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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109498
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】電池パック支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20230801BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011044
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】車谷 健太郎
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB08
3D235BB19
3D235CC14
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF09
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】サイドシル及び電池パックの形状への制約を低減しつつ、サイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックの保護を可能にするための技術を提供する。
【解決手段】サイドシルは、車両に左右一対に設けられ、車両前後方向に延びる。取付部材は、サイドシル同士の間にサイドシルと間隔を空けて配置された電池パックを、サイドシルに取り付けるための部材である。サイドシル連結機構は、取付部材をサイドシルに連結する。電池パック連結機構は、取付部材を電池パックに連結する。サイドシル連結機構は、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合に取付部材がサイドシルに対して回転できるように構成されている。電池パック連結機構は、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合に取付部材が電池パックに対して回転できるように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において電池パックを支持する電池パック支持構造であって、
前記車両に左右一対に設けられ、車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記サイドシル同士の間に前記サイドシルと間隔を空けて配置された前記電池パックを、前記サイドシルに取り付けるための取付部材と、
前記取付部材を前記サイドシルに連結するサイドシル連結機構と、
前記取付部材を前記電池パックに連結する電池パック連結機構と、
を備え、
前記サイドシル連結機構は、前記車両の外部から前記サイドシルに衝撃が加わった場合に前記取付部材が前記サイドシルに対して回転できるように構成され、
前記電池パック連結機構は、前記車両の外部から前記サイドシルに衝撃が加わった場合に前記取付部材が前記電池パックに対して回転できるように構成されている、電池パック支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パック支持構造であって、
前記サイドシル連結機構と前記電池パック連結機構とは、車両前後方向に互いにずれた位置に配置されている、電池パック支持構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電池パック支持構造であって、
前記サイドシル連結機構及び前記電池パック連結機構の少なくとも一方は、前記車両の外部から前記サイドシルに衝撃が加わった場合に前記取付部材と前記サイドシル又は前記電池パックとの連結位置が異なる位置に移動できるように構成されている、電池パック支持構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電池パック支持構造であって、
前記サイドシル連結機構及び前記電池パック連結機構の少なくとも一方は、前記車両の外部から前記サイドシルに衝撃が加わった場合に前記取付部材と前記サイドシル又は前記電池パックとの連結が解除されるように構成されている、電池パック支持構造。
【請求項5】
請求項4に記載の電池パック支持構造であって、
前記電池パック連結機構は、前記取付部材を前記電池パックの下面に連結し、
前記取付部材は、前記電池パックの下方への変位を制限するように構成されている、電池パック支持構造。
【請求項6】
請求項5に記載の電池パック支持構造であって、
前記電池パックの上方に配置され、前記電池パックの上方への変位を制限するように構成された制限部を更に備える、電池パック支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両において電池パックを支持する電池パック支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等の車両では、車両の床下に電池パックが配置される。具体的には、この電池パックは、車両におけるサイドシル同士の間に配置され、サイドシルに取り付けられる。
【0003】
このような電池パックの支持構造に関する技術として、車両の側面衝突等によりサイドシルに衝撃が加わったときの電池パックの破損を抑制するための技術が知られている。例えば特許文献1には、サイドシルと電池パックとの接触部分を車両下側に向けて開いた傾斜形状にする構成が記載されている。このような構成によれば、サイドシルに衝撃が加わった場合に電池パックが下方へ移動して車体から脱落するため、電池パックを保護することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-165138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、サイドシルと電池パックとの接触部分を傾斜形状にする必要があるため、サイドシル及び電池パックの形状に制約があった。
【0006】
本開示の一局面は、サイドシル及び電池パックの形状への制約を低減しつつ、サイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックの保護を可能にするための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両において電池パックを支持する電池パック支持構造である。電池パック支持構造は、サイドシルと、取付部材と、サイドシル連結機構と、電池パック連結機構と、を備える。サイドシルは、車両に左右一対に設けられ、車両前後方向に延びる。取付部材は、サイドシル同士の間にサイドシルと間隔を空けて配置された電池パックを、サイドシルに取り付けるための部材である。サイドシル連結機構は、取付部材をサイドシルに連結する。電池パック連結機構は、取付部材を電池パックに連結する。サイドシル連結機構は、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合に取付部材がサイドシルに対して回転できるように構成されている。電池パック連結機構は、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合に取付部材が電池パックに対して回転できるように構成されている。
【0008】
このような構成によれば、サイドシル及び電池パックを特殊な形状にしなくても、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックの変位を実現することができる。したがって、サイドシル及び電池パックの形状への制約を低減しつつ、サイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックの保護を可能にすることができる。
【0009】
本開示の一態様では、サイドシル連結機構と電池パック連結機構とは、車両前後方向に互いにずれた位置に配置されていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、サイドシル連結機構と電池パック連結機構とが車幅方向に並んで配置されている構成と比較して、電池パックの変位の自由度を高くすることができる。したがって、サイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックの一層の保護を可能にすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、サイドシル連結機構及び電池パック連結機構の少なくとも一方は、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合に取付部材とサイドシル又は電池パックとの連結位置が異なる位置に移動できるように構成されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、取付部材が所定の回転軸を中心とした回転移動しかできない構成と比較して、電池パックの変位の自由度を高くすることができる。したがって、サイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックの一層の保護を可能にすることができる。
【0013】
本開示の一態様では、サイドシル連結機構及び電池パック連結機構の少なくとも一方は、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合に取付部材とサイドシル又は電池パックとの連結が解除されるように構成されていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、車両の外部からサイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックの変位量をより大きくすることができる。したがって、サイドシルに衝撃が加わった場合における電池パックのより一層の保護を可能にすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、電池パック連結機構は、取付部材を電池パックの下面に連結してもよい。取付部材は、電池パックの下方への変位を制限するように構成されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、取付部材と電池パックとの連結が解除された場合にも、取付部材により電池パックの下方への変位が制限されるため、路面への衝突による電池パックの破損を抑制することができる。
【0017】
本開示の一態様は、電池パックの上方に配置され、電池パックの上方への変位を制限するように構成された制限部を更に備えてもよい。
【0018】
このような構成によれば、電池パックが車両の床下に配置された場合に、電池パックが上方へ大きく変位して車室側へ影響を与えてしまうことを抑制することができる。つまり、乗員の保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電池パック支持構造を示す模式的な下面図である。
図2】電池パック支持構造を示す模式的な断面図である。
図3】取付部材を示す正面図である。
図4図2における取付部材を含む範囲を拡大して示す模式的な断面図である。
図5】車両の外部からサイドシルに衝撃が加わったときの電池パック支持構造を示す模式的な下面図である。
図6】車両の外部からサイドシルに衝撃が加わったときの電池パック支持構造を示す模式的な断面図である。
図7図7Aは、取付部材の第2変形例を示す正面図である。図7Bは、取付部材の第3変形例を示す正面図である。図7Cは、取付部材の第4変形例を示す正面図である。図7Dは、取付部材の第5変形例を示す正面図である。図7Eは、取付部材の第6変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1及び図2に示す電池パック支持構造1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両において電池パックPを支持する構造である。以下では、電池パック支持構造1を、単に支持構造1という。支持構造1は、車両の床下において電池パックPを支持する。支持構造1は、一対のサイドシル2A,2Bと、複数の取付部材3と、複数の締結部材4と、少なくとも1つの変位制限部材5と、を備える。以下の説明において、一対のサイドシル2A,2Bのそれぞれを区別しない場合には、サイドシル2と表記する。
【0021】
サイドシル2は、車両の床下の骨格を構成する部材である。サイドシル2は、直線状に延びた形状である。サイドシル2は、その延伸方向を車両前後方向に向けた状態で、車両に左右一対に設けられている。サイドシル2同士の間(すなわち、サイドシル2Aとサイドシル2Bとの間)には、サイドシル2と間隔を空けて電池パックPが配置される。電池パックPは、箱状のケーシング内に電池セル等が収容されたものである。本実施形態の電池パックPの外形は、概略直方体状である。
【0022】
取付部材3は、電池パックPをサイドシル2に取り付けるための部材である。本実施形態の取付部材3は、直線状に延びる板状の部材である。取付部材3は、サイドシル2及び電池パックPの下方に配置されている。ここでいうサイドシル2及び電池パックPに対する上下方向は、これらが車両に搭載された状態における上下方向を指す。以下同様である。取付部材3の数を限定するものではないが、本実施形態の支持構造1は、サイドシル2Aに電池パックPを取り付けるための取付部材3と、サイドシル2Bに電池パックPを取り付けるための取付部材3と、を2つずつ備える。つまり、本実施形態の支持構造1は、計4つの取付部材3を備える。この4つの取付部材3は、電池パックPにおける車両前側の部分及び車両後ろ側の部分のそれぞれに、左右対称に配置されている。
【0023】
図3に示すように、取付部材3の延伸方向における両端部には、締結部材4を挿通するための第1挿通部31及び第2挿通部32が形成されている。締結部材4は、取付部材3をサイドシル2及び電池パックPに締結する部材である。本実施形態の締結部材4は、ボルトである。
【0024】
第1挿通部31は、締結部材4としてのボルトの軸部を挿通可能であって、当該ボルトの頭部が抜けない大きさの円形の貫通孔である。
【0025】
第2挿通部32は、取付部材3の端縁から延伸方向に延びる切り欠きである。具体的には、第2挿通部32は、締結部材4が挿通される円形の貫通孔32aと、貫通孔32aから取付部材3の延伸方向両側に延びる帯状部32b,32cと、を有する。貫通孔32aの直径は、第1挿通部31の直径と同じである。帯状部32b,32cの中心線は、貫通孔32aの中心を通る。帯状部32b,32の幅は、貫通孔32aの直径よりも若干狭く、締結部材4としてのボルトの軸部を挿通できないように構成されている。つまり、第2挿通部32は、通常の状態では締結部材4が貫通孔32aに位置決めされる一方、強い外力が加わった場合には締結部材4が貫通孔32aから端縁側の帯状部32b又は奥側の帯状部32cへ移動できるように構成されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、取付部材3は、鉛直方向に沿って見て、第1挿通部31がサイドシル2に重なり、第2挿通部32が電池パックPに重なるように配置されている。言い換えれば、取付部材3は、鉛直方向に沿って見て、サイドシル2と電池パックPとを橋渡しするように配置されている。
【0027】
そして、第1挿通部31に挿通された締結部材4が、サイドシル2に形成されたネジ穴(図示省略)に螺合することにより、取付部材3をサイドシル2に締結している。すなわち、第1挿通部31及び締結部材4が、取付部材3をサイドシル2に連結するサイドシル連結機構61を構成する。具体的には、サイドシル連結機構61は、取付部材3をサイドシル2の下面に連結する。サイドシル2の下面とは、サイドシル2の外面のうち、サイドシル2が車両に搭載された状態において車両の下方に位置する路面に対向する面である。
【0028】
また、第2挿通部32における貫通孔32aに挿通された締結部材4が、電池パックPに形成されたネジ穴(図示省略)に螺合することにより、取付部材3を電池パックPに締結している。すなわち、第2挿通部32及び締結部材4が、取付部材3を電池パックPに連結する電池パック連結機構62を構成する。具体的には、電池パック連結機構62は、取付部材3を電池パックPの下面に連結する。電池パックPの下面とは、電池パックPの外面のうち、電池パックPが車両に搭載された状態において車両の下方に位置する路面に対向する面である。本実施形態では、前述したように電池パックPの外形が概略直方体状であるため、電池パックPの下面は、電池パックPが車両に搭載された状態において車両の下方に位置する路面と略平行である。
【0029】
本実施形態の支持構造1は、全ての締結部材4の中心軸が同一の向きとなるように構成されている。具体的には、締結部材4の中心軸は、鉛直方向に向けられている。
【0030】
図1に示すように、各取付部材3において、鉛直方向に沿って見て第1挿通部31に挿通する締結部材4の中心軸と貫通孔32aに挿通する締結部材4の中心軸とを通る直線を連結線Lとすると、各取付部材3は、連結線Lが車幅方向に対して斜めになるように配置されている。より詳細には、各取付部材3は、鉛直方向に沿って見て、連結線Lが電池パックPの中心を通るように配置されている。すなわち、1つの取付部材3に含まれる第1挿通部31と第2挿通部32とは、車両前後方向に互いにずれた位置になる。
【0031】
変位制限部材5は、板状の部材である。図4に示すように、変位制限部材5は、制限部51と、支持部52と、を有する。制限部51は、電池パックPの上方への変位を制限するために、電池パックPの上方に配置される部分である。制限部51は、電池パックPと電池パックPの上方に位置する車両の床部を構成する部材(いわゆるボデーフロア)との間に、電池パックPと間隔を空けて配置される。
【0032】
支持部52は、制限部51を支持する部分である。支持部52は、支持部52に形成された貫通孔(図示省略)にボルト7が挿通され、サイドシル2に形成されたネジ穴(図示省略)にボルト7が螺合されることにより、サイドシル2に固定されている。
【0033】
また、本実施形態では、制限部51は、支持部52側の部分が傾斜している。すなわち、本実施形態の制限部51には、傾斜部511が設けられている。制限部51が電池パックPの上方に配置された状態において、傾斜部511は、電池パックP側へ傾斜している。
【0034】
図1及び図2に示すように、変位制限部材5は、左右のサイドシル2に対応して、車両に左右一対に設けられる。各サイドシル2に固定される変位制限部材5の数を限定するものではないが、本実施形態では、サイドシル2Aに固定される変位制限部材5と、サイドシル2Bに固定される変位制限部材5と、を1つずつ備える。つまり、本実施形態の支持構造1は、計2つの変位制限部材5を備える。
【0035】
[2.作用]
車両の側面衝突が起きた場合における支持構造1の作用について、図5及び図6を用いて説明する。
【0036】
図5には、ポール等の物体Mに車両の側面が衝突した例が示されている。車両の側面が物体Mに衝突した場合、物体Mに衝突した側面側のサイドシル2Bに車両の外部から衝撃が加わる。この衝撃によりサイドシル2Bが車体内側に屈曲して電池パックPを押す。電池パックPは、サイドシル2Bに押されて、もう一方のサイドシル2A側へ変位する。この電池パックPの変位に伴って、電池パックPに結合している締結部材4(つまり、貫通孔32aで位置決めされている締結部材4)もサイドシル2A側へ移動する。
【0037】
サイドシル2B側では、電池パックPに結合している締結部材4がサイドシル2A側に移動することにより、取付部材3がサイドシル2A側へ引っ張られる。締結部材4による締結力を上回る外力でサイドシル2A側へ引っ張られると、取付部材3は、締結部材4の中心軸を回転軸として、連結線Lの向きが車幅方向に近付くように回転する。すなわち、サイドシル連結機構61及び電池パック連結機構62は、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わり、締結部材4による締結力を上回る外力が作用した場合に、取付部材3がサイドシル2又は電池パックPに対して回転できるように構成されている。
【0038】
取付部材3がサイドシル2A側へ更に引っ張られ、取付部材3が更に回転して端縁側の帯状部32bの向きが取付部材3の引っ張られる方向へ近付くと、貫通孔32aで位置決めされていた締結部材4が、貫通孔32aから帯状部32bに移動する。そして、電池パックPの変位に伴い締結部材4が帯状部32b内を移動して端縁まで至ると、締結部材4が取付部材3から脱離する。
【0039】
すなわち、電池パック連結機構62は、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わり、締結部材4による締結力を上回る外力が作用した場合に、取付部材3と電池パックPとの連結位置が異なる位置に移動できるように構成されている。そして、電池パック連結機構62は、取付部材3と電池パックPとの連結位置が取付部材3の端縁まで至った場合に、取付部材3と電池パックPとの連結が解除されるように構成されている。
【0040】
一方、サイドシル2A側では、電池パックPに結合している締結部材4がサイドシル2A側に移動することにより、取付部材3がサイドシル2A側へ押される。締結部材4による締結力を上回る外力でサイドシル2A側へ押されると、取付部材3は、締結部材4の中心軸を回転軸として、連結線Lの向きが車両前後方向に近付くように回転する。取付部材3がサイドシル2A側へ更に押されると、貫通孔32aで位置決めされていた締結部材4が、貫通孔32aから奥側の帯状部32cに押し込まれる。つまり、取付部材3と電池パックPとの連結位置が、貫通孔32aから帯状部32cに移動する。
【0041】
図6に示すように、サイドシル2B側の取付部材3と電池パックPとの連結が解除され、電池パックPがサイドシル2Aのみに取り付けられた状態になると、電池パックPはサイドシル2Aへの取付位置を支点に上下に変位可能になる。ただし、電池パックPの上方への変位は、図4に示す変位制限部材5の制限部51により制限される。特に本実施形態では、制限部51に傾斜部511が設けられている。このため、仮に電池パックPが上方に変位した場合、電池パックPは、傾斜部511によってサイドシル2A側へ誘導される。すなわち、本実施形態の制限部51は、車両の外部からサイドシル2Bに衝撃が加わった場合に、電池パックPの上方への変位を制限しつつ、もう一方のサイドシル2A側(すなわち、サイドシル2B側の取付部材3と電池パックPとの連結が解除される方向)へ電池パックPを誘導するように構成されている。また、図6に示すように、電池パックPの下方への変位は、サイドシル2B側の取付部材3により制限される。すなわち、取付部材3は、電池パックPとの連結が解除された状態においても、電池パックPの下方への変位を制限するように構成されている。
【0042】
[3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)支持構造1では、サイドシル連結機構61は、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3がサイドシル2に対して回転できるように構成されている。また、電池パック連結機構62は、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3が電池パックPに対して回転できるように構成されている。
【0043】
このような構成によれば、サイドシル2及び電池パックPを特殊な形状にしなくても、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合における、衝撃を受けたサイドシル2から離れる方向への電池パックPの変位を実現することができる。したがって、サイドシル2及び電池パックPの形状への制約を低減しつつ、サイドシル2に衝撃が加わった場合における電池パックPの保護を可能にすることができる。
【0044】
(3b)支持構造1では、サイドシル連結機構61と電池パック連結機構62とは、車両前後方向に互いにずれた位置に配置されている。
【0045】
このような構成によれば、サイドシル連結機構61と電池パック連結機構62とが車幅方向に並んで配置されている構成と比較して、電池パックPの変位の自由度を高くすることができる。したがって、サイドシル2に衝撃が加わった場合における電池パックPの一層の保護を可能にすることができる。
【0046】
(3c)支持構造1では、電池パック連結機構62は、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3と電池パックPとの連結位置が異なる位置に移動できるように構成されている。
【0047】
このような構成によれば、取付部材3が所定の回転軸を中心とした回転移動しかできない構成と比較して、電池パックPの変位の自由度を高くすることができる。したがって、サイドシル2に衝撃が加わった場合における電池パックPの一層の保護を可能にすることができる。
【0048】
(3d)支持構造1では、電池パック連結機構62は、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3と電池パックPとの連結が解除されるように構成されている。
【0049】
このような構成によれば、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に電池パックPがサイドシル2から外れるため、電池パックPの変位量をより大きくすることができる。したがって、サイドシル2に衝撃が加わった場合における電池パックPのより一層の保護を可能にすることができる。
【0050】
(3e)支持構造1では、取付部材3は、電池パックPの下面に連結され、電池パックPの下方への変位を制限するように構成されている。
【0051】
このような構成によれば、取付部材3と電池パックPとの連結が解除された場合にも、取付部材3により電池パックPの下方への変位が制限されるため、路面への衝突による電池パックPの破損を抑制することができる。
【0052】
(3f)支持構造1は、電池パックPの上方に配置され、電池パックPの上方への変位を制限するように構成された制限部51を備える。
【0053】
支持構造1は車両の床下に配置されるため、電池パックPの上方には車室が位置する。上記のような構成によれば、取付部材3と電池パックPとの連結が解除された場合に、電池パックPが上方へ大きく変位して車室側へ影響を与えてしまうことを抑制することができる。つまり、乗員の保護を図ることができる。
【0054】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0055】
(4a)上記実施形態では、取付部材3における第1挿通部31は、円形の貫通孔である。また、取付部材3における第2挿通部32は、貫通孔32aと帯状部32b,32cとを有する切り欠きである。しかし、挿通部の形状は、特に限定されない。
【0056】
第1変形例として、挿通部は、締結部材4としてのボルトの軸部を挿通可能な幅であって一定の幅の切り欠きであってもよい。また、図7Aに示す第2変形例のように、挿通部33は、締結部材4としてのボルトの軸部を奥側に挿通可能且つ端縁側に幅が拡大する切り欠きであってもよい。このような構成によれば、比較的小さな外力でも締結部材4が端縁側に移動し得るため、締結部材4が取付部材3から脱離しやすくすることができる。
【0057】
また、図7Bに示す第3変形例のように、挿通部34は、前述した貫通孔32aと、貫通孔32aから端縁側に延び且つ端縁側に幅が拡大する開放部34aと、を有する切り欠きであってもよい。開放部34aにおける貫通孔32a側の幅は、貫通孔32aの直径よりも若干狭く、締結部材4としてのボルトの軸部を挿通できないように構成されている。このような構成によれば、上記実施形態の第2挿通部32と同様に強い外力が加わらないと締結部材4は貫通孔32aから開放部34aに移動しないものの、締結部材4が貫通孔32aから開放部34aに移動した場合には、比較的小さな外力でも締結部材4が開放部34aを端縁側に移動し得る。このため、締結部材4が取付部材3から脱離しやすくすることができる。
【0058】
また、図7Cに示す第4変形例のように、挿通部35は、前述した貫通孔32aと、貫通孔32aから奥側にV字状に延びる帯状部35a,35bと、を有する貫通孔であってもよい。帯状部35a,35bの幅は、貫通孔32aの直径よりも若干狭く、締結部材4としてのボルトの軸部を挿通できないように構成されている。このような構成によれば、貫通孔32aで位置決めされていた締結部材4に奥側への強い外力が加えられた場合に、外力が加えられた方向に応じて締結部材4が貫通孔32aから帯状部35a又は帯状部35bに押し込まれる。図5においてサイドシル2Aに固定された2つの取付部材3のように、締結部材4に作用する外力の方向が異なる場合でも、各方向に対応する帯状部35a,35bがそれぞれ設けられているため、取付部材3を共通の構成とすることができる。
【0059】
第4変形例の挿通部35では帯状部35a,35bの幅が貫通孔32aの直径よりも若干狭く構成されているが、図7Dに示す第5変形例の挿通部36のように、帯状部36a,36bの幅が貫通孔32aの直径と同一であってもよい。このような構成によれば、比較的小さい外力でも締結部材4が奥側に移動しやすくすることができる。
【0060】
また例えば、挿通部は、図7A又は図7Bに示すような構成と、図7C又は図7Dに示すような構成と、を組み合わせた構成であってもよい。図7Eに示す第6変形例の挿通部37は、図7Bに示す第3変形例の挿通部34と、図7Cに示す第4変形例の挿通部35と、を組み合わせた形状の切り欠きである。具体的には、第6変形例の挿通部37は、貫通孔32aから端縁側に開放部34aが設けられ、貫通孔32aから奥側に帯状部35a,35bが設けられた形状である。このような構成によれば、締結部材4に加えられる外力の方向に応じて、締結部材4が取付部材3から脱離しやすくしつつ、締結部材4が奥側に移動しやすくすることもできる。したがって、左右のサイドシル2A,2Bに固定される取付部材3を共通の構成とすることができる。
【0061】
(4b)上記実施形態では、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に、電池パックPに結合する締結部材4が、貫通孔32aから帯状部32bを移動して取付部材3から脱離し得る。すなわち、電池パック連結機構62が、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3と電池パックPとの連結が解除されるように構成されている。しかし、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に、サイドシル2に結合する締結部材4が取付部材3から脱離し得るように構成されてもよい。すなわち、サイドシル連結機構61が、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3とサイドシル2との連結が解除されるように構成されてもよい。具体的には、例えばサイドシル連結機構61が、第2挿通部32及び締結部材4により構成されてもよい。
【0062】
(4c)上記実施形態では、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に、電池パックPに結合する締結部材4が、貫通孔32aから帯状部32cに押し込まれ得る。すなわち、電池パック連結機構62が、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3と電池パックPとの連結位置が異なる位置に移動できるように構成されている。しかし、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に、サイドシル2に結合する締結部材4が奥側に押し込まれ得るように構成されてもよい。すなわち、サイドシル連結機構61が、車両の外部からサイドシル2に衝撃が加わった場合に取付部材3と電池パックPとの連結位置が異なる位置に移動できるように構成されてもよい。具体的には、例えばサイドシル連結機構61が、第2挿通部32及び締結部材4により構成されてもよい。
【0063】
(4d)上記実施形態では、各取付部材3は、鉛直方向に沿って見て連結線Lが電池パックPの中心を通るように配置されている。しかし、各取付部材3の配置は特に限定されず、例えば、各取付部材3は、連結線Lが互いに平行になるように配置されてもよい。また、各取付部材3は、必ずしも鉛直方向に沿って見て連結線Lが車幅方向に対して斜めになるように配置されていなくてもよい。すなわち、サイドシル連結機構61と電池パック連結機構62とは、必ずしも車両前後方向に互いにずれた位置に配置されなくてもよく、例えば車幅方向に並んで配置されてもよい。
【0064】
(4e)上記実施形態では、取付部材3は、サイドシル2及び電池パックPそれぞれの下面に連結されるが、取付部材3のサイドシル2及び電池パックPへの取付位置は特に限定されない。例えば、取付部材3は、サイドシル2及び電池パックPそれぞれの上面に連結されてもよい。すなわち、取付部材3は、必ずしも電池パックPの下方への変位を制限するように構成されていなくてもよい。
【0065】
(4f)上記実施形態では、支持構造1は、制限部51を備えるが、必ずしも制限部51を備えなくてもよい。
【0066】
(4g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…電池パック支持構造、2A,2B…サイドシル、3…取付部材、31…第1挿通部、32…第2挿通部、32a…貫通孔、32b,32c…帯状部、4…締結部材、5…変位制限部材、51…制限部、511…傾斜部、52…支持部、61…サイドシル連結機構、62…電池パック連結機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7