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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109522
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/04 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B62B3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011078
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213851
【氏名又は名称】朝日機材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596027782
【氏名又は名称】大一機材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三宅 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 則昭
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA32
3D050BB02
3D050CC01
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG01
(57)【要約】
【課題】載置面から資材や荷物などが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬する。
【解決手段】資材や荷物などを載置する載置面の端部に設けられて前記載置面よりも上に迫り出す位置と前記載置面よりも上には突出しない位置との間を動く可動突支部5を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面の端部に設けられて前記載置面よりも上に迫り出す位置と前記載置面よりも上には突出しない位置との間を動く可動突支部を有する、
ことを特徴とする台車。
【請求項2】
前記載置面の少なくとも一部を構成する荷受部が、両端部分の天端部と、中間部分の底部と、前記天端部のそれぞれから前記底部へと向かって下り勾配の法面部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記可動突支部が、前記下り勾配の方向と直交する方向に動く物に対して突っ支いとして働く、
ことを特徴とする請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記載置面に載置される資材を荷崩れしないように締め付けて固定するための荷締め具を係合させたるためのフックが取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の台車。
【請求項5】
前記フックに引掛け具を介して荷締め具の端が係合されるとともに、段積みされている複数の台車各々の前記フックそれぞれに前記荷締め具が通されることにより段積みされた状態で相互に結束されて固定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の台車。
【請求項6】
軸心方向が上下方向に沿うパイプが抜き差し自在に差し込まれるパイプ差込部が取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の台車。
【請求項7】
台車の各部の寸法が下記の数式1を満たすように調整される、
(数1) P < w×tanθ
ここに、
P:軸心方向が前記下り勾配の方向と直交する方向に沿うように前記荷受部に載置されるパイプ材の前記下り勾配の方向に沿う断面視における重心の高さに働く水平荷重[kg]
w:パイプ材の重量[kg]
θ:台車の接地面に対する、パイプ材の前記下り勾配の方向に沿う断面視における重心と径方向が前記下り勾配の方向に沿う状態の車輪の接地点とを結ぶ角度
ことを特徴とする請求項2または3に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、台車に関し、特にパイプ材を運搬する際に用いられて好適な台車に関する。
【背景技術】
【0002】
資材や荷物を積載して運搬するための台車として、均一な厚みの単板として形成されて上面に荷を載置する水平な荷支持板と、該荷支持板の下面に取り付けられて偏心回動する4個の自在輪とを有する運搬台車が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-291132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような従来の台車では、軸心方向直交断面が円形のパイプ材を運搬する際に、水平な荷支持板上をパイプ材が転がって荷支持板から転がり落ちてしまう、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、載置面から資材や荷物などが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能な、台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る台車は、載置面の端部に設けられて前記載置面よりも上に迫り出す位置と前記載置面よりも上には突出しない位置との間を動く可動突支部を有する、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る台車は、前記載置面の少なくとも一部を構成する荷受部が、両端部分の天端部と、中間部分の底部と、前記天端部のそれぞれから前記底部へと向かって下り勾配の法面部と、を有する、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係る台車は、前記可動突支部が、前記下り勾配の方向(即ち、天端部のそれぞれから底部へと向かう方向)と直交する方向に動く物に対して突っ支いとして働く、ようにしてもよい。
【0009】
この発明に係る台車は、前記載置面に載置される資材を荷崩れしないように締め付けて固定するための荷締め具を係合させるためのフックが取り付けられる、ようにしてもよい。
【0010】
この発明に係る台車は、前記フックに引掛け具を介して荷締め具の端が係合されるとともに、段積みされている複数の台車各々の前記フックそれぞれに前記荷締め具が通されることにより段積みされた状態で相互に結束されて固定される、ようにしてもよい。
【0011】
この発明に係る台車は、軸心方向が上下方向に沿うパイプが抜き差し自在に差し込まれるパイプ差込部が取り付けられる、ようにしてもよい。
【0012】
この発明に係る台車は、台車の各部の寸法が下記の数式1を満たすように調整される、ようにしてもよい。
(数1) P < w×tanθ
ここに、
P:軸心方向が前記下り勾配の方向と直交する方向に沿うように前記荷受部に載置されるパイプ材の前記下り勾配の方向に沿う断面視における重心の高さに働く水平荷重[kg]
w:パイプ材の重量[kg]
θ:台車の接地面に対する、パイプ材の前記下り勾配の方向に沿う断面視における重心と径方向が前記下り勾配の方向に沿う状態の車輪の接地点とを結ぶ角度
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る台車によれば、資材や荷物などを載置する載置面よりも上に迫り出す位置と前記載置面よりも上には突出しない位置との間を動く可動突支部を有するようにしているので、載置面に載置される資材や荷物などに対して可動突支部が突っ支い(別言すると、ストッパ)として働いて載置面から資材や荷物などが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となり、尚且つ、資材や荷物などを載置面へと載せたり載置面から降ろしたりする際に可動突支部が障害になることを防止することが可能となる。
【0014】
この発明に係る台車によれば、荷受部が、両端部分の天端部と、中間部分の底部と、前記天端部のそれぞれから前記底部へと向かって下り勾配の法面部と、を有するようにした場合には、荷受部の底部および一対の法面部により構成される凹みによって資材や荷物などを受け支えることができ、荷受部から資材や荷物などが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となる。
【0015】
この発明に係る台車によれば、可動突支部が、荷受部の法面部の下り勾配の方向(即ち、天端部のそれぞれから底部へと向かう方向)と直交する方向に動く物に対して突っ支いとして働くようにした場合には、例えば、1本の大径のパイプ材を運搬する場合には荷受部の底部および一対の法面部により構成される凹みを利用することによって荷受部から大径のパイプ材が転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となり、また、複数本の小径のパイプ材を運搬する場合には可動突支部を利用することによって載置面から小径のパイプ材が転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となる。
【0016】
この発明に係る台車によれば、フックが取り付けられるようにした場合には、載置面に載置される資材や荷物などを荷崩れしないように締め付けて固定することが可能となる。
【0017】
この発明に係る台車によれば、フックが取り付けられるようにした場合には、また、フックを利用することにより、複数の台車を、段積みした状態で結束して相互に固定させることが簡単にでき、安定した状態で安全に搬送などすることが可能となる。
【0018】
この発明に係る台車によれば、パイプ差込部が取り付けられるようにした場合には、パイプ差込部にパイプを差し込むことにより、荷受部に載置される資材や荷物などが荷受部から転がり落ちることを防止したり、台車を移動させる際に掴まれてハンドルのように機能する操作棒として使用したりすることが可能となる。
【0019】
この発明に係る台車によれば、台車の各部の寸法が上記の数式1を満たすように調整されるようにした場合には、台車が転倒しないようにすることができ、パイプ材を運搬する際の安全性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態に係る台車の構造を示すX-Y面図である。
図2図1の台車のX-Z面図である。
図3図1の台車のY-Z面図である。
図4図1の台車のY-Z面に沿うI-I断面図である。
図5図1の台車の可動突支部の動作を示すX-Z面図である。
図6】この発明に係る台車の実施例を示す斜視図である。
図7図1の台車の可動突支部の他の例を示すX-Z面図である。
図8図1の台車の使用状態の例を示すY-Z面図である。
図9図1の台車の使用状態の他の例を示すX-Z面図である。
図10図1の台車の転倒抵抗性能の計算のための使用状態を示すY-Z面図である。
図11】第1のフックを利用して複数の台車を段積みする場合の例を示すX-Z面図である。
図12】この発明に係る台車の他の実施の形態の構造を示すX-Y面図である。
図13図11の台車のX-Z面図である。
図14図11の台車のY-Z面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。以下の説明では、各図中に示すように、3次元直交座標系の各軸に沿ってX軸方向,Y軸方向,およびZ軸方向の各方向を定義する。なお、Z軸の矢印の向きを上向き、Z軸の矢印の向きとは反対の向きを下向きとする。
【0022】
図1乃至図5は、この発明の実施の形態に係る台車1の構造を示す図である。図6は、この発明に係る台車の実施例の1つを示す斜視図である。なお、図1乃至図5に示す台車1と図6に示す台車とでは細部において異なるものの、その差異はこの発明の要部に関係するものではなく、この発明においては図1乃至図5に示す構造と図6に示す構造とのどちらも採用し得る構造である。
【0023】
実施の形態に係る台車1は、資材や荷物などを載置する載置面の端部に設けられて前記載置面よりも上に迫り出す位置と前記載置面よりも上には突出しない位置との間を動く可動突支部5を有するとともに、前記載置面の一部を構成する荷受部2が、両端部分の天端部21と、中間部分の底部22と、天端部21のそれぞれから底部22へと向かって下り勾配の法面部23と、を有し、そのうえで、可動突支部5が、荷受部2の法面部23の下り勾配の方向(即ち、天端部21のそれぞれから底部22へと向かう方向;図に示す例では、Y軸方向)と直交する方向(図に示す例では、X軸方向)に動く物に対して突っ支いとして働く、ようにしている。
【0024】
実施の形態に係る台車1は、主に、荷受部2と、一対の車輪受部材3と、一対の梁部材4と、4個の可動突支部5と、4個の車輪6と、を有する。
【0025】
荷受部2は、資材や荷物などを載置するためのものであり、X-Y面視において矩形に形成される。荷受部2は、車輪受部材3のうちのX軸方向における中間部分に、一対の車輪受部材3の間にY軸方向に沿って架け渡されて備えられる。
【0026】
荷受部2は、一対の天端部21,底部22,一対の法面部23,および一対の壁部24を有する。
【0027】
天端部21は、荷受部2の、X-Y面視でのY軸方向における両端部分のそれぞれに、X-Y面に沿って水平に設けられる。
【0028】
底部22は、荷受部2のうちのY軸方向における中間部分に、X-Y面に沿って水平に設けられる。
【0029】
法面部23は、各天端部21と底部22との間のそれぞれに、天端部21から底部22へと向かって下り勾配でX-Y面(即ち、水平面)に対して傾斜して設けられる。
【0030】
壁部24は、各天端部21の、X-Y面視でのY軸方向における端から下向きに延出して設けられる。
【0031】
各天端部21の下面と車輪受部材3の上面とが接合されるとともに各壁部24の内側面と車輪受部材3の側面とが接合され、また、底部22の下面と梁部材4の上面とが接合される。各天端部21および各壁部24と車輪受部材3とは、また、底部22と梁部材4とは、例えば、溶接によって接合されたり、ねじ等の締結部材によってねじ止めされて接合されたりする。
【0032】
荷受部2の材質は、特定の種類の素材に限定されるものではなく、例えば強度や重量が考慮されるなどしたうえで適当な素材が適宜選択される。荷受部2は、例えば、アルミニウム合金を素材として形成される。
【0033】
荷受部2は、図1に示すように、X-Y面視において、車輪6の径方向がX-Z面に沿う状態のときの接地面Gへの車輪6の接地点Gw(図3図4参照)どうしのY軸方向に沿う間隔Lwの中央Cyを通るX軸方向に沿う直線に対して対称に形成される。
【0034】
荷受部2は、また、図3図4に示すように、Y-Z面視において、車輪6の径方向がX-Z面に沿う状態のときの接地面Gへの車輪6の接地点GwどうしのY軸方向に沿う間隔Lwの中央Cyを通るZ軸方向に沿う直線に対して対称に形成される。
【0035】
車輪受部材3は、荷受部2と車輪6との間に介在して荷受部2を下方から支持しつつ車輪6を備え付けるための部材であり、各々が荷受部2のY軸方向における両端部分(具体的には、一対の天端部21)をそれぞれ支持するように一対のものとして構成される。
【0036】
一対の車輪受部材3は、荷受部2の下面側に、各々の長手方向がX軸方向に沿うとともに、荷受部2のY軸方向における両端部分(具体的には、一対の天端部21)のそれぞれを支持するようにY軸方向において相互に離間して配設される。
【0037】
車輪受部材3の材質は、特定の種類の素材に限定されるものではなく、例えば強度や重量が考慮されるなどしたうえで適当な素材が適宜選択される。車輪受部材3は、例えば、アルミニウム合金を素材としてダイカスト成形されて形成される。なお、車輪受部材3は、複数の部品が組み合わされて形成されるようにしてもよいものの、特に良好な強度を確保する観点からは一体成形されることが好ましい。
【0038】
車輪受部材3の下面側に、一対の梁部材4が配設される。一対の梁部材4は、各々の長手方向がY軸方向に沿うとともにX軸方向において相互に離間して、一対の車輪受部材3の間にY軸方向に沿って架け渡されて備えられる。梁部材4と車輪受部材3とは、例えば、溶接によって接合されたり、ねじ等の締結部材によってねじ止めされて接合されたりする。
【0039】
一対の梁部材4は、上記の構成により、一対の車輪受部材3を相互に連結するとともに、一対の車輪受部材3および荷受部2の底部22を下方から支持する。
【0040】
一対の車輪受部材3各々の下面側のX軸方向における両端部のそれぞれに、車輪6が取り付けられる。車輪6として、具体的には例えば、Z軸回りに転回可能な自在輪(即ち、水平転回可能なキャスタ)や、水平転回不能で走行方向がX軸方向固定の固定輪が用いられ得る。
【0041】
車輪6は、車輪受部材3に対して、例えば、トッププレート61(別言すると、取付台座)を介してねじ等の締結部材によってねじ止めされて取り付けられる。
【0042】
荷受部2の高さを決定づける各部(例えば、車輪受部材3,車輪6)の寸法は、荷受部2に載置されるパイプ材が、前記パイプ材を運搬するためのハンドパレットが使用可能となる高さになるように、調整されるようにしてもよい。
【0043】
一対の車輪受部材3各々のX軸方向における中央位置に、荷受部2に載置される資材や荷物などを荷崩れしないように締め付けて固定するための荷締め具(例えば、ラッシングベルト,荷締めベルト)を係合させるための第1のフック7が取り付けられる。第1のフック7は、Y軸方向において相互に対向して一対のものとして構成される。
【0044】
第1のフック7は、断面円形の棒材が曲げ加工されてU字形に形成される。一対の第1のフック7は、X-Y面に沿いつつU字形の開口部をY軸方向において相互に対向させて、車輪受部材3の下端に対して取り付けられる。第1のフック7は、車輪受部材3に対して、例えば、溶接によって接合されて取り付けられる。なお、第1のフック7を通過させるため、荷受部2の一対の壁部24のそれぞれに、一対の貫通孔が形成される。
【0045】
また、一対の車輪受部材3各々のX軸方向における両端部のそれぞれに、荷受部2に載置される資材や荷物などを荷崩れしないように締め付けて固定するための荷締め具(例えば、ラッシングベルト,荷締めベルト)を係合させるための第2のフック8が取り付けられる。
【0046】
第2のフック8は、断面円形の棒材が曲げ加工されてコ字形に形成される。第2のフック8は、一対の車輪受部材3のそれぞれに対して、X-Y面に沿いつつコ字形の開口部をX軸方向において相互に対向させて、車輪受部材3のX軸方向における端部を前記開口部で挟んで車輪受部材3の側面に対して取り付けられる。第2のフック8は、車輪受部材3に対して、例えば、溶接によって接合されて取り付けられる。
【0047】
可動突支部5は、荷受部2に載置される資材や荷物などが転がり落ちないように突っ支い(別言すると、ストッパ)として働く仕組みであり、一対の車輪受部材3各々に、車輪受部材3のX軸方向における両端部のそれぞれにX軸方向において相互に対向する一対のものとして設けられる。つまり、一対の可動突支部5が相互に対向する方向(即ち、X軸方向)は、荷受部2の法面部23が天端部21から底部22へと向かって下り勾配で傾斜する方向(即ち、Y軸方向)と直交する。
【0048】
可動突支部5は、突支い部51,可動部52,および支持部53を有する。
【0049】
突支い部51は、矩形板状の本体部511と、本体部511の先端に設けられる突当り部512とを有する。
【0050】
可動部52は、突支い部51(具体的には、本体部511)と車輪受部材3との間に介在して突支い部51を車輪受部材3に対して回動させるためのものであり、固定片521,回動片522,および回転軸523を有する。可動部52としては、例えば蝶番が用いられる。
【0051】
可動部52の固定片521は、車輪受部材3のX軸方向における端面に、例えば溶接によって接合されて固定される。また、回動片522に、突支い部51(具体的には、本体部511)が、例えば溶接によって接合されて取り付けられる。
【0052】
可動部52の回転軸523はY軸方向に沿って配設され、回転軸523により、固定片521が固定される車輪受部材3に対して回動片522に取り付けられる突支い部51がX軸方向に沿って回動する。
【0053】
支持部53は、X-Z面視において概ね三角形の板状に形成され、突支い部51の本体部511の一面側(具体的には、X軸方向において相互に対向する相手方の可動突支部5側の面)にX-Z面に沿って垂直に立設して設けられる。
【0054】
上記の構成により、突支い部51が、車輪受部材3のX軸方向における端部の上面に迫り出す位置(このとき、支持部53が車輪受部材3の上面に当接する;図5(A)参照)と、車輪受部材3のX軸方向における側方に退避する位置(このとき、回動片522が第2のフック8に当接する;同図(B)参照)と、の間を動く。なお、突支い部51は、車輪受部材3の上面に迫り出す位置のとき、荷受部2の天端部21の上面よりも上に突出し、すなわち、載置面よりも上に突出して迫り出す。
【0055】
可動突支部5(特に、支持部53)は、車輪受部材3のX軸方向における側方に退避する位置では、荷受部2の天端部21や車輪受部材3の上面(別言すると、資材や荷物などを載置する載置面)よりも上には突出しないように調整される(図5(B)参照)。これにより、資材や荷物などを荷受部2や車輪受部材3へと載せたり荷受部2や車輪受部材3から降ろしたりする際に、可動突支部5が障害になることが防止される。
【0056】
可動突支部5が不意に回動しないように、突支い部51が車輪受部材3のX軸方向における端部の上面に迫り出す位置にある状態を維持したり車輪受部材3のX軸方向における側方に退避する位置にある状態を維持したりするために、ばね54(図7のみに図示)が備えられるようにしてもよい。
【0057】
ばね54は、具体的には、車輪受部材3のX軸方向における端部寄りの位置に固定されて設けられる第1のばね受軸541に一端が係合するとともに、突支い部51の本体部511の先端寄り(即ち、突当り部512寄り)の位置に固定されて設けられる第2のばね受軸542に他端が係合して、車輪受部材3と可動突支部5との間に介在して設けられる。
【0058】
図7(A)に示すように、第2のばね受軸542が第1のばね受軸541と回転軸523とを結ぶ直線よりも上に位置する状態のとき、ばね54は、基端側の回転軸523を回転軸心として回動する突支い部51の先端側に対して前記先端側を車輪受部材3の上面へと引きつける力を発揮する。これにより、突支い部51が車輪受部材3のX軸方向における端部の上面に迫り出す位置にある状態が維持される。
【0059】
一方、図7(B)に示すように、第2のばね受軸542が第1のばね受軸541と回転軸523とを結ぶ直線よりも下に位置する状態のとき、ばね54は、基端側の回転軸523を回転軸心として回動する突支い部51の先端側に対して前記先端側を車輪受部材3のX軸方向における端面へと引きつける力を発揮する。これにより、突支い部51が車輪受部材3のX軸方向における側方に退避する位置にある状態が維持される。
【0060】
上記の台車1は、特にパイプ材を運搬する際に用いられて好適である(但し、台車1が運搬する物はパイプ材には限定されない)。具体的には例えば、運搬対象のパイプ材が1本の大径のパイプ材9Aである場合には、パイプ材9Aの軸心方向がX軸方向に沿うように荷受部2に載置される。
【0061】
この場合、図8に示すように、パイプ材9Aが、荷受部2の底部22および一対の法面部23により構成される凹みに受け支えられて安定して保持されることにより、荷受部2から転がり落ちることが防止される。
【0062】
このとき、荷受部2は、Y-Z面視において、車輪6の径方向がX-Z面に沿う状態のときの接地面Gへの車輪6の接地点GwどうしのY軸方向に沿う間隔Lwの中央Cyを通るZ軸方向に沿う直線に対して対称に形成され(図3図4参照)、このため、パイプ材9AのY-Z面視における重心(言い換えると、パイプ材9AのX軸方向に沿う軸心のY-Z面視における位置)は前記Z軸方向に沿う直線上に位置する。
【0063】
なお、パイプ材9Aの軸心方向の寸法に応じて、例えばパイプ材9Aの軸心方向における両端寄りの位置のそれぞれに台車1が配置されるなど、複数台の台車1が配置されて用いられる。また、軸心方向がX軸方向に沿うように荷受部2に載置されるパイプ材9Aは、例えば、一対の第1のフック7が利用されて、ラッシングベルト/荷締めベルトなど(図示していない)によって締め付けられて固定される。
【0064】
また、運搬対象のパイプ材が複数本の小径のパイプ材9Bである場合には、パイプ材9Bの軸心方向がY軸方向に沿うように荷受部2の天端部21に載置されるとともに車輪受部材3にも直接に載置される(即ち、車輪受部材3の上面も、資材や荷物などを載置する載置面として働く)。
【0065】
この場合、図9に示すように、可動突支部5(具体的には、突当り部512を有する突支い部51)がパイプ材9Bにとって突っ支い(別言すると、ストッパ)として働き、パイプ材9Bが、可動突支部5(具体的には、突当り部512)に打ち当たって受け止め支えられて保持されることにより、荷受部2や車輪受部材3から転がり落ちることが防止される。なお、パイプ材9Bの軸心方向の寸法に応じて、例えばパイプ材9Bの軸心方向における両端寄りの位置のそれぞれに台車1が配置されるなど、複数台の台車1が配置されて用いられる。また、軸心方向がY軸方向に沿うように荷受部2に載置されるパイプ材9Bは、例えば、第2のフック8(図に示す例では、合計4個)が利用されて、ラッシングベルト/荷締めベルトなど(図示していない)によって締め付けられて固定される。
【0066】
(転倒抵抗性能の計算)
台車1の荷受部2に、軸心方向がX軸方向に沿う1本の大径のパイプ材9Cが載置されたときの、台車1の転倒抵抗性能を計算する。ここでは、車輪6の径方向がX-Z面に沿う状態(図10において片方の車輪6は破線の状態)のときの接地面Gへの車輪6の接地点GwどうしのY軸方向に沿う間隔Lwが460mmであり、パイプ材9Cの直径が762mmである場合を例に挙げる。
【0067】
転倒条件が最も厳しくなったときを考慮するものとし、ここでは、図10に示すように、軸心方向がX軸方向に沿うように荷受部2にパイプ材9Cが載置され且つ片方の車輪6の径方向がY-Z面に沿う状態を検討対象とする。また、台車1が完全に停止(即ち、車輪6が完全に停止)している状態から台車1をパイプ材9Cとともに動かすときを検討対象とする。
【0068】
車輪6の径方向がY-Z面に沿う状態は、(X-Y面視における、車輪6のZ軸回りの転回中心の位置と水平軸回りの回転中心の位置とがずれているため、)車輪6の径方向がX-Z面に沿う状態(図10において破線の車輪6の状態)と比べて、パイプ材9CのY-Z面視における重心Cg(言い換えると、パイプ材9CのX軸方向に沿う軸心のY-Z面視における位置)と接地面Gへの車輪6の接地点Gpとの間の距離が短くなる。
【0069】
上記の状態のとき、台車1/車輪6の接地面Gに対する、パイプ材9CのY-Z面視における重心Cgと径方向がY-Z面に沿う状態の車輪6の接地点Gpとを結ぶ角度θは、19.4°となる。
【0070】
台車1が転倒し得るような、パイプ材9CのY-Z面視における重心Cgの高さに働く水平荷重P[kg]を求める式は、パイプ材9Cの重量をw[kg]として、下記の数式2のように表される。なお、図10に示す例では、θ=19.4°である。
(数2) tanθ = P/w
【0071】
したがって、台車1の各部の寸法が下記の数式3を満たすように調整されることにより、台車1は転倒しない。
(数3) P < w×tanθ
ここに、 P:パイプ材のY-Z面視における重心の高さに働く水平荷重
w:パイプ材の重量
θ:台車/車輪の接地面に対する、パイプ材のY-Z面視における重心と
径方向がY-Z面に沿う状態の車輪の接地点とを結ぶ角度
【0072】
上記の数式2について、水平荷重Pはパイプ材9Cの重量w(具体的には、パイプ材9Cの軸心方向の長さ)により変わるので、パイプ材9Cの軸心方向の長さごと/パイプ材9Cの重量wごとに水平荷重Pを計算すると、下掲の表1のようになる。
【表1】
【0073】
台車1は、上記で計算される水平荷重Pより大きい水平荷重でなければ転倒しない。人がものを押す水平力として「手摺の設計上の強度」(国土交通省ホームページ)を参考にすると100~150kg/mとされており、人間の肩幅の平均を0.6mとすると60~90kg/人となる。この値を上掲の表1にあてはめて計算することにより下掲の表2が得られる。
【表2】
【0074】
以上より、直径762mmのパイプ材9Cの積載時において、パイプ材9Cの長さが2mの場合は2人以上による作業の際に注意を要し、また、パイプ材9Cの長さが3mの場合は3人以上による作業の際に注意を要するものの、その他の場合は台車1の転倒のおそれは小さいことが確認される。
【0075】
実施の形態に係る台車1によれば、資材や荷物などを載置する載置面の端部に設けられて前記載置面よりも上に迫り出す位置と前記載置面よりも上には突出しない位置との間を動く可動突支部5を有するようにしているので、荷受部2や車輪受部材3に載置される資材や荷物などに対して可動突支部5が突っ支い(別言すると、ストッパ)として働いて荷受部2や車輪受部材3(別言すると、資材や荷物などを載置する載置面)から資材や荷物などが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となり、尚且つ、資材や荷物などを荷受部2や車輪受部材3へと載せたり荷受部2や車輪受部材3から降ろしたりする際に可動突支部5が障害になることを防止することが可能となる。
【0076】
実施の形態に係る台車1によれば、資材や荷物などを載置する載置面の一部を構成する荷受部2が、両端部分の天端部21と、中間部分の底部22と、天端部21のそれぞれから底部22へと向かって下り勾配の法面部23と、を有するようにしているので、荷受部2の底部22および一対の法面部23により構成される凹みによって資材や荷物など(特に、軸心方向がX軸方向に沿うように載置されるパイプ材9C)を受け支えることができ、荷受部2から資材や荷物などが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となる。
【0077】
実施の形態に係る台車1によれば、可動突支部5が、荷受部2の法面部23の下り勾配の方向(即ち、天端部21のそれぞれから底部22へと向かう方向;即ち、Y軸方向)と直交する方向(即ち、X軸方向)に動く物に対して突っ支いとして働くようにしているので、例えば、1本の大径のパイプ材9Aを運搬する場合には荷受部2の底部22および一対の法面部23により構成される凹みを利用することによって荷受部2から大径のパイプ材9Aが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となり、また、複数本の小径のパイプ材9Bを運搬する場合には可動突支部5を利用することによって荷受部2や車輪受部材3から小径のパイプ材9Bが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となる。
【0078】
実施の形態に係る台車1によれば、第1のフック7や第2のフック8が取り付けられるようにしているので、載置面に載置される資材や荷物などを荷崩れしないように締め付けて固定することが可能となる。
【0079】
第1のフック7は、図11に示すように、複数の台車1が段積みされる際にも利用される(尚、図11では、可動突支部5の図示を省略している)。具体的には、段積みされている複数の台車1のうちの一番下の台車1の第1のフック7に引掛け具11aを介して荷締め具11(例えば、ラッシングベルト,荷締めベルト)の一端が係合されるとともに、段積みされている複数の台車1各々の第1のフック7それぞれに前記荷締め具11が通され、段積みされている複数の台車1のうちの一番上の台車1の荷受部2の天端部21の上面でY軸方向における反対側に前記荷締め具11がわたされて、さらに、(図11の見えていない側において)段積みされている複数の台車1各々の第1のフック7それぞれに前記荷締め具11が通され、段積みされている複数の台車1のうちの一番下の台車1の第1のフック7に引掛け具11aを介して前記荷締め具11の他端が係合される。これにより、複数の台車1を、段積みした状態で結束して相互に固定させることが簡単にでき、安定した状態で安全に搬送などすることが可能となる。
【0080】
なお、図に示す例では、車輪受部材3の上板(別言すると、天板)に、車輪6の幅よりも広い幅の開口が設けられている(例えば、図1参照)。このため、図11に示すように複数の台車1が段積みされるとき、積み重ねられる上段の台車1の4個の車輪6それぞれが下段の台車1の車輪受部材3の上板の前記開口内に位置し(尚、車輪6は下段の台車1の車輪6のトッププレート61上に載置される)、これにより上段の台車1の車輪6の前後左右方向の移動が規制されるので、段積みされた複数の台車1が崩れてしまうことが防止され、複数の台車1が段積みされた状態が安定的に保持される。
【0081】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0082】
例えば、上記の実施の形態では車輪受部材3のうちのX軸方向における中間部分のみに荷受部2が備えられるようにしているが、荷受部2は車輪受部材3のX軸方向における全体にわたって備えられるようにしてもよい。この場合、突支い部51は、荷受部2の天端部21のX軸方向における端部の上面に迫り出す位置(このとき、支持部53が天端部21の上面に当接する)と、荷受部2の天端部21および車輪受部材3のX軸方向における側方に退避する位置(このとき、回動片522が第2のフック8に当接する)と、の間を動く。つまり、可動突支部5は、資材や荷物などを載置する載置面の端部に設けられて前記載置面よりも上に迫り出す位置(別言すると、突出する位置)と載置面よりも上には突出しない位置との間を動く。
【0083】
上記の実施の形態では荷受部2が一対の天端部21,底部22,一対の法面部23,および一対の壁部24を有するようにしているが、荷受部2は上面が平面であるようにしてもよい。この場合も、可動突支部5により、荷受部2や車輪受部材3から資材や荷物などが転がり落ちないように安定させて保持しつつ運搬することが可能となる。
【0084】
上記の実施の形態では可動突支部5が突支い部51,可動部52,および支持部53を有するとともに可動部52の回転軸523によって突支い部51が回動するようにしているが、この発明における可動突支部の具体的な構成や仕組みは上記の実施の形態における可動突支部5に限定されるものではなく、可動突支部は載置面(上記の実施の形態における荷受部2や車輪受部材3)の端部に設けられて前記載置面よりも上に迫り出す位置/姿勢/状態と前記載置面よりも上には突出しない位置/姿勢/状態とに変化し得る機序であればどのような構成や仕組みであってもよい。
【0085】
台車1は、図11乃至図14に示すように、軸心方向がZ軸方向(即ち、上下方向)に沿うパイプ(単管パイプ,鋼管パイプなど;図示していない)が抜き差し自在に差し込まれるパイプ差込部10を有するようにしてもよい(尚、図11乃至図14では、可動突支部5の図示を省略している)。パイプ差込部10は、軸心方向がZ軸方向に沿う差込穴部10aを有するとともに、差込穴部10aの下端に受け板10bがX-Y面に沿って水平に設けられる。これにより、差込穴部10aの上端開口から上下方向に沿って差し込まれたパイプが、受け板10bに突き当たることによって支持される。差込穴部10aに差し込まれて支持されるパイプは、荷受部2に載置される資材や荷物などが荷受部2から転がり落ちることを防いだり、台車1を移動させる際に掴まれてハンドルのように機能する操作棒として使用されたりされる。
【0086】
図11乃至図14に示す例ではパイプ差込部10は荷受部2の壁部24のX軸方向における端部に取り付けられるようにしているが、パイプ差込部10の取付位置は、図11乃至図14に示す例における位置に限定されるものではなく、図11乃至図14に示す例における位置からX軸方向においてずれた位置でもよい。パイプ差込部10は、車輪受部材3に対して取り付けられるようにしてもよい。また、図11乃至図14に示す例ではパイプ差込部10はY軸方向における一方の側に1個(合計2個)取り付けられるようにしているが、パイプ差込部10はY軸方向における一方の側に2個以上(合計3個以上)取り付けられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 台車
2 荷受部
21 天端部
22 底部
23 法面部
24 壁部
3 車輪受部材
4 梁部材
5 可動突支部
51 突支い部
511 本体部
512 突当り部
52 可動部
521 固定片
522 回動片
523 回転軸
53 支持部
6 車輪
61 トッププレート(取付台座)
7 第1のフック
8 第2のフック
9A 大径のパイプ材
9B 小径のパイプ材
9C パイプ材
10 パイプ差込部
10a 差込穴部
10b 受け板
11 荷締め具
11a 引掛け具
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
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図10
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