(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109650
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】安全マットおよび型締装置ならびに射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B29C45/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011326
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】堀本 優也
(72)【発明者】
【氏名】二山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岩重 隆純
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AJ02
4F206AJ05
4F206AJ09
4F206AM08
4F206AP02
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL03
4F206JL07
4F206JP14
4F206JQ83
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】高温の物質が付着しても損傷することがない安全シートを提供する。
【解決手段】表面が可撓性シートからなる感圧スイッチマット(23)と、感圧スイッチマット(23)の上に配置されている踏板(25)と、感圧スイッチマット(23)と踏板(25)の間に互いに間隔をあけて配置されている複数個の荷重伝達部材(28)とから、安全マット(20)を構成する。踏板(25)に作用する荷重は、複数個の荷重伝達部材(28)を介して感圧スイッチマット(23)によって検出される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が可撓性シートから形成され荷重の有無が検出されるようになっている感圧スイッチマットと、
前記感圧スイッチマットの上に配置されている踏板と、
前記感圧スイッチマットと前記踏板の間に互いに間隔をあけて配置されている複数個の荷重伝達部材と、を備え、
前記踏板に作用する荷重は、前記複数個の荷重伝達部材を介して前記感圧スイッチマットによって検出されるようになっている、安全マット。
【請求項2】
前記荷重伝達部材はゴムもしくは金属から形成されている、請求項1に記載の安全マット。
【請求項3】
前記踏板はアルミ板またはステンレス鋼板もしくは鋼板からなる、請求項1または2に記載の安全マット。
【請求項4】
前記踏板には複数本の補強リブが設けられ、前記複数個の荷重伝達部材は前記補強リブに対して固着されている、請求項1~3のいずれかの項に記載の安全マット。
【請求項5】
前記安全マットは、前記感圧スイッチマットより面積が大きく前記感圧スイッチマットの下に設けられている底板と、
複数個の弾性支持部材と、を備え、
前記複数個の弾性支持部材は前記感圧スイッチマットを避けて前記底板に設けられ、前記踏板を支持しており、
前記踏板に荷重が作用すると、前記弾性支持部材が圧縮されるようになっている、請求項1~4のいずれかの項に記載の安全マット。
【請求項6】
前記弾性支持部材はバネからなる、請求項5に記載の安全マット。
【請求項7】
ベッドに対して固定されている固定盤と、
ベッドに対してスライド自在に設けられ前記固定盤に対して近づき離れる方向に駆動される可動盤と、を備え、
前記ベッド上に請求項1~6のいずれかの項に記載の安全マットが設けられている、型締装置。
【請求項8】
前記型締装置は、ベッドに対してスライド自在に設けられている型締ハウジングと、
前記固定盤と前記型締ハウジングを連結している複数本のタイバーと、
前記型締ハウジングと前記可動盤の間に設けられているトグル機構と、を備えている、請求項7に記載の型締装置。
【請求項9】
樹脂を射出する射出装置と、
金型を型締めする型締装置と、を備え、
前記型締装置は、ベッドに対して固定されている固定盤と、
ベッドに対してスライド自在に設けられ前記固定盤に対して近づき離れる方向に駆動される可動盤と、を備え、
前記ベッド上に請求項1~6のいずれかの項に記載の安全マットが設けられている、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の侵入を荷重の有無により検知する安全マット、および安全マットを備えた型締装置、そして安全マットを備えた射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷重の有無を検出する感圧スイッチマットすなわち安全マットは、セキュリティが要求される建物内に設けられて不審者の侵入を検出し、あるいは産業機械に設けられて機械内部に入る作業者を検出するようになっている。
【0003】
感圧スイッチマットには色々なタイプがあるが、例えば次のように構成されている。すなわち感圧スイッチマットは、底面に設けられる底面シートと、ゴムシート等の可撓性を備えた弾性絶縁材からなる表面シートと、底面シートと表面シートの間に設けられている感圧導電シートと、を備えている。感圧導電シートは絶縁体であるゴム材と、このゴム材に混入されている導電性粒子とからなり、圧縮されるとその部分において内部で導電性粒子が接触して導通する。表面シートと底面シートにはそれぞれ電極フィルムが設けられ、電極フィルムは感圧導電シートに接触している。従って、表面シートに荷重が作用すると、荷重が作用している部分が変形して感圧導電シートが圧縮により導通し、表面シートと底面シートの電極フィルムが導通する。予め電極フィルムに電圧を印加しておくことにより、荷重の有無が検出される。
【0004】
特許文献1には異なるタイプの感圧スイッチマットが提案されている。特許文献1に記載の感圧スイッチマットは、踏板部と、この踏板部の裏面側に形成されている複数の筒部とから構成され、ゴムから一体的に形成されている。筒部には流体が封入されており流体は連絡管を介して圧力センサに接続されている。踏板部の表面に荷重が作用すると、その部分が弾性変形して裏面側の筒部が圧縮される。そうすると流体の圧力が高くなり圧力センサによって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感圧スイッチマットは、どの部分に荷重が作用しても確実に荷重の有無を検出することができ、優れている。例えば型締装置において固定盤と可動盤とが設けられているベッド上に感圧スイッチマットを設けると作業者の侵入を確実に検出できるので安全を確保することができる。しかしながら課題も見受けられる。感圧スイッチマットはその表面に荷重が作用するときその部分が変形して荷重を検出するようになっている。つまり、少なくとも表面シートは可撓性を備えている必要があり、ゴム等から形成されている。そうすると表面シートに高温の物質が付着するとその部分が溶けて損傷する。例えば型締装置のベッド上に感圧スイッチマットを設ける場合、溶融した樹脂が落ちて付着すると、その部分が損傷してしまう。
【0007】
本開示において、高温の物質が付着しても損傷することがない安全シート、およびそのような安全シートを備えた型締装置および射出成形機を提供する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、表面が可撓性シートからなる感圧スイッチマットと、感圧スイッチマットの上に配置されている踏板と、感圧スイッチマットと踏板の間に互いに間隔をあけて配置されている複数個の荷重伝達部材とから、安全マットを構成する。踏板に作用する荷重は、複数個の荷重伝達部材を介して感圧スイッチマットによって検出される。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、踏板により感圧スイッチマットを保護して、高温の物質が付着しても損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る安全マットを示す斜視図である。
【
図3A】本実施の形態に係る安全マットの一部を示す側面断面図である。
【
図3B】本実施の形態に係る安全マットの一部を示す側面断面図である。
【
図4A】第2の実施の形態に係る安全マットの一部を示す側面断面図である。
【
図4B】第3の実施の形態に係る安全マットの一部を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0013】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように横置型の射出成形機1からなる。射出成形機1は、次に説明する型締装置2と、射出装置3と、これらを制御するコントローラ4とから概略構成されている。射出装置3は、
図1に簡略的に示されているが、加熱シリンダ5と、この加熱シリンダ5内に設けられている図示されないスクリュとから構成されている。加熱シリンダ5には射出材料を供給するホッパ6と、射出ノズル7とが設けられている。
【0014】
<型締装置>
本実施の形態に係る型締装置2は、ベッドB上に固定されている固定盤9と、ベッドB上をスライドする型締ハウジング10と、ベッドB上を同様にスライドする可動盤11とを備えている。固定盤9と型締ハウジング10は複数本、例えば4本のタイバー13、13、…によって連結されている。可動盤11は、これらタイバー13、13、…に貫通されて固定盤9方向にスライド自在になっている。型締ハウジング10と可動盤11の間には型締機構15が設けられている。そして固定盤9と可動盤11にはそれぞれ金型16、17が設けられている。従って型締機構15を駆動すると金型16、17が型開閉される。なお、型締機構15は油圧で駆動される型締シリンダから構成することもでき、そのタイプは限定されないが、本実施の形態においてはトグル機構が採用されている。
【0015】
<安全マット>
本実施の形態に係る型締装置2には、次に詳しく構造を説明する本実施の形態に係る安全マット20が設けられている。より具体的には、安全マット20はベッドB上に敷かれており、固定盤9と可動盤11の間に設けられ、コントローラ4に接続されている。
図1には示されていないが、型締装置2は安全ドアによって閉鎖されており、射出成形機1の運転中は作業者が内部に入らないようにして安全が確保されている。メンテナンス時には、作業者は安全ドアを開けて型締装置2内に侵入することになるが、作業者が侵入すると安全マット20によって検出されてコントローラ4に通知される。コントローラ4は型締装置2、射出装置3の駆動を禁止する。
【0016】
本実施の形態に係る安全マット20が
図2に示されている。安全マット20は、底板21と、底板21の上に設けられている感圧スイッチマット23と、感圧スイッチマット23の上に配置されている踏板25と、を備えている。底板21はどのような材料から形成されていてもよく、本実施の形態においては金属板から形成されている。底板21はベッドB(
図1参照)に接する部材になっている。
【0017】
感圧スイッチマット23は、市販されている色々なタイプのものが利用できるが、本実施の形態においては、感圧導電シートを備えたタイプになっている。
図2には示されていないが、感圧スイッチマット23は底面シートと、この上に設けられている感圧導電シートと、この上に設けられている可撓性を備えた表面シートとからなる。感圧導電シートは絶縁体であるゴム材から形成され、ゴム材中に多数の導電性粒子が混入されている。従って圧縮されるとその部分において内部で導電性粒子が接触して導通する。表面シートと底面シートにはそれぞれ電極フィルムが設けられ、これらは感圧導電シートに接触している。従って、表面シートに荷重が作用すると、荷重が作用している部分が変形して感圧導電シートが圧縮され導通することになる。なお、どのようなタイプの感圧スイッチマット23が採用されるとしても、少なくとも表面シートはゴム等の可撓性材料から形成されている。
【0018】
踏板25は、感圧スイッチマット23の表面シートに高温の物質が付着して破損しないように設けられている。材質は問わないが、アルミ板つまりアルミニウム合金板、あるいはステンレス鋼板等の金属板から構成することが好ましい。金属板は耐熱性が高いので高温の物質が落ちても劣化するおそれがないからである。踏板25の表面には滑り止めの凹凸加工26が施されている。
【0019】
このような踏板25の裏面には、複数個の荷重伝達部材28、28、…が設けられている。荷重伝達部材28、28、…はどのような材料から形成してもよいが、本実施の形態においてはゴム材すなわちエラストマーから板状に形成されている。複数個の荷重伝達部材28、28、…は、互いに間隔をあけて配置され、踏板25の裏面に取り付けられている。踏板25に作用する荷重は、面積の小さい荷重伝達部材28、28、…を介して感圧スイッチマット23に作用するので、精度良く検出できるようになっている。なお、本実施の形態においては踏板25の裏面には、補強リブ29、29、…が貼り付けられており、荷重伝達部材28、28、…は補強リブ29、29、…に固着されている。
図3Aには安全マット20の断面が示されているが、荷重伝達部材28は補強リブ29の下面において、ネジ30によって固着されている。
【0020】
本実施の形態に係る安全マット20は、底板21と踏板25が、感圧スイッチマット23より面積が大きくなっている。従って、底板21と踏板25はその周縁部が感圧スイッチマット23より外方に飛び出している。この外方に飛び出した部分において、底板21と踏板25は、複数個の弾性支持部材32、32、…によって接続されている。弾性支持部材32、32、…は、弾性的に踏板25を支持するようになっていればよく、どのような材料から構成してもよいが、本実施の形態においてはバネ33から構成されている。
【0021】
<安全マットの作用>
本実施の形態に係る安全マット20の作用を説明する。本実施の形態に係る安全マット20は、踏板25に荷重が作用していないとき、
図3Aに示されているようになる。すなわち、踏板25は弾性支持部材32によって支持され、荷重伝達部材28は感圧スイッチマット23から離間した状態になる。従って、感圧スイッチマット23は変形せず荷重は検出されない。
【0022】
作業者が安全マット20の上に載る。そうすると、
図3Bに示されているように、踏板25に下向きの荷重が作用する。この荷重によって弾性支持部材32は圧縮される。弾性支持部材32が圧縮されると荷重伝達部材28が感圧スイッチマット23に接触し、そして感圧スイッチマット23を下方に押す。そうすると符号35で示されているように感圧スイッチマット23が変形し、荷重が検出される。感圧スイッチマット23が荷重を検出するとコントローラ4(
図1参照)に通知される。コントローラ4は、型締装置2内に作業者が侵入したと判断する。
【0023】
本実施の形態に係る安全マット20は、最上面が踏板25になっている。従って、感圧スイッチマット23は損傷しにくくなっている。本実施の形態に係る射出成形機1(
図1参照)において、射出ノズル7を金型16にタッチした状態でパージをする、いわゆる型内パージを実施すると、高温の溶融樹脂が安全マット20に落下することがある。溶融樹脂が安全マット20に落下しても、踏板25によって保護されているので感圧スイッチマット23は損傷しない。
【0024】
<第2の実施の形態>
本実施の形態に係る安全マット20は色々な変形が可能である。
図4Aには変形された第2の実施の形態に係る安全マット20Aが示されている。第2の実施の形態において、踏板25には、その裏面に補強リブは設けられていない。そして踏板25に直接複数個の荷重伝達部材28、28、…が固着されている。また、荷重伝達部材28、28、…はネジによってではなく接着剤により踏板25に固着されている。さらに第2の実施の形態においては、弾性支持部材は設けられていない。踏板25は複数個の荷重伝達部材28、28、…によって感圧スイッチマット23に支持されているが、踏板25は比較的軽量に形成されているので、感圧スイッチマット23の変形量はわずかになっている。従って、この状態において荷重は検出されない。踏板25に作業者が載ると、感圧スイッチマット23の変形量が大きくなり荷重が検出されるようになっている。
【0025】
<第3の実施の形態>
図4Bには第3の実施の形態に係る安全マット20Bが示されている。第3の実施の形態において、荷重伝達部材28B、28Bは踏板25Bに一体的に形成されている。つまり荷重伝達部材28、28、…は踏板25Bと同じ材料から形成されている。この第3の実施の形態において、弾性支持部材32Bはゴムチューブ37から構成されている。踏板25Bに荷重が作用していないとき、踏板25Bはその重量の大部分がゴムチューブ37に作用している。踏板25Bの重量の一部は荷重伝達部材28B、28B、…を介して感圧スイッチマット23に作用しているが、ゴムチューブ37によって大部分の重量が支持されているので、荷重は検出されない。踏板25に作業者が載ると、ゴムチューブ37が圧縮され、荷重伝達部材28B、28B、…によって感圧スイッチマット23が変形して荷重が検出されるようになっている。
【0026】
<他の変形例>
踏板25について、金属製が好ましいように説明したが、ポリイミド樹脂、セラミックス複合材料、あるいはガラス繊維複合材料から形成してもよい。これらは断熱板として利用されている材料である。したがって、踏板25上に高熱の物質が付着しても感圧スイッチマット23の表面シートへの熱伝導を抑制し、表面シートを保護することができる。荷重伝達部材28についてどのような材料から形成してもよい、と上で説明しているが、踏板25と同様にポリイミド樹脂、セラミックス複合材料、あるいはガラス繊維複合材料から形成してもよいし、金属から形成してもよい。
【0027】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 コントローラ
5 加熱シリンダ 7 射出ノズル
9 固定盤 10 型締ハウジング
11 可動盤 13 タイバー
15 型締機構 16 金型
17 金型 20 安全マット
21 底板 23 感圧スイッチマット
25 踏板 28 荷重伝達部材
29 補強リブ 30 ネジ
32 弾性支持部材 33 バネ
37 ゴムチューブ