(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109584
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ねじり加工装置およびねじれ素材製造方法
(51)【国際特許分類】
B21F 7/00 20060101AFI20230801BHJP
F16H 1/16 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
B21F7/00 A
F16H1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011167
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】土井 克浩
【テーマコード(参考)】
3J009
4E070
【Fターム(参考)】
3J009EA06
3J009EA19
3J009FA25
4E070AA00
4E070AB00
4E070AC01
4E070BD07
(57)【要約】
【課題】従来の課題を解決したねじり加工装置およびねじれ素材製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態のねじり加工装置は、第1把持ユニットと、第2把持ユニットと、中間拘束ユニットと、ねじり駆動部と、を備え、中間拘束ユニットは、被加工素材を径方向外側から囲む一対の中間歯車部と、被加工素材の径方向外側において一対の中間歯車部の間の少なくとも一部に掛け渡され、被加工素材の外周面の少なくとも一部に隣接する隣接材と、隣接材の外側から被加工素材の中心軸へ向かって隣接材を押圧することにより、隣接材を介して被加工素材を拘束する少なくとも1つの隣接材押圧部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びる棒状の被加工素材を周方向にねじり変形させるねじり加工装置であって、
前記被加工素材の一端を把持する第1把持ユニットと、
前記被加工素材の他端を把持する第2把持ユニットと、
前記第1把持ユニットと前記第2把持ユニットとの間に位置し、前記被加工素材を径方向外側から囲む環状の中間拘束ユニットと、
前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのうち少なくともいずれか一方と、前記中間拘束ユニットと、を中心軸回りにそれぞれ独立に回転可能であるとともに、前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのいずれか一方に対して、いずれか他方と前記中間拘束ユニットとを相対的に回転可能なねじり駆動部と、を備え、
前記中間拘束ユニットは、
前記被加工素材を径方向外側から囲む一対の中間歯車部と、
前記被加工素材の径方向外側において前記一対の中間歯車部の間の少なくとも一部に掛け渡され、前記被加工素材の外周面の少なくとも一部に隣接する隣接材と、
前記隣接材の外側から前記被加工素材の前記中心軸へ向かって前記隣接材を押圧することにより、前記隣接材を介して前記被加工素材を拘束する少なくとも1つの隣接材押圧部と、を備える、
ねじり加工装置。
【請求項2】
前記隣接材は、
前記被加工素材の前記中心軸に沿って延びるとともに前記被加工素材の前記周方向に配置された複数の長軸部材を有する、
請求項1に記載のねじり加工装置。
【請求項3】
前記隣接材押圧部は、
前記隣接材の前記長軸部材に沿って延びる複数の剛性部材を有しており、
複数の前記剛性部材は、前記隣接材において前記周方向で隣り合う前記長軸部材どうしの間に形成される谷部にそれぞれ配置される、
請求項2に記載のねじり加工装置。
【請求項4】
前記隣接材押圧部は、
前記複数の剛性部材が前記周方向へ動かされることによって前記隣接材を介して前記被加工素材を前記中心軸へ向かって押圧する構成をなす、
請求項3に記載のねじり加工装置。
【請求項5】
前記隣接材は、前記被加工素材の前記周方向の少なくとも一部を囲む層が径方向に複数積層された構成を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のねじり加工装置。
【請求項6】
前記隣接材として前記被加工素材の前記周方向を囲む立体網状筒状体を用いる、
請求項1から5のいずれか1項に記載のねじり加工装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のねじり加工装置を用いてねじれ素材を製造する、ねじれ素材製造方法であって、
棒状の前記被加工素材の前記周方向の少なくとも一部に配置された前記隣接材を前記隣接材押圧部により押圧することで、前記隣接材を介して前記被加工素材の長さ方向の少なくとも一部を拘束する拘束工程と、
前記被加工素材の一端を把持する前記第1把持ユニットおよび前記被加工素材の他端を把持する前記第2把持ユニットのうち少なくともいずれか一方と、前記被加工素材の中間部位を把持する前記中間拘束ユニットと、を独立に回転させることにより、前記被加工素材をねじるねじり工程と、
ねじられた前記被加工素材に対する前記隣接材押圧部による押圧を解除する押圧解除工程と、を有し、
前記ねじり工程では、
前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのうち少なくともいずれか一方に対して、いずれか他方と前記中間拘束ユニットとを相対的に回転させる、
ねじれ素材製造方法。
【請求項8】
前記押圧解除工程において、前記隣接材押圧部による前記隣接材に対する押圧を解除または緩めた状態で、前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのうちの前記他方と前記中間拘束ユニットとを逆回転させた後に、前記ねじり工程を再実施する、
請求項7に記載のねじれ素材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじり加工装置およびねじれ素材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工装置として、設計されたねじり間隔よりも緩いねじり間隔で準備されたもの、またはそもそも一切のねじりが加えられていないねじり加工前の中間材に対して、ねじり加工を加える装置(以下、ねじり加工装置)が知られている。
【0003】
ねじり加工装置を使用して製造される加工品の例として、例えば、ドリルなどの螺旋形状を有する加工品、ロープなどの撚りを有する繊維製品、等が挙げられる。
【0004】
一般的なねじり加工装置は、棒状素材の少なくとも2箇所以上の固定点または自由運動を抑制する拘束点を設け、それらの拘束点において異なる方向に力を加えることで、拘束点群どうしの間にねじりを発生させて棒状素材をねじることができる(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-63003号公報
【特許文献2】特許第6316696号公報
【特許文献3】特許第4593690号公報
【特許文献4】特表2020-535309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の加工装置においては、意図しない外力によるねじり間隔のバラつきが生じることがある。また、拘束点どうしの間が長い場合は、これら拘束点どうしの間におけるねじり抵抗の差によってねじり間隔にばらつきが生じることがある。さらに、拘束点におけるねじり抵抗によってねじりが不十分になることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様におけるねじり加工装置は、中心軸に沿って延びる棒状の被加工素材を周方向にねじり変形させるねじり加工装置であって、前記被加工素材の一端を把持する第1把持ユニットと、前記被加工素材の他端を把持する第2把持ユニットと、前記第1把持ユニットと前記第2把持ユニットとの間に位置し、前記被加工素材を径方向外側から囲む環状の中間拘束ユニットと、前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのうち少なくともいずれか一方と、前記中間拘束ユニットと、を中心軸回りにそれぞれ独立に回転可能であるとともに、前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのいずれか一方に対して、いずれか他方と前記中間拘束ユニットとを相対的に回転可能なねじり駆動部と、を備え、前記中間拘束ユニットは、前記被加工素材を径方向外側から囲む一対の中間歯車部と、前記被加工素材の径方向外側において前記一対の中間歯車部の間の少なくとも一部に掛け渡され、前記被加工素材の外周面の少なくとも一部に隣接する隣接材と、前記隣接材の外側から前記被加工素材の前記中心軸へ向かって前記隣接材を押圧することにより、前記隣接材を介して前記被加工素材を拘束する少なくとも1つの隣接材押圧部と、を備える。
【0008】
上記によれば、被加工素材の長さ方向両側の端部を第1把持ユニットおよび第2把持ユニットで把持するとともに、被加工素材の長さ方向中央部位を中間拘束ユニットで拘束した状態で、これら各ユニットを中心軸の軸回りへ回転させることによって、被加工素材に対してねじり変形を施すことが可能である。第1把持ユニットおよび第2把持ユニットの間に中間拘束ユニットを設けることで、被加工素材に対して短い把持区間でねじり変形を施すことができるため、ねじりピッチを安定させることが可能である。また、複数のユニットによって被加工素材を確実に把持することで、外径縮小を防止して被加工素材の伸びを抑制することができる。これにより、被加工素材に対して所望とするねじり変形を効率良く施すことが可能である。
【0009】
本発明の一態様におけるねじり加工装置において、前記隣接材は、前記被加工素材の前記中心軸に沿って延びるとともに前記被加工素材の前記周方向に配置された複数の長軸部材を有する構成としてもよい。
【0010】
上記によれば、被加工素材の径方向外側に配置される隣接材を複数の長軸部材によって構成することによって、中心軸へ向かって被加工素材を径方向外側から均等に押圧することが可能である。
【0011】
本発明の一態様におけるねじり加工装置において、前記隣接材押圧部は、前記隣接材の前記長軸部材に沿って延びる複数の剛性部材を有しており、複数の前記剛性部材は、前記隣接材において前記周方向で隣り合う前記長軸部材どうしの間に形成される谷部にそれぞれ配置される構成としてもよい。
【0012】
上記によれば、隣接材を構成する複数の長軸部材に対しする隣接材押圧部の複数の剛性部材の係合状態を維持することができ、中間拘束ユニットにより被加工素材6の一部を確実に拘束することが可能である。
【0013】
本発明の一態様におけるねじり加工装置において、前記隣接材押圧部は、前記複数の剛性部材が前記周方向へ動かされることによって前記隣接材を介して前記被加工素材を前記中心軸へ向かって押圧する構成としてもよい。
【0014】
上記によれば、隣接材押圧部によって隣接材を介して被加工素材を拘束することが可能であるため、中間拘束ユニットにおいて被加工素材の中間部位を確実に拘束(把持)した状態で被加工素材に対してねじり変形を施すことができる。
【0015】
本発明の一態様におけるねじり加工装置において、前記隣接材は、前記被加工素材の前記周方向の少なくとも一部を囲む隣接層が径方向に複数積層されて構成され、径方向外側に位置する前記隣接層ほど高い剛性を有することを特徴とする構成としてもよい。
【0016】
上記によれば、複数の隣接層を有する隣接材において、複数の隣接層のうち、径方向外側に位置する隣接層によって、径方向内側に位置する隣接層を拘束することができる。剛性の高い隣接層によってそれよりも剛性の低い隣接層を拘束する構成とすることで、被加工素材と接する隣接層に柔軟な素材を用いたとしても、内側の隣接層の拘束状態を精密に制御することができる。その結果、被加工素材に対してより精密なねじり変形を施すことができる。
【0017】
また、内層の隣接材どうしの間に形成される谷部に勘合するように外側の隣接材が複数積層されて構成される。そのため、内層の隣接材の径よりも外層の隣接材の径が大きくなる。言い替えれば、隣接層を重ねるほど、内層の隣接材の径を十分に小さくすることができる。一般的に、機械制御のしやすさから、前記隣接材押圧部はある一定以下の大きさにすることが困難であるが、隣接層を径方向に重ねることで、内層の隣接材の径を十分小さくすることができ、被加工素材と隣接材との接触面積を増やすことができる。その結果、被加工素材に対してより精密なねじり変形を施すことができる。
【0018】
本発明の一態様におけるねじり加工装置において、前記隣接材として前記被加工素材の前記周方向を囲む立体網状筒状体を用いる構成としてもよい。
【0019】
上記によれば、中間拘束ユニットの組み立て作業が容易になる。
【0020】
本発明の一態様のねじれ素材製造方法は、上記のねじり加工装置を用いてねじれ素材を製造する方法であって、棒状の前記被加工素材の前記周方向の少なくとも一部に配置された前記隣接材を前記隣接材押圧部により押圧することで、前記隣接材を介して前記被加工素材の長さ方向の少なくとも一部を拘束する拘束工程と、前記被加工素材の一端を把持する前記第1把持ユニットおよび前記被加工素材の他端を把持する前記第2把持ユニットのうち少なくともいずれか一方と、前記被加工素材の中間部位を把持する前記中間拘束ユニットと、を独立に回転させることにより、前記被加工素材をねじるねじり工程と、ねじられた前記被加工素材に対する前記隣接材押圧部による押圧を解除する押圧解除工程と、を有し、前記ねじり工程では、前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのうち少なくともいずれか一方に対して、いずれか他方と前記中間拘束ユニットとを相対的に回転させる。
【0021】
上記によれば、上記ねじり加工製造装置を用いることによって、ねじりピッチの制御が容易で延びのないねじれ素材を得ることができる。
【0022】
本発明の一態様のねじれ素材製造方法では、前記押圧解除工程において、前記隣接材押圧部による前記隣接材に対する押圧を解除または緩めた状態で、前記第1把持ユニットおよび前記第2把持ユニットのうちの前記他方と前記中間拘束ユニットとを逆回転させた後に、前記ねじり工程を再実施する製造方法としてもよい。
【0023】
上記によれば、所望のねじりピッチでねじれ素材を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、前述の課題を解決した良好なねじり加工装置およびねじれ素材製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態のねじり加工装置の構造を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態のねじり加工装置において加工を施す前の被加工素材6の原型を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態のねじり加工装置において加工を施した後の被加工素材を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態のねじり加工装置における中間拘束ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態における隣接材の構成を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態における隣接材の変形例を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、実施形態における隣接材の変形例を示す図である。
【
図5D】
図5Dは、実施形態における隣接材の変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態における隣接材押圧部の構成を示す断面図である、また、中間拘束ユニットおよび中間拘束ユニットを回転させる回転機構の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、ねじり加工装置の動作を説明するための部分断面図である。
【
図8】
図8は、ねじり加工装置の動作を説明するための部分断面図である。
【
図9】
図9は、ねじり加工装置の動作を説明するための側面図である。
【
図10】
図10は、ねじり加工装置の動作を説明するための側面図である。
【
図11】
図11は、ねじり加工装置の動作を説明するための側面図である。
【
図12】
図12は、立体網状筒状体の具体的な構成を示す断面図である。
【
図13】
図13は、立体網状筒状体の具体的な構成の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係るねじり加工装置およびねじれ素材製造方法について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は特徴部分を分かりやすくするために、特徴とならない部分を便宜的に省略して図示している場合がある。
【0027】
(実施形態)
図1は、本実施形態のねじり加工装置100の構造を模式的に示す図である。
図2は、本実施形態のねじり加工装置100において加工を施す前の被加工素材6の原型を示す図である。
図3は、本実施形態のねじり加工装置100において加工を施した後の被加工素材6を示す図である。
【0028】
本実施形態のねじり加工装置100は、
図2に示す棒状の被加工素材6を周方向にねじり変形させて
図3に示すようなねじり形状とする加工装置である。ねじり加工装置100は、被加工素材6をその周方向へ360°以上ねじり変形させることが可能である。
【0029】
被加工素材6は、例えば超硬金属材料からなり、不図示の押出装置の金型から円柱状に押し出された塑性変形可能な素材である。
図2に示すように、ねじり加工前の被加工素材6には、その長さ方向全体に、例えば一対のクーラント孔6aが軸方向に沿って直線状に形成されている。本実施形態における被加工素材6は、例えば、外径約6mm、長さ30cm以上、クーラント孔径が約1mmである。
【0030】
[1.ねじり加工装置]
ねじり加工装置100は、
図1に示すように、被加工素材6を把持する第1把持ユニット11、第2把持ユニット12、及び複数の中間拘束ユニット13と、これら第1把持ユニット11、第2把持ユニット12及び複数の中間拘束ユニット13を駆動させるねじり駆動部140と、を備えている。
【0031】
第1把持ユニット11は、中心軸Oに沿って延びる被加工素材6の上端(一端)6bを把持する。第1把持ユニット11は、第2把持ユニット12に対して被加工素材6の周方向へ相対的に回転可能である。例えば、被加工素材6をねじり変形させる際、第1把持ユニット11は、第2把持ユニット12に対して固定、もしくは第2把持ユニット12に対して周方向の一方側へ回転される。
【0032】
第2把持ユニット12は、被加工素材6の下端(他端)6cを把持する。第2把持ユニット12は、被加工素材6の周方向へ第1把持ユニット11に対して相対的に回転可能である。被加工素材6をねじり変形させる際、第2把持ユニット12は、第1把持ユニット11に対して固定、あるいは第1把持ユニット11に対して周方向の他方側へ回転される。すなわち、第1把持ユニット11と第2把持ユニット12の両方を回転させる場合は、第2把持ユニット12は第1把持ユニット11の回転方向とは逆の方向へ回転される。
【0033】
複数の中間拘束ユニット13は、第1把持ユニット11と第2把持ユニット12との間に設けられ、被加工素材6の外周面を径方向外側から拘束可能である。本実施形態では、2つの中間拘束ユニット13A,13Bを有しており、これらが中心軸Oに沿って並ぶ。一対の中間拘束ユニット13A,13Bは、いずれも被加工素材6の周方向へ回転可能であって、本実施形態では互いの回転方向は同じである。中間拘束ユニット13A、13Bは、互いに逆方向へ回転することもできる。被加工素材6をねじり変形させる際、中間拘束ユニット13A,13Bは、被加工素材6の中間部をそれぞれ拘束した状態で、それぞれ所定角度ずつ回転する。
【0034】
中間拘束ユニット13A、13Bは、第1把持ユニット11及び第2把持ユニット12のうちのいずれか一方に対して相対的に回転される。中間拘束ユニット13A、13Bの回転角度は、第1把持ユニット11と第2把持ユニット12との相対的な角度差(被加工素材6の全ねじり角度)の間に位置する角度である。
【0035】
なお、中間拘束ユニット13の数は、2つ(13A,13B)に限られず、被加工素材6の長さ、及びねじりピッチの長さ、もしくは求めるねじりピッチの精度に応じて適宜増減させることが可能である。
【0036】
これら第1把持ユニット11、第2把持ユニット12、及び中間拘束ユニット13A,13Bどうしの間隔は、求めるねじりピッチの精度に応じて任意に配置できる。
第1把持ユニット11、第2把持ユニット12、及び中間拘束ユニット13A,13Bどうしを密接させて配置した場合には、後述する隣接材134にて拘束されない被加工素材6の部位が最小となりねじりピッチの精密制御に有利となる。
【0037】
また、被加工素材6の長さ方向(軸方向)に沿って、第1把持ユニット11、第2把持ユニット12、及び中間拘束ユニット13A,13Bどうしを所定の間隔をあけて、配置した場合には、各ユニット自身及び各ユニットに連結される制御機構を、その間隔分省略することとなり、設備コストを下げられる経済性がある。
【0038】
ねじり駆動部140は、第1把持ユニット11、第2把持ユニット、及び一対の中間拘束ユニット13A,13Bの回転をそれぞれ独立して制御する。本実施形態では、例えば、第1把持ユニット11及び第2把持ユニット12のうちの少なくともいずれか一方を固定するとともに、いずれか他方と複数の中間拘束ユニット13A,13Bのそれぞれを、被加工素材6(中心軸O)の軸回りに個別に回転駆動させる。具体的には、第1把持ユニット11を固定し、第2把持ユニット12、中間拘束ユニット13A,13Bを被加工素材6の周方向一方側に回転させる。
【0039】
次に、ねじり加工装置100における各部位の具体的な構成について述べる。
【0040】
[1-1.第1把持ユニット、第2把持ユニット]
第1把持ユニット11および第2把持ユニット12は、
図1に示すように、被加工素材6の長さに応じて、ねじり加工装置100の中心軸Oに沿う方向に間隔をおいて配置され、中心軸Oと同軸をなす。第1把持ユニット11は、ねじり加工装置100の上部に位置し、被加工素材6の上端(一端)6bを径方向外側から把持する。第2把持ユニット12は、ねじり加工装置100の下部に位置し、被加工素材6の下端(他端)6cを径方向外側から把持する。
【0041】
第1把持ユニット11は、被加工素材6の上端(一端)6bを把持する把持部111と、把持部111に接続された第1歯車112と、を有する。
第2把持ユニット12は、被加工素材6の下端(他端)6cを把持する把持部121と、把持部121に接続された第1歯車122と、を有する。
第1把持ユニット11及び第2把持ユニット12における各把持部111,121は、中心軸Oに対して被加工素材6を上下方向及び径方向へ位置ずれさせることなく把持可能な構成であればよい。
【0042】
第1歯車112,122は、いずれもウォームホイール(螺旋(らせん)状の歯形を切った円筒歯車にかみ合う円盤歯車)からなり、外周面に歯合部112b,122bを有する。第1歯車112および第1歯車122は、後述するねじり駆動部140によって中心軸Oの軸回りに相対的に回転される。
【0043】
[1-2.中間拘束ユニット]
図1に示すように、第1把持ユニット11と第2把持ユニット12との間には、2つの中間拘束ユニット13A,13Bが設けられている。
中間拘束ユニット13Aは、被加工素材6の上端6bに近い中間部位を径方向外側から囲むことで被加工素材6の一部を拘束可能である。また、中間拘束ユニット13Bは、被加工素材6の下端6cに近い中間部位を径方向外側から囲むことで被加工素材6の一部を拘束可能である。以降の説明において、中間拘束ユニット13A,13Bを区別しない場合は、単に中間拘束ユニット13と言うことがある。
【0044】
図4は、本実施形態のねじり加工装置100における中間拘束ユニット13(13A,13B)の構成を模式的に示す図である。
中間拘束ユニット13は、
図4に示すように、隣接材押圧部137を有する一対の中間歯車部131と、隣接材134を備えている。
【0045】
また、必要に応じて、弾性材135を備えていてもよい。弾性材135を備えた場合には、隣接材134を仮固定することができ、中間拘束ユニット13のメンテナンス時において、組み立て及び解体が容易になる。
【0046】
一対の中間歯車部131は、軸方向に互いに間隔をあけて配置され、被加工素材6の外周を囲む部材である。これら一対の中間歯車部131の配置間隔によって中間拘束ユニット13の長さ寸法が規定される。中間拘束ユニット13の軸方向長さは、少なくとも10mm以上であり、本実施形態では、例えば、中間拘束ユニット13の軸方向長さが約30mmとされている。
【0047】
本実施形態において中間歯車部131は、後述のねじり駆動部140によって中心軸Oの軸回りに回転可能なウォームホイール(螺旋(らせん)状の歯形を切った円筒歯車にかみ合う円盤歯車)からなり、外周面に歯合部131aが形成されている。一対の中間歯車部131は、互いに同一の方向へ向かって回転可能である。
【0048】
隣接材134は、1つの中間拘束ユニット13内において軸方向に互いに間隔をあけて設けられた一対の中間歯車部131の間の少なくとも一部に掛け渡され、被加工素材6の径方向外側から外周面6dの周方向における少なくとも一部を囲む。
【0049】
本実施形態の隣接材134は、被加工素材6の長さ方向に沿って延びる複数の長軸部材34を有する。軸方向に平行な複数の長軸部材34は、被加工素材6の外側から外周面6dの周方向における少なくとも一部を囲んで配置され、それぞれの長さ方向両側の端部が上記一対の中間歯車部131に支持されている。
【0050】
長軸部材34は、2つの中間歯車部131の軸方向の外側(上側の中間歯車部131よりも上側、または下側の中間歯車部131よりも下側)まで延びていてもよい。この構成によれば、被加工素材6の外周面に、軸方向のぼぼ全体にわたって長軸部材34を配置しやすくなる。被加工素材6の外周面において、長軸部材34と接触しない領域を小さくできるので、より効率よく高精度に被加工素材6をねじり加工することができる。
【0051】
長軸部材34の断面形状は円形の他、被加工素材6の半径にほぼ同じ曲率半径の曲面を含む準多角形であってもよい。円形の場合には、長軸部材34の向きを考慮する必要がないため、中間拘束ユニット13のメンテナンス時において、組み立て及び解体が容易になる。
【0052】
また、被加工素材6の半径にほぼ同じ曲率半径の曲面を有する場合には、その曲面を被加工素材6に向けて把持することで、把持力が高くなり、精密なねじり変形が可能となる。
なお、長軸部材34の断面形状が円の場合は直径、曲面を含む準多角形の場合は、外接円径にて大きさを定義するが、両者をまとめて外接円径と表記する場合がある。
【0053】
周方向で隣り合う長軸部材34どうしは、互いに隙間なく配置されていてもよいし、相互間に隙間があってもよい。複数の長軸部材34は、長軸部材34の外接円及び軸方向の長さが互いに等しい。本実施形態の長軸部材34は、外接円径約2mm、長さ約20mmを有する。なお、長軸部材34の数、外接円径は、被加工素材6の直径に応じて適宜選択される。
【0054】
図5A~
図5Dは、本実施形態における隣接材134の変形例を示す図である。
本実施形態では、隣接材134が複数の長軸部材34からなる構成について述べたが、隣接材134の構成は本実施形態の構成に限られない。例えば、
図5Aに示すように、第1隣接層134aと第1隣接材よりも剛性の高い第2隣接層134bとが径方向に積層された2層構造の隣接材134Aとしてもよい。
【0055】
この場合、第2隣接層134bが、被加工素材6と直接接する第1隣接層134aを拘束することができ、第1隣接層134aに柔軟な素材を用いようとも第1隣接層134aを精密に制御でき、被加工素材6に対して精密なねじり変形を施すことができる。
【0056】
第1隣接層134aは、被加工素材6の径方向外側から被加工素材6の外周面6dの周方向の少なくとも一部を囲んで設けられている。第2隣接層134bは、第1隣接層134aの径方向外側から第1隣接層134aの周方向の少なくとも一部を囲んで設けられている。
【0057】
この場合、第1隣接層134aの隣接材134同士の間に形成される谷部に嵌合するように、第2隣接層134bの隣接材134が積層される。そのため、内層の第1隣接層134aの径よりも、外層の第2隣接層134bの径の方が大きくなる。
【0058】
なお、第2隣接層134bの外接円径は、第1隣接層134aが被加工素材6を囲んでいない幅よりも大きい。この場合、第2隣接層134bが第1隣接層134aの位置への落ち込みを防ぐことができる。
【0059】
また、例えば、
図5Bに示すように、被加工素材6の外周面6dを囲む筒状の立体網状筒状体からなる隣接材134Bを用いてもよい。この立体網状筒状体は、
図12及び
図13に示すように、複数の長軸部材34を円周上に配置し、その円周形状を緩く保つ程度に長軸部材34同士を糸状連結部材134xで連結させた構造である。この場合、長軸部材34の円周方向に沿った動きを妨げず、かつ自身の形状を保持できるため、中間拘束ユニット13のメンテナンス時において、組み立て及び解体が容易になる。
【0060】
また、
図5Cに示すように、第1隣接層134cよりも剛性の高い第2隣接層134dを、第1隣接層134cの径方向外側に積層させて隣接材134Cを構成してもよい。
この場合、外層の第2隣接層134dが、被加工素材と直接接する内層の第1隣接層134cを拘束することができ、第1隣接層134cに柔軟な素材を用いようとも第1隣接層134cを精密に制御でき、被加工素材6に対して精密なねじり変形を施すことができる。
【0061】
なお、隣接材134を構成する隣接層の数は特に問わない。例えば、径方向に積層された3層以上の隣接層によって隣接材134が構成されていてもよい。
【0062】
隣接層を径方向に複数積層する場合には、内層側の隣接層の隣接材134同士の間に形成される谷部に嵌合するように、外層側の隣接層の隣接材134が積層される。そのため、内層側の第1隣接材の径よりも、外層側の第2隣接材の径の方が大きくなる。
言い換えれば、径方向に隣接層を重ねるほど、内層側の隣接材の径を十分に小さくすることができる。
一般的に、機械制御のしやすさから、隣接材押圧部をある一定以下の大きさにすることは困難であるが、隣接層を径方向に複数積層して内層側の隣接層の径を十分に小さくすることによって、被加工素材と隣接材との接触面積を増やすことができる。その結果、被加工素材6に対してより精密なねじり変形を施すことができる。
【0063】
また、隣接材134を積層構造とする場合、例えば、
図5Dに示すように、径方向に積層する2つの第1隣接層134c及び第2隣接層134dのうち、いずれか一方を複数の長軸部材34から構成し、他方を立体網状筒状体から構成してもよい。
【0064】
第1隣接層134c側を立体網状筒状体とし、第2隣接層134d側を複数の長軸部材34から構成した場合には、周方向で隣り合う長軸部材34間に生じる谷部が立体網状筒状体からなる第1隣接層134cよりも深くなり、後述する押圧部38での駆動が容易になる。
【0065】
また、第1隣接層134c側を複数の長軸部材34から構成し、第2隣接層134d側を立体網状筒状体から構成した場合には、被加工素材6の少なくとも一部を囲む長軸部材34において、被加工素材6を囲んでいない範囲が広くても第2隣接層134dの落ち込みが生じないため、長軸部材34の本数や素材を柔軟に選択できる。
【0066】
弾性材135は、
図4に示すように、複数の長軸部材34によって構成される隣接材134に対して、必要に応じて設けられる。弾性材135を備えた場合には、隣接材134を仮固定することができ、中間拘束ユニット13のメンテナンス時において、組み立て及び解体が容易になる。
【0067】
弾性材135は、隣接材134の径方向外側から周方向を囲んで設けられる。本実施形態において弾性材135は、隣接材134(長軸部材34)の軸方向の一部であって、中間拘束ユニット13の長さ方向の略中央に設けられている。弾性材135は、例えばゴム紐輪からなり、隣接材134(長軸部材34)の外周面に対して熱溶着させることによって取り付けられる。
【0068】
隣接材押圧部137は、一対の中間歯車部131のうちの少なくとも一方に設けられ、本実施形態では、一対の中間歯車部131のそれぞれに隣接材押圧部137が1つずつ設けられている。各隣接材押圧部137A,137Bは、
図4及び
図6に示すように、隣接材134を径方向外側から中心軸Oへ向かって押圧することが可能であり、隣接材134を介して被加工素材6の一部をそれぞれ拘束する機能を有する。
【0069】
図6に示すように、一対の中間歯車部131のうち、一方の中間歯車部131に設けられる隣接材押圧部137A(137)と、他方の中間歯車部131に設けられる隣接材押圧部137B(137)とは、いずれも同様の構成をなすとともに、軸方向に対して互いに相反する向きで設けられている。隣接材押圧部137A,137Bは、軸方向で互いに対向する方向へ向かって突出し、隣接材134(被加工素材6)のうち一対の中間歯車部131よりも軸方向内側の部位を押圧可能である。以降の説明において隣接材押圧部137A,137Bを区別しないときは、単に隣接材押圧部137とする。
【0070】
図6は、本実施形態における隣接材押圧部137の構成を示す断面図である。
隣接材押圧部137は、隣接材134を径方向外側から押圧可能な押圧部38と、押圧部38を支持する押圧支持部39と、をそれぞれ有する。
【0071】
押圧支持部39は、中間歯車部131の径方向内側に形成された凹部131b(
図4)内に固定されている。一対の中間歯車部131のそれぞれに形成された凹部131bは、軸方向の一方側から他方側に凹む凹部であって、軸方向で対向する他方の中間歯車部131に向かって開口する。押圧支持部39は、中心軸Oと同軸をなす環状形状の部材であって、隣接材134の径方向外側から当該隣接材134の外周を囲んで設けられる。
【0072】
押圧支持部39は、厚さ方向を貫通する貫通孔39aを有する。貫通孔39aの内周面は、軸方向から見て径方向に蛇行を繰り返す波型形状をなす。
押圧支持部39は、貫通孔39aの波型内周面を形成する複数の凸部39Aと、複数の凹部39Bと、を有する。径方向内側に向かって突出する複数の凸部39Aと、径方向外側へ向かって凹む複数の凹部39Bとは中心軸Oの軸回りに交互に存在する。
【0073】
押圧部38は、複数の棒状剛性部材(剛性部材)36と、各棒状剛性部材36を押圧支持部39に接続する接続部33と、を有する。
【0074】
棒状剛性部材36は、隣接材134を径方向外側から押圧可能であり、軸方向における隣接材134(長軸部材34)の少なくとも一部に沿って延びている。複数の棒状剛性部材36の軸方向長さは、いずれも隣接材134の軸方向長さよりも短く、各々の長さは互いに等しい。また、複数の棒状剛性部材36は、いずれも隣接材134を構成する長軸部材34の外接円径よりも大きい直径を有し、各々の直径は互いに等しい。なお、棒状剛性部材36の直径は、隣接材134の長軸部材34の数、外接円径等に応じて適宜選択される。
【0075】
複数の棒状剛性部材36は、隣接材134を構成する複数の長軸部材34に噛み合うようにして配置されている。具体的には、周方向で隣り合う長軸部材34どうしの間に形成される谷部34cに棒状剛性部材36がそれぞれ配置される。このため、被加工素材6の周方向に、棒状剛性部材36の中心軸と、長軸部材34の外接円径の中心軸とが交互に存在する。
【0076】
棒状剛性部材36は、接続部33を介して上記押圧支持部39に支持されている。本実施形態の接続部33は、押圧支持部39に対して変動可能に支持されている。
【0077】
具体的に、接続部33は、棒状剛性部材36から垂直に延びる延出部33aと、延出部33aの棒状剛性部材36側の端部とは反対側の端部に設けられた準球体部33bと、を有する。
【0078】
準球体部33bは球体または円柱状の形状である。この直径の大きさは設備の大きさや許容可能な配置によって、任意に選択でるが、延出部33aの直径よりも大きい直径を有することが望ましい。この場合、棒状剛性部材36の可動範囲を広くでき、後述するねじり加工の制御が容易になる。
準球体部33bは、軸方向から見たときに、押圧支持部39の凸部39Aと重なる位置に配置される。準球体部33bは、押圧支持部39の凸部39A内または凸部39Aを貫通させて形成された球状または円柱状の係合穴39b(
図4)内に収容され、係合穴39bの内周面に沿って回動可能である。
【0079】
準球体部33bは、押圧支持部39の凸部39A(係合穴39b)に対して回動するよう保持されている。
準球体部33bが球状の場合には、準球体部33bは、延出部33aの延出方向に沿う回転軸M1の軸回りに回転可能であるとともに、中心軸Oに平行な回転軸M2の軸回りにも回動可能である。よって、接続部33は、押圧支持部39の回転に追従して、押圧支持部39に対して回転軸M1,M2の各軸回りに回動することが可能である。
準球体部33bが円柱の場合には、準球体部33bは、中心軸Oに平行な回転軸M2の軸回りに回動可能である。よって、接続部33は、押圧支持部39の回転に追従して、押圧支持部39に対して回転軸M2の各軸回りに回動することが可能である。
【0080】
[1-3.ねじり駆動部]
ねじり駆動部140は、
図1に示したように、第1把持ユニット11を回転可能な回転機構14Cと、第2把持ユニット12を回転可能な回転機構14Dと、一方の中間拘束ユニット13Aを回転可能な2つの回転機構14A(14A1,14A2)と、他方の中間拘束ユニット13Bを回転可能な2つの回転機構14(14B1,14B2)と、これら6つの回転機構14A~14Dを個別に駆動制御可能な回転制御部145と、を備えている。
なお、以下の説明において回転機構14A~14Dを区別しないときは、単に回転機構14とする。
【0081】
図6は、中間拘束ユニット13Aおよび中間拘束ユニット13Bを回転させる回転機構14(14A1,14A2,14B1,14B2)の構成を示す断面図である。
回転機構14Cは、第1把持ユニット11の第1歯車112に噛み合う第2歯車141と、第2歯車141を回転させるモータ151と、を有する。
回転機構14Dは、第2把持ユニット12の第1歯車122に噛み合う第2歯車141と、第2歯車141を回転させるモータ151と、を有する。
【0082】
一対の回転機構14A1,14A2は、中間拘束ユニット13Aにおける各中間歯車部131に噛み合う第2歯車141と、第2歯車141を回転させるモータ151と、をそれぞれ有する。
【0083】
一対の回転機構14B1,14B2は、中間拘束ユニット13Bにおける各中間歯車部131に噛み合う第2歯車141と、第2歯車141を回転させるモータ151と、をそれぞれ有する。
【0084】
6つの回転機構14(14A1,14A2,14B1,14B2,14C,14D)は、各々のモータ151にて制御される。この制御結果を確認するため、回転量、回転速度、及び回転方向を検出可能なエンコーダ161(
図6)をそれぞれ備えていてもよい。
【0085】
第2歯車141は、
図6に示すようにウォームギア(螺旋(らせん)状の歯形を切った円筒歯車)である。第2歯車141は、外周面に螺施状の歯合部141aを有する。第2歯車141は、その回転軸Nが中心軸O(被加工素材6の長さ方向)に直交し、第2歯車141は、モータ151の駆動軸151aに外挿されている。このため、モータ151の駆動によって第2歯車141が駆動軸151aの軸回りに回転することで、各第2歯車141が噛み合う他の歯車を中心軸Oの軸回りに回転させることが可能である。互いに噛み合う歯車どうしの材質は特に限定されるものではなく異なっていてもよい、同じ材質(例えば鋼材)で構成されていることが好ましい。この場合、摩耗の程度が同程度になり、交換時期を統一できる。
【0086】
モータ151は、第2歯車141を回転させるギアモータであって、その駆動軸151aが中心軸Oに直交する。上述したように、モータ151の駆動軸151aに第2歯車141が接続されており、駆動軸151aの軸回りに第2歯車141が回転する。
モータ151は、各回転機構14A1,14A2,14B1,14B2,14C,14Dのそれぞれに1つずつ設けられている。本実施形態では、中心軸Oに沿う上下方向に互いに間隔を開けて6つのモータ151が配置されているが配置を限定するものではない。例えば、中心軸Oに対して、180度ずつずらして配置し、中間拘束ユニット13同士を密接させることもできる。
【0087】
エンコーダ144は、モータ151の駆動軸151aに必要に応じて、接続することができる。エンコーダ144を接続した場合には、接続したモータ151の回転量、回転速度、回転方向をそれぞれ検出できる。エンコーダ144は、複数のモータ151のそれぞれに1つずつまたはこれらの一部に設けられる。
図1では、モータ151の数に合わせて6つのエンコーダ144を図示しているが、個数を限定するものではない。各エンコーダ144は、対応する各モータ151の回転量、回転速度、回転方向をそれぞれ個別に検出する。
【0088】
回転制御部145は、6つのモータ151に接続され、回転機構14A1,14A2,14B1,14B2,14C,14Dを独立(個別)に駆動制御することが可能である。回転制御部145は、回転機構14Cおよび回転機構14Dを異なる方向へ相対的に回転可能である。また、回転機構14Cおよび回転機構14Dのうちのいずれか一方を他方に対して固定することも可能である。
【0089】
[ねじれ素材製造方法]
次に、本実施形態のねじり加工装置100を用いたねじれ素材製造方法について述べる。
図7及び
図8は、ねじり加工装置100の動作を説明するための部分断面図である。
図9~
図11は、ねじり加工装置100の動作を説明するための側面図である。
【0090】
ねじり加工装置100に棒状の被加工素材6をセットする際には、
図1に示したように、ねじり加工装置100の中心軸Oに対して被加工素材6の長さ方向を平行にした状態で、被加工素材6の上端6bを第1把持ユニット11で把持するとともに下端6cを第2把持ユニット12で把持する。また、これら第1把持ユニット11及び第2把持ユニット12の間であって被加工素材6の中間部位は、一対の中間拘束ユニット13A,13Bによって支持される。なお、この状態では、一対の中間拘束ユニット13A,13Bによる被加工素材6に対する拘束(径方向への押圧)はされていない。
【0091】
ねじり加工装置100に被加工素材6がセットされると、回転制御部145は、まず、第1把持ユニット11および第2把持ユニット12に対して、中間拘束ユニット13A,13Bを周方向の一方側(
図7中の矢印Y1で示す方向)へ僅かに回転させることによって、被加工素材6の長さ方向における中間部位をそれぞれ拘束する(中間部位拘束工程)。
【0092】
中間部位拘束工程では、中間拘束ユニット13Aに対応する回転機構14Aの2つのモータ151と、中間拘束ユニット13Bに対応する回転機構14Bの2つのモータ151を駆動させる。ここで、被加工素材6に対するねじり変形方向を被加工素材6の周方向の一方側(
図7中の矢印Y1で示す方向)としたとき、回転制御部145は、中間拘束ユニット13Aの一対のモータ151どうし、中間拘束ユニット13Bの一対のモータ151どうし、をそれぞれ同時に駆動させることによって、中間拘束ユニット13A,13Bを周方向一方側へと同時に回転させる。
【0093】
回転機構14A1,14A2,14B1,14B2における各中間歯車部131が周方向一方側へわずかに回転されると、隣接材押圧部137が回転軸M2の軸回りに回動し、隣接材134の径方向に対して接続部33が平行になる方向(径方向に対する角度が小さくなる方向)へ変化する。すると、隣接材134の径方向外側に配置された複数の隣接材押圧部137の各棒状剛性部材36が中心軸Oへ向かって互いに近寄ることで隣接材134に接触する。このとき、複数の棒状剛性部材36は、周方向に並ぶ長軸部材34どうしの間に形成された谷部34cに係合する。このようにして、隣接材134を介して被加工素材6の軸方向における所定の位置を部分的に拘束(把持)することができる。
【0094】
回転機構14A1,14A2,14B1,14B2の周方向一方側への回転量は、
図9に示すように、被加工素材6および隣接材134にねじり変形が生じない程度の回転量とし、隣接材押圧部137を隣接材134に接触させることができればよい。
【0095】
次に、回転制御部145は、第2把持ユニット12に対して、第1把持ユニット11および一対の中間拘束ユニット13A,13Bを周方向の一方側(
図7および
図10中の矢印Y1で示す方向)へそれぞれ回転させて、被加工素材6に対してねじり変形を加える(ねじり変形工程)。
【0096】
具体的に、回転制御部145は、第2把持ユニット12の回転機構14Dを固定するとともに、第2把持ユニット12に対して、第1把持ユニット11の回転機構14Cと、中間拘束ユニット13Aの回転機構14A1,14A2と、中間拘束ユニット13Bの回転機構14B1,14B2と、を周方向一方側へそれぞれ独立に回転させる。
【0097】
すなわち、回転制御部145は、
図1に示すように、第2把持ユニット12の回転機構14に対して、第1把持ユニット11、中間拘束ユニット13A,13Bにおける5つの回転機構14C,14A1,14A2,14B1,14B2をそれぞれ所定の回転量で回転させる。
このとき、各隣接材押圧部137の棒状剛性部材36が隣接材134の外周面に形成される谷部34cにそれぞれ係合した状態のまま、隣接材134に対して回転力及び向心力Fcを伝達することができる(
図10)。
【0098】
回転制御部145は、第2把持ユニット12から軸方向へ離れて位置する回転機構14ほど周方向一方側への回転量が大きくなるように制御し、第2把持ユニット12から最も離れた第1把持ユニット11の回転機構14Cの回転量が最も大きくなるように制御する。
【0099】
被加工素材6及びその内部に形成された一対のクーラント孔6aは、
図2に示すねじり加工前の直線状の状態から、
図3に示すねじり変形量(ねじれ角度)に応じたねじり形状に変形される。
【0100】
次に、回転制御部145は、被加工素材6に対して所定のねじり変形を施した後、ねじられた被加工素材6に対する複数の隣接材押圧部137による押圧拘束を解除する(押圧解除工程)。回転制御部145は、第1把持ユニット11及び一対の中間拘束ユニット13A,13Bにおける各中間歯車部131を、周方向の他方側(
図8および
図11中の矢印Y2で示す方向)へそれぞれ逆回転させることで、ねじり変形工程を実施する前の初期位置に戻す。これにより、被加工素材6に対する中間拘束ユニット13A,13Bによる拘束が解除される。
隣接材134の外周を取り囲む複数の隣接材押圧部137の棒状剛性部材36が径方向外側へ逃げ、隣接材134同士の反発力によって棒状剛性部材36と長軸部材34との間に隙間が生じる。このとき、隣接材押圧部137の向心力Fcは、隣接材134が径方向外側へ広がる力Fxよりも小さくなる(Fx>Fc(=0))。
弾性材135を用いる場合には、弾性材135を複数の長軸部材34の外周面に熱溶着させ、径方向外側へ広がる力Fyをあらかじめ付与することで、隣接材134が径方向外側へ広がる力Fzがさらに大きくなる(Fz=Fx+Fy>Fc(=0))。
【0101】
中間拘束ユニット13A,13Bを周方向の他方側へそれぞれ回転させると、それぞれに設けられた一対の中間歯車部131が周方向の他方側へ所定の回転量で回転し、これに伴って、隣接材押圧部137の接続部33が軸方向から見て径方向に対する角度が大きくなる方向へ変化する。各中間歯車部131が初期位置にあるとき、隣接材134を構成している複数の長軸部材34は軸方向に平行に延びた状態である。これにより、複数の棒状剛性部材36による隣接材134の径方向内側への押圧が解除されて被加工素材6に対する拘束が緩んだ状態となる。このようにして、被加工素材6に対するねじり加工を終了する。
なお、第1把持ユニット11および第2把持ユニット12は、被加工素材6の両端を常時把持しており、被加工素材6はねじれ変形されたままである。
【0102】
本実施形態では、第2把持ユニット12を固定し、他のユニット11,13A,13Bを周方向一方側へ回転させたが、第2把持ユニット12を固定するのではなく周方向他方側へ回転させてもよい。第2把持ユニット12を他のユニット11,13A,13Bに対して逆回りに回転させることによって、各回転機構14の回転量が少なくて済む。つまり、少ない回転量で上記実施形態と同様のねじり変形を施すことができる。
【0103】
また、第2把持ユニット12を、他のユニット11,13A,13Bと同じ手法貢一方側へ回転させてもよい。すなわち、全てのユニット11,12,13A,13Bを同じ方向へ相対的に回転させてもよい。全てのユニット11,12,13A,13Bを異なる回転角度で回転させることで、被加工素材6に対して所望のねじり変形を施すことができる。
【0104】
また、被加工素材6に対してより大きなねじり変形を施したい場合には、押圧解除工程Sの後に、再度、ねじり変形工程を実行してもよい。被加工素材6に対して所望のねじり変形を付与するべく、ねじり変形工程および押圧解除工程を繰り返し実行することが可能である。
【0105】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また、本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0106】
第2の実施形態例として、隣接材押圧部として、膨張収縮可能な環状または螺旋状に形成した弾性チューブを用いても構わない。隣接材134の径方向外側に設けた弾性チューブを膨張させて当該弾性チューブの内径を縮小させることによって、隣接材134を介して、被加工素材6を中心軸Oへ向かって押圧することが可能である。
この場合、弾性チューブによって発現する膨張収縮力によって、隣接材134の径方向にかける押圧をより均一にできる。
【0107】
第3の実施形態例として、隣接材押圧部として、螺旋の向きが周方向に動かすと締まるように設けられた螺旋状弾性体を用いても構わない。隣接材134の径方向外側に設けた螺旋状弾性体を周方向へ回転させて螺旋状弾性体の内径を縮小させることによって、隣接材134を介して被加工素材6を中心軸Oへ向かって押圧することができる。
この場合、螺旋状弾性体の両端のみを拘束または螺旋の円周上を動かすだけで、中間部位拘束工程及び押圧解除工程を行うことができるため、制御を簡易にすることができる。
【0108】
第4の実施形態例として、中間部位拘束工程及び押圧解除工程の際に行う押圧部38の制御をねじり駆動部140と別の外力によって行ってもよい。外力の例として、エアー差圧、モータなどが考えられ、この場合、ねじり駆動部140と独立に押圧部38を制御できるため、ねじり変形工程において、隣接材をわずかにすべらせるなど、より細かな調整が可能となる。
【符号の説明】
【0109】
13(13A,13B)…中間拘束ユニット
6…被加工素材
6b…上端(一端)
6c…下端(他端)
6d…外周面
11…第1把持ユニット
12…第2把持ユニット
34…長軸部材
34c…谷部
36…棒状剛性部材(剛性部材)
38…押圧部
100…加工装置
131…中間歯車部
134,134A,134B,134C…隣接材
134c…立体網状筒状体
137(137A,137B)…隣接材押圧部
140…駆動部
O…中心軸
S…押圧解除工程