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特開2023-109539トランスデューサ、電子機器及びトランスデューサアレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109539
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】トランスデューサ、電子機器及びトランスデューサアレイ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20230801BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20230801BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230801BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20230801BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20230801BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R17/00 332Y
H04R17/00 330H
H04R7/04
B81B3/00
H01L41/09
H01L41/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011099
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】内貴 崇
(72)【発明者】
【氏名】合田 賢司
【テーマコード(参考)】
3C081
5D004
5D016
5D019
【Fターム(参考)】
3C081AA13
3C081BA22
3C081BA43
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA55
3C081BA72
3C081DA03
3C081DA06
3C081EA21
5D004AA01
5D004CD07
5D004DD01
5D004EE00
5D004FF01
5D004FF09
5D004GG00
5D016AA04
5D016EC21
5D019AA21
5D019BB20
5D019BB25
5D019EE02
5D019FF01
5D019HH03
(57)【要約】
【課題】スピーカとして使用するために十分な音量を発生し、発生した音波を特定の方向に集束できるようにする。
【解決手段】トランスデューサ1は、基板10と、基板10の主表面11に形成されたカンチレバーによる複数の振動膜12と、複数の振動膜12に積層され、各振動膜12を励振する複数の圧電素子20とを含み、複数の振動膜12のカンチレバーは、主表面11上の基準点Oから当該カンチレバーに向かう方向に延び、カンチレバーは静止した初期状態で主表面11より上向きに撓み、撓む大きさは振動膜12が基準点Oから離れるに応じて増加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主表面に形成されたカンチレバーによる複数の振動膜と、
前記複数の振動膜に積層され、各振動膜を励振する電圧を発生する複数の圧電素子と
を含み、
前記複数の振動膜のカンチレバーは、前記主表面上の基準点から当該カンチレバーに向かう方向、又は当該カンチレバーから前記基準点に向かう方向に延びるトランスデューサ。
【請求項2】
前記複数の振動膜のカンチレバーは、前記基準点から当該カンチレバーに向かう方向に延び、静止した初期状態で前記主表面より上向きに撓み、撓む大きさは当該振動膜が前記基準点から離れるに応じて増加する請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記複数の振動膜のカンチレバーは、当該カンチレバーから前記基準点に向かう方向に延び、静止した初期状態で前記主表面より下向きに撓み、撓む大きさは当該振動膜が前記基準点から離れるに応じて増加する請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記複数の圧電素子の一対の電極層には、当該振動膜を駆動するための電圧が供給される電極パッドからそれぞれ配線が接続された請求項1から3のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記配線は、前記複数の圧電素子の一対の電極層について共通となる配線を含む請求項4に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記複数の振動膜は、前記主表面内で前記基準点の周りに回転対称な位置の少なくとも一部に配置された複数の振動膜を含むグループについて、少なくとも1つのグループを含む請求項5に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記配線は、各グループの振動膜についてそれぞれ共通となる配線を含む請求項6に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
前記複数の振動膜の固有振動数は、可聴域よりも高い振動数である請求項1から7のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
前記複数の振動膜は、前記主表面の面内において、同じ形状を有する振動膜を含む請求項1から8のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
前記基板は、シリコン基板で構成された請求項1から9のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
スピーカとして請求項1から10のいずれか一項に記載のトランスデューサを備える電子機器。
【請求項12】
トランスデューサアレイであって、
基板と、前記基板の主表面に形成され、前記主表面内で一つの方向に延びるカンチレバーによる複数の振動膜と、前記複数の振動膜に積層され、各振動膜を励振する複数の圧電素子とを含むトランスデューサについて、複数のトランスデューサを含み、
前記複数のトランスデューサは主表面が一側を向くように2次元状に配置され、前記複数のトランスデューサのカンチレバーは、前記2次元状の配置を含む平面上の基準点から当該トランスデューサに向かう方向、又は当該トランスデューサから前記基準点に向かう方向に延びるトランスデューサアレイ。
【請求項13】
前記複数のトランスデューサの振動膜のカンチレバーは、前記基準点から当該トランスデューサに向かう方向に延び、静止した初期状態で前記主表面より上向きに撓み、撓む大きさは当該トランスデューサが前記基準点から離れるに応じて増加する請求項12に記載のトランスデューサアレイ。
【請求項14】
前記複数のトランスデューサの振動膜のカンチレバーは、当該トランスデューサから前記基準点に向かう方向に延び、静止した初期状態で前記主表面より下向きに撓み、撓む大きさは当該トランスデューサが前記基準点から離れるに応じて増加する請求項12に記載のトランスデューサアレイ。
【請求項15】
前記トランスデューサアレイは、前記2次元状の配置を含む平面内で前記基準点の周りに回転対称な位置の少なくとも一部に配置された複数のトランスデューサを含むグループについて、少なくとも1つのグループを含む請求項12から14のいずれか一項に記載のトランスデューサアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、トランスデューサ、電子機器及びトランスデューサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波若しくは超音波の送信又は受信を行うトランスデューサが知られている。例えば、半導体製造技術を応用したMEMS(micro-electromechanical systems)技術を用いて作製され、一対の電極によって圧電膜を両側から挟んだ圧電素子で振動板を駆動するタイプのトランスデューサが、音波を発生するスピーカとして提供されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-105170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMS技術を用いて作製した振動板を圧電素子で駆動するタイプのトランスデューサは、振動板のサイズが小さく、振動板の振幅も小さいため、スピーカとして用いるために十分な音量を発生することができないことがあった。また、発生する音波を特定の方向に集束させることもできないことがあった。
【0005】
本実施の形態は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、MEMS技術を用いて作製した振動板を圧電体で駆動するタイプのトランスデューサであって、スピーカとして用いるにも十分な音量を発生し、発生した音波を特定の方向に集束することができるようなトランスデューサ、このようなトランスデューサを備える電子機器及びトランスデューサアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態の一態様は、基板と、基板の主表面に形成されたカンチレバーによる複数の振動膜と、複数の振動膜に積層され、各振動膜を励振する電圧を発生する複数の圧電素子とを含み、複数の振動膜のカンチレバーは、主表面上の基準点から当該カンチレバーに向かう方向、又は当該カンチレバーから基準点に向かう方向に延びるトランスデューサである。
【0007】
本実施の形態の一態様は、スピーカとして本実施の形態のトランスデューサを備える電子機器である。
【0008】
本実施の形態の一態様は、トランスデューサアレイであって、基板と、基板の主表面に形成され、主表面内で一つの方向に延びるカンチレバーによる複数の振動膜と、複数の振動膜に積層され、各振動膜を励振するとともに、各振動膜の振動によって電圧を発生する複数の圧電素子とを含むトランスデューサについて、複数のトランスデューサを含み、複数のトランスデューサは主表面が一側を向くように2次元状に配置され、複数のトランスデューサのカンチレバーは、2次元状の配置を含む平面上の基準点から当該トランスデューサに向かう方向、又は当該トランスデューサから基準点に向かう方向に延びるトランスデューサアレイである。
【発明の効果】
【0009】
本実施の形態によれば、MEMS技術を用いて製造した振動板を圧電体で駆動するタイプのトランスデューサであって、スピーカとして使用するために十分な音量を発生することができ、発生する音波を特定の方向に集束することができるようなトランスデューサを提供することができる。また、十分な音量を発生することができ、発生する音波を特定の方向に集束することができるような電子機器及びトランスデューサアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施の形態のトランスデューサの平面図である。
図2図2は、本実施の形態のトランスデューサの断面図である。
図3A図3Aは、振動膜のカンチレバーから発生した音波の進む方向を示す模式図である。
図3B図3Bは、振動膜のカンチレバーから発生した音波の進む方向を示す模式図である。
図3C図3Cは、振動膜のカンチレバーから発生した音波の進む方向を示す模式図である。
図3D図3Dは、比較例として両持ち梁の振動膜から発生した音波の進む方向を示す模式図である。
図4図4は、本実施の形態のトランスデューサの主表面における振動膜の配置を示す平面図である。
図5図5は、トランスデューサから発生した音波の進む方向を説明する断面図である。
図6図6は、変形例のトランスデューサの平面図である。
図7図7は、変形例のトランスデューサに主表面おける振動膜の配置を示す平面図である。
図8図8は、電子機器のブロック図である。
図9図9は、本実施の形態のトランスデューサアレイを構成するトランスデューサの平面図である。
図10図10は、本実施の形態のトランスデューサアレイの平面図である。
図11図11は、トランスデューサアレイから発生して収束する音波を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するために例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。実施の形態は、特許請求の範囲に規定された構成に基づいて、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(トランスデューサ)
本実施の形態のトランスデューサは、MEMS技術を用いて製造され、音波を発生するスピーカとして使用されることを想定している。本実施の形態のトランスデューサは、次のような構成を有している。
【0014】
本実施の形態のトランスデューサは、基板と、基板の主表面に形成されたカンチレバーによる複数の振動膜と、複数の振動膜に積層され、各振動膜を励振する電圧を発生する複数の圧電素子とを含み、複数の振動膜のカンチレバーは、主表面上の基準点から当該カンチレバーに向かう方向、又は当該カンチレバーから基準点に向かう方向に延びる。振動膜のカンチレバーから発生する音波の進む方向を制御することができ、トランスデューサから発生した音波を集束させることができる。
【0015】
複数の振動膜のカンチレバーは、基準点から当該カンチレバーに向かう方向に延び、静止した初期状態で主表面より上向きに撓み、撓む大きさは当該振動膜が基準点から離れるに応じて増加してもよい。振動膜のカンチレバーから発生する音波を集束させることができる。
【0016】
複数の振動膜のカンチレバーは、当該カンチレバーから基準点に向かう方向に延び、静止した初期状態で主表面より下向きに撓み、撓む大きさは当該振動膜が基準点から離れるに応じて増加してもよい。振動膜のカンチレバーから発生する音波を集束させることができる。
【0017】
複数の圧電素子の一対の電極層には、当該振動膜を駆動するための電圧が供給される電極パッドからそれぞれ配線が接続されてもよい。複数の圧電素子は、それぞれ一対の電極層に接続された配線から供給された電圧によって駆動される。
【0018】
配線は、複数の圧電素子の一対の電極層について共通となる配線を含んでもよい。共通の配線に接続された圧電素子を同期して駆動することができる。
【0019】
複数の振動膜は、主表面内で基準点の周りに回転対称な位置の少なくとも一部に配置された複数の振動膜を含むグループについて、少なくとも1つのグループを含んでもよい。回転対称に配置された複数の振動膜によって、収束するための音波を効率的に発生することができる。
【0020】
配線は、各グループの振動膜についてそれぞれ共通となる配線を含んでもよい。各グループの振動膜を同期して駆動することができる。
【0021】
複数の振動膜の固有振動数は、可聴域よりも高い振動数であってもよい。固有振動数が可聴域の周波数範囲にないため、可聴域においては振動膜の固有振動数に由来する音質の劣化が発生しない。
【0022】
複数の振動膜は、主表面の面内において、同じ形状を有する振動膜を含んでもよい。トランスデューサの設計、製造などを容易にすることができる。
【0023】
基板は、シリコン基板で構成されてもよい。MEMS技術を用いてトランスデューサを
作製することができる。
【0024】
図1は、本実施の形態のトランスデューサ1を示す平面図である。図2は、本実施の形態のトランスデューサ1を示す断面図である。図2の断面図は、図1の平面図における切断線II-IIによる切断面を示している。本実施の形態のトランスデューサ1は、平坦な主表面11及び主表面11に対向する背面15を有する基板10に形成されている。基板10は、所定の厚さを有する略板状の形状のシリコン基板であり、平面視で縦方向及び横方向のサイズが略等しい略矩形状の形状を有している。なお、基板10はシリコン基板に限らず、ガラス基板、有機材料など他の種類の素材によって構成されてもよい。
【0025】
基板10の背面15には、複数の凹部16が形成されている。複数の凹部16は、主表面11から所定の深さまで達し、主表面11が基板10の厚さ方向に振動できるように所定の厚さの基板10を残すように形成されている。これらの所定の厚さの基板10が残された部分は、複数の振動膜12を形成している。複数の振動膜12は平面視で略矩形状の形状を有し、この略矩形状の振動膜12は一辺でのみ主表面11と連結され、他の三辺は主表面11との間にスリットが形成されて切り離されてカンチレバー、すなわち片持ち梁を形成している。
【0026】
複数の振動膜12のカンチレバーの延びる方向、すなわち、カンチレバーの固定端から自由端に向かう方向は、主表面11の略中央にある基準点Oから各振動膜12に向かう方向とされている。複数の振動膜12は、主表面11において略同一のサイズの略矩形状のカンチレバーに形成されている。また、複数の振動膜12のカンチレバーは、スピーカの音波を発生するために使用されるため、その固有振動数は可聴域よりも高い振動数とされている。
【0027】
複数の振動膜12には、下部電極層21及び上部電極層23の一対の電極層によって圧電体層22が挟まれて構成された圧電素子20が積層されている。圧電素子20は、図示しない配線層によって供給された電圧によって振動膜12を基板10の厚さ方向に励振する。複数の振動膜12に積層される圧電素子20も、略矩形状のカンチレバーである複数の振動膜12の形状にしたがい同様に略矩形状の形状を有している。
【0028】
図3Aから図3Cは、振動膜12のカンチレバーから発生した音波の進む方向を説明する模式図である。これら図3Aから図3Cは、個別の振動膜12のカンチレバーを模式的に描いたものである。振動膜12のカンチレバーは、圧電素子20に供給された電圧によって駆動され、振動膜12のカンチレバーは基板10の深さ方向に振動する。カンチレバーの振幅は固定端から自由端に向けて次第に大きくなり、自由端で最大になる。図中には、静止した初期状態のカンチレバーが描かれている。また、振動により上方向に最も撓んだカンチレバーと、下方向に最も撓んだカンチレバーが描かれている。なお、下方向とは基板10の深さ方向、上方向とは基板10の主表面11から離れる方向をいうものとする。
【0029】
図3Aにおいて、静止した初期状態のカンチレバーは主表面11の面内にあり、上下方向にカンチレバーが撓む振幅は略同じである。振動膜12のカンチレバーから発生した音波は、初期状態のカンチレバーの法線方向、すなわち、主表面11の法線方向に進む。このような主表面11内にあるカンチレバーの初期状態は、製造時に設定することもできるし、圧電素子20に印加する電圧によって制御することもできる。
【0030】
図3Bにおいて、初期状態のカンチレバーは主表面11から上向きに撓んでいる。カンチレバーの初期状態から上下方向への振幅は略同じである。この振動膜12のカンチレバーから発生した音波は、初期状態で主表面11から上向きに撓んだカンチレバーの法線方向に進み、したがって、主表面11の法線方向から基準点Oに向かって傾斜した方向に進む。このような主表面内から上向きに撓んだカンチレバーの初期状態は、製造時に設定することもできるし、圧電素子20に印加する電圧によって制御することもできる。カンチレバーの撓みの大きさも圧電素子20に印加する電圧によって制御することができる。
【0031】
図3Cにおいて、初期状態のカンチレバーは主表面11から下向きに撓んでいる。カンチレバーの初期状態から上下方向への振幅は略同じである。この振動膜12のカンチレバーから発生した音波は、初期状態で主表面11から下向きに撓んだカンチレバーの法線方向に進み、したがって、主表面11の法線方向から基準点Oとは逆の方向、換言すると基準点Oから離れる方向に傾斜した方向に進む。このような主表面内から下向きに撓んだカンチレバーの初期状態は、製造時に設定することもできるし、圧電素子20に印加する電圧によって制御することもできる。カンチレバーの撓みの大きさも圧電素子20に印加する電圧によって制御することができる。
【0032】
図3Dは、比較例として両持ち梁の振動膜による音波の発生を説明する図である。両持ち梁の振動膜は、両側の固定端によって支持されている。振動膜は、静止した初期状態では固定端を含む平面内にあり、振動膜は上下方向に略同じ振幅で振動する。両持ち梁の振動膜から発生した音波は、固定端を含む平面の法線方向に進む。
【0033】
図4は、トランスデューサ1の基板10の主表面11における振動膜12の配置を示す平面図である。複数の振動膜12は、主表面11の略中央にある基準点Oに隣接し、基準点Oを取り囲むように基準点Oから所定の間隔を有する周上であって基準点Oについて4回回転対称な位置に固定端が配置された4個の振動膜12を有している。4個の振動膜12のカンチレバーは、平面視で略矩形状の基板10の縦方向又は横方向に沿って延びている。これら4個の振動膜12を第1周の振動膜12と称することにする。
【0034】
複数の振動膜12は、基準点Oから第1周の振動膜12のカンチレバーの固定端までの間隔よりも大きく、第1周の振動膜12のカンチレバーの自由端までの間隔よりも小さい間隔を有する周上であって基準点Oについて4回回転対称な位置に固定端が配置された4個の振動膜12を有している。4個の振動膜12のカンチレバー延びる方向は、隣接する第1周の振動膜12のカンチレバーの延びる方向と略45度の角度をなしている。これら4個の振動膜12を第2周の振動膜12と称することにする。
【0035】
複数の振動膜12は、基準点Oから第1周の振動膜12のカンチレバーの自由端までの間隔よりも大きく、第2周の振動膜12のカンチレバーの自由端までの間隔よりも小さい間隔を有する周上であって基準点Oについて4回回転対称な位置に固定端が配置された4個の振動膜12を有している。4個の振動膜12のカンチレバーは、基板10の縦方向又は横方向に沿って延びている。4個の振動膜12のカンチレバー延びる方向は、隣接する第2周の振動膜12のカンチレバーの延びる方向と略45度の角度をなしている。これら4個の振動膜12を第3周の振動膜12と称することにする。
【0036】
複数の振動膜12は、基準点Oから第2周の振動膜12のカンチレバーの自由端までの間隔よりも大きく、第3周の振動膜12のカンチレバーの自由端までの間隔よりも小さい間隔を有する周上であって基準点Oについて16回回転対称な位置であって、第3周の振動膜12と重なる4つの方向を除いた12の方向に固定端が配置された12個の振動膜12を有している。12個の振動膜12の内で4個の振動膜12のカンチレバーが延びる方向は、第2周の振動膜12が延びる方向と同じである。残りの8個の4個の振動膜12のカンチレバーは第3周の振動膜12と隣接し、隣接する第3周の振動膜12のカンチレバーと略22.5度の角度をなす。これら12個の振動膜12を第4周の振動膜12と称することにする。
【0037】
平面視で略矩形状の形状を有する主表面11の大部分は、第1周の振動膜12、第2周の振動膜12、第3周の振動膜12及び第4周の振動膜12によって占められている。主表面11の4個の頂点に近く振動膜12が配置されていない部分には、それぞれ基板10の縦方向に延びる一対の辺に沿って複数の電極パッド14が形成されている。これら複数の電極パッド14からは、主表面11に配置された第1周の振動膜12、第2周の振動膜12、第3周の振動膜12及び第4周の振動膜12のそれぞれについて振動膜12を駆動する圧電素子20に向けた配線が共通とされ、第1周の振動膜12、第2周の振動膜12、第3周の振動膜12及び第4周の振動膜12のそれぞれを独立に同期して駆動できるように接続されている。
【0038】
図5は、トランスデューサ1から発生した音波の進む方向を説明する断面図である。基板の10の主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーは、主表面11の略中央の基準点Oから各振動膜12に向かう方向に延び、静止した初期状態のカンチレバーは振動膜12が点Oから離れるほど主表面11より上向きに撓んでいる。例えば、図4に示した第1周の振動膜12から第4周の振動膜12では、各周の初期状態の振動膜12のカンチレバーは第1周の振動膜12から第4周の振動膜12に向かう順に上向きに撓む大きさが次第に増加している。
【0039】
このように、振動膜12の初期状態のカンチレバーの主表面11から上向きに撓む大きさは、振動膜12が基準点Oから離れるほど増加する。振動膜12のカンチレバーから発生する音波は、振動膜12の初期状態のカンチレバーの法線方向に進み、振動膜12が基準点Oから離れるほど主表面11の基準点Oにおける法線に向かって傾斜した方向に進む。したがって、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーから発生した音波は、基準点Oにおける主表面11の法線に向かって収束するように進む。収束の程度は、振動膜12のカンチレバーの撓みの大きさを制御することによって調整することができる。
【0040】
本実施の形態のトランスデューサ1においては、複数の振動膜12のカンチレバーの延びる方向は主表面11の基準点Oから当該振動膜12に向かう方向であるとしたが、これに限らず振動膜12から基準点Oに向かう方向であってもよい。この場合、トランスデューサ1の複数の振動膜12のカンチレバーから発生した音波が主表面11の基準点Oにおける法線に向かって収束するように進むようにするために、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーは、振動膜12が基準点Oから離れるに応じて、初期状態で主表面11から下方向に撓む大きさが増加するようにすればよい。
【0041】
本実施の形態のトランスデューサ1においては、略同一のサイズを有する略円板状のカンチレバーの振動膜12が、主表面11の略中央の基準点Oについて回転対称な位置の少なくとも一部に配置された振動膜12を含むグループについて、第1周の振動膜12から第4周の振動膜12までの4つのグループに従い配置されるようにしている。このため、主表面11の大部分が第1周の振動膜12から第4周の振動膜12までの複数の振動膜12によって占められている。このような配置により、主表面11に複数の振動膜12を高い密度で配置することができる。したがって、主表面11の大部分は振動膜12として有効に利用されるようになり、トランスデューサ1はスピーカとして使用するために十分な音量を発生することができる。
【0042】
本実施の形態のトランスデューサ1においては、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーの初期状態における撓みの大きさを適切に設定することにより、発生した音波を集束するようにしている。このようにトランスデューサ1から発生した音波に指向性を持たせることにより、トランスデューサ1で発生した音波を有効に利用することができる。た、本実施の形態のトランスデューサ1は、半導体製造技術を応用したMEMS技術を用いて製造されるため、一度に複数の個片を高い精度で作製することができる。
【0043】
図6は、変形例のトランスデューサ2の平面図である。図6に示す変形例のトランスデューサ2は、図1に示した本実施の形態のトランスデューサ1とは主表面11における振動膜12のカンチレバーの配置が相違しているが、他は同様の構成を有している。このため、本実施の形態のトランスデューサ1と共通する構成要素については対応関係を明らかにするため同様の参照番号を附すことにする。
【0044】
変形例のトランスデューサ2において、本実施の形態のトランスデューサ1と同様に、平面視で縦方向及び横方向のサイズが略等しい略矩形状の形状を有する基板10の主表面11には、複数の振動膜12が形成されている。複数の振動膜12は平面視で略矩形状の形状を有し、この略矩形状の振動膜12は一辺でのみ主表面11と連結され、他の三辺は主表面11との間にスリットが形成されて切り離されてカンチレバーを形成している。振動膜12のカンチレバーの延びる方向は、主表面11の略中央にある基準点Oから各振動膜12に向かう方向とされている。複数の振動膜12は、主表面11において略同一のサイズの略矩形状のカンチレバーに形成されている。
【0045】
図7は、変形例のトランスデューサの主表面における振動膜の配置を示す平面図である。複数の振動膜12は、主表面11の略中央にある基準点Oに隣接し、基準点Oを取り囲むように基準点から所定の間隔を有する周上であって基準点Oについて6回回転対称な位置に固定端が配置された6個の振動膜12を有している。6個の振動膜12のカンチレバーの内で基準点Oを挟んで対向する一対のカンチレバーは、平面視で略矩形状の基板10の縦方向に沿って延びている。これら6個の振動膜12を第1周の振動膜12と称することにする。
【0046】
複数の振動膜12は、基準点Oから第1周の振動膜12のカンチレバーの自由端までの間隔よりも大きい間隔を有する周上であって基準点Oについて12回回転対称な位置に固定端が配置された12個の振動膜12を有している。12個の振動膜12のカンチレバーの内で周に沿って交互に配置された6個の振動膜12のカンチレバーは、第1周の振動膜12の6個のカンチレバーと同じ方向に延びている。これら12個の振動膜12を第2周の振動膜12と称することにする。
【0047】
平面視で略矩形状の形状を有する主表面11の大部分は、第1周の振動膜12及び第2周の振動膜12によって占められている。主表面11の4個の頂点に近く振動膜12が配置されていない部分には、それぞれ基板10の縦方向に延びる一対の辺に沿って複数の電極パッド14が形成されている。これら複数の電極パッド14からは、主表面11に配置された第1周の振動膜12及び第2周の振動膜12のそれぞれについて振動膜12を駆動する圧電素子20に向けた配線が共通とされ、第1周の振動膜12及び第2周の振動膜12のそれぞれを独立に同期して駆動できるように接続されている。
【0048】
基板の10の主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーは、主表面の略中央の基準点Oから各振動膜12に向かう方向に延び、静止した初期状態のカンチレバーは基準点Oから離れるほど主表面11から上向きに撓む大きさが増加する。図7に示した第1周の振動膜12から第2周の振動膜12では、初期状態の振動膜12のカンチレバーは第1周の振動膜12から第2周の振動膜12に向かう順に主表面11から上向きに撓む大きさが次第に増加している。
【0049】
振動膜12のカンチレバーから発生する音波は、振動膜12の初期状態のカンチレバーの法線方向に進み、振動膜12が基準点Oから離れるほど主表面11の法線方向から基準点Oに向かって傾斜した方向に進む。したがって、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーから発生した音波は、基準点Oにおける主表面11の法線に向かって収束するように進む。収束の程度は、振動膜12のカンチレバーの撓みの大きさを制御することによって調整することができる。
【0050】
変形例のトランスデューサ2においては、複数の振動膜12のカンチレバーの延びる方向は主表面11の基準点Oから当該振動膜12に向かう方向であるとしたが、これに限らず振動膜12から基準点Oに向かう方向であってもよい。この場合、トランスデューサ2の複数の振動膜12のカンチレバーから発生した音波が主表面11の基準点Oにおける法線に向かって収束するように進むようにするために、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーは、振動膜12が基準点Oから離れるに応じて、初期状態で主表面11から下方向に撓む大きさが増加するようにすればよい。
【0051】
変形例のトランスデューサ2においては、主表面11にける複数の振動膜12のカンチレバーは、本実施の形態のトランスデューサ1とは異なる配置で形成されている。このような変形例のトランスデューサ2においても、主表面11に複数の振動膜12を高い密度で配置することができ、トランスデューサ2はスピーカとして使用するために十分な音量を発生することができる。また、本実施の形態のトランスデューサ1と同様に、変形例のトランスデューサ2においても、発生した音波を集束させ、指向性を持たせることができる。さらにまた、変形例のトランスデューサ2も、半導体製造技術を応用したMEMS技術を用いて製造されるため、一度に複数の個片を高い精度で作製することができる。
【0052】
(電子機器)
本実施の形態の電子機器は、スピーカとして本実施の形態のトランスデューサ1を備え ている。本実施の電子機器は、本実施のトランスデューサ1をスピーカとして備えること により十分な音量を発生し、発生する音波を集束することができる。
【0053】
図8は、本実施の形態の電子機器を示すブロック図である。本実施の形態の電子機器は、前述の本実施の形態のトランスデューサ1をスピーカとして備えるものであり、信号源41から入力した音声信号に従いトランスデューサ1から一定の音質の音波を発生することができるように、アナログデジタルコンバータ(ADC)42、デジタル信号プロセッサ(DSP)43、デジタルアナログコンバータ(DAC)44及び増幅器45をさらに備えている。
【0054】
電子機器において、信号源41からアナログ信号として入力した音声信号は、アナログ デジタルコンバータ42によってデジタル信号に変換された後、デジタル信号プロセッサ 43によって、所定の処理が施される。例えば、デジタル信号プロセッサ43は、トランスデューサ1の周波数特性を補償したり、トランスデューサ1間の位相を制御したり、必要に応じてイコライザー、サラウンドなどの処理を施したりする。デジタル信号プロセッサ43で処理された音声信号は、デジタルアナログコンバータ44でアナログ信号に変換された後、増幅器45によって増幅されてトランスデューサ1に供給される。
【0055】
本実施の形態の電子機器は、スピーカとして本実施の形態のトランスデューサ1を備えるので、スピーカが小型であるにもかかわらず十分な音量を提供することができる。また、トランスデューサ1で発生した音波を集束させ、指向性を持たせることができる。さらにまた、電子機器に備えられるトランスデューサ1は、半導体製造技術を応用したMEMS技術を用いて製造されるため、一度に複数の個片を高い精度で作製することができる。
【0056】
(トランスデューサアレイ)
本実施の形態のトランスデューサアレイは、基板と、基板の主表面に形成され、主表面内で一つの方向に延びるカンチレバーによる複数の振動膜と、複数の振動膜に積層され、各振動膜を励振する複数の圧電素子とを含むトランスデューサについて、複数のトランスデューサを含み、複数のトランスデューサは主表面が一側を向くように2次元状に配置され、複数のトランスデューサのカンチレバーは、2次元状の配置を含む平面上の基準点から当該トランスデューサに向かう方向、又は当該トランスデューサから基準点に向かう方向に延びる。ここで、一側とは、2次元状に配置された複数のトランスデューサを含む平面に対する一方の側をいうものとする。トランスデューサから発生する音波の進む方向を制御することができ、トランスデューサアレイから発生した音波を集束させることができる。
【0057】
複数のトランスデューサの振動膜のカンチレバーは、基準点から当該トランスデューサに向かう方向に延び、静止した初期状態で主表面より上向きに撓み、撓む大きさは当該トランスデューサが基準点から離れるに応じて増加してもよい。トランスデューサから発生する音波を集束させることができる。
【0058】
複数のトランスデューサの振動膜のカンチレバーは、当該トランスデューサから基準点に向かう方向に延び、静止した初期状態で主表面より下向きに撓み、撓む大きさは当該トランスデューサが基準点から離れるに応じて増加してもよい。トランスデューサから発生する音波を集束させることができる。
【0059】
トランスデューサアレイは、2次元状の配置を含む平面内で基準点の周りに回転対称な位置の少なくとも一部に配置された複数のトランスデューサを含むグループについて、少なくとも1つのグループを含んでもよい。回転対称に配置された複数のトランスデューサによって、収束するための音波を効率的に発生することができる。
【0060】
図9は、本実施の形態のトランスデューサアレイを構成するトランスデューサの平面図である。本実施の形態のトランスデューサアレイを構成するトランスデューサ3は、図1に示した本実施の形態のトランスデューサ1とは主表面11における振動膜12のカンチレバーの配置が相違しているが、他は同様の構成を有している。このため、本実施の形態のトランスデューサ1と共通する構成要素については対応関係を明らかにするため同様の参照番号を附すことにする。
【0061】
トランスデューサ3において、本実施の形態のトランスデューサ1と同様に、平面視で縦方向及び横方向のサイズが略等しい略矩形状の形状を有する基板10の主表面11には、複数の振動膜12が形成されている。複数の振動膜12は平面視で略矩形状の形状を有し、この略矩形状の振動膜12は一辺でのみ主表面11と連結され、他の三辺は主表面11との間にスリットが形成されて切り離されてカンチレバーを形成している。複数の振動膜12は主表面11に縦方向に6行、横方向に4列で等間隔で配列され、複数の振動膜12のカンチレバーは主表面11の横方向に沿って一方向に延びている。複数の振動膜12は、主表面11において、略同一のサイズの略矩形状のカンチレバーに形成されている。
【0062】
平面視で略矩形状の形状を有する主表面11の大部分は、縦方向に6行、横方向に4列で等間隔で配列された複数の振動膜12によって占められている。主表面11の4個の頂点に近く振動膜12が配置されていない部分には、それぞれ主表面11の縦方向に延びる一対の辺に沿って複数の電極パッド14が形成されている。これら複数の電極パッド14からは、複数の振動膜12に向けた配線が共通とされ、複数の振動膜12を駆動できるように接続されている。
【0063】
基板10の主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーは、基板10の横方向に沿って一方向に延びて、静止した初期状態のカンチレバーは主表面11における振動膜12の位置にかかわらず主表面11から上向きの撓みが同じ大きさであるように設定されている。このようなカンチレバーの撓みは、製造時に設定することもできるし、圧電素子20に印加する電圧によって制御してもよい。
【0064】
トランスデューサ3において、振動膜12のカンチレバーは初期状態から上下方向に略同じ振幅で振動して音波を発生する。トランスデューサ3から発生する音波は、一方向に延びて初期状態で主表面から上向きに撓むように設定された振動膜12のカンチレバーの法線方向である所定の方向に進む。
【0065】
図10は、本実施の形態のトランスデューサアレイ4を示す平面図である。図11は、本実施の形態のトランスデューサアレイ4を示す断面図である。図11の断面図は、図10の平面図における切断線XI-XIによる切断面を示している。本実施の形態のトランスデューサアレイ4において、支持基板30の平坦な主表面31に、複数のトランスデューサ3が、その主表面11が支持基板の主表面31と平行であって、支持基板30の主表面31から離れる側を向くように2次元状に配置されている。
【0066】
図9に示したように、トランスデューサ3において、複数の振動膜12のカンチレバーは平面視で略矩形状の基板10の主表面11に縦方向に6行、横方向に4列で等間隔で配列されているが、図10では2行2列のカンチレバーによって複数の振動膜12のカンチレバーを代表させて示すことにする。支持基板30は、所定の厚さを有する略板状の形状であり、平面視で縦方向及び横方向のサイズが略等しい略矩形状の形状を有している。支持基板30は、基板10と同様にシリコン基板であってもよいし、ガラス、有機材料など他の種類の素材で構成してもよく、プリント基板であってもよい。
【0067】
支持基板30の主表面31に配置された複数のトランスデューサ3は、主表面31の略中央にある基準点Pに隣接し、基準点Pを取り囲むように基準点Pから所定の間隔を有する周上であって基準点Pについて6回回転対称な位置に配置された6個のトランスデューサ3を含んでいる。ここで、トランスデューサ3の位置は、トランスデューサ3の主表面11の重心のような主表面11における適切な基準点であればよい。トランスデューサ3の平面視で略矩形状の基板10の横方向の辺は、支持基板30の主表面31の略中央の基準点Pから各トランスデューサ3に向かう方向に延び、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーもこの方向に延びている。基準点Pを挟んで対向する一対のトランスデューサ3は、平面視で略矩形状の支持基板30の縦方向に沿って延びている。これら6個のトランスデューサ3を第1周のトランスデューサ3と称することにする。
【0068】
支持基板30の主表面31に配置された複数のトランスデューサ3は、第1周のトランスデューサ3を取り囲むように配置され、基準点Pから所定の間隔を有する周上であって基準点Pについて12回回転対称な位置に配置された12個のトランスデューサ3を含んでいる。第1周のトランスデューサ3と同様に、トランスデューサ3の平面視で略矩形状の基板10の横方向の辺は、支持基板30の主表面31の略中央の基準点Pから各トランスデューサ3に向かう方向に延び、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーもこの方向に延びている。12個のトランスデューサ3の内で周に沿って交互に配置された6個のトランスデューサ3は、第1周のトランスデューサ3の6個のトランスデューサの3と平面視で略矩形状の基板10の横方向の辺が同じ方向に延び、主表面11に形成された複数の振動膜12のカンチレバーも同じ方向に延びている。これら12個のトランスデューサ3を第2周のトランスデューサ3と称することにする。
【0069】
支持基板30の主表面31に配置された複数のトランスデューサ3において、複数の振動膜12の静止した初期状態のカンチレバーはトランスデューサ3ごとに主表面31から上向きに撓み、トランスデューサ3の位置が支持基板30の主表面31の基準点Pから離れるほどカンチレバーが撓む大きさは増加するように構成されている。例えば、第1周のトランスデューサ3から第2周のトランスデューサ3では、振動膜12のカンチレバーは第1周のトランスデューサ3から第2周のトランスデューサ3に向かって初期状態における撓みの大きさが次第に増加している。
【0070】
このように、各トランスデューサ3の振動膜12の静止しているカンチレバーの主表面11から上向きに撓む大きさは、トランスデューサ3が支持基板30の主表面31の基準点Pから離れるほど増加する。トランスデューサ3から発生する音波は、各トランスデューサ3の振動膜12の静止しているカンチレバーの法線方向に進み、トランスデューサ3が基準点Pから離れるほど支持基板30の主表面31の法線方向から基準点Pに向かって傾斜した方向に進む。したがって、主表面31に配置された複数のトランスデューサ3から発生した音波は、基準点Pにおける主表面31の法線に向かって収束するように進む。収束の程度は、振動膜12のカンチレバーの撓みの大きさを制御することによって調整することができる。
【0071】
なお、本実施の形態のトランスデューサアレイ4においては、複数のトランスデューサ3の振動膜12のカンチレバーの延びる方向は支持基板30の主表面31の基準点Pから当該トランスデューサ3に向かう方向であるとしたが、これに限らずトランスデューサ3から基準点Pに向かう方向であってもよい。この場合、トランスデューサアレイ4の複数のトランスデューサ3から発生した音波が主表面11の基準点Pにおける法線に向かって収束するように進むようにするために、支持基板30の主表面31に配置された複数のトランスデューサ3は、振動膜12のカンチレバーが初期状態でトランスデューサ3が基準点Pから離れるほど主表面11から下方向に撓む大きさが増加するようにすればよい。
【0072】
本実施の形態のトランスデューサアレイ4においては、トランスデューサ3がスピーカとして十分な音量を発生することができるため、複数のトランスデューサ3を備える本実施の形態のトランスデューサアレイ4も十分な音量を発生することができる。また、本実施の形態のトランスデューサアレイ4においては、トランスデューサ3の発生する音波を集束することにより、指向性を持たせることができる。
【符号の説明】
【0073】
1、2、3 トランスデューサ
4 トランスデューサアレイ
10 基板
11 主表面
12 振動膜
14 電極パッド
15 背面
16 凹部
20 圧電素子
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11