(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109527
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20230801BHJP
F16K 1/42 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
F16K5/04 C
F16K1/42 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011085
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】坂田 和也
(72)【発明者】
【氏名】細野 雅史
【テーマコード(参考)】
3H052
3H054
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA02
3H052BA22
3H052BA25
3H052BA31
3H052BA32
3H052CB14
3H052CB22
3H052CD02
3H052DA01
3H052EA01
3H052EA02
3H052EA16
3H054AA03
3H054BB02
3H054BB12
3H054BB16
3H054BB22
3H054BB24
3H054BB25
3H054CA02
3H054CB16
3H054CB24
3H054CB34
3H054EE01
3H054GG01
3H054GG02
3H054GG14
(57)【要約】
【課題】弁体との接触による弁座の摩耗を抑制し、かつ弁座と弁体との密着性を確保すること。
【解決手段】弁装置は、流路15を含むハウジング12と、流路15に設けられ、シート面19aと弁孔19bを有する弁座19と、流路15に設けられ、シート面19aに当接可能なシール面21dを有し、流路15を開閉するために弁座19に対応して設けられる弁体21とを備える。弁座19は、その軸方向D1においてハウジング12に対し移動可能に設けられ、弁座19とハウジング12との間には、弁座19を弁体21に押し付ける付勢力を有する弾性部材31が設けられる。弁座19は、少なくともシート面19aが高耐摩耗材33により形成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路を含むハウジングと、
前記流路に設けられ、シート面と弁孔を有する弁座と、
前記流路に設けられ、前記シート面に当接可能なシール面を有し、前記流路を開閉するために前記弁座に対応して設けられる弁体と
を備えた弁装置において、
前記弁座は、その軸方向において前記ハウジングに対し移動可能に設けられ、前記弁座と前記ハウジングとの間には、前記弁座を前記弁体に押し付ける付勢力を有する弾性部材が設けられ、
前記弁座は、少なくとも前記シート面が高耐摩耗材により形成される
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記弁座と前記ハウジングとの間には、前記弁座の移動を許容する隙間が設けられ、
前記隙間をシールするためのシール構造を更に備えた
ことを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置において、
前記隙間は、前記弁座の径方向において前記弁座と前記ハウジングとの間に形成される径側隙間を含み、前記シール構造は、前記径側隙間に設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項2に記載の弁装置において、
前記隙間は、前記弁座の軸方向において前記弁座と前記ハウジングとの間に形成される軸側隙間を含み、前記シール構造は、前記軸側隙間に設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の弁装置において、
前記弁座は、少なくとも前記シート面が低摩擦係数材より形成される
ことを特徴とする弁装置。
【請求項6】
請求項4に記載の弁装置において、
前記シール構造は、弾性材より形成されるリップシールにより構成され、
前記リップシールは、断面略V形をなし、前記弁座に保持される保持部と、先端部が前記ハウジングに接するシールリップ部と、前記シールリップ部の基部から分岐したダストリップ部とを含み、
前記シールリップ部は、その先端が前記流路から離れると共に前記ハウジングへ向けて傾斜し、
前記ダストリップ部は、その先端が前記流路へ近付くと共に前記ハウジングへ向けて傾斜する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項7】
請求項6に記載の弁装置において、
前記ダストリップ部の内側に設けられるダストトラップ部を更に含み、
前記ダストトラップ部は、その先端が前記流路から離れると共に前記ハウジングへ向けて傾斜する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の弁装置において、
前記弾性部材は、金属製のスプリングである
ことを特徴とする弁装置。
【請求項9】
請求項4に記載の弁装置において、
前記弾性部材は、ゴム製のOリングであり、前記シール構造を兼用する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項10】
請求項2又は3に記載の弁装置において、
前記ハウジングは、前記弾性部材よりも内側に前記流路を形成する内側壁を有し、
前記内側壁の外周側には、前記弁座の少なくとも一部と前記弾性部材を収容する凹部が設けられ、
前記シール構造は、前記内側壁と前記弁座との間の前記径側隙間に設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項11】
請求項4、6又は7に記載の弁装置において、
前記ハウジングは、前記弾性部材よりも内側に前記流路を形成する内側壁を有し、
前記内側壁の外周側には、前記弁座の少なくとも一部と前記弾性部材を収容する凹部が設けられ、前記凹部は底壁を含み、
前記シール構造は、前記凹部の前記底壁と前記弁座との間の前記軸側隙間に設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項12】
請求項2、4、6又は7に記載の弁装置において、
前記ハウジングは、前記流路を形成する内壁に、前記流路よりも内径が大きく、前記弁座の少なくとも一部と前記弾性部材を収容する拡径部が設けられ、前記拡径部は前記流路へ向けて開いた底壁を含み、
前記シール構造は、前記拡径部の前記底壁と前記弁座との間の前記軸側隙間に設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項13】
請求項12に記載の弁装置において、
前記拡径部には、前記弁座よりも前記流路の側の少なくとも一ヶ所に、前記弁座の前記軸方向への移動を案内するガイド部が設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項14】
請求項2乃至13のいずれかに記載の弁装置において、
前記シール構造は、前記弁座と一体に設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の弁装置において、
先端部と基端部を含み、前記先端部に前記弁体が一体的に設けられ、前記弁体を回動させるための回転軸と、
前記回転軸を回転させる駆動力を発生する駆動源と、
前記回転軸の前記基端部に一体的に設けられ、前記回転軸を回転させるために前記駆動源から前記駆動力を受ける弁ギヤと、
前記回転軸の前記基端部の側に配置され、前記回転軸の前記先端部を自由端部として前記回転軸を回転可能に片持ち支持するための軸受と、
前記弁体が閉弁する方向へ前記回転軸を回転させるスプリング力を前記弁ギヤへ付与するためのリターンスプリングと、
前記弁体が全閉位置に配置された状態で、前記回転軸と共に前記弁ギヤの回転を規制するために前記弁ギヤの一部が当接する全閉ストッパと
を更に備え、
前記駆動源の非駆動時に、前記弁ギヤへ付与される前記スプリング力により前記弁ギヤの一部が前記全閉ストッパに当接し、その当接点を支点として前記弁ギヤに作用するモーメントが前記回転軸に作用することにより、前記軸受との接点を支点として前記回転軸を前記軸線の方向へ傾けて前記弁体を前記弁座に押し付ける
ことを特徴とする弁装置。
【請求項16】
請求項15に記載の弁装置において、
前記駆動源の非駆動時に前記弁体と接することで第1全閉状態となる第1弁座が設けられる第1流路と、
前記駆動源が駆動し、回転可動角が最大となるときに前記弁体と接することで第2全閉状態となる第2弁座が設けられる第2流路と、
前記駆動源の前記駆動力を前記弁ギヤへ伝えるための中間ギヤと
を更に備え、
前記弁体が前記第1全閉状態に配置された状態であって、前記回転軸の前記基端部に固定された前記弁ギヤを、前記回転軸を中心に前記基端部の側から視た状態において、前記回転軸の前記軸線を原点とし、X軸を水平方向とし、Y軸を垂直方向とする直交座標系を想定した場合に、+X軸方向かつ+Y軸方向を第1象限、-X軸方向かつ+Y軸方向を第2象限、-X軸方向かつ-Y軸方向を第3象限、+X軸方向かつ-Y軸方向を第4象限としたとき、前記第1弁座が前記第3象限及び前記第4象限に配置され、前記弁ギヤの一部と前記全閉ストッパとの前記当接点が、前記第1象限又は前記第4象限に配置され、前記弁ギヤが時計方向へ回転する方向に前記スプリング力が作用し、前記弁体は、前記第1全閉状態となる前記第3象限及び前記第4象限と前記第2全閉状態となる前記第1象限及び前記第4象限との間で回動するように構成され、
前記弁体が回動するときに、前記弁ギヤの歯部の任意の一部と前記中間ギヤの任意の一部との当接点が、前記第1象限又は前記第2象限に配置される
ことを特徴とする弁装置。
【請求項17】
請求項15に記載の弁装置において、
前記駆動源の非駆動時に前記弁体と接することで第1全閉状態となる第1弁座が設けられる第1流路と、
前記駆動源が駆動し、回転可動角が最大となるときに前記弁体と接することで第2全閉状態となる第2弁座が設けられる第2流路と、
前記駆動源の前記駆動力を前記弁ギヤへ伝えるための中間ギヤと
を更に備え、
前記弁体が前記第1全閉状態に配置された状態であって、前記回転軸の前記基端部に固定された前記弁ギヤを、前記回転軸を中心に前記基端部の側から視た状態において、前記回転軸の前記軸線を原点とし、X軸を水平方向とし、Y軸を垂直方向とする直交座標系を想定した場合に、+X軸方向かつ+Y軸方向を第1象限、-X軸方向かつ+Y軸方向を第2象限、-X軸方向かつ-Y軸方向を第3象限、+X軸方向かつ-Y軸方向を第4象限としたとき、前記第1弁座が前記第3象限及び前記第4象限に配置され、前記弁ギヤの一部と前記全閉ストッパとの前記当接点が、前記第2象限又は前記第3象限に配置され、前記弁ギヤが反時計方向へ回転する方向に前記スプリング力が作用し、前記弁体は、前記第1全閉状態となる前記第3象限及び前記第4象限と前記第2全閉状態となる前記第2象限及び前記第3象限との間で回動するように構成され、
前記弁体が回動するときに、前記弁ギヤの歯部の任意の一部と前記中間ギヤの任意の一部との当接点が、前記第1象限又は前記第2象限に配置される
ことを特徴とする弁装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載の弁装置において、
前記弾性部材は、外圧により圧縮される圧縮代を有し、
前記ハウジングには、前記圧縮代の上限を規制するためのストッパが設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれかに記載の弁装置において、
前記シート面と前記シール面のうち少なくとも一方が曲面である
ことを特徴とする弁装置。
【請求項20】
請求項19に記載の弁装置において、
前記シート面と前記シール面の両方が曲面であり、前記シート面の曲率半径が前記シール面の曲率半径より小さい
ことを特徴とする弁装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれかに記載の弁装置において、
前記ハウジングと前記弾性部材との間に前記弾性部材を中央寄せするための中央寄せ構造が設けられる
ことを特徴とする弁装置。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれかに記載の弁装置において、
先端部と基端部を含み、前記先端部に前記弁体が一体的に設けられ、前記弁体を回動させるための回転軸と、
前記回転軸を回転させる駆動力を発生する駆動源と、
前記駆動源の非駆動時に前記弁体と接することで第1全閉状態となる第1弁座が設けられる第1流路と、
前記駆動源が駆動し、回転可動角が最大となるときに前記弁体と接することで第2全閉状態となる第2弁座が設けられる第2流路と、
前記第1弁座を前記弁体に押し付ける付勢力を有する第1弾性部材と、
前記第2弁座を前記弁体に押し付ける付勢力を有する第2弾性部材と
を備え、
前記第2弾性部材は前記第1弾性部材より変位量が大きい
ことを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、流路に設けられる弁座と、流路を開閉するために弁座に対応して設けられる弁体とを備えた弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「二重偏心弁」及び下記の特許文献2に記載される「冷却水制御弁装置」が知られている。特許文献1の二重偏心弁は、弁孔を有する弁座と、シール面が外周に形成され、弁座に対応して設けられた弁体と、流体が流れる流路を含むハウジングと、弁座と弁体が流路に配置されることと、弁体を回動させる回転軸と、弁座に設けられ、全閉時に弁体と弁座との間をシールする弾性材料より形成されるリップシールとを備える。そして、リップシールは、弁体が閉弁方向へ回動付勢されることにより、弁体との間で面圧が高められ、弁座と弁体との間の密着性を高めるようになっている。
【0003】
また、特許文献2の冷却水制御弁装置は、冷却水が流通可能な開口部が外壁に形成され、軸まわりに回転可能なバルブ(弁体)と、弁体を収容するハウジングと、ハウジングと接し、開弁時に開口部と連通することで内側を冷却水が流通可能な筒部と、筒部の軸方向に往復動可能な筒状部材であり、弁体の外壁に当接することで弁体との間を密な状態に保持可能な環状のシート面を有するシート部材(弁座)と、シート面が弁体の外壁に押し付けられるように弁座を付勢する付勢部材とを備える。そして、筒部は、軸方向における弁体側の端部に、外側筒部と、外側筒部の径方向内側に設けられる内側筒部とを含み、付勢部材と弁座は、外側筒部と内側筒部との間に環状に形成された環状収容部に設けられる。また、弁座の内周壁(径方向内側)と内側筒部の外周壁との間には、ゴム製のパッキン(シール部材)が設けられる。シール部材は、弁座の内周壁に形成された段差部に設けられ、断面V形のリップ形状に形成される。このシール部材により、弁座は、その内周壁が内側筒部の外周壁と密に接した状態で摺動し、弁座と内側筒部との間が密なシール状態で保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-66386号公報
【特許文献2】特開2020-128711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の二重偏心弁では、弁体の開閉動作回数や流体による作動圧力が増加すると、リップシールに「へたり」や摩耗が生じ、リップシールのシール性が低下して弁座と弁体との間の密着性が低下する懸念があった。また、特許文献2に記載の弁装置では、弁座が軸方向に往復動する際に、シール部材が内側筒部と密に接した状態で摺動するので、シール部材が弁座の円滑な移動を阻害していた。また、摺動によりシール部材が捩れて隙間が生じたり、シール部材に摩耗が生じたり、シール部材と内側筒部との間に異物が噛み込んだりするおそれがあり、シール部材のシール機能が低下するおそれがあった。
【0006】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、弁体との接触による弁座の摩耗を抑制し、かつ弁座と弁体との密着性を確保することを可能とした弁装置を提供することにある。また、この開示技術の第2の目的は、第1の目的に加え、弁座とハウジングとの間の隙間でシール構造が弁座の軸方向への移動を阻害することを防止し、隙間でのシール構造の機能低下を抑制することを可能とした弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、流体が流れる流路を含むハウジングと、流路に設けられ、シート面と弁孔を有する弁座と、流路に設けられ、シート面に当接可能なシール面を有し、流路を開閉するために弁座に対応して設けられる弁体とを備えた弁装置において、弁座は、その軸方向においてハウジングに対し移動可能に設けられ、弁座とハウジングとの間には、弁座を弁体に押し付ける付勢力を有する弾性部材が設けられ、弁座は、少なくともシート面が高耐摩耗材により形成されることを趣旨とする。
【0008】
上記技術の構成によれば、軸方向において移動可能にハウジングに対し設けられた弁座は、ハウジングとの間に設けられた弾性部材の付勢力により弁体に押し付けられる。ここで、弁座の少なくともシート面が高耐摩耗材により形成されるので、弁座のシート面が弁体のシール面に押し付けられて接触しても、弁座の少なくともシート面の摩耗が抑制される。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、弁座とハウジングとの間には、弁座の移動を許容する隙間が設けられ、隙間をシールするためのシール構造を更に備えたことを趣旨とする。
【0010】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、弁座とハウジングとの間には、弁座の移動を許容する隙間が設けられるが、その隙間がシール構造によりシールされる。従って、弁体が弁座に着座する全閉時にも、隙間での流路からの流体の漏れがシール構造により抑制される。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、隙間は、弁座の径方向において弁座とハウジングとの間に形成される径側隙間を含み、シール構造は、径側隙間に設けられることを趣旨とする。
【0012】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、弁体が弁座に着座する全閉時にも、隙間での流路からの流体の漏れが、径側隙間に設けられたシール構造により抑制される。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、隙間は、弁座の軸方向において弁座とハウジングとの間に形成される軸側隙間を含み、シール構造は、軸側隙間に設けられることを趣旨とする。
【0014】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、弁座とハウジングとの間の隙間のうち軸側隙間にシール構造が設けられるので、ハウジングに対し弁座がその軸方向へ移動しても、シール構造がハウジングと摺動することがない。また、弁体が弁座に接した全閉時に、ハウジングと弁座との間でシール構造の押圧力が弁座を弁体に押し付ける方向に作用する。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術において、弁座は、少なくともシート面が低摩擦係数材より形成されることを趣旨とする。
【0016】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の作用に加え、弁座の少なくともシート面が低摩擦係数材により形成されるので、弁座のシート面が弁体のシール面に押し付けられても、弁座のシート面の摩耗が抑制される。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項4に記載の技術において、シール構造は、弾性材より形成されるリップシールにより構成され、リップシールは、断面略V形をなし、弁座に保持される保持部と、先端部がハウジングに接するシールリップ部と、シールリップ部の基部から分岐したダストリップ部とを含み、シールリップ部は、その先端が流路から離れると共にハウジングへ向けて傾斜し、ダストリップ部は、その先端が流路へ近付くと共にハウジングへ向けて傾斜することを趣旨とする。
【0018】
上記技術の構成によれば、請求項4に記載の技術の作用に加え、流路から、シールリップ部の側へ侵入しようとするダストが、ダストリップ部にて侵入が規制される。
【0019】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項6に記載の技術において、ダストリップ部の内側に設けられるダストトラップ部を更に含み、ダストトラップ部は、その先端が流路から離れると共にハウジングへ向けて傾斜することを趣旨とする。
【0020】
上記技術の構成によれば、請求項6に記載の技術の作用に加え、ダストトラップ部があることで、万が一、ダストリップ部を通過したダストが、ダストトラップ部によりトラップされる。
【0021】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の技術は、請求項1乃至7のいずれかに記載の技術において、弾性部材は、金属製のスプリングであることを趣旨とする。
【0022】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至7のいずれかに記載の技術の作用に加え、弾性部材が金属製のスプリングであることから、ゴム製の弾性部材に比べて強度が高く、変位量が大きくなる。
【0023】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の技術は、請求項4に記載の技術において、弾性部材は、ゴム製のOリングであり、シール構造を兼用することを趣旨とする。
【0024】
上記技術の構成によれば、請求項4に記載の技術の作用に加え、弾性部材が、ゴム製のOリングであり、弁座とハウジングとの間の隙間のシール構造を兼用するので、シール構造を別途設ける必要がない。
【0025】
上記目的を達成するために、請求項10に記載の技術は、請求項2又は3に記載の技術において、ハウジングは、弾性部材よりも内側に流路を形成する内側壁を有し、内側壁の外周側には、弁座の少なくとも一部と弾性部材を収容する凹部が設けられ、シール構造は、内側壁と弁座との間の径側隙間に設けられることを趣旨とする。
【0026】
上記技術の構成によれば、請求項2又は3に記載の技術の作用に加え、弁座の少なくとも一部と弾性部材が凹部に収容された状態で、弾性部材よりも内側にて流路を形成する内側壁と弁座との間の径側隙間にシール構造が設けられる。従って、弁体が弁座に着座した全閉時に、弁体の周囲に作用する圧力を、ハウジングと弁座との隙間を介して弁座の軸方向一端側にて弁座を弁体に押し付ける方向に作用させることが可能となる。
【0027】
上記目的を達成するために、請求項11に記載の技術は、請求項4、6又は7に記載の技術において、ハウジングは、弾性部材よりも内側に流路を形成する内側壁を有し、内側壁の外周側には、弁座の少なくとも一部と弾性部材を収容する凹部が設けられ、凹部は底壁を含み、シール構造は、凹部の底壁と弁座との間の軸側隙間に設けられることを趣旨とする。
【0028】
上記技術の構成によれば、請求項4、6又は7に記載の技術の作用に加え、弁座とハウジングとの間の隙間のうち、凹部の底壁と弁座との間の軸側隙間にシール構造が設けられるので、ハウジングに対し弁座がその軸方向へ移動しても、シール構造がハウジングと摺動することがない。また、弁体が弁座に接した全閉時に、凹部の底壁と弁座との間でシール構造の押圧力が弁座を弁体に押し付ける方向に作用する。
【0029】
上記目的を達成するために、請求項12に記載の技術は、請求項2、4、6又は7に記載の技術において、ハウジングは、流路を形成する内壁に、流路よりも内径が大きく、弁座の少なくとも一部と弾性部材を収容する拡径部が設けられ、拡径部は流路へ向けて開いた底壁を含み、シール構造は、拡径部の底壁と弁座との間の軸側隙間に設けられることを趣旨とする。
【0030】
上記技術の構成によれば、請求項2、4、6又は7に記載の技術の作用に加え、弁座の少なくとも一部と弾性部材がハウジングの拡径部に収容された状態で、拡径部の底壁と弁座との間の軸側隙間にシール構造が設けられる。従って、弁体が弁座に着座した全閉時に、拡径部の底壁と弁座との間にて弁座の軸方向に作用するシール構造の押圧力を、弁座を弁体に押し付ける方向に作用させることが可能となる。弁座の弁孔が流路に露出し、弁座の内側に流路と隔てる内側壁が設けられない。
【0031】
上記目的を達成するために、請求項13に記載の技術は、請求項12に記載の技術において、拡径部には、弁座よりも流路の側の少なくとも一ヶ所に、弁座の軸方向への移動を案内するガイド部が設けられることを趣旨とする。
【0032】
上記技術の構成によれば、請求項12に記載の技術の作用に加え、弁座よりも流路の側の少なくと一ヶ所に、弁座の軸方向への移動を案内するガイド部が設けられるので、弁座の軸方向への移動が安定する。
【0033】
上記目的を達成するために、請求項14に記載の技術は、請求項2乃至13のいずれかに記載の技術において、シール構造は、弁座と一体に設けられることを趣旨とする。
【0034】
上記技術の構成によれば、請求項2乃至13のいずれかに記載の技術の作用に加え、シール構造が弁座と一体に設けられるので、シール構造を別途設ける必要がない。
【0035】
上記目的を達成するために、請求項15に記載の技術は、請求項1乃至14のいずれかに記載の技術において、先端部と基端部を含み、先端部に弁体が一体的に設けられ、弁体を回動させるための回転軸と、回転軸を回転させる駆動力を発生する駆動源と、回転軸の基端部に一体的に設けられ、回転軸を回転させるために駆動源から駆動力を受ける弁ギヤと、回転軸の基端部の側に配置され、回転軸の先端部を自由端部として回転軸を回転可能に片持ち支持するための軸受と、弁体が閉弁する方向へ回転軸を回転させるスプリング力を弁ギヤへ付与するためのリターンスプリングと、弁体が全閉位置に配置された状態で、回転軸と共に弁ギヤの回転を規制するために弁ギヤの一部が当接する全閉ストッパとを更に備え、駆動源の非駆動時に、弁ギヤへ付与されるスプリング力により弁ギヤの一部が全閉ストッパに当接し、その当接点を支点として弁ギヤに作用するモーメントが回転軸に作用することにより、軸受との接点を支点として回転軸を軸線の方向へ傾けて弁体を弁座に押し付けることを趣旨とする。
【0036】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至14のいずれかに記載の技術の作用に加え、弁体が全閉位置に配置された全閉状態において駆動源の駆動が停止し、弁ギヤへの駆動力の供給が停止すると、弁ギヤには、リターンスプリングのスプリング力のみが弁体を閉弁させる方向へ作用する。このとき、弁ギヤの一部と全閉ストッパとの当接点を支点として弁ギヤにモーメントが作用し、そのモーメントによる押し上げ力が回転軸の基端部に作用する。これにより、軸受との接点を支点として回転軸が軸線の方向へ傾けられ、弁体が弁座に押し付けられる。
【0037】
上記目的を達成するために、請求項16に記載の技術は、請求項15に記載の技術において、駆動源の非駆動時に弁体と接することで第1全閉状態となる第1弁座が設けられる第1流路と、駆動源が駆動し、回転可動角が最大となるときに弁体と接することで第2全閉状態となる第2弁座が設けられる第2流路と、駆動源の駆動力を弁ギヤへ伝えるための中間ギヤとを更に備え、弁体が第1全閉状態に配置された状態であって、回転軸の基端部に固定された弁ギヤを、回転軸を中心に基端部の側から視た状態において、回転軸の軸線を原点とし、X軸を水平方向とし、Y軸を垂直方向とする直交座標系を想定した場合に、+X軸方向かつ+Y軸方向を第1象限、-X軸方向かつ+Y軸方向を第2象限、-X軸方向かつ-Y軸方向を第3象限、+X軸方向かつ-Y軸方向を第4象限としたとき、第1弁座が第3象限及び第4象限に配置され、弁ギヤの一部と全閉ストッパとの当接点が、第1象限又は第4象限に配置され、弁ギヤが時計方向へ回転する方向にスプリング力が作用し、弁体は、第1全閉状態となる第3象限及び第4象限と第2全閉状態となる第1象限及び第4象限との間で回動するように構成され、弁体が回動するときに、弁ギヤの歯部の任意の一部と中間ギヤの任意の一部との当接点が、第1象限又は第2象限に配置されることを趣旨とする。
【0038】
上記技術の構成によれば、請求項15に記載の技術の作用に加え、駆動源の非駆動時には、第1弁座と弁体及び弁ギヤの一部と全閉ストッパとの当接点の配置関係から、モーメントによる回転軸を軸線の方向へ傾ける力が、弁体に対し効果的に作用する。また、駆動源が駆動して回転可動角が最大となるときには、その位置でのスプリング力により弁体が第2弁座に押し付けられる。
【0039】
上記目的を達成するために、請求項17に記載の技術は、請求項15に記載の技術において、駆動源の非駆動時に弁体と接することで第1全閉状態となる第1弁座が設けられる第1流路と、駆動源が駆動し、回転可動角が最大となるときに弁体と接することで第2全閉状態となる第2弁座が設けられる第2流路と、駆動源の駆動力を弁ギヤへ伝えるための中間ギヤとを更に備え、弁体が第1全閉状態に配置された状態であって、回転軸の基端部に固定された弁ギヤを、回転軸を中心に基端部の側から視た状態において、回転軸の軸線を原点とし、X軸を水平方向とし、Y軸を垂直方向とする直交座標系を想定した場合に、+X軸方向かつ+Y軸方向を第1象限、-X軸方向かつ+Y軸方向を第2象限、-X軸方向かつ-Y軸方向を第3象限、+X軸方向かつ-Y軸方向を第4象限としたとき、第1弁座が第3象限及び第4象限に配置され、弁ギヤの一部と全閉ストッパとの当接点が、第2象限又は第3象限に配置され、弁ギヤが反時計方向へ回転する方向にスプリング力が作用し、弁体は、第1全閉状態となる第3象限及び第4象限と第2全閉状態となる第2象限及び第3象限との間で回動するように構成され、弁体が回動するときに、弁ギヤの歯部の任意の一部と中間ギヤの任意の一部との当接点が、第1象限又は第2象限に配置されることを趣旨とする。
【0040】
上記技術の構成によれば、請求項15に記載の技術の作用に加え、駆動源の非駆動時には、第1弁座と弁体及び弁ギヤの一部と全閉ストッパとの当接点の配置関係から、モーメントによる回転軸を軸線の方向へ傾ける力が、弁体に対し効果的に作用する。また、駆動源が駆動して回転可動角が最大となるときには、 その位置でのスプリング力により弁体が第2弁座に押し付けられる。
【0041】
上記目的を達成するために、請求項18に記載の技術は、請求項1乃至17のいずれかに記載の技術において、弾性部材は、外圧により圧縮される圧縮代を有し、ハウジングには、圧縮代の上限を規制するためのストッパが設けられることを趣旨とする。
【0042】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至17のいずれかに記載の技術の作用に加え、ハウジングには、弾性部材の圧縮代の上限を規制するためのストッパが設けられるので、弾性部材に弁座を介して過度な荷重がかかっても、弾性部材の過度な圧縮がストッパにより規制される。
【0043】
上記目的を達成するために、請求項19に記載の技術は、請求項1乃至18のいずれかに記載の技術において、シート面とシール面のうち少なくとも一方が曲面であることを趣旨とする。
【0044】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至18のいずれかに記載の技術の作用に加え、シート面とシール面のうち少なくとも一方が曲面であるので、弁体又は弁座の姿勢等のずれにかかわらずシート面とシール面が密着可能となる。
【0045】
上記目的を達成するために、請求項20に記載の技術は、請求項19に記載の技術において、シート面とシール面の両方が曲面であり、シート面の曲率半径がシール面の曲率半径より小さいことを趣旨とする。
【0046】
上記技術の構成によれば、請求項19に記載の技術の作用に加え、弁座のシート面と弁体のシール面の両方を曲面にしたので、部品公差等により弁体や弁座の位置や姿勢がずれても、シール面とシート面が円形状に線接触する。また、部品公差による姿勢変化が大きい弁体につき、そのシール面の曲率半径がシート面の曲率半径よりも大きいので、シール面とシート面との線接触が確実に円形状となる。
【0047】
上記目的を達成するために、請求項21に記載の技術は、請求項1乃至20のいずれかに記載の技術において、ハウジングと弾性部材との間に弾性部材を中央寄せするための中央寄せ構造が設けられることを趣旨とする。
【0048】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至20のいずれかに記載の技術の作用に加え、ハウジングと弾性部材との間に設けられる弾性部材のための中央寄せ構造により、弾性部材が常に中央寄せされる。従って、弾性部材が弁座により圧縮されても、弾性部材の変位が均一化され、弁座に対し弾性部材の付勢力が作用する位置のずれが抑えられる。
【0049】
上記目的を達成するために、請求項22に記載の技術は、請求項1乃至21のいずれかに記載の技術において、先端部と基端部を含み、先端部に弁体が一体的に設けられ、弁体を回動させるための回転軸と、回転軸を回転させる駆動力を発生する駆動源と、駆動源の非駆動時に弁体と接することで第1全閉状態となる第1弁座が設けられる第1流路と、駆動源が駆動し、回転可動角が最大となるときに弁体と接することで第2全閉状態となる第2弁座が設けられる第2流路と、第1弁座を弁体に押し付ける付勢力を有する第1弾性部材と、第2弁座を弁体に押し付ける付勢力を有する第2弾性部材とを備え、第2弾性部材は第1弾性部材より変位量が大きいことを趣旨とする。
【0050】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至21のいずれかに記載の技術の作用に加え、駆動源の非駆動時には、弁体が第1弁座に接することで第1全閉状態となるが、第1弁座を弁体に押し付ける第1弾性部材が設けられるので、部品公差による第1全閉状態のバラツキが第1弾性部材の変位により吸収される。一方、駆動源が駆動し、回転可動角が最大となるときには、弁体が第2弁座に接することで第2全閉状態となるが、第2弁座を弁体に押し付ける第2弾性部材が設けられるので、部品公差による第2全閉状態のバラツキが第2弾性部材の変位により吸収される。ここで、駆動源の駆動時に第2弁座に作用する第2弾性部材の変位量が、駆動源の非駆動時に第1弁座に作用する第1弾性部材の変位量より大きい、すなわち第2弾性部材の硬度が相対的に小さい。従って、第2弾性部材を変位させるために、駆動源に過大な駆動力が必要なくなる。
【発明の効果】
【0051】
請求項1に記載の技術によれば、弁体との接触による弁座の摩耗を抑制することができ、かつ弁座と弁体との密着性を確保することができる。
【0052】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、全閉時に弁座とハウジングとの間の密閉性を確保することができる。
【0053】
請求項3に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、全閉時に弁座とハウジングとの間の密閉性を確保することができる。
【0054】
請求項4に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、弁座とハウジングとの間の隙間でシール構造が弁座の軸方向への移動の抵抗となることを防止できると共に、その隙間でのシール構造の機能低下を抑制することができる。また、シール構造の反力の分だけ弾性部材の付勢力を低減することができる。
【0055】
請求項5に記載の技術によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の効果に加え、弁体との接触による弁座の摩耗を抑制することができ、かつ弁座と弁体との密着性を確保することができる。
【0056】
請求項6に記載の技術によれば、請求項4に記載の技術の効果に加え、流路からシールリップ部へのダストの侵入を抑制することができ、シールリップ部でのシール不良の発生を抑制することができる。
【0057】
請求項7に記載の技術によれば、請求項6に記載の技術の効果に加え、ダストがシールリップ部の側へ侵入することをダストトラップ部により更に抑制することができる。
【0058】
請求項8に記載の技術によれば、請求項1乃至7のいずれかに記載の技術の効果に加え、弾性部材のへたりを抑制することができる。また、弁体に対する弁座への付勢力が向上し、弁座を弁体により密着させることができる。
【0059】
請求項9に記載の技術によれば、請求項4に記載の技術の効果に加え、シール構造を別途設ける必要がない分だけ弁装置の部品点数を削減することができる。
【0060】
請求項10に記載の技術によれば、請求項2又は3に記載の技術の効果に加え、弁座に作用する圧力をキャンセルすることができ、その圧力の分だけ弾性部材の付勢力を低減することができる。その結果、弁座と弁体との間の耐摩耗性を向上させることができる。また、弁体を弁座に着座させるために必要な駆動力を低減することができる。
【0061】
請求項11に記載の技術によれば、請求項4、6又は7に記載の技術と同等の効果を得ることができる。
【0062】
請求項12に記載の技術によれば、請求項2、4、6又は7に記載の技術の効果に加え、シール構造が、ハウジングに対する弁座の移動の抵抗になることを防止することができる。加えて、内側壁がない分だけ流路の内径を拡大したり、縮小したりすることができる。
【0063】
請求項13に記載の技術によれば、請求項12に記載の技術の効果に加え、弁座と弁体との密着性を向上させることができる。
【0064】
請求項14に記載の技術によれば、請求項2乃至13のいずれかに記載の技術の効果に加え、シール構造を別途設けない分だけ弁装置の部品点数を削減することができる。
【0065】
請求項15に記載の技術によれば、請求項1乃至14のいずれかに記載の技術の効果に加え、駆動源の非駆動時にも、弁体を弁座に押し付けて両者間を封止し続けることができる。
【0066】
請求項16に記載の技術によれば、請求項15に記載の技術の効果に加え、駆動源の非駆動時に、弁体を第1弁座に押し付けて両者の間の密着性を向上させることができ、駆動源が駆動して回転可動角が最大となるときに、弁体を第2弁座に押し付けて両者の間の密着性を向上させることができる。
【0067】
請求項17に記載の技術によれば、請求項15に記載の技術の効果に加え、駆動源の非駆動時に、弁体を第1弁座に押し付けて両者の間の密着性を向上させることができ、駆動源が駆動して回転可動角が最大となるときに、弁体を第2弁座に押し付けて両者の間の密着性を向上させることができる。
【0068】
請求項18に記載の技術によれば、請求項1乃至17のいずれかに記載の技術の効果に加え、過度な荷重による弾性部材のへたりを抑制することができる。また、弁体の移動を規制するために弾性部材の付勢力を大きくする必要がなく、弁座の弁体に対する耐摩耗性を向上させることができる。
【0069】
請求項19に記載の技術によれば、請求項1乃至18のいずれかに記載の技術の効果に加え、全閉時に弁座と弁体との密着性を確保することができる。
【0070】
請求項20に記載の技術によれば、請求項19に記載の技術の効果に加え、全閉時に弁座と弁体との密着性を確実に確保することができる。
【0071】
請求項21に記載の技術によれば、請求項1乃至20のいずれかに記載の技術の効果に加え、弁座と弁体との密閉性不足を防止することができる。また、弾性部材において応力集中による割れの発生を抑えることができ、弾性部材の耐久性を向上させることができる。
【0072】
請求項22に記載の技術によれば、請求項1乃至21のいずれかに記載の技術の効果に加え、第1全閉状態において弁体と第1弁座との密着性を向上させることができる。また、第2全閉状態において駆動源を高出力化する必要がなくなり、駆動源を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】第1実施形態に係り、弁装置の外観を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係り、弁装置の弁部を示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係り、弁部の第2出口流路が全閉状態の概略を示す
図2のA-A線断面図。
【
図4】第1実施形態に係り、弁部の中開度状態の概略を示す
図3に準ずる断面図。
【
図5】第1実施形態に係り、弁部の第2出口流路が全開状態の概略を示す
図3に準ずる断面図。
【
図6】第1実施形態に係り、第2弁座等につき、
図2の1点鎖線円で囲った部分の詳細を示す断面図。
【
図7】第1実施形態に係り、
図6のリップシールの部分を拡大して示す断面図。
【
図8】第1実施形態に係り、弁部の第2出口流路が全閉状態の概略を示す
図3に準ずる断面図。
【
図9】第1実施形態の対比例に係り、弁部の第2出口流路が全閉状態の概略を示す
図3に準ずる断面図。
【
図10】第2実施形態に係り、第2弁座等を示す
図6に準ずる拡大断面図。
【
図11】第3実施形態に係り、第2弁座等を示す
図6に準ずる拡大断面図。
【
図12】第4実施形態に係り、第2弁座等を示す
図6に準ずる拡大断面図。
【
図13】第5実施形態に係り、第2弁座等を示す
図6に準ずる拡大断面図。
【
図14】第6実施形態に係り、第2弁座のリップシールの部分を示す
図7に準ずる断面図。
【
図15】第6実施形態に係り、溝に組み込まれる前のリップシールのみを拡大して示す断面図。
【
図16】第6実施形態の変形例に係り、リップシールを示す
図15に準ずる断面図。
【
図17】第7実施形態に係り、第2弁座等を示す
図6に準ずる拡大断面図。
【
図18】第7実施形態に係り、第2弁座につき、コイルスプリングとリップシールが設けられる部分を拡大して示す断面図。
【
図19】第7実施形態に係り、第2弁座を凹部に組み付ける前のコイルスプリングとリップシールの状態を示す拡大断面図。
【
図20】第8実施形態に係り、第2弁座等を示す
図6に準ずる拡大断面図により示す。
【
図21】第9実施形態に係り、第2弁座等を示す
図20に準ずる拡大断面図。
【
図22】第10実施形態に係り、第2弁座等を示す
図21に準ずる拡大断面図。
【
図23】第10実施形態に係り、第2出口流路と第2弁座を
図22において矢印の方向から視て示す平面図。
【
図24】第11実施形態に係り、第2弁座等を示す
図22に準ずる拡大断面図。
【
図25】第11実施形態に係り、
図24における第2弁座と内側壁との間の作用を示す説明図。
【
図26】第12実施形態に係り、二重偏心弁の構成を備えた弁装置の外観を示す斜視図。
【
図27】第12実施形態に係り、全閉状態の弁装置を示す
図26の平断面図。
【
図28】第12実施形態に係り、全閉状態の弁装置につきハウジングから蓋部材を取り外した状態を示す背面図。
【
図29】第12実施形態に係り、全閉状態の弁座、弁体及び回転軸の概略を示す
図27のB-B線に沿った断面図。
【
図30】第12実施形態に係り、
図29における弁座、弁体及び回転軸の関係のみを示す断面図。
【
図31】第12実施形態に係り、
図28の弁ギヤの部分を、中間ギヤの一部を切断して示す背面図。
【
図32】第12実施形態に係り、
図28の弁ギヤの部分を、中間ギヤの一部を切断して示す背面図。
【
図33】第12実施形態に係り、閉弁戻し機構の主要部であって、
図31に示す回転軸、弁ギヤ及びリターンスプリング等の関係を示す模式図。
【
図34】第12実施形態に係り、閉弁戻し機構の主要部を別の角度から視て示す概略図。
【
図35】第12実施形態の変形例に係り、全閉状態の弁座、弁体及び回転軸の概略を示す
図29に準ずる断面図。
【
図36】第13実施形態に係り、全閉状態の弁装置につきハウジングから蓋部材を取り外した状態を示す
図28に準ずる背面図。
【
図37】第13実施形態に係り、弁座、弁体及び回転軸の関係のみを示す
図30に準ずる断面図。
【
図38】第13実施形態に係り、
図36の弁ギヤの部分を、中間ギヤの一部を切断して示す
図31に準ずる背面図。
【
図39】第13実施形態に係り、
図36の弁ギヤの部分を、中間ギヤの一部を切断して示す
図32に準ずる背面図。
【
図40】第13実施形態に係り、閉弁戻し機構の主要部であって、
図38に示す回転軸、弁ギヤ及びリターンスプリング等の関係を示す
図33に準ずる模式図。
【
図41】第14実施形態に係り、弁装置の主要部の構成であって弁体が弁座に着座した全閉状態を示す断面図。
【
図42】第14実施形態に係り、弁座ユニットを拡大して示す断面図。
【
図43】第14実施形態に係り、弁座がOリングを押圧した状態を示す
図42に準ずる断面図。
【
図44】第14実施形態の変形例に係り、弁座ユニットを示す
図42に準ずる断面図。
【
図45】第15実施形態の対比例に係り、弁座ユニットにおけるOリングの配置状態を示す平断面図。
【
図46】第15実施形態の対比例に係り、弁座ユニットを示す
図45のC-C線断面図。
【
図47】第15実施形態の対比例に係り、弁座ユニットを示す
図45のC-C線断面図。
【
図48】第15実施形態に係り、弁座ユニットにおけるOリングの配置状態を示す平断面図。
【
図49】第15実施形態に係り、弁座ユニットを示す
図48のD-D断面図。
【
図50】第15実施形態の変形例に係り、弁座ユニットを示す
図49に準ずる断面図。
【
図51】第16実施形態に係り、弁座ユニットと弁体の関係を示す
図43に準ずる断面図。
【
図52】第17実施形態に係り、弁部の概略的な構成を示す断面図。
【
図53】第18実施形態に係り、弁部の概略的な構成を示す
図52に準ずる断面図。
【
図54】第18実施形態に係り、
図53の1点鎖線四角で囲った部分を拡大して示す断面図。
【
図55】第19実施形態に係り、弁部の概略的な構成を示す
図53に準ずる断面図。
【
図56】第19実施形態に係り、第1全閉状態へ向けて回動する弁体の動きを示す断面図。
【
図57】第19実施形態に係り、第1全閉状態へ向けて回動する弁体の動きを示す断面図。
【
図58】第19実施形態に係り、第1全閉状態へ向けて回動する弁体の動きを示す断面図。
【
図59】第20実施形態に係り、弁部の概略的な構成を示す
図52に準ずる断面図により示す
【
図60】第21実施形態に係り、弁部の概略的な構成を示す断面図。
【
図61】第21実施形態に係り、
図60の1点鎖線四角で囲った部分を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、この開示技術における弁装置を具体化したいくつかの実施形態について説明する。
【0075】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0076】
[ボールバルブの構成について]
図1に、この実施形態の弁装置1の外観を斜視図により示す。
図2に、弁装置1の弁部2を断面図により示す。
図2は、弁部2を駆動部3から分離した状態を示す。
図1、
図2に示すように、この弁装置1は、弁部2と、駆動部3とを備える。弁部2は、水やガス等の流体が流れる流路11を有する金属製のハウジング12を含む。流路11は、一つの入口流路13と、二つの出口(第1出口流路14と第2出口流路15)と、それら入口流路13及び出口流路14,15が共に連通する弁室16とを有する。
図2に示すように、第1出口流路14の一端側(弁室16の側)には、円環状の第1弁座17と、その付属部材18が設けられる。第2出口流路15の一端側(弁室16の側)には、円環状の第2弁座19と、その付属部材20が設けられる。また、弁室16には、各出口流路14,15を開閉するために、球状の弁体21が、各弁座17,19に対応して設けられる。弁体21は、その軸線L0を中心に回動可能に設けられる。入口流路13は、この弁体21の軸線L0に沿う方向に伸び、各出口流路14,15は、この軸線L0と交差する方向に伸びる。
【0077】
弁体21には、その軸線L0上に回転軸22が設けられる。この回転軸22は、ハウジング12に対し、軸受23とリップシール24を介して回転可能に支持される。弁体21には、入口流路13に常時連通する入口通路21aと、第1出口流路14に連通可能な第1出口通路21bと、第2出口流路15に連通可能な第2出口通路21cが形成される。これら各通路21a~21cは、弁体21の中心にて互いに合流する。また、この実施形態では、第1出口流路14と第2出口流路15が、弁室16を挟んで互いに対向して配置される。これに伴い、第1弁座17と第2弁座19が、弁体21を挟んで互いに対向して配置される。弁体21の表面は、各弁座17,19のシート面(
図6に、第2弁座19のシート面19aのみ図示)に接するシール面21dとなっている。この場合、弁体21のシール面21dは曲面となっている。
【0078】
図3に、弁部2の第2出口流路15が全閉状態の概略を、
図2のA-A線断面図により示す。
図4に、弁部2の中開度状態の概略を、
図3に準ずる断面図により示す。
図5に、弁部2の第2出口流路15が全開状態の概略を、
図3に準ずる断面図により示す。
図3~
図5に示すように、第1出口通路21bと第2出口通路21cは、平面視で互いに所定の角度(鈍角)をもって交差する。そして、この球状の弁体21が、回転軸22を中心に回動することにより、
図3の全閉状態、
図4の中間開度状態及び
図5の全開状態に配置される。
図3~
図5において、矢印Z1は、流体の流れる方向を示す。
【0079】
図1、
図2に示すように、駆動部3は、弁体21を駆動するためにモータ及び減速機構を内蔵する。減速機構は、弁部2の回転軸22に連結される駆動軸25を有する。そして、モータの回転力が減速機構で減速され、駆動軸25を介して回転軸22に伝達されるようになっている。ここでは、駆動部3の内部構成に関する詳しい説明は省略する。
【0080】
[弁座に関する構成について]
次に、各弁座17,19に関する構成について詳しく説明する。
図6に、この実施形態の第2弁座19等につき、
図2の1点鎖線円K1で囲った部分の詳細を断面図により示す。
図6は、便宜上、
図2の配置状態を時計方向へ90°回転させて示す。
図6に示すように、第2弁座19は、その軸方向D1(
図6の垂直方向)において、ハウジング12に対し移動可能に設けられる。第2弁座19とハウジング12との間には、同弁座19を弁体21に押し付ける付勢力を有する弾性部材31が設けられる。この実施形態で、弾性部材31は、金属製のコイルスプリング32により構成される。この実施形態で、第2弁座19は、シート面19aと弁孔19bを有する。
図6において、シート面19aは、弁孔19bへ向かって下方へ傾斜する。この実施形態では、第2弁座19は、PPS等の樹脂より形成される。この実施形態において、第2弁座19のシート面19aには、層状の高耐摩耗材33が形成される。この実施形態では、高耐摩耗材33として、低摩擦係数材である四フッ化エチレン樹脂である「PTFE」が使用される。「PTFE」は一例である。
【0081】
図6に示すように、ハウジング12は、コイルスプリング32よりも内側にて、第2出口流路15を形成する内側壁12aを有する。この内側壁12aの外側には、第2弁座19の一部とコイルスプリング32を収容するために環状の凹部12bが設けられる。この凹部12bは、底壁12baを含む。この底壁12baは、段差を有し、底壁12ba外周側が内周側よりも深くなっている。
図6において、内側壁12aの上端は、第2弁座19のシート面19a(高耐摩耗材33)の近傍まで伸びており、この上端が弁体21の移動を規制するストッパ12aaとなっている。また、このストッパ12aaの外側(凹部12b側)には、第2弁座19が凹部12bの外へ移動するのを規制する弁座止め34が設けられる。
【0082】
凹部12bにおいて、第2弁座19とハウジング12との間には、第2弁座19の移動を許容する隙間35が設けられる。凹部12bには、この隙間35をシールするためのシール構造36が設けられる。この実施形態において、シール構造36は、ゴム材(EPDM)より形成されたリップシール37により構成される。隙間35は、第2弁座19の軸方向D1において第2弁座19とハウジング12との間に形成される軸側隙間35aと、第2弁座19の径方向D2において同弁座19とハウジング12との間に形成される径側隙間35bとを含む。この実施形態で、リップシール37は、底壁12baの内周側と第2弁座19との間の軸側隙間35aに設けられる。
図7には、
図6のリップシール37の部分を拡大して断面図により示す。
図6、
図7において、第2弁座19の底面には、環状の溝19cが形成される。リップシール37は、この溝19cに嵌め込まれる。リップシール37は、断面略V形をなし、溝19cに嵌め込まれて保持される保持部37aと、先端部が底壁12baに接するシールリップ部37bとを含む。保持部37aは、その全表面が溝19cの底面に接している。シールリップ部37bは、その先端部が第2出口流路15から径方向に離れる方向へ傾斜して底壁12baに接する。コイルスプリング32は、凹部12bの底壁12baと第2弁座19の底面との間の軸側隙間35aに設けられる。コイルスプリング32とリップシール37は、第2弁座19に関する上記した付属部材20に相当する。
【0083】
上記には、第2弁座19とその付属部材20の構成について説明したが、第1弁座17とその付属部材18の構成についても、第2弁座19とその付属部材20の構成と同じであり、ここでは、その説明を省略する。以下に説明する第2~第11の実施形態においても同様である。
【0084】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、ハウジング12に対し軸方向D1へ移動可能に設けられた第2弁座19は、ハウジング12との間に設けられた弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力により弁体21に押し付けられる。ここで、第2弁座19のシート面19aが高耐摩耗材33(低摩擦係数材)により形成されるので、第2弁座19のシート面19aが弁体21のシール面21dに押し付けられても、同弁座19のシート面19aの摩耗が抑制される。このため、弁体21との接触による第2弁座19の摩耗を抑制することができ、かつ第2弁座19と弁体21との密着性を確保することができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0085】
この実施形態の構成によれば、
図6に示すように、弁体21が第2弁座19の弁孔19bを塞ぐ第2全閉状態では、弁体21と第2弁座19の外側、すなわち弁室16と第2出口流路15との間に圧力差が生じ、弁室16の中の圧力が第2出口流路15の圧力よりも大きくなる。ここで、第2弁座19とハウジング12との間には、同弁座19の移動を許容する隙間35が設けられるが、その圧力差により、弁室16の中の流体が隙間35を通じて第2出口流路15へ漏れ流れるおそれがある。しかし、この実施形態では、その隙間35にシール構造36(リップシール37)が設けられるので、弁体21が第2弁座19に接する全閉時にも、隙間35での第2出口流路15への流体の漏れがシール構造36(リップシール37)により抑制される。このため、全閉時に第2弁座19とハウジング12との間の密閉性を確保することができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0086】
この実施形態の構成によれば、第2弁座19とハウジング12との間の隙間35のうち第2弁座19の底面と凹部12bの底壁12baとの間の軸側隙間35aにシール構造36(リップシール37)が設けられるので、ハウジング12に対し第2弁座19が
図6の上下方向(軸方向D1)へ移動しても、シール構造36(リップシール37)が凹部12bの内壁(ハウジング12)と摺動することがない。すなわち、第2弁座19が上下方向(軸方向D1)へ移動するときの、ハウジング12とシール構造36(リップシール37)との間の摺動抵抗が非常に(無視できるほどに)小さくなると共に、摺動抵抗のバラツキ(公差幅)も小さくなる。このため、第2弁座19とハウジング12との間の隙間35でシール構造36(リップシール37)が第2弁座19の軸方向D1への移動の抵抗となることを防止できると共に、その隙間35でのシール構造36(リップシール37)の機能低下を抑制することができる。また、シール構造36(リップシール37)との摺動がない分だけ、第2弁座19を弁体21へ押し付けるための、弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力を極力小さくできる。これにより、摺動抵抗のバラツキ(公差幅)が小さくなる分だけ、弾性部材31(コイルスプリング32)に要求される付勢力の最大値が小さくなり、第2弁座19の摩耗を低減することもできる。更に、第2弁座19の底面と弾性部材31(コイルスプリング32)との接触応力を緩和することができ、第2弁座19の底面に弾性部材31(コイルスプリング32)を受ける板を設ける必要がなくなる。更に、凹部12bへ第2弁座19を組み付けるときに、シール構造36(リップシール37)を圧入することがないので、第2弁座19の組み付け性を向上させることができる。加えて、弁体21が第2弁座19に接した全閉時に、凹部12bの底壁12baと第2弁座19との間でシール構造36(リップシール37)それ自体の反力が第2弁座19を弁体21へ押し付ける付勢力として作用する。このため、その反力の分だけ弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力を低減することができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0087】
この実施形態の構成によれば、弾性部材31が金属製のコイルスプリング32であることから、ゴム製の弾性部材に比べて強度が高く、変位量が大きくなる。このため、弾性部材31のへたりを抑制することができる。また、弁体21に対する各弁座17,19への付勢力が向上し、各弁座17,19を弁体21により密着させることができる。
【0088】
この実施形態の構成によれば、第2弁座19よりも第2出口流路15の側に内側壁12aを設け、第2弁座19の軸方向D1への移動を案内するようにしたので、第2弁座19の軸方向D1への移動が安定する。このため、第2弁座19と弁体21との密着性を向上させることができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0089】
この実施形態の構成によれば、内側壁12aの上端が、第2弁座19のシート面19aの近傍まで筒状に伸びており、その上端が弁体21の移動を規制するストッパ12aaとなっている。すなわち、ハウジング12には、弁体21が第2弁座19を押圧する方向へ変位したときに、弁体21が突き当たることで弁体21のそれ以上の変位を、すなわち弾性部材31(コイルスプリング32)の圧縮代の上限を規制するストッパ12aaが設けられる。従って、弁体21から第2弁座19に過度な荷重がかかっても、弾性部材31(コイルスプリング32)の過度な圧縮がストッパ12aaにより規制される。このため、過度な荷重による弾性部材31(コイルスプリング32)のへたりを抑制することができる。また、弁体21の移動を規制するために弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力を大きくする必要がなく、第2弁座19の弁体21に対する耐摩耗性を向上させることができる。このストッパ12aaについては、第2弁座19の弁孔19bの全周にわたって設ける必要はなく、所定の角度間隔で配置された複数のリブを設けてもよい。その場合、弁体21とストッパ12aaとの間の摺動抵抗を低減することができ、弁体21を回転駆動させるモータトルクを低減することもできる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0090】
この実施形態の構成によれば、第2弁座のシート面19aと弁体21のシール面21dのうちシール面21dが曲面であるので、弁体21又は第2弁座19の姿勢等のずれにかかわらず、シート面19aとシール面21dが密着可能となる。このため、第2弁座19と弁体21との密着性を確保することができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0091】
この実施形態の構成によれば、弁部2において、第1弁座17と第2弁座19が、弁体21を挟んで互いに対抗して配置される。また、各弁座17,19と弁体21との密着性を高めるために、各弁座17,19のシート面19aとは反対側の底面に弾性部材31(コイルスプリング32)が設けられる。このため、
図8に示すように、互いに対向して配置された第1弁座17と第2弁座19につき、それらの弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力が、矢印Z2,Z3で示すように互いに方向性を打ち消し合い弁体21を弁室16の中央に保持するように作用する。しかも、弁体21の外形が球状であることから、弁体21が弁室16の中央からずれようとしても、各弁座17,19の弾性部材31(コイルスプリング32)の機能により、各弁座17,19のシート面19aを弁体21の表面に密着させることができ、流体の漏れ悪化を抑制することができる。これに対し、
図9に対比例で示すように、第1出口流路14と第2出口流路15が対向しない場合は、第1弁座17と第2弁座19が互いに対向しないので、それらのコイルスプリングの付勢力が、互いに方向性を打ち消し合うことなく弁体21に作用する。このため、弁体21が矢印Z4の方向へ付勢され、弁体21が弁室16の中央からずれ、流体の漏れを悪化させるおそれがある。
図8は、この実施形態に係り、弁部2の第2出口流路15が全閉状態の概略を、
図3に準ずる断面図により示す。
図9は、対比例に係り、弁部2の第2出口流路15が全閉状態の概略を、
図3に準ずる断面図により示す。
【0092】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0093】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で第1実施形態と異なる。
図10に、この実施形態の第2弁座19等につき、
図6に準ずる拡大断面図により示す。この実施形態では、
図10に示すように、弁座止め34は、凹部12bの開口縁であって第2弁座19の外周面19dに配置される。また、この実施形態では、
図10に示すように、高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)は、第2弁座19のシート面19aに加え、第2弁座19の弁孔19bと外周面19dにもそれぞれ設けられる。ただし、第2弁座19の外周面19dであって、
図6の上部には、弁座止め34との干渉を避けるために、高耐摩耗材33は設けられていない。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0094】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態では、高耐摩耗材33が、第2弁座19のシート面19aに加え、第2弁座19の弁孔19bの内周面と外周面19dにも設けられる。このため、第2弁座19が凹部12bにて移動するとき、第2弁座19の内周面及び外周面19dとハウジング12との間の摺動抵抗及び接触摩耗を低減することができ、その分だけ、第2弁座19とハウジング12との間のトータルな接触摩耗を低減することができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0095】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0096】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で第2実施形態と異なる。
図11には、この実施形態の第2弁座19等につき、
図6に準ずる拡大断面図により示す。
図11に示すように、この実施形態では、第2弁座19の全体が、高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)により形成される。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0097】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、各弁座17,19の全体が高耐摩耗材33により形成されるので、第2実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。特に、この実施形態では、各弁座17,19の全体が高耐摩耗材33のみで形成されるので、別材料で形成された弁体の表面に高耐摩耗材を設ける場合と比べ、各弁座17,19の製造を簡略化することができる。
【0098】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0099】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で前記第2及び第3の実施形態と異なる。
図12には、この実施形態の第2弁座19等につき、
図6に準ずる拡大断面図により示す。この実施形態で、
図12に示すように、第2弁座19が、断面L形をなす金環38を心材として設けたゴム材(EPDM)により形成される。また、第2弁座19のゴム材の表面のほぼ全部が、被膜状の高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)により覆われる。この実施形態で、第2弁座19の底面の溝19cは、被膜状の高耐摩耗材33により覆われておらず、その溝19cには、金環38の一部が露出している。シール構造36(リップシール37)は、この金環38の露出面に接して設けられる。また、第2弁座19の、弁体21と接する先端部の近傍には、金環38は設けられていない。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0100】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、ゴム材(EPDM)により形成された第2弁座19の表面のほぼ全部が高耐摩耗材33の被膜で覆われるので、第2弁座19の表面が摩耗し難くなる。このため、凹部12bにて第2弁座19が移動しても、第2弁座19と弁体21との間、第2弁座19とハウジング12との間の摺動摩耗を抑制することができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0101】
この実施形態の構成によれば、第2弁座19がゴム材(EPDM)により形成されるので、第2弁座19が樹脂材(PPS等)により形成される場合と比べ、第2弁座19のシート面19aに弾性機能が付与される。このため、球状の弁体21の表面に公差や凹凸があっても、同弁座19のシート面19aと弁体21との密着性を高めることができる。また、第2弁座19には、その先端部以外に、断面L形をなす金環38が心材として内蔵されるので、ほぼ全部がゴム材により形成された第2弁座19ではあるものの、金環38によって同弁座19の強度を確保することができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0102】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0103】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、弾性部材31(コイルスプリング32)よりも内側に形成された内側壁12aを削除すると共に、その分だけ第2出口流路15の内径を拡大した点で第2実施形態と異なる。
図13に、この実施形態の第2弁座19等につき、
図6に準ずる拡大断面図により示す。この実施形態では、
図13において、ハウジング12は、第2出口流路15を形成する内壁に、内径が大きく、第2弁座19、弾性部材31(コイルスプリング32)及びシール構造36(リップシール37)を収容する拡径部12cが設けられる。拡径部12cは、第2出口流路15へ向けて開いた底壁12caを含む。第2出口流路15の径方向(
図13の左右方向)における底壁12caの幅は、第2弁座19等の径方向(
図13の左右方向)の幅とほぼ同じに設定される。第2弁座19の溝19cに設けられたシール構造36(リップシール37)は、拡径部12cの底壁12caと同弁座19との間の軸側隙間35aに設けられる。第1弁座17についても第2弁座19と同じである。
【0104】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、第2弁座19の少なくとも一部と弾性部材31(コイルスプリング32)がハウジング12の拡径部12cに収容された状態で、拡径部12cの底壁12caと同弁座19との間の軸側隙間35aにシール構造36(リップシール37)が設けられる。従って、弁体21が第2弁座19に接した全閉時に、拡径部12cの底壁12caと同弁座19との間にて同弁座19の軸方向D1に作用するシール構造36(リップシール37)の押圧力を、同弁座19を弁体21に押し付ける方向に作用させることが可能となる。また、第2弁座19の内側に第2出口流路15と隔てる内側壁12aが設けられておらず、同弁座19の弁孔19bが第2出口流路15に露出している。このため、シール構造36(リップシール37)が、ハウジング12に対する第2弁座19の移動の抵抗になることを防止することができる。加えて、内側壁12aが設けられない分だけ第2弁座19のシート径を維持した状態で第2出口流路15の内径を拡大したり、第2出口流路15の内径を維持した状態で第2弁座19のシート径を縮小したりすることができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0105】
この実施形態の構成によれば、内側壁12aが設けられないので、第2弁座19のハウジング12に対する摺動抵抗を低減することができる。また、第2弁座19の弁孔19bの内径を第2実施形態のそれと同じにした場合、第2出口流路15の内径を第2実施形態よりも大きくすることができる。これにより、第2出口流路15における流体の流量を増やすことができる。一方、内側壁が設けられない分だけ、第2出口流路15の内径と第2弁座19の外径及び内径を第2実施形態のそれよりも小さくすることができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。これにより、球状の弁体21を含め、弁部2の小型化を図ることができる。
【0106】
[第5実施形態の変形例について]
ここで、第5実施形態の変形例について説明する。この実施形態の構成に加え、例えば、
図13において、第2弁座19よりも第2出口流路15の側の少なくと一ヶ所に、同弁座19の軸方向D1への移動を案内するガイド部(図示略)を設けることができる。このガイド部は、第2弁座19よりも第2出口流路15の側にて、同出口流路15の内壁を、弁孔19bに沿って平行に伸びる複数本のリブにより形成することができる。このガイド部により、第2弁座19をその軸方向D1へ安定的に移動させることができる。前記各実施形態で説明した内側壁12aは、このガイド部材を第2弁座19の弁孔19bの全周にわたって設けた場合に相当する。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0107】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0108】
この実施形態は、リップシール37の形状の点で第5実施形態と異なる。第5実施形態では、各弁座17,19を対応する各出口流路14,15から隔てていた内側壁12aを削除したことから、シール構造36(リップシール37)が同出口流路14,15に露出し、同出口流路14,15を流れる流体が直にリップシール37のシールリップ部37bに侵入することになる。そのため、流体に異物等のダストが混入していた場合、シールリップ部37bにダストが混入し、シール不良等の不具合を発生させるおそれがある。そこで、この実施形態では、リップシール37の形状を以下のように改良した。
【0109】
[リップシールの構成について]
図14には、この実施形態に係り、第2弁座19のリップシール39の部分につき、
図7に準ずる断面図により示す。
図15には、この実施形態に係り、溝19cに組み込まれる前のリップシール39のみを拡大して断面図により示す。
図14、
図15に示すように、この実施形態においてシール構造36を構成するリップシール39は、リップシール37と同様、保持部39aとシールリップ部39bを含み、それに加え、シールリップ部39bの基部から分岐したダストリップ部39cを含む。シールリップ部39bは、その先端が第2出口流路15から離れると共に底壁12caへ向けて傾斜するのに対し、ダストリップ部39cは、その先端が第2出口流路15へ近付くと共に底壁12caへ向けて傾斜する。第1弁座17のリップシール39についても第2弁座19のそれと同じである。
【0110】
図15に示すように、この実施形態では、ダストリップ部39cの厚みt2は、シールリップ部39bの厚みt1よりも小さくなっている。また、シールリップ部39bは、底壁12caとの間で十分なシール機能を発揮するために、底壁12caとの間で高い面圧を発生できる弾性を有する。これに対し、ダストリップ部39cは、底壁12caとの間では、シール機能が不要なので、底壁12caとの間で面圧を発生させるだけの弾性を有さない。ダストリップ部39cに要求される機能は、流体に混入したダストをシールリップ部39bの側へ侵入させないことなので、
図15において、シールリップ部39bの下端とダストリップ部39cの下端との間には、差違t3が設けられる。この差違t3は、流体に混入したダスト径未満の大きさであればよい。従って、シールリップ部39bに弁室16の圧力が作用し、ダストリップ部39cに流体の圧力が作用した状態では、
図14に矢印で示すように、シールリップ部39bと底壁12caとの間のシール面圧Psは、ダストリップ部39cと底壁12caとの間のダスト面圧Pdよりも高い。第1弁座17のリップシール39についても第2弁座19のそれと同じである。
【0111】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、リップシール39は、リップシール37と同様、保持部39aとシールリップ部39bを含み、それに加え、シールリップ部39bの基部から分岐し、その先端が各出口流路14,15へ近付くと共に底壁12caへ向けて傾斜するダストリップ部39cを含む。従って、各出口流路14,15から、シールリップ部39bの側へ侵入しようとするダストが、ダストリップ部39cにて侵入が規制される。このため、各出口流路14,15からシールリップ部39bへのダストの侵入を抑制することができ、シールリップ部39bでのシール不良の発生を抑制することができる。
【0112】
[第6実施形態の変形例について]
ここで、第6実施形態の変形例について説明する。
図16には、リップシール39を、
図15に準ずる断面図により示す。この変形例のリップシール39では、ダストリップ部39cの内側に、ダストトラップ部39dが設けられる。このダストトラップ部39dは、その先端が各出口流路14,15から離れると共に底壁12caへ向けて傾斜する。従って、このダストトラップ部39dがあることで、万が一、ダストリップ部39cを通過したダストが、ダストトラップ部39dによりトラップされる。このため、ダストがシールリップ部39bの側へ侵入することをダストトラップ部39dにより更に抑制することができる。
【0113】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0114】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で第1実施形態と異なる。
図17に、この実施形態の第2弁座19等につき、
図6に準ずる拡大断面図により示す。この実施形態では、
図17に示すように、第2弁座19の底面に形成された環状の溝19cの深さが、第1実施形態のそれよりも深くなっており、その溝19cには弾性部材31を構成するコイルスプリング32とシール構造36を構成するリップシール40が組み込まれる。
【0115】
図18には、この実施形態の第2弁座19につき、弾性部材31(コイルスプリング32)とシール構造36(リップシール40)が設けられる部分を拡大した断面図により示す。
図19には、この実施形態の第2弁座19を凹部12bに組み付ける前の弾性部材31(コイルスプリング32)とシール構造36(リップシール40)の状態を拡大断面図により示す。
図18、
図19に示すように、シール構造36(リップシール40)は、断面略チャネル形状を有し、閉じた底部40aと、互いに開いた二つの端部40b,40cを含む。このシール構造36(リップシール40)は、底部40aが凹部12bの底壁12baに当接し、二つの端部40b,40cが溝19cの奥へ向けて配置される。両端部40b,40cは、可撓性を有し、外方へ傾斜する形状を有する。両端部40b,40cは、その撓み分が溝19cへ圧入するときの圧入代となっている。また、
図18、
図19に示すように、両端部40b,40cの外側であって、溝19cの内壁に接する部分は、溝19cの内壁との接触面積を減らすために角部となっている。更に、
図18、
図19において、一方の端部40bが溝19cの内壁と対向する外面であって、その角部より下側には、溝19cの内壁との摺動面積を減らすために金環41が設けられる。加えて、溝19cの奥には、その溝19cと、第2弁座19とハウジング12との間の隙間35(径側隙間35b)との間を連通させる連通孔19eが形成される。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0116】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、第2弁座19が弁体21に対し移動するときに、シール構造36(リップシール40)と溝19cの内壁との間で多少の摺動が生じるものの、第2弁座19の外側(弁室16)の圧力が、連通孔19eを通じて溝19cの中に作用する。このため、シール構造36(リップシール40)について、溝19cの内壁に対する摺動抵抗を低減することができる。また、弁室16の圧力が、シール構造36(リップシール40)をハウジング12の凹部12bの底壁12baに押し付ける力として作用する。このため、その圧力の分だけ弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力を小さくすることができる。加えて、第2弁座19を凹部12bに組み付ける際には、
図19に示すように、弾性部材31(コイルスプリング32)を溝19cに組み入れた状態で、シール構造36(リップシール40)を溝19cに圧入して保持することで、弾性部材31(コイルスプリング32)が伸びた状態でシール構造36(リップシール40)に保持される。このため、弾性部材31(コイルスプリング32)とシール構造36(リップシール40)を第2弁座19の溝19cに組み入れた状態で、これらを一緒にハウジング12の凹部12bに組み付けることができる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0117】
<第8実施形態>
次に、第8実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0118】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で前記各実施形態と異なる。
図20には、この実施形態の第2弁座19等につき、
図6に準ずる拡大断面図により示す。
図20に示すように、第2弁座19は、断面L形をなすように高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)としての「PTFE」により形成される。この実施形態で、シール構造36としてのリップシール37は、第2弁座19の弁孔19bの側、すなわち内側壁12aと対向する側にて内側壁12aとの間の径側隙間35bに設けられる。また、このリップシール37は、弁座止め34によりその移動が規制され、シールリップ部37bの先端が第2弁座19の内壁に接するように設けられる。また、弾性部材31としてのコイルスプリング32は、円環状で金属製の受け板42を介して凹部12bの底壁12baと第2弁座19との間に設けられる。
【0119】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、基本的には、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、弁体21が各弁座17,19に接する全閉時にも、隙間35での各出口流路14,15への流体の漏れが、径側隙間35bに設けられたシール構造36(リップシール37)により抑制される。このため、全閉時に各弁座17,19とハウジング12との間の密閉性を確保することができる。
【0120】
この実施形態の構成によれば、各弁座17,19の少なくとも一部と弾性部材31(コイルスプリング32)が凹部12bに収容された状態で、弾性部材31(コイルスプリング32)よりも内側にて各出口流路14,15を形成する内側壁12aと各弁座17,19との間の径側隙間35bにシール構造36(リップシール37)が設けられる。従って、弁体21が各弁座17,19に接した全閉時に、弁体21の周囲(弁室16)に作用する圧力を、ハウジング12と各弁座17,19との隙間35を介して各弁座17,19の軸方向D1における一端(底面)側にて各弁座17,19を弁体21に押し付ける方向に作用させることが可能となる。例えば、
図20において、弁室16の圧力が、第2弁座19を下方へ押圧するように作用するが、同じく弁室16の圧力が、第2弁座19とハウジング12との間の隙間35を介して、第2弁座19を上方へ押圧するように作用する。このため、各弁座17,19に作用する弁室16の圧力をキャンセルすることができ、弁室16の方が圧力が高いので、その圧力の分だけ更に弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力を低減することができる。その結果、各弁座17,19と弁体21との間の耐摩耗性を向上させることができる。また、弁体21を各弁座17,19に密着させるために必要な駆動力を低減することができる。また、リップシール37の摺動部が高耐摩耗材(PTFE)19bで摺動するので、その摺動部の摩耗を抑制することができる。
【0121】
<第9実施形態>
次に、第9実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0122】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で前記各実施形態と異なる。
図21に、この実施形態の第2弁座19等につき、
図20に準ずる拡大断面図により示す。この実施形態で、
図21に示すように、第2弁座19が、断面L形をなす金環38を心材として設けた高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)としての「PTFE」により形成される。この実施形態では、シール構造36は、第2弁座19の弁孔19bの側、すなわち内側壁12aと対向する側にて第2弁座19と一体にシールリップ形状に形成される。また、このシール構造36は、第2弁座19と内側壁12aとの間の径側隙間35bにて、その先端が内側壁12aに接するように設けられる。また、弾性部材31としてのコイルスプリング32は、円環状で金属製の受け板42を介して凹部12bの底壁12baと第2弁座19との間に設けられる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0123】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、基本的には、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態でも、内側壁12aと各弁座17,19との間の径側隙間35bにシール構造36が設けられる。従って、弁体21が各弁座17,19に接した全閉時に、弁室16に作用する圧力を、ハウジング12と各弁座17,19との間の隙間35を介して各弁座17,19の軸方向D1における一端(底面)側にて各弁座17,19を弁体21に押し付ける方向に作用させることが可能となる。このため、各弁座17,19に作用する弁室16の圧力をキャンセルすることができ、弁室16の方が圧力が高いので、その圧力の分だけ更に弾性部材31(コイルスプリング32)の付勢力を低減することができる。その結果、各弁座17,19と弁体21との間の耐摩耗性を向上させることができる。また、弁体21を各弁座17,19に着座させるために必要な駆動力を低減することができる。
【0124】
この実施形態の構成によれば、シール構造36が各弁座17,19と一体に設けられるので、シール構造36を別途設ける必要がない。このため、シール構造36を別途設けない分だけ弁装置1の部品点数を削減することができる。
【0125】
<第10実施形態>
次に、第10実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0126】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で第9実施形態と異なる。第9実施形態では、第2弁座19の金環38以外の部分が、高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)により形成されたので、ヤング率が高く、伸びが微少なため、ハウジング12の凹部12bに対する第2弁座19の組み付けにおいて、部品公差の縮小が求められることになった。また、わずかな寸法差によりシール構造36の面圧が大きく変化することになった。このため、シール構造36による面圧の下限を保証しようとすると、その面圧の上限の上昇が避けられなくなる。その結果、内側壁12aに対するシール構造36の摺動抵抗が大きくなるおそれがあった。そこで、この実施形態では、各弁座17,19の構成を次のように改良した。
【0127】
図22に、この実施形態の第2弁座19等につき、
図21に準ずる拡大断面図により示す。
図23には、第2出口流路15と第2弁座19を、
図22において矢印Z5の方向から視た平面図により示す。この実施形態で、
図22に示すように、第2弁座19は、断面L形をなす金環38を心材として設けたゴム材43と、そのゴム材43の上側を覆う高耐摩耗材33としての「PTFE」により形成される。この実施形態では、シール構造36は、ゴム材43の内側、すなわち内側壁12aと対向する側にゴム材43と一体にリップ形状に形成される。このシール構造36は、第2弁座19と内側壁12aとの間の径側隙間35bにて、その先端が内側壁12aに接するように設けられる。このように、シール構造36を高耐摩耗材33よりもヤング率の低いゴム材43と一体に形成することで、内側壁12aに対するシール構造36の摺動抵抗を低減した。また、弾性部材31としてのコイルスプリング32は、第2弁座19の底面に露出する金環38の一部を介して凹部12bの底壁12baと第2弁座19との間に設けられる。このようにすることで、第9実施形態で設けた金属製の受け板42を削除している。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0128】
この実施形態では、弁座止め34と第2弁座19との組み付け方の点でも第9実施形態と異なる。すなわち、この実施形態では、弁座止め34に、第2弁座19の抜け止めの機能に加え、同弁座19の回り止めの機能を追加した。
図23に示すように、この実施形態では、弁座止め34は、内側壁12aの周方向に等角度間隔に複数(3つ)配置され、第2弁座19の高耐摩耗材33には、各弁座止め34に対応して凹み19fが形成される。そして、各弁座止め34の一部が凹み19fの中に配置される。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0129】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、基本的には、第9実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、弁座止め34による各弁座17,19の回り止め機能を追加したので、同弁座17,19が回転することで生じていた、球状の弁体21との接触位置ずれが無くなる。このため、全閉時の各弁座17,19と弁体21との間のシール不良を抑制することができる。
【0130】
<第11実施形態>
次に、第11実施形態であって、ボールバルブの構成を備えた弁装置1について図面を参照して詳細に説明する。
【0131】
[弁装置の構成について]
この実施形態は、各弁座17,19とその付属部材18,20の構成の点で第10実施形態と異なる。第10実施形態では、各弁座17,19を構成するゴム材43と一体にシール構造36を形成することで、ゴム材43の弾性特性を有効に活用し、シール構造36の摺動性とシール性を確保した。そこで、この実施形態でも、第10実施形態と同等の機能を狙って各弁座17,19の構成を次のように改良した。
【0132】
図24には、この実施形態の第2弁座19等につき、
図22に準ずる拡大断面図により示す。
図25には、
図24における第2弁座19と内側壁12aとの間の作用を説明図により示す。この実施形態で、
図24、
図25に示すように、第2弁座19は、その本体を形成するゴム材43と、ゴム材43の表面全体を膜状に覆う高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)とを含む。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0133】
この実施形態で、第2弁座19の内側、すなわち内側壁12aと対向する側には、環状に伸びる2列の突条19gがゴム材43に形成される。突条19gの尖った先端は、内側壁12aの内壁に接触するようになっている。突条19gの表面も高耐摩耗材33により覆われる。この突条19g及びそれを覆う高耐摩耗材33は、この開示技術におけるシール構造36を構成する。また、弾性部材31を構成するコイルスプリング32は、第2弁座19の底面に設けられた金属製の受け板42を介して凹部12bの底壁12baと同弁座19との間に設けられる。第1弁座17についても第2弁座19と同様である。
【0134】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置1の構成によれば、第10実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態の構成によれば、第2弁座19と突条19gをゴム材43で形成すると共に、その表面を高耐摩耗材33の膜で覆っている。従って、第2弁座19それ自体に弾性が付与され、
図25に実線と2点鎖線で示すように、第2弁座19とシール構造36に外圧Poに対する撓みが許容される。このため、内側壁12aに対するシール構造36の摺動抵抗とシール構造36の摩耗を抑制することができる。なお、この実施形態では、突条19gが2列の場合を示したが、1列又は3列以上としてもよい。
【0135】
<第12実施形態>
次に、第12実施形態について図面を参照して詳細に説明する。この実施形態では、弁装置が、二重偏心弁の構成を備えた点でボールバルブの構成を備えた前記各実施形態と異なる。
【0136】
[弁装置の構成について]
図26に、この実施形態の二重偏心弁の構成を備えた弁装置5の外観を斜視図により示す。
図26に示すように、この弁装置5は、弁部2と、駆動部3とを備える。駆動部3は、後述するようにモータ55と減速機構56(
図27参照)を含む。弁部2は、内部に流体が流れる流路11を有するアルミ製のハウジング12を含む。流路11の中には弁座51、弁体52及び回転軸53の一部が配置される。回転軸53には、モータ55の回転力が減速機構56を介して伝達されるようになっている。
【0137】
図27に、この実施形態の全閉状態の弁装置5を
図26の平断面図により示す。
図27に示すように、この弁装置5は、主要な構成要素として、弁部2の弁座51、弁体52及び回転軸53の他に、駆動部3のモータ55、減速機構56及び閉弁戻し機構57を備える。ハウジング12は、弁部2及び駆動部3を構成すると共に、駆動部3のハウジング12の開口部には、減速機構56を覆うように合成樹脂製の蓋部材58が設けられる。
図26に示すように、蓋部材58は、ハウジング12に対して複数のクリップ59により固定される。モータ55は、この開示技術における駆動源の一例に相当する。
【0138】
図26、
図27に示すように、回転軸53は、その先端から突出するピン部53aと、ピン部53aの反対側の基端部53bとを含む。ピン部53aは、回転軸53の先端部の一例に相当する。回転軸53は、ピン部53aを自由端部とし、ピン部53aの側が流路11に配置される。弁体52は、ピン部53aに固定される。また、回転軸53は、その基端部53bの側に配置される2つの軸受、すなわち第1軸受61と第2軸受62を介してハウジング12に対して回転可能に片持ち支持される。第2軸受62と弁体52との間において、回転軸53とハウジング12との間には、ゴム製のシール部材63が設けられる。ここで、第1軸受61と第2軸受62は共にボールベアリングにより構成され、互いに所定間隔離れて配置される。回転軸53は、両軸受61,62の中心孔に挿入されて回転可能に支持される。回転軸53は、両軸受61,62の内周に対し精密に支持されるが、回転軸53の外周と両軸受61,62の内周との間には、厳密には、許容されるべき微細なクリアランス(ミクロン単位の隙間)が存在する。後述するように、回転軸53は、このクリアランスCL(
図34参照。
図34では、クリアランスCLを誇張的に示す。)の範囲で傾きが許容されるようになっている。
【0139】
図28に、全閉状態の弁装置5につき、ハウジング12から蓋部材58を取り外した状態を背面図により示す。
図27、
図28に示すように、回転軸53の基端部53bの端部には、弁ギヤ65が固定される。弁ギヤ65とハウジング12との間には、弁体52を閉弁方向へ付勢するためのリターンスプリング70が設けられる。
図27に示すように、モータ55は、ハウジング12に収容されて固定される。モータ55は、弁体52を開閉駆動するために減速機構56を介して回転軸53に駆動連結される。すなわち、モータ55の出力軸55a上には、モータギヤ66が固定される。このモータギヤ66は、中間ギヤ67を介して弁ギヤ65に駆動連結される。中間ギヤ67は、大径ギヤ67aと小径ギヤ67bを含む二段ギヤであり、ピンシャフト68を介してハウジング12に回転可能に支持される。大径ギヤ67aには、モータギヤ66が連結され、小径ギヤ67bには、弁ギヤ65が連結される。この実施形態で、各ギヤ65~67により減速機構56が構成される。
【0140】
従って、弁体52の全閉状態から、モータ55が通電により作動して出力軸55aが一方向へ回転し、モータギヤ66が同方向へ回転することにより、その回転力が中間ギヤ67により減速されて弁ギヤ65に伝達される。これにより、リターンスプリング70のスプリング力に抗して、弁ギヤ65が回転軸53及び弁体52と共に回動され、弁体52が開弁して流路11が開かれる。また、弁体52がある開度に開弁した状態において、モータ55に通電によって回転力を発生させることにより、その回転力がモータギヤ66、中間ギヤ67及び弁ギヤ65を介し保持力として回転軸53及び弁体52に伝達される。この保持力がリターンスプリング70のスプリング力に均衡することにより、弁体52がある開度に保持される。
【0141】
図28に、全閉状態の弁装置5につき、ハウジング12から蓋部材58を取り外した状態を背面図により示す。
図29に、全閉状態の弁座51、弁体52及び回転軸53の概略を、
図27のB-B線に沿った断面図により示す。
図30に、
図29における弁座51、弁体52及び回転軸53の関係のみを断面図により示す。
図31及び
図32に、
図28の弁ギヤ65の部分を、中間ギヤ67の一部を切断して背面図により示す。
図31及び
図32は、回転軸53の基端部53bに固定された弁ギヤ65を、回転軸53を中心に、その基端部53bの側から視た状態を示す。
図31が、弁体52が全閉となるときの状態を示し、
図32が、弁体52が全開となるときの状態を示す。
【0142】
図29、
図30に示すように、弁体52は、その本体部52aから突出する突部52bを含む。突部52bには、ピン孔52cが形成される。弁体52は、ピン孔52cにピン部53aが圧入又は溶接されることで回転軸53に固定される。本体部52aは、円板状をなし、その外周には、環状のシール面52dが形成される。弁座51は、円環状をなし、中央に弁孔51aを有する。弁孔51aの縁部には、シール面52dに対応する環状のシート面51bが形成される。この実施形態において、シール面52dとシート面51bはそれぞれ曲面となっている。
図30において、突部52bは、弁体52の軸線LVよりも左側へ偏って配置される。
図30において、回転軸53の軸線を主軸線L1とし、ピン部53aの軸線を副軸線L2とすると、それら主軸線L1及び副軸線L2は弁体52及び弁座51の径方向と平行に伸び、副軸線L2は弁座51の中心Q1から弁座51及び弁体52の径方向へ偏心して配置されると共に、弁体52のシール面52dが副軸線L2から弁体52の軸線LVが伸びる方向へ偏心して配置される。そして、回転軸53の主軸線L1を中心に弁体52を回動させることにより、弁体52のシール面52dが、弁座51のシート面51bに接触する全閉位置(
図29、
図30参照)とシート面51bから最も離れる全開位置(図示略)との間で回動される。
【0143】
図30において、弁体52が全閉位置から矢印で示す開弁方向(
図30に矢印F1で示す方向(反時計方向))へ回動し始めることにより、弁体52のシール面52dが弁座51のシート面51bから離れ始めると共に、回転軸53の主軸線L1を中心とする回動軌跡に沿って移動し始める。
【0144】
[閉弁戻し機構について]
次に、閉弁戻し機構57、すなわち回転軸53、弁ギヤ65、リターンスプリング70及びハウジング12の関係について詳しく説明する。
図27に示すように、弁ギヤ65は回転軸53の基端部53bに固定される。リターンスプリング70は、ハウジング12と弁ギヤ65との間に設けられてスプリング力を発生させるようになっている。このスプリング力は、弁ギヤ65及び回転軸53を回転させる力であって、弁体52を弁座51に着座させる閉弁方向へ付勢する力である。
【0145】
図31、
図32に示すように、弁ギヤ65は、扇形ギヤより構成され、外周の一部に形成された複数の歯を含む歯部65bと、柱状をなす開閉当たり部65cと、スプリングガイド部65d(
図27参照)を備える。開閉当たり部65cは、歯部65bの長手方向一端(
図31、
図32において歯部65bの時計方向後端)にて弁ギヤ65の軸方向へ延びる。一方、ハウジング12には、中間ギヤ67のピンシャフト68を支持するボス部12dが形成される。このボス部12dの外周には、
図31、
図32の上方へ突出する全閉ストッパ12eが形成される。この全閉ストッパ12eは、
図31に示すように、弁ギヤ65が、弁体52の全閉位置に対応する全閉回動位置に配置されたときに開閉当たり部65cの一側部が当たるように設定される。また、ハウジング12には、開閉当たり部65cの回転軌跡上にて、全開ストッパ12fが設けられる。この全開ストッパ12fは、ハウジング12のリブの一部が屈折することで形成される。この全開ストッパ12fは、
図32に示すように、弁ギヤ65が、弁体52の全開位置に対応する全開回動位置に配置されたときに開閉当たり部65cの他側部が当たるように設定される。
【0146】
図33に、閉弁戻し機構57の主要部であって、
図31に示す回転軸53、弁ギヤ65及びリターンスプリング70等の関係を模式図により示す。
図33は、弁体52が全閉位置に配置された状態であって、回転軸53の基端部53bに固定された弁ギヤ65を、回転軸53を中心に基端部53bの側から視た状態を示す。リターンスプリング70は、線材がコイル状に巻かれて形成された弾性体であり、その両端部に、第1フック70aと第2フック70bを備える。第1フック70aと第2フック70bは、リターンスプリング70の周方向において約180°離れた位置に配置される。スプリングガイド部65dは、リターンスプリング70の内側に配置されてリターンスプリング70を支持する。スプリングガイド部65dは、回転軸53の基端部53bを内包するように回転軸53と一体的に形成される。リターンスプリング70の第1フック70aは、スプリングガイド部65dの先端側であって、ハウジング12の奥側(
図33の紙面奥側)に配置され、ハウジング12に形成された係止部12gに係合する。一方、第2フック70bは、スプリングガイド部65dの基端側であって、弁ギヤ65の歯部65bの側(
図33の紙面手前側)に配置され、開閉当たり部65cに係合する。開閉当たり部65cには、リターンスプリング70の第2フック70bを介してスプリング力が作用するようになっている。
【0147】
そして、
図33に示す状態において、回転軸53の主軸線L1を原点とし、X軸を水平方向とし、Y軸を鉛直方向とする直交座標系を想定した場合に、+X軸方向かつ+Y軸方向を「第1象限」、-X軸方向かつ+Y軸方向を「第2象限」、-X軸方向かつ-Y軸方向を「第3象限」、+X軸方向かつ-Y軸方向を「第4象限」とする。このとき、弁座51と弁体52(
図33に2点鎖線で概略的に縮小して示す。)が「第3象限及び第4象限」に配置され、弁ギヤ65の一部(開閉当たり部65c)と全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)が、「第1象限」に配置され、弁ギヤ65が矢印F2の方向(時計方向)へ回転する方向にスプリング力が作用するようになっている。
【0148】
従って、
図31、
図33に示すように、弁ギヤ65が、全閉回動位置に配置された状態では、リターンスプリング70のスプリング力により、弁ギヤ65が、回転軸53を中心に
図33の矢印F2の方向(時計方向)へ回動付勢されながら、開閉当たり部65cが全閉ストッパ12eに当接して停止する。このとき、
図33に示すように、回転軸53には、開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点を支点S1として弁ギヤ65に作用する矢印で示すスプリングモーメントMSが作用することになる。
【0149】
図34に、閉弁戻し機構57の主要部を別の角度から視た概略図により示す。
図34に示すように、弁体52が弁座51に着座する全閉状態において、弁ギヤ65に作用するスプリングモーメントMSが回転軸53の基端部53bに作用することにより、そのスプリングモーメントMSの垂直成分である押し上げ力MSVがその基端部53bに作用する。この状態では、回転軸53の基端部53bの外周が第1軸受61の内周に押し当てられ、第1軸受61との接点を支点S2とし、第2軸受62との間に微細なクリアランスCLを保ちながら回転軸53を主軸線L1の方向へ傾けて弁体52を弁座51に押し付けるように設定される。
図34において、「PL」は水平線を示し、回転軸53の主軸線L1が水平線PLに対し弁座51の側へ傾いていることを示す。
【0150】
[弁座及び弾性部材等の構成について]
ここで、弁座51とその付属部材の構成について説明する。
図29に示すように、弁座51は、その軸方向D1(
図29の垂直方向)においてハウジング12に対し移動可能に設けられる。弁座51とハウジング12との間には、弁座51を弁体52に押し付ける付勢力を有する弾性部材31が設けられる。この実施形態で、弾性部材31は、金属製のコイルスプリング32により構成される。
図29において、弁座51のシート面51bは、断面円弧形状に形成される。この実施形態において、弁座51は、高耐摩耗材33(低摩擦係数材でもある)により形成される。高耐摩耗材33として、例えば、樹脂である「PTFE」が使用される。
【0151】
図29に示すように、ハウジング12は、弾性部材31(コイルスプリング32)よりも内側に流路11を形成する内側壁12aを有する。この内側壁12aの外周側には、弾性部材31(コイルスプリング32)を収容するために環状の凹部12bが設けられる。この凹部12bは、底壁12baを含む。
図29において、内側壁12aの上端は、弁座51の上端より下方に配置される。
図29において、弁座51は、断面L形をなし、軸方向D1に伸びる筒部51cと、筒部51cの下端にて外方へ張り出したフランジ部51dとを含む。弾性部材31(コイルスプリング32)は、凹部12bの底壁12baと弁座51のフランジ部51dとの間に設けられ、弁座51を弁体52へ向けて付勢する。
【0152】
図29に示すように、弁座51とハウジング12との間には、弁座51の移動を許容する隙間35が設けられる。ハウジング12と弁座51との間には、この隙間35をシールするためのシール構造36が設けられる。シール構造36は、ゴム材(EPDM)より形成されたリップシール37により構成される。凹部12bの開口縁には、シール構造36(リップシール37)を固定するための突起12hが設けられる。リップシール37は、断面略V形をなし、保持部37aとシールリップ部37bを含む。シールリップ部37bは、弁座51の筒部51cの内壁に接する。
【0153】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したようにこの実施形態の弁装置5の構成によれば、前記各実施形態の弁装置1とは、主として弁体52の構成の点で異なるものの、弁座51と弁体52との関係において前記第8実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0154】
加えて、この実施形態の構成によれば、弁体52が全閉位置に配置された状態において、通電によりモータ55を動作させると、その駆動力が減速機構56を介して弁ギヤ65へ伝わる。これにより、弁ギヤ65がリターンスプリング70のスプリング力に抗して回転軸53と共に回動し、弁体52が開弁方向へ回動する。すなわち、弁体52のシール面52dが弁座51のシート面51bから離れ、流路11が開く。このときの弁体52の開度)は、回転軸53及び弁ギヤ65の回転角度により決定される。弁体52が全開になると、
図32に示すように、弁ギヤ65の開閉当たり部65cが全開ストッパ12fに当接し、その回転が制限される。このとき、モータ55の駆動力が弁ギヤ65に供給されても、弁体52のそれ以上の開弁は制限され、弁体52が全開状態に保たれる。
【0155】
一方、弁体52の全開状態から、モータ55により弁ギヤ65と共に回転軸53を逆回転させると、弁体52が閉弁方向へ回動する。このとき、リターンスプリング70のスプリング力が弁ギヤ65を逆転させる方向へ作用するので、弁体52が速やかに閉弁方向へ回動する。弁体52が弁座51に着座する全閉状態になると、弁体52のシール面52dが弁座51のシート面51bに接して流路11が遮断される。このとき、
図31に示すように、弁ギヤ65の開閉当たり部65cが全閉ストッパ12eに当接し、その回転が制限される。また、モータ55の駆動力が弁ギヤ65に供給され続けても、弁体52のそれ以上の回動が制限され、弁体52が全閉状態に保たれる。
【0156】
その後、弁体52が全閉位置に配置された全閉状態においてモータ55への通電が停止してモータ55の駆動が停止し(非駆動となり)、弁ギヤ65への駆動力の供給が停止すると、弁ギヤ65には、リターンスプリング70のスプリング力のみが弁体52を閉弁させる方向へ作用する。このとき、
図31、
図33に示すように、弁ギヤ65の開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点を支点S1として弁ギヤ65にスプリングモーメントMSが作用し、そのスプリングモーメントMSによる押し上げ力MSVが回転軸53の基端部53bに作用する。これにより、
図34に示すように、第1軸受61との接点を支点S2とし、第2軸受62との微細なクリアランスCLを保ちながら、回転軸53が主軸線L1の方向へ傾けられ、弁体52が弁座51に押し付けられる。このため、モータ55の非駆動時にも、弁体52を弁座51に押し付けて両者51,52の間を封止し続けることができる。この結果、例えば、弁装置5がエンジンのEGR装置で使用される場合には、モータ55の非駆動時にも、弁体52と弁座51との間の封止を保つことができるので、両者51,52の間での異物の噛み込を回避することができる。また、弁座51と弁体52との間、すなわちシート面51bとシール面52dとの間のシール性を向上させることができる。このとき、第2軸受62の内周と回転軸53外周との間には、微細なクリアランスCLが保たれ、回転軸53と第2軸受62は厳密には接しないので、弁体52には回転軸53を傾ける最大限の力が作用する。このため、弁体52と弁座51との間を最大限の力で封止することができる。
【0157】
この実施形態の構成によれば、
図33において、弁座51と弁体52が第3象限及び第4象限に配置され、弁ギヤ65の開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)が、第1象限に配置され、弁ギヤ65が矢印F2の時計方向へ回転する方向にリターンスプリング70のスプリング力が作用するようになっている。従って、弁座51と弁体52の配置、並びに、弁ギヤ65の開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)の配置の関係から、スプリングモーメントMSによる回転軸53を主軸線L1の方向へ傾ける力が弁体52に対し効果的に作用する。このため、弁体52を弁座51に対し効果的に押し付けることができる。
【0158】
この実施形態の構成によれば、弁座51のシート面51bと弁体52のシール面52dの両方が曲面であるので、弁体52又は弁座51の姿勢等のずれにかかわらず、シート面51bとシール面52dが密着可能となる。このため、全閉時に弁座51と弁体52との密着性を確保することができる。
【0159】
[第12実施形態の変形例について]
図35に、第12実施形態の変形例に係り、全閉状態の弁座51、弁体52及び回転軸53の概略を
図29に準ずる断面図により示す。この変形例では、第12実施形態において、弁座51よりも内側に形成された内側壁12aを削除すると共に、その分だけ流路11の内径を拡大した点で第12実施形態と異なる。従って、この変形例の構成によれば、内側壁12aを削除したので、弁座51のハウジング12に対する摺動抵抗を低減することができる。また、弁座51の弁孔51aの内径を第12実施形態のそれと同じにした場合、流路11の内径を第12実施形態よりも大きくすることができる。これにより、流路11における流体の流量を増やすことができる。一方、内側壁12aを削除した分だけ、流路11の内径と弁座51の外径及び内径を第12実施形態のそれよりも小さくすることができる。これにより、弁体52を含め、弁部2の小型化を図ることができる。
【0160】
<第13実施形態>
次に、第13実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0161】
[弁装置の構成について]
この実施形態の弁装置5は、モータ55及び減速機構56に対する弁部2の配置を入れ替え、それに合わせて
図28における回転軸53、弁ギヤ65及びリターンスプリング70とモータギヤ66との配置を入れ替えたなどの点で第12実施形態と構成が異なる。
【0162】
図36に、この実施形態の全閉状態の弁装置5につき、ハウジング12から蓋部材58を取り外した状態を
図28に準ずる背面図により示す。
図37に、弁座51、弁体52及び回転軸53の関係のみを
図30に準ずる断面図により示す。
図38に、
図36の弁ギヤ65の部分を、中間ギヤ67の一部を切断して
図31に準ずる背面図により示す。
図39に、
図36の弁ギヤ65の部分を、中間ギヤ67の一部を切断して
図32に準ずる背面図により示す。
図40に、閉弁戻し機構57の主要部であって、
図38に示す回転軸53、弁ギヤ65及びリターンスプリング70等の関係を
図33に準ずる模式図により示す。
【0163】
この実施形態では、
図36に示すように、中間ギヤ67を中心にモータギヤ66が左側に、弁ギヤ65が右側に配置され、これらギヤ65~67が互いに噛み合わされて駆動連結される。これにより、弁ギヤ65が正転した場合に、
図36において、弁ギヤ65が回転軸53と共に時計方向へ回転するようになっている。これに合わせて、
図37において、弁体52が、矢印F3で示すように、時計方向へ回動して開弁するようになっている。これに合わせて、
図38、
図39に示すように、弁ギヤ65の開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eが回転軸53の左側(
図31、
図32における開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの位置関係とは逆の位置関係)に配置される。
【0164】
そして、
図40に示す状態において、回転軸53の主軸線L1を原点とし、X軸を水平方向とし、Y軸を鉛直方向とする直交座標系を想定した場合に、+X軸方向かつ+Y軸方向を「第1象限」、-X軸方向かつ+Y軸方向を「第2象限」、-X軸方向かつ-Y軸方向を「第3象限」、+X軸方向かつ-Y軸方向を「第4象限」とする。このとき、弁座51と弁体52((
図40に2点鎖線で概略的に縮小して示す。)が「第3象限及び第4象限」に配置され、弁ギヤ65の一部(開閉当たり部65c)と全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)が、「第2象限」に配置され、弁ギヤ65が反時計方向(矢印F4の方向)へ回転する方向にスプリング力が作用するようになっている。
【0165】
従って、
図38、
図40に示すように、弁ギヤ65が、全閉回動位置に配置された状態では、リターンスプリング70のスプリング力により、弁ギヤ65が、回転軸53を中心に
図40の矢印F4の方向(反時計方向)へ回動付勢されながら、開閉当たり部65cが全閉ストッパ12eに当接して停止する。このとき、
図40に示すように、回転軸53には、開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点を支点S1として弁ギヤ65に作用する矢印で示すスプリングモーメントMSが作用することになる。
【0166】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、第12実施形態とは異なり、ハウジング12における主要な構成要素の位置関係が逆になり、弁ギヤ65の開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)が、
図40において、「第2象限」に配置され、弁ギヤ65が反時計方向へ回転する方向にスプリング力が作用するものの、第12実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0167】
<第14実施形態>
次に、第14実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0168】
[弁装置の構成について]
この実施形態では、主として弁座72と弾性部材31の構成の点で第12実施形態と異なる。
図41には、この実施形態の弁装置5の弁部2の構成であって、弁体52が弁座72に着座した全閉状態を断面図により示す。この実施形態で、ハウジング12は、金属板をプレス加工することで形成される。
図41に示すように、ハウジング12には、流路11の開口縁に対応して段部12iが形成される。この段部12iには、円環状をなす弁座ユニット71が嵌め込まれる。弁座ユニット71は、金属板材をプレス加工してなる円環状の弁座ケース73と、弁座ケース73に内蔵された円環状の弁体52及び円環状の弾性部材31とを含む。弁座72は、シート面72aを含み、弁座72の軸方向D1に伸びる円環状の筒部72bと、筒部72bの下側にて外側及び内側へ張り出した円環状のフランジ部72cとを含む。筒部72bとフランジ部72cの内側が弁孔72dとなっている。弁座ユニット71は、弁座ケース73に弾性部材31と弁座72を上下に重ねて挿入した後、弁座ケース73の開口部から弁座72の筒部72bを突出させて開口部をかしめることにより形成される。弁座72は、高耐摩耗材33により形成される。高耐摩耗材33として、例えば、樹脂である「シリコン」が使用される。弁座72がシリコンで形成されることから、弁座72は摺動性に優れ、弁体52が着座する全閉時の摺動抵抗を低減することができ、耐摩耗性も向上させることができる。
【0169】
図41において、弾性部材31は、弁座72の下側に配置され、ゴム材よりなるOリング74により構成される。
図42に、弁座ユニット71を拡大した断面図により示す。
図43に、弁座72が弾性部材31(Oリング74)を押圧した状態を
図42に準ずる断面図により示す。この構成によれば、弾性部材31(Oリング74)の弾性力により、弁体52と弁座72の部品公差を吸収することができる。すなわち、部品公差により全閉時の弁体52の位置が、
図41に実線及び2点鎖線で示すように違っても、弾性部材31(Oリング74)の弾性変形によって弁座72の位置が変わり、弁体52の部品公差を吸収しながら弁座72を弁体52に突き当てて密着させることができる。
【0170】
この実施形態で、弁座ユニット71が段部12iに嵌め込まれることで、弁座ケース73がハウジング12と一体をなすことから、弁座ケース73はハウジング12の一部となる。弁座ケース73(ハウジング12)と弁座72との間には、弁座72の移動を許容する隙間35が設けられ、その隙間35をシールするためのシール構造36が設けられる。ここで、隙間35は、弁座72の軸方向D1において弁座72と弁座ケース73(ハウジング12)との間に形成される軸側隙間35aを含み、シール構造36は、この軸側隙間35aに設けられる。この実施形態では、弾性部材31は、ゴム製のOリング74より構成されることから、弁座ケース73の中でシール構造36として兼用される。
【0171】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、弁座72と弁座ケース73(ハウジング12)との間の隙間35のうち軸側隙間35aにシール構造36(Oリング74)が設けられるので、弁体52が弁座72に着座する全閉時に、隙間35での流路11からの流体の漏れが、軸側隙間35aに設けられたシール構造36(Oリング74)により抑制される。また、弁座72と弁座ケース73(ハウジング12)との間の隙間35のうち軸側隙間35aにシール構造36(Oリング74)が設けられるので、ハウジング12に対し弁座72がその軸方向D1へ移動しても、シール構造36(Oリング74)がハウジング12と摺動することがない。このため、弁座72と弁座ケース73(ハウジング12)との間の隙間35でシール構造36(リップシール37)が弁座72の軸方向D1の移動の抵抗となることを防止できると共に、その隙間35でのシール構造36(Oリング74)の機能低下を抑制することができる。
【0172】
この実施形態の構成によれば、弾性部材31が、ゴム製のOリング74であり、弁座72と弁座ケース73(ハウジング12)との間の隙間35のシール構造36を兼用するので、シール構造を別途設ける必要がない。すなわち、弁体52が弁座72に接した全閉時に、弁座ケース73と弁座72との間で、シール構造36(Oリング74)が隙間35を封止するシール構造として機能する。このため、シール構造を別途設ける必要がない分だけ弁装置5の部品点数を削減することができる。
【0173】
[第14実施形態の変形例について]
ここで、第14実施形態の変形例について説明する。
図44に、弁座ユニット71を、
図42に準ずる断面図により示す。第14実施形態において、
図42に示すように、弁座ユニット71は、弁座72に、高耐摩耗材33としての「シリコン」を使用し、Oリング74にゴム材を使用した。これに対し、この変形例では、
図44に示すように、弁座ユニット71は、弁座72に、高耐摩耗材33として「高硬度のゴム材」を使用し、弾性部材31(Oリング74)として「低硬度のゴム材」を使用した。
【0174】
従って、この変形例では、弁座72に、高耐摩耗材33として高硬度のゴム材を使用したので、弁座72の耐摩耗性を向上させることができる。また、弁体52が弁座72に摺動するときの、弁座72の変位を抑制することができる。更に、弾性部材31(Oリング74)として、低硬度のゴム材を使用したので、弾性部材31(Oリング74)の弾性機能を確保することができ、弁体52が弁座72に摺動するときの、弁座72の変位を弾性部材31(Oリング74)で吸収することができる。
【0175】
<第15実施形態>
次に、第15実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0176】
[弁装置の構成について]
この実施形態では、主として弾性部材31(Oリング74)の構成の点で第14実施形態と異なる。
図45には、本実施形態の対比例に係り、弁座ユニット71におけるOリング74の配置状態を平断面図により示す。
図46及び
図47には、同じく対比例に係り、弁座ユニット71を、
図45のC-C線断面図により示す。
図45に示すように、弁座ケース73の中に配置される弾性部材31(Oリング74)は、その幅W1が、弁座ケース73の内幅W2よりも狭いことから、Oリング74の弁座ケース73に対する中央寄せ(センタリング)がずれることがある。すなわち、
図46に示すように、Oリング74の中心が弁座ケース73の中心からずれてしまう。更に、
図47に示すように、Oリング74が弁座72により圧縮された場合、Oリング74の内側が弁座ケース73の内壁に押し付けられて変形し、その角部(破線円で囲む部分)に応力が集中し、割れが発生するおそれがある。そこで、この実施形態では、第14実施形態を以下のように改良した。
【0177】
図48に、この実施形態に係り、弁座ユニット71における弾性部材31(Oリング74)の配置状態を平断面図により示す。
図49に、弁座ユニット71を、
図48のD-D断面図により示す。
図48、
図49に示すように、この実施形態では、円環状の弾性部材31(Oリング74)を、弁座ケース73に対し自動的にセンタリングできるようにするために、弾性部材31(Oリング74)の内側に複数(例えば、3つ以上)の突起74aが等角度間隔に設けられる。これら突起74aは、弾性部材31(Oリング74)を中央寄せ(センタリング)するための、この開示技術における「中央寄せ構造」の一例に相当する。
【0178】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、弁座ケース73(ハウジング12)と弾性部材31(Oリング74)との間に設けられる複数の突起74aにより、弾性部材31(Oリング74)が常にセンタリングされる。従って、弾性部材31(Oリング74)が弁座72により圧縮されても、弾性部材31(Oリング74)の変位が均一化され、弁座72に対し弾性部材31(Oリング74)の付勢力が作用する位置のずれが抑えられる。このため、弁座72と弁体52との密閉性不足を防止することができる。また、弾性部材31(Oリング74)において応力集中による割れの発生を抑えることができ、弾性部材31(Oリング74)の耐久性を向上させることができる。
【0179】
[第15実施形態の変形例について]
ここで、第15実施形態の変形例について説明する。
図50に、この変形例に係り、弁座ユニット71を、
図49に準ずる断面図により示す。第15実施形態では、弾性部材31(Oリング74)を、弁座ケース73に対し自動的にセンタリングできるようにするために、Oリング74の内側に複数の突起74aを設けた。これに対し、この変形例では、同様の狙いで、
図50に示すように、Oリング74を断面略菱形に形成することで中央寄せ構造を構成することもできる。この場合も、第15実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0180】
<第16実施形態>
次に、第16実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0181】
[弁装置の構成について]
この実施形態では、弁体52と弁座72の形状の点で第14及び第15の実施形態と異なる。
図51には、この実施形態に係り、弁座ユニット71と弁体52の関係を
図43に準ずる断面図により示す。
図51には、弁体52により弁座72が押圧され、弾性部材31(Oリング74)が圧縮された状態を示す。
図51に示すように、この実施形態では、弁座72のシート面72aと弁体52のシール面52dの両方が曲面であり、シート面72aの曲率半径R1がシール面52dの曲率半径R2より小さく設定される。
【0182】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、弁座72のシート面72aと弁体52のシール面52dの両方を曲面にしたので、部品公差等により弁体52や弁座72の位置や姿勢がずれても、シール面52dとシート面72aが円形状に線接触する。また、部品公差による姿勢変化が大きい弁体52につき、そのシール面52dの曲率半径R2がシート面72aの曲率半径R1よりも大きいので、シール面52dとシート面72aとの線接触が確実に円形状となる。このため、全閉時に弁座72と弁体52との密着性を確実に確保することができる。
【0183】
<第17実施形態>
次に、第17実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0184】
[弁装置の構成について]
この実施形態では、ハウジング12と、その流路11及び弁座72に関する構成の点で第14~第16の実施形態と異なる。この実施形態の駆動部3の構成は、第12実施形態のそれ(
図27,28,31~34参照)と同じである。
図52に、弁部2の概略的な構成を断面図により示す。
図52に示すように、この実施形態のハウジング12は、弁室81を中心に三つの流路82~84を有する。すなわち、回転軸53を中心に弁体52が回動可能に配置される弁室81と、駆動源であるモータ55の非駆動時に弁体52と接することで第1全閉状態(
図52に実線で示す。)となる第1弁座ユニット71Aが設けられる第1流路82と、モータ55が駆動し、その回転可動角が最大となるときに弁体52と接することで第2全閉状態(
図52に2点鎖線で示す。)となる第2弁座ユニット71Bが設けられる第2流路83と、弁室81へ流体が流れ込む第3流路84とを備える。そして、第1全閉状態では、第3流路84から弁室81へ流れ込んだ流体が第2流路83へ流れ、第2全閉状態では、第3流路84から弁室81へ流れ込んだ流体が第1流路82へ流れる。この弁装置5は、流体の流路を切り替える三方弁を構成している。なお、この実施形態における第1弁座ユニット71Aと第2弁座ユニット71B及びそれに関わる構成は、第14実施形態の弁座ユニット71のそれと同じである。また、第1弁座ユニット71Aと第2弁座ユニット71Bは、
図52に示すように、回転軸53を中心とする90°の角度間隔で配置が異なる。
【0185】
ここで、回転軸53のピン部53aと弁体52のピン孔52cとの溶接は、モータ55の非駆動時に弁体52を第1弁座ユニット71Aの第1弁座72Aに突き当てた状態で行う。これにより、回転軸53と弁体52の部品公差を解消し、第1全閉状態における弁体52と第1弁座72Aとの間の位置ずれを解消している。その反面、モータ55を駆動させ、その回転可動角を最大にして弁体52を第2弁座ユニット71Bの第2弁座72Bに突き当てた第2全閉状態では、弁体52と第2弁座72Bの位置ずれが逆に大きくなるおそれがある。そこで、この実施形態では、第2弁座72Bを弁体52へ押し付ける第2弾性部材31B(Oリング74)の厚みを、第1弁座ユニット71Aの第1弾性部材31A(Oリング74)の厚みよりも増大させ、位置ずれを吸収できるようにしている。また、位置ずれの吸収策として、第2弾性部材31Bの厚みを増大させることに加え、第2弾性部材31Bの硬度を、第1弾性部材31Aの硬度よりも低減させている。すなわち、この実施形態では、第2弾性部材31Bの厚みを増大させ、その硬度を低減させることにより、第2弾性部材31Bの変位量を、第1弾性部材31Aの変位量よりも大きくしている。
【0186】
そして、
図52に実線で示すように、弁体52が第1全閉状態に配置された状態であって、回転軸53の基端部53bに固定された弁ギヤ65(
図27参照)を、回転軸53を中心に基端部53bの側から視た状態において、
図33に示すように、回転軸53の主軸線L1を原点とし、第1象限、第2象限、第3象限及び第4象限を想定する。このとき、弁体52と第1弁座ユニット71Aが第3象限及び第4象限に配置され、弁ギヤ65の一部である開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)が、第1象限又は第4象限に配置され、弁ギヤ65が時計方向へ回転する方向にリターンスプリング70のスプリング力が作用するようになっている。そして、
図52に実線で示すように弁体52が第1弁座72Aに接する第1全閉状態が、
図33における第3象限及び第4象限に対応し、
図52に2点鎖線で示すように弁体52が第2弁座72Bに接する第2全閉状態が、
図33における第1象限及び第4象限に対応するように構成される。また、弁体52が第1全閉状態と第2全閉状態との間で回動するときに、
図33に示すように、弁ギヤ65の歯部65bの任意の一部と中間ギヤ67(小径ギヤ67b)の任意の一部との当接点(支点S3)が、
図33において、第1象限又は第2象限(この実施形態では第1象限と第4象限の境)に配置されるようになっている。
【0187】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、モータ55の非駆動時には、第1弁座72Aと弁体52及び弁ギヤ65の開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)の配置関係から、スプリングモーメントMSによる回転軸53を主軸線L1の方向へ傾ける力が、弁体52に対し効果的に作用する。また、モータ55が駆動して回転可動角が最大となるときには、 その位置でのスプリング力により弁体52が第2弁座72Bに押し付けられる。このため、モータ55の非駆動時に、弁体52を第1弁座72Aに押し付けて両者52,72Aの間の密着性を向上させることができ、モータ55が駆動して回転可動角が最大となるときに、弁体52を第2弁座72Bに押し付けて両者52,72Bの間の密着性を向上させることができる。
【0188】
この実施形態の構成によれば、モータ55の非駆動時であって、弁体52が第1弁座72Aに接する第1全閉状態(
図52に実線で示す状態)では、第12実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。すなわち、モータ55の非駆動時である第1全閉状態では、第1弁座72Aを弁体52に押し付ける第1弾性部材31Aが設けられるので、部品公差による第1全閉状態のバラツキが第1弾性部材31Aの変位により吸収される。このため、第1全閉状態では、弁体52と第1弁座72Aとの密着性を向上させることができる。
【0189】
一方、モータ55が駆動し、回転可動角が最大となるときには、弁体52が第2弁座72Bに接することで第2全閉状態となるが、第2弁座72Bを弁体52に押し付ける第2弾性部材31Bが設けられるので、部品公差による第2全閉状態のバラツキが第2弾性部材31Bの変位により吸収される。ここで、モータ55の駆動時に第2弁座72Bに作用する第2弾性部材31Bの変位量が、モータ55の非駆動時に第1弁座72Aに作用する第1弾性部材31Aの変位量より大きい、すなわち第2弾性部材31Bの硬度が相対的に小さい。従って、第2弾性部材31Bを変位させるために、モータ55に過大な駆動力が必要なくなる。このため、第2全閉状態においてモータ55を高出力化する必要がなくなり、モータ55を小型化することができる。
【0190】
<第18実施形態>
次に、第18実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0191】
[弁装置の構成について]
第17実施形態では、第2弁座ユニット71Bの第2弾性部材31Bの厚みを増大させ、その硬度を低減させたので、第2弾性部材31Bが柔らかく、その変位量が大きくなり、同弾性部材31Bの「へたり(弾性劣化)」が問題になる。そこで、この実施形態では、第17実施形態の構成を次のように改良した。
【0192】
図53に、この実施形態に係り、弁部2の概略的な構成を、
図52に準ずる断面図により示す。
図54に、
図53の1点鎖線四角K2で囲った部分を拡大して断面図により示す。
図53、
図54に示すように、第2弁座ユニット71Bの近傍には、弁体52が第2全閉状態となり、第2弾性部材31Bと共に第2弁座72Bを押圧するときの弁体52の変位を規制するための、すなわち第2弁座72Bの圧縮代の上限を規制するための変位ストッパ86がハウジング12に設けられる。この変位ストッパ86は、断面L形をなし、
図54に2点鎖線で示すように弁体52が第2弁座72Bを押圧する方向へ変位したとき、弁体52が変位ストッパ86に突き当たることで、弁体52のそれ以上の変位を規制するようになっている。この変位ストッパ86は、この開示技術において第2弾性部材31Bの圧縮代の上限を規制するための「ストッパ」の一例に相当する。ここで、弁体52を変位ストッパ86へ積極的に突き当てるようにモータ55(
図27参照)をデューティ制御(突き当て制御)することで、第2全閉状態における弁体52と第2弁座72Bとの密着性を向上させることができる。この突き当て制御の際のモータ55の発熱負荷を軽減するために、デューティ制御のデューティ値の上限を「20%」程度にすることが好ましい。
【0193】
なお、この実施形態では、第2弁座ユニット71Bに対応した変位ストッパ86を設けたが、加えて、第1弁座ユニット71Aに対応した変位ストッパを設けることもできる。
【0194】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、第17実施形態の作用及び効果に加え次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、ハウジング12には、弁体52が第2弁座72Bを押圧する方向へ変位したときに、弁体52が突き当たることで弁体52のそれ以上の変位を規制する、すなわち第2弾性部材31Bの圧縮代の上限を規制する変位ストッパ86が設けられる。従って、弁体52から第2弁座72Bに過度な荷重がかかっても、第2弾性部材31Bの過度な圧縮が変位ストッパ86により規制される。このため、過度な荷重による第2弾性部材31Bのへたりを抑制することができる。また、弁体52の移動を規制するために第2弾性部材31Bの付勢力を大きくする必要がなく、第2弁座72Bの弁体52に対する耐摩耗性を向上させることができる。
【0195】
<第19実施形態>
次に、第19実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0196】
[弁装置の構成について]
図55に、この実施形態に係り、弁部2の概略的な構成を、
図53に準ずる断面図により示す。第18実施形態では、第2弁座ユニット71Bに対応した変位ストッパ86を設けた。これに対し、この実施形態では、回転軸53を中心に弁体52が回動し、
図55に実線で示す第1全閉状態になったとき及び
図55に2点鎖線で示す第2全閉状態になったときの弁体52の更なる回動を規制するための全閉ストッパ87,88がハウジング12に設けられる。すなわち、第1弁座ユニット71Aの近傍には、弁体52が回動し、第1全閉状態になったときに弁体52のそれ以上の回動を規制する第1全閉ストッパ87が設けられる。同様に、第2弁座ユニット71Bの近傍には、弁体52が回動し、第2全閉状態になったときに弁体52のそれ以上の回動を規制する第2全閉ストッパ88が設けられる。両全閉ストッパ87,88は、それぞれ断面L形をなし、弁体52の本体部52aの上縁部が係合するようになっている。
【0197】
ここで、弁体52を各全閉ストッパ87,88へ積極的に突き当てて全閉にするためにモータ55をデューティ制御(閉じ制御)することで、第1全閉状態及び第2全閉状態における弁体52と第1弁座72A及び第2弁座72Bの全閉密着性を向上させることができる。
図56~
図58は、この実施形態に係り、第1全閉状態へ向けて回動する弁体52の動きを断面図により示す。
図56は、弁体52が回転軸53を中心に時計方向へ回動して第1弁座ユニット71Aへ近付く状態を示す。
図57は、弁体52が第1弁座72Aに低面圧で接触すると共に、第1全閉ストッパ87に接触し始めた状態を示す。
図58は、弁体52が第1弁座72Aに接触すると共に、第1全閉ストッパ87に突き当たり、閉じ制御により弁体52が同弁座72Aに押し当てられた状態を示す。
図58において、弁体52は閉じ制御により第1全閉ストッパ87に突き当てられることで、その反力が弁体52を第1弁座72Aへ押し当てる方向に作用することになる。
【0198】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、第17実施形態の作用及び効果に加え次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態では、
図58において、弁体52を第1全閉ストッパ87へ積極的に突き当ててモータ55をデューティ制御(閉じ制御)することで、弁体52が第1全閉ストッパ87に突き当たるときの反力が弁体52を第1弁座72Aへ押し当てる方向に作用することになる。このため、第1全閉状態における弁体52と第1弁座72Aとの密着性を向上させることができる。弁体52を第2全閉ストッパ88へ積極的に突き当ててモータ55をデューティ制御(閉じ制御)したときは、その反力が弁体52を第2弁座72Bへ押し当てる方向に作用することになる。このため、第2全閉状態における弁体52と第2弁座72Bとの密着性を向上させることができる。
【0199】
<第20実施形態>
次に、第20実施形態であって、二重偏心弁の構成を備えた弁装置5について図面を参照して詳細に説明する。
【0200】
[弁装置の構成について]
この実施形態では、ハウジング12における第2流路83及び第2弁座ユニット71Bの配置と減速機構56及びモータ55の構成の点で第17実施形態と異なる。
図59に、この実施形態に係り、弁部2の概略的な構成を
図52に準ずる断面図により示す。
図59に示すように、この実施形態の弁部2は、第3流路84と、第2流路83及び第2弁座ユニット71Bの配置が、第17実施形態のそれに対し左右反対となっている。それに合わせ、この実施形態の減速機構56及びモータ55の構成は、第13実施形態のそれ(
図36,38~40参照)と同じになっている。
【0201】
この実施形態では、弁体52が第1全閉状態に配置された状態であって、回転軸53の基端部53bに固定された弁ギヤ65を、回転軸53を中心に基端部53bの側から視た状態において、
図40に示すように、回転軸53の主軸線L1を原点とし、第1象限、第2象限、第3象限及び第4象限を想定する。このとき、第1弁座ユニット71Aが第3象限及び第4象限に配置され、弁ギヤ65の一部である開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)が、第2象限又は第3象限に配置され、弁ギヤ65が反時計方向へ回転する方向にリターンスプリング70のスプリング力が作用するようになっている。そして、
図59に実線で示すように弁体52が第1弁座72Aに接する第1全閉状態が、
図40における第3象限及び第4象限に対応し、
図59に2点鎖線で示すように弁体52が第2弁座72Bに接する第2全閉状態が、
図40における第2象限及び第3象限に対応するように構成される。また、弁体52が第1全閉状態と第2全閉状態との間で回動するときに、
図40に2点鎖線で示すように、弁ギヤ65の歯部65bの任意の一部と中間ギヤ67(小径ギヤ67b)の任意の一部との当接点(支点S3)が、
図40において、第1象限又は第2象限(この実施形態では第2象限と第3象限の境)に配置されるようになっている。
【0202】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置5の構成によれば、第3流路84と、第2流路83及び第2弁座ユニット71Bの配置が、第17実施形態のそれと異なるものの、第17実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態でも、モータ55の非駆動時には、第1弁座72Aと弁体52及び弁ギヤ65の開閉当たり部65cと全閉ストッパ12eとの当接点(支点S1)の配置関係から、スプリングモーメントMSによる回転軸53を主軸線L1の方向へ傾ける力が、弁体52に対し効果的に作用する。また、モータ55が駆動して回転可動角が最大となるときには、 モータ55の駆動力により弁体52が第2弁座72Bに押し付けられる。このため、モータ55の非駆動時に、弁体52を第1弁座72Aに押し付けて両者52,72Aの間の密着性を向上させることができ、モータ55が駆動して回転可動角が最大となるときに、弁体52を第2弁座72Bに押し付けて両者52,72Bの間の密着性を向上させることができる。
【0203】
<第21実施形態>
次に、第21実施形態であって、スイングアーム弁の構成を備えた弁装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0204】
[弁装置の構成について]
図60に、この実施形態に係り、弁部2の概略的な構成を断面図により示す。
図61に、
図60の1点鎖線四角K3で囲った部分を拡大した断面図により示す。
図60に示すように、この実施形態において、弁部2における弁室81及び各流路82~84の配置と各弁座ユニット71A,71Bの構成は、第17実施形態のそれと基本的に同じである。また、この実施形態の減速機構56及びモータ55の構成は、第17~19の実施形態のそれ(
図27,28,31~34参照)と同じである。
【0205】
この実施形態において、
図60に示すように、回転軸90は、第1流路82と第2流路83の間であって、弁室81のコーナに配置される。弁体91は、板状をなし、回転軸90を中心にして弁室81の中を揺動可能に設けられる。そして、モータ55の非駆動時に、第1流路82に設けられた第1弁座ユニット71Aの第1弁座72Aに弁体91が接することで第1全閉状態(
図60に実線で示す状態)となり、モータ55が駆動し、その回転可動角が最大となるときに、第2流路83に設けられた第2弁座ユニット71Bの第2弁座72Bに弁体91が接することで第2全閉状態(
図60に2点鎖線で示す状態)となる。この実施形態では、
図60、
図61に示すように、各弁座72A,72Bの上面がシート面72aとなり、そのシート面72aに接する弁体91の表裏両面がシール面91aとなっている。
【0206】
図60、
図61に示すように、この実施形態において、第2弁座ユニット71Bの近傍には、弁体91が第2全閉状態となり、第2弾性部材31Bと共に第2弁座72Bを押圧するときの弁体91の変位を規制するための、すなわち第2弁座72Bの圧縮代の上限を規制するための変位ストッパ92がハウジング12に設けられる。この変位ストッパ92は、断面I形をなし、
図61に2点鎖線で示すように弁体91が第2弁座72Bを押圧する方向へ変位したとき、弁体91が変位ストッパ92に突き当たることで、弁体91のそれ以上の変位を規制するようになっている。この変位ストッパ92は、この開示技術において第2弾性部材31Bの圧縮代の上限を規制するための「ストッパ」の一例に相当する。この実施形態でも、弁体91を変位ストッパ92へ積極的に突き当てるようにモータ55(
図27参照)をデューティ制御(突き当て制御)することで、第2全閉状態における弁体91と第2弁座72Bとの密着性を向上させることができる。
【0207】
ここで、この実施形態でも、第2弁座ユニット71Bに対応した変位ストッパ92を設けたが、加えて、第1弁座ユニット71Aに対応した変位ストッパを設けることもできる。
【0208】
[弁装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の弁装置の構成によれば、第18実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0209】
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0210】
(1)前記第1~第13の実施形態では、弾性部材31をコイルスプリング32により構成したが、弾性部材をコイルドウエーブスプリングにより構成することもできる。コイルドウエーブスプリングは、断面平板状の線材を略螺旋状に成形しているので、その軸方向の両端に平坦な板面を有する。このため、例えば、
図20に示す第8実施形態のコイルスプリング32を、コイルドウエーブスプリングに替えることで、同スプリングと弁座19との間に受け板42を設けることなく、コイルドウエーブスプリングを安定して設けることができる。
【0211】
(2)前記第12~第20の実施形態の二重偏心弁の構成を備えた弁装置5につき、弁体52が弁座51,72に着座した全閉状態又は第1弁座72Aに着座した第1全閉状態になったときに、回転軸53を傾けて弁体52を弁座51,72,72Aに突き当てるように閉弁戻し機構57を構成した。これに対し、第1~第11の実施形態のボールバルブの構成を備えた弁装置1につき、弁体21が弁座19に接して各出口流路14,15を全閉にしたときに、回転軸22を傾けて弁体21を弁座19に突き当てるように駆動部3の閉弁戻し機構を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
この開示技術は、例えば、エンジンにおいて吸気や排気、冷却水などの流体の流量を制御する流体回路に適用することができる。
【符号の説明】
【0213】
1 弁装置(ボールバルブを備えた)
5 弁装置(二重偏心弁を備えた)
11 流路
12 ハウジング
12a 内側壁(ガイド部)
12aa ストッパ
12b 凹部
12ba 底壁
12c 拡径部
12ca 底壁
12e 全閉ストッパ
13 入口流路
14 第1出口流路
15 第2出口流路
16 弁室
17 第1弁座
19 第2弁座
19a シート面
19b 弁孔
19g 突条(シール構造)
21 弁体
21d シール面
22 回転軸
31 弾性部材
31A 第1弾性部材
31B 第2弾性部材
32 コイルスプリング
33 高耐摩耗材
35 隙間
35a 軸側隙間
35b 径側隙間
36 シール構造
37 リップシール
39 リップシール
39a 保持部
39b シールリップ部
39c ダストリップ部
39d ダストトラップ部
40 リップシール
51 弁座
51a 弁孔
51b シート面
52 弁体
52d シール面
53 回転軸
53a ピン部(先端部)
53b 基端部
55 モータ(駆動源)
61 第1軸受
62 第2軸受
65 弁ギヤ
65b 歯部
65c 開閉当たり部(弁ギヤの一部)
67 中間ギヤ
67a 大径ギヤ
67b 小径ギヤ
70 リターンスプリング
72 弁座
72A 第1弁座
72B 第2弁座
72a シート面
72d 弁孔
74 Oリング(弾性部材、シール構造)
74a 突起(中央寄せ構造)
81 弁室
82 第1流路
83 第2流路
84 第3流路
86 変位ストッパ
90 回転軸
91 弁体
91a シール面
92 変位ストッパ
D1 軸方向
D2 径方向
S1 支点
R1 シート面の曲率半径
R2 シート面の曲率半径
S1 支点
S2 支点
MS スプリングモーメント
L1 主軸線