(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109516
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物のためのフコースの使用
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230801BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011069
(22)【出願日】2022-01-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】390033145
【氏名又は名称】焼津水産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭世
(72)【発明者】
【氏名】長島 英里子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 光輝
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LF07
4B047LG16
4B047LG18
4B047LG21
4B047LG22
4B047LG26
4B047LG27
4B047LG28
4B047LG29
4B047LG30
(57)【要約】
【課題】多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物の風味を改善する技術を提供する。
【解決手段】フコースを有効成分として含有する、多糖類含有組成物の風味改善用組成物である。また、フコースを有効成分として含有する、タンパク質含有組成物の風味改善用組成物である。また、多糖類含有組成物にフコースを含有させる、前記多糖類含有組成物の風味改善方法である。また、タンパク質含有組成物にフコースを含有させる、前記タンパク質含有組成物の風味改善方法である。また、フコースの使用であって、多糖類含有組成物の風味改善のための該使用である。また、フコースの使用であって、タンパク質含有組成物の風味改善のための該使用である。また、多糖類及びフコースを所定の配合量で含有する組成物である。また、タンパク質及びフコースを所定の配合量で含有する組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコースを有効成分として含有する、多糖類含有組成物の風味改善用組成物。
【請求項2】
フコースを有効成分として含有する、タンパク質含有組成物の風味改善用組成物。
【請求項3】
前記多糖類含有組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものである、請求項1記載の風味改善用組成物。
【請求項4】
前記タンパク質含有組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク、及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものである、請求項2記載の風味改善用組成物。
【請求項5】
多糖類含有組成物にフコースを含有させる、前記多糖類含有組成物の風味改善方法。
【請求項6】
タンパク質含有組成物にフコースを含有させる、前記タンパク質含有組成物の風味改善方法。
【請求項7】
前記多糖類含有組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものである、請求項5記載の風味改善方法。
【請求項8】
前記タンパク質含有組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク、及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものである、請求項6記載の風味改善方法。
【請求項9】
フコースの使用であって、多糖類含有組成物の風味改善のための該使用。
【請求項10】
フコースの使用であって、タンパク質含有組成物の風味改善のための該使用。
【請求項11】
前記多糖類含有組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものである、請求項9記載の使用。
【請求項12】
前記タンパク質含有組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク、及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものである、請求項10記載の使用。
【請求項13】
多糖類及びフコースを含有する組成物であって、前記フコースの含有量が、前記多糖類の1質量部に対して0.00001~200質量部である、該組成物。
【請求項14】
前記組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、飲食用又は飲食物原料用の組成物である、請求項13又は14記載の組成物。
【請求項16】
タンパク質及びフコースを含有する組成物であって、前記フコースの含有量が、前記タンパク質の1質量部に対して0.00001~200質量部である、該組成物。
【請求項17】
前記組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものである、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、飲食用又は飲食物原料用の組成物である、請求項16又は17記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類又はタンパク質を含有する飲料等の多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物に関し、より詳細には、多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物の風味の改善のために用いられる組成物及びその方法、並びに多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物の風味の改善のためのフコースの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多糖類やタンパク質は、粘性を付与したり、乳化安定性を付与したり等の機能性の点から食品素材として用いられることも多かった。一方で多糖類やタンパク質には、原料由来の特有の風味があったり、食品の本来の望ましい呈味をマスキングしてしまう効果があったりするので、これを含有せしめてなる食品組成物には、飲食のしやすさに欠けたり、好ましい呈味が邪魔されたりするという問題があった。
【0003】
多糖類やタンパク質に起因した風味の改善に関し、例えば、特許文献1には、スクラロースを有効成分とする、ペプチドまたはコラーゲンに由来する不快臭のマスキング剤の発明が開示されている。また、特許文献2には、ピルビン酸エチル、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、2-アセチルピロール、及びベンジルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種のマスキング剤化合物を含む、タマリンド種子由来の不快臭マスキング剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5072934号公報
【特許文献2】特開2021-73879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、多糖類又はタンパク質を含有する飲料等の多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物に関し、その風味を改善するための各種の成分について知られていたが、利用するものの利便性のためには、更なる素材の開発が望まれていた。
【0006】
よって、本発明の目的は、種々の多糖類やタンパク質に対して有効で、それらを含有せしめてなる組成物の風味を改善することができる素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意研究したところ、フコースに、多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物の風味を改善する作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、本発明は、フコースを有効成分として含有する、多糖類含有組成物の風味改善用組成物を提供するものである。
【0009】
上記第1の観点において、前記多糖類含有組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第2の観点によれば、本発明は、フコースを有効成分として含有する、タンパク質含有組成物の風味改善用組成物を提供するものである。
【0011】
上記第2の観点において、前記タンパク質含有組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク、及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の第3の観点によれば、本発明は、多糖類含有組成物にフコースを含有させる、前記多糖類含有組成物の風味改善方法を提供するものである。
【0013】
上記第3の観点において、前記多糖類含有組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の第4の観点によれば、本発明は、タンパク質含有組成物にフコースを含有させる、前記タンパク質含有組成物の風味改善方法を提供するものである。
【0015】
上記第4の観点において、前記タンパク質含有組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、シュッシュタンパク、及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の第5の観点によれば、本発明は、フコースの使用であって、多糖類含有組成物の風味改善のための該使用を提供するものである。
【0017】
上記第5の観点において、前記多糖類含有組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものであることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第6の観点によれば、本発明は、フコースの使用であって、タンパク質含有組成物の風味改善のための該使用を提供するものである。
【0019】
上記第6の観点において、前記タンパク質含有組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク、及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の第7の観点によれば、本発明は、多糖類及びフコースを含有する組成物であって、前記フコースの含有量が、前記多糖類の1質量部に対して0.00001~200質量部である、該組成物を提供するものである。
【0021】
上記第7の観点において、前記組成物は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される1種又は2種以上の多糖類を含有するものであることが好ましい。
【0022】
上記第7の観点において該組成物は、飲食用又は飲食物原料用の組成物であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の第8の観点によれば、本発明は、タンパク質及びフコースを含有する組成物であって、前記フコースの含有量が、前記多糖類の1質量部に対して0.00001~200質量部である、該組成物を提供するものである。
【0024】
上記第8の観点において、前記組成物は、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク、及びゼラチンからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質を含有するものであることが好ましい。
【0025】
上記第8の観点において該組成物は、飲食用又は飲食物原料用の組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、フコースを利用して、多糖類やタンパク質を含有する組成物の風味を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多糖類を含有せしめてなる多糖類含有組成物又はタンパク質を含有せしめてなるタンパク質含有組成物に、その風味を改善するためにフコースを適用するものである。
【0028】
上記多糖類としては、特に限定されないが、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、澱粉、デキストリン、セルロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドシードガムなどが挙げられる。また、多糖類として、1種類を含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。なお、本明細書において、多糖類は、例えば、3鎖以上の糖鎖を含むものであってよく、10鎖以上の糖鎖を含むものであってよく、20鎖以上の糖鎖を含むものであってよい。
【0029】
上記タンパク質としては、特に限定されないが、例えば、大豆タンパク、ミルクタンパク、アーモンドタンパク、コラーゲンペプチド、フィッシュタンパク、ゼラチンなどが挙げられる。また、タンパク質として、1種類を含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。なお、本明細書において、タンパク質は、例えば、3鎖以上のポリペプチドを含むものであってよく、10鎖以上のポリペプチドを含むものであってよく、20鎖以上のポリペプチドを含むものであってよい。
【0030】
また、上記多糖類含有組成物中には、タンパク質を含有してもよく、その場合、上記大豆タンパク質等の1種類又は2種類以上を含有してもよい。
【0031】
また、上記タンパク質含有組成物中には、多糖類を含有してもよく、その場合、上記難消化性デキストリン等の1種類又は2種類以上を含有してもよい。
【0032】
本発明が適用される多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物としては、飲食可能であればよく、その形態に特に制限はない。例えば、多糖類又はタンパク質を配合してなる粉末飲料、スープ、ドレッシング、ソース、錠剤(タブレット)、サプリメントなどの形態であってもよい。あるいは、多糖類又はタンパク質を更に飲食品等に配合・加工等してなる、キャンディ、チョコレート、チューインガム、ビスケット、クッキー、米菓、スナック、豆菓子・ドライフルーツ、珍味、生菓子、半生菓子、焼菓子、デザート類、シリアル類、ゼリー、ジャム、スプレッド、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、パン、総菜、漬物、ヨーグルト、乳飲料、乳酸菌飲料、チーズ、清涼飲料水、ゼリー飲料、魚肉ソーセージ、練り製品などの形態であってもよい。更には、多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物は、直接飲食に用いるための形態だけでなく、調味用や調理用等に用いるためのものであってもよい。
【0033】
ただし、上記多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物は、当該組成物に含有せしめる多糖類又はタンパク質に由来する成分が一定以上を占める該組成物の形態に対して、フコースが適用されることが好ましく、例えば、当該多糖類又はタンパク質由来の成分が乾燥物換算で0.001~100質量%を占める組成物の形態に対してフコースが適用されることがより好ましい。上記多糖類含有組成物に含有せしめる多糖類に由来する成分の該組成物中に占める割合は、乾燥物換算で0.001~100質量%であってよく、0.002~100質量%であってよく、0.002~95質量%であってよく、0.005~95質量%であってよく、0.005~90質量%であってよく、0.01~90質量%であってよく、0.01~80質量%であってよく、0.05~80質量%であってよい。また、上記タンパク質含有組成物に含有せしめるタンパク質に由来する成分の該組成物中に占める割合は、乾燥物換算で0.001~100質量%であってよく、0.005~100質量%であってよく、0.005~95質量%であってよく、0.01~95質量%であってよく、0.01~90質量%であってよく、0.05~90質量%であってよく、0.05~80質量%であってよく、0.1~80質量%であってよい。そのように多糖類又はタンパク質を含有する組成物には多糖類又はタンパク質に由来する成分に起因した風味の問題が生じやすく、これにフコースを含有せしめるようにして、当該多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物に対する風味の改善効果を発揮させることができる。
【0034】
本発明が適用される多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物としては、飲料の形態であってもよく、例えば、トマトジュース、ニンジンジュース、野菜ミックスジュース、野菜・果実ミックスジュース、青汁、清涼飲料水、粉末飲料、ゼリー飲料、ティーバッグ形状飲料などが挙げられる。そのような飲料の形態の場合には多糖類又はタンパク質に由来する成分に起因した風味の問題が生じやすく、これにフコースを含有せしめるようにして、当該多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物に対する風味の改善効果を更に効果的に発揮させることができる。
【0035】
本発明が適用される多糖類含有組成物において、当該成物中のフコースの含有量としては、風味を改善するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、当該組成物中に含まれる多糖類成分の100質量部に対するフコース量として0.0001~10000質量部であることができ、0.0005~10000質量部であることができ、0.0005~5000質量部であることができ、0.001~5000質量部であることができ、0.001~2000質量部であることができ、0.01~2000質量部であることができ、0.01~1000質量部であることができ、0.1~1000質量部であることができ、0.1~500質量部であることができる。
【0036】
また、本発明が適用されるタンパク質含有組成物において、当該成物中のフコースの含有量としては、風味を改善するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、当該組成物中に含まれるタンパク質成分の100質量部に対するフコース量として0.0001~10000質量部であることができ、0.0005~10000質量部であることができ、0.0005~5000質量部であることができ、0.001~5000質量部であることができ、0.001~2000質量部であることができ、0.01~2000質量部であることができ、0.01~1000質量部であることができ、0.1~1000質量部であることができ、0.1~500質量部であることができる。
【0037】
なお、多糖類の量は、例えば、難消化性デキストリン等については高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより測定が可能であり、澱粉等についてはムタロターゼ・グルコースオキシターゼ法などにより測定が可能である。
【0038】
また、タンパク質の量は、例えば、窒素定量換算法などにより測定が可能である。
【0039】
また、フコース量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより測定が可能である。
【0040】
本発明において、多糖類含有組成物中又はタンパク質含有組成物中にフコースを含有せしめる方法について、特に制限はなく、その原料素材などとして適用すればよい。具体的には、例えば、他の原料素材に対する混和、練込、溶解、浸透、浸漬、散布、噴霧、注入などの方法が挙げられる。
【0041】
本発明において、風味を改善するのに有効量でフコースを含有せしめたかどうかは、多糖類含有組成物中又はタンパク質含有組成物中にフコースを含有せしめたほうが、フコースを含有せしめない場合に比べて、その多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物の風味が改善しているかどうかについて官能評価を行うことなどによって、適宜判定することができる。また、そのような官能評価によってフコースの有効量を予め決定しておき、多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物の調製や加工等の際に、その量を添加するなどによって、風味の改善された多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物を調製することができる。なお、本明細書において「風味の改善」とは、例えば、多糖類又はタンパク質に起因した原料由来の特有の呈味、異風味などを抑制・マスキングしたり、多糖類又はタンパク質の有する、本来の望ましい呈味成分をマスキングしてしまう効果を抑制したりすることを含む。また、軽さやすっきり感を向上したり、飲料にしたときの飲みやすさを向上したりすることを含む。あるいは、多糖類及びタンパク質以外の原料に起因した呈味、例えば、フルーツ香料や果汁による果汁感や新鮮味、フレッシュ感、コク味、味の厚み等を向上したりすることを含む。
【0042】
一方、本発明は、別の観点では、多糖類及びフコースを所定の配合量で含有する組成物を提供するものである。また、タンパク質及びフコースを所定の配合量で含有する組成物を提供するものである。これらのような組成物によれば、その組成物中に含有せしめた多糖類又はタンパク質を、その組成物中に含有せしめたフコースとともに飲食品等に添加することができ、これにより飲食品等に多糖類やタンパク質を付与することができるとともに、その飲食品等に含有せしめた多糖類又はタンパク質による風味を改善することができる。ここで用いられる多糖類又はタンパク質としては、上述したものと同様のものを用いることができる。また、多糖類又はタンパク質として、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
本発明により提供される、上記したフコースと多糖類又はタンパク質を組み合わせてなる組成物中の多糖類又はタンパク質の含有量としては、飲食品等への使用の際に多糖類又はタンパク質を付与するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、該組成物中に0.1~99.9質量%であることができ、1~90質量%であることができ、2~80質量%であることができ、5~70質量%であることができ、10~50質量%であることができる。
【0044】
また、本発明により提供される、上記したフコースと多糖類又はタンパク質を組み合わせてなる組成物中のフコースの含有量としては、飲食品等への使用の際に多糖類又はタンパク質を付与したときの風味を改善するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、該組成物中に含まれる多糖類1質量部に対して0.00001~200質量部であることができ、0.00002~100質量部であることができ、0.00005~100質量部であることができ、0.0001~50質量部であることができ、0.0002~40質量部であることができ、0.0005~30質量部であることができ、0.001~20質量部であることができ、0.002~10質量部であることができ、0.005~5質量部であることができる。また、該組成物中に含まれるタンパク質1質量部に対して0.00001~200質量部であることができ、0.00002~100質量部であることができ、0.00005~100質量部であることができ、0.0001~50質量部であることができ、0.0002~40質量部であることができ、0.0005~30質量部であることができ、0.001~20質量部であることができ、0.002~10質量部であることができ、0.005~5質量部であることができる。
【0045】
本発明により提供される、上記したフコースと多糖類又はタンパク質を組み合わせてなる組成物中には、本発明の目的を達成する限り、必要に応じて任意に、上記多糖類又はタンパク質やフコース以外の他の成分を含んでもよい。例えば、甘味料、香料、着色料、保存料、増粘剤、潤滑剤、酸化防止剤、発色剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、酸味料、調味料、栄養強化剤、果汁、乳製品等が挙げられる。
【0046】
本発明により提供される、上記したフコースと多糖類又はタンパク質を組み合わせてなる組成物は、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状、シロップ状、ペースト状等の様々な形態とすることができ、その製造法は、特に限定されない。例えば、多糖類又はタンパク質とフコースを混合する方法、多糖類又はタンパク質と結合剤、賦形剤とフコースとを用いて常法により顆粒状、錠剤状にする方法、多糖類又はタンパク質を含む液糖にフコースを混合してシロップ状やペースト状にする方法などが挙げられる。
【0047】
本発明により提供される、上記したフコースと多糖類又はタンパク質を組み合わせてなる組成物は、これを適用する対象としては、特に制限はなく、例えば、飲食品、口腔衛生製品、医薬品、医薬部外品などが挙げられる。あるいは、飲食品等の組成物の形態の調製や加工等の際にその原料の一部として添加するものとして用いられる原料用の組成物の形態であってもよい。
【0048】
本発明により提供される、上記したフコースと多糖類又はタンパク質を組み合わせてなる組成物を飲食品等に適用する方法としては、上述したフコースを適用し得る多糖類含有組成物中又はタンパク質含有組成物に適用する場合と同様に、特に制限はなく、その飲食品等の原料素材などとして適用すればよい。具体的には、例えば、他の原料素材に対する混和、練込、溶解、浸透、浸漬、散布、噴霧、注入などの方法が挙げられる。その場合、上記組成物によって付与される多糖類又はタンパク質の付与量としては、目的とするところに応じた量で適宜適用すればよく、このときフコースが予め調整された量で含有されているので、多糖類又はタンパク質による風味を改善することができる。より詳細には、例えば、多糖類又はタンパク質に起因した原料由来の特有の呈味、異風味などを抑制・マスキングしたり、多糖類又はタンパク質の有する、本来の望ましい呈味成分をマスキングしてしまう効果を抑制したりすることができる。また、軽さやすっきり感を向上したり、飲料にしたときの飲みやすさを向上したりすることができる。あるいは、多糖類及びタンパク質以外の原料に起因した呈味、例えば、フルーツ香料や果汁による果汁感や新鮮味、フレッシュ感、コク味、味の厚み等を向上したりすることができる。
【0049】
本発明に用いられるフコースとしては、特に制限はないが、飲食品等の形態に適したものとしては、天然物原料から調製されたものを用いることが好ましい。例えば、本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法により、アスコフィラムノドサムやモズク等の海藻から抽出して得られるフコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解物からは、フコースを効率的に調製することができるので、そのような方法により調製されたものを用いることが好ましい。
【0050】
以下には、フコースの調製方法について更に詳細に説明する。ただし、本発明に用いられるフコースは、以下に例示する調製方法によるものに限定されるものではない。
【0051】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の抽出方法
原料の海藻としては、褐藻類が好ましく、特にアスコフィラムノドサム、オキナワモズクが好ましく用いられる。原料の海藻からフコースを構成糖の一部とする多糖類を抽出する方法としては、原料に、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、又は、酢酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸の水溶液を、pH1~5、原料濃度が乾燥物として0.1~10重量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して抽出する方法が挙げられる。好ましくは、原料に、塩酸を、pH2~5、原料濃度が乾燥物として3~8.5重量%となるように加え、70~90℃にて1~3時間抽出する。更に好ましくは、ミキサーなどで原料を粉砕してから抽出を行う。
【0052】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類から低分子画分を除去する方法
上記手段により得られた抽出液を濾過した後、マンニトール等の低分子物質を除去する。その手段や条件等に特に制限はないが、例えば、公知の方法に準じた限外濾過などによる手段であれば、得られた抽出液をそのままその手段に供することが可能であり、工業的な量産化生産にも適しているので好ましい。より詳細には、その分子量分画の手段が、少なくともマンニトールを透過することが可能な限外濾過膜を用いるものであることが好ましい。更により詳細には、その分子量分画の手段が、分画分子量200~200,000の限外濾過膜を用いるものであることが好ましく、分画分子量500~30,000の限外濾過膜を用いるものであることがより好ましい。
【0053】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解
上記のようにして得られたフコースを構成糖の一部とする多糖類を原料として、加水分解を行う。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸を、pH0.1~5、抽出物の乾燥物換算濃度が0.1~25質量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して加水分解する方法が挙げられる。好ましくは、抽出物に、塩酸を、pH0.1~3、抽出物の乾燥物換算濃度が3~6質量%となるように加え、50~70℃にて1~5時間撹拌して加水分解する。
【0054】
反応終了後、速やかに反応液を冷却し、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤によりpH7~8に中和する。この中和液を活性炭脱色、濾過、電気透析装置等により脱塩することにより、フコース含有加水分解物を得ることができる。
【0055】
・フコースの分画・精製
上記加水分解物からフコースに富む画分を分離し回収する。その手段や条件等に特に制限はない。例えば、公知の方法に準じた限外濾過、脱塩、イオン交換、電気泳動、分子排斥クロマトグラフィー、モレキュラーシーブなどによる手段が挙げられる。この分離・回収により、残存するアルギン酸等の不純物が除かれて、高純度のフコースが得られる。例えば、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で10質量%以上含有する、より典型的には20質量%以上含有する、更により典型的には30質量%以上含有する、特に典型的には40質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。さらに、公知の方法に準じた結晶化、煎糖化、遠心分離、クロマトグラフィー分離等の手段により、フコースを高度に精製することができる。これにより、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で90質量%以上含有する、より典型的には95質量%以上含有する、更により典型的には98質量%以上含有する、特に典型的には99質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。
【0056】
本発明においては、フコースとして海藻由来組成物を用いる場合には、フコースを乾燥物当たり80質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが好ましく、85質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることがより好ましく、90質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが更により好ましく、95質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが最も好ましい。この場合、その海藻由来組成物のフコース以外の糖類の含有量は、乾燥物当たり0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上10質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以上5質量%以下であることが特に好ましく、0.001質量%以上3質量%以下であることが最も好ましい。
【実施例0057】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0058】
多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物の風味について、フコースによる改善効果を調べた。
【0059】
[フコース]
本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法で得られた、海藻由来のフコース結晶品(純度93.5%、焼津水産化学工業株式会社)を使用した。
【0060】
[各種の素材]
表1に示す各種の素材を準備し、使用した。
【0061】
【0062】
[官能評価]
表2には、各試験例に共通の評価基準を示す。具体的には、各種濃度となるようにフコースを添加した試料を、よく訓練された4名又は5名以上の評価者に摂取してもらい、それぞれフコースを添加しないブランクと比較したときの変化度合を評価した。
【0063】
【0064】
<試験例1>
グレープフルーツ香料0.1%水溶液を調製し、これに表3に示す各種の素材を添加して所定濃度となるよう調製した水溶液に対し、更にフコースを0.001、0.01、0.1、又は1w/v%の濃度になるように添加したときの、それぞれの風味の変化度合について、上記表2に示した基準により評価した。なお、ゼラチンについては、水に加熱溶解した後に、グレープフルーツ香料0.3%水溶液及びフコースを添加し、冷却してゲル化したものを評価した。また、寒天については、グレープフルーツ香料0.2%水溶液を調製して使用した。
【0065】
【0066】
その結果、表3に示されるように、グレープフルーツ香料0.1%水溶液を調製し、これに各種の多糖類又はタンパク質を所定濃度で含有せしめてなる多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物では、フコースを0.001w/v%程度以上含有せしめることで、そのグレープフルーツ感が改善されることが明らかとなった。これは、各種の多糖類による異風味やマスキング効果をフコースが抑制し、その結果、グレープフルーツ香料含有水溶液のフルーツ感が際立つこととなったためと考えられた。
【0067】
<試験例2>
リンゴ香料0.1%水溶液を調製し、これに表4に示す各種の素材を添加して所定濃度となるよう調製した水溶液に対し、更にフコースを0.001、0.01、0.1、又は1w/v%の濃度になるように添加したときの、それぞれの風味の変化度合について、上記表2に示した基準により評価した。なお、ゼラチンについては、水に加熱溶解した後に、リンゴ香料0.2%水溶液及びフコースを添加し、冷却してゲル化したものを評価した。
【0068】
【0069】
その結果、表4に示されるように、リンゴ香料0.1%水溶液を調製し、これに各種の多糖類又はタンパク質を所定濃度で含有せしめてなる多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物では、フコースを0.001w/v%程度以上含有せしめることで、そのリンゴ感が改善されることが明らかとなった。これは、試験例1の結果と同様、各種の多糖類による異風味やマスキング効果をフコースが抑制し、その結果、リンゴ香料含有水溶液のフルーツ感が際立つこととなったためと考えられた。
【0070】
<試験例3>
オレンジ果汁100%ジュース(香料不使用)を使用し、これに表5に示す各種の素材を添加して所定濃度となるよう調製した水溶液に対し、更にフコースを0.001、0.01、0.1、又は1w/v%の濃度になるように添加したときの、それぞれの風味の変化度合について、上記表2に示した基準により評価した。なお、寒天については、全体の半量の水に加熱溶解した後に、残り半量のオレンジ果汁100%ジュースを混合し(果汁50%含有)、これにフコースを添加、冷却してゲル化したものを評価した。
【0071】
【0072】
その結果、表5に示されるように、オレンジ果汁100%ジュース(香料不使用)を使用し、これに各種の多糖類又はタンパク質を所定濃度で含有せしめてなる多糖類含有組成物又はタンパク質含有組成物では、フコースを0.001w/v%程度以上含有せしめることで、そのオレンジ感が改善されることが明らかとなった。これは、試験例1,2の結果と同様、各種の多糖類又はタンパク質による異風味やマスキング効果をフコースが抑制し、その結果、オレンジ果汁のフルーツ感が際立つこととなったためと考えられた。
【0073】
<製造例1>
表6に示す処方で原材料をよく混合して組成物を調製し、これをスティック包装して粉末スティックを製造した。
【0074】
【0075】
<製造例2>
表7に示す処方で原材料をよく混合して組成物を調製し、これをスティック包装して粉末スティックを製造した。
【0076】