(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109437
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】カウンターウェイトクリアランスの測定装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B66B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010948
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一色 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F304BA11
(57)【要約】
【課題】カウンターウェイトクリアランスを容易に測定可能なカウンターウェイトクリアランスの測定装置を提供する。
【解決手段】カウンターウェイトクリアランスの測定装置1は、Z方向に沿って延びるガイド部10と、第1部分21、第1部分21よりも下方に配置される第2部分22、及び第1部分21と第2部分22とを連結する第3部分23を有し、ガイド部10にガイドされてガイド部10に対して上下方向に相対的に移動可能な移動部20とを備える。測定装置1では、第1部分21が緩衝器105と接触している第1状態と、第1部分21がカウンターウェイトスペーサ106と接触している第2状態とが、移動部20の移動により切り替えられる。測定装置1は、第2部分22の変位量を計測するための計測部30をさらに備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンターウェイトスペーサと緩衝器との間のカウンターウェイトクリアランスを測定するカウンターウェイトクリアランスの測定装置であって、
上下方向に沿って延びるガイド部と、
第1部分、前記第1部分よりも下方に配置される第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分とを連結する第3部分を有し、前記ガイド部にガイドされて前記ガイド部に対して上下方向に相対的に移動可能な移動部とを備え、
前記第1部分が前記緩衝器と接触している第1状態と、前記第1部分が前記カウンターウェイトスペーサと接触している第2状態とが、前記移動部の前記移動により切り替えられ、
前記第2部分の変位量を計測するための計測部をさらに備える、カウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項2】
前記第1状態における前記第1部分の位置と前記第2状態における前記第1部分の位置との間の距離が、前記第1状態における前記第2部分の位置と前記第2状態における前記第2部分の位置との間の距離と等しい、請求項1に記載のカウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記第3部分を内部に収容する筒状部分を有し、
前記第1部分及び前記第2部分は、前記第3部分及び前記筒状部分から前記上下方向と交差する第2方向に突出しており、
前記ガイド部には、前記第1部分を露出させる第1孔と、前記第2部分を露出させる第2孔とが形成されており、
前記計測部は、前記第2孔の周囲に形成されており、前記変位量を読み取るための目盛を含む、請求項1または2に記載のカウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項4】
前記第3部分は、棒状部材である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、第1定滑車と、前記第1定滑車よりも下方に配置される第2定滑車とを含み、
前記第3部分は、前記第1定滑車及び前記第2定滑車の各々に掛けられておりかつ前記第1定滑車及び前記第2定滑車の各々において折り返されている環状の紐状部材であり、
前記第1部分は、前記第1定滑車及び前記第2定滑車に対して一方の側に渡されている前記紐状部材の一部に固定されており、
前記第2部分は、前記第1定滑車及び前記第2定滑車に対して他方の側に渡されている前記紐状部材の他の一部に固定されており、
前記紐状部材には張力が付与されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のカウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項6】
第4部分、前記第4部分よりも下方に配置される第5部分、及び前記第4部分と前記第5部分とを連結する第6部分を有し、前記ガイド部にガイドされて前記ガイド部に対して前記上下方向に相対的に移動可能な第2移動部をさらに備え、
前記第1状態では、前記第1部分及び前記第4部分が前記緩衝器と接触しており、
前記第2状態では、前記第1部分が前記カウンターウェイトスペーサと接触しており、前記第4部分が前記緩衝器と接触しており、
前記変位量が、前記第2状態における前記第2部分と前記第6部分との間の距離に等しい、請求項1~5のいずれか1項に記載のカウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項7】
カウンターウェイトスペーサと緩衝器との間のカウンターウェイトクリアランスを測定するカウンターウェイトクリアランスの測定装置であって、
上下方向に沿って延びるガイド部と、
第1部分、前記第1部分よりも下方に配置される第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分とを連結する第3部分を有し、前記ガイド部にガイドされて前記ガイド部に対して上下方向に相対的に移動可能な第1移動部と、
第4部分、前記第4部分よりも下方に配置される第5部分、及び前記第4部分と前記第5部分とを連結する第6部分を有し、前記ガイド部にガイドされて前記ガイド部に対して前記上下方向に相対的に移動可能な第2移動部とを備え、
前記第1部分が前記カウンターウェイトスペーサと接触しており、前記第4部分が前記緩衝器と接触している状態が実現され、
前記状態において、前記第2部分と前記第5部分との間の距離を計測するための計測部をさらに備える、カウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項8】
前記ガイド部は、複数の部分に分割可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【請求項9】
前記ガイド部に固定されており、かつ前記ガイド部の延在方向と直交する方向の水平度を測る水準器をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載のカウンターウェイトクリアランスの測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンターウェイトクリアランスの測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-199394号公報(特許文献1)には、カウンターウェイトスペーサと緩衝器との間のカウンターウェイトクリアランスを測定するカウンターウェイトクリアランスの測定装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の測定装置では、カウンターウェイトクリアランスを測定するために、緩衝器の上端部から上方に突出して取り付けられた伸縮棒部の長さの変化量を、伸縮棒部に付された目盛を用いて読み取るように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の測定装置では、作業員が緩衝器よりも上方に配置された目盛を読む必要があるため、作業員を緩衝器の設置面(ピットの床面)と緩衝器の上面との間で昇降させるための昇降装置と、作業員の落下を防止するための落下防止装置が必要となる。特に、高速エレベータまたは高層階用エレベータでは、緩衝器の高さが6m以上と高くなる場合が存在するため、比較的大掛かりな昇降装置及び落下防止装置が必要となる。
【0006】
上記特許文献1に記載の測定装置と比べて、カウンターウェイトクリアランスを容易に測定可能な測定装置が求められている。
【0007】
本発明の主たる目的は、カウンターウェイトクリアランスを容易に測定可能なカウンターウェイトクリアランスの測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置は、上下方向に沿って延びるガイド部と、第1部分、第1部分よりも下方に配置される第2部分、及び第1部分と第2部分とを連結する第3部分を有し、ガイド部にガイドされてガイド部に対して上下方向に相対的に移動可能な移動部とを備える。測定装置では、第1部分が緩衝器と接触している第1状態と、第1部分がカウンターウェイトスペーサと接触している第2状態とが、移動部の移動により切り替えられる。測定装置は、第2部分の変位量を計測するための計測部をさらに備える。
【0009】
本発明の他の実施形態に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置は、上下方向に沿って延びるガイド部と、第1部分、第1部分よりも下方に配置される第2部分、及び第1部分と第2部分とを連結する第3部分を有し、ガイド部にガイドされてガイド部に対して上下方向に相対的に移動可能な第1移動部と、第4部分、第4部分よりも下方に配置される第5部分、及び第4部分と第5部分とを連結する第6部分を有し、ガイド部にガイドされてガイド部に対して上下方向に相対的に移動可能な第2移動部とを備える。測定装置では、第1部分がカウンターウェイトスペーサと接触しており、第4部分が緩衝器と接触している状態が実現される。測定装置は、状態において、第2部分と第5部分との間の距離を計測するための計測部をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カウンターウェイトクリアランスを容易に測定可能なカウンターウェイトクリアランスの測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るエレベータ装置を説明するための図である。
【
図2】実施の形態1に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置の第1状態を説明するための断面図である。
【
図3】
図2に示されるカウンターウェイトクリアランスの測定装置を説明するための正面図である。
【
図4】実施の形態1に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置の第2状態を説明するための断面図である。
【
図5】
図4に示されるカウンターウェイトクリアランスの測定装置を説明するための正面図である。
【
図6】実施の形態2に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置の第1状態を説明するための断面図である。
【
図7】
図6に示されるカウンターウェイトクリアランスの測定装置を説明するための正面図である。
【
図8】実施の形態2に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置の第2状態を説明するための断面図である。
【
図9】
図8に示されるカウンターウェイトクリアランスの測定装置を説明するための正面図である。
【
図10】実施の形態3に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置の第1状態を説明するための断面図である。
【
図11】実施の形態3に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置の第2状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、
図1~
図11には、上下方向に沿った方向であるZ方向が示されており、
図2~
図11には、互いに直交するX方向、Y方向、およびZ方向を有する直交座標系が示されている。
【0013】
実施の形態1.
<エレベータ装置の構成>
図1に示されるように、実施の形態1に係るエレベータ装置100は、かご101、カウンターウェイト102、ロープ103、巻き上げ機104、緩衝器105、カウンターウェイトスペーサ106、及びレール107(
図2参照)を主に備える。エレベータ装置100は、機械室202に設置された巻き上げ機204により、ロープ103を動かし、このロープ103の両端に取り付けられたかご101及びカウンターウェイト102を、昇降路201内にZ方向に延びるように配置されたレール107(
図2参照)に沿って動かす装置である。
【0014】
カウンターウェイト102は、複数の錘片と、複数の錘片を保持する枠体とを有する。
【0015】
緩衝器105は、昇降路201の下部に位置するピット203の床面に配置されている。緩衝器105は、例えばスプリング式または油圧式の緩衝器である。緩衝器105は、例えば緩衝部105Aと、緩衝部105Aの下方に配置されており緩衝部105Aを支持する台座105Bとを含む。台座105Bは、ピット203の床面上に固定されている。カウンターウェイト102が事故などによりピット203の床面へ衝突してしまう際、緩衝器105は、その衝撃を吸収する。ピット203の底面から緩衝器105の上面(緩衝部105Aの上面)までの距離L1、すなわち緩衝器105の高さは、特に制限されないが、例えば3m以上であり、6m以上であってもよい。言い換えると、エレベータ装置100は、いわゆる高速エレベータ又は高層階用エレベータであってもよい。
【0016】
カウンターウェイトスペーサ106は、カウンターウェイト102の下部に固定されている。カウンターウェイトスペーサ106は、カウンターウェイト102と一体として昇降路201内を昇降する。カウンターウェイトスペーサ106は、緩衝器105の上方に配置されている。カウンターウェイトスペーサ106は、カウンターウェイト102がエレベータ装置100の通常動作時の最下点よりも下方に落下する非常時において、緩衝器105と衝突するように設けられている。
【0017】
かご101が最上階に停止している状態において、カウンターウェイトスペーサ106と緩衝器105との間のZ方向の距離L2が、カウンターウェイトクリアランスである。カウンターウェイトクリアランスは、法令により規定された値よりも長くなるように、設定される。
【0018】
<カウンターウェイトクリアランスの測定装置の構成>
図2~
図5に示されるように、実施の形態1に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置1は、ガイド部10、移動部20、計測部30、及び水準器40を備える。
【0019】
ガイド部10は、Z方向に沿って延びている。ガイド部10は、移動部20のZ方向への移動をガイドするように設けられている。
【0020】
移動部20は、第1部分21、第2部分22、及び第3部分23を有する。第1部分21は、Z方向と直交するY方向においてガイド部10から突出しており、緩衝器105とカウンターウェイトスペーサ106との間に配置される。第2部分22は、第1部分21よりも下方に配置される。第3部分23は、第1部分21と第2部分22とを連結している。移動部20は、ガイド部10にガイドされてガイド部10に対して上下方向に相対的に移動するように設けられている。第1部分21、第2部分22、及び第3部分23は、一体として、ガイド部10に対して上下方向に相対的に移動する。
【0021】
測定装置1では、移動部20の第1部分21の下面が緩衝器105の上面と接触している第1状態と、第1部分21の上面がカウンターウェイトスペーサ106の下面と接触している第2状態とが、移動部20の移動により切り替えられる。
【0022】
計測部30は、移動部20の第2部分22の変位量を計測するために設けられている。計測部30は、移動部20の第2部分22の変位量を計測するための任意の構成を備えていればよいが、一例としてガイド部10の外周面上に固定されており上記変位量を読み取るための目盛(定規)を含む。
【0023】
水準器40は、ガイド部10に固定されている。水準器40は、ガイド部10の延在方向と直交する方向の水平度を測り、ガイド部10がその延在方向がZ方向に沿うように接地された状態を実現するために設けられている。
【0024】
測定装置1では、第1状態と第2状態との間での移動部20の第1部分21の変位量L3と、第1部分21のZ方向の幅W1との和が、カウンターウェイトクリアランスL2と等しくなる。さらに、測定装置1では、第1状態と第2状態との間での移動部20の第1部分21の変位量L3(
図4、
図5参照)が、第1状態と第2状態との間での移動部20の第2部分22の変位量L3と等しくなる。そのため、測定装置1によれば、第1状態と第2状態との間での移動部20の第2部分22の変位量L3と、第1部分21のZ方向の幅W1との和を、カウンターウェイトクリアランスL2として測定できる。
【0025】
以下、
図2~
図5を参照して、測定装置1のより詳細な構成を説明する。
【0026】
ガイド部10は、第3部分23を内部に収容する筒状部分11を有している。ガイド部10には、第1部分21を露出させる第1孔12と、第2部分22を露出させる第2孔13とが形成されている。第1孔12及び第2孔13の各々のZ方向の開口幅は、カウンターウェイトクリアランスL2よりも大きくなるように設定されている。第1孔12の下端は、緩衝器105の上面よりも下方に配置される。第1孔12の上端は、カウンターウェイトスペーサ106の下面よりも上方に配置される。第1孔12は、例えばガイド部10の上端面に開口している。第2孔13は、例えばガイド部10の下端面に開口している。
【0027】
ガイド部10は、複数の部分に分割可能であり、例えばその延在方向において複数の部分に分割可能である。ガイド部10の分割数は、任意の数であればよいが、例えばガイド部10の全長がピット203の床面からカウンターウェイトスペーサ106の下面までの高さよりも高くなり、かつ複数の部分の各々の長さが1.7m未満となるように、設定され得る。
【0028】
一例として、ガイド部10の全長が6mである場合、ガイド部10は5つの部分10A,10B,10C,10D,10Eに分割されてもよい。各部分10A,10B,10C,10D,10Eの各々の長さは、例えば互いに等しく、1.2mである。各部分10A,10B,10C,10D,10Eがこの記載順に上方から連なるように接続されることにより、ガイド部10が組み立てられる。
【0029】
各部分同士の接続方法は、各部分同士を機械的に着脱可能とする方法であるのが好ましく、例えば螺合である。この場合、例えば、各部分10A,10B,10C,10Dの各々の下端には雌ネジ又は雄ネジが形成されており、各部分10B,10C,10D,10Eの各々の上端には上記雌ネジと螺合する雄ネジ又は上記雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。
【0030】
第1孔12は、例えば部分10Aにのみ形成されている。第1孔12の下端は、部分10Aの下端よりも部分10Aの上端側に形成されている。第2孔13は、例えば部分10Eにのみ形成されている。第2孔13の上端は、部分10Eの上端よりも部分10Eの下端側に形成されている。
【0031】
第1部分21及び第2部分22の各々は、Y方向に沿って延びている。つまり、第1部分21及び第2部分22の各々は、互いに平行に延びている。第3部分23は、Z方向に沿って延びている。第1部分21及び第2部分22の各々は、第3部分23に対して直交している。
【0032】
第1部分21は、第3部分23の上端に接続されており、該上端からY方向に突出している。第1部分21は、第1孔12の外周面からガイド部10の外側に突出している。第2部分22は、第3部分23の下端に接続されており、該下端からY方向に突出している。第2部分22は、例えばY方向において第2孔13の外周面からガイド部10の外側に突出している。第2部分22は、例えば第1部分21とは反対の方向に突出している。なお、第2部分22は、第2孔13の外周面からガイド部10の外側に突出していなくてもよい。
【0033】
第3部分23は、ガイド部10の筒状部分11の内部に収容されている。Z方向に垂直な断面において、第3部分23の最大幅は、筒状部分11の内周面の最小幅以上である。第3部分23は、ガイド部10の筒状部分11にガイドされてガイド部10に対して上下方向に相対的に移動可能である。
【0034】
第3部分23は、例えば棒状部材である。棒状部材とは、Z方向の長さがX方向及びY方向の各々の長さよりも長い部材を意味する。この棒状部材には、中空部が形成された管状部材、及び中空部が形成されていない中実部材が含まれる。第3部分23のZ方向の長さは、ピット203の床面から緩衝器105の上面の高さL1以下である。
【0035】
第3部分23のZ方向の長さ、すなわち第1部分21と第2部分22との間のZ方向の距離は、上記第1状態と上記第2状態との切り替えに際し、変化しないように設けられている。
【0036】
移動部20も、ガイド部10と同様に、複数の部分に分割可能である。例えば、第1部分21及び第2部分22は第3部分23と分割可能であり、第3部分23はその延在方向において複数の部分に分割可能である。移動部20の分割数は、任意の数であればよい。各部分同士の接続方法は、各部分同士を機械的に着脱可能とする方法であるのが好ましく、例えば螺合である。
【0037】
計測部30の上記目盛は、第2孔13の周囲に形成されている。上記目盛は、部分10Eの外周面に形成されている。
【0038】
<測定装置を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法>
次に、
図2~
図5を参照して、測定装置1を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法の一例を説明する。
【0039】
はじめに、測定装置1が緩衝器105に隣接するピット203の床面上に組み立てられる。具体的には、ガイド部10と、第3部分23がガイド部10の筒状部分11に収容されている移動部20とが組み立てられる。ガイド部10及び移動部20の第3部分23の各々の延在方向がZ方向に沿うとともに、第1部分21が緩衝器105とカウンターウェイトスペーサ106との間に配置されるように、ガイド部10及び移動部20が設置される。
【0040】
次に、
図2に示されるように、第1部分21の下面が緩衝器105の上面と接触している第1状態が実現される。第1状態での第2部分22のZ方向の位置P1(以下、第1の位置とよぶ)が、作業員により記録される。第1の位置P1は、例えば、第2部分22の上面のZ方向の位置として記録される。
図3に示されるように、第1の位置P1は、第3部分23のZ方向の長さの分だけ、第1状態における第1部分21の上面のZ方向の位置P3(以下、第3の位置とよぶ)よりも下方に位置する。なお、第1の位置P1は、第2部分22の下面のZ方向の位置として記録されてもよい。ピット203の床面に対する第1の位置P1の高さは、例えば緩衝器105の台座105Bの上面よりも低い。
【0041】
次に、第1部分21の上面がカウンターウェイトスペーサ106の下面と接触するまで、移動部20がガイド部10に対して相対的に上方に移動する。例えば、作業員が移動部20を上方に持ち上げる。このようにして、
図4に示されるように、第1部分21の上面がカウンターウェイトスペーサ106の下面と接触している第2状態が実現される。
【0042】
図4及び
図5に示されるように、第2状態での第2部分22のZ方向の位置P2(以下、第2の位置とよぶ)は、移動部20の移動距離だけ、第1の位置P1よりも上方に位置する。第2状態での第1部分21のZ方向の位置P4(以下、第4の位置とよぶ)は、移動部20の移動距離だけ、第3の位置P3よりも上方に位置する。その結果、第1状態と第2状態との間での第1部分21の変位量(第3の位置P3と第4の位置P4との間の距離)L3は、第1状態と第2状態との間での第2部分22の変位量(第1の位置P1と第2の位置P2との間の距離)L3と等しくなる。
【0043】
図4及び
図5を参照して、第1状態と第2状態との間での第2部分22の変位量(第1の位置P1と第2の位置P2との間の距離)L3が、作業員により測定される。この変位量L3と、第1部分21のZ方向の幅(厚み)との和が、カウンターウェイトクリアランスL2として算出される。
【0044】
以上のように、測定装置1によれば、カウンターウェイトクリアランスL2が第1状態と第2状態との間での第2部分22の変位量L3に基づいて測定され得る。そのため、測定装置1を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法では、作業員がピット203の床面から緩衝器105の上面に達する高さまで昇降する必要がないため、上記昇降装置及び上記落下防止装置が不要となる。
【0045】
特に、測定装置1では、緩衝器105の高さが高くなっても、作業員が測定すべき場所(すなわち第1の位置P1及び第2の位置P2)の高さを高くする必要がない。具体的には、緩衝器105の高さが作業員の身長よりも高い場合にも、ガイド部10のZ方向の長さ及び移動部20の第3部分23のZ方向の長さのみを緩衝器105の高さに応じて調整することで、第1の位置P1及び第2の位置P2の各々はピット203の床面に立っている作業員によって容易に視認され得る。その結果、測定装置1によれば、高速エレベータまたは高層階用エレベータのように緩衝器105の高さが6m以上と高い場合にも、上記昇降装置及び上記落下防止装置を用いることなく、カウンターウェイトクリアランスを容易に測定可能である。
【0046】
実施の形態2.
図6~
図9に示されるように、実施の形態2に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置2は、実施の形態1に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置1と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、第1移動部20A及び第2移動部20Bを備えている点で、測定装置1とは異なる。以下では、測定装置2が測定装置1とは異なる点を主に説明する。
【0047】
第1移動部20A及び第2移動部20Bは、X方向に並んで配置される。第1移動部20A及び第2移動部20Bの各々は、ガイド部10にガイドされてガイド部10に対してZ方向に相対的に移動可能である。
【0048】
第1移動部20Aは、実施の形態1に係る測定装置1の移動部20と同様の構成を備えている。第1移動部20Aは、第1部分21A、第2部分22A、及び第3部分23Aを有している。第1部分21Aは測定装置1の移動部20の第1部分21と、第2部分22Aは測定装置1の移動部20の第2部分22と、第3部分23Aは測定装置1の移動部20の第3部分23と、それぞれ同様の構成を備えている。
【0049】
第2移動部20Bは、例えば実施の形態1に係る測定装置1の移動部20と同様の構成を備えている。第2移動部20Bは、第4部分21B、第5部分22B、及び第6部分23Bを有している。第4部分21Bは測定装置1の移動部20の第1部分21と、第5部分22Bは測定装置1の移動部20の第2部分22と、第6部分23Bは測定装置1の移動部20の第3部分23と、それぞれ同様の構成を備えている。
【0050】
測定装置2を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法も、測定装置1を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法と同様に実行され得る。つまり、測定装置2においても、カウンターウェイトクリアランスL2は第1状態と第2状態との間での第1移動部20Aの第2部分22Aの変位量に基づいて測定され得る。他方、測定装置2は、測定装置1とは異なる方法で使用され得る。以下、
図6~
図9を参照して、測定装置2を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法の一例を説明する。
【0051】
図6に示されるように、第1移動部20Aの第1部分21Aの下面が緩衝器105の上面と接触している第1状態において、第2移動部20Bの第4部分21Bの下面も緩衝器105の上面と接触している状態が実現される。当該状態において、第2移動部20Bの第5部分22BのZ方向の位置は、第1移動部20Aの第2部分22Aの第1の位置P1と同じである。
【0052】
次に、第1移動部20Aの第1部分21Aの上面がカウンターウェイトスペーサ106の下面と接触するまで、第1移動部20Aがガイド部10に対して相対的に上方に移動する。他方、第2移動部20Bは、上記状態のまま維持される。例えば、作業員が第1移動部20Aのみを上方に持ち上げる。このようにして、
図8に示されるように、第1移動部20Aの第1部分21Aの上面がカウンターウェイトスペーサ106の下面と接触している第2状態が実現される。この第2状態において、第2移動部20Bの第4部分21Bの下面は、緩衝器105の上面と接触している。
【0053】
上記第2状態において、第1移動部20Aの第2部分22Aの第2の位置P2は、第1移動部20Aの移動距離だけ、第2移動部20Bの第2部分22Aの第1の位置P1よりも上方に位置する。その結果、第1状態と第2状態との間での第1部分21の変位量(第3の位置P3と第4の位置P4との間の距離)L3は、第2状態における第1移動部20Aの第2部分22Aと第2移動部20Bの第5部分22Bとの間のZ方向の距離と等しくなる。
【0054】
図8及び
図9を参照して、第2状態における第1移動部20Aの第2部分22Aと第2移動部20Bの第5部分22Bとの間のZ方向の距離(第1の位置P1と第2の位置P2との間の距離)L3が、作業員により測定される。この距離L3と、第1部分21のZ方向の幅(厚み)との和が、カウンターウェイトクリアランスL2として算出され得る。
【0055】
以上のように、測定装置2によれば、カウンターウェイトクリアランスL2が第2状態における第1移動部20Aの第2部分22Aと第2移動部20Bの第5部分22Bとの間のZ方向の距離に基づいて測定され得る。そのため、測定装置2を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法においても、作業員がピット203の床面から緩衝器105の上面に達する高さまで昇降する必要がないため、上記昇降装置及び上記落下防止装置が不要となる。
【0056】
なお、測定装置2を用いた測定方法では、第1状態での第1移動部20Aの第2部分22Aの第1の位置P1を記録しておく必要が無いため、上記第1状態と上記第2状態とが切り替えられなくてもよい。測定装置2を用いた測定方法では、少なくとも、第1移動部20Aの第1部分21Aがカウンターウェイトスペーサ106と接触しており、かつ第2移動部20Bの第4部分21Bが緩衝器105に接触している第3状態が実現されればよい。この場合、第3状態における第2部分22Aと第5部分22Bとの間のZ方向の距離L3が、作業員により測定される。第3状態における第2部分22Aと第5部分22Bとの間のZ方向の距離L3は、第3状態における第1部分21Aと第4部分21Bとの間のZ方向の距離と等しい。
【0057】
測定装置2において、第1移動部20Aは、第1移動部20Aがカウンターウェイトスペーサ106と接触している上記第3状態を実現するために、カウンターウェイトスペーサ106の下面の高さに応じてZ方向に移動するように設けられていてればよい。第1移動部20Aは、緩衝器105と接触しないように設けられていてもよい。第1移動部20AがZ方向に移動可能な長さは、カウンターウェイトクリアランスL2よりも短くてもよい。
【0058】
同様に、第2移動部20Bは、第2移動部20Bが緩衝器105と接触している上記第3状態を実現するために、緩衝器105の上面の高さL1に応じてZ方向に移動するように設けられていてればよい。第2移動部20Bは、カウンターウェイトスペーサ106と接触しないように設けられていてもよい。第2移動部20BがZ方向に移動可能な長さは、カウンターウェイトクリアランスL2よりも短くてもよい。
【0059】
実施の形態3.
図10及び
図11に示されるように、実施の形態3に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置3は、実施の形態1に係るカウンターウェイトクリアランスの測定装置1と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、ガイド部10が第1定滑車14及び第2定滑車15をさらに含み、移動部20の第3部分が環状の紐状部材24である点で、測定装置1とは異なる。以下では、測定装置3が測定装置1とは異なる点を主に説明する。
【0060】
第1定滑車14は、第1孔12の下端よりも上方に配置される。さらに、第1定滑車14は、カウンターウェイトスペーサ106の下面よりも上方に配置される。
【0061】
第2定滑車15は、第1定滑車14よりも下方に配置される。第2定滑車15は、第2孔13の上端よりも下方に配置される。
【0062】
紐状部材24は、第1定滑車14及び第2定滑車15の各々に掛けられておりかつ第1定滑車14及び第2定滑車15の各々において折り返されている。第1部分21は、第1定滑車14及び第2定滑車15に対して一方の側に渡されている紐状部材24の一部に固定されている。第2部分22は、第1定滑車14及び第2定滑車15に対して他方の側に渡されている紐状部材24の他の一部に固定されている。これにより、第1部分21が上方に移動すると、第2部分22は下方に移動する。
【0063】
紐状部材24には、張力が付与されている。つまり、紐状部材24は撓んでいない。その結果、第1定滑車14及び第2定滑車15に対して一方の側に渡されている紐状部材24の一部のZ方向への移動距離は、第1定滑車14及び第2定滑車15に対して他方の側に渡されている紐状部材24の他の一部のZ方向への移動距離と等しくなる。よって、第1部分21のZ方向への移動距離は、第2部分22のZ方向への移動距離と等しくなる。
【0064】
図10及び
図11に示されるように、測定装置3を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法も、測定装置1を用いたカウンターウェイトクリアランスの測定方法と同様に実行され得る。つまり、測定装置3においても、カウンターウェイトクリアランスL2は第1状態と第2状態との間での移動部20の第2部分22の変位量に基づいて測定され得る。
【0065】
なお、測定装置3は、測定装置2と同様に、第1移動部と第2移動部とを備えていてもよい。この場合、ガイド部10は、第1移動部の紐状部材が掛けられている第1及び第2の定滑車と、第2移動部の紐状部材が掛けられている第3及び第4の定滑車とをさらに有していればよい。
【0066】
実施の形態1~3において、第1状態と第2状態との間での第2部分22の変位量は、第1状態と第2状態との間での第1部分21の変位量と等しくなるように設けられているが、これに限られるものではない。第1状態と第2状態との間での第2部分22の変位量は、第1状態と第2状態との間での第1部分21の変位量に任意の係数を乗じた値として算出されるように設けられていてもよい。例えば、第1状態と第2状態との間での第2部分22の変位量は、第1状態と第2状態との間での第1部分21の変位量に係数1/2を乗じた値として算出されるように設けられていてもよい。この場合、移動部20は例えばガススプリング等の弾性部を備えて伸縮可能な部材であってもよい。
【0067】
同様に、実施の形態2において、第3状態における第2部分22Aと第5部分22Bとの間のZ方向の距離は、第3状態における第1部分21Aと第4部分21Bとの間のZ方向の距離と等しくなるように設けられているが、これに限られるものではない。第3状態における第2部分22Aと第5部分22Bとの間のZ方向の距離は、第3状態における第1部分21Aと第4部分21Bとの間のZ方向の距離に任意の係数を乗じた値として算出されるように設けられていてもよい。
【0068】
以上のように本開示の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本開示の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1,2,3 測定装置、10 ガイド部、11 筒状部分、12 第1孔、13 第2孔、14 第1定滑車、15 第2定滑車、20 移動部、20A 第1移動部、20B 第2移動部、21,21A 第1部分、21B 第4部分、22,22A 第2部分、22B 第5部分、23,23A 第3部分、23B 第6部分、24 紐状部材、30 計測部、40 水準器、100 エレベータ装置、101 かご、102 カウンターウェイト、103 ロープ、104,204 巻き上げ機、105 緩衝器、105A 緩衝部、105B 台座、106 カウンターウェイトスペーサ、107 レール、201 昇降路、202 機械室、203 ピット。