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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109595
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】電池パックの排煙構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20230801BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20230801BHJP
   H01M 50/325 20210101ALI20230801BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230801BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/35 201
H01M50/325
H01M50/204
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011188
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594183299
【氏名又は名称】株式会社松尾製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 明弘
(72)【発明者】
【氏名】徳田 貴士
(72)【発明者】
【氏名】櫨 一将
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB02
5H012CC08
5H012DD01
5H012FF02
5H040AA33
5H040AA37
5H040AS04
5H040AY04
(57)【要約】
【課題】電池パックの筐体内に異物が入るのを抑制できるうえに、電池パックの異常発熱時に圧力損失を抑えつつ煙を排出させることができる電池パックの排煙構造を得る。
【解決手段】通気弁20は、筐体14内に連通する開口26Eを可撓性の通気膜34によって通気可能に覆い、電池スタックから排出されたガスを筐体14の外部へ排出する。通気弁20から排出されたガスは、排煙路によって、所定の排出場所まで導かれる。また、通気弁20には、通気膜34に対して筐体14の内側とは反対側に隙間をあけて突起部30が設けられている。突起部30は、通気膜34側に鋭利な先端30Aを向けて配置され、筐体14の内圧上昇によって通気膜34が所定量膨張した場合に当該通気膜34を突き破るように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に電池を収容した電池パックの排煙構造であって、
前記筐体内に連通する開口を可撓性の通気膜によって通気可能に覆い、前記電池から排出されたガスを前記筐体の外部へ排出する通気弁と、
前記通気弁から排出された前記ガスを所定の排出場所まで導く排煙路と、
前記通気膜に対して前記筐体の内側とは反対側に設けられ、前記筐体の内圧上昇によって前記通気膜が所定量膨張した場合に当該通気膜を突き破るように構成された突起部と、
を有する電池パックの排煙構造。
【請求項2】
筐体に電池を収容した電池パックの排煙構造であって、
前記筐体内に連通する開口を可撓性の通気膜によって通気可能に覆い、前記電池から排出されたガスを前記筐体の外部へ排出する通気弁と、
前記通気弁から排出された前記ガスを所定の排出場所まで導く排煙路と、
前記通気膜に対して前記筐体の内側とは反対側に隙間をあけて設けられ、前記通気膜側に鋭利な先端を向けて配置された突起部と、
を有する電池パックの排煙構造。
【請求項3】
前記通気弁は、前記開口が形成されて前記通気膜が取り付けられたベース部材を備え、前記ベース部材は、前記通気膜の外周部側に連接すると共に前記ガスの排出方向下流側へ向けて徐々に縮径されたテーパ部を有する、請求項1又は請求項2に記載の電池パックの排煙構造。
【請求項4】
前記通気弁は、前記開口が形成されて前記通気膜が取り付けられたベース部材を備え、前記ベース部材に前記突起部が設けられている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電池パックの排煙構造。
【請求項5】
前記ベース部材は、
前記ガスの流路を形成するガス流路形成部と、
前記ガス流路形成部の内側に架け渡されると共に前記通気膜の一部と対向配置された架渡部と、
を有し、
前記突起部は、前記架渡部に設けられている、請求項4記載の電池パックの排煙構造。
【請求項6】
前記架渡部は、前記ガス流路形成部の内側を前記ガスの排出方向に見て前記流路の中心で交差する十字状とされ、
前記突起部は、前記架渡部の交差部分に設けられている、請求項5記載の電池パックの排煙構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの排煙構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バッテリが収容されるバッテリパック(電池パック)の排煙構造が開示されている。簡単に説明すると、この構造では、排煙経路の一端がバッテリパックに接続され、排煙経路の他端が車両外部に連通している。また、排煙経路は、前記一端側に形成される第1流路と、前記他端側に形成される第2流路と、第1流路と第2流路との間に設けられて流路断面積が第1流路及び第2流路よりも小さい絞り流路と、を備えている。このような構造では、バッテリパックの内部に異物が入りにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-149146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この構造では、バッテリパックの異常発熱時に圧力損失を抑えつつ煙を排出させる点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、電池パックの筐体内に異物が入るのを抑制できるうえに、電池パックの異常発熱時に圧力損失を抑えつつ煙を排出させることができる電池パックの排煙構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の電池パックの排煙構造は、筐体に電池を収容した電池パックの排煙構造であって、前記筐体内に連通する開口を可撓性の通気膜によって通気可能に覆い、前記電池から排出されたガスを前記筐体の外部へ排出する通気弁と、前記通気弁から排出された前記ガスを所定の排出場所まで導く排煙路と、前記通気膜に対して前記筐体の内側とは反対側に設けられ、前記筐体の内圧上昇によって前記通気膜が所定量膨張した場合に当該通気膜を突き破るように構成された突起部と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、通気弁は、筐体内に連通する開口を可撓性の通気膜によって通気可能に覆い、電池から排出されたガスを筐体の外部へ排出する。筐体内への異物の侵入は通気膜によって抑制することができる。また、通気弁から排出されたガスは、排煙路によって、所定の排出場所まで導かれる。一方、通気膜に対して筐体の内側とは反対側には突起部が設けられ、この突起部は、筐体の内圧上昇によって通気膜が所定量膨張した場合に当該通気膜を突き破るように構成されている。このため、電池パックの異常発熱時に筐体の内圧が上昇した場合には、所定量膨張した通気膜が突起部によって突き破られ、その結果、圧力損失を抑えつつ煙を所定の排出場所まで導いて排出させることができる。
【0008】
請求項2に記載する本発明の電池パックの排煙構造は、筐体に電池を収容した電池パックの排煙構造であって、前記筐体内に連通する開口を可撓性の通気膜によって通気可能に覆い、前記電池から排出されたガスを前記筐体の外部へ排出する通気弁と、前記通気弁から排出された前記ガスを所定の排出場所まで導く排煙路と、前記通気膜に対して前記筐体の内側とは反対側に隙間をあけて設けられ、前記通気膜側に鋭利な先端を向けて配置された突起部と、を有する。
【0009】
上記構成によれば、通気弁は、筐体内に連通する開口を可撓性の通気膜によって通気可能に覆い、電池から排出されたガスを筐体の外部へ排出する。筐体内への異物の侵入は通気膜によって抑制することができる。また、通気弁から排出されたガスは、排煙路によって、所定の排出場所まで導かれる。一方、通気膜に対して筐体の内側とは反対側に隙間をあけて突起部が設けられ、この突起部は、通気膜側に鋭利な先端を向けて配置されている。このため、電池パックの異常発熱時に筐体の内圧が上昇した場合には、所定量膨張した通気膜が突起部によって突き破られ、その結果、圧力損失を抑えつつ煙を所定の排出場所まで導いて排出させることができる。
【0010】
請求項3に記載する本発明の電池パックの排煙構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記通気弁は、前記開口が形成されて前記通気膜が取り付けられたベース部材を備え、前記ベース部材は、前記通気膜の外周部側に連接すると共に前記ガスの排出方向下流側へ向けて徐々に縮径されたテーパ部を有する。
【0011】
上記構成によれば、通気膜の膨張可能範囲の面積を大きく設定しつつ圧力損失を急増させずに通気弁におけるガスの排出方向下流側において流路断面積を小さくするということが可能となる。通気膜の膨張可能範囲の面積が大きく設定されると、通気膜の膨張可能範囲の面積が小さい場合と比べて、大きな力で膨張し、通気膜が突起部によって突き破られた場合に破断部分が大きくなる。よって、電池パックの異常発熱時に圧力損失を一層効果的に抑えられる。また、ベース部材におけるガスの排出方向下流側において流路断面積が小さくできると、通気弁よりもガスの排出方向下流側を構成する排煙路についても流路断面積が小さいものを適用でき、搭載の自由度が高められる。
【0012】
請求項4に記載する本発明の電池パックの排煙構造は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記通気弁は、前記開口が形成されて前記通気膜が取り付けられたベース部材を備え、前記ベース部材に前記突起部が設けられている。
【0013】
上記構成によれば、突起部は、通気弁において開口が形成されて通気膜が取り付けられたベース部材に設けられているので、通気膜に対する突起部の位置精度を容易に確保することができる。
【0014】
請求項5に記載する本発明の電池パックの排煙構造は、請求項4記載の構成において、前記ベース部材は、前記ガスの流路を形成するガス流路形成部と、前記ガス流路形成部の内側に架け渡されると共に前記通気膜の一部と対向配置された架渡部と、を有し、前記突起部は、前記架渡部に設けられている。
【0015】
上記構成によれば、簡易な構成でありながら、突起部を安定的に支持することができ、所定量膨張した通気膜を突起部によって安定的に突き破ることができる。
【0016】
請求項6に記載する本発明の電池パックの排煙構造は、請求項5記載の構成において、前記架渡部は、前記ガス流路形成部の内側を前記ガスの排出方向に見て前記流路の中心で交差する十字状とされ、前記突起部は、前記架渡部の交差部分に設けられている。
【0017】
上記構成によれば、突起部を一層安定的に支持することができ、膨張した通気膜の膨出頂部付近に突起部を当接させることができる。よって、所定量膨張した通気膜を突起部によって一層安定的に突き破ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の電池パックの排煙構造によれば、電池パックの筐体内に異物が入るのを抑制できるうえに、電池パックの異常発熱時に圧力損失を抑えつつ煙を排出させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る電池パックの排煙構造が適用された電池パックの全体構成を示す斜視図である。
図2図1の通気弁の要部を分解して示す分解斜視図である。
図3図2の構成部の組付状態を図2の3-3線に相当する位置で切断した状態で拡大して示す断面図である。
図4図1の通気弁において通気膜が取り付けられたベース部材を簡略化して示す正面図である。
図5図2の突起部及びその基端側の周囲部を拡大して示す斜視図である。
図6図2の通気膜の状態変化を模式的に示す側面視の断面図である。図6(A)は通気膜が膨張していない状態を示す。図6(B)は通気膜が膨張している状態を示す。
図7】突起部の変形例及びその基端側の周囲部を示す斜視図である。
図8】突起部の他の変形例及びその基端側の周囲部を示す斜視図である。
図9図8の9-9線に沿って切断した状態を拡大して示す断面図である。
図10】変形例の通気弁において通気膜が取り付けられたベース部材を簡略化して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る電池パックの排煙構造について図1図6を用いて説明する。なお、本実施形態に係る電池パック10(図1参照)は、電力で走行する自動運転車両(図示省略)に搭載される補助用電源である。すなわち、この電池パック10は、主電源となる電池スタック(図示省略)が故障等によって機能しなくなった場合でも、ある程度の距離を自動運転車両が走行できるようにするためのバックアップ用電源である。
【0021】
また、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを電池パック10の上方向、矢印FRを電池パック10の前方向、矢印RHを電池パック10の右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、電池パック10における上下方向の上下、電池パック10における前後方向の前後、電池パック10における左右方向の左右を示すものとする。
【0022】
(実施形態の構成)
図1には、本実施形態に係る電池パックの排煙構造が適用された電池パック10の全体構成が斜視図で示されている。図1に示されるように、本実施形態に係る電池パック10は、電池としての電池スタック12(図中では点線で簡略化して図示)と、電池スタック12を収容する筐体14と、を有している。
【0023】
電池スタック12は、複数の電池セルを含んで構成されている。また、筐体14は、樹脂製とされて略直方体状に形成されており、一例として前後方向よりも左右方向が長く設定されている。この筐体14は、ケース16と、ケース16の上部に形成された開口部(図示省略)を閉鎖可能な上蓋部材17と、ケース16の一方の側部(右側部)に形成された開口部(図示省略)を閉鎖可能な横蓋部材18と、を備えている。上蓋部材17とケース16の上端部との間には、図示しないOリングが設けられ、横蓋部材18とケース16の右側部との間にも、図示しないOリングが設けられている。これにより、電池スタック12を収容した筐体14が防水及び防塵状態で密閉される構造になっている。
【0024】
横蓋部材18は、板状の横蓋本体18Aを備えている。横蓋本体18Aの下部には、開口部18Bが貫通形成され、開口部18Bの外周側の部位からは筐体14の外側に突出して枠状に形成された枠状部18Cが形成されている。枠状部18Cの内側には、通気弁20が配置されており、この通気弁20は、横蓋本体18A側に取り付けられている。通気弁20は、電池スタック12から排出された一酸化炭素(CO)等のガスを筐体14の外部へ排出する機能を有する。
【0025】
通気弁20には、排煙ホース42の一端部が接続されている。排煙ホース42の他端部には、グロメット44が設けられている。排煙ホース42及びグロメット44は、通気弁20から排出されたガスを所定の排出場所(本実施形態では車外)まで導く排煙路40を構成している。
【0026】
次に、通気弁20について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、通気弁20において筐体14内と連通する側をガスの排出方向上流側(以下、適宜「上流側」という)といい、通気弁20において排煙ホース42と連通する側をガスの排出方向下流側(以下、適宜「下流側」という)という。
【0027】
図2には、通気弁20の要部を分解した分解斜視図が示され、図3には、図2に示す構成部の組付状態を図2の3-3線に相当する位置で切断して拡大した状態の断面図が示されている。図2及び図3に示されるように、通気弁20は、ベース部材22と、ベース部材22の上流側に取り付けられる通気膜34と、ベース部材22の下流側に取り付けられるキャップ36と、を含んで構成されている。
【0028】
キャップ36は、中心軸が一直線の短管状に形成され、管軸方向の一方側を構成する第一円筒部36Aと、管軸方向の他方側を構成して第一円筒部36Aよりも大径の第二円筒部36Cと、を備えている。第一円筒部36Aの上流側の端部と第二円筒部36Cの下流側の端部とは、段部36Bによって全周に亘って繋がれている。第一円筒部36Aの下流側の端部の外周部には、半径方向外側に突出した張出部36Dが全周に亘って形成されている。第一円筒部36Aの外周側には、排煙ホース42(図1参照)の一端部が取り付けられる。
【0029】
ベース部材22は、取り付けられるキャップ36と同様の方向に貫通した部材であり、ガスの流路22Fを形成するガス流路形成部22Aを有している。ガス流路形成部22Aは、キャップ36が取り付けられる円筒状のキャップ取付筒部24と、キャップ取付筒部24の上流側に連続して形成される上流側ベース部26と、を備えている。図3に示されるように、キャップ取付筒部24の外周側にキャップ36の第二円筒部36Cが配置され、キャップ取付筒部24とキャップ36との隙間にはシール部材38が介在されている。
【0030】
上流側ベース部26の外面は、キャップ取付筒部24の外面24Aよりも拡径された外周面26Bと、この外周面26Bとキャップ取付筒部24の外面24Aとを繋ぐ段差面26Aと、を備えている。段差面26Aには、キャップ36の第二円筒部36Cが突き当てられている。また、上流側ベース部26は、外周面26Bの上流側の端末付近から半径方向外側に張り出したフランジ部26Fを備えている。
【0031】
上流側ベース部26の内面は、フランジ部26Fの基端と連続してガスの排出方向下流側へ向けて徐々に縮径されたテーパ部26Dと、テーパ部26Dの縮径された側の端部に連続する一定径の内周面26Cと、を備えている。テーパ部26Dにおけるフランジ部26Fとの連接側はガスの入口側の開口26Eとされている。この上流側ベース部26に形成された開口26Eは、筐体14内に連通するように配置されている。また、上流側ベース部26の内周面26Cは、キャップ取付筒部24の内面24Bに連続しかつキャップ取付筒部24の内径と同じ内径とされる。
【0032】
図2に示されるように、フランジ部26Fの上流側の面には、開口26Eの外周側で全周に亘って凸部26Gが突出形成されている。図3に示されるように、フランジ部26Fの上流側の面において凸部26Gよりも内周側には、開口26Eを通気可能に覆う通気膜34が取り付けられている。図4には、通気膜34が取り付けられたベース部材22が簡略化された(凸部26Gが省略された)正面図で示されている。図4に示されるように、開口26E及び通気膜34は、一例として正面視で円形状に形成されている。
【0033】
図3及び図4に示される通気膜34は、可撓性の膜とされ、筐体14(図1参照)の内圧が上昇した場合に下流側に凸となるように膨張可能となっている(図6(B)の模式図参照)。また、図3に示されるように、前述したテーパ部26Dは、その上流側の端部において通気膜34の外周部側に連接している。
【0034】
ガス流路形成部22Aの内側には、上流側ベース部26の内周面26C及びキャップ取付筒部24の内面24Bで構成される部分の内側に図2に示される架渡部28が架け渡されている。架渡部28は、ガス流路形成部22Aの内側をガスの排出方向に見て流路22Fの中心で交差する十字状とされ、通気膜34の一部と対向配置されている。
【0035】
架渡部28の交差部分28Aには、突起部30が設けられている。図5には、突起部30及びその基端側の周囲部が拡大された状態の斜視図で示されている。図5に示されるように、突起部30は、一例として円錐形状に形成されている。図3に示されるように、突起部30は、通気膜34に対して筐体14の内側とは反対側に隙間をあけて設けられ、筐体14の内圧上昇によって通気膜34が所定量膨張した場合に当該通気膜34を突き破るように構成されている。すなわち、突起部30は、通気膜34側に鋭利な先端30Aを向けて配置されている。
【0036】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
上記構成によれば、通気弁20は、筐体14内に連通する開口26Eを可撓性の通気膜34によって通気可能に覆い、電池スタック12(図1参照)から排出されたガスを筐体14の外部へ排出する。筐体14内への異物の侵入は通気膜34によって抑制することができる。また、通気弁20から排出されたガスは、排煙路40(図1参照)によって、所定の排出場所である車外まで導かれる。
【0038】
一方、通気膜34に対して筐体14の内側とは反対側に隙間をあけて突起部30が設けられており、この突起部30は、通気膜34側に鋭利な先端30Aを向けて配置される。このため、図6(A)の模式的な断面図に示される状態の通気膜34が、筐体14の内圧上昇によって圧力Fを受けて図6(B)に示されるように膨張すると突起部30の先端30Aに接近し、更に通気膜34が膨張すると突起部30によって通気膜34が突き破られる(図示省略)。すなわち、電池パック10(図1参照)の異常発熱時に筐体14の内圧が上昇した場合には、所定量膨張した通気膜34が突起部30によって突き破られることで弁開放状態となり、その結果、圧力損失を抑えつつ図1に示される排煙路40で煙を車外まで導いて排出させることができる。
【0039】
補足説明すると、電池パック10においては、筐体14が電池スタック12を密閉状態で収容しているので筐体14内の温度変化に対応させて筐体14内の圧力調整が必要となる。また、電池スタック12の電池セルの異常時に発煙してしまった場合には、筐体14内の内圧の上昇を抑えるために筐体14内から煙を排出させる必要があるうえ、車室内への煙の放出を避けるために当該煙を車室外へ排出する必要がある。これらに対して、本実施形態では、通常時においては図3に示される通気膜34によって筐体14の内部と外部とを通気させ、異常時には通気膜34を突き破ることで圧力損失を抑えつつ排煙路40(図1参照)を介して煙を車室外へ排出させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、通気膜34が取り付けられたベース部材22は、通気膜34の外周部側に連接すると共にガスの排出方向下流側へ向けて徐々に縮径されたテーパ部26Dを有する。このため、通気膜34の膨張可能範囲の面積を大きく設定しつつ圧力損失を急増させずに通気弁20におけるガスの排出方向下流側(出口側)において流路断面積を小さくするということが可能となる。通気膜34の膨張可能範囲の面積が大きく設定されると、通気膜34の膨張可能範囲の面積が小さい場合と比べて、大きな力で膨張し、通気膜34が突起部30によって突き破られた場合に破断部分が大きくなる。よって、電池パック10(図1参照)の異常発熱時に圧力損失を一層効果的に抑えられる。また、ベース部材22におけるガスの排出方向下流側において流路断面積が小さくできると、通気弁20よりもガスの排出方向下流側を構成する排煙路40(図1参照)についても流路断面積が小さいものを適用でき、搭載の自由度が高められる。
【0041】
また、本実施形態では、突起部30は、通気弁20において開口26Eが形成されて通気膜34が取り付けられたベース部材22に設けられているので、通気膜34に対する突起部30の位置精度を容易に確保することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、図2に示されるように、ベース部材22は、ガスの流路22Fを形成するガス流路形成部22Aと、ガス流路形成部22Aの内側に架け渡されると共に通気膜34の一部と対向配置された架渡部28と、を有しており、突起部30は、架渡部28に設けられている。このため、簡易な構成でありながら、突起部30を安定的に支持することができる。
【0043】
そのうえ、本実施形態では、架渡部28は、ガス流路形成部22Aの内側をガスの排出方向に見て流路22Fの中心で交差する十字状とされ、突起部30は、架渡部28の交差部分28Aに設けられている。このため、突起部30を一層安定的に支持することができ、膨張した通気膜34の膨出頂部付近に突起部30を当接させることができる。よって、所定量膨張した通気膜34を突起部30によって一層安定的に突き破ることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の電池パックの排煙構造によれば、図1に示される電池パック10の筐体14内に異物が入るのを抑制できるうえに、電池パック10の異常発熱時に圧力損失を抑えつつ煙を排出させることができる。
【0045】
(変形例)
次に、幾つかの変形例について説明する。
【0046】
<第1の変形例>
図7には、上記実施形態における突起部30(図5参照)の変形例である突起部50及びその基端側の周囲部が斜視図で示されている。突起部50は、その突出方向の対向側から見て四芒星(FOUR POINTED STAR)形状に形成され、側方側から見て先端50Aを頂点とする二等辺三角形状に形成されている。このような突起部50が上記実施形態の突起部30(図5参照)に代えて適用されてもよい。
【0047】
<第2の変形例>
図8には、上記実施形態における突起部30(図5参照)の他の変形例である突起部52及びその基端側の周囲部が斜視図で示されている。また、図9には、図8の9-9線に沿って切断した状態を拡大した断面図が示されている。突起部52は、先細りの角度(突出先端側へ向けて幅が狭くなる程度)が突出方向中間部で変えられた二段十字状の突起形状に形成されたものであり、突出方向先端側の略半分の先細りの角度が突出方向基端側の略半分の先細りの角度よりも小さく設定されている。すなわち、突起部52は、その突出方向の対向側から見て四芒星(FOUR POINTED STAR)形状に形成され、図9に示される断面視で先端52Aを頂点とする二等辺三角形の底辺が等脚台形の上辺に載せられたような形状に形成されている。
【0048】
このような突起部52が上記実施形態の突起部30(図5参照)に代えて適用されてもよい。このような突起部52では、基端側を安定的に支持させつつ、先端側を十分に尖らせることができるので、通気膜34(図3等参照)を一層安定的に突き破ることができる。
【0049】
<第3の変形例>
図10には、上記実施形態の通気弁20の変形例である通気弁60において通気膜64が取り付けられたベース部材62が簡略化された正面図で示されている。図10に示されるベース部材62は、上記実施形態のベース部材22(図2図4参照)と基本的な構成は実質的に同様とされるが、筐体14(図1参照)内に連通する開口62Eが正方形(広義には四角形)とされている。通気膜64は、正面視で正方形(広義には四角形)に形成された可撓性の膜とされ、ベース部材62に形成された開口62Eを通気可能に覆っている。
【0050】
通気弁60は、開口62E及び通気膜64の形状が上記実施形態の開口26E及び通気膜34(いずれも図4参照)と異なるが、他の基本構成は、開口62Eの形状の相違に付随する相違部分を除いて実質的に第1の実施形態の通気弁20(図2図4参照)と同様となっている。よって、図10においては、便宜上、突起部30については上記実施形態と同一符号を付す。以上説明した通気弁60によっても、上記実施形態と実質的に同様の作用及び効果が得られる。
【0051】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、図2図4に示されるベース部材22がテーパ部26Dを有しているが、上記実施形態の変形例として、ベース部材が、テーパ部26Dに代えて、通気膜(34)の外周部側に連接して同一径で延在する内周面を備えている、という構成も採り得る。
【0052】
また、上記実施形態では、ベース部材22に突起部30が設けられているが、上記実施形態の変形例として、例えば、通気弁(20)に接続されて排煙路(40)を構成する排煙ホース(42)の最上流側の部分、又はキャップ(36)の第一円筒部(36A)等のようなベース部材22以外の部分に支持される突起部が設けられている、という構成も採り得る。
【0053】
また、上記実施形態では、ベース部材22は、突起部30が設けられる架渡部28を備えているが、上記実施形態の変形例として、ベース部材は、架渡部28に代えて、例えば、ガス流路形成部(22A)の内側に一端が支持されて突起部(30)を片持ち支持する支持アームを備えている、という構成も採り得る。
【0054】
また、上記実施形態では、架渡部28が十字状とされると共に突起部30が架渡部28の交差部分28Aに設けられているが、例えば、架渡部は、ガス流路形成部(22A)の内側をガスの排出方向に見て一方向にのみ架け渡されたもの(一文字状のもの)とされ、当該架渡部に突起部(30)が設けられている、という構成も採り得る。なお、そのような構成の場合、前記架渡部は、ガス流路形成部(22A)の内側をガスの排出方向に見た場合に流路(22F)の中心を通るものであることが好ましく、突起部(30)は前記架渡部の架け渡し方向中央部(言い換えれば流路(22F)の中心部)に設けられることが好ましい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、電池パック10(図1参照)は、一例として、自動運転車両(図示省略)に搭載されるものとして説明したが、電池パック10は、例えば、手動運転が可能な電気自動車等にも搭載可能である。
【0056】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0057】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10 電池パック
12 電池スタック(電池)
14 筐体
20 通気弁
22 ベース部材
22A ガス流路形成部
22F 流路
26D テーパ部
26E 開口
28 架渡部
28A 交差部分
30 突起部
30A 先端
34 通気膜
40 排煙路
50 突起部
50A 先端
52 突起部
52A 先端
60 通気弁
62 ベース部材
62E 開口
64 通気膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10