(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109505
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】半導体素子、半導体素子の実装構造、およびサーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/345 20060101AFI20230801BHJP
B41J 2/34 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B41J2/345 K
B41J2/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011055
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065KK03
2C065KK10
2C065KK16
(57)【要約】
【課題】 フリップチップ実装時における不具合を防止するのに適した半導体素子を提供する。
【解決手段】 駆動IC6(半導体素子)は、z方向(厚さ方向)を向く第1面611を有する素子本体61と、第1面611の上に配置された第1配線層62と、第1配線層62の上に配置された絶縁膜63と、を備え、第1配線層62は、複数の第1パッド部622を含み、絶縁膜63は、複数の第1パッド部622の各々を露出させる複数の開口部631を有し、複数の第1パッド部622の各々に積層された複数の導電性接合部64と、絶縁膜63に積層され、絶縁膜63よりもz方向に突出する嵩上げ部65と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向を向く第1面を有する素子本体と、
前記第1面の上に配置された第1配線層と、
前記第1配線層の上に配置された絶縁膜と、を備え、
前記第1配線層は、複数の第1パッド部を含み、
前記絶縁膜は、前記複数の第1パッド部の各々を露出させる複数の開口部を有し、
前記複数の第1パッド部の各々に積層された複数の導電性接合部と、
前記絶縁膜に積層され、前記絶縁膜よりも前記厚さ方向に突出する嵩上げ部と、を備える、半導体素子。
【請求項2】
前記嵩上げ部は、前記素子本体の外周縁に沿って配置されている、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記素子本体は、前記厚さ方向に見て長矩形状であり、
前記嵩上げ部は、少なくとも一部が前記素子本体の長辺に沿って配置されている、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記導電性接合部の構成材料は、金を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項5】
前記嵩上げ部は、前記導電性接合部と同じ導電性材料からなる、請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項6】
前記導電性接合部は、第1めっき層を含み、
前記嵩上げ部は、前記第1めっき層と同じ構成材料からなる第2めっき層を含む、請求項5に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記導電性接合部は、互いに積層された第1シード層および前記第1めっき層を含んで構成され、
前記嵩上げ部は、互いに積層された第2シード層および前記第2めっき層を含んで構成されており、
前記第1シード層と前記第2シード層とは、同じ構成材料からなる、請求項6に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記第1配線層は、第1配線部および前記複数の第1パッド部を有する第1層からなり、
前記厚さ方向において、前記第1配線部、前記絶縁膜および前記嵩上げ部の順に積層されている、請求項5ないし7のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項9】
前記第1層の構成材料は、アルミニウムを含む、請求項8に記載の半導体素子。
【請求項10】
前記導電性接合部が前記第1面から前記厚さ方向に最も突出する位置までの第1寸法と、前記嵩上げ部が前記第1面から前記厚さ方向に最も突出する位置までの第2寸法とは、同一である、請求項6または7に記載の半導体素子。
【請求項11】
前記嵩上げ部は、絶縁性材料により構成される、請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項12】
前記嵩上げ部の構成材料は、ポリイミド樹脂を含む、請求項11に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記厚さ方向の一方側を向く第2面を有する基板、および前記第2面の上に配置された第2配線層を有する支持体と、
請求項1ないし12のいずれかに記載の半導体素子と、を備え、前記半導体素子が前記支持体にフリップチップ実装された実装構造であって、
前記第2配線層は、複数の第2パッド部を含み、
前記半導体素子における前記複数の第1パッド部の各々は、前記導電性接合部を介して前記複数の第2パッド部のいずれかに導通接続されている、半導体素子の実装構造。
【請求項14】
前記第2配線層は、前記導電性接合部と同じ構成材料を含む、請求項13に記載の半導体素子の実装構造。
【請求項15】
前記第2面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を備え、
前記第2配線層は、前記抵抗体層に導通しており、
前記半導体素子は、前記各発熱部に流す電流を制御するための駆動ICである、請求項13または14に記載の実装構造を有する、サーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記基板は、セラミックからなる、請求項15に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子、半導体素子の実装構造、およびサーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。同文献に開示のサーマルプリントヘッドは、基板、グレーズ層、電極層、発熱抵抗体、および駆動IC(半導体素子)を備える。基板は、絶縁材料からなる板状の部材であり、たとえばアルミナ(Al2O3)などのセラミックからなる。グレーズ層は、基板の表面に形成されており、たとえばガラスからなる。電極層は、グレーズ層上に形成されており、発熱抵抗体に選択的に電流を流すための電流経路を構成している。発熱体抗体は、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する。駆動ICは、各発熱部に流す電流を制御する。
【0003】
特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドにおいて、駆動ICは、フリップチップ実装により基板上に搭載されている。駆動ICにおいて基板と対向する実装面には、複数の導電性接合材が設けられている。電極層には複数のパッド部が設けられており、基板への駆動ICの搭載時には、たとえば駆動ICを基板に加圧しつつ基板上の複数のパッド部と駆動IC側の複数の導電性接合材とを直接接合させる(たとえば超音波接合)。このような駆動ICの実装構造によれば、ICチップの複数の導電性接合材と配線層の複数のパッド部とを一括して接合することができる。また、ワイヤボンディング接続する場合と比べて、駆動ICを搭載するのに必要な面積を小さくすることができる。
【0004】
上記のようにフリップチップ実装される駆動ICについては、ワイヤボンディング接続に用いる仕様のものを、フリップチップ実装用として兼用する場合がある。ワイヤボンディング接続用の駆動ICにおいては、ワイヤ接続のための複数のパッド部が上面(フリップチップ実装する場合の実装面)に設けられている。これら複数のパッド部は、駆動ICの上面において不均一に配置される場合がある。このような駆動ICをフリップ実装に用いる場合、基板への駆動ICの搭載時には、複数の導電性接合材の各所の加圧状態に偏り(ばらつき)が生じ易く、導電性接合材の接合状態が悪化するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、フリップチップ実装時における不具合を防止するのに適した半導体素子、半導体素子の実装構造、および当該実装構造を備えたサーマルプリントヘッドを提供することを主たる課題とする。
【0007】
本開示の第1の側面によって提供される半導体素子は、厚さ方向を向く第1面を有する素子本体と、前記第1面の上に配置された第1配線層と、前記第1配線層の上に配置された絶縁膜と、を備え、前記第1配線層は、複数の第1パッド部を含み、前記絶縁膜は、前記複数の第1パッド部の各々を露出させる複数の開口部を有し、前記複数の第1パッド部の各々に積層された複数の導電性接合部と、前記絶縁膜に積層され、前記絶縁膜よりも前記厚さ方向に突出する嵩上げ部と、を備える。
【0008】
本開示の第2の側面によって提供される半導体素子の実装構造は、前記厚さ方向の一方側を向く第2面を有する基板、および前記第2面の上に配置された第2配線層を有する支持体と、本開示の第1の側面に係る半導体素子と、を備え、前記半導体素子が前記支持体にフリップチップ実装された実装構造であって、前記第2配線層は、複数の第2パッド部を含み、前記半導体素子における前記複数の第1パッド部の各々は、前記導電性接合部を介して前記複数の第2パッド部のいずれかに導通接続されている。
【0009】
本開示の第3の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、本開示の第2の側面に係る半導体素子の実装構造を有し、前記第2面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を備え、前記第2配線層は、前記抵抗体層に導通しており、前記半導体素子は、前記各発熱部に流す電流を制御するための駆動ICである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、半導体素子のフリップチップ実装時における複数の導電性接合部それぞれの加圧状態のばらつきを抑制し、フリップチップ実装時における不具合を防止するのに適する。
【0011】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの部分拡大平面図である。
【
図5】
図5は、駆動IC(半導体素子)の拡大平面図である。
【
図7】
図7は、フリップチップ実装された駆動IC(半導体素子)において、導電性接合部と第2パッド部との接合部位、および嵩上げ部を示す、
図6と同様の断面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す駆動IC(半導体素子)における導電性接合部および嵩上げ部の形成手順の一例を説明するための断面図である。
【
図13】
図13は、駆動IC(半導体素子)をフリップチップ実装する工程を示す断面図である。
【
図15】
図15は、駆動IC(半導体素子)の第1変形例を示す、
図5と同様の拡大平面図である。
【
図16】
図16は、駆動IC(半導体素子)の第2変形例を示す、
図6と同様の断面図である。
【
図17】
図17は、フリップチップ実装された駆動IC(半導体素子)において、導電性接合部と第2パッド部との接合部位、および嵩上げ部を示す、
図16と同様の断面図である。
【
図18】
図18は、
図16に示す駆動IC(半導体素子)における導電性接合部および嵩上げ部の形成手順の一例を説明するための断面図である。
【
図24】
図24は、駆動IC(半導体素子)をフリップチップ実装する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
本開示における「第1」、「第2」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0015】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0016】
図1~
図7は、本開示の一実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、基板1、グレーズ層2、第2配線層3、抵抗体層4、保護層5、駆動IC6、保護樹脂71およびコネクタ72を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、駆動IC6(半導体素子)がフリップチップ実装された実装構造(本開示に係る半導体素子の実装構造)を具備するものである。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ81(
図2参照)によって搬送される印刷媒体82に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。このような印刷媒体82としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0017】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う概略断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す部分拡大平面図である。
図4は、
図2の一部を拡大した断面図である。
図5は、駆動IC6の拡大平面図である。
図6は、
図5のVI-VI線に沿う拡大断面図である。
図7は、フリップチップ実装された駆動IC6において、後述の導電性接合部64と第2パッド部36との接合部位、および嵩上げ部65を示す断面図である。なお、理解の便宜上、
図1および
図3においては、保護層5を省略している。
図4においては、コネクタ72を省略している。
図7においては、保護樹脂71を省略している。また、これらの図において、基板1の長手方向(主走査方向)をx方向とし、短手方向(副走査方向)をy方向とし、厚さ方向をz方向として説明する。また、y方向については、
図1、
図3の下方(
図2、
図4の左方)を印刷媒体が送られてくる「上流」とし、
図1、
図3の上方(
図2、
図4の右方)を印刷媒体が排出される「下流」とする。また、z方向については、
図2、
図4の上方(方向zを示す矢印が指す方向)を「上方」とし、その反対方向を「下方」とする。以下の図においても同様である。
【0018】
基板1は、たとえばAl
2O
3などのセラミックからなり、その厚さがたとえば0.6~1.0mm程度とされている。
図1に示すように、基板1は、x方向に長く延びる長矩形状とされている。基板1は、第2面11を有する。第2面11は、上方(z方向の一方側)を向く。グレーズ層2、第2配線層3、抵抗体層4、保護層5、駆動IC6および保護樹脂71の各々は、基板1の第2面11上に配置されている。コネクタ72は、外部の機器との接続を行うためのものであり、たとえば、基板1 のy方向における
図1中下端部に設けられている。
【0019】
グレーズ層2は、基板1(第2面11)上に配置されており、例えば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。本実施形態のグレーズ層2は、一定の厚みを有するように形成されており、z方向の上方を向く略平坦なグレーズ主面21を有している。グレーズ層2の厚みは、たとえば50~200μmである。
【0020】
サーマルプリントヘッドA1は、いわゆる厚膜型と呼ばれる構成を備えており、厚膜印刷を利用して製作される。グレーズ層2は、ガラスペーストを基板1上に厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。グレーズ層2は、厚膜形成技術によって形成されている。
【0021】
第2配線層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、グレーズ層2のグレーズ主面21上に配置されている。第2配線層3は、抵抗体層4の比抵抗値よりも小さな比抵抗値を有するように形成されている。本実施形態の第2配線層3は、たとえば金(Au)を主成分として含む導電体からなり、たとえばレジネートAuからなる。第2配線層3の厚さは、たとえば0.6~1.2μm程度である。
【0022】
図3、
図4に示すように、第2配線層3は、共通電極31、複数の個別電極32、複数の信号配線部35および複数の第2パッド部36を有している。
【0023】
共通電極31は、共通部311および複数の共通電極帯状部312を有する。具体的には、共通部311は、抵抗体層4に対してy方向下流側に配置されており、x方向に沿って延びている。複数の共通電極帯状部312は、各々が共通部311からy方向上流側に延びており、x方向に等ピッチで配列されている。
【0024】
複数の個別電極32は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものであり、共通電極31に対して逆極性となる部位である。個別電極32は、抵抗体層4から駆動IC6に向かって延びている。複数の個別電極32は、x方向に配列されており、各々が個別電極帯状部33および連結部34を有している。
【0025】
各個別電極帯状部33は、y方向に延びた帯状部分であり、共通電極31の隣り合う2つの共通電極帯状部312の間に位置している。連結部34は、個別電極帯状部33から駆動IC6に向かって延びる部分であり、そのほとんどがy方向に沿った部位およびy方向に対して傾斜した部位を有している。連結部34は、y方向上流側において、x方向に比較的狭い間隔で配列されている。当該y方向上流側において隣り合う連結部34どうしの間隔は、たとえば20μm以下程度となっている。各連結部34のy方向上流側端部は、z方向に見て駆動IC6と重なっている。
【0026】
複数の信号配線部35は、コネクタ72と駆動IC6とに接続される配線パターンを構成している。
図4においては1つの信号配線部35のみ表れているが、複数の信号配線部35は、駆動IC6の近傍において、x方向に配列されるとともに各々がy方向に延びている。各信号配線部35のy方向下流側端部は、z方向に見て駆動IC6と重なっている。なお、サーマルプリントヘッドA1に使用される駆動IC6は、通常、長矩形状の平面形状を有する(
図1参照)。駆動IC6の長辺は、抵抗体層4が延びる方向であるx方向(主走査方向)に沿う。
【0027】
図4、
図7に示すように、複数の第2パッド部36は、複数の導電性接合部64を介して、フリップチップ実装された駆動IC6と接続される部分である。複数の第2パッド部36は、x方向およびy方向に複数ずつ配列されている。複数の第2パッド部36は、複数の連結部34(個別電極32)のいずれかのy方向上流側端部、または複数の信号配線部35のいずれかのy方向下流側端部につながっている。本実施形態において、複数の第2パッド部36は、y方向において2列に形成されている。
【0028】
駆動IC6において基板1と対向する面には、複数の導電性接合部64が配置されている。上記複数の第2パッド部36は、複数の導電性接合部64に対応して配置されている。
【0029】
抵抗体層4は、第2配線層3を構成する材料よりも抵抗率が高い、たとえば酸化ルテニウムなどからなり、x方向に延びる帯状に形成されている。
図3に示すように、抵抗体層4は、共通電極31の複数の共通電極帯状部312と複数の個別電極32の個別電極帯状部33とに交差している。さらに、抵抗体層4は、共通電極31の複数の共通電極帯状部312と複数の個別電極32の個別電極帯状部33に対して基板1とは反対側に積層されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部312と各個別電極帯状部33とに挟まれた部位が、第2配線層3によって部分的に通電されることにより発熱する発熱部41とされている。1個の個別電極帯状部33を挟んで隣り合う2個の発熱部41の発熱によって1個の印字ドットが形成される。抵抗体層4の厚さは、たとえば3~10μm程度である。
【0030】
保護層5は、第2配線層3および抵抗体層4を保護するためのものである。保護層5は、たとえば非晶質ガラスからなる。ただし、保護層5は、複数の第2パッド部36を含む領域を露出させている。
【0031】
駆動IC6は、複数の個別電極32を選択的に通電させることにより、抵抗体層4を部分的に発熱させる機能を果たす。
図1、
図4に示すように、駆動IC6は、抵抗体層4(複数の発熱部41)に対してy方向上流側に配置されている。本実施形態において、グレーズ層2上に複数の駆動IC6がフリップチップ実装により配置されている。
【0032】
図5は、駆動IC6の拡大平面図であり、フリップチップ実装される前の部品の状態を示す。
図5においては、駆動IC6における基板1と対向する面が、上方を向く。
【0033】
駆動IC6は、素子本体61、第1配線層62、絶縁膜63、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65を有する。素子本体61は、z方向に見て長矩形状である。第1面611、一対の長辺612および一対の短辺613を有する。第1面611は、z方向を向いており、フリップチップ実装された駆動IC6が基板1と対向する実装面である。一対の長辺612および一対の短辺613は、z方向に見て素子本体61の外周縁を構成している。
【0034】
第1配線層62は、素子本体61の第1面611上に配置されている。本実施形態において、第1配線層62は、たとえばアルミニウム(Al)を主成分として含む導電体からなり、単一の金属層である第1層62Aからなる。第1配線層62の構成材料としては、たとえばAlやAlを含む合金(Al-Si系合金、Al-Si-Cu系合金等)が挙げられる。
【0035】
図6に示すように、第1配線層62(第1層62A)は、複数の第1配線部621および複数の第1パッド部622を有する。複数の第1パッド部622は、x方向およびy方向に複数ずつ配列されている。
図6においては、1つの第1パッド部622のみを表す。第1パッド部622は、複数の第1配線部621のいずれかの端部に配置されている。
図6においては、1つの第1パッド部622のみを表す。詳細な図示説明は省略するが、単一の金属層である第1層62Aを構成する複数の第1配線部621は、第1面611において比較的広い領域に形成される。
【0036】
絶縁膜63は、第1面611を覆うように形成された駆動IC6の保護膜である。絶縁膜63は、素子本体61(第1面611)上および第1配線層62上に配置されており、たとえばシリコン窒化膜(SiN)からなる。絶縁膜63は、複数の開口部631を有する。複数の開口部631の各々は、z方向に見て複数の第1パッド部622のいずれかと重なっており、各開口部631から第1パッド部622が露出している。
【0037】
複数の導電性接合部64は、素子本体61の第1面611側に配置されており、複数の第1パッド部622の各々に積層されている。本実施形態では、
図5に示すように、x方向およびy方向に複数ずつ配列されている。
図5に示した例では、同図の上方(y方向下流側)の長辺612に沿って多数の導電性接合部64が配列されている。同図の下方(y方向上流側)の長辺612においては、複数の導電性接合部64が間隔を隔てて配置されている。図中上方(y方向下流側)の長辺612に沿う多数の導電性接合部64は、x方向における間隔が小さく、密集して配置されている。一方、図中下方(y方向上流側)の長辺612に沿って配置された複数の導電性接合部64は、x方向における間隔が大きい。したがって、素子本体61の第1面611において、複数の導電性接合部64は、不均一に配置されている。
【0038】
複数の導電性接合部64の各々は、互いに積層された第1シード層641および第1めっき層642から構成される。第1シード層641は、たとえばチタン(Ti)およびタングステン(W)を含む第1層、および主成分がAuである第2層からなる。第1めっき層642は、主成分がAuである。第1シード層641の厚さは、たとえば200~800nm程度である。第1めっき層642の厚さ(z方向寸法)は、たとえば10~30μm程度である。なお、第1シード層641および第1めっき層642の素材および厚みは、上記したものに限定されない。
【0039】
図7に示すように、駆動IC6がフリップチップ実装された状態において、上記した複数の第1パッド部622の各々は、導電性接合部64を介して、グレーズ層2上の複数の第2パッド部36のいずれかに導通接続されている。
【0040】
図5、
図6に示すように、複数の嵩上げ部65は、素子本体61の第1面611側に配置されており、絶縁膜63に積層されている。複数の絶縁膜63の各々は、絶縁膜63よりもz方向に突出している。本実施形態では、複数の嵩上げ部65は、素子本体61の外周縁に沿って配置されている。
図5に示した例では、図中下方(y方向上流側)の長辺612と、図中左右の一対の短辺613とに沿って配置されている。図中下方(y方向上流側)の長辺612に沿って配置された複数の嵩上げ部65の各々は、上記の図中下方(y方向上流側)の長辺612に沿って配置された複数の導電性接合部64のうちx方向において隣り合うものの間に配置されている。なお、図中下方の長辺612に沿って配置された複数の導電性接合部64について、x方向において隣接する相互の間の領域には、素子本体61の第1面611側に作り込まれた回路部66が配置されている。図中下方の長辺612に沿って配置された複数の嵩上げ部65は、回路部66を避けた位置に配置されており、導電性接合部64よりも図中下方の長辺612に近接している。
【0041】
複数の嵩上げ部65は、導電性材料からなる。複数の嵩上げ部65の各々は、互いに積層された第2シード層651および第2めっき層652から構成される。第2シード層651は、たとえばTiおよびWを含む第1層、および主成分がAuである第2層からなる。第2めっき層652は、主成分がAuである。嵩上げ部65は、導電性接合部64と同じ構成材料からなる。具体的には、導電性接合部64の第1シード層641と嵩上げ部65の第2シード層651とが、同一の構成材料からなり、導電性接合部64の第1めっき層642と嵩上げ部65の第2めっき層652とが、同一の構成材料からなる。第2シード層651の厚さは、たとえば200~800nm程度である。第2めっき層652の厚さ(z方向寸法)は、たとえば10~30μm程度である。なお、第1シード層641および第1めっき層642の素材および厚みは、上記したものに限定されない。
【0042】
図6に示すように、複数の嵩上げ部65は、z方向に見て、複数の第1配線部621のいずれかと重なっている。これにより、z方向において、第1配線部621、絶縁膜63および嵩上げ部65の順に積層されている。導電性接合部64において第1面611からz方向に最も突出する位置は、第1パッド部622、絶縁膜63および導電性接合部64の順に積層された構成である。
図6に示すように、導電性接合部64が第1面611からz方向に最も突出する位置までの第1寸法L1と、嵩上げ部65が第1面611からz方向に最も突出する位置までの第2寸法L2とは、同一である。なお、嵩上げ部65の配置について、上記したz方向に見て第1配線部621のいずれかと重なる位置に限定されず、z方向に見て第1配線部621と重ならない位置に嵩上げ部65を配置してもよい。
【0043】
図7に示すように、駆動IC6がフリップチップ実装された状態において、複数の嵩上げ部65の各々は、グレーズ層2のグレーズ主面21に密着している。
【0044】
駆動IC6は、保護樹脂71によって覆われている。保護樹脂71は、たとえば黒色の軟質樹脂からなる。また、駆動IC6とコネクタ72とは、上記複数の信号配線部35によって接続されている。駆動IC6には、コネクタ72を介して外部から送信される印字信号、制御信号および複数の発熱部41に供給される電圧が入力される。複数の発熱部41は、印字信号および制御信号にしたがって個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。
【0045】
次に、サーマルプリントヘッドA1の使用方法の一例について簡単に説明する。
【0046】
サーマルプリントヘッドA1は、プリンタに組み込まれた状態で使用される。
図2に示したように、当該プリンタ内において、サーマルプリントヘッドA1の各発熱部41はプラテンローラ81に対向している。当該プリンタの使用時には、プラテンローラ81が回転することにより、感熱紙などの印刷媒体82が、y方向に沿ってプラテンローラ81と各発熱部41との間に一定速度で送給される。印刷媒体82は、プラテンローラ81によって保護層5のうち各発熱部41を覆う部分に押しあてられる。一方、
図3に示した各個別電極32には、駆動IC6によって選択的に電位が付与される。これにより、共通電極31と複数の個別電極32の各々との間に電圧が印加される。そして、複数の発熱部41には選択的に電流が流れ、熱が発生する。そして、各発熱部41にて発生した熱は、保護層5を介して印刷媒体82に伝わる。そして、印刷媒体82上のx方向に線状に延びるライン領域に、複数のドットが印刷される。また、各発熱部41にて発生した熱は、グレーズ層2にも伝わり、グレーズ層2にて蓄えられる。
【0047】
次に、駆動IC6における導電性接合部64および嵩上げ部65の形成手順の一例について、
図8~
図12を参照しつつ、以下に説明する。なお、
図8~
図12はそれぞれ、
図6に示す断面図に対応する。
【0048】
まず、
図8に示すように、第1配線層62および絶縁膜63が積層された素子本体61を準備する。絶縁膜63には、第1パッド部622に対応する開口部631が形成されている。
【0049】
次いで、
図9に示すように、シード層69を形成する。シード層69の形成は、スパッタリング法による。シード層69は、素子本体61の第1面611側の全面にわたって形成される。シード層69は、開口部631から露出する第1パッド部622、および絶縁膜63を覆う。シード層69の一部が、後に第1シード層641および第2シード層651に対応する。
【0050】
次いで、
図10~
図12に示すように、第1めっき層642および第2めっき層652を形成する。第1めっき層642および第2めっき層652の形成は、フォトリソグラフィによるパターン形成および電解めっきによる。第1めっき層642および第2めっき層652を形成する工程においては、
図10に示すように、まず、第1めっき層642および第2めっき層652を形成するためのマスク91をフォトリソグラフィにより形成する。マスク91の形成においては、シード層69の全面を覆うように、感光性レジストを塗布し、当該感光性レジストに対して露光・現像を行うことによってパターニングを行う。このパターニングにより、マスク91に開口91aが形成され、シード層69の一部(第1めっき層642および第2めっき層652を形成する部分)が露出する。そして、
図11に示すように、シード層69を導電経路とした電解めっきにより、露出したシード層69上に第1めっき層642および第2めっき層652を形成する。その後、マスク91を除去することで、
図12に示す第1めっき層642および第2めっき層652が形成される。
【0051】
次いで、第1めっき層642および第2めっき層652に覆われていない不要なシード層69を全て除去する。この不要なシード層69の除去は、ウェットエッチングにより行う。このウェットエッチングにより、シード層69が除去された部分から、絶縁膜63が露出する(
図6参照)。また、不要なシード層69が除去されたことにより、第1シード層641および第1めっき層642からなる導電性接合部64と、第2シード層651および第2めっき層652からなる嵩上げ部65とが形成される(
図6参照)。上記のように、導電性接合部64の第1シード層641および嵩上げ部65の第2シード層651、ならびに導電性接合部64の第1めっき層642および嵩上げ部65の第2めっき層652は、それぞれ、同一の金属層を由来にするものであり、同一の構成材料からなる。
【0052】
このようにして複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65が形成された駆動IC6を、フリップチップ実装により基板1上に搭載する。基板1への駆動IC6の搭載時には、
図13に示すように、素子本体61の第1面611を基板1の第2面11に対向させる。そして、
図14に示すように、駆動IC6を基板1側に加圧しつつ、基板1(グレーズ層2)上の複数の第2パッド部36と駆動IC6側の複数の導電性接合部64とを直接接合させる(たとえば超音波接合)。ここで、複数の導電性接合部64(第1めっき層642)においては、z方向に荷重がかかる。また、複数の嵩上げ部65においては、グレーズ層2に圧接し、z方向に荷重がかかる。このようにして、導電性接合部64と第2パッド部36とが直接接合する。駆動IC6がフリップチップ実装された後には、駆動IC6の複数の第1パッド部622の各々は、導電性接合部64を介して、グレーズ層2上の複数の第2パッド部36のいずれかに導通接続する。また、複数の嵩上げ部65の各々は、グレーズ層2のグレーズ主面21に密着する。なお、導電性接合部64と第2パッド部36とは、接合界面で互いに直接接した状態で接合されている。
図14および
図7において、導電性接合部64と第2パッド部36との境界面を明瞭に表しているが、導電性接合部64と第2パッド部36との接合界面が明瞭に表れない場合があり得る。
【0053】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0054】
フリップチップ実装される駆動IC6には、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65が設けられている。複数の導電性接合部64の各々は、素子本体61の第1面611上に配置された第1パッド部622に積層されている。複数の嵩上げ部65は、絶縁膜63に積層されており、絶縁膜63よりもz方向(厚さ方向)に突出している。このような構成によれば、素子本体61の第1面611において複数の導電性接合部64が不均一に配置されていても、フリップチップ実装時に駆動IC6を基板1側に加圧する際、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65により加圧荷重を受け止めることができる。これにより、複数の導電性接合部64それぞれにおける加圧状態のばらつきが抑制され、フリップチップ実装時における複数の導電性接合部64の加圧状態のばらつきに起因する不具合を防止するのに適する。
【0055】
複数の嵩上げ部65は、素子本体61の外周縁に沿って配置されている。具体的には、素子本体61は、z方向(厚さ方向)に見て長矩形状であり、複数の嵩上げ部65は、これらの少なくとも一部が素子本体61の長辺612(
図5における下方の長辺612)に沿って配置されている。このように複数の嵩上げ部65が素子本体61の外周縁に沿って配置された構成によれば、フリップチップ実装時に駆動IC6を基板1側に加圧する際、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65によって、加圧荷重をより均等に受け止めることができる。これにより、複数の導電性接合部64それぞれにおける加圧状態のばらつきがより抑制される。このことは、フリップチップ実装時における複数の導電性接合部64の加圧状態のばらつきに起因する不具合を防止するうえで、より好ましい。
【0056】
複数の嵩上げ部65は、導電性接合部64と同じ導電性材料からなる。具体的には、導電性接合部64は、第1シード層641および第1めっき層642を含み、嵩上げ部65は、第2シード層651および第2めっき層652を含む。第1シード層641と第2シード層651とは同じ構成材料からなり、第1めっき層642と第2めっき層652とは、同じ構成材料からなる。このような構成によれば、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65を同時に一括して形成することができる。
【0057】
導電性接合部64が第1面611からz方向に最も突出する位置までの第1寸法L1と、嵩上げ部65が第1面611からz方向に最も突出する位置までの第2寸法L2とは、同一である。このような構成によれば、フリップチップ実装時に駆動IC6を基板1側に加圧する際、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65により加圧荷重の均一化を図ることができる。このことは、フリップチップ実装時における複数の導電性接合部64の加圧状態のばらつきに起因する不具合を防止するのに、より適する。
【0058】
また、導電性接合部64の第1シード層641および嵩上げ部65の第2シード層651、ならびに導電性接合部64の第1めっき層642および嵩上げ部65の第2めっき層652が、それぞれ同一の金属層を由来にするものであれば、導電性接合部64の最大突出位置と嵩上げ部65の最大突出位置を揃えることができる。したがって、上記第1寸法L1と第2寸法L2とを容易に同じ寸法にすることができる。
【0059】
図15、
図16は、上述の駆動IC6の変形例を示している。なお、
図15以降の図面において、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0060】
<駆動ICの第1変形例>
図15に示した駆動IC6Aにおいては、複数の嵩上げ部65の構成が上記実施形態における駆動IC6と異なっている。
図5を参照して上記したの駆動IC6においては、素子本体61の長辺612に沿って配置された複数の嵩上げ部65の多くは、x方向に隣り合う導電性接合部64の間において、比較的サイズの小さい4つの嵩上げ部65がz方向に並ぶ構成とされていた。これに対し、本変形例では、
図15に示すように、素子本体61の長辺612に沿って配置された複数の嵩上げ部65の多くは、x方向に隣り合う導電性接合部64の間において、一連につながってx方向に延びている。
【0061】
フリップチップ実装される駆動IC6Aには、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65が設けられている。複数の導電性接合部64の各々は、素子本体61の第1面611上に配置された第1パッド部622に積層されている。複数の嵩上げ部65は、絶縁膜63に積層されており、絶縁膜63よりもz方向(厚さ方向)に突出している。このような構成によれば、素子本体61の第1面611において複数の導電性接合部64が不均一に配置されていても、フリップチップ実装時に駆動IC6Aを基板1側に加圧する際、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65により加圧荷重を受け止めることができる。これにより、複数の導電性接合部64それぞれにおける加圧状態のばらつきが抑制され、フリップチップ実装時における複数の導電性接合部64の加圧状態のばらつきに起因する不具合を防止するのに適する。
【0062】
駆動IC6Aにおいて、複数の嵩上げ部65は、素子本体61の外周縁においてより広い範囲に設けられている。このような構成によれば、フリップチップ実装時に駆動IC6Aを基板1側に加圧する際、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65によって、加圧荷重をより均等に受け止めることができる。これにより、複数の導電性接合部64それぞれにおける加圧状態のばらつきがより抑制される。このことは、フリップチップ実装時における複数の導電性接合部64の加圧状態のばらつきに起因する不具合を防止するうえで、より好ましい。その他にも、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1における駆動IC6と同様の構成の範囲において、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0063】
<駆動ICの第2変形例>
図16に示した駆動IC6Bにおいては、上記実施形態の駆動IC6における複数の嵩上げ部65に代えて、複数の嵩上げ部67が設けられている。本変形例において、複数の嵩上げ部65は、絶縁性材料からなる。複数の嵩上げ部67の各々は、たとえばポリイミド樹脂を含む。複数の嵩上げ部67は、絶縁膜63に積層されている。複数の嵩上げ部67は、z方向に見て、複数の第1配線部621のいずれかと重なっている。なお、嵩上げ部67の配置について、上記したz方向に見てと重なる位置に限定されず、z方向に見て第1配線部621と重ならない位置に嵩上げ部67を配置してもよい。
図17に示すように、駆動IC6Bがフリップチップ実装された状態において、複数の嵩上げ部67の各々は、グレーズ層2のグレーズ主面21に密着している。
【0064】
駆動IC6Bにおける導電性接合部64および嵩上げ部67の形成手順の一例について、
図18~
図23を参照しつつ、以下に説明する。なお、
図18~
図23はそれぞれ、
図16に示す断面図に対応する。
【0065】
まず、
図18に示すように、第1配線層62および絶縁膜63が積層された素子本体61を準備する。絶縁膜63には、第1パッド部622に対応する開口部631が形成されている。
【0066】
次いで、
図19に示すように、複数の嵩上げ部65を形成する。複数の嵩上げ部67は、フォトリソグラフィにより形成される。複数の嵩上げ部67の形成は、素子本体61の第1面611側の全面を覆うように感光性ポリイミドを塗布し、当該感光性ポリイミドに対する露光・現像により行う。
【0067】
次いで、
図20に示すように、シード層69を形成する。シード層69の形成は、スパッタリング法による。シード層69は、素子本体61の第1面611側の全面にわたって形成される。シード層69は、開口部631から露出する第1パッド部622、絶縁膜63、および複数の嵩上げ部67を覆う。シード層69の一部が、後に第1シード層641に対応する。
【0068】
次いで、
図21~
図23に示すように、第1めっき層642を形成する。第1めっき層642の形成は、フォトリソグラフィによるパターン形成および電解めっきによる。第1めっき層642を形成する工程においては、
図21に示すように、まず、第1めっき層642を形成するためのマスク91をフォトリソグラフィにより形成する。マスク91の形成においては、シード層69の全面を覆うように、感光性レジストを塗布し、当該感光性レジストに対して露光・現像を行うことによってパターニングを行う。このパターニングにより、マスク91に開口91aが形成され、シード層69の一部(第1めっき層642を形成する部分)が露出する。そして、
図22に示すように、シード層69を導電経路とした電解めっきにより、露出したシード層69上に第1めっき層642を形成する。その後、マスク91を除去することで、
図23に示す第1めっき層642が形成される。
【0069】
次いで、第1めっき層642に覆われていない不要なシード層69を全て除去する。この不要なシード層69の除去は、ウェットエッチングにより行う。このウェットエッチングにより、シード層69が除去された部分から、絶縁膜63および複数の嵩上げ部67が露出する(
図16参照)。また、不要なシード層69が除去されたことにより、第1シード層641および第1めっき層642からなる導電性接合部64が形成される(
図16参照)。
【0070】
このようにして複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部67が形成された駆動IC6Bは、サーマルプリントヘッドA1を構成する基板1上に、フリップチップ実装により搭載される。基板1への駆動IC6Bの搭載時には、
図24に示すように、素子本体61の第1面611を基板1の第2面11に対向させる。そして、
図25に示すように、駆動IC6Bを基板1側に加圧しつつ、基板1(グレーズ層2)上の複数の第2パッド部36と駆動IC6B側の複数の導電性接合部64とを直接接合させる(たとえば超音波接合)。ここで、複数の導電性接合部64(第1めっき層642)においては、z方向に荷重がかかる。また、複数の嵩上げ部67においては、グレーズ層2に圧接し、z方向に荷重がかかる。このようにして、導電性接合部64と第2パッド部36とが直接接合する。駆動IC6Bがフリップチップ実装された後には、駆動IC6Bの複数の第1パッド部622の各々は、導電性接合部64を介して、グレーズ層2上の複数の第2パッド部36のいずれかに導通接続する。また、複数の嵩上げ部67の各々は、グレーズ層2のグレーズ主面21に密着する。なお、導電性接合部64と第2パッド部36とは、接合界面で互いに直接接した状態で接合されている。
図25および
図17において、導電性接合部64と第2パッド部36との境界面を明瞭に表しているが、導電性接合部64と第2パッド部36との接合界面が明瞭に表れない場合があり得る。
【0071】
フリップチップ実装される駆動IC6Bには、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65が設けられている。複数の導電性接合部64の各々は、素子本体61の第1面611上に配置された第1パッド部622に積層されている。複数の嵩上げ部65は、絶縁膜63に積層されており、絶縁膜63よりもz方向(厚さ方向)に突出している。このような構成によれば、素子本体61の第1面611において複数の導電性接合部64が不均一に配置されていても、フリップチップ実装時に駆動IC6Bを基板1側に加圧する際、複数の導電性接合部64および複数の嵩上げ部65により加圧荷重を受け止めることができる。これにより、複数の導電性接合部64それぞれにおける加圧状態のばらつきが抑制され、フリップチップ実装時における複数の導電性接合部64の加圧状態のばらつきに起因する不具合を防止するのに適する。その他にも、上記実施施形態のサーマルプリントヘッドA1における駆動IC6と同様の構成の範囲において、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0072】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0073】
上記実施形態において、本開示に係る半導体素子の実装構造をサーマルプリントヘッドに適用した場合について説明したが、本開示の半導体素子の実装構造は他の電子装置等に適用してもよい。本開示に係る半導体素子において、嵩上げ部は必ずしも複数設ける必要はなく、一連につながる単一の嵩上げ部を設けてもよい。
【0074】
本開示は、以下の付記に関する構成を含む。
【0075】
〔付記1〕
厚さ方向を向く第1面を有する素子本体と、
前記第1面の上に配置された第1配線層と、
前記第1配線層の上に配置された絶縁膜と、を備え、
前記第1配線層は、複数の第1パッド部を含み、
前記絶縁膜は、前記複数の第1パッド部の各々を露出させる複数の開口部を有し、
前記複数の第1パッド部の各々に積層された複数の導電性接合部と、
前記絶縁膜に積層され、前記絶縁膜よりも前記厚さ方向に突出する嵩上げ部と、を備える、半導体素子。
〔付記2〕
前記嵩上げ部は、前記素子本体の外周縁に沿って配置されている、付記1に記載の半導体素子。
〔付記3〕
前記素子本体は、前記厚さ方向に見て長矩形状であり、
前記嵩上げ部は、少なくとも一部が前記素子本体の長辺に沿って配置されている、付記2に記載の半導体素子。
〔付記4〕
前記導電性接合部の構成材料は、金を含む、付記1ないし3のいずれかに記載の半導体素子。
〔付記5〕
前記嵩上げ部は、前記導電性接合部と同じ導電性材料からなる、付記1ないし4のいずれかに記載の半導体素子。
〔付記6〕
前記導電性接合部は、第1めっき層を含み、
前記嵩上げ部は、前記第1めっき層と同じ構成材料からなる第2めっき層を含む、付記5に記載の半導体素子。
〔付記7〕
前記導電性接合部は、互いに積層された第1シード層および前記第1めっき層を含んで構成され、
前記嵩上げ部は、互いに積層された第2シード層および前記第2めっき層を含んで構成されており、
前記第1シード層と前記第2シード層とは、同じ構成材料からなる、付記6に記載の半導体素子。
〔付記8〕
前記第1配線層は、第1配線部および前記複数の第1パッド部を有する第1層からなり、
前記厚さ方向において、前記第1配線部、前記絶縁膜および前記嵩上げ部の順に積層されている、付記5ないし7のいずれかに記載の半導体素子。
〔付記9〕
前記第1層の構成材料は、アルミニウムを含む、付記8に記載の半導体素子。
〔付記10〕
前記導電性接合部が前記第1面から前記厚さ方向に最も突出する位置までの第1寸法と、前記嵩上げ部が前記第1面から前記厚さ方向に最も突出する位置までの第2寸法とは、同一である、付記6または7に記載の半導体素子。
〔付記11〕
前記嵩上げ部は、絶縁性材料により構成される、付記1ないし4のいずれかに記載の半導体素子。
〔付記12〕
前記嵩上げ部の構成材料は、ポリイミド樹脂を含む、付記11に記載の半導体素子。
〔付記13〕
前記厚さ方向の一方側を向く第2面を有する基板、および前記第2面の上に配置された第2配線層を有する支持体と、
付記1ないし12のいずれかに記載の半導体素子と、を備え、前記半導体素子が前記支持体にフリップチップ実装された実装構造であって、
前記第2配線層は、複数の第2パッド部を含み、
前記半導体素子における前記複数の第1パッド部の各々は、前記導電性接合部を介して前記複数の第2パッド部のいずれかに導通接続されている、半導体素子の実装構造。
〔付記14〕
前記第2配線層は、前記導電性接合部と同じ構成材料を含む、付記13に記載の半導体素子の実装構造。
〔付記15〕
前記第2面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を備え、
前記第2配線層は、前記抵抗体層に導通しており、
前記半導体素子は、前記各発熱部に流す電流を制御するための駆動ICである、付記13または14に記載の実装構造を有する、サーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
前記基板は、セラミックからなる、付記15に記載のサーマルプリントヘッド。
【符号の説明】
【0076】
A1 :サーマルプリントヘッド
1 :基板
11 :第2面
2 :グレーズ層
21 :グレーズ主面
3 :第2配線層
31 :共通電極
311 :共通部
312 :共通電極帯状部
32 :個別電極
33 :個別電極帯状部
34 :連結部
35 :信号配線部
36 :第2パッド部
4 :抵抗体層
41 :発熱部
5 :保護層
6,6A,6B:駆動IC(半導体素子)
61 :素子本体
611 :第1面
612 :長辺
613 :短辺
62 :第1配線層
62A :第1層
621 :第1配線部
622 :第1パッド部
63 :絶縁膜
631 :開口部
64 :導電性接合部
641 :第1シード層
642 :第1めっき層
65,67:嵩上げ部
651 :第2シード層
652 :第2めっき層
66 :回路部
69 :シード層
71 :保護樹脂
72 :コネクタ
81 :プラテンローラ
82 :印刷媒体
91 :マスク
91a :開口
L1 :第1寸法
L2 :第2寸法