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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001096
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】木材接合部の補強部材構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20221222BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
E04B1/26 F
E04B1/26 G
E04B1/58 504L
E04B1/58 505L
E04B1/58 508L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098207
(22)【出願日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2021100938
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521266479
【氏名又は名称】西田 和志
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】西田 和志
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA18
2E125AB12
2E125AC23
2E125BB17
2E125BC02
2E125BD01
2E125BE03
2E125BF05
(57)【要約】
【課題】予め木材の接合部分の部材接合構造の全体形状を認識して、各接合部分に対応する補強部材構造とすることで、補強部材構造の取り付けを容易とし、職人の熟練度に影響されず必要な補強強度が得られる補強部材構造を提供する。
【解決手段】予め木材の接合部分の部材接合構造の全体形状を認識して接合構造の全体外形を左右、上下等の二つ乃至三つ割りの接合分割片とし各分割片を分割ケース体とし複数個の分割ケース体により接合部分外表面全体を包皮可能に構成すると共に、各分割ケース体を木材接合構造の包皮状態で一体に連設固定した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め木材の接合部分の部材接合構造の全体形状を認識して接合構造の全体外形を左右、上下等の二つ乃至三つ割りの接合分割片とし各分割片を分割ケース体とし複数個の分割ケース体により接合部分外表面全体を包皮可能に構成すると共に、各分割ケース体を木材接合構造の包皮状態で一体に連設固定したことを特徴とする木材接合部の補強部材構造。
【請求項2】
各分割ケース体は所定個所に一個または複数個の空洞を形成して地震などによる接合部分への偏奇荷重に基づく各分割ケース体への負荷応力を可及的に回避せんとすることを特徴とする請求項1に記載の木材接合部の補強部材構造。
【請求項3】
各分割ケース体同士の連設固定構造は対向する各分割ケース体端縁部に互い違いに突設した組フランジ片の突合せ固定構造により構成したことを特徴とする請求項1,2に記載の木材接合部の補強部材構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材接合部の補強部材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来木材接合部の補強部材構造としては例えば木材家屋の土台と通し柱との接合部や梁と主柱との接合部や各種の縦横柱の一点に集中する集中接合部等のように木材がそれぞれ集中して接合された構造においては、各柱同士に介在連結するような金属補強部材を掛け渡して相互に地震などの揺れで離反しないように構成して補強強化を図っている。
【0003】
また、他の接合箇所の補強部材としては、特許文献1のようなL字に形成したチャンネル材と該チャンネル材の直角を成す内角側に設けた三角板材とからなる補強金物であって、木造骨組みの接合箇所を補強すると共に、三角板材に穿設したボルト孔を用いて柱間に設ける筋交いの固定を行う補強部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6209709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、一点に集中的に複数の柱部材が接合された構造の場合はそれぞれの柱ごと隣接柱との間に補強金属板を架設しているために補強構造が複雑となりその分強度の弱体化を招く恐れがあり、また多数の補強部材を準備しておく必要があるためコスト的に不利となり、更には補強工事も煩雑で強度も向上しにくい等種々の欠点を有していた。
【0006】
また、特許文献1に記載の補強部材では、どの接合箇所においても同じ補強部材を用いるものであるため、接合箇所に対してどのように補強部材を取付けるのかの判断を現場の職人に委ねることとなり、補強部材の取り付け箇所とその取り付け具合により必要な耐震性を実現することができない虞があった。
【0007】
この発明はかかる欠点を解消するために予め木材の接合部分の部材接合構造を認識して接合構造の全体外形を左右、上下等の二つ乃至三つ割りの接合分割片とした分割ケース構造に形成してそれぞれの複数個の分割ケース構造を包皮部材単体とし接合部分外表面を包皮部材単体の組み合わせで全体包皮し包皮部材単体を一体構造とすることにより木材接合部分の補強を完了するように構成することにより従来の欠点を解消せんとした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、予め木材の接合部分の部材接合構造の全体形状を認識して接合構造の全体外形を左右、上下等の二つ乃至三つ割りの接合分割片とし各分割片を分割ケース体とし複数個の分割ケース体により接合部分外表面全体を包皮可能に構成すると共に、各分割ケース体を木材接合構造の包皮状態で一体に連設固定したことを特徴とする。
【0009】
また、各分割ケース体は所定個所に一個または複数個の空洞を形成して地震などによる接合部分への偏奇荷重に基づく各分割ケース体への負荷応力を可及的に回避せんとすることにも特徴を有する。
【0010】
また、各分割ケース体同士の連設固定構造は対向する各分割ケース体端縁部に互い違いに突設した組フランジ片の突合せ固定構造により構成したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の請求項1によれば、予め木材の接合部分の部材接合構造の全体形状を認識して接合構造の全体外形を左右、上下等の二つ乃至三つ割りの接合分割片とし各分割片を分割ケース体とし複数個の分割ケース体により接合部分外表面全体を包皮可能に構成すると共に、各分割ケース体を木材接合構造の包皮状態で一体に連設固定したことにより、接合箇所に適合する分割ケース体の判断が容易となり、必要な箇所に正しく包皮することで必要な耐震強度を実現することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、各分割ケース体は所定個所に一個または複数個の空洞を形成して地震などによる接合部分への偏奇荷重に基づく各分割ケース体への負荷応力を可及的に回避せんとしたことにより、地震の揺れによる応力を受けても空洞を設けることにより力を逃がし変形を可及的に防止することで、家屋の倒壊を防ぐことができる。
【0013】
請求項3によれば、各分割ケース体同士の連設固定構造は対向する各分割ケース体端縁部に互い違いに突設した組フランジ片の突合せ固定構造により構成したことで、分割ケース体同士の連結が外れにくくなると共に、連結部分に動きが生じにくいため木材との固定に用いるビスのゆるみが発生しにくくなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る第一の態様を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る第二の態様を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る第三の態様を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第四の態様を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る第五の態様を示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る第六の態様を示す説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る空洞部の形状を示す説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係る分割ケース体の連設固定構造を示す説明図である。
図9】本発明の一実施形態に係る分割ケース体の連設固定構造と係合固定構造とを示す説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係る筋交リブを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の要旨は、予め木材の接合部分の部材接合構造の全体形状を認識して接合構造の全体外形を左右、上下等の二つ乃至三つ割りの接合分割片とし各分割片を分割ケース体とし複数個の分割ケース体により接合部分外表面全体を包皮可能に構成すると共に、各分割ケース体を木材接合構造の包皮状態で一体に連設固定したことにある。
【0016】
また、各分割ケース体は所定個所に一個または複数個の空洞を形成して地震などによる接合部分への偏奇荷重に基づく各分割ケース体への負荷応力を可及的に回避せんとすることにある。
【0017】
また、各分割ケース体同士の連設固定構造は対向する各分割ケース体端縁部に互い違いに突設した組フランジ片の突合せ固定構造により構成したことにある。
【0018】
本実施形態に係る補強部材構造について図面に基づいて詳説していく。
図1図6は、本発明の一実施形態に係る補強部材構造の構成を示す図であり、各図の(a)は補強部材構造を構成する分割ケース体を分割した状態を示し、各図の(b)は各補強部材構造を実際に接合部分に組付けた状態を示している。
本実施形態に係る補強部材構造Mは、図1図6に示すように全体を左右、上下等の二つ乃至三つ割の接合分割片からなり、各分割片は複数個の分割ケース体100として木材の接合部分200外表面全体を包皮し一体に連結固定することができる。
【0019】
[1.補強部材構造のバリエーションについて]
本実形態に係る補強部材構造Mは、木造建築の接合部分200に包皮することで、接合部分200の補強を行うと共に、家屋全体の耐震強度を高めることができる。
そのため、各木材の接合部分200の部材接合構造に合わせて様々な態様とすることで、接合部分200をパターン化し、接合部分200に正確に補強部材構造Mを用いることができる。
【0020】
主な素材としては、金属や樹脂等様々なものが考えられるが、接合補強部材に一般的に用いられるステンレスや鉄や鉄に亜鉛メッキとクロム酸塩の保護膜を施したユニクロ材や柔軟性を有した樹脂が好適に用いられる。
【0021】
特に柔軟性を有した樹脂素材を用いた際には、建築物が地震等で揺れた際に接合部分200に係る偏奇荷重を逃がし木材同士の衝突により生じる割れや破壊を可及的に防止することができる。柔軟性を有した樹脂素材の例としては、引裂き強度や耐摩耗性に優れる天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ウレタンゴム及び熱可塑性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
以下、本実施形態に係る補強部材構造Mの具体的な態様と、各態様を用いる接合部分の例を説明する。
【0022】
本実施形態に係る補強部材構造Mの第一の態様としては、図1に示すように、木造建築における基礎の上に水平に固定される土台201と床や壁の重さを支えるための管柱202との接合部分200を包皮することができる全体逆T字状とした補強部材構造Mが挙げられる。
また、逆T字状とした補強部材構造Mの底面部分101は、基礎の上に固定される土台201を包皮可能とするため開放状態に形成される。
【0023】
第一の態様に係る補強部材構造Mは、接合部分200において建築物の内外方向へ二つ割りに構成される。二つわりにされたそれぞれの接合分割片を分割ケース体100とし、土台201と管柱202との接合部分200を建築物の外側と内側とよりそれぞれ左右方向から挟み込むようにして接合部分200全体を包皮することができる。
すなわち、地面に対して水平方向に配設される土台201と、土台201に対して上方へ直交するように接合される管柱202のように、第一の態様では3方向へ延びる木材の接合部分200全体に包皮し、接合部分200の補強を行うことができる。
【0024】
そのため、図1では、木造建築における土台201と管柱202との接合部分200を包皮した状態を例に挙げ説明をしたが、胴差しと管柱との接合部分や梁又は桁と管柱との接合部分200に用いてもよい。
【0025】
本実施形態に係る補強部材構造Mの第二の態様としては、図2に示すように、木造建築における基礎の上に水平に固定される土台201と建築物の四隅にあって土台201から軒桁まで通し各階を一体化させる通し柱203との接合部分200を包皮することができる平面視略L字状とした補強部材構造Mが挙げられる。
また、平面視略L状とした補強部材構造Mの底面部分101は、基礎の上に固定される土台201を包皮可能とするため開放状態に形成される。
【0026】
第二の態様に係る補強部材構造Mは、通し柱203の4面のうちどちらか一方の対向する2面と対向する2面のうち一方に介在する土台201の上面を等分するように二つ割りに構成される。二つ割りにされたそれぞれの接合分割片を分割ケース体100とし、土台201と通し柱203とをそれぞれ左右方向から挟み込むように包皮して接合部分200全体を包皮することができる。
すなわち、地面に対して水平、且つ90度に折れる土台201の出隅部分と、土台201に対して上方へ直交するように接合される通し柱203のように、第二の態様では水平方向に90度を成す2方向と該2方向に対して上方に直交する1方向との3方向へ延びる木材の接合部分200全体に包皮し、接合部分200の補強を行うことができる。
【0027】
そのため、図2では、木造建築における土台201と通し柱203との接合部分200を包皮した状態を例に挙げ説明をしたが、軒桁と梁と通し柱との接合部分200に用いてもよい。
【0028】
本実施形態に係る補強部材構造Mの第三の態様としては、図3に示すように、木造建築における基礎の上に水平に固定される土台201と床や壁の重さを支えるための管柱202と土台201と直交するように配され床材の下地となる根太の支持を行う大引き204との接合部分200を包皮することができる平面視略T字状とした補強部材構造Mが挙げられる。
また、平面視略T字状とした補強部材構造Mの底面部分101は、基礎の上に固定される土台201を包皮可能とするため開放状態に形成される。
【0029】
第三の態様に係る補強部材構造Mは、接合部分200において建築物の内外方向へ二つ割りに構成される。二つ割りにされたそれぞれの接合分割片を分割ケース体100とし、建築物の外側から土台201と管柱202とを、建築物の内側から土台201と管柱202と土台201に直交するように接合される大引き204とを、それぞれ左右方向から挟み込むように接合部分200全体を包皮することができる。
すなわち、地面に対して水平方向に配設される土台201と、土台201に対して上方に直交する管柱202と、土台201に水平方向に直交する大引きのように、第三の態様では平面視T字状に3方向と該3方向に対して上方へ直交する1方向との4方向へ延びる木材の接合部分200全体に包皮し、接合部分200の補強を行うことができる。
【0030】
そのため、図3では、木造建築における土台201と管柱202と大引き204との接合部分200を包皮した状態を例に挙げ説明をしたが、軒桁と梁と管柱との接合部分200に用いてもよい。
【0031】
本実施形態に係る補強部材構造Mの第四の態様としては、図4に示すように、木造建築における基礎の上に水平に固定される土台201と床や壁の重さを支えるための管柱202と土台201と平面視十字状に交差するように配され床材の下地となる根太の支持を行う大引き204との接合部分を包皮することができる平面視略十字状とした補強部材構造Mが挙げられる。
また、平面視略十字状とした補強部材構造Mの底面部分101は、基礎の上に固定される土台201と土台201と平面視十字状に交差するように配される大引き204とを包皮可能とするため開放状態に形成される。
【0032】
第四の態様に係る補強部材構造Mは、土台201又は大引き204を包皮する面を等分するように二つ割りに構成される。二つ割りにされたそれぞれの接合分割片を分割ケース体100とし、土台201又は大引き204を分割線として土台201と管柱202と大引き204とを左右方向から挟み込むようにして接合部分200全体を包皮することができる。
すなわち、地面に対して水平方向に配設される土台201と、土台201に対して上方に直交する管柱202と、土台201に水平方向に十字に交差する大引き204のように、第四の態様では平面視略十字状に4方向と該4方向に対して上方へ直交する1方向との5方向へ延びる木材の接合部分200全体に包皮し、接合部分200の補強を行うことができる。
【0033】
そのため、図4では、木造建築における土台201と管柱202と大引き204との接合部分200を包皮した状態を例に挙げ説明をしたが、桁と母屋の土台部分となる小屋梁と管柱又は通し柱との接合部分200に用いてもよい。
【0034】
本実施形態に係る補強部材構造Mの第五の態様としては、図5に示すように、木造建築における一階部分の管柱202と二階部分の管柱202と二階部分の四方をぐるりと巡るように配される胴差し205と二階部分の床を支える床梁206との接合部分200を包皮することのできる平面視T字状且つ建物外方側から見て十字状とした補強部材構造Mが挙げられる。
【0035】
第五の態様に係る補強部材構造Mは、接合部分200において建築物の内外方向へ二つ割りに構成される。二つ割りにされたそれぞれの接合分割片を分割ケース体100とし、建築物の外側から一階部分と二階部分の管柱202と2つの管柱202の間に介在する胴差し205とを、建築物の内側から一階部分と二階部分の管柱202と2つの管柱202の間に介在する胴差し205と二階部分の床を支える床梁206とを、左右方向からそれぞれ挟み込むようにして接合部分200全体を包皮することができる。
すなわち、地面に対して水平に配設される胴差し205と、胴差し205を介して上下に配される管柱202と、胴差し205に水平に直交する床梁206のように、第五の態様では建築物の外側から見て十字に4方向と該十字の中央から建築物内側へ直交する1方向との合計5方向へ延びる木材の接合部分200全体に包皮し、接合部分200の補強を行うことができる。
【0036】
本実施形態に係る補強部材構造Mの第六の態様としては、図6に示すように、木造建築における一階部分の管柱202と二階部分の管柱202と二階部分の床を支える床梁206と床梁206と十字に交わる桁207との接合部分200を包皮することのできる平面視十字状且つ正面視においても十字状となるように形成された補強部材構造Mが挙げられる。
【0037】
第六の態様に係る補強部材構造Mは、接合部分200において上下方向へ二つ割りに構成される。二つ割りにされたそれぞれの接合分割片を分割ケース体100とし、梁方向又は桁方向に上下二分するように分割線が設けられ、上方から二階部分の管柱202と水平方向へ延びる床梁206と床梁206に十字に交差するように設けられた桁207とを、下方から一階部分の管柱202と水平方向へ延びる床梁206と床梁206に十字に交差するように設けられた桁207とを、上下方向から挟み込むようにして接合部分200全体を包皮することができる。
すなわち、接合部分200において前後左右上下と6方向へ延びる木材の接合部分200全体に包皮し、接合部分200の補強を行うことができる。
【0038】
そのため、図6では、木造建築における一階部分と二階部分の管柱202と床梁206と桁207との接合部分200を包皮した状態を例に挙げ説明をしたが、通し柱と床梁と桁との接合部分200に用いてもよい。
【0039】
[2.分割ケース体に形成した空洞部について]
次に、補強部材構造Mを構成する分割ケース体に形成した空洞部102について図面に基づいて説明していく。図7は本発明の一実施形態に係る空洞部の考えられるバリエーションの一部を示す説明図である。なお、この空洞部102は、上述してきたすべての態様に対して設けられるものである。
【0040】
本実施形態に係る補強部材構造Mは、図1図6に示すように、地震等により建築物に外力が加わった際に、各接合部分200への偏奇荷重を防ぐための空洞部102を形成する。
より具体的には、接合部分200全体を包皮するように形成された補強部材構造Mの各包皮面に一個又は複数個の孔を穿設することで設けた空洞部102により、接合部分200にかかった応力を分散させ、分割ケース体100への負荷応力を可及的に回避し、接合部分200の変形や建築物の倒壊を防ぐ効果がある。
【0041】
空洞部102は、図1図6のような複数の小孔を穿設したものだけでなく、図7に示すように、様々な空洞形状が考えられる。空洞形状は、各接合部分200の荷重や地震を想定したときに係る応力を元に最適な形状を適宜選択されるものであればよい。
【0042】
また、各接合部分200は仕上がった建築物では視認される箇所とはならないが、空間を広く見せるためやデザイン性を高めるためにあえて天井板を貼らず構造を見せる、所謂スケルトン天井仕上げとした場合には、梁や桁や管柱といった部材の接合箇所は視認できる状態となる。
そのため、従来の補強金物では、構造的に強化を図ることのみが目的であったため、接合部分が無骨な見た目となり、スケルトン天井にすると美観を損なう虞があった。
そこで、図7に示すような、空洞部102を蝶形、複数連続した水玉形、複数連続したひし形、花形等にすることが考えられる。このように空洞部102をデザイン性の高い形状として設けることで、接合部分200の美観を高め、構造体の美しさを際立たせると共に、偏奇荷重を回避する機能をも付加することができる。
【0043】
また、空洞部102を形成することにより、補強部材構造Mの偏奇荷重を回避し素材にユニクロ材等の金属を用いた場合であっても、変形や木材の割れや破壊を可及的に防止することができる。また、素材を上述した柔軟性のある樹脂素材にすることと合わせて実施することでより偏奇荷重に対する力を逃がす効果が高くなることは云うまでもない。
【0044】
[3.分割ケース体同士の連設固定構造について]
次に、分割ケース体100同士の分割連設構造について、図面に基づいて説明していく。図8は本発明の一実施形態に係る連設固定構造を説明するための拡大端面図である。図9は本発明の一実施形態に係る連設固定構造と係合固定構造とを併用した状態を説明するための拡大端面図である。なお、この連設構造についても上述してきたすべての態様に対して用いられるものである。
【0045】
補強部材構造Mを二つ割り又は三つ割りに構成する各分割ケース体100は、図8に示すように、対向する端縁部103に互いに連設固定可能とする組フランジ片104を設けている。
組フランジ片104は、分割ケース体100の端縁部103を延出してなる方形板状の突合せ片105を複数並設させ形成される。
【0046】
突合せ片105は、分割ケース体100の端縁部103をそのまま延出した水平舌片106と、水平舌片106の厚み分を躱すように上方へやや隆起させた隆起舌片107と、の2種類に分けられ、水平舌片106と隆起舌片107とを端縁部103に対して交互に並設し組フランジ片104を形成している。また、各分割ケース体100を一体に連設固定するために、対向する突合せ片105は、例えば一方を水平舌片106とすれば、もう一方を隆起舌片107とするように、互いに対応するよう設けられる。
【0047】
組フランジ片104を形成する突合せ片105は、それぞれ木材との固定を行うために用いるビス108を打ち込むためのビス孔109を穿設している。また、ビス孔109は包皮する木材に合わせてビス108位置にずれが生じるのを防止するため、水平舌片106又は隆起舌片107のどちらかのビス孔109を長孔とすることも考えられる。
【0048】
実際に木材の接合部分200を包皮するに際しては、部材の接合構造の全体形状を認識して、接合部分に対応する補強部材構造Mの二つ割り又は三つ割りとした分割ケース体100を上述したように左右又は上下方向から挟み込むように組み合わせる。
組み合わせた際に、各分割ケース体100の対向する組フランジ片104の突合せ片105を互いに差込み、双方の水平舌片106が隆起舌片107の隆起基端となる突き当たり部分107aに先端106aを突き合わせることで各分割ケース体100の連設固定が行われることとなる。
また、双方の水平舌片106が隆起舌片107の隆起基端となる突き当たり部分107aに先端106aを突き合わせることで、それぞれに穿設されたビス孔109の位置が一致することとなり、木材との固定を行うビス108の打ち込み位置が確定する。
【0049】
上述してきたような構成とすることで、各分割ケース体100の連設固定を容易とすると共に、各分割ケース体100の組フランジ片104同士を突き合わせることでビス108止めの位置が確定し誰が接合部分200の補強を行っても同様の補強効果を得ることができる。
【0050】
また、分割ケース体100同士の連設固定構造と合わせて、図9に示すように、組フランジ片104を形成する突合せ片105に係合爪部110と、係合爪部110に対応する係合溝部111と、からなる係合固定構造を併用することも考えられる。
【0051】
係合爪部110は、各突合せ片105の先端部分にそれぞれ設けられる。また、水平舌片106と隆起舌片107とは、上述したように、互いに差込むようにして組み合わせることから係合爪部110は、水平舌片106では上方へ向けて、隆起舌片107では下方へ向けて突出するように設けられる。
係合爪部110の形状としては、突合せ片105の先端側に向け下り傾斜とした略三角形状且つ斜辺の頂点から突合せ片105と直交するような辺を有している。この突合せ片105と直交するような辺は、後述する係合溝部111と引っかかり係止する係止部110aとしている。
【0052】
係合溝部111は、係合爪部110が係合するように設けられた略長方形状の孔からなる。また、係合溝部111は、上述した連設固定構造により組み合わせた際に係合爪部110が当たる位置、すなわち突合せ片105の先端部が当接する水平舌片106又は隆起舌片107にそれぞれ設けられる。
【0053】
具体的な係合方法としては、上述したように部材の接合構造の全体形状を認識して、接合部分に対応する補強部材構造Mの二つ割り又は三つ割りとした分割ケース体100を上述したように左右又は上下方向から挟み込むように組み合わせる。
この際、隆起舌片107は水平舌片106の上方から覆うように互い違いに噛み合わせて組み合わせていくことになるが、係合爪部110はそれぞれ先端部に向けて下り傾斜に設けられているため、組み合わせるために突合せ片105同士を差込む際にも引っかかることなく円滑に組み合わせることができる。
そして、双方の水平舌片106が隆起舌片107の隆起基端となる突き当たり部分107aに先端106aを突き合わせることで、係合爪部110と係合溝部111とが噛み合わさり、係合爪部110に設けられた係止部110aが係合溝部111に引っかかり係止される。更にこの時、水平舌片106と隆起舌片107とのそれぞれに穿設されたビス孔109の位置が一致することとなり、木材との固定を行うビス108の打ち込み位置が確定する。
【0054】
上述したような構成とすることで、各分割ケース体100の連設固定を容易とすることができる。また、各分割ケース体100の組フランジ片104同士を突き合わせることでビス108止めの位置が確定し誰が接合部分200の補強を行っても同様の補強効果を得ることができる。
さらには、連設固定構造と係合固定構造とを併用することで、ビス108を打ち込む際に位置ずれを防止する効果があると共に、ビス108が劣化や揺れ等で緩みが生じても分割ケース体100同士の組み合わせが外れることなく機能する効果がある。
【0055】
また、係合爪部110と係合溝部111とは、すべての突合せ片105に設けられるものであってもよいし、一箇所にのみ設けられるものであってもよい。さらには、一つの突合せ片105に対して複数の係合爪部110と係合溝部111とを備えたものとしてもよい。
また、係合爪部110の形状を略三角形状として説明してきたが、これに限ったものではなく、分割ケース体100同士を組み合わせるときに妨げとならない形状であって尚且つ係止部110aを備えた形状であればよい。
【0056】
[4.分割ケース体に設けられる筋交リブについて]
次に、分割ケース体100に設けられる筋交リブ300について図面に基づいて説明していく。図10は、本発明の一実施形態に係る筋交リブの取り付け状態を説明するための図である。ただし、図10は取り付け可能な箇所すべてに取り付けた状態で図示しているが、必ずしも全て取り付ける必要はなく、筋交いを設ける箇所や補強強度等から必要な箇所にのみ使用されるとよい。
【0057】
補強部材構造Mを構成する分割ケース体100には、建築物の柱と柱との間で構造の補強のために設けられる筋交いを取付け固定するための筋交リブ300を取付けることができる。
【0058】
筋交リブ300は、図10に示すように、全体を略三角形且つ断面L字状としており、筋交いの取り付け及び偏奇荷重を回避するためのリブ空洞301を形成し、分割ケース体100に取り付け可能としている。
具体的な取り付けとしては、分割ケース体100に穿設された空洞部102と筋交リブ300のに穿設した取付け孔302との位置合わせを行い、ビス108を取付け孔302から木材へ向かって打ち込むことで分割ケース体100を介して木材と一体となるように固定される。
【0059】
この筋交リブ300は、補強部材構造Mと同じく主にステンレスや鉄や鉄に亜鉛メッキとクロム酸塩の保護膜を施したユニクロ材や引裂き強度や耐摩耗性の高い樹脂等から形成される。
また、筋交リブ300は筋交いを必要とするところ以外にも、図9に示すように、分割ケース体100に複数個取り付けることで、補強部材構造Mの強度を高めることができる。
【0060】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る木材接合部の補強部材構造は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、あくまで例示に過ぎず、本発明による効果は、本実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
M 補強部材構造
100 分割ケース体
101 底面部分
102 空洞部
103 端縁部
104 組フランジ片
105 突合せ片
106 水平舌片
106a 先端
107 隆起舌片
107a 突き当たり部分
108 ビス
109 ビス孔
110 係合爪部
110a 係止部
111 係合溝部
200 接合部分
201 土台
202 管柱
203 通し柱
204 大引き
205 胴差し
206 床梁
207 桁
300 筋交リブ
301 リブ空洞
302 取付け孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10