(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109557
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】認証方法及び装置並びにトランスデューサ
(51)【国際特許分類】
G10K 15/00 20060101AFI20230801BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20230801BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230801BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G10K15/00 N
E05B49/00 Q
H04R3/00 330
H04R17/00 332
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011124
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】内貴 崇
【テーマコード(参考)】
2E250
5D019
【Fターム(参考)】
2E250CC20
2E250FF40
5D019BB19
(57)【要約】
【課題】超音波信号による認証が傍受されないようにする。
【解決手段】基板10の主表面に超音波の送受信が可能な複数の振動膜12が形成されたトランスデューサを用い、第1のトランスデューサ1及び第2のトランスデューサ2を互いの主表面11が対向するように配置し、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12から超音波信号100を個別に送信し、第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12で超音波信号100を個別に受信し、複数の振動膜12で個別に受信した超音波信号100に基づいて認証を判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主表面に超音波の送受信が可能な複数の振動膜が形成されたトランスデューサを用い、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサを互いの主表面が対向するように配置する工程と、
前記第1のトランスデューサの前記複数の振動膜から超音波信号を個別に送信する工程と、
前記超音波信号を前記第2のトランスデューサの前記複数の振動膜で個別に受信する工程と、
前記第2のトランスデューサで前記個別に受信した超音波信号に基づいて認証を判定する工程と
を含む認証方法。
【請求項2】
前記認証を判定する工程において成功と判定されると、この工程に続いて、前記第2のトランスデューサの前記複数の振動膜から超音波信号を個別に送信する工程と、
前記超音波信号を前記第1のトランスデューサの前記複数の領域で個別に受信する工程と、
前記第1のトランスデューサで前記個別に受信した超音波信号に基づいて認証を判定する工程と
をさらに含む請求項1に記載の認証方法。
【請求項3】
前記第1のトランスデューサ又は前記第2のトランスデューサの前記複数の振動膜から個別に送信する超音波信号は、前記超音波信号が所定の焦点で収束するように制御された請求項1又は2に記載の認証方法。
【請求項4】
前記第1のトランスデューサ又は前記第2のトランスデューサの前記複数の振動膜から個別に送信する超音波信号は、オン及びオフを切り換えるように制御された請求項1又は2に記載の認証方法。
【請求項5】
前記認証を判定する工程は、前記第1のトランスデューサ又は前記第2のトランスデューサの前記複数の振動膜で個別に受信した超音波信号が前記複数の振動膜に所定の分布をするときに成功と判定する請求項1から4のいずれか一項に記載の認証方法。
【請求項6】
前記認証を判定する工程は、前記所定の分布がさらに経時的に所定の変化をするときに成功と判定する請求項5に記載の認証方法。
【請求項7】
前記第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサを互いの主表面が対向するように配置する工程は、前記第1のトランスデューサ及び前記第2のトランスデューサの主表面を互いに位置決めする工程をさらに含む請求項1から6のいずれか一項に記載の認証方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板の主表面に形成された超音波信号の送受信が可能な複数の振動膜と、
前記複数の振動膜にそれぞれ積層された複数の圧電素子と、
前記複数の振動膜を前記複数の圧電素子により個別に駆動して超音波信号を送信するように制御する出力制御部と、
前記複数の振動膜に積層された前記複数の圧電素子により個別に検出された前記超音波信号に基づいて認証を判定する判定部と
を含むトランスデューサ。
【請求項9】
前記出力制御部は、前記複数の振動膜から個別に送信する超音波信号が所定の焦点で収束するように制御する請求項8に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
前記出力制御部は、前記複数の振動膜から個別に送信する超音波信号がオン及びオフを切り換えるように制御する請求項8に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
前記判定部は、前記複数の振動膜で個別に受信した超音波信号が前記複数の振動膜に所定の分布をするときに成功と判定する請求項8から10のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項12】
前記判定部は、前記所定の分布がさらに経時的に所定の変化をするときに成功と判定する請求項11に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
前記主表面を覆う所定厚さのスペーサをさらに含み、前記スペーサには前記複数の振動膜の上部を開放するように複数の穴が形成された請求項8から12のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載のトランスデューサを用いる認証装置であって、
第1のトランスデューサを備える第1のハウジングと、
第2のトランスデューサを備え、前記第1のハウジングを保持することができる保持部を有する第2のハウジングと、
前記保持部が前記第1のハウジングを保持すると前記第1のトランスデューサと前記第2のトランスデューサとが互いに位置決めされるように構成された位置決め手段と
を含む認証装置。
【請求項15】
前記保持部が前記第1のハウジングを保持することを検出する検出部をさらに含み、前記第1のトランスデューサは、前記検出部が前記第1のハウジングの保持を検出すると、前記出力制御部により前記第2のトランスデューサに向けて前記複数の振動膜から超音波信号を個別に送信するように制御する請求項14に記載の認証装置。
【請求項16】
前記検出部は、前記保持部による前記第1のハウジングの保持を磁気的に検出する請求項15に記載の認証装置。
【請求項17】
前記第1のハウジングは所定の厚さ及び幅を有する矩形状の形状を有し、前記保持部は前記第1のハウジングを差し込んで保持することができるような互いに対向する一組の溝をさらに含む請求項14から16のいずれか一項に記載の認証装置。
【請求項18】
前記第1のハウジングは、所定の厚さ及び幅を有する矩形状の形状を有し、前記保持部に差し込んで前記保持部の最奥部に対向する一つの短辺に形成され、前記最奥部に形成された穴に差し込まれて案内される前記第1のハウジングの長手方向に突出した一組の突起をさらに含む請求項14から17のいずれか一項に記載の認証装置。
【請求項19】
前記第1のハウジング及び前記保持部は、前記第1のハウジングが前記保持部に差し込まれる方向を軸として、この軸の周りに互いに特定の方位を有するときにのみ嵌合できるように構成された14から16のいずれか一項に記載の認証装置。
【請求項20】
前記保持部は、前記第1のトランスデューサを保持するときに、前記第1のトランスデューサ及び前記第2のトランスデューサが送受信する超音波信号を遮音する遮音材を備えた請求項14から19のいずれか一項に記載の認証装置。
【請求項21】
前記第1のハウジングは、前記保持部に保持されたときに前記第1のトランスデューサ及び前記第2のトランスデューサが送受信する超音波信号を遮音する遮音材を備えた請求項14から20のいずれか一項に記載の認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、超音波の送受信により認証する認証方法及び装置並びにトランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波の送受信により認証する技術が提供されている。例えば車両用の認証方法として、超音波信号を送受信して電子認証する技術が提案されている(特許文献1を参照)。超音波の送受信には半導体製造技術を応用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製され、一対の電極によって圧電膜を両側から挟んだ圧電素子で振動板を駆動するタイプのトランスデューサを使用することができる(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-63284号公報
【特許文献2】特開2012-105170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMS技術を用いて作製されたトランスデューサは、小型であり、送受信する超音波の音量は微小であり、指向性を有しているため、概して超音波信号のやり取りは傍受されにくい。しかしながら、超音波信号が空間を通じて伝送される以上、超音波信号が第三者によって傍受される懸念があった。
【0005】
本実施の形態は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、超音波信号を用いた認証方法及び装置並びにトランスデューサであって、傍受することが困難であるような認証方法及び装置並びにトランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態の一態様は、基板の主表面に超音波の送受信が可能な複数の振動膜が形成されたトランスデューサを用い、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサを互いの主表面が対向するように配置する工程と、第1のトランスデューサの複数の振動膜から超音波信号を個別に送信する工程と、超音波信号を第2のトランスデューサの複数の振動膜で個別に受信する工程と、第2のトランスデューサで個別に受信した超音波信号に基づいて認証を判定する工程とを含む認証方法である。
【0007】
本実施の形態の一態様は、基板と、基板の主表面に形成された超音波信号の送受信が可能な複数の振動膜と、複数の振動膜にそれぞれ積層された複数の圧電素子と、複数の振動膜を複数の圧電素子により個別に駆動して超音波信号を送信するように制御する出力制御部と、複数の振動膜に積層された複数の圧電素子により個別に検出された超音波信号に基づいて認証を判定する判定部とを含むトランスデューサである。
【0008】
本実施の形態の一態様は、トランスデューサを用いる認証方法であって、第1のトランスデューサを備える第1のハウジングと、第2のトランスデューサを備え、第1のハウジングを保持することができる保持部を有する第2のハウジングと、保持部が第1のハウジングを保持すると第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとが互いに位置決めされるように構成された位置決め手段とを含む認証装置である。
【発明の効果】
【0009】
本実施の形態によれば、超音波信号による認証の傍受は困難である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、本実施の形態のトランスデューサを示す斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本実施の形態のトランスデューサを示す平面図である。
【
図1C】
図1Cは、本実施の形態のトランスデューサを示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態のトランスデューサの回路構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態のトランスデューサの変形例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態の認証方法を説明する斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本実施の形態の認証方法の第1の具体例を説明する斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、本実施の形態の認証方法の第1の具体例の原理を説明する模式図である。
【
図6】第6は、本実施の形態の認証方法の第2の具体例を説明する斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態の認証装置を示す正面図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態の第1の変形例を示す正面図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態の第2の変形例を示す正面図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態の第3の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚さと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するために例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。実施の形態は、特許請求の範囲に規定された構成に基づいて、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(トランスデューサ)
本実施のトランスデューサは、MEMS技術を用いて製造され、超音波の発生及び検出に使用されることを想定している。本実施の形態のトランスデューサは、基板と、基板の主表面に形成された超音波信号の送受信が可能な複数の振動膜と、複数の振動膜にそれぞれ積層された複数の圧電素子と、複数の振動膜を複数の圧電素子により個別に駆動して超音波信号を送信するように制御する出力制御部と、複数の振動膜に積層された複数の圧電素子により個別に検出された超音波信号に基づいて認証を判定する判定部とを含む。
【0014】
出力制御部は、複数の振動膜から個別に送信する超音波信号が所定の焦点で収束するように制御してもよい。出力制御部は、複数の振動膜から個別に送信する超音波信号がオン及びオフを切り換えるように制御してもよい。
【0015】
判定部は、複数の振動膜で個別に受信した超音波信号が複数の振動膜に所定の分布をするときに成功と判定してもよい。判定部は、所定の分布がさらに経時的に所定の変化をするときに成功と判定してもよい。
【0016】
主表面を覆う所定の厚さのスペーサをさらに含み、スペーサには複数の振動膜の上部を開放するように複数の穴が形成されていてもよい。
【0017】
図1Aは、本実施の形態のトランスデューサを示す斜視図である。
図1Bは本実施の形態のトランスデューサを示す平面図であり、
図1Cは本実施の形態のトランスデューサを示す断面図である。
図1Cは、
図1A及び
図1B中の切断線IC-ICによるトランスデューサの断面を示している。
【0018】
トランスデューサは、平坦な主表面11及び主表面11に対向する背面15を有する基板10に形成されている。基板10は、厚さがtの板状のシリコン基板であり、主表面11は平面視で一片の長さがDの略正方形状である。基板10の厚さtは例えば0.2から0.6mmの範囲にあってもよく、一片の長さDは例えば3から6mmの範囲にあってもよい。なお、基板10はシリコン基板に限らず、ガラス基板、有機材料など他の種類の素材によって構成されてもよい。
【0019】
基板10の背面15には、複数の凹部16が形成されている。複数の凹部16は、主表面11から所定の深さまで達し、主表面11が基板10の厚さ方向に振動できるように所定の厚さの基板10を残すように形成されている。これらの所定の厚さの基板10が残された部分は、複数の振動膜12を形成している。複数の振動膜12は、超音波の発生及び検出に使用されるため、その固有振動数は可聴域よりも高い振動数とされている。複数の振動膜12を構成する基板10はそれぞれの振動膜12の全周において主表面11が連結しているが、振動膜12が片持ち梁又は両持ち梁の構造を有するように基板10に適切なスリットが形成されてもよい。
【0020】
複数の振動膜12において、主表面11には下部電極層21及び上部電極層23の一対の電極層によって圧電体層22が挟まれて構成された圧電素子20が積層されている。圧電素子20は、後述する駆動回路/受信回路45に図示しない配線層によって接続され、供給された電圧によって振動膜12が基板10の厚さ方向に振動するように駆動され、また、振動膜12の振動によって発生した電圧を駆動回路/受信回路45に供給している。主表面11において、複数の振動膜12は、同一の半径を有する略円板状の形状を有している。複数の振動膜12に積層された圧電素子20も、主表面11において、複数の振動膜12の形状にしたがい同様に略円板状の形状を有している。振動膜12の半径rは、例えば0.2から0.4mmの範囲にあってもよい。
【0021】
複数の振動膜12は、平面視で略正方形状の主表面11において、輪郭を形成する4辺の内で隣接して互いに略直交する2辺の延びる方向について間隔pでそれぞれ6個、全部で36個が配置されている。ここで、振動膜12の間隔pとは、略円板状の形状を有する振動膜12のそれぞれの中心の間の距離をいうものとする。間隔pは、例えば0.5から1mmの範囲にあってもよい。一般に、振動膜12の間隔は、主表面11における振動膜12のそれぞれの重心の間の距離としてもよい。なお、等しい間隔とは、厳密に等しい間隔に限らず、例えば差異が±10%程度に留まるなど実質的に等しいとみなせる場合を含むものとする。
【0022】
図2は、本実施の形態のトランスデューサの回路構成を示す図である。トランスデューサの複数の振動膜12にそれぞれ積層された複数の圧電素子20
0~20
Nは、対応する複数の駆動回路/受信回路45
0~45
Nにそれぞれ接続されている。複数の圧電素子20
0~20
Nは、対応する複数の振動膜12が励振されて超音波を発生するように駆動回路/受信回路45
0~45
Nによって個別に駆動される。また、複数の圧電素子20
0~20
Nは、対応する複数の振動膜12が超音波を個別に検出して発生した電圧を駆動回路/受信回路45
0~45
Nに供給する。したがって、複数の振動膜12は、対応する圧電素子20
0~20
N及び駆動回路/受信回路45
0~45
Nによって超音波を個別に送受信することができる。
【0023】
トランスデューサにおいて、複数の駆動回路/受信回路450~45Nは、それぞれ各振動膜12から送信する超音波を個別に制御する出力制御部42と、各振動膜1200~120Nで個別に受信した超音波の認証の判定する受信判定部43とにそれぞれ接続されている。出力制御部42及び受信判定部43は、トランスデューサの外部との信号の送受信に携わるインターフェース部41に接続されている。
【0024】
これら複数の駆動回路/受信回路45
0~45
N、出力制御部42、受信判定部43及びインターフェース部41を含む回路部分は、基板10と一体となるように例えば基板10の背面15に取り付けられてもよい。また、このような回路部分は、基板10とは別個に設けられてもよい。
図1A~
図1Cに示したトランスデューサにおいては、回路部分の図示を省略している。
【0025】
本実施の形態のトランスデューサは、後述する認証方法に使用することができる。本実施の形態のトランスデューサは、出力制御部42により主表面11に配置された複数の振動膜12から個別に超音波制御信号を送信し、後述するように主表面11に配置された複数の振動膜で個別に受信した超音波信号に基づいて受信判定部43で認証を判定することができる。トランスデューサにおいて複数の振動膜12によって送受信される超音波信号100は、個別に送信された複数の振動膜12の位置の分布に従う位置情報を含むために傍受することは困難である。
【0026】
図3は、本実施の形態のトランスデューサの変形例を示す斜視図である。変形例のトランスデューサは、複数の振動膜12の上部をそれぞれ開放するように複数の孔32が形成された所定の厚さのスペーサ30が主表面11に取り付けられている点で本実施の形態のトランスデューサと相違している。スペーサ30は、例えばプラスチックで構成されていてもよい。なお、変形例のトランスデューサは、スペーサ30が取り付けられている点を除いて本実施の形態のトランスデューサと同様の構成を有しているので、簡単のために共通する構成部分には同一の参照番号を付している。
【0027】
変形例のトランスデューサにおいては、主表面11に配置された複数の振動膜12は所定の高さまでスペーサ30によって取り囲まれ、振動膜12に衝撃が加えられたりすることがないように保護されている。また、振動膜12を所定の高さまで取り囲むスペーサ30によって、振動膜12から送信される超音波信号は主表面11の法線ベクトル方向に進むように案内される。
【0028】
(認証方法)
本実施の形態の認証方法は、基板の主表面に超音波の送受信が可能な複数の振動膜が形成されたトランスデューサを用い、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサを互いの主表面が対向するように配置する工程と、第1のトランスデューサの複数の振動膜から超音波信号を個別に送信する工程と、超音波信号を第2のトランスデューサの複数の振動膜で個別に受信する工程と、第2のトランスデューサで個別に受信した超音波信号に基づいて認証を判定する工程とを含む。
【0029】
認証を判定する工程において成功と判定されると、この工程に続いて、第2のトランスデューサの複数の振動膜から超音波信号を個別に送信する工程と、超音波信号を第1のトランスデューサの複数の領域で個別に受信する工程と、第1のトランスデューサで個別に受信した超音波信号に基づいて認証を判定する工程とをさらに含んでもよい。
【0030】
第1のトランスデューサ又は第2のトランスデューサの複数の振動膜から個別に送信する超音波信号は、超音波信号が所定の焦点で収束するように制御されてもよい。第1のトランスデューサ又は第2のトランスデューサの複数の振動膜から個別に送信する超音波信号は、オン及びオフを切り換えるように制御されてもよい。
【0031】
認証を判定する工程は、第1のトランスデューサ又は第2のトランスデューサの複数の振動膜で個別に受信した超音波信号が複数の振動膜に所定の分布をするときに成功と判定してもよい。認証を判定する工程は、所定の分布がさらに経時的に所定の変化をするときに成功と判定してもよい。
【0032】
第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサを互いの主表面が対向するように配置する工程は、第1のトランスデューサ及び前記第2のトランスデューサの主表面を互いに位置決めする工程をさらに含んでもよい。
【0033】
図4は、本実施の形態の認証方法を説明する図である。本実施の形態の認証方法では、超音波信号の送受信のために
図1A~1Cに示した本実施の形態のトランスデューサを使用する。なお、本実施の形態のトランスデューサに代えて、
図3に示した本実施の形態のトランスデューサの変形例を使用してもよい。
【0034】
図4に示すように、第1のトランスデューサ1と、第2のトランスデューサ2とを互いの主表面11が所定の距離を挟んで対向するように位置決めして設置する。例えば、第1のトランスデューサ1及び第2のトランスデューサ2は、それぞれ主表面11の法線ベクトル方向に並進させると、それぞれ略正方形状を有する主表面11の輪郭が完全に重なるような方位になるように設置される。なお、第1のトランスデューサ1及び第2のトランスデューサ2は、同一の構造を有しているため、簡単のために共通する構成部分には同一の参照番号を付している。
【0035】
第1のトランスデューサ1の主表面11に形成された複数の振動膜12は、それぞれ積層された対応する圧電素子20によって個別に駆動されて超音波を発生する。
図2を参照すると、圧電素子20
0~20
Nは対応する駆動回路/受信回路45
0~45
Nによって個別に駆動され、駆動回路/受信回路45
0~45
Nは出力制御部42によって制御される。したがって、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12は、出力制御部42によって超音波信号100を個別に送信するように制御されているということができる。このように、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12は、第1のトランスデューサ1に対向して設置された第2のトランスデューサ2に向けて超音波信号100を送信することができる。
【0036】
第2のトランスデューサ2の主表面11に形成された複数の振動膜12は、それぞれ検出した超音波によって励振され、それぞれ積層された対応する圧電素子20に電圧が発生する。
図2を参照すると、圧電素子20
0~20
Nで発生した電圧は対応する駆動回路/受信回路45
0~45
Nに個別に供給され、駆動回路/受信回路45
0~45
Nにおいて受信信号に変換されて受信判定部43に送られる。したがって、第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12は、超音波信号100を個別に受信しているということができる。このように、第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12は、第2のトランスデューサ2に対向して設置された第1のトランスデューサ1から送信された超音波信号100を受信することができる。
【0037】
第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12において個別に受信した超音波信号100は、受信判定部43において、認証が判定される。例えば、複数の振動膜12で受信した超音波信号100の強度が、複数の振動膜12に所定の分布をしているときに認証は成功したと判定し、そうでないときに認証は失敗したと判定してもよい。また、超音波信号100の強度の複数の振動膜12における分布が、経時的に所定の変化をするときに認証は成功したと判定し、そうでないときに認証は失敗したと判定してもよい。そして、このような一連の認証方法の手続を終えてもよい。
【0038】
第2のトランスデューサ2の受信判定部43において受信した超音波信号100の判定を終えてから、第2のトランスデューサ2の出力制御部42は、逆に第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12から第1のトランスデューサ1に向けて超音波信号100を送信してもよい。この場合、第1のトランスデューサ1の主表面11に形成された複数の振動膜12は、それぞれ積層された対応する圧電素子20によって個別に駆動されて超音波を発生する。
図2を参照すると、圧電素子20
0~20
Nは対応する駆動回路/受信回路45
0~45
Nによって個別に駆動され、駆動回路/受信回路45
0~45
Nは出力制御部42によって制御される。
【0039】
第1のトランスデューサ1の主表面11に形成された複数の振動膜12は、それぞれ検出した超音波によって励振され、それぞれ積層された対応する圧電素子20に電圧が発生する。
図2を参照すると、圧電素子20
0~20
Nで発生した電圧は対応する駆動回路/受信回路45
0~45
Nに個別に供給され、駆動回路/受信回路45
0~45
Nにおいて受信信号に変換されて受信判定部43に送られる。
【0040】
第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12において個別に受信した超音波信号100は、第1のトランスデューサ1の受信判定部43において、認証が判定される。例えば、複数の振動膜12で受信した超音波信号100の強度が、複数の振動膜12に所定の分布をしているときに認証は成功したと判定し、そうでないときに認証は失敗したと判定してもよい。また、超音波信号100の強度の複数の振動膜12における分布が、経時的に所定の変化をするときに認証は成功したと判定し、そうでないときに認証は失敗したと判定してもよい。
【0041】
このような認証の判定は、第2のトランスデューサ2の受信判定部43においてした判定と、第1のトランスデューサの受信判定部43でした判定の両方が成功したときに、判定が成功であるとしてもよいし、少なくとも一方で成功と判定されたときに認証が成功と判定してもよい。また、第1のトランスデューサ1から第2のトランスデューサ2に超音波信号100を送った後で逆に第2のトランスデューサ2から第1のトランスデューサ1に超音波信号100を送ってそれぞれ超音波信号100に基づいて認証を判定したが、第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2との間でこのような超音波信号100の送受を繰り返し、認証をそれぞれ判定した結果に基づいて最終的な認証を総合的に判定してもよい。
【0042】
本実施の形態の認証方法によると、認証の判定は、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12から個別に送信された超音波信号100を第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12で個別に受信した結果に基づいている。超音波信号100には第1のトランスデューサ1の超音波信号100を個別に送信した複数の振動膜12の位置の分布に従う位置情報が含まれ、第2のトランスデューサ2では超音波信号100を複数の振動膜12で個別に受信することにより位置情報を検出している。このため、第1のトランスデューサ1及び第2のトランスデューサ2の外部から送信した複数の振動膜12の位置の分布に従う位置情報を含む超音波信号100を傍受することは困難である。したがって、認証方法の機密性が保たれ、ひいては認証方法の信頼性を確保することができる。
【0043】
図5Aは、本実施の形態の認証方法の第1の具体例を説明する図である。第1の具体例では、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12から超音波信号100を個別に送信することにより、超音波信号100が所定の位置に収束するようにしている。図中では、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12から送信された超音波信号100は、第1の位置101、第2の位置102及び第3の位置103という異なる位置にそれぞれ収束している。超音波信号100は、これら第1の位置101、第2の位置102及び第3の位置103に同時に収束するようにしてもよいし、例えば第1の位置101、第2の位置102及び第3の位置103の順に収束する位置が経時的に変化するようにしてもよい。
【0044】
第2のトランスデューサ2では、第1の位置101、第2の位置102及び第3の位置103で収束する超音波信号100を複数の振動膜12によって個別に検出することができる。第2のトランスデューサの受信判定部43は、これら第1の位置101、第2の位置102及び第3の位置103で収束する超音波信号100が所定の分布をしているときに認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。また、超音波信号100の複数の振動膜12における分布が、第1の位置101、第2の位置102及び第3の位置103で順に収束するように超音波信号100が経時的に所定の変化をするときに認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。第2のトランスデューサ2から第1のトランスデューサ1に向けて超音波信号100を送る場合も同様である。
【0045】
図5Bは、本実施の形態の認証方法の第1の具体例の原理を説明する図である。
図1A~1Bに示されているように、本実施の形態のトランスデューサは、基板10の主表面11に超音波信号100を送受信する振動膜12が二次元状に配置されているが、図中では説明の便宜のために複数の振動膜12
0~12
r-1,12
r,12
r+1~12
Nが一次元状に配列された例を示す。図中の基板10の主表面11にはスピーカの記号で表された複数の振動膜12
0~12
r-1,12
r,12
r+1~12
Nが一列に配置されている。
【0046】
振動膜120~12r-1,12r,12r+1~12Nはそれぞれ圧電素子200~20r-1,20r,20r+1~20Nによって個別に駆動される。圧電素子200~20r-1,20r,20r+1~20Nは対応する駆動回路/受信回路450~45r-1,45r,45r+1~45Nに接続され、駆動回路/受信回路450~45r-1,45r,45r+1~45Nはさらに出力制御部42に接続され、出力制御部42はインターフェース部41に接続されている。
【0047】
複数の振動膜12
0~12
r-1,12
r,12
r+1~12
Nは、出力制御部42の制御に従い、対応する駆動回路/受信回路45
0~45
r-1,45
r,45
r+1~45
Nを介して圧電素子20
0~20
r-1,20
r,20
r+1~20
Nによって個別に駆動される。ここでは、振動膜12
0~12
r-1,12
r,12
r+1~12
Nで発生する超音波信号100の位相が制御され、各振動膜12
0~12
r-1,12
r,12
r+1~12
Nで発生した超音波信号100が互いに干渉して一つの点Fに収束するようにされている。超音波信号は複数の点に収束させたり、広がりを持った範囲に収束させたりすることもできる。
図5Aに示した第1の位置101、第2の位置102及び第3の位置103に収束する超音波信号100は、このような原理によって実現することができる。
【0048】
第1の具体例によると、第1のトランスデューサ1から送信する超音波信号100を複数の振動膜12で個別に制御することにより、様々な位置に収束させたり、経時的に変化させたりすることができる。したがって、送信する超音波信号100の分布を高度に制御することにより、超音波信号100の傍受をさらに困難にすることができる。また、第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2との間の距離が大きい場合にも、超音波信号100の収束の位置を適切に制御することによって超音波信号100の送受信を可能にすることができる。
【0049】
図6は、本実施の形態の認証方法の第2の具体例を説明する図である。第2の具体例では、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12から超音波信号100のオン及びオフの切り換えを個別に制御して送信している。図中では、基板10の主表面11に配置された複数の振動膜12の内で特定の3個のトランスデューサ20
p,20
q,20
rがオンに制御されて超音波信号100を送信しているが、他の振動膜12はオフに制御されて超音波信号100を送信していない。
【0050】
第2のトランスデューサ2では、第1のトランスデューサ1の特定の3個のトランスデューサ20p,20q,20rから送信された超音波信号100を複数の振動膜12によって個別に検出することができる。第2のトランスデューサ2の受信判定部43は、超音波信号100が所定の分布をしているときに認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。第2のトランスデューサ2から第1のトランスデューサ1に向けて超音波信号100を送る場合も同様である。
【0051】
例えば、第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12で受信する超音波信号100は第1のトランスデューサ1でオンに制御されて超音波信号100を送信する振動膜12に対向する位置の振動膜12で強度が大きくなると期待される。このため、第2のトランスデューサ2の受信判定部43は、複数の振動膜12で検出した超音波信号100の強度の分布に基づいて第2のトランスデューサ2の特定の振動膜12p,12q,12rを決定してもよい。さらに、このように決定された第2のトランスデューサ2の振動膜12の分布が第1のトランスデューサ1でオンに制御された振動膜12の分布と一致するか、又は部分的に一致するときには認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。
【0052】
第2の具体例によると、複数の振動膜12についてオン及びオフを適切に切り換える制御のみで超音波信号100を送信することができる。また、複数の振動膜12で受信した超音波信号100は、超音波信号100を送信した複数の振動膜12のオン又はオフの制御の分布に基づいて容易に認証を判定することができる。したがって、認証方法の工程が簡素になり、認証装置の回路構成を簡易化することができる。また、超音波信号100には振動膜12のオフ又はオフを個別に制御して複数の振動膜12の位置の分布に従う位置情報を含ませることができるため、主表面11に配置される複数の振動膜12の個数は少なくても足りる。
【0053】
(認証装置)
本実施の形態に係る認証装置は、本実施の形態のトランスデューサを用い、第1のトランスデューサを備える第1のハウジングと、第2のトランスデューサを備え、第1のハウジングを保持することができる保持部を有する第2のハウジングと、保持部が第1のハウジングを保持すると第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとが互いに位置決めされるように構成された位置決め手段とを含む。
【0054】
保持部が第1のハウジングを保持することを検出する検出部をさらに含み、第1のトランスデューサは、検出部が第1のハウジングの保持を検出すると、出力制御部により第2のトランスデューサに向けて複数の振動膜から超音波信号を個別に送信するように制御してもよい。検出部は、保持部による第1のハウジングの保持を磁気的に検出してもよい。
【0055】
第1のハウジングは所定の厚さ及び幅を有する矩形状の形状を有し、保持部は第1のハウジングを差し込んで保持することができるような互いに対向する一組の溝をさらに含んでもよい。
【0056】
第1のハウジングは、所定の厚さ及び幅を有する矩形状の形状を有し、保持部に差し込んで保持部の最奥部に対向する一つの短辺に形成され、最奥部に形成された穴に差し込まれて案内される第1のハウジングの長手方向に突出した一組の突起をさらに含んでもよい。
【0057】
第1のハウジング及び保持部は、第1のハウジングが保持部に差し込まれる方向を軸として、この軸の周りに互いに特定の方位を有するときにのみ嵌合できるように構成されてもよい。
【0058】
保持部は、第1のトランスデューサを保持するときに、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサが送受信する超音波信号を遮音する遮音材を備えてもよい。第1のハウジングは、保持部に保持されたときに第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサが送受信する超音波信号を遮音する遮音材を備えてもよい。
【0059】
図7は、本実施の形態の認証装置の概略的な構成を示す正面図である。第1のトランスデューサ1は、平面視で略横長の矩形状の輪郭と所定の厚さとを有するカード型の第1のハウジング50に備えられている。第1のトランスデューサ1は、カード型の第1のハウジング50の一つの短辺51の縁部の中央に、主表面11が縁部に向かうように備えられている。また、第1のハウジング50の長辺の一つの縁部には、第1のトランスデューサ1に近い位置に磁性体52が備えられている。第1のハウジング50は、例えばプラスチックによって構成されてもよい。なお、第1のハウジング50の一つの短辺の縁部には、第1のトランスデューサ1で送受信される超音波信号100を遮音するように、第1のトランスデューサ1の主表面11に沿って取り囲むように配置された図示しない遮音材が設けられてもよい。
【0060】
第2のトランスデューサ2は、第2のハウジング60に備えられている。第2のトランスデューサ2は、カード型の第1のハウジング50を図中の矢印に示すように長手方向に進めて差し込んで保持することができる第2のハウジング60の保持部61の最奥部63の中央に、主表面11が差し込まれた第1のハウジング50に対向するように設置されている。また、保持部61の側部には、保持部61に第1のハウジング50が差し込まれたときに第1のハウジング50の長辺の一つの縁部に備えられた磁性体52に対向する位置に、この磁性体52を検出することができる磁気センサ62が設置されている。第2のハウジング60は、例えばプラスチックによって構成されてもよい。なお、保持部61の最奥部63には、第2のトランスデューサ2で送受信される超音波信号100を遮音するように、第2のトランスデューサ2の主表面11に沿って取り囲むように配置された図示しない遮音材が設けられてもよい。
【0061】
認証装置において、第1のハウジング50が図中の矢印に示すように長手方向に進められて第2のハウジング60の保持部61に差し込まれ、第1のハウジング50の一つの短辺51が第2のハウジング60の保持部61の最奥部63に達すると、第1のハウジング50に備えられた第1のトランスデューサ1と第2のハウジング60に備えられた第2のトランスデューサ2は、
図4に示したように第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2との互いの主表面11が所定の距離を挟んで対向するように位置決めされる。例えば、第1のトランスデューサ1及び第2のトランスデューサ2は、それぞれ主表面11の法線ベクトル方向に並進させると、それぞれ略正方形状を有する主表面11の輪郭が完全に重なるような方位になるように位置決めされる。このように、第1のハウジング50及び第2のハウジング60は、第1のトランスデューサ1及び第2のトランスデューサ2を位置決めするための位置決め手段を構成している。
【0062】
認証装置において、第1のハウジング50が第2のハウジング60の保持部61に差し込まれ、第1のハウジング50に備えられた第1のトランスデューサ1と第2のハウジング60に備えられた第2のトランスデューサ2との位置決めがされると、第2のハウジング60の磁気センサ62によって第1のハウジング50の磁性体52が検出される。したがって、第2のハウジング60の磁気センサ62によって第1のハウジング50の磁性体52が検出されると、第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2とが位置決めされたことがわかる。
【0063】
位置決めに続いて、第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2との間の一連の認証方法の手続が開始される。この認証方法の手続は、磁気センサ62による磁性体52の検出のタイミングで開始されてもよい。
図4を参照すると、第1のトランスデューサ1の主表面11に形成された複数の振動膜12は、それぞれ積層された対応する圧電素子20によって個別に駆動されて超音波を発生する。このように、第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12は、第1のトランスデューサ1に対向して設置された第2のトランスデューサ2に向けて超音波信号100を送信する。第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2との間で送受信される超音波信号100は、第1のハウジング50及び第2のハウジング60の少なくとも一方に設けられた遮音材によって遮音されていてもよい。
【0064】
第2のトランスデューサ2の主表面11に形成された複数の振動膜12は、それぞれ検出した超音波によって励振され、それぞれ積層された対応する圧電素子20に電圧が発生する。このように、第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12は、第2のトランスデューサ2に対向して設置された第1のトランスデューサ1から送信された超音波信号100を受信する。
【0065】
図2を参照すると、第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12において個別に受信した超音波信号100は、対応する圧電素子20及び駆動回路/受信回路45を介して受信判定部43に送られ、認証が判定される。例えば、複数の振動膜12で受信した超音波信号100の強度が、複数の振動膜12に所定の分布をしているときに認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。また、超音波信号100の強度の複数の振動膜12における分布が、経時的に所定の変化をするときに認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。そして、このような一連の認証方法の手続を終えてもよい。
【0066】
第2のトランスデューサ2の受信判定部43において受信した超音波信号100の判定を終えてから、第2のトランスデューサ2の出力制御部42は、逆に第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12から第1のトランスデューサ1に向けて超音波信号100を送信してもよい。
【0067】
第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12において個別に受信した超音波信号100は、第1のトランスデューサ1の受信判定部43において、認証が判定される。例えば、複数の振動膜12で受信した超音波信号100の強度が、複数の振動膜12に所定の分布をしているときに認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。また、超音波信号100の強度の複数の振動膜12における分布が、経時的に所定の変化をするときに認証は成功と判定し、そうでないときに認証は失敗と判定してもよい。
【0068】
このような認証は、第2のトランスデューサ2の受信判定部43においてした判定と、第1のトランスデューサの受信判定部43でした判定の両方が成功のときに、認証が成功としてもよいし、少なくとも一方で成功と判定されたときに認証が成功と判定してもよい。さらに、第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2との間でこのような超音波信号100の送受を繰り返し、超音波信号100をそれぞれ判定した結果に基づいて最終的な認証を総合的に判定してもよい。
【0069】
本実施の形態の認証装置によると、認証の判定は、第1のハウジング50に備えられた第1のトランスデューサ1の複数の振動膜12から個別に送信された超音波信号100を第2のハウジング60に備えられた第2のトランスデューサ2の複数の振動膜12で個別に受信した結果に基づいている。超音波信号100には第1のトランスデューサ1の超音波信号100を個別に送信した複数の振動膜12の位置の分布に従う位置情報が含まれ、第2のトランスデューサ2では超音波信号100を複数の振動膜12で個別に受信することにより位置情報を検出している。このため、第1のトランスデューサ1及び第2のトランスデューサ2の外部から複数の振動膜12の位置の分布に従う位置情報を含む超音波信号100を傍受することは困難である。したがって、認証方法の機密性が保たれ、ひいては認証方法の信頼性を確保することができる。
【0070】
図8は、本実施の形態の認証装置の第1の変形例を示す正面図である。第1の変形例においては、第2のハウジング60の保持部61の側部において、保持部61に差し込まれる第1のハウジング50の対向する二つの長辺の縁部を挟んで案内するように第1のハウジング50が差し込まれる方向に延びる溝が形成された一組の第1のガイド65が設けられている点が本実施の形態の認証装置と相違している。
【0071】
第1の変形例においては、第2のハウジング60の保持部61の側部にこのような第1のガイド65が設けられているため、第2のハウジング60の保持部61に対する第1のハウジング50の位置を正確に制御することができる。したがって、第1のガイド65は、第1のハウジング50に備えられた第1のトランスデューサ1と第2のハウジング60に備えられた第2のトランスデューサ2とを正確に位置決めするための位置決め手段を構成するということができる。
【0072】
図9は、本実施の形態の認証装置の第2の変形例を示す正面図である。第2の変形例においては、第2のハウジング60の保持部61の側部において、第1のハウジング50が第2のハウジング60の保持部61に差し込まれるときに保持部61の最奥部63に対向する一つの短辺51において、この短辺51の縁部の中央に備えられた第1のトランスデューサ1を挟んだ両側から第1のハウジング50の長手方向に所定の長さにわたり突出した一組の突起である一組の第2のガイド55を有する点が本実施の形態の認証装置と相違している。なお、
図9には示していないが、第2の変形例の第2のハウジング60の保持部61の最奥部63には、第2のガイド55を差し込んで案内するための一組の孔が形成されている。
【0073】
第2の変形例においては、第1のハウジング50の一つの短辺51にこのような第2のガイド55が設けられているため、第2のハウジング60の保持部61に第1のハウジング50が保持されるように図中の矢印の方向に第1のハウジング50を長手方向に進めるときに、第2のガイド55が保持部61の最奥部63に形成された孔に案内されて第1のハウジング50の位置を正確に制御することができる。したがって、第2のガイド55は、第1のハウジング50に備えられた第1のトランスデューサ1と第2のハウジング60に備えられた第2のトランスデューサ2とを正確に位置決めするための位置決め手段を構成するということができる。
【0074】
図10は、本実施の形態の認証装置の第3の変形例を示す側面図である。第3の変形例においては、第2のハウジング60において第1のハウジング50を差し込んで保持する保持部61は、第2のハウジング60の一つの側面に所定の形状で開口して所定深さを有する凹部である点において本実施の形態の認証装置と相違している。第2のハウジング60の一つの側面に形成された保持部61の開口の輪郭は、矩形の一つの角に切り欠きが設けられた形状である。保持部61の最奥部63には、主表面11が開口に向かうように第2のトランスデューサ2が備えられている。なお、第3の変形例において、図示しない第1のトランスデューサ1は、第2のハウジング60の一つの側面に設けられた開口から保持部61に深さ方向に差し込まれて保持されるように、第2のトランスデューサの60の一つの側面に形成された保持部61の開口に嵌合するような形状を有している。
【0075】
第3の変形例においては、第2のハウジング60の一つの側面に設けられた保持部61は、矩形の一つの角に切り欠きを設けた形状の輪郭で開口している。第2のハウジング60の保持部61に差し込まれて保持される第1のハウジング50はこのような開口に嵌合するような形状を有しているため、第2のガイド55が保持部61に対する第1のハウジング50の位置を正確に制御することができる。すなわち、第2のハウジング60の保持部61に対して第1のハウジング50が差し込まれる方向を軸として、この軸の周りに互いが特定の方位を有する場合にのみ第1のハウジング50を保持部61に嵌合させることができ、異なる方位を有して差し込むことが防止される。したがって、このような形状の輪郭を有する保持部61の開口は、第1のハウジング50に備えられた搭載された第1のトランスデューサ1と第2のハウジング60に備えられた第2のトランスデューサ2とを正確に位置決めするための位置決め手段を構成するということができる。
【0076】
なお、上述の実施の形態においては、第1のトランスデューサ1と第2のトランスデューサ2との間で超音波信号100を送受信して認証を判定したが、超音波信号100は認証に限らずデータの伝送のためにも使用することができる。この場合、データの伝送は認証と同時に行ってもよいし、認証とは別個にデータの伝送のみを行ってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 第1のトランスデューサ
2 第2のトランスデューサ
10 基板
11 主表面
12 振動膜
20 圧電素子
42 出力制御部
43 受信判定部
45 駆動回路/受信回路
100 超音波信号