活性成分を含む場合、粘着層11において、前記ベース樹脂の含有量100質量部に対する、前記活性成分の含有量の割合は、0.5~20質量部であることが好ましく、1.0~10質量部であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着層11が活性成分を含むことにより得られる効果が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、活性成分の過剰使用が抑制される。
【0085】
粘着層11は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。粘着層11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0086】
本明細書においては、粘着層11の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0087】
粘着層11の厚さは、0.5~1000μmであることが好ましく、1~100μmであることがより好ましく、2~50μmであることがさらに好ましい。粘着層11の厚さが前記下限値以上であることで、粘着層11の粘着力がより大きくなる。粘着層11の厚さが前記上限値以下であることで、粘着層11が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「粘着層11の厚さ」とは、粘着層11全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着層11の厚さとは、粘着層11を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0088】
<保温層>
保温層12は、貼付対象での粘着シート1(換言すると粘着層11)の貼付箇所の温度を高めに維持して、保温するための層である。
【0089】
保温層12としては、例えば、発熱性を有する保温層(本明細書においては、「発熱性保温層」と称することがある)、断熱性を有する保温層(本明細書においては、「断熱性保温層」と称することがある)等が挙げられる。
【0090】
発熱性保温層12は、それ自体が発熱することによって、粘着シート1の貼付箇所に対する保温効果を示す。
発熱性保温層12としては、例えば、発熱剤を含むものが挙げられる。
【0091】
前記発熱剤としては、例えば、空気の存在下で酸化反応によって発熱する成分又は組成物が挙げられ、公知のものであってよい。
このような発熱剤で好ましいものとしては、例えば、鉄粉、水、保水剤及び活性炭を含む組成物(発熱性組成物)が挙げられる。すなわち、発熱性保温層12は、鉄粉、水、保水剤及び活性炭を含む発熱性組成物であることが好ましい。
前記保水剤としては、例えば、吸水性樹脂等が挙げられる。
【0092】
発熱性保温層12が含む前記発熱剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0093】
発熱性保温層12は、前記発熱剤(例えば、鉄粉、水、保水剤及び活性炭を含む組成物)以外に他の成分を含んでいてもよい。
発熱性保温層12が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0094】
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の成分としては、例えば、木粉、ヒル石、珪藻土、前記活性成分等が挙げられる。
【0095】
前記木粉、ヒル石及び珪藻土は、上述の鉄粉、水、保水剤及び活性炭を含む前記発熱性組成物での併用成分として好適である。
前記活性成分は、粘着層11が含む活性成分と同様のものである。粘着シート1は、発熱性保温層12が前記活性成分を含む場合も、粘着層11が前記活性成分を含む場合と同様の効果を奏する。発熱性保温層12及び粘着層11がともに前記活性成分を含む場合、発熱性保温層12が含む活性成分と、粘着層11が含む活性成分とは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0096】
発熱性保温層12において、発熱性保温層12の総質量に対する、前記発熱剤の含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、発熱性保温層12の発熱性がより高くなり、粘着シート1(換言すると発熱性保温層12)の貼付箇所に対する保温効果が、より高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する保温層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記発熱剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0097】
発熱性保温層12における前記他の成分の含有量は、特に限定されず、他の成分の種類に応じて任意に選択できる。
【0098】
断熱性保温層12は、それが断熱性を有することによって、粘着シート1が貼付対象に貼付された状態で、粘着シート1の貼付箇所が帯びている熱を、前記貼付箇所と断熱性保温層12との間で蓄積(蓄熱)し、前記貼付箇所に対する保温効果を示す。
断熱性保温層12としては、例えば、断熱剤を含むものが挙げられ、断熱性材料がシート状に成形されたものであってもよい。
【0099】
前記断熱剤又は断熱性材料となる断熱成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0100】
断熱性保温層12が含む前記断熱成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0101】
断熱性保温層12は、前記断熱成分以外に他の成分を含んでいてもよい。
断熱性保温層12が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0102】
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の成分としては、例えば、前記活性成分等が挙げられる。
前記活性成分は、粘着層11が含む活性成分と同様のものである。粘着シート1は、断熱性保温層12が前記活性成分を含む場合も、粘着層11が前記活性成分を含む場合と同様の効果を奏する。断熱性保温層12及び粘着層11がともに前記活性成分を含む場合、断熱性保温層12が含む活性成分と、粘着層11が含む活性成分とは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0103】
断熱性保温層12において、断熱性保温層12の総質量に対する、前記断熱成分の含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、断熱性保温層12の断熱性がより高くなり、粘着シート1(換言すると断熱性保温層12)の貼付箇所に対する保温効果が、より高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する保温層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記断熱成分の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0104】
断熱性保温層12の熱伝導率は、特に限定されないが、0.3W/(m・K)以下であることが好ましく、0.25W/(m・K)以下であることがより好ましい。前記熱伝導率が前記上限値以下であることで、断熱性保温層12の断熱性がより高くなり、粘着シート1(換言すると断熱性保温層12)の貼付箇所に対する保温効果が、より高くなる。
【0105】
断熱性保温層12の熱伝導率の下限値は、特に限定されない。断熱性保温層12の形成がより容易である点では、前記熱伝導率は0.001W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0106】
断熱性保温層12の熱伝導率は、例えば、レーザーフラッシュ法又は熱線法等により、測定できる。
【0107】
保温層12は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保温層12が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。ただし、保温層12が複数層からなる場合には、すべての層が発熱性保温層であるか、又はすべての層が断熱性保温層であることが好ましい。
【0108】
保温層12の厚さは、特に限定されないが、10~6000μmであることが好ましい。保温層12の厚さが前記下限値以上であることで、保温層12の保温力がより大きくなる。保温層12の厚さが前記上限値以下であることで、保温層12が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「保温層12の厚さ」とは、保温層12全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保温層12の厚さとは、保温層12を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0109】
<基材>
基材13は、フィルム状又はシート状であり、粘着層11及び保温層12の積層構造を安定して維持するための層である。また、基材13は、その含有成分を調節することで、他の機能を発現させることもできる。
【0110】
基材13は、樹脂を含む樹脂層(樹脂製基材)であることが好ましい。
【0111】
基材13が含む前記樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0112】
前記ポリオレフィンは、オレフィンから誘導された構成単位を有する樹脂であれば、特に限定されず、例えば、構成単位が1種のみである単独重合体であってもよいし、構成単位が2種以上である共重合体であってもよく、前記共重合体は、例えば、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0113】
前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン共重合体、アイオノマー樹脂(ION樹脂)等が挙げられる。
【0114】
前記ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)等が挙げられる。
前記エチレン共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)等が挙げられる。
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂が挙げられる。
【0115】
前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。
【0116】
前記ポリビニル系樹脂は、ビニル基(エテニル基)を有するモノマーから誘導された構成単位を有する樹脂である。前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。
【0117】
前記フッ素樹脂は、フッ素原子を有する樹脂である。
前記フッ素樹脂としては、例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が挙げられる。
【0118】
基材13が含む前記樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0119】
基材13は、前記ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル系樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0120】
基材13は、前記樹脂のみを含んでいてもよいし、前記樹脂と、これ以外の非樹脂成分と、を含んでいてもよい。
【0121】
前記非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤等が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、前記活性成分の吸収促進剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0122】
基材13が含む前記非樹脂成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0123】
基材13において、基材13の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、基材13において前記樹脂を用いたことにより得られる効果がより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されず、前記割合は100質量%以下であればよい。
前記割合は、通常、後述する基材形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0124】
基材13が前記ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル系樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を含む場合、基材13において、前記樹脂の総含有量に対する、前記ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル系樹脂及びフッ素樹脂の合計含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、基材13が上述の特定範囲の樹脂を含むことにより得られる効果がより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されず、前記割合は100質量%以下であればよい。
前記割合は、通常、後述する基材形成用組成物における、前記樹脂の総含有量(質量部)に対する、前記ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル系樹脂及びフッ素樹脂の合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0125】
基材13は、ガスバリア性を有することが好ましい。基材13がガスバリア性を有し、かつ、粘着層11が前記活性成分を含む場合、粘着シート1が貼付対象に貼付された状態で、前記活性成分の粘着シート1の外部への拡散(例えば気化)が抑制される。そのため、粘着シート1は、前記活性成分を有していることによる効果を、より長期間持続させることができる。すなわち、ガスバリア性を有する基材13を備えた粘着シート1は、好ましいものの一例として挙げられる。
【0126】
基材13は、水蒸気バリア性を有することがより好ましい。基材13が水蒸気バリア性を有し、かつ、粘着層11が前記活性成分として経皮吸収可能な薬剤を含む場合、上記のような、前記薬剤の粘着シート1の外部への拡散(例えば気化)が抑制される効果に加え、さらに、粘着シート1の皮膚での貼付箇所において、保湿効果が得られる。その結果、皮膚の角質層でのバリア性が低下し、前記薬剤の生体内への移行量が増大する。また、粘着シート1の貼付箇所に毛穴が存在する場合には、前記薬剤の毛穴からの吸収が促進されることで、生体内への前記薬剤の移行量がさらに増大することがある。すなわち、水蒸気バリア性を有するバリア基材13を備えた粘着シート1は、より好ましいものの一例として挙げられる。
【0127】
基材13が水蒸気バリア性を有するバリア基材である場合、基材13が含む前記樹脂は、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸されたポリプロピレン(O-PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及び二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート(O-PET)からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0128】
基材13が前記ポリプロピレン、二軸延伸されたポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、及び二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートからなる群より選択される1種又は2種以上を含む場合、基材13において、前記樹脂の総含有量に対する、前記ポリプロピレン、二軸延伸されたポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、及び二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートの合計含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、基材13が上述の特定範囲の樹脂を含むことにより得られる効果がより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されず、前記割合は100質量%以下であればよい。
前記割合は、通常、後述する基材形成用組成物における、前記樹脂の総含有量(質量部)に対する、前記ポリプロピレン、二軸延伸されたポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、及び二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートの合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0129】
基材13が水蒸気バリア性を有するバリア基材である場合、JIS K 7129に準拠して、条件Bで測定された、基材13(前記バリア基材)の水蒸気透過量は、5.0g/m2・day以下であることが好ましく、1.5g/m2・day以下であることがより好ましい。前記水蒸気透過量が前記上限値以下であることで、前記バリア基材を備えていることにより得られる効果が、より高くなる。
【0130】
基材13(前記バリア基材)の前記水蒸気透過量の下限値は、特に限定されない。基材13の形成がより容易である点では、前記水蒸気透過量は0.001g/m2・day以上であることが好ましい。
【0131】
基材13は、粘着性を有する粘着基材であってもよい。基材13が粘着基材である場合、基材13が、粘着性を有しない層と直接接触していても、これら2層間の粘着力が大きくなり、これら2層間の密着性が高くなる。例えば、基材13自体を、貼付対象物に貼付できる。この場合、例えば、剥離フィルム14及び基材13が、粘着層11を介さずに直接積層(貼付)されている箇所が、このような粘着力及び密着性が高い箇所に該当する。
【0132】
基材13が粘着基材である場合、粘着シート1は、基材13の第2面13bのうち、粘着層11が設けられていない領域に、補助粘着層を備えていてもよい。粘着シート1が前記補助粘着層を備えていることにより、粘着層11が設けられていない領域においても、粘着シート1をより安定して貼付対象物に貼付できる。
補助粘着層が含む粘着成分としては、例えば、粘着層11が含む前記ベース樹脂(粘着剤)と同じものが挙げられる。
【0133】
基材13は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。基材13が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0134】
基材13の厚さは、特に限定されないが、5~1000μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましく、12~300μmであることがさらに好ましい。基材13の厚さが前記下限値以上であることで、基材13を備えていることにより得られる効果がより高くなる。基材13の厚さが前記上限値以下であることで、基材13の厚さが過剰となることを避けられ、例えば、粘着シート1をより薄層化できる。
ここで、「基材13の厚さ」とは、基材13全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材13の厚さとは、基材13を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0135】
<剥離フィルム>
剥離フィルム14は、粘着シート1の使用時まで、粘着シート1の取り扱い性を向上させるとともに、粘着シート1の品質を良好に維持するための層である。例えば、粘着シート1が剥離フィルム14を備えていることで、粘着シート1の使用時までの間、粘着層11が露出せず、粘着層11が目的外のものに貼り付いたり、粘着層11の粘着性が低下したりすることが抑制される。また、粘着層11が前記活性成分を含む場合には、粘着シート1の使用時までの間、粘着層11が露出しないため、前記活性成分の粘着シート1の外部への拡散(例えば気化)が抑制される。
【0136】
剥離フィルム14は、任意の構成であり、粘着シート1は剥離フィルム14を備えていなくてもよいが、備えていることで、上記の効果が得られ、好ましい態様となる。
【0137】
剥離フィルム14としては、例えば、樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの一方の面上に設けられた剥離処理層と、を備えて構成されたものが挙げられる。
粘着シート1中で、剥離フィルム14は、その中の前記剥離処理層を粘着層11側に向けて、配置されている。
【0138】
剥離フィルム14は、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系等の、公知の剥離剤により、前記樹脂フィルムの一方の面を処理し、前記剥離処理層を形成することで作製できる。
【0139】
剥離フィルム14中の前記樹脂フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0140】
剥離フィルム14の厚さ(前記樹脂フィルム及び剥離処理層の合計の厚さ)は、1~100μmであることが好ましい。剥離フィルム14の厚さが前記下限値以上であることで、剥離フィルム14を備えていることにより得られる効果が、より高くなる。剥離フィルム14の厚さが前記上限値以下であることで、粘着シート1が過剰な厚さとなることが避けられ、粘着シート1の柔軟性がより向上する。
ここで、「剥離フィルム14の厚さ」とは、剥離フィルム14全体の厚さを意味し、例えば、前記樹脂フィルムが複数層からなる場合には、樹脂フィルムを構成するすべての層と、前記剥離処理層と、の合計の厚さを意味する。
【0141】
本実施形態の粘着シートは、粘着シート1に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、粘着シート1において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、粘着シート1においては、基材13の第2面13bの面積が、粘着層11の第1面11aの面積と同じであってもよいし、その場合には、粘着層11の第1面11aの全面が、基材13の第2面13bで覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。また、基材13の第2面13bの面積は、粘着層11の第1面11aの面積よりも小さくてもよい。
【0142】
例えば、粘着シート1においては、保温層12の粘着層11側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)12bの面積が、基材13の第1面13aの面積と同じであってもよいし、その場合には、基材13の第1面13aの全面が、保温層12の第2面12bで覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。また、保温層12の第2面12bの面積は、粘着層11の第1面11aの面積よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、粘着層11の第1面11aの面積と同じであってもよい。ただし、粘着層11が前記活性成分を含む場合には、保温層12の第2面12bの面積は、粘着層11の第1面11aの面積に対して、同等以上であることが好ましい。
【0143】
例えば、粘着シート1が備えている層として、剥離フィルム、粘着層、保温層及び基材が挙げられるが、本実施形態の粘着シートは、これら以外の他の層を備えていてもよい。
【0144】
<他の層>
前記他の層は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層としては、例えば、隣接する2層(例えば、粘着シート1においては、粘着層11と基材13、保温層12と基材13)を接着するための接着層が挙げられる。
【0145】
前記粘着シートにおける、前記他の層の配置位置は、粘着シートの使用時において、粘着層の第2面(例えば、粘着シート1においては、粘着層11の第2面11b)が露出面となる限り、特に限定されない。
【0146】
前記他の層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
前記他の層の厚さは、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択できる。
【0147】
本実施形態の粘着シートは、皮膚への貼付用であり、例えば、皮膚の表面へ活性成分を移行させるための粘着シート、ウエアラブルデバイスを構成するための粘着シート、として特に好適である。ウエアラブルデバイスは、前記粘着シート中のいずれかの箇所に、回路を設けることで、構成できる。
【0148】
<<粘着シートの使用方法>>
本実施形態の粘着シートは、皮膚へ貼付されて使用される。
図2は、皮膚へ貼付された状態の本実施形態の粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。ここでは、
図1に示す粘着シート1を例に挙げて、その皮膚へ貼付された状態について説明する。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0149】
図2に示すように、粘着シート1は、剥離フィルム14が取り除かれた後、これにより新たに露出した粘着層11の第2面11bによって、皮膚9の表面9aに貼付されている。
皮膚9のうち、その表面9a側の比較的薄い層は、角質層90である。すなわち、皮膚9の表面9aは、角質層90の表面90aと同じである。そして、粘着シート1は、粘着層11によって、皮膚9の表面9aに貼付されている。
【0150】
このような状態で、保温層12が発熱性保温層である場合には、保温層12が空気の存在下で発熱し、皮膚9の表面9aのうち、粘着シート1の貼付箇所が、この発熱した保温層12によって、基材13及び粘着層11を介して温められる。
一方、保温層12が断熱性保温層である場合には、保温層12が断熱性を有することによって、皮膚9の表面9aのうち粘着シート1の貼付箇所の帯びている熱が、前記貼付箇所と保温層12との間で蓄積(蓄熱)され、前記貼付箇所が温められる。
【0151】
粘着層11が前記活性成分を含む場合には、さらに、粘着層11から、このように温められている前記貼付箇所への、前記活性成分の移行量が増大することがある。さらに、前記活性成分が経皮吸収可能な薬剤である場合には、皮膚9の表面9a(換言すると、角質層90の表面90a)から生体内への前記薬剤の移行量が増大することがある。特に、粘着シート1の貼付箇所に毛穴が存在する場合には、前記薬剤の毛穴からの吸収が促進されることで、生体内への前記薬剤の移行量がさらに増大することがある。
【0152】
粘着層11が前記易剥離性粘着層である場合には、上記のように、皮膚9の表面9aが温められ、目的が達成された後に、
図3に示すように、粘着層11を硬化させて、硬化物110を形成することが好ましい。粘着層11の硬化物110と、皮膚9と、の間の粘着力(より具体的には、前記硬化物110の第2面110bと、皮膚9の表面9aと、の間の粘着力)は、粘着層11と皮膚9との間の粘着力よりも小さいため、前記硬化物110は、粘着層11よりも容易に、皮膚9から剥離させることができる。
なお、本実施形態においては、粘着層が硬化した後も、粘着層の硬化物と、保温層と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造を有するものを粘着シートと称し、粘着層が硬化していない場合の粘着シートと同じ符号を付して示す。
【0153】
皮膚9の表面9aが温められ、目的が達成された後は、
図4に示すように、皮膚9から粘着シート1を剥離させる。このとき、粘着シート1が粘着層11の硬化物110を備えている場合には、粘着シート1をより容易に剥離させることができる。その場合、例えば、剥離時に感じる違和感、場合によっては痛みが軽減され、粘着シート1は使用感に優れる。特に、皮膚9の粘着シート1の貼付箇所に体毛が存在する場合には、粘着シート1の剥離時に、体毛の抜けが抑制されるため、得られる効果が大きい。
【0154】
<<粘着シートの製造方法>>
本実施形態の粘着シートは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
【0155】
また、本実施形態の粘着シートは、その中のいずれかの層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を、粘着シートを構成するための別の層の表面にコーティングして、必要に応じて乾燥させることにより、粘着シート中の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。その際、上述の、粘着シートの中のいずれかの層になるフィルムは、その長さ方向及び幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行う一軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよいし、その長さ方向及び幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行い、次いで他方向に加熱延伸を行う逐次二軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよいし、その長さ方向及び幅方向の二方向に同時に加熱延伸を行う同時二軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよい。
【0156】
また、本実施形態の粘着シートは、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いてこれらフィルムを、ドライラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法及びウェットラミネート法のいずれかによって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。このとき、接着剤として、前記接着層を形成可能なものを用いてもよい。その際、上述の、2枚以上のフィルムのうちの一部又はすべては、その長さ方向及び幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行う一軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよいし、その長さ方向及び幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行い、次いで他方向に加熱延伸を行う逐次二軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよいし、その長さ方向及び幅方向の二方向に同時に加熱延伸を行う同時二軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよい。
【0157】
また、本実施形態の粘着シートは、上記のように、あらかじめ別々に作製しておいた2枚以上のフィルムを、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。その際、上述の、2枚以上のフィルムのうちの一部又はすべては、その長さ方向及び幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行う一軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよいし、その長さ方向及び幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行い、次いで他方向に加熱延伸を行う逐次二軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよいし、その長さ方向及び幅方向の二方向に同時に加熱延伸を行う同時二軸延伸法によって、延伸配向されたものであってもよい。
【0158】
本実施形態の粘着シートを製造するときには、ここまでに挙げた、粘着シート中のいずれかの層(フィルム)の形成方法を、2以上組み合わせてもよい。
【0159】
製造方法がいずれの場合であっても、前記粘着シート中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分(構成材料)を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0160】
粘着層(
図1に示す粘着シート1においては、粘着層11)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「粘着層形成用組成物」と称することがある)としては、前記紫外線硬化性粘着層又は電子線硬化性粘着層の場合には、前記ベース樹脂と、前記放射線重合性化合物と、前記放射線重合開始剤と、さらに必要に応じて、前記架橋剤と、前記粘着付与剤と、前記活性成分(例えば、経皮吸収不能な薬剤)と、からなる群より選択される1種又は2種以上と、を含むものが挙げられる。
【0161】
保温層(
図1に示す粘着シート1においては、保温層12)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「保温層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記発熱剤又は断熱剤と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。前記断熱性保温層は、先の説明のとおり、前記断熱性材料をシート状に成形することでも作製できる。
【0162】
基材(
図1に示す粘着シート1においては、基材13)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「基材形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル系樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上と、必要に応じて前記非樹脂成分と、を含むものが挙げられる。
【実施例0163】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0164】
実施例又は比較例で用いた材料を以下に示す。
<粘着層の構成材料>
・ベース樹脂(1):アクリル酸ブチル(93質量部)、アクリル酸(2質量部)及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(5質量部)を混合し、常法によりトルエン溶媒中において溶液重合させて生成されたアクリル共重合体(重量平均分子量(Mw):500000、ガラス転移点(Tg):-50℃)。
・放射線重合性化合物(1):ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製「UA-33H」)
・放射線重合開始剤(1):ベンジルジメチルケタール(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア651」)
・架橋剤(1):ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製「コロネートL」)
・薬剤(1):l-メントール(98.0+%(Capillary GC))(富士フイルム和光純薬社製)
【0165】
<基材の構成材料>
・ポリプロピレン(PP):プライムポリマー社製「E122V」
・ポリ塩化ビニル(PVC):住友ベークライト社製「VSS-F120」
・ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE):ハネウェル社製「Aclar SupRx900e」
【0166】
<保温層>
・保温層(1):鉄粉、水、保水剤(吸水性樹脂)及び活性炭を含み、粘着層を有する保温層(小林製薬社製「桐灰カイロ はる」、(縦95mm、横130mm、厚さ約5mm)。
【0167】
[実施例1]
<<粘着シートの製造>>
<粘着層形成用組成物の製造>
ベース樹脂(1)(50質量部)と、放射線重合性化合物(1)(50質量部)と、放射線重合開始剤(1)(5質量部)と、架橋剤(1)(5質量部)と、薬剤(1)(5質量部)と、を常温下で混合することにより、粘着層形成用組成物(1)を得た。
【0168】
<基材の製造>
前記PPを押出成形することにより、単層構造で未延伸のPPからなる単層フィルム(厚さ250μm)を作製し、これを基材とした。
【0169】
<粘着シートの製造>
上記で得られた基材の一方の面に、前記粘着層形成用組成物を含有する液状材料をバーコート法により塗工した後、80℃で1分間乾燥させることにより、前記基材上に粘着層(易剥離性粘着層)(厚さ10μm)を形成し、積層物を得た。
得られた積層物から、大きさが95mm×130mmの切片を切り出し、この切片(前記積層物)を、その中の前記粘着層により、ステンレス板(アズワン社製「SUS304」)に貼付した。
次いで、この切片中の基材の露出面に、保温層(1)を、その中の粘着層によって貼付した。
以上により、保温層(1)と、前記基材と、前記粘着層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された粘着シートを製造するとともに、この粘着シートがその中の前記粘着層によって、ステンレス板に貼付された構成を有する試験片を作製した。
【0170】
<<粘着シートの評価>>
<経皮吸収可能な薬剤の移行性>
上記で得られた試験片を、常温・常圧下で3時間静置保存した後、さらに、照度55W/cm2、照射量200mJ/cm2の条件で、前記試験片中の粘着層に紫外線を照射することにより、粘着層を硬化させた。
次いで、この静置保存し、かつ紫外線を照射した後の前記試験片において、ステンレス板から粘着シート(硬化後の粘着層、基材及び保温層(1)の積層物)を剥離した。そして、下記基準に従って、粘着シートの薬剤の移行性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:薬剤(1)の匂いがステンレス板に移行しており、粘着シートは十分な薬剤の移行性を有している。
B:薬剤(1)の匂いがステンレス板に移行しておらず、粘着シートの薬剤の移行性は不十分である。
【0171】
<粘着層を硬化させる前の粘着シートの粘着性>
上記の「経皮吸収可能な薬剤の移行性」の評価時と同じ方法で、別途、試験片を作製し、この試験片を、常温・常圧下で3時間静置保存した。
次いで、JIS G 3469に準拠して、温度24℃、相対湿度40%の条件下で、この静置保存後の試験片中の粘着シート(粘着層、基材及び保温層(1)の積層物)の一端を持ち、300mm/minの速度で、粘着シートをステンレス板から引き剥がした。このとき、粘着シートのステンレス板と接触していた面と、ステンレス板の粘着シートと接触していた面と、の為す角度を180°とした。そして、このとき、引張試験機(エー・アンド・デイ社製「TENSILON RTG-1310」)を用いて測定されたピール強度を、硬化させる前の粘着層の粘着力(硬化前粘着力)として採用し、下記基準に従って、粘着層を硬化させる前の粘着シートの粘着性を評価した。結果を前記硬化前粘着力(N/25mm)とともに表1に示す。
[評価基準]
A:前記粘着力が0.1N/25mm以上であり、粘着シートは十分な粘着性を有している。
B:前記粘着力が0.1N/25mm未満であり、粘着シートの粘着性は不十分である。
【0172】
<粘着層を硬化させた後の粘着シートの易剥離性>
上記の「経皮吸収可能な薬剤の移行性」の評価時と同じ方法で、別途、静置保存し、かつ紫外線を照射した試験片を作製した。
次いで、この試験片について、上記の「粘着層を硬化させる前の粘着シートの粘着性」の評価時と同じ方法で測定されたピール強度を、硬化させた後の粘着層の粘着力(硬化後粘着力)として採用した。結果を表1に示す。
【0173】
そして、前記硬化前粘着力及び硬化後粘着力から、先に説明した式によって、硬化後粘着力の割合(%)を算出し、その値から、下記基準に従って、粘着層を硬化させた後の粘着シートの易剥離性を評価した。結果を前記硬化後粘着力(N/25mm)とともに表1に示す。
[評価基準]
A:硬化後粘着力の割合が30%以下であり、粘着シートは十分な易剥離性を有している。
B:硬化後粘着力の割合が30%超であり、粘着シートの易剥離性は不十分である。
【0174】
<基材の水蒸気バリア性>
上記で得られた基材(PPからなる単層フィルム)(厚さ250μm)について、MOCON社製「PERMATRAN-W(登録商標)3/33」を用い、温度40℃、相対湿度90%の条件(条件B)で、JIS K 7129に準拠して、水蒸気透過量を測定した。そして、その測定値から、下記基準に従って、基材の水蒸気バリア性を評価した。結果を表1に示す。表1中の該当箇所のカッコ内には、前記水蒸気透過量(g/m2・day)も示している。この基材の水蒸気バリア性は、前記粘着シートの水蒸気バリア性の指標となる。
[評価基準]
A:水蒸気透過量が1.5g/m2・day以下であり、基材は十分な水蒸気バリア性を有している。
B:水蒸気透過量が1.5g/m2・day超であり、基材の水蒸気バリア性は不十分である。
【0175】
[実施例2]
<<粘着シートの製造>>
<粘着層形成用組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、粘着層形成用組成物(1)を製造した。
【0176】
<基材の製造>
前記PVCと前記PCTFEを用いて、それぞれPVC製フィルムとPCTFE製フィルムを作製した。これらフィルムをドライラミネートすることにより、2層構造の積層フィルム(厚さ223μm)を作製し、これを基材とした。得られた基材は、PVC層(厚さ200μm)とPCTFE層(厚さ23μm)が積層されて構成されていた。
【0177】
<粘着シートの製造>
上記で得られた基材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、粘着シートを製造するとともに、この粘着シートがその中の前記粘着層によって、ステンレス板に貼付された構成を有する試験片を作製した。なお、前記粘着層形成用組成物を含有する液状材料は、2層構造の前記基材のうち、PCTFE層の露出面(PVC層側とは反対側の面)に塗工し、保温層(1)は、その中の粘着層によって、前記切片中のPVC層の露出面(PCTFE層側とは反対側の面)に貼付した。すなわち、ここでは、保温層(1)と、前記PVC層と、前記PCTFE層と、前記粘着層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記PVC層と前記PCTFE層との積層物が前記基材である粘着シートを製造するとともに、この粘着シートがその中の前記粘着層によって、ステンレス板に貼付された構成を有する試験片を作製した。
【0178】
<<粘着シートの評価>>
上記で得られた粘着シートについて、実施例1の場合と同じ方法で、各項目を評価した。結果を表1に示す。
【0179】
[比較例1]
<<粘着シートの製造>>
<基材の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、単層構造で未延伸のPPからなる単層フィルムを作製し、これを基材(厚さ250μm)とした。
【0180】
<粘着シートの製造>
溶媒以外の成分として、放射線重合性化合物(1)と、放射線重合開始剤(1)と、架橋剤(1)と、を用いなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で粘着層形成用組成物を調製し、この粘着層形成用組成物を含有する液状材料を、上記で得られた基材の一方の面に、バーコート法により塗工した後、80℃で1分間乾燥させた。以上により、前記基材上に粘着層(厚さ10μm)を形成し、積層物を得た。
得られた積層物から、大きさが95mm×130mmの切片を切り出し、この切片(前記積層物)を、その中の前記粘着層により、ステンレス板(アズワン社製「SUS304」)に貼付した。
以上により、前記基材と、前記粘着層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された粘着シートを製造するとともに、この粘着シートがその中の前記粘着層によって、ステンレス板に貼付された構成を有する試験片を作製した。
【0181】
<<粘着シートの評価>>
上記で得られた粘着シートについて、実施例1の場合と同じ方法で、各項目を評価した。ただし、本比較例の粘着シートの粘着層は、光硬化性ではないため、前記硬化後粘着力の測定と、硬化後粘着力の割合の算出は、いずれも行わず、粘着層を硬化させた後の粘着シートの易剥離性も評価しなかった。結果を表1に示す。
【0182】
【0183】
上記結果から明らかなように、実施例1~2の粘着シートは、保温層を備えており、その結果、経皮吸収可能な薬剤の移行性が良好であった。
【0184】
実施例1~2の粘着シートにおいて、粘着層は、光の照射によって硬化する硬化性成分を含んでいた。そのため、これら粘着シートは、粘着層を硬化させる前に十分な粘着性を有していたのに対し、粘着層を硬化させた後の粘着性が低く、易剥離性を有していた。実施例1~2の粘着シートにおいて、前記硬化後粘着力の割合はいずれも2.3%以下(2.0~2.3%)であった。
【0185】
実施例1~2の粘着シートにおいて、基材の水蒸気透過量は0.84g/m2・day以下(0.30~0.84g/m2・day)であり、基材は十分な水蒸気バリア性を有しており、粘着シートも十分な水蒸気バリア性を有していることを確認できた。
【0186】
これに対して、比較例1の粘着シートは、保温層を備えておらず、その結果、経皮吸収可能な薬剤の移行性が不十分であった。
また、比較例1の粘着シートにおいて、粘着層は、光の照射及び加熱のいずれであるかによらず、硬化する硬化性成分を含んでおらず、この粘着シートは、易剥離性を有していなかった。
本発明は、皮膚に対する保温効果を示す粘着シートとして利用可能であり、皮膚の表面へ活性成分を移行させるための粘着シート、又はウエアラブルデバイスを構成するための粘着シートとして、利用可能である。