(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109460
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】サイドイレーズ測定方法及びリフレッシュ処理方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/09 20060101AFI20230801BHJP
G11B 20/10 20060101ALI20230801BHJP
G11B 20/18 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G11B5/09 361Z
G11B20/10 311
G11B5/09 311Z
G11B20/18 522Z
G11B20/18 512A
G11B20/18 572B
G11B20/18 572F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010989
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆一
【テーマコード(参考)】
5D044
【Fターム(参考)】
5D044BC01
5D044CC04
5D044DE68
5D044FG18
5D044GK18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】データの信頼性を向上するサイドイレーズ測定方法及びリフレッシュ処理方法を提供する。
【解決手段】中心部から半径方向に同心円状に区分される領域である複数のトラックと円周方向に区分される複数のセクタとを備えた円盤型の磁気ディスクにおけるサイドイレーズの測定方法であって、複数のトラックから1本の中央トラックと中央トラックに隣接するトラックから半径方向の外側と内側に同心円状に続く複数の周辺トラックと複数の対象セクタとを選択し、複数の周辺トラックの対象セクタから、隣接する周辺トラック間で異なるセクタとなるようにBit Error Rate(BER)を測定するためのセクタであるBER測定セクタを選択し、中央トラックの対象セクタ全てにデータを1回書き込むごとに、書き込み回数である中央トラックライト回数をカウントし、BER測定セクタにおけるBERを測定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部から半径方向に同心円状に区分される領域である複数のトラックと円周方向に区分される複数のセクタとを備えた円盤型の磁気ディスクにおけるサイドイレーズの測定方法であって、
前記複数のトラックから1本の中央トラックと前記中央トラックに隣接するトラックから前記半径方向の外側と内側に同心円状に続く複数の周辺トラックと複数の対象セクタとを選択し、
前記複数の周辺トラックの前記対象セクタから、隣接する周辺トラック間で異なるセクタとなるようにBit Error Rate(BER)を測定するためのセクタであるBER測定セクタを選択し、
前記中央トラックの全ての前記対象セクタにデータを1回書き込むごとに、書き込み回数である中央トラックライト回数をカウントし、
所定の前記中央トラックライト回数ごとに前記BER測定セクタにおけるBERを測定するサイドイレーズ測定方法。
【請求項2】
前記中央トラックの前記半径方向の外側に隣接する外側第1周辺トラックから前記外側に同心円状に続く複数の周辺トラックである外側全周辺トラックにおいては、第1セクタと前記第1セクタと異なる第2セクタとに前記第1セクタと前記第2セクタの順番で交互に前記BER測定セクタを割り振り、
前記中央トラックの前記半径方向の内側に隣接する内側第2周辺トラックから前記外側に同心円状に続く複数の周辺トラックである内側全周辺トラックにおいては、前記第1セクタと前記第2セクタとに前記第2セクタと前記第1セクタの順番で交互に前記BER測定セクタを割り振り、
前記外側全周辺トラックと前記内側全周辺トラックの前記第1セクタ及び前記第2セクタの前記BER測定セクタ以外の前記対象セクタは、1回以上データを書き込むライトセクタとする請求項1に記載のサイドイレーズ測定方法。
【請求項3】
前記外側全周辺トラックと前記内側全周辺トラックの前記第1セクタ及び前記第2セクタと異なる第3セクタに前記BER測定セクタを割り振る請求項2に記載のサイドイレーズ測定方法。
【請求項4】
請求項2記載のサイドイレーズ測定方法により得たBERを用いた磁気ディスクのリフレッシュ処理方法であって、
第1セクタと第2セクタのBER測定セクタにおいて測定したBERと複数の周辺トラックに対して予め与えられるBER閾値とに基づいて前記複数の周辺トラックごとに求めた前記中央トラックライト回数に対する閾値であるライト回数閾値のうちの最小値を第1ライト回数閾値とし、
Adjacent Track Interferenceリフレッシュ機能(ATIリフレッシュ機能)は、前記第1ライト回数閾値に基づいて前記磁気ディスクに記憶されているデータのリフレッシュを実行するリフレッシュ処理方法。
【請求項5】
請求項3記載のサイドイレーズ測定方法により得たBERを用いた前記磁気ディスクのリフレッシュ処理方法であって、
第3セクタのBER測定セクタにおいて測定したBERと前記BER閾値とに基づいて前記複数の周辺トラックごとに求めた前記ライト回数閾値のうちの最小値を第2ライト回数閾値とし、
前記ATIリフレッシュ機能は、前記第2ライト回数閾値に基づいて前記磁気ディスクに記憶されているデータのリフレッシュを実行する請求項4に記載のリフレッシュ処理方法。
【請求項6】
前記第1ライト回数閾値と前記第2ライト回数閾値とに基づいてライト回数閾値を正規化して生成した前記複数の周辺トラックごとの重みデータのデータベースであるトラックプロファイル重みテーブルに基づいて、データのリフレッシュを実行する請求項5に記載のリフレッシュ処理方法。
【請求項7】
第1トラックにデータが書き込まれた場合に、前記第1トラックの周辺トラックごとに隣接ライト回数をカウントし、前記隣接ライト回数に基づいて前記周辺トラックのデータをリフレッシュする第2のリフレッシュ処理方法において、
前記第1トラックにデータが書き込まれるごとに、前記トラックプロファイル重みテーブルの前記周辺トラックの重みデータに基づいて前記隣接ライト回数をカウントする請求項6に記載のリフレッシュ処理方法。
【請求項8】
第2トラックの周辺トラックに対してカウントされた隣接ライト回数が隣接ライト回数閾値以上のときは、前記第1ライト回数閾値に基づいて前記第2トラックの周辺トラックのデータのリフレッシュを実行し、
前記隣接ライト回数が前記隣接ライト回数閾値未満のときは、前記第2ライト回数閾値に基づいて前記第2トラックの周辺トラックのデータのリフレッシュを実行する請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のリフレッシュ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、サイドイレーズ測定方法及びリフレッシュ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置では、ディスクにデータをライト(書き込み)した場合にヘッドからの漏れ磁束等の影響(Adjacent Track Interference:ATI)により、データが消去されるサイドイレーズが発生することがある。ATIは、例えば、ヘッドの特性、Track per Inch(TPI)設定値及びライト電流設定値などによって異なる。サイドイレーズを防止するために、磁気ディスク装置は、所定のトラックの周辺トラックにデータをライトした回数が規定回数に達した場合に、所定のトラックのデータを書き直す機能(リフレッシュ機能またはATIリフレッシュ機能と称する)を有している。リフレッシュ機能を起動するトリガとしては、サイドイレーズの影響度合いを示したトラックプロファイルが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9502061号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0287566号明細書
【特許文献3】米国特許第10546601号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トラックプロファイルの取得方法によっては、リフレッシュ機能がうまく動作せずにリライトが間に合わないことがある。
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、データの信頼性を向上するサイドイレーズ測定方法及びリフレッシュ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るサイドイレーズ測定方法は、中心部から半径方向に同心円状に区分される領域である複数のトラックと円周方向に区分される複数のセクタとを備えた円盤型の磁気ディスクにおけるサイドイレーズの測定方法であって、前記複数のトラックから1本の中央トラックと前記中央トラックに隣接するトラックから前記半径方向の外側と内側に同心円状に続く複数の周辺トラックと複数の対象セクタとを選択し、前記複数の周辺トラックの前記対象セクタから、隣接する周辺トラック間で異なるセクタとなるようにBit Error Rate(BER)を測定するためのセクタであるBER測定セクタを選択し、前記中央トラックの前記対象セクタ全てにデータを1回書き込むごとに、書き込み回数である中央トラックライト回数をカウントし、前記BER測定セクタにおけるBERを測定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置の構成図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るディスクの領域を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置が実行するリフレッシュ処理の処理動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置に対するサイドイレーズ測定方法を示す概念図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置に対するサイドイレーズ測定方法におけるBER測定の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたトラックごとのサイドイレーズの影響の例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたライト回数依存の例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたトラックごとのライト回数閾値の例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたトラックプロファイル重みテーブルの例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る磁気ディスク装置が実行するリフレッシュ処理の処理動作を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る磁気ディスク装置が実行するリフレッシュ処理の処理動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例に係る磁気ディスク装置に対するサイドイレーズ測定方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図面は、一例であって、発明の範囲を限定するものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置の構成図である。
【0009】
磁気ディスク装置1は、後述するヘッドディスクアセンブリ(HDA)100と、ドライバIC20と、ヘッドアンプ集積回路であるヘッドアンプIC30と、揮発性メモリ70と、バッファメモリ(バッファ)80と、不揮発性メモリ90と、1チップの集積回路であるシステムコントローラ130とを備える。また、磁気ディスク装置1は、ホストシステム2と接続される。
【0010】
ホストシステム2は、例えば、パソコン本体などであり、磁気ディスク装置1に対してデータの読み書き命令などを出力する。またホストシステム2は、BER測定をするためのプログラムを備えていてもよく、BER測定において磁気ディスク装置1を制御することでもよい。
【0011】
HDA100は、磁気ディスク(以下、ディスクと称する)10と、スピンドルモータ(以下、SPMと称する)12と、ヘッド15を搭載しているアーム13と、ボイスコイルモータ(以下、VCMと称する)14とを有する。
【0012】
ディスク10は、スピンドルモータ12に取り付けられ、スピンドルモータ12の駆動により回転する。アーム13及びVCM14は、アクチュエータを構成している。アクチュエータは、VCM14の駆動により、アーム13に搭載されているヘッド15をディスク10の目標位置まで移動制御する。ディスク10およびヘッド15は、2つ以上の数が設けられてもよい。
【0013】
ディスク10は、円盤型の回転ディスク記憶媒体であり、データをライト可能な領域に、ユーザから利用可能なユーザデータ領域10aと、システム管理に必要な情報をライトするシステムエリア10bとが割り当てられている。以下、ディスク10の半径方向に直交する方向を円周方向と称する。
【0014】
スピンドル12は、ディスク10の支柱であり、磁気ディスクの筐体などに設置される。スピンドル12が回転することによりディスク10が回転する。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る磁気ディスクの構成の模式図である。
【0016】
ディスク10は、スピンドル12を中心とした同心円状に複数のトラックTRが設定され、円周方向に複数のセクタ領域SCTが設定されているものとする。トラックTRにはデータが書き込まれ、ヘッド15は、トラックTRにおいてセクタ領域SCTごとにデータをライト(書き込み)したり、書き込まれたデータをリード(読み出し)したりする。トラックTRとセクタ領域SCTが交差する部分を目標データセクタTGTと称する。
【0017】
トラックTR(TRN)は、トラック番号TRNのトラックTRを示す。例えばトラック番号0のトラックTRをトラックTR(0)と示す。またTR(TRN)に隣接するTR(TRN+1)、TR(TRN-1)をTR(TRN)の隣接トラックと称する。
【0018】
図1に戻り、アーム13は、ヘッド15を支持するアームであり、VCM14からの動力をヘッド15に伝え、ヘッド15を目標データセクタTGTに移動させる。
【0019】
VCM14は、アーム13を動かすためのボイスコイルモータである。
【0020】
ヘッド15は、スライダを本体として、当該スライダに実装されているライトヘッド15Wとリードヘッド15Rとを備える。ライトヘッド15Wは、ディスク10にデータをライトする。リードヘッド15Rは、ディスク10のデータトラックに記録されているデータをリードする。
【0021】
ドライバIC20は、システムコントローラ130の制御に従って、SPM12およびVCM14の駆動を制御する。
【0022】
ヘッドアンプIC30は、リードアンプ及びライトドライバを備えている。リードアンプは、ディスク10からリードされたリード信号を増幅して、システムコントローラ130に出力する。ライトドライバは、R/Wチャネル40から出力される信号に応じたライト電流をヘッド15に出力する。
【0023】
揮発性メモリ70は、電力供給が断たれると保存しているデータが失われる半導体メモリである。揮発性メモリ70は、磁気ディスク装置1における処理に必要なデータ等を格納する。揮発性メモリ70は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、又はSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)である。
【0024】
バッファメモリ80は、磁気ディスク装置1とホストシステム2との間で送受信されるデータ等を一時的に記録する半導体メモリである。なお、バッファメモリ80は、揮発性メモリ70と一体に構成されていてもよい。バッファメモリ80は、例えば、DRAM、SRAM(Static Random Access Memory)、SDRAM、FeRAM(Ferroelectric Random Access memory)、又はMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)等である。
【0025】
不揮発性メモリ90は、電力供給が断たれても保存しているデータを記録する半導体メモリである。不揮発性メモリ90は、例えば、NOR型またはNAND型のフラッシュROM(Flash Read Only Memory :FROM)である。
【0026】
システムコントローラ130は、例えば、複数の素子が単一チップに集積されたSystem-on-a-Chip(SoC)と称される大規模集積回路(LSI)を用いて実現されることでもよい。システムコントローラ130は、リード/ライト(R/W)チャネル40と、ハードディスクコントローラ(HDC)50と、マイクロプロセッサ(MPU)60とを含む。システムコントローラ130は、ドライバIC20、ヘッドアンプIC30、揮発性メモリ70、バッファメモリ80、不揮発性メモリ90、及びホストシステム2などに電気的に接続されている。
【0027】
R/Wチャネル40は、後述するMPU60からの指示に応じて、ディスク10からホストシステム2に転送されるリードデータ及びホストシステム2から転送されるライトデータの信号処理を実行する。R/Wチャネル40は、リードデータの信号品質を測定する回路、又は機能を有している。R/Wチャネル40は、ヘッドアンプIC30、HDC50、及びMPU60等に電気的に接続されている。
【0028】
HDC50は、磁気ディスク装置1とホストシステム2とのインターフェースの役割を担い、例えば、ホストシステム2からディスク10へのデータの書き込み命令やディスク10のデータの読み込み命令などのコマンドを受信する。HDC50は、受信したコマンドに基づいて、磁気ディスク装置1の内部を制御したり、ホストシステム2とR/Wチャネル40との間のデータ転送をしたりする。HDC50は、R/Wチャネル40、MPU60、揮発性メモリ70、バッファメモリ80、及び不揮発性メモリ90等に電気的に接続されている。
【0029】
MPU60は、磁気ディスク装置1の各部を制御するメインコントローラである。MPU60は、ドライバIC20を介してVCM14を制御し、ヘッド15の位置決めを行なうサーボ制御を実行する。MPU60は、ディスク10へのデータのライト動作を制御すると共に、ライトデータの保存先を選択する。また、MPU60は、ディスク10からのデータのリード動作を制御すると共に、リードデータの処理を制御する。MPU60は、磁気ディスク装置1の各部に接続されている。MPU60は、ドライバIC20、R/Wチャネル40、及びHDC50等に電気的に接続されている。
【0030】
MPU60は、リード/ライト制御部61と、カウンタ62と、リフレッシュ処理部63とを備えている。MPU60は、リード/ライト制御部61、カウンタ62、及びリフレッシュ処理部63等の処理をファームウェアなどのプログラムにより実行する。なお、MPU60は、これら各部を回路などのハードウェアとして備えていてもよい。
【0031】
リード/ライト制御部61は、ホストシステム2からのコマンドに従って、データのリード処理及びライト処理を制御する。リード/ライト制御部61は、ドライバIC20を介してVCM14を制御し、ヘッド15をディスク10の目標位置に位置決めし、データをリード又はライトする。
【0032】
カウンタ62は、トラックTR(TRN)にデータをライトされた回数N(TRN)(以下、カウント回数又はライト回数と称する)をトラックTR(TRN)ごとにカウントする。カウンタ62は、トラックTR(TRN)かつセクタSCTごとにライト回数N(TRN、SCTN)をカウントすることでもよく、その場合はライト回数をN(TRN、SCTN)のように示す(SCTNはセクタ番号を示す)。またカウンタ62は、トラックTR(TRN)に隣接するトラックTR(TRN+1)やトラックTR(TRN-1)にデータが書き込まれた場合に隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントすることでもよい。
【0033】
リフレッシュ処理部63は、リフレッシュ処理(または単にリフレッシュと称する場合もある)を実行する。リフレッシュ処理とは、ディスク10における隣接トラック干渉によるサイドイレーズの影響を低減するための処理である。例えば、リフレッシュ処理においては、ディスク10のおける所定の記録領域にライトされたデータを一旦リードして、リードしたデータを所定の記録領域に書き直す。ディスク10に書きこまれたデータは、隣接するトラックなどにデータの書き込みがされると、その影響でデータが変質して読み込めなくなる現象(一般にサイドイレーズと称される)が生じることがある。リフレッシュ処理によってサイドイレーズの影響を低減できる。リフレッシュ処理部63は、カウンタ62によりカウントされるライト回数N(TRN)と予め設定した閾値(リフレッシュ閾値と称する)とに基づいて、隣接トラックもしくは隣接トラックを含めた周辺トラックのデータのリフレッシュ処理を実行する。
【0034】
サイドイレーズは、ライト(データ書き込み)をしたトラック(ライトトラックと称する)から離れた場所にも影響を与えることがあるため、周辺トラックのイレーズの影響度合いを重み付けしたトラックプロファイル重みテーブルを持っている。リフレッシュ閾値は、トラックプロファイル重みテーブルに基づいて決定されるが、決定方法については後述する。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置が実行するリフレッシュ処理の処理動作を示すフローチャートである。
【0036】
HDC50は、ホスト2からトラック番号TRNのトラックTR(TRN)へのデータの書き込み命令(ライト要求)を受信する(ステップS101)。HDC50は、リード/ライト制御部61にデータとともにライト要求を送信するとともに、カウンタ62にトラックTRへの書き込み回数であるライト回数N(TRN)をカウントさせる(ステップS102)。
【0037】
カウンタ62は、N(TRN)と閾値TH_Wとを比較し、N(TRN)>TH_Wの場合(ステップS103のYes)、リフレッシュ処理部63にリフレッシュ処理を実行させる(ステップS104)。ステップS104においては、隣接トラックTR(TRN-1)、TR(TRN+1)のデータもしくは隣接トラックを含めた周辺トラックのデータをリフレッシュする。ステップS104の実行を完了すると、カウンタ62は、N(TRN)をクリアする(ステップS105)。ステップS103において、トラックTR(TRN)のライト回数N(TRN)が閾値TH_W以下の場合は、次のライト要求を待つ(ステップS103のNo)。
【0038】
ステップS103における閾値TH_Wは、別途評価などにより取得したサイドイレーズの影響度合いを示したトラックプロファイルなどから決定する。本実施形態においては、隣接トラックへデータライトした場合の影響を考慮してサイドイレーズを測定する。
【0039】
図4は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置に対するサイドイレーズ測定方法を示す概念図であり、サイドイレーズに対する評価基準としてBit Error Rate(BER)を用いた例を示す。
【0040】
トラックTR(0)を中央トラックと称し、トラックTR(0)の両サイドのトラックを周辺トラックと称する。本実施形態のサイドイレーズ測定においては、トラックTR(0)に何度もデータの書き込み(上書き)を行った場合の周辺トラックへのサイドイレーズの影響を測定する。
図4においては、周辺トラックとして、8つのトラックTR(-4)からTR(-1)、TR(1)からTR(4)を示す。周辺トラックにおいてBERを測定するが、
図4に示すように周辺トラックのセクタ領域(SCT1、SCT2、SCT3)ごとに、BER測定をする場所を決定する。
図4の例においては、セクタ領域SCT1においては、周辺トラックTR(-3)、TR(-1)、TR(2)、TR(4)でBERを測定し、周辺トラックTR(-4)、TR(-2)、TR(1)、TR(3)においてはセクタ領域SCT1とは異なるセクタ領域SCT2でBERを測定し、セクタ領域SCT1及びセクタ領域SCT2とは異なるセクタ領域SCT3ではTR0を除いた全トラックでBERを測定する。BERを測定する領域をBER測定領域と称する。本実施形態においては、各周辺トラックのセクタごとにBER測定領域を割り振りし、割り振られたセクタをBER測定セクタと称する。すなわちセクタ領域SCT1とSCT2とでBER測定をするトラックが隣り合わないように、BER測定をするトラックをセクタ領域SCT1とSCT2とに割り振る。これにより周辺トラックTRごとに固有のセクタSCTに対するBER測定ができる。
【0041】
BER測定時には、例えば、BER測定領域に予め既知データを書きこんでおき、ホストシステム2がBER測定領域からデータを読み込んで書きこんだ既知のデータと比較することでBER測定をすることでもよい。
【0042】
BERを測定する周辺トラックにおいて、中央トラックであるトラックTR(0)に連続ライトする前もしくはトラックTR(0)に所定の回数連続ライトした後、BER測定の領域以外の領域に、1回以上ライトする。周辺トラックにおける1回以上ライトするセクタをライトセクタと称する。例えば
図4のように、トラックTR(-3)、TR(-1)、TR(2)、TR(4)に対してはセクタ領域SCT2に1回ライトし、トラックTR(-4)、TR(-2)、TR(1)、TR(3)に対してはセクタ領域SCT1に1回ライトする。その後、各セクタ領域SCT1、SCT2、SCT3に割り振られたBER測定領域のBERを測定する。これにより、BER測定領域へのトラックTR(0)からの影響だけでなく、BER測定領域の隣接トラックの影響をも考慮したBER測定が可能となる。またセクタ領域SCT3においては、全ての周辺トラックに対してライトをせずに、BER測定を実施する。これによりセクタ領域SCT3においては、BER測定領域への隣接トラックからの影響がない場合のBER測定が可能となる。すなわち本実施形態においては、BER測定領域への隣接トラックの影響がある場合とない場合のBER測定を同時に実行可能となる。
【0043】
その後、トラックTR(0)への連続ライトを続け、所定の回数連続ライトするごとに、BER測定領域に対してBERを測定する。これを所定のライト回数となるまで繰り返し、BERのライト回数依存を求める。
【0044】
図5は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置に対するサイドイレーズ測定方法におけるBER測定の手順を示すフローチャートであり、本フローチャートによる処理は、例えばホストシステム2に実装されたソフトウェアなどにより実行されることでもよい。
【0045】
BER測定の対象とするディスク10の中央トラックTRと周辺トラックTRとを選択する(ステップS200)。
図4は、中央トラックTRにはTRN=0が選択され、また周辺トラックにはTRN=-4~4(ただし0を除く)が選択された例である。TRステップS200で選択した周辺トラックTRにおけるBER測定の対象とするディスク10のセクタ領域SCTを選択する(ステップS201)。ステップS201において選択したセクタ領域SCTを評価対象セクタSCTと称する。
図4においては、セクタ領域SCT1、SCT2、SCT3が評価対象セクタSCTに相当する。
【0046】
ステップS201で選択した評価対象セクタSCTに対してBER測定セクタを割り振る(ステップS202)。より具体的には、
図4に示すように周辺トラックTR(-3)、TR(-1)、TR(2)、TR(4)においてはセクタ領域SCT1を、周辺トラックTR(-4)、TR(-2)、TR(1)、TR(3)においてはセクタ領域SCT2を、セクタ領域SCT3においては全周辺トラックTR(-4)、TR(-3)、TR(-2)、TR(-1)、TR(1)、TR(2)、TR(3)、TR(4)をそれぞれBER測定セクタとする。
【0047】
周辺トラックのBER測定セクタに既知のデータを入れる(ステップS203)。ステップS203における既知のデータは、BER測定をするためのデータである。なおステップS203においては、周辺トラックの評価対象セクタSCT全てに既知のデータを入れてもよい。
【0048】
周辺トラックのライトセクタにデータを1回ライトする(ステップS204)。より具体的には、
図4に示すように周辺トラックTR(-3)、TR(-1)、TR(2)、TR(4)のセクタ領域SCT2に、周辺トラックTR(-4)、TR(-2)、TR(1)、TR(3)のセクタ領域SCT1にそれぞれデータを1回ライトする(ステップS204)。ステップS204により、周辺トラックのBER測定セクタへの隣接トラックの影響を考慮することが可能になる。なおステップS204におけるライトセクタへのデータライトは1回以上であってもよい。
【0049】
中央トラックTR(0)のセクタ領域SCT1、SCT2、SCT3にデータを1回ライトする(ステップS205)。カウンタ62は、中央トラックTR(0)へのライト回数N(0)を1増加する(ステップS206)。
【0050】
図4に示したBER測定領域に対してBER測定を実行し、ライト回数N(0)と周辺トラックTR(TRN)ごとのBER(TRN、N(0))を求める(ステップS207からS211)。ステップS207、S211は全ての周辺トラックTR(TRN)に対して、ステップS208からS210を繰り返すことを示す。
【0051】
全ての周辺トラックTR(TRN)に対するBERの測定を実行する(ステップS208)。トラックTR(TRN)に対するBERは、隣接トラックの影響を考慮した場合のBER1(TRN、N(0))と隣接トラックの影響を考慮しない場合のBER2(TRN、N(0))との2つが求められ、2つを総称してBER(TRN、N(0))と称する。
【0052】
より具体的には、例えば
図4において、トラックTR(-3)、TR(-1)、TR(2)、TR(4)に対しては、セクタ領域SCT1のBER測定結果により、隣接トラックの影響を考慮した場合のBER1(TRN、N(0))を得る。また、トラックTR(-4)、TR(-2)、TR(1)、TR(3)に対しては、セクタ領域SCT2のBER測定結果により、隣接トラックの影響を考慮した場合に対するBER1(TRN、N(0))を得る。
【0053】
またセクタ領域SCT3のBER測定結果により、隣接トラックの影響を考慮しない場合のBER2(TRN、N(0))を得る。以上の手順により、中央トラックTR(0)のセクタ領域SCT1、SCT2、SCT3にデータを1回ライトした場合の周辺トラックのBER(TRN、N(0))を得る(ステップS208)。
【0054】
BER(TRN、N(0))をトラックTR(TRN)ごとに予め定めたBER閾値TH_B(TRN)と比較する(ステップS209)。BER(TRN、N(0))がTH_B(TRN)を超えた場合には(ステップS209のYes)、その時のN(0)をトラックTR(TRN)に対するライト回数閾値とし、メモリなどに記憶する(ステップS210)。より具体的には、ステップS209において、BER1(TRN、N(0))>TH_B(TRN)である場合には、ステップS210において、ライト回数閾値TH_W1(TRN)をN(0)とし、揮発性メモリ70などに記憶する。
【0055】
またステップS209において、BER2(TRN、N(0))>TH_B(TRN)である場合には、ステップS210において、ライト回数閾値TH_W2(TRN)をN(0)とし、揮発性メモリ70などに記憶する。ライト回数閾値TH_W1(TRN)は隣接ライトの影響を考慮した場合のライト回数閾値となり、ライト回数閾値TH_W2(TRN)は隣接ライトの影響を考慮しない場合のライト回数閾値となる。なおTH_B(TRN)は、BER1(TRN、N(0))とBER2(TRN、N(0))とに対して異なる値としてもよい。またTH_B(TRN)は、TRNごとの値としてもよいし、全てのTRNに対して同一の値としてもよい。
【0056】
全てのトラックTR(TRN)に対し、ステップS207からS211を実行したら、全てのトラックTR(TRN)について全てのライト回数閾値TH_W1(TRN)、TH_W2(TRN)が求まっているかどうかを確認し、求まっていない場合は、ステップS205からの処理を繰り返す(ステップS212のNo)。求まっていた場合(ステップS212のYes)、全周辺トラックに対して求めたライト回数閾値TH_W1(TRN)、TH_W2(TRN)からそれぞれ最小値を抽出し、抽出した値をライト回数閾値TH_W1、TH_W2として決定する(ステップS213)。
【0057】
図6は、第1の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたトラックごとのサイドイレーズの影響の例を示す図であり、
図5のフローチャートにより得る周辺トラックごとのBERの例である。
【0058】
図6においては、中央トラックTR(0)へのライト回数N(0)を0、100、1000、2000、4000、7000、10000とした場合について、横軸にトラック番号、縦軸にBERを示し、TRN=-15から15の周辺トラックTRについての取得したBERの結果例である。
図6により、ライト回数N(0)が増加するほど周辺トラックのBERは増加するライト回数依存を確認できる。
【0059】
図7は、第1の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたライト回数依存の例を示す図である。
【0060】
特性B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ周辺トラックTRN=-2、-1、+1、+2、+8のトラックTRのBERの例を示し、それぞれ中央トラックTR(0)へのライト回数N(0)を1000回、2000回、4000回、7000回、10000回とした後に測定したBERの例である。それぞれセクタ領域SCT1、2から取得した‘隣接ライトあり‘の場合とSCT3から取得した‘隣接ライトなし‘の場合のBER特性を示す。特性B1、B2、B3、B4、B5それぞれが示すように、ライト回数の対数とBERは線形の依存性を示す。取得した本依存性のデータに基づいて、例えば許容されるBER閾値(
図5ステップS209のTH_B(TRN)に相当)を超えない最大のライト回数をライト回数閾値としてライト回数閾値を求める。またトラック毎のライト回数閾値の求め方として、例えば本依存性のデータから求めたライト回数の対数とBERの線形近似式より、BER閾値を超えない最大のライト回数を求めライト回数閾値としても良い。より具体的には、1000回、2000回、4000回、7000回、10000回でBERを測定し、BERの線形近似式を算出しBER閾値となるライト回数を求める。
【0061】
図8は、第1の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたトラックごとのライト回数閾値の例を示す図である。
【0062】
図8(a)は、
図5のステップS210で決定されるライト回数閾値TH_W1(TRN)、TH_W2(TRN)の例であり、TRN=―15から15の周辺トラックに対する測定結果の例である。
【0063】
図8(b)は、
図8(a)からTRN=-2、-1、+1、+2、+8の周辺トラックに対するライト回数閾値TH_W1(TRN)、TH_W2(TRN)を抽出した例である。
【0064】
例えば、データD1は、TR(-2)のライト回数閾値TH_W1(-2)が3607、TH_W2(-2)が1137であることを示す。
図8(b)のD6は、
図5のステップS213で求めたライト回数閾値TH_W1、TH_W2の例を示し、TRN=-2、-1、+1、+2、+8の周辺トラックに対するライト回数閾値TH_W1(TRN)、TH_W2(TRN)から抽出した最小値であり、それぞれ136、96である。ライト回数閾値TH_W1、TH_W2は、例えば
図3のステップS103に示したTH_Wとして用いる。
TH_W=TH_W1(隣接ライトを考慮する場合)
TH_W=TH_W2(隣接ライトを考慮しない場合)。
【0065】
以上の手順により求めた閾値を
図3のフローチャートに適用することで、隣接トラックの影響を考慮したリフレッシュ処理が可能となる。
(第2の実施形態)
本実施形態においては、トラックTR(TRN)にライトした場合に、第1の実施形態のサイドイレーズ測定方法により求めたライト回数閾値TH_W1(TRN)、TH_W2(TRN)を用いて隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントする例を示す。本実施例におけるカウンタ62は、トラック毎に隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントする隣接ライトカウンタを持つ。
【0066】
図9は、第2の実施形態に係るサイドイレーズ測定方法により求めたトラックプロファイル重みテーブルの例を示す図である。
【0067】
トラックプロファイル重みは、隣接ライトありの場合の値(TPW1とする)と隣接ライトなしの場合の値(TPW2とする)が求められる。TPW1、TPW2(総称してTPWと示す)は、それぞれ
図8(a)に示したトラックごとのライト回数閾値TH_W1(TRN)、TH_W2(TRN)と
図5のステップS213で求めた最小値であるライト回数閾値TH_W1、TH_W2とを用いて求める。トラックTR(TRN)のトラックプロファイル重みTPWをTPW(TRN)とすると、TPW(TRN)は次式のように求められる。
TPW1(TRN)=TH_W1/TH_W1(TRN)
TPW2(TRN)=TH_W2/TH_W2(TRN)。
【0068】
TPWは、サイドイレーズによるライト回数に対する重みを示しており、トラックプロファイル重みテーブルは、例えば予め不揮発性メモリ90などに記憶しておき、周辺トラックへのデータの隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントに利用する。
【0069】
図10は、第2の実施形態に係る磁気ディスク装置が実行するリフレッシュ処理の処理動作を示すフローチャートである。
【0070】
HDC50は、ホスト2からトラック番号TRNのトラックTR(TRN)へのデータの書き込み命令(ライト要求)を受信する(ステップS151)。MPU60は、ステップS153からS156について、トラックTR(TRN)の周辺トラックTR(n)のライト回数N(n)をカウントする。nは、TRN-n1からTRN-n2(ただし、n1、n2は1以上の整数)を示し、トラックTR(TRN)を中心トラックとした場合のトラックTR(TRN)の内側と外側への周辺トラック番号を示す。
【0071】
カウンタ62は、隣接ライト回数N_A(n)をカウントする(ステップS153)。ステップS153において、カウンタ62は、トラックプロファイル重みテーブルから対象の周辺トラックTR(n)の重みTPW(n)を取得し、以下のようにTPW分増加させるようにカウントする。
N_A(n)=N_A(n)+TPW(n)
N_A(n)=N_A(n)+TPW1(n)(トラック重みTPW1を用いる場合)
N_A(n)=N_A(n)+TPW2(n)(トラック重みTPW2を用いる場合)。
【0072】
リフレッシュ処理部63は、予め設定されてある閾値TH_WA(n)とN_A(n)とを比較する(ステップS154)。TH_WA(n)は、トラックTR(n)ごとに設定された閾値でもよいし、nによらず一定の閾値でもよい。
【0073】
N_A(n)>TH_WA(n)の場合、トラックTR(n)のデータをリフレッシュ処理する(ステップS154のYes、ステップS155)。N_A(n)<TH_WA(n)の場合、次のトラックTR(n)について、ステップS153から処理を実施する(ステップS154のNo)。ステップS155において、トラックTR(n)のデータをリフレッシュ処理したら、隣接ライト回数N_A(n)を0にするなどクリアする(ステップS156)。
【0074】
以上の手順により、トラックプロファイル重みテーブルを用いて、周辺トラックへのサイドイレーズ影響を考慮したカウント処理によるリフレッシュ処理が可能となる。
(第3の実施形態)
本実施形態においては、第1の実施形態で用いる閾値TH_Wを隣接ライト回数により決定する方法について示す。トラックTR(TRN)へのデータのライト回数N(TRN)に加えて、トラックTR(TRN)の隣接トラックTR(TRN+1)、トラックTR(TRN-1)へのデータの隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントする。
【0075】
本実施形態におけるカウンタ62は、トラック毎にライト回数N(TRN)をカウントするライトカウンタと、トラック毎に隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントする隣接ライトカウンタを持つ。
【0076】
図11は、第3の実施形態に係る磁気ディスク装置が実行するリフレッシュ処理の処理動作を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS301からS305は、第1の実施形態で説明した
図3のステップS101からS105と同様であるため説明を省略する。ただし、本実施形態においては、トラックTR(TRN)以外のトラックへのライトが実施された場合には(ステップS301のNoの場合)、ステップS321に進む。
【0078】
ステップS321において、HDC50は、ホスト2からトラックTR(TRN)の隣接トラックであるトラックTR(TRN-1)、トラックTR(TRN+1)へのライト要求を受信した場合は(Yesの場合)、トラックTR(TRN)の隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントする(ステップS322)。例えば、TRN=0の場合、カウンタ62は、
図9に示したトラックプロファイル重みテーブルを用いて隣接ライト回数N_A(TRN)を例えば次式のようにカウントする。
【0079】
隣接トラックTR(TRN-1)にライトされた場合:
N_A(0)=N_A(0)+TPW(1)
隣接トラックTR(TRN+1)にライトされた場合:
N_A(0)=N_A(0)+TPW(-1)。
【0080】
すなわち、ステップS322においては、あるトラック(ここでは、TR(TRN+1)もしくはTR(TRN-1))にライトされた場合に、トラックプロファイル重みテーブルを用いて隣接トラックであるTR(TRN)の隣接ライト回数N_A(TRN)をカウントする。
隣接ライト回数N_A(TRN)と予め設定された閾値TH_AWとを比較し、N_A(TRN)>TH_AWの場合は(ステップS323のYes)、閾値TH_W=TH_W1とし(ステップS324)、N_A(TRN)がTH_AW以下の場合は(ステップS323のNo)、値TH_W=TH_W2とする(ステップS325)。TH_W1、TH_W2は、
図5のステップS213で求めた最小値であるライト回数閾値であり、閾値TH_Wは、トラックTR(TRN)のライト回数N(TRN)に対する閾値である。
【0081】
N(TRN)とTH_Wとを比較し、N(TRN)>TH_Wである場合は(ステップS326のYes)、トラックTR(TRN)の隣接トラックTR(TRN-1)、トラックTR(TRN+1)のデータをリフレッシュ処理し(ステップS327)、隣接ライト回数N_A(TRN)を0にするなどクリアする(ステップS328)。またステップS324またはS325で設定された閾値TH_Wは、ステップS303におけるトラックTR(TRN)のライト回数N(TRN)とTH_Wとの比較にも用いる。
【0082】
本実施形態により、隣接トラックの隣接ライト回数N_A(TRN)を考慮してライト回数N(TRN)に対して求めた閾値を用いたリフレッシュ処理が可能となる。
(変形例)
本変形例においては、5つのセクタ領域にBER測定セクタを割り振る例を示す。
【0083】
図12は、変形例に係る磁気ディスク装置に対するサイドイレーズ測定方法を示す概念図である。
【0084】
第1の実施形態においては、
図4に示した3つセクタ領域を用いた例を示したが、
図12のように5つのセクタ領域を用いることもできる。
図12のセクタ領域SCT5は、
図4のセクタ領域SCT3に相当し、全てのトラックをBER測定領域とする。
図12のセクタ領域SCT1から4においては、BER測定領域が隣り合わないように、BER測定セクタを割り振る。本変形例においても第1の実施形態同様にライト回数閾値を求める。本変形例により、BER測定領域を割り振るセクタ領域SCTの数は、任意とすることができる。
【0085】
以上に述べた少なくとも1つの実施形態によれば、データの信頼性を向上するサイドイレーズ測定方法及びリフレッシュ処理方法を提供することができる。
【0086】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1…磁気ディスク装置、2…ホストシステム、10…磁気ディスク、10a…ユーザデータ領域、10b…システムエリア、12…スピンドルモータ(SPM)、13…アーム、14…ボイスコイルモータ(VCM)、15…ヘッド、15W…ライトヘッド、15R…リードヘッド、20…ドライバIC、30…ヘッドアンプIC、40…リード/ライト(R/W)チャネル、50…ハードディスクコントローラ(HDC)、60…マイクロプロセッサ(MPU)、70…揮発性メモリ、80…バッファメモリ、90…不揮発性メモリ、130…システムコントローラ。