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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109515
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20230801BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011068
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】神尾 建一
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081HA08
3L211BA14
3L211BA43
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】操作ノブを操作するときにスティックスリップ現象の発生を防止又は抑制することが可能な風向調整装置を提供する。
【解決手段】本発明の風向調整装置(1)は、ケース体と、少なくとも1つのガイドルーバー(10b)と、ガイドルーバー(10b)にスライド可能に取り付けられる操作ノブ(20)とを有し、操作ノブ(20)は、ガイドルーバー(10b)を挿通させる挿通部が設けられたノブ本体部(21)と、ガイドルーバー(10b)の外周面に接した状態でノブ本体部(21)に保持される摩擦部材(30,30a,30b)とを有し、摩擦部材(30,30a,30b)は、弾性を備えており、且つ、ガイドルーバー(10b)に押し当てられて圧縮する部分を含む少なくとも1つの圧縮部(34,34a,34b)を有し、圧縮部(34,34a,34b)は、操作ノブ(20)のスライド方向に沿った寸法を、ガイドルーバー(10b)に押し当てる方向に向けて漸減させる形状を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気を流通させるケース体と、前記ケース体内に設けられるとともに空気の流れを案内する少なくとも1つのガイドルーバーと、前記ガイドルーバーにスライド可能に取り付けられる操作ノブとを有する風向調整装置であって、
前記操作ノブは、前記ガイドルーバーを挿通させる挿通部が設けられたノブ本体部と、前記ガイドルーバーの外周面に接した状態で前記ノブ本体部に保持されることにより、前記ガイドルーバーとの間に摩擦力を生じさせる摩擦部材とを有し、
前記摩擦部材は、弾性を備えており、且つ、前記ガイドルーバーに押し当てられて圧縮する部分を含む少なくとも1つの圧縮部を有し、
前記圧縮部は、前記操作ノブのスライド方向に沿った寸法を、前記ガイドルーバーに押し当てる方向に向けて漸減させる形状を有する
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
前記圧縮部における前記ガイドルーバーに押し当てる方向の先端部は、前記スライド方向に沿った寸法を漸減させるように尖った形状を有する
請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
前記摩擦部材は、前記ノブ本体部に取り付けられる被取付部と、前記被取付部から前記ガイドルーバーに向けて突出する少なくとも1つの突出部とを有し、
前記圧縮部は、前記突出部に設けられている
請求項1又は2記載の風向調整装置。
【請求項4】
前記圧縮部は、前記スライド方向において、前記ガイドルーバーに対して前記ガイドルーバーの厚さ方向に重なるラップ部と、前記ガイドルーバーの厚さ方向に重ならない非ラップ部とを有する
請求項1~3の何れかに記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ノブがスライド可能に取り付けられたガイドルーバーを有する風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特表2016-539840号公報(特許文献1)には、通気口からの空気吐出方向を案内するガイドルーバーに操作ノブを取り付けるための構造が開示されている。なお、特許文献1では、ガイドルーバー及び操作ノブが、それぞれ、ベーン及びウイングノブと呼ばれている。
【0003】
特許文献1において、操作ノブは、相互に組み立てられる上方ノブ及び下方ノブと、上方ノブ及び下方ノブ間に配置されるゴム部材及び装飾部材とを有する。ゴム部材は、軟質ゴム材料で形成されており、また、操作ノブの内部でガイドルーバーの端面に接触させるようにして下方ノブに保持されている。特許文献1には、ゴム部材が設けられていることにより、操作ノブを操作するときの感触を向上させて、摩擦ノイズを低減させると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016-539840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、空気吐出方向を変えるために操作ノブ(ウイングノブ)をガイドルーバー(ベーン)に沿ってスライドさせる場合、操作ノブ内に設けたゴム部材が、ガイドルーバーの連続する端面に連続的に接触しながら、その端面上を滑って移動する。また、特許文献1の操作ノブでは、ガイドルーバーの端面に接触させるゴム部材の接触面(当接面)が平坦面に形成されている。
【0006】
この場合、ゴム部材の平坦な接触面をガイドルーバーの端面に接触させながら滑らせるときに、ゴム部材の接触面とガイドルーバーの端面との間の摩擦力(静摩擦力及び動摩擦力)の影響により、互いに接触する2つの面間で付着(スティック)と滑り(スリップ)とが交互に繰り返し生じるスティックスリップ現象を生じさせることがある。
【0007】
このスティックスリップ現象が操作ノブを操作するときに生じると、操作ノブのスライド動作を不安定にさせ、操作ノブを滑らかに移動させることができなくなる。その結果、操作ノブを操作するときの感覚(操作感)の悪化や、操作のしやすさ等の操作性の低下を生じさせる。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、操作ノブを操作するときにスティックスリップ現象の発生を防止又は抑制することが可能な風向調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明により提供される風向調整装置は、内部に空気を流通させるケース体と、前記ケース体内に設けられるとともに空気の流れを案内する少なくとも1つのガイドルーバーと、前記ガイドルーバーにスライド可能に取り付けられる操作ノブとを有する風向調整装置であって、前記操作ノブは、前記ガイドルーバーを挿通させる挿通部が設けられたノブ本体部と、前記ガイドルーバーの外周面に接した状態で前記ノブ本体部に保持されることにより、前記ガイドルーバーとの間に摩擦力を生じさせる摩擦部材とを有し、前記摩擦部材は、弾性を備えており、且つ、前記ガイドルーバーに押し当てられて圧縮する部分を含む少なくとも1つの圧縮部を有し、前記圧縮部は、前記操作ノブのスライド方向に沿った寸法を、前記ガイドルーバーに押し当てる方向に向けて漸減させる形状を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る風向調整装置において、前記圧縮部における前記ガイドルーバーに押し当てる方向の先端部は、前記スライド方向に沿った寸法を漸減させるように尖った形状を有することが好ましい。
【0011】
また、前記摩擦部材は、前記ノブ本体部に取り付けられる被取付部と、前記被取付部から前記ガイドルーバーに向けて突出する少なくとも1つの突出部とを有し、前記圧縮部は、前記突出部に設けられていることが好ましい。
更に、前記圧縮部は、前記スライド方向において、前記ガイドルーバーに対して前記ガイドルーバーの厚さ方向に重なるラップ部と、前記ガイドルーバーの厚さ方向に重ならない非ラップ部とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の風向調整装置によれば、操作ノブを操作するときにスティックスリップ現象の発生を防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る風向調整装置を空気吹出口側から模式的に示す斜視図である。
図2図1に示した風向調整装置に配される1つのガイドルーバー(横ルーバー)を模式的に示す斜視図である。
図3図2に示したガイドルーバーの一部を分解した状態で模式的に示す斜視図である。
図4図1に示した風向調整装置のIV-IV線における断面を模式的に示す断面図である。
図5】風向調整装置に配される変形例に係る摩擦部材の要部を模式的に示す斜視図である。
図6】風向調整装置に配される別の変形例に係る摩擦部材の要部を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例に係る風向調整装置を空気吹出口側から模式的に示す斜視図である。図2は、風向調整装置に配される1つのガイドルーバー(横ルーバー)を模式的に示す斜視図であり、図3は、図2に示したガイドルーバーの一部を分解した状態で模式的に示す斜視図である。図4は、図1に示した風向調整装置のIV-IV線における断面を模式的に示す断面図である。
【0015】
図1に示した本実施例の風向調整装置1は、自動車の車室内に配されるインストルメントパネルやセンターコンソール等の内装部材に設置される。具体的に、本実施例の風向調整装置1は、インストルメントパネル5における幅方向の外側に近い側縁部分に設置される。この風向調整装置1は、自動車に備えられた図示しない空調装置等に接続されることによって、その空調装置から供給される空気を、風向調整装置1の空気吹出口(開口部)を介して車室内に吹き出すことが可能である。
【0016】
ここで、風向調整装置1に関して、前後方向とは、後述する横ルーバー10及び縦ルーバーがニュートラルの中央位置に保持されているときに風向調整装置1から吹き出される空気の吹き出し方向に沿った方向を言う。この場合、空気が流れる下流側の方向を前方とし、上流側の方向を後方とする。また、横ルーバー10(又は、縦ルーバー)のニュートラルの中央位置とは、横ルーバー10の上面及び下面(又は、縦ルーバーの左右側面)が前後方向に沿うように横ルーバー10(又は縦ルーバー)を保持する位置を言う。
【0017】
上下方向及び左右方向は、風向調整装置1を空気吹出口側から見たとき(例えば図1)における垂直方向(高さ方向)及び水平方向(幅方向)である。この場合、垂直方向及び水平方向は、前後方向に対してそれぞれ直交しており、また、垂直方向と水平方向とは、互いに直交している。
【0018】
本実施例の風向調整装置1は、内部に空気を流通させるケース体(不図示)と、ケース体の前端部に第1ガイドルーバーとして配される複数の横ルーバー10と、横ルーバー10よりも後方(上流側)の位置に第2ガイドルーバーとして配される図示しない複数の縦ルーバーとを有する。この場合、横ルーバー10及び縦ルーバーは、それぞれ、フロントルーバー及びリアルーバーと呼ばれることもある。
【0019】
ケース体は、インストルメントパネル5の裏面側に配されるとともに、略角筒状の形状を有する。ケース体には、空気を前方へ流通させる空気流路が前後方向に沿って形成されている。このケース体には、3つの横ルーバー10と5つの縦ルーバーとが、それぞれ、回転可能に取り付けられている。なお本発明において、横ルーバー10及び縦ルーバーのそれぞれの設置位置及び設置数は特に限定されない。例えば、縦ルーバーは、横ルーバー10よりも前方(下流側)の位置に設けられていてもよい。
【0020】
横ルーバー10は、風向調整装置1を空気吹出口側から見たときに、左右方向に沿って配されている。また、横ルーバー10は、風向調整装置1の上下方向に直交する断面を見たときに(例えば図4を参照)、横ルーバー10における左右方向の一端部(右側端部)が他端部(左側端部)よりも前方に配されるように、左右方向に対して傾斜した方向に沿って配されている。図示しない縦ルーバーは、風向調整装置1を空気吹出口側から見たときに、上下方向に沿って配されている。
【0021】
本実施例の風向調整装置1では、複数の横ルーバー10と複数の縦ルーバーとによって、風向調整装置1から吹き出す空気の流れを案内できる。たとえば、複数の横ルーバー10を上下に回転させることにより、風向調整装置1から吹き出す空気を、上側又は下側に向けることができる。また、複数の縦ルーバーを左右に回転させることにより、風向調整装置1から吹き出す空気を、左側又は右側に向けることができる。
【0022】
本実施例の風向調整装置1は、横ルーバー10及び/又は縦ルーバーを回転させるときに操作する操作ノブ20と、複数の横ルーバー10を連結する図示しない横リンク部材と、複数の横ルーバー10を回転可能に保持するとともにケース体に取り付けられる左右一対の図示しない第1スペーサー部材と、複数の縦ルーバーを連結する図示しない縦リンク部材と、複数の縦ルーバーを回転可能に保持するとともにケース体に取り付けられる左右一対の図示しない第2スペーサー部材とを有する。
【0023】
複数の横ルーバー10は、図示しない横リンク部材によって、互いに平行な位置関係が保持されるように、また、それぞれの回転動作が連動するように連結されている。複数の縦ルーバーは、図示しない縦リンク部材によって、互いに平行な位置関係が保持されるように、また、それぞれの回転動作が連動するように連結されている。
【0024】
本実施例の風向調整装置1は、操作ノブ20に主要な特徴を有するため、以下では、操作ノブ20と、その操作ノブ20が取り付けられる横ルーバー10(第1ガイドルーバー)とについて主に説明する。また本発明において、風向調整装置1を形成する操作ノブ20及び横ルーバー10以外の部材の形状、構造、及び材質等は特に限定されない。
【0025】
本実施例の横ルーバー10は、左右方向に沿って配されており、且つ、ケース体に対して上下方向に回転可能に保持されている。本実施例において、横ルーバー10は、互いに上下方向に離間して配される上段横ルーバー(第1横ルーバー)10a、中段横ルーバー(第2横ルーバー)10b、及び下段横ルーバー(第3横ルーバー)10cを有する。
【0026】
上段横ルーバー10a及び下段横ルーバー10cは、ケース体の上壁部及び下壁部からそれぞれ上下方向に離れて配されている。各横ルーバー10は、薄板状の横ルーバー本体部11と、横ルーバー本体部11の左右の側端部から左右方向の外側に向けて突出する左右一対の回転軸部12と、図示しない横リンク部材に接続される接続ピン13とをそれぞれ有する。なお、図2及び図3には、中段横ルーバー10bが代表して図示されている。
【0027】
各横ルーバー10において、横ルーバー本体部11の前端部及び後端部の外面は、外側に向けて膨らむように円弧状に湾曲する曲面に形成されている。また、横ルーバー本体部11の上面部は、前方に配される第1上面と、後方に配される第2上面と、第1上面及び第2上面間に配される段差面とを有しており、第2上面が、段差面を介して、第1上面よりも上下方向の高い位置に配されている。
【0028】
本実施例の中段横ルーバー10bにおいて、横ルーバー本体部11の前端部の一部には、操作ノブ20を取り付けるための取付凹部14が後方に窪むように設けられている。この場合、取付凹部14は、横ルーバー本体部11における左右方向(幅方向)の略中央部に配されている。操作ノブ20は、中段横ルーバー10bに対して、取付凹部14が形成されている形成範囲内で左右方向に移動可能に取り付けられている。
【0029】
操作ノブ20は、中段横ルーバー10bに、中段横ルーバー10bの長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられている。この場合、中段横ルーバー10bの長手方向は、左右方向に対し、中段横ルーバー10bの左右方向の一端部(右側端部)が他端部(左側端部)よりも前方に配されるように傾斜している。
【0030】
操作ノブ20は、横ルーバー本体部11の一部を取り囲むノブ本体部21と、ノブ本体部21に一体に形成される縦ルーバー係合部22と、ノブ本体部21内に保持される摩擦部材30とを有する。摩擦部材30は、弾性部材又は摺接部材と呼ばれることもある。
【0031】
本実施例において、ノブ本体部21は、厚さが薄い直方体に近い形状を有する。このノブ本体部21は、横ルーバー本体部11の上面部、前端部、及び下面部を覆うように形成されるフロント部品24と、横ルーバー本体部11の後端部を覆うとともにフロント部品24に組み付けられるリア部品25と、フロント部品24の前面部に取着される装飾部品26とを有しており、これら3つの部品が相互に組み合わされることによって形成されている。この場合、ノブ本体部21のフロント部品24には、リア部品25と係合する図示しないフロント側係合部(又はフロント側被係合部)が設けられており、リア部品25には、フロント部品24と係合する図示しないリア側被係合部(又はリア側係合部)が設けられている。
【0032】
操作ノブ20のノブ本体部21には、中段横ルーバー10bの横ルーバー本体部11を挿通させる挿通孔が、ノブ本体部21の右側面部から左側面部までノブ本体部21を貫通して設けられている。また、ノブ本体部21の内部には、摩擦部材30を保持するための保持部27が設けられている(図4を参照)。この保持部27は、ノブ本体部21のフロント部品24に一体的に設けられており、また、後方に延出する薄い平板状に形成されている。
【0033】
操作ノブ20の縦ルーバー係合部22は、ノブ本体部21のリアカバー部品に一体的に形成されているとともに、リアカバー部品の後端面から後方に向けて延びる左右一対の係合アーム部23を有する。この場合、左右の係合アーム部23は、互いに離間して配されており、左右の係合アーム部23間には空間部が設けられている。
【0034】
操作ノブ20の縦ルーバー係合部22は、図示しない複数の縦ルーバーのうちの1つに係合する。この場合、縦ルーバー係合部22に係合する縦ルーバーには、図示を省略するが、例えば、縦ルーバーの前端部から後方に向けて凹設される縦ルーバー凹部と、縦ルーバー凹部を上下方向又は略上下方向に横切るように架け渡される係合軸部19とが設けられている。
【0035】
操作ノブ20における左右の係合アーム部23間には、縦ルーバーに設けられた係合軸部19が挿入される。このように操作ノブ20が縦ルーバーに係合することにより、操作ノブ20を中段横ルーバー10bに沿って左右にスライドさせることによって、縦ルーバーを左右に回転させて縦ルーバーの向きを変えることができる。
【0036】
操作ノブ20の摩擦部材30は、エラストマー等の弾性を備える軟質の合成樹脂により形成されている。この摩擦部材30は、ノブ本体部21内において、ノブ本体部21における平板状の保持部27に、中段横ルーバー10bの横ルーバー本体部11の外周面に接触した状態で保持されている。特に本実施例において、摩擦部材30は、横ルーバー本体部11の前端部に接触するとともに、その横ルーバー本体部11の前端部に押し当てられることによって摩擦部材30の後端部の一部が圧縮された状態でノブ本体部21に保持されている。これによって、摩擦部材30と中段横ルーバー10bとの間に、操作ノブ20が停止しているときや操作されているときの摩擦力(静摩擦力及び動摩擦力)を発生させることができる。
【0037】
本実施例の摩擦部材30は、図3に示すように、ノブ本体部21に取り付けられる被取付部31と、被取付部31から後ろ側(中段横ルーバー10bに近付く側)に突出する1つの突出部32とを有する。この摩擦部材30は、摩擦部材30の全体が一定の厚さ(上面と下面との間の上下方向における厚さ寸法)を有するように形成されている。この場合、摩擦部材30は、横ルーバー本体部11における前端部の厚さよりも厚く形成されている。
【0038】
摩擦部材30の被取付部31は、直方体又は略直方体の形状を有する。被取付部31には、被取付部31の前面から後方へ凹んだ挿入凹部33が設けられている。この摩擦部材30の挿入凹部33に、ノブ本体部21の保持部27が挿入されて嵌め込まれることによって、摩擦部材30がノブ本体部21の所定位置に保持される。
【0039】
摩擦部材30の突出部32は、被取付部31と一体的に形成されており、また、操作ノブ20を中段横ルーバー10bに取り付けたときに、中段横ルーバー10bに押し当てられて圧縮する部分を含む圧縮部34として形成されている。本実施例の場合、摩擦部材30の圧縮部34は、突出部32の全体によって形成されている。
【0040】
摩擦部材30における突出部32の少なくとも一部は、操作ノブ20のスライド方向に沿った突出部32の寸法を、摩擦部材30を中段横ルーバー10bに押し当てる方向に向けて漸減させる形状を有している。例えば本実施例の場合、摩擦部材30の突出部32(圧縮部34)は、摩擦部材30を上方から見た平面視において、被取付部31に接続する接続部を底辺として、その底辺の両端部から被取付部31から離れるように延びるとともに頂角を形成する2つの辺を有する三角形の形状に形成されている。特に本実施例の場合、摩擦部材30の突出部32は、前記平面視において、二等辺三角形の形状を有する。
【0041】
この場合、突出部32の先端部(三角形の上記頂角を形成する端部)は、被取付部31から離れる方向に向けて、操作ノブ20のスライド方向に沿った寸法を漸減させるように尖った形状を有する(図3及び図4を参照)。また、二等辺三角形の突出部32は、突出部32の底辺部分における幅寸法を、摩擦部材30の被取付部31の幅寸法よりも小さくして形成されている。このため、摩擦部材30の被取付部31は、突出部32が接続されることなく、後方側に露呈する後端面を有する。また、この被取付部31の後端面は、操作ノブ20が中段横ルーバー10bに取り付けられたときに、横ルーバー本体部11の前端部に対向して配される。
【0042】
なお本実施例において、操作ノブ20のスライド方向は、中段横ルーバー10bの長手方向と言い換えることができる。また、摩擦部材30を中段横ルーバー10bに押し当てる方向と、突出部32の被取付部31から離れる方向とは、同じ向きの方向を意味している。
【0043】
摩擦部材30の突出部32(圧縮部34)は、操作ノブ20が中段横ルーバー10bに取り付けられたときに、突出部32の先端部の一部が中段横ルーバー10bから押圧されて圧縮された状態で保持される。この場合、摩擦部材30は、突出部32の厚さを、上述したように横ルーバー本体部11の前端側の厚さよりも厚くして形成されている。このため、突出部32の上下方向における中央部分は、中段横ルーバー10bに押圧されることによって凹むように圧縮されており、また、突出部32の上端部及び下端部は、横ルーバー本体部11に対して上下方向(横ルーバー10の厚さ方向)に重なって配されている。
【0044】
ここで、摩擦部材30の突出部32(圧縮部34)において、突出部32が中段横ルーバー10bにより押圧されている状態で、突出部32の上端部及び下端部が横ルーバー本体部11に対して上下方向に重なる部分をラップ部と規定する(図4を参照)。また、摩擦部材30を中段横ルーバー10bに押し当てる方向における摩擦部材30のラップ部の大きさをラップ量と規定する。この場合、本実施例における摩擦部材30の突出部32(圧縮部34)は、突出部32のスライド方向に関して、突出部32の先端部からスライド方向の一方と他方とに延びて設けられるラップ部と、突出部32のスライド方向における両端部(突出部32の底辺の両端部)に設けられるとともに、横ルーバー本体部11に対して上下方向に重ならない非ラップ部とを有する。
【0045】
また、本実施例の摩擦部材30では、三角形状の突出部32の頂角が形成されている先端部において、ラップ量が最も大きくなり、突出部32の先端部からスライド方向に沿って離れるにつれて、突出部32のラップ量が徐々に小さくなる。更に、突出部32の底辺における両端部では、突出部32が横ルーバー本体部11に上下方向で重なっておらず、突出部32の両端部におけるラップ量はゼロになる。
【0046】
更に本実施例では、摩擦部材30の被取付部31が、横ルーバー本体部11に接触しないように、横ルーバー本体部11から僅かに離れて配置されており、被取付部31と横ルーバー本体部11との間には間隙が設けられている。
【0047】
本実施例の操作ノブ20を中段横ルーバー10bに取り付ける場合、先ず、ノブ本体部21のフロント部品24に摩擦部材30を取り付ける。このとき、摩擦部材30は、フロント部品24に設けられた平板状の保持部27を摩擦部材30の挿入凹部33に挿入して嵌め込むことにより、フロント部品24に保持されて取り付けられる。
【0048】
続いて、摩擦部材30が保持されたフロント部品24の挿通孔に、中段横ルーバー10bの横ルーバー本体部11を挿入する。更に、中段横ルーバー10bが挿入されたフロント部品24の後端部に、ノブ本体部21のリア部品25を係合させて取り付ける。また、ノブ本体部21のフロント部品24に装飾部品26を取り付ける。なお、装飾部品26をフロント部品24に取り付けるタイミングは、特に限定されない。
【0049】
これにより、図2に示したように操作ノブ20が取り付けられた中段横ルーバー10bが作製される。また、得られた操作ノブ20付きの中段横ルーバー10bをケース体に取り付けて、本実施例の風向調整装置1が製造される。
【0050】
以上のような操作ノブ20が取り付けられた中段横ルーバー10bを備える本実施例の風向調整装置1によれば、操作ノブ20の摩擦部材30が、中段横ルーバー10bの横ルーバー本体部11の前端部に押し当てられることによって、摩擦部材30と中段横ルーバー10bとの間に摩擦力を発生させている。また、摩擦部材30の横ルーバー本体部11に接触する突出部32が、三角形の形状を有しており、且つ、横ルーバー本体部11からの押圧によって圧縮する圧縮部34として形成されている。
【0051】
これにより、操作ノブ20が停止しているときには、摩擦部材30が中段横ルーバー10bに圧縮状態で接触していることにより、中段横ルーバー10bとの間で静摩擦力を生じさせる。これにより、操作ノブ20をその停止位置で安定して保持できる。また、中段横ルーバー10bに取り付けられた操作ノブ20がガタつくことを防止できる。
【0052】
一方、使用者が操作ノブ20にスライド方向の力(操作力)を加えて、操作ノブ20を停止状態から中段横ルーバー10bに沿ってスライドさせる場合、摩擦部材30と中段横ルーバー10bとの間の摩擦力が静摩擦力から動摩擦力に切り替わる。このとき、摩擦部材30の突出部32(圧縮部34)が三角形に形成されているため、中段横ルーバー10bから摩擦部材30に加えられる力(荷重)の大きさを、操作ノブ20のスライド方向に変化させることができる。
【0053】
すなわち、操作ノブ20のスライド方向において、三角形状の摩擦部材30の頂角が形成されている部分(摩擦部材30のラップ量が最も大きくなる部分)では、中段横ルーバー10bから受ける荷重が最も大きくなる。その結果、摩擦部材30と中段横ルーバー10bとの間に生じる最大静止摩擦力が最も大きくなる。
【0054】
また、摩擦部材30において、三角形の頂角の部位からスライド方向に沿って離れるにつれて、中段横ルーバー10bから受ける荷重を漸減させること(摩擦部材30のラップ量を徐々に小さくすること)ができる。更に、摩擦部材30の底辺の両端部分では、中段横ルーバー10bから荷重を受けなくなる。つまり、本実施例では、摩擦部材30の三角形状の突出部32(圧縮部34)内で、中段横ルーバー10bとの間で生じる最大静止摩擦力の大きさをスライド方向に変化させることができる。
【0055】
この場合、操作ノブ20を停止状態から中段横ルーバー10bに沿ってスライドさせるときに、摩擦部材30の突出部32内で、摩擦力が静摩擦力から動摩擦力に切り替わるタイミングを、突出部32内でスライド方向に沿って、突出部32のラップ量の大きさに応じて変化させることができる。その結果、操作ノブ20が、中段横ルーバー10bに対して円滑に滑り易くすることができるため、スティックスリップ現象が発生することを防止又は抑制できる。
【0056】
特に本実施例では、摩擦部材30の突出部32が、先端が尖った三角形状に形成されているとともに、突出部32の底辺の両端部が横ルーバー本体部11に対して上下方向に重ならない非ラップ部として形成されている。このため、操作ノブ20がスライドするときに、横ルーバー本体部11と摩擦部材30との間で生じる最大静止摩擦力をスライド方向になだらかに変化させることができる。
【0057】
その結果、スティックスリップ現象の発生をより効果的に防止又は抑制することができる。それにより、操作ノブ20を、横ルーバー10に沿って、より滑らかにスライドさせることができるため、スライド開始時の操作ノブ20の操作感及び操作性を向上させることができる。更に本実施例では、摩擦部材30が横ルーバー本体部11に密着したとしても、摩擦部材30の突出部32が三角形状に形成されていることにより、比較的軽い力で操作ノブ20を円滑に移動させることが可能である。
【0058】
また、操作ノブ20をスライド操作しているときには、摩擦部材30と中段横ルーバー10bとの間で動摩擦力を発生させることができる。このため、使用者が操作ノブ20のスライド操作を適確に行うことができ、また、操作ノブ20の適度な操作感を安定して得ることができる。その後、操作ノブ20を停止させたときには、摩擦部材30と中段横ルーバー10bとの間の静摩擦力により、操作ノブ20をその停止位置で安定して保持できる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、風向調整装置の全体形状、デザイン、大きさ等は特に限定されず、装置の設置位置、設置される車の種類やデザイン等に応じて変更することが可能である。
【0060】
また上記実施例の場合、摩擦部材30の圧縮部34(突出部32)は、摩擦部材30を上側から見た平面視において、1つの二等辺三角形の形状に形成されている。しかし本発明において、摩擦部材の圧縮部(突出部)の形状はこれに限定されるものではない。摩擦部材の圧縮部は、圧縮部のスライド方向に沿った寸法を横ルーバ(ガイドルーバー)に押し当てる方向に向けて漸減させる形状を有していれば、摩擦部材における圧縮部の設置数や圧縮部の形状等を変更してもよい。
【0061】
例えば図5及び図6に変形例に係る摩擦部材30a,30bの要部をそれぞれ示すように、摩擦部材30a,30bには2つ以上の複数の圧縮部34a,34bが設けられていてもよい。また、圧縮部は、直角三角形などのような二等辺三角形以外の三角形や、三角形以外の形状に形成されていてもよい。例えば三角形以外の具体的な形状として、摩擦部材の圧縮部には、その平面視において、半円の形状、半楕円の形状、台形の形状などの形状を採用することも可能である。摩擦部材の圧縮部が、図5及び図6に示す三角形の形状や、半円等の三角形以外の形状で形成されていても、操作ノブをスライドさせるときに、スティックスリップ現象が発生することを防止又は抑制することができる。
【0062】
更に、上記実施例では、摩擦部材30の圧縮部34が、突出部32の全体に形成されている。しかし本発明において、摩擦部材の圧縮部は、操作ノブの形状や大きさ等に応じて、突出部の一部分のみに形成されていてもよい。例えば、摩擦部材の突出部は、ノブ本体部に取り付けられる被取付部と、その被取付部から直方体状に突出する第1突出部と、その第1突出部から更に三角形状に突出する第2突出部とを有していてもよく、その場合、摩擦部材の圧縮部は、三角形状の第2突出部のみに設けられていてもよい。
【0063】
また、上述した実施例の風向調整装置1では、横ルーバー10が縦ルーバーの前方に配されるとともに、縦ルーバーの回転を操作する操作ノブ20が、中段横ルーバー10bに取り付けられている。しかし本発明において、風向調整装置は、例えば縦ルーバーが横ルーバーの前方に配されるとともに、横ルーバーの回転を操作する操作ノブが、前側の縦ルーバーに上下方向に沿ってスライド可能に取り付けられる構造で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 風向調整装置
5 インストルメントパネル
10 横ルーバー
10a 上段横ルーバー(第1横ルーバー)
10b 中段横ルーバー(第2横ルーバー)
10c 下段横ルーバー(第3横ルーバー)
11 横ルーバー本体部
12 回転軸部
13 接続ピン
14 取付凹部
19 係合軸部
20 操作ノブ
21 ノブ本体部
22 縦ルーバー係合部
23 係合アーム部
24 フロント部品
25 リア部品
26 装飾部品
27 保持部
30 摩擦部材
30a,30b 摩擦部材
31 被取付部
32 突出部
33 挿入凹部
34 圧縮部
34a,34b 圧縮部
図1
図2
図3
図4
図5
図6