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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109465
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B08B3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010995
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】596168605
【氏名又は名称】大川 光治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】大川 光治郎
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB03
3B201BB02
3B201BB83
3B201BB93
3B201BB94
3B201BC01
3B201CB11
3B201CC01
(57)【要約】
【課題】ワークや洗浄方式の変更に応じて柔軟な使用ができるとともに、装置の使用を安価にでき、ランニングコストも低減できるようにする。
【解決手段】水14を貯留する外槽12と、外槽12の内部に外槽12の内面との間に隙間を隔てて備えられて洗浄液15が貯留される内槽13を有し、外槽12には、ワークWが収容される内槽13内の洗浄液15を超音波振動させる超音波振動子16が備えられた超音波洗浄装置11において、外槽12内に、内槽13を着脱可能に収容する内槽収容部17を形成する。また外槽12内に、貯留した水14を加熱して、内槽13内の洗浄液を昇温するヒータ19を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留する外槽と、前記外槽の内部に前記外槽の内面との間に隙間を隔てて備えられて洗浄液が貯留される内槽を有し、前記外槽には、ワークが収容される前記内槽内の洗浄液を超音波振動させる超音波振動子が備えられた超音波洗浄装置であって、
前記外槽内に、前記内槽を着脱可能に収容する内槽収容部が形成され、
前記外槽内に、貯留した水を加熱するヒータを備えた
超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記外槽内であって前記内槽収容部より外側に、ワークを水に浸漬する浸漬部が形成された
請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記内槽収容部が複数形成された
請求項1または請求項2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記内槽が上面の全体に開口部を有する直方体形状であるとともに、
前記開口部がワークの平面視形状を取り囲む方形であり、ワークに対応した大きさである
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記内槽の上端部に取手が形成された
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の超音波洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば硝子基板、液晶表示版、電子部品、光学部品、精密部品、金属部品などのワークを超音波洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波洗浄装置は、洗浄槽の内部に超音波振動子を備えた構造であった。しかし、超音波振動子は洗浄槽内の洗浄液に浸された状態になるので、洗浄液が酸性である場合、振動子には耐酸性に優れた金属製のものを用いなければならず、そうでないと超音波振動子の寿命が短くなってしまう。
【0003】
このため、下記特許文献1の間接照射型超音波洗浄機のようなものが提案されている。この装置は、ワークの洗浄を行う洗浄液を貯留した内槽と、内槽を取り囲む外槽とを有する二重構造である。つまり、外槽の内底面に超音波振動子が備えられるともに、内槽と外槽との間に水を満たして、内槽の洗浄液に間接的に超音波振動を付与するように構成されている。
【0004】
この構成では超音波振動子が酸性の洗浄液にさらされることがないので、超音波振動子の耐久性は良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7-31182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、二重構造の超音波洗浄装置は内槽が外槽の内側に固定的に備えられている。また外槽は、水を張った状態で内槽を収容し超音波振動子を備えるためだけのものであった。このため、予定されたとおりの使用しかできず、ワークの種類や洗浄方式の変更には柔軟に対応できなかった。しかも異なるワークにも対応できるように内槽は比較的大きく形成されているので、使用する洗浄剤の使用量が多いうえ、装置の製造は安価にはできない。このため、装置の使用にはコストがかかるものであった。
【0007】
この発明は、ワークや洗浄方式の変更に応じて柔軟な使用ができるとともに、装置の使用が安価にできるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、水を貯留する外槽と、前記外槽の内部に前記外槽の内面との間に隙間を隔てて備えられて洗浄液が貯留される内槽を有し、前記外槽には、ワークが収容される前記内槽内の洗浄液を超音波振動させる超音波振動子が備えられた超音波洗浄装置であって、前記外槽内に、前記内槽を着脱可能に収容する内槽収容部が形成され、前記外槽内に、貯留した水を加熱するヒータを備えた超音波洗浄装置である。
【0009】
この構成では、洗浄を行う際に内槽が外槽内の内槽収容部に収められる。内槽内の洗浄液は、外槽内に備えたヒータで加熱された水によって昇温されるとともに、外槽に備えた超音波振動子によって振動される。また、外槽内の水はワークのすすぎに使用し得る。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、外槽には内槽収容部を形成しており、内層が着脱自在であるので、洗浄を行うときに必要な洗浄液を貯留した内槽を収めることによって、所望に応じた必要な洗浄ができる。しかも、超音波振動子は洗浄液に触れない構成であるので、洗浄液が酸性であってもそのことで超音波振動子を損傷することはない。
【0011】
また外槽内にはヒータを備えているので、内槽に貯留した洗浄液は水を介して所定温度に加熱され、良好な洗浄が行える。そのうえ、外槽内の温水はワークのすすぎに使用できるので、別途にすすぎ槽を設けずとも、洗浄方式の変更に対応可能である。
【0012】
さらに、内槽を外槽内に収めて使用する構成であるので、内槽の大きさや形状は、ワークを収容し得る大きさのうち最小限のものにすることができるので、ワークに対応した内槽を使用することで、消費する洗浄液の量を低減することも、装置を小型化することもできる。このため、装置を安価に製造できることに加えて、ランニングコストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】超音波洗浄装置の概略構造を示す正面方向から見た断面図。
図2】超音波洗浄装置の概略構造を示す側面方向から見た断面図。
図3】他の例に係る超音波洗浄装置の概略構造を示す断面図。
図4】他の例に係る超音波洗浄装置の概略構造を示す断面図。
図5図5に示した超音波洗浄装置の各部の概略構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
図1図2は、それぞれ超音波洗浄装置11の概略構造を示す正面方向から見た断面図と側面方向から見た断面図である。これらの図に示すように、超音波洗浄装置11は、外槽12と、外槽12の内部に外槽12の内面との間に隙間を隔てて備えられる内槽13を有した二重構造である。外槽12は水14を貯留する部分であり、内槽13は下側部分がその水14に浸かる状態で設置される。この内槽13にはワークWを洗浄する洗浄液15が貯留されて、この洗浄液15に超音波振動を付与する超音波振動子16が、外槽12内に備えられている。
【0016】
外槽12は略直方体形状であり、上端に開口部21を有し、下端に排液口22を有している。開口部21は外槽12の上面全体を開口するものである。外槽12を構成する側壁の上部における所定位置は、オーバーフロー用の排出口23が形成されている。
【0017】
この例の超音波洗浄装置11は、ワークWがメタルマスクである場合に好適なものであり、超音波振動子16は、上下方向に広がる側壁の内側面に、作用面を内側に向けて備えられているが、その他の態様で適宜備えることもできる。超音波振動子16の位置は、オーバーフロー用の排出口23よりも下方である。
【0018】
そして、外槽12内には、超音波振動子16に対向する位置に所定間隔を隔て内槽13を支持できるように、内槽13を着脱可能に収容する内槽収容部17が形成されている。内槽収容部17は、内槽13を収容し得るものであればよく、適宜構成できる。図示例の内槽収容部17は、所定高さに支持される支持台71と、支持台71の上に立設された一対の保持枠72で構成される。支持台71は、側壁の内側面に介装材73を介して固定されており、支持台71及び保持枠72と側壁の内側面との間には隙間が形成されている。保持枠72は支持台71の上面における内槽13の両側面部13aを支持する位置に立設されており、保持枠72には上から差し込まれる内槽13の側面部13aが嵌まる溝部72aが形成されている。
【0019】
内槽収容部17は、超音波振動子16を備えた側壁とは反対側の側壁に形成されており、超音波振動子16と内槽収容部17の間には間隔があけられている。これらの間の部分、すなわち外槽12内であって内槽収容部17より外側の部分は、浸漬部18である。浸漬部18はワークWを水(温水)に浸漬してリンスする(ワークWに付着した薬液を洗い流す)部分である。
【0020】
外槽12内の底部であって、超音波振動子16や内槽収容部17よりも下の位置には、外槽12内に貯留した水14を加熱するヒータ19が備えられている。ヒータ19は、例えばオイル、水等の液状の加熱媒体を所定温度に加熱して循環する構成である。
【0021】
内槽13は直方体形状であり、上面の全体に開口部31を有している。開口部31はワークWの平面視形状を取り囲む長方形であり、ワークWに対応した大きさである。具体的には、開口部31は、ワークWを保持するワーク保持部Xを含めて内槽13に入る部分の平面視形状を包含する大きさの長方形のうち、余剰部分を極力小さくした大きさの長方形である。
【0022】
前述のようにワークWはメタルマスクであるので、開口部21は細長い長方形である。内槽13のうち、開口部31の長手方向の両側に対応する両側面部13aが、前述した内槽収容部17の保持枠72に保持される。
【0023】
また内槽13は上端部に取手32を有している。前述のように内槽13は偏平な形状であるので、取手32は、間隔が小さい方向で相対向する一組の側壁のうち、一方の側壁における外側面に固定されている。取手32の形状は、逆U字形である。このように取手32を形成すれば、内槽13の外槽12に対する出し入れは容易でありながらも、取手32が開口部31を塞ぐことがないので、内槽13に対するワークWの出し入れに支障をきたすことはない。
【0024】
内槽13の側壁の上部であって、洗浄液15の液面位置より少し下の位置には、バルブ33aを備えた排液口33が形成されている。この排液口33は、内槽13に貯留する洗浄液15をHFE(非塩素系有機溶剤であるハイドロフルオロエーテル)とする場合の水抜きに使用できる。
【0025】
超音波洗浄装置11には、上述のほか、図示しない液面センサや温度センサ、循環ポンプ、超音波発振器、コントローラなどが備えられ、制御装置で制御される。
【0026】
以上のように構成された超音波洗浄装置11では、外槽12内に水14、好ましくは純水を貯留し、適宜の洗浄液15を貯留した内槽13をその水14に浸して、ヒータ19によって水14を加熱して洗浄液15を所定温度まで昇温させる。内槽13にはワークWが収容され、この状態で超音波振動子16を駆動して洗浄を行う。洗浄後のワークWは必要に応じて、浸漬部18に浸漬してリンスしたのち、図示しない装置で水切り乾燥等がなされる。
【0027】
ワークWがメタルマスクの場合、例えばまず洗浄液として炭化水素系溶剤(HC)を用いてこれに浸漬して洗浄し、付着している有機材を溶解し除去する。このような洗浄のあと、洗浄液としてフッ素系溶剤、特に非塩素系有機溶剤であるハイドロフルオロエーテル(HFE)を用いてこれに浸漬してリンス乾燥する。HFEはHCよりも低沸点であり、HCよりも比重が大きく、表面張力はHCよりも小さいという性質を有しており、ワークWに付着しているHCを溶解し、除去する。ワークWに付着した非塩素系有機溶剤(HFE)は気化・乾燥される。このあと、ワークWは真空(減圧)乾燥されて、ワークWに付着したごく微量のHFEが完全に気化される。
【0028】
内槽13を洗浄液15ごとに用意して、内槽13に対してワークWを出し入れするとともに、内槽13を外槽12に出し入れすることになるが、内槽13の上端部に取手32が形成されており、その態様はワークWの出し入れに支障をきたさないものである。このため、出し入れ作業は容易であり、洗浄に必要な洗浄液15を貯留した内槽13を用いることによって、所望に応じた必要な洗浄ができる。洗浄液15に超音波振を付与する超音波振動子16は洗浄液15に触れることはないので、洗浄液15が酸性であってもそのことで超音波振動子16を損傷することはなく、装置の耐久性もよい。
【0029】
しかも外槽12内にはヒータ19を備えて貯留した水14を加熱できるようにしているので、内槽13内の洗浄液15は所定温度に昇温され、良好な洗浄が行える。そのうえ、外槽12内の温水はワークWのリンスに使用できるので、別途にリンス槽を設けずともよく、洗浄方式の変更にも柔軟に対応できる。
【0030】
外槽12内の温水をワークWのリンスに使用することについては、浸漬部18を形成しているので、内槽13を内槽収容部17に収容した状態のままでも行えて便利である。
【0031】
また、超音波洗浄装置11は内槽13を外槽12内に収めて使用する構成であって、内槽13が上面の全体に開口部31を有する直方体形状であるとともに、開口部31がワークWの平面視形状を取り囲む方形であり、ワークWに対応した大きさである。つまり内槽13の大きさや形状は、ワークWを収容し得る大きさのうち最小限のものにしているので、消費する洗浄液15の量を低減することも、装置の小型化をはかれる。このため、装置を安価に得られるとともに、ランニングコストも低減でき、大幅な低コスト化をはかることができる。
【0032】
以下、他の例に係る超音波洗浄装置11について説明する。この説明において、前述の構成と同一の構成については同一の符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0033】
図3に他の例に係る超音波洗浄装置11の概略構造を示し、この超音波洗浄装置11は、内槽収容部17が複数形成されたものである。すなわち、外槽12は複数の内槽収容部17を形成できる大きさに形成し、内槽収容部17が並設されている。図示例の内槽収容部17は、一直線上に並べて設けられ、その数は具体的には3個としている。そのうちの端部の内槽収容部17(図面上、内槽13を描いていない部分)は、浸漬部18でもある。
【0034】
内槽収容部17の数は3個に限定されるものではなく、また浸漬部18のみとして使用できる部分を備えてもよい。
【0035】
このような構成の超音波洗浄装置11では、複数の内槽13を備えているので、内槽13の出し入れを行わずとも複数液洗浄が行えて利便性が高い。そのうえ、内槽13の位置を入れ替えることによって容易に、洗浄方式の変更に対応できるので、より一層用途を広げ、個々のワークWに応じた適切な洗浄が容易に行えるようにすることができる。
【0036】
図4に示した超音波洗浄装置11も図3の超音波洗浄装置11と同様に、複数の内槽収容部17を備えたものの例を示している。図4は、図3と同じく、複数の内槽収容部17が直線状に並ぶ方向を正面に見た断面図である。
【0037】
外槽12は複数、具体的には4個の内槽収容部17を形成できる大きさの平面視長方形に形成され、内槽収容部17が一直線状に並設されている。内槽収容部17のうちの後段側に設定された端部の内槽収容部17(図面において右端の内槽収容部17)は、浸漬部18でもある。浸漬部18は、端部の内槽収容部17だけではなく、所望の洗浄工程に必要な内槽13が図示例の場合3個より少ない場合には、その他の内槽収容部17も浸漬部18となり得る。
【0038】
なお、外槽12における前段側、つまり図面において左端の内槽収容部17よりも前段側の端には、オーバーフローさせた外槽12内の水14を受け入れる流下槽24が形成されている。
【0039】
図4の超音波洗浄装置11では、前述例の構造とは異なり、超音波振動子16の全体が外槽12内に位置する投込型や底面型内ではなく、発振面のみが水14に触れるフランジ型を採用している。超音波振動子16は、外槽12の底面に位置するので、ヒータ19は、内槽収容部17の側部であって、超音波振動の当たらない位置に備えられている。
【0040】
内槽収容部17の支持台71は、外槽12の内底面に設けられ、図5の(a),(b)に示したように、平行に配設される角材状をなす2本の支持材74と、これらの支持材74の長手方向の両端部に備えられた規制具75,76で構成される。規制具75,76は支持材74の上面よりも上方に起立する形状であり、上端ほど外側に傾斜した傾斜部を有し、支持材74の上に載置される内槽13が所定位置に収まるように案内し、載置時に内槽13の下端の四隅を保持し、移動を規制するものである。
【0041】
また、図示例の内槽13は、ワークWをバスケットYに入れて洗浄するのに適したものを例示しており、内槽13の内底面にも、外槽12の支持台71と同じ構造の支持台71を備え、バスケットYの下端の四隅を保持するようにしている。
【0042】
このような構成の超音波洗浄装置11においても、複数の内槽13を備えているので、内槽13の出し入れを行わずとも複数液洗浄が行えて利便性が高いうえ、内槽13の位置を入れ替えることによって容易に、洗浄方式の変更に対応できる。
【符号の説明】
【0043】
11…超音波洗浄装置
12…外槽
13…内槽
14…水
15…洗浄液
16…超音波振動子
17…内槽収容部
18…浸漬部
19…ヒータ
31…開口部
32…取手
W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5