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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109629
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】蛋白栄養食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/185 20160101AFI20230801BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230801BHJP
   A23L 13/00 20160101ALN20230801BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20230801BHJP
   A23J 3/00 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
A23L33/185
A23L5/00 M
A23L13/00 A
A23L17/00 A
A23J3/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011264
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】白木 孝憲
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B018LE06
4B018MD04
4B018MD34
4B018MD58
4B018MD89
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF04
4B018MF08
4B018MF14
4B035LC03
4B035LE06
4B035LE07
4B035LG02
4B035LG21
4B035LG33
4B035LG50
4B035LK01
4B035LP01
4B035LP31
4B035LP32
4B035LP55
4B035LT05
4B042AC05
4B042AD36
4B042AE06
4B042AK01
4B042AK09
4B042AK13
4B042AK16
4B042AK20
4B042AP02
4B042AP06
4B042AP23
4B042AT10
(57)【要約】
【課題】咀嚼時に天然の畜肉や魚介類の肉が持つ多様な食感を付与した新しい食感を持つ蛋白栄養食品を提供する。
【解決手段】全重量に対して40重量%以上の水を含む組織状大豆蛋白素材からなる蛋白シートの少なくとも一方の主面に溝が形成され、当該蛋白シートが重畳されてなることを特徴とする蛋白栄養食品。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全重量に対して40重量%以上の水を含む組織状大豆蛋白素材からなる蛋白シートの少なくとも一方の主面に溝が形成され、当該蛋白シートが重畳されてなることを特徴とする蛋白栄養食品。
【請求項2】
前記蛋白シートが、水と、油分と、炭水化物とを含み、前記水が前記蛋白シートの全重量に対して40重量%以上含まれる組織状大豆蛋白素材からなる請求項1に記載の蛋白栄養食品。
【請求項3】
前記蛋白シートが、巻回されてなる請求項1または2に記載の蛋白栄養食品。
【請求項4】
前記蛋白シートが、九十九折りされてなる請求項1または2に記載の蛋白栄養食品。
【請求項5】
前記蛋白シートが複数枚積層されてなる請求項1~4のいずれか1項に記載の蛋白栄養食品。
【請求項6】
前記蛋白シートが接着剤を介して重畳されてなる請求項1~5のいずれか1項に記載の蛋白栄養食品。
【請求項7】
前記蛋白シートは、昆虫由来の蛋白質および/または藻類を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の蛋白栄養食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白栄養食品に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の社会において多くの人々が、蛋白質の摂取量の増加から種々の恩恵を受けている。蛋白質の摂取量が多いと、筋肉の蓄積増加が可能となるため、例えばスポーツマンは、蛋白質の摂取量を増加させる必要がある。また、高齢者では胃の容量が減少していることが多く、こういった人々の場合、十分な蛋白質を摂取するために、蛋白質含有量の多い高栄養食品が必要となる。
【0003】
現在、このような課題を解決するために、様々な蛋白栄養食品が存在する。例えば、蛋白質の摂取量を増やすために使用される、プロテインバーやプロテインシェイク等がそれである。
【0004】
例えば、特許文献1には、蛋白質および/または蛋白質加水分解物を含む成形可能な混合物から形成されるプロテインバーであって、成形可能な混合物が、蛋白質加水分解物として最大1,700Daの平均分子量を有するコラーゲン加水分解物を含むことによって特徴付けられるプロテインバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2021-533807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような食品は、栄養の観点から考えられているものであり、食感については考慮されていなかった。
本発明の目的は、咀嚼時に天然の畜肉や魚介類の肉が持つ多様な食感を付与した新しい食感を持つ蛋白栄養食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蛋白栄養食品であって、従来のような菓子のような食感ではなく、天然の畜肉や魚介類の肉が持つ多様な食感を付与した新しいタイプの蛋白栄養食品である。上記目的を達成するための本発明は、以下の通りである。
【0008】
すなわち、本発明の蛋白栄養食品は、全重量に対して40重量%以上の水を含む組織状大豆蛋白素材からなる蛋白シートの少なくとも一方の主面に溝が形成され、当該蛋白シートが重畳されてなることを特徴とする。
本発明の蛋白栄養食品は、蛋白シートが全重量に対して40重量%以上の水を含むため、天然の畜肉や魚介類の肉のような弾力を有している。また、本発明において使用される蛋白シートは、シート状であるため、表面および裏面に主面を持ち、蛋白シートの少なくとも一方の主面には、溝が形成されているため、咀嚼時に溝を起点として天然の畜肉、魚介類の肉の筋繊維が崩れるようにほろほろと解れる食感を実現できる。さらにこの蛋白シートが重畳されているため、咀嚼時に蛋白シートが複雑に絡みながらほろほろと崩れて、天然の畜肉、魚介類の肉の筋繊維が咀嚼時に不均一に解れる食感を蛋白栄養食品に付与できる。
蛋白シートの主面に対して、例えば円環状の刃(角刃、包丁刃等)が複数並列に設けられたローラー等を押し付けることで、主面に複数の溝を形成することができる。
【0009】
本発明では、複数枚の蛋白シートを積層することで重畳してもよく、1枚もしくは複数の蛋白シートを巻回すること、または九十九折りすることで重畳してもよい。
なお、本発明でいう蛋白栄養食品は、棒形状(バー)、球形状(楕円体、真球等)、板形状(円板状、方形板状等)、シート状のいずれの形状、形態でもよいが、棒形状のいわゆるプロテインバーの形態が最も汎用で望ましい。棒形状の具体例としては、例えば細長い円柱状、角柱状等が挙げられる。
このように、本発明の蛋白栄養食品は、その外観および形状は肉様食品および魚介類の肉を模した食品とは異なるものの、天然の畜肉、魚介類の肉の筋繊維が咀嚼時に不均一に解れる食感を体感できるのである。
【0010】
本発明の蛋白栄養食品は、蛋白シートが、水と、油分と、炭水化物とを含み、上記水が全重量に対して40重量%以上含まれ、そして、蛋白シートの少なくとも一方の主面に複数の溝が形成され、この蛋白シートが重畳している形態であってもよい。
この場合、本発明の蛋白栄養食品には、咀嚼時に天然の畜肉、魚介類の肉が持つほぐれ感があり、あたかも本物の畜肉や魚介類を食しているかのような食感を体感することができる。また、組織状大豆蛋白素材を構成する蛋白繊維が炭水化物により接合されているため、咀嚼時にゆっくりと蛋白繊維が解れ、天然の畜肉、魚介類の肉の食感を付与できる。
上記蛋白シートは、水と、油分と、炭水化物とを含み、上記水が全重量に対して40重量%以上含まれ、そして油分が全重量に対して固形分換算で10重量%以上含まれる組織状大豆蛋白素材からなる高脂質性蛋白シートであってもよい。
【0011】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は、組織状大豆蛋白素材の全重量に対して40重量%以上の水を含み、天然の畜肉、魚介類の肉のような弾力を蛋白栄養食品に付与できる。また、高脂質性蛋白シートで使用される組織状大豆蛋白素材は、固形分換算で10重量%以上の油分を含むため、ぱさつきが少ない食感を蛋白栄養食品に付与できる。
【0012】
本発明においては、少なくとも一方の主面に溝が形成され、全重量に対して40重量%以上の水を含む組織状大豆蛋白素材からなる蛋白シートを、接着剤を介して重畳してもよい。接着剤としては、蛋白質同士を結合させる酵素、例えばトランスグルタミナーゼやカゼインナトリウム等を使用することが望ましい。
【0013】
本発明においては、蛋白シートを巻回してロール状に積層してもよい。
また、蛋白シートを九十九折りすることにより、重畳してあってもよい。
さらに、後述するように蛋白シートが複数枚積層された形態であってもよい。積層される蛋白シートの枚数は特に限定されず、2枚以上であればよい。
【0014】
本発明の蛋白栄養食品は、昆虫由来の蛋白質および/または藻類を含むことが望ましい。昆虫由来の蛋白質にはカルシウム、鉄分、亜鉛といったミネラル成分が含まれ、また、藻類には脳の発育や心臓機能維持に必要な、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)といった長鎖オメガ3脂肪酸など、独自の栄養成分が多く含まれているからである。
また、本発明の蛋白栄養食品は、調味材が付与されたり、調理されたりして提供されてもよい。調味材は、原料中に添加されていてもよく、蛋白栄養食品を製造した後に、付与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明にかかる蛋白栄養食品の実施形態を説明するための模式断面図である。
図2図2は、本発明にかかる蛋白栄養食品の別の実施形態(巻回したロール体)を説明するための模式断面図である。
図3図3は、図2の蛋白栄養食品の模式斜視図である。
図4図4は、本発明にかかる蛋白栄養食品の別の実施形態(九十九折りによる重畳体)を説明するための模式断面図である。
図5図5は、本発明の実施例1にかかる高脂質性蛋白シートを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の蛋白栄養食品として、蛋白シートが複数枚積層された形態に即して説明するが、発明思想として逸脱しない限り、本発明はこの実施形態に限定されない。
また、蛋白シートとしては、水と、油分と、炭水化物とを含む組織状大豆蛋白素材からなり、蛋白シートの全重量に対して40重量%以上の水と、蛋白シートの全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分を含む高脂質性蛋白シートを使用してもよい。
【0017】
本発明の一実施形態である蛋白栄養食品は、水と、油分と、炭水化物とを含む組織状大豆蛋白素材からなる蛋白シートが複数枚積層されており、蛋白シートの全重量に対して40重量%以上の水を含む蛋白シートの主面には、複数の溝が設けられている。
図1は、本発明にかかる蛋白栄養食品の実施形態を説明するための模式断面図である。蛋白栄養食品1は、水と、油分と、炭水化物とを含み、全重量に対して40重量%以上の水を含む組織状大豆蛋白素材からなる2枚の蛋白シート10が、接着剤30を介して接着されてなる。蛋白シート10は、水分を含んで弾力があり、また、蛋白質を摂取する栄養食品でありながら、咀嚼時に天然の畜肉や魚介類の肉を咀嚼したかのような、これまでの蛋白栄養食品とは異なった食感を体感できる。
押し出し成形により作製された蛋白シート10の主面には、溝40が蛋白シート10の押し出し方向に対して平行に設けられ、咀嚼時に溝40を起点として天然の畜肉や魚介類の肉の筋繊維が崩れるようにほろほろと解れる食感を付与できる。
【0018】
図2は、本発明にかかる蛋白栄養食品の別の実施形態を説明するための模式断面図である。図3は、図2の蛋白栄養食品の模式斜視図である。蛋白栄養食品2は、蛋白シート10が巻回され、さらに蛋白シート10の表面と裏面が接する部分は、接着剤30を介して接着されて積層ロール形状となっている。
図2および図3に示すような、蛋白シート10が、巻回され接着剤30を介して接着された円柱状のロール体は、従来のプロテインバーが持つ菓子のような食感とは異なり、畜肉や魚介類の肉を咀嚼しているような新しい食感を体感できる。
このように、本発明の蛋白栄養食品は、その外観および形状は肉様食品および魚介類の肉を模した食品とは異なるものの、天然の畜肉、魚介類の肉の筋繊維が咀嚼時に不均一に解れる新しい食感を楽しめるのである。
【0019】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は、その全重量に対して40重量%以上の水を含む。この水は組織状大豆蛋白素材の原料として配合する水、および、大豆蛋白原料、炭水化物源等の原料に含まれる水の合計重量である。水の含有量が上記範囲であると、組織状大豆蛋白素材の食感を天然の畜肉や魚介類の肉に近づけることができる。上記組織状大豆蛋白素材に含まれる水の含有量の上限は、例えば、65重量%である。上記水の含有量は、好ましくは40~60重量%である。
【0020】
原料として配合する水は特に限定されず、純水、ミネラルウォーター、水道水、蒸留水、イオン交換水、井戸水等を用いることができる。
【0021】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は、全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分を含んでいてもよい。組織状大豆蛋白素材が上記範囲で油分を含むと、天然の畜肉や魚介類の肉のような弾力と、ぱさつきが少ない食感を実現できる。油分は組織状大豆蛋白素材の原料である大豆蛋白原料、炭水化物源等に含まれる油分、および、組織状大豆蛋白素材の原料として任意で配合する油分の合計重量である。組織状大豆蛋白素材に含まれる油分の含有量の上限は、例えば、60重量%である。
【0022】
組織状大豆蛋白素材の原料である大豆蛋白原料、炭水化物源等以外に任意で油分を添加する場合、その種類は特に限定されず、食品に一般的に使用することができる油脂等を用いることができる。
【0023】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は、炭水化物を含んでいてもよく、全重量に対して固形分換算で1重量%以上の炭水化物を含んでいてもよい。炭水化物の含有量が上記範囲であると、組織状大豆蛋白素材を構成する繊維状大豆蛋白同士の結着状態を制御しやすいからである。この炭水化物は組織状大豆蛋白素材の原料である大豆蛋白原料に含まれる炭水化物、および、上記大豆蛋白原料以外の原料に含まれる炭水化物の合計重量である。組織状大豆蛋白素材に含まれる炭水化物の含有量の上限は、例えば、50重量%である。
【0024】
組織状大豆蛋白素材は、炭水化物源としてデンプンを含むことが好ましく、上記デンプンはコーンスターチであることが好ましい。コーンスターチは、繊維状大豆蛋白の結着性に優れるからである。
【0025】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は、カルシウムを含んでいてもよい。組織状大豆蛋白素材中には、カルシウムが、固形分換算で組織状大豆蛋白素材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。組織状大豆蛋白素材中のカルシウムの量が上記の範囲であると、大豆蛋白を繊維化させやすいからである。なお、上記カルシウムの含有量は、組織状大豆蛋白素材の乾燥重量(固形分換算)100gあたりに含まれる量(mg)を意味する。
【0026】
カルシウムが含まれる形態は、カルシウム塩が好ましく、わずかでも解離してカルシウムイオンとなる化合物であれば特に制限されるものではない。カルシウム塩としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。カルシウムを添加する方法としては、カルシウム塩を原料に添加することが好ましいが、エクストルーダーで加熱加圧しながら押出成形した炭水化物を含む大豆蛋白をこれらのカルシウム塩水溶液中に含侵させることで付与してもよい。カルシウム塩に加えて、マグネシウム塩も同様に使用可能である。
【0027】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は、昆虫由来の蛋白質および/または藻類を含むことが望ましい。
昆虫由来の蛋白質にはカルシウム、鉄分、亜鉛といったミネラル成分が含まれ、また、藻類には脳の発育や心臓機能維持に必要な、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)といった長鎖オメガ3脂肪酸など、独自の栄養成分が多く含まれているからである。昆虫由来の蛋白質としては、イナゴ、カイコ、バッタ、コオロギ、ケラ、ハチ、アリ、タガメ、セミなどに含まれる蛋白質等が挙げられる。また、藻類としては、昆布、わかめ、ひじき、スピルリナ、クロレラ、オドンテラ(Odontella)、ナンノクロロプシス、ミドリムシ(ユーグレナ)などを使用できる。昆虫由来の蛋白質と藻類の形態は特に限定されないが、例えば、昆虫由来の蛋白質は、昆虫をそのまま乾燥させて、粉砕することで粉末化し、昆虫由来の蛋白質を含む原料として使用することができる。藻類は乾燥させて、粉砕することで粉末化することができる。そして、これらの粉末を蛋白シートの原料に添加して混合することができる。
【0028】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材中の昆虫由来の蛋白質および/または藻類の含有量は、特に限定されないが、例えば固形分換算で0.01~50重量%であることが好ましい。
【0029】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は、調味材を含んでいてもよい。調味材としては、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキスなどの畜肉系エキス;ジンジャーエキス、ニンジンエキス、トマトエキスなどの野菜エキス;エビエキス、カニエキス、牡蠣エキス、ホタテエキスなどの魚介エキス;酵母エキス、砂糖、塩、酢、醤油、味噌、みりん、コンソメ、グルタミン酸ソーダなどの調味料類、こしょうなどの香辛料、アミノ酸等が挙げられ、これらを水で希釈した水溶液であってもよい。また、香料を添加してもよい。
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材中の調味材の含有量は、特に限定されないが、例えば固形分換算で0.001~5重量%であることが好ましい。
【0030】
組織状大豆蛋白素材は、繊維状大豆蛋白により構成されていてもよい。繊維状大豆蛋白は、例えば繊維径が0.01~1000μmであるものが好ましい。より好ましくは10~100μmである。
【0031】
蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材は偏平のシート状であることが好ましく、その厚さは0.5~5.0mmであることが望ましい。
【0032】
本発明の蛋白栄養食品に含まれる接着剤としては、蛋白質同士を結合させる酵素、例えばトランスグルタミナーゼやカゼインナトリウム等を使用することが望ましい。
本発明の蛋白栄養食品における接着剤の含有量は、特に限定されないが、例えば蛋白栄養食品100重量部に対して0.01~10重量部である。
【0033】
蛋白シートの主面に形成される溝は、蛋白シートの主面全体に形成されていてもよいし、主面の一部に形成されていてもよい。溝の断面形状は特に限定されず、例えば矩形状、半円状、V字状等が挙げられる。溝の方向は特に限定されないが、蛋白シートが押し出し成形により作製される場合、押し出し方向と平行であることが好ましい。溝の方向が押し出し方向と平行であると、蛋白栄養食品を構成する大豆蛋白の繊維が壊れにくく、咀嚼時に解れる食感を付与することができる。
蛋白シートの主面に形成される溝の数は、特に限定されない。溝の数が多いほどより解れやすい食感が得られるため、所望する食感に合わせて溝の数を調整すればよい。
また、蛋白シートの主面に複数の溝が形成される場合、隣接する溝同士の間隔は、0.1mm~10mmに調整することが望ましい。
【0034】
図4は、本発明にかかる蛋白栄養食品の別の実施形態(九十九折りによる重畳体)を説明するための模式断面図である。図4に示すように、蛋白栄養食品3として、複数の溝40が形成された蛋白シート10を、接着剤30を介して九十九折りにして重畳することもできる。複数枚の蛋白シート10を積層したものを九十九折りにして重畳することもできる。
なお、本発明の実施形態にかかる蛋白栄養食品は、複数枚の蛋白シートを、1枚ずつ接着剤を介して接着して積層した構造のみならず、接着剤を介して接着された複数枚の蛋白シートに、異なる組成の蛋白シートを、接着剤を介して積層してもよい。
【0035】
本発明の蛋白栄養食品の大きさ、形状は特に限定されない。例えば、手で握って食す場合は、蛋白栄養食品が棒形状であって、太さが最も太い部分で1~5cm、長さが5~30cm程度である。
本発明の蛋白栄養食品は、その外観および形状は肉様食品および魚介類の肉を模した食品とは異なるものの、天然の畜肉、魚介類の肉の筋繊維が咀嚼時に不均一に解れる食感を体感できるのである。
【0036】
次に、本発明の実施形態にかかる蛋白栄養食品の作製方法の一例について説明する。
本発明の実施形態における蛋白栄養食品は、蛋白シートを構成する組織状大豆蛋白素材に対応する大豆蛋白原料を含む原料混合物を個別に準備する工程(大豆蛋白混合物準備工程)、押出成形してシート状の組織状大豆蛋白(蛋白シート)を作製する押出工程(組織状大豆蛋白作製工程)、組織状大豆蛋白を環状刃が複数並列に設けられたローラーで挟持して、押出方向に対して垂直方向に圧迫して蛋白シートの主面(表面および/または裏面)に溝を設ける工程(溝形成工程)、蛋白シートを、接着剤を介して積層する工程(積層工程)を経て作製される。
【0037】
(大豆蛋白混合物準備工程)
蛋白シートの原料として脱脂大豆、全脂大豆蛋白および分離大豆蛋白などの大豆蛋白原料を用意し、混練することにより組織状大豆蛋白素材の原料混合物を準備する。必要に応じてさらに炭水化物(コーンスターチ)を加えて加水し、また、カルシウム塩、昆虫由来の蛋白質、藻類、調味材、香料等を加えてもよい。原料中の炭水化物の含有量は、固形分換算で、組織状大豆蛋白素材の全重量に対して1重量%以上であってもよく、1~50重量%であることが好ましい。炭水化物の含有量が上記の範囲であると、繊維状大豆蛋白の結着状態を制御しやすいからである。特に炭水化物の含有量は、1~40重量%であることが最適である。天然の畜肉や魚介類の肉の筋繊維のほぐれを実現できるからである。
全脂大豆蛋白は、固形分換算で10~30重量%の油分を含んでおり、全脂大豆蛋白量を調整することで、油分の調整を行うことができる。一方、脱脂大豆、分離大豆蛋白中には、固形分換算で1~10重量%の油分しか含まれていない。
【0038】
(組織状大豆蛋白作製工程および溝形成工程)
準備したそれぞれの組織状大豆蛋白素材の原料混合物をエクストルーダー(押出成形機)に投入し、その後、加圧加熱処理し熱可塑性となった原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出す。この際、原料組成を固形分換算で大豆蛋白30~90重量%のように調整したり、加圧加熱条件をスクリュー回転数150~550rpm、加熱温度25~180℃のように調整できる。
組織状大豆蛋白素材が押し出される口金のスリットの大きさとして、厚さ1~5mm、幅10mm以上とすることが好ましい。押し出された組織状大豆蛋白シートは、溝形成用の環状刃が表面に複数設けられたローラーで押出方向に対して垂直方向(上下方向)にプレスされてもよい。プレスにより環状刃が組織状大豆蛋白シートの主面に嵌入して溝が形成される。このようして、主面に溝40が形成された蛋白シートが得られる。
【0039】
(積層工程)
接着剤であるトランスグルタミナーゼの粉末やトランスグルタミナーゼの水溶液を複数枚の蛋白シートの接着面に付与して、接着剤付与面が対面するように両者を積層して接着し蛋白栄養食品とする。
さらに必要に応じて、積層シートの表面にさらに接着剤30を付与して、これを巻回、接着してロール体からなる蛋白栄養食品を製造してもよい。蛋白栄養食品は、調理や食事に適した大きさに加工することができる。
また、図2に示すように複数の溝40が形成された蛋白シート10を1枚で使用して、これを巻回する場合は、上記説明した工程に準じて製造する。
また、図4に示すように複数の溝40が形成された蛋白シート10を接着剤30を介して九十九折りに重畳した蛋白栄養食品についても上記説明した工程に準じて製造することができる。
【0040】
以上の工程を経て、本発明の蛋白栄養食品を製造することができる。
なお、上記作製方法においては、蛋白シート10として、水と、油分と、炭水化物とを含む組織状大豆蛋白素材からなり、蛋白シートの全重量に対して40重量%以上の水と、蛋白シートの全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分を含む高脂質性蛋白シートを使用してもよい。
【0041】
本発明の蛋白栄養食品に対して、人参、ごぼう、ごま、タマネギ等の野菜類や、挽肉等の肉類等が付与されてもよい。
【0042】
本発明の蛋白栄養食品は、所定形状に切断、加工して、必要に応じて調味材を付与し、必要に応じて加熱処理して使用することができる。加熱調理は、焼成加熱、蒸し加熱、ボイル加熱、フライ加熱、電磁波加熱等を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0043】
以上により得られた製品は、プロテインバーなどの蛋白栄養食品の形態として提供することができる。
【実施例0044】
(実施例1)
(1)高脂質性蛋白シートの作製
固形分換算で約26重量%の油分を含む全脂大豆蛋白61.0重量部(商品名:ソーヤフラワーNSA、日清オイリオ製)、分離大豆蛋白(商品名:SUPRO PM、Dupont製)26.0重量部、コーンスターチ(商品名:コーンスターチ、加藤化学製)5.0重量部、硫酸カルシウム(商品名:硫酸カルシウム二水和物、富士フィルム和光純薬製)4.0重量部、藻類であるスピルリナ(ジャパンアルジェ株式会社製スピルリナパウダー(粉末))2.0重量部を加え混合して原料混合粉とし、二軸エクストルーダーに供給して加圧加熱処理を行った。原料混合粉98.0重量部(表1参照)に対し、80.0重量部の水を供給しながら二軸エクストルーダーから冷却ダイを経由して、高脂質性蛋白シートを押し出した。なお、加水中には調味材として、野菜だし調味料(カゴメ社製)を原料に対して固形分換算で2.0重量%となるように希釈し添加した。
なお、二軸エクストルーダーでの加圧加熱処理は、スクリュー回転数500rpm、出口側133℃、圧力3.1МPa、冷却水温度60℃、ダイスリット幅60mm×厚さ1.0mmで行った。高脂質性蛋白シートは、溝形成用の環状刃(1mm角刃)が表面に複数設けられた二軸型ローラー(1mm角刃、ローラークリアランス0.1mm)で押出方向に対して垂直方向(上下方向)にプレスして、表面に溝を設けた(図5参照)。図5は、本発明の実施例1にかかる高脂質性蛋白シートを示す写真である。また、表2に高脂質性蛋白シートの原料組成を示す。なお、表2において組成(重量%)が100重量%とならない場合があるが、残余は酸化カルシウム等の灰分である。
【0045】
(2)積層工程
高脂質性蛋白シート3枚を重ね合わせ、積層および接着を行った。各シートの接着にはトランスグルタミナーゼ製剤(味の素製アクティバTG-B)を使用し、これを4倍量の水に溶解させたトランスグルタミナーゼ水溶液を各シート表面に塗布した。塗布後、それぞれのシートを重ね合わせ、冷蔵庫にて5kgの荷重をかけながら2時間保持して積層シートとした。さらに、この積層シートの一方の主面にトランスグルタミナーゼ水溶液を塗布した後、塗布面を内側にして巻回して紐で縛り、冷蔵庫で2時間放置し、直径2cmのロール体とした。これを長さ15cmに切断して蛋白栄養食品を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例2)
実施例1で製造したロール体を、ナイフを用いて長手方向に対して垂直方向に1cm間隔で輪切りにし、直径2cm、厚さ1cmの円板状の蛋白栄養食品を15個得た。
【0049】
(実施例3)
実施例1で製造したロール体を紐で縛る前に、ロール体の側面から直径1cmの半球体の型を押し付け、さらに、ロール体の反対側の側面から直径1cmの半球体の型を押し付けて、半球体の型同士を嵌め合わせて球体とし、この球体型を冷蔵庫に入れて2時間放置した。
次いで球体型を外して中身を取り出し、直径1cmの球状の蛋白栄養食品を得た。
【0050】
(実施例4)
実施例1で巻回する前の積層シートを長さ15cmに切断して、幅6cm、長さ15cmのシート状の蛋白栄養食品を得た。
【0051】
(実施例5)
高脂質性蛋白シートを以下のように調製した以外は実施例1と同様に蛋白栄養食品を得た:
固形分換算で約26重量%の油分を含む全脂大豆蛋白61.0重量部(商品名:ソーヤフラワーNSA、日清オイリオ製)、分離大豆蛋白(商品名:SUPRO PM、Dupont製)26.0重量部、コーンスターチ(商品名:コーンスターチ、加藤化学製)5.0重量部、硫酸カルシウム(商品名:硫酸カルシウム二水和物、富士フィルム和光純薬製)4.0重量部、コオロギ粉末(株式会社エコロギー製、ヨーロッパイエコオロギ粉末)2.0重量部を加え混合して原料混合粉とし、二軸エクストルーダーに供給して加圧加熱処理を行った。原料混合粉98.0重量部(表3参照)に対し、80.0重量部の水を供給しながら二軸エクストルーダーから冷却ダイを経由して、高脂質性蛋白シートを押し出した。なお、加水中には調味材として、野菜だし調味料(カゴメ社製)を原料に対して固形分換算で2.0重量%となるように希釈し添加した。
なお、二軸エクストルーダーでの加圧加熱処理は、スクリュー回転数500rpm、出口側133℃、圧力3.1МPa、冷却水温度60℃、ダイスリット幅60mm×厚さ1.0mmで行った。高脂質性蛋白シートは、溝形成用の環状刃(1mm角刃)が表面に複数設けられた二軸型ローラー(1mm角刃、ローラークリアランス0.1mm)で押出方向に対して垂直方向(上下方向)にプレスして、表面に溝を設けた。また、表4に高脂質性蛋白シートの原料組成を示す。なお、表4において組成(重量%)が100重量%とならない場合があるが、残余は酸化カルシウム等の灰分である。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
実施例1のサンプルを食したところ、外観は細長い円柱状でプロテインバーに近く、また、咀嚼時にほろほろと繊維組織がほぐれ、咀嚼しやすく、天然の肉や貝柱の食感であり、従来の菓子のような食感のプロテインバーとは全く異なるものであった。また、実施例1の蛋白栄養食品は、藻類であるスピルリナを含み、藻類由来のミネラル分および栄養素を摂取できる。
また、実施例2、3の蛋白栄養食品は、サラダやスープに入れることで、視覚的なバリエーションを広げることができる。実施例4のシート状の蛋白栄養食品は、ノリやスライスチーズの代用品として使用することができる。実施例5の蛋白栄養食品は、昆虫由来の蛋白が含まれており、ミネラル分も豊富である。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3 蛋白栄養食品
10 蛋白シート
30 接着剤
40 溝

図1
図2
図3
図4
図5