(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109656
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】トレーの排水システム、及びこれを用いた機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20230801BHJP
E04H 6/18 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
E04H6/42 H
E04H6/18 606B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011352
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208672
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 愼一
(72)【発明者】
【氏名】板垣 一彦
(72)【発明者】
【氏名】森 貴博
(57)【要約】
【課題】トレーの上面に溜まる水分をトレーの下方に確実に排水するトレーの排水システムを提供することを目的とする。
【解決手段】トレーの排水システムは、トレー2に設けられる排水機構20と、排水機構20に作用して排水機構20を開放する作動部30と、作動部30からの水分を誘導する水分誘導部40と、を含んで構成され、排水機構20は、トレー2の床を貫通する開口2Bの下側に設けられ、水分を封止する封止部2C1と、封止部2C1を開閉する開閉部材22と、を含んで構成され、作動部30は、開閉部材22を封止部2C1から離反する方向に移動させて封止部2C1を開放する作動部材34を含んで構成され、作動部30が封止部2C1を開放してトレー2に溜まる水分が排水される構成とされ、水分誘導部40は、作動部30に設けられる排水部38の昇降動作に沿う方向に設けられ、排水部38からの水分を貯水部16Aに誘導する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置するトレーに設けられる排水機構と、前記排水機構に作用して前記排水機構を開放する作動部と、前記作動部からの水分を誘導する水分誘導部と、を含んで構成されるトレーの排水システムであって、
前記排水機構は、前記トレーの床を貫通する開口部の下側に設けられ、水分を封止する封止部と、前記封止部を開閉する開閉部材と、を含んで構成され、
前記作動部は、前記開閉部材を前記封止部から離反する方向に移動させて前記封止部を開放する作動部材を含んで構成され、
前記作動部が前記封止部を開放して前記トレーに溜まる前記水分が排水される構成とされ、
前記水分誘導部は、前記作動部に設けられる排水部の昇降動作に沿う方向に設けられ、前記排水部から排水される前記水分を自然落下させて貯水部に誘導する、
トレーの排水システム。
【請求項2】
前記排水機構は、前記開口部の下方に設けられ、上下に開口を有し、上部に前記封止部が形成される筒部材と、前記筒部材に設けられ、前記開閉部材を移動可能に支持する支持部材と、前記開閉部材に接続され、前記支持部材に摺動可能に支持される摺動部材と、前記摺動部材の前記開閉部材の反対側に設けられ、前記作動部の作用を受ける被作動部材と、前記支持部材と前記被作動部材との間に設けられ、前記開閉部材を前記封止部に接触させる方向に付勢する付勢部材と、を有する、請求項1に記載のトレーの排水システム。
【請求項3】
前記作動部は、上部に開放された受水槽と、前記受水槽の内部に設けられ、前記排水機構の前記被作動部材に向けて延びる前記作動部材と、を有し、前記被作動部材に対して進退する、請求項1又は2に記載のトレーの排水システム。
【請求項4】
前記作動部に設けられる前記受水槽は、前記排水機構の側から受けた水分を排水する排水部を有する、請求項3に記載のトレーの排水システム。
【請求項5】
前記作動部は、前記トレーを載置して昇降する昇降装置に設けられる、請求項1から4のいずれか1項に記載のトレーの排水システム。
【請求項6】
前記水分誘導部は、前記昇降装置の昇降方向に沿う方向に配置され、前記排水部が内部において昇降が許容される開放部を有する、請求項1に記載のトレーの排水機構。
【請求項7】
車両を載置するトレーと、前記トレーに前記車両が乗降する乗降室と、前記トレーを格納する格納室と、前記乗降室と前記格納室とを連絡し、前記トレーを載置する昇降装置と、請求項1から6のいずれか1項に記載のトレーの排水システムと、を備える機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーの排水システム、及びこれを用いた機械式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長さ方向両端部を支持され、その上に車両を載せる水タンク付パレットであって、入出庫時に前記車両の左右のタイヤを連続的に支持する1対のタイヤ支持面を備え、前記タイヤ支持面は、水平に形成され、その長さ方向中央部にその上を前記タイヤが通過可能な複数の水抜穴を有し、前記水抜穴は、前記タイヤ支持面の上面から下面まで貫通しており、さらに、前記タイヤ支持面の前記下面に固定され前記水抜穴から流下する水を溜める水タンクを備え、前記水タンクを通り前記長さ方向に直交する断面における前記水タンクを含めた断面係数が、前記水タンクのない部分の断面係数より大きく設定されている、水タンク付パレットが記載されている。
【0003】
特許文献2には、車両が載置される床板を有し、当該床板が立体的に配置された立体駐車装置において、前記床板に水抜き孔が設けられ、前記水抜き孔の下側開口縁は環状に連続する曲線又は一部に直線を含む連続した線であり、前記水抜き孔の上側開口縁は曲線又は一部に直線を含む線を基調とし一部に不連続部がある環状形状であることを特徴とする立体駐車装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-011579
【特許文献2】特開2017―025665
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、パレットのタイヤ支持面に複数の水抜穴を有し、水抜穴から流下する水を溜める水タンクがパレットの下面に設けられているから、パレットの下面側に水タンクが出っ張り、パレットの高さ寸法が水タンクを有しないものに比べて大きなものとなる。また、水タンク内に錆が発生し、経年劣化が著しいものである。
【0006】
また、特許文献2に記載された発明は、床板に水抜き孔が設けられ、水抜き孔の上側開口縁及び下側開口縁に加工を施したものであり、床板に水があるとき、水抜き孔から絶えず水が流下するものである。
【0007】
本発明は、トレーの上面に溜まる水分をトレーの下方に確実に排水するトレーの排水システム、及びこれを用いた機械式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係るトレーの排水システムは、物品を載置するトレーに設けられる排水機構と、前記排水機構に作用して前記排水機構を開放する作動部と、前記作動部からの水分を誘導する水分誘導部と、を含んで構成されるトレーの排水システムであって、前記排水機構は、前記トレーの床を貫通する開口部の下側に設けられ、水分を封止する封止部と、前記封止部を開閉する開閉部材と、を含んで構成され、前記作動部は、前記開閉部材を前記封止部から離反する方向に移動させて前記封止部を開放する作動部材を含んで構成され、前記作動部が前記封止部を開放して前記トレーに溜まる前記水分が排水される構成とされ、前記水分誘導部は、前記作動部に設けられる排水部の昇降動作に沿う方向に設けられ、前記排水部から排水される前記水分を自然落下させて貯水部に誘導する。
【0009】
第2態様に係るトレーの排水システムは、第1態様に係るトレーの排水システムにおいて、前記排水機構は、前記開口部の下方に設けられ、上下に開口を有し、上部に前記封止部が形成される筒部材と、前記筒部材に設けられ、前記開閉部材を移動可能に支持する支持部材と、前記開閉部材に接続され、前記支持部材に摺動可能に支持される摺動部材と、前記摺動部材の前記開閉部材の反対側に設けられ、前記作動部の作用を受ける被作動部材と、前記支持部材と前記被作動部材との間に設けられ、前記開閉部材を前記封止部に接触させる方向に付勢する付勢部材と、を有する。
【0010】
第3態様に係るトレーの排水システムは、第1態様又は第2態様に係るトレーの排水システムにおいて、前記作動部は、上部に開放された受水槽と、前記受水槽の内部に設けられ、前記排水機構の前記被作動部材に向けて延びる前記作動部材と、を有し、前記被作動部材に対して進退する。
【0011】
第4態様に係るトレーの排水システムは、第3態様に係るトレーの排水システムにおいて、前記作動部に設けられる前記受水槽は、前記排水機構の側から受けた水分を排水する排水部を有する。
【0012】
第5態様に係るトレーの排水システムは、第1態様から第4態様のいずれか1態様に係るトレーの排水システムにおいて、前記作動部は、前記トレーを載置して昇降する昇降装置に設けられる。
【0013】
第6態様に係るトレーの排水システムは、第1態様に係るトレーの排水システムにおいて、前記水分誘導部は、前記昇降装置の昇降方向に沿う方向に配置され、前記排水部が内部において昇降が許容される開放部を有する。
【0014】
第7態様に係る機械式駐車装置は、車両を載置するトレーと、前記トレーに前記車両が乗降する乗降室と、前記トレーを格納する格納室と、前記乗降室と前記格納室とを連絡し、前記トレーを載置する昇降装置と、第1態様から第6態様のいずれか1態様に係るトレーの排水システムと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
第1態様に係るトレーの排水システムによれば、タンク又は水抜穴を有するものに比べて、トレー上に溜まる水分を確実に排水することができる。
【0016】
第2態様に係るトレーの排水システムによれば、トレーに単に穴を有するものに比べて、トレー上に溜まる水分を一時的に排水することができる。
【0017】
第3態様に係るトレーの排水システムによれば、トレーに単に穴を有するものに比べて、トレー上に溜まる水分を一時的に排水することができる。
【0018】
第4態様に係るトレーの排水システムによれば、トレーに穴又はタンクを有するものに比べて、受水槽が受けた水分を下流側に一定水量で排水することができる。
【0019】
第5態様に係るトレーの排水システムによれば、手動操作を行うものに比べて、受水槽が受けた水分を下流側に自動的に一定水量で排出することができる。
【0020】
第6態様に係るトレーの排水システムによれば、トレーに穴又はタンクを有するものに比べて、水受タンク32が受けた水分を途中で貯水することなく、下流側に排水することができる。
【0021】
第7態様に係る機械式駐車装置によれば、車両によってトレー上に持ち込まれる水分を、トレーから適宜のタイミングで下流側に排水することができる。水分には、雨水、雪氷融水の他に、燃料電池車(FCV)の排水システムによる連続排水される水も含まれ、これらの水分を確実に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第一実施形態に係るトレーの全体を示す平面図である。
【
図2】第一実施形態に係るトレーの排水機構と排水機構を開閉する水受部を示す側面断面図である。
【
図3】第一実施形態に係るトレーの排水機構が水受部によって開放された状態を示す側面断面図である。
【
図4】第一実施形態に係る水受部と排水樋との関係を示す平面図である。
【
図5】
図2に示すトレーの排水機構と排水機構を開閉する水受部を別の角度から見た側面断面図である。
【
図6】第一実施形態に係る水受部の排水パイプと排水樋との関係を示す斜視図である。
【
図7】第一実施形態に係る水受部の排水パイプと排水樋とリフトとの関係を示す平面図である。
【
図8】第一実施形態に係るトレーがリフトに載置され、リフトが昇降する状態を示す側面図である。
【
図9】第一実施形態に係るトレーがリフトに載置されて下降中において排水パイプから排出される水分が排水樋に誘導されて流下する状態を示す側面図である。
【
図10】第一実施形態に係るトレーがリフトに載置されて下降し、トレーが下段レベルL3に支持され、水受部に溜まった水分を、排水樋から排水部材を介してリフトピットの釜場に排水する状態を示す側面図である。
【
図11】第二実施形態に係るトレーが着床レベルL1に支持され、リフトが下方からトレーに接近する状態を示す側面図である。
【
図12】第二実施形態に係るトレーがリフトに載置され、水受部がトレーの排水機構を開放して水分を受け、水分が排水樋に排水される状態を示す側面図である。
【
図13】第一実施形態に係る機械式駐車装置の全体を示す側面断面図である。
【
図14】第三実施形態に係るトレーの全体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態に係るトレーの排水システム及びこれを用いた機械式駐車装置の一例について図面を参照しながら説明する。なお、図中に示す矢印Wは装置幅方向を示し、矢印Dは装置奥行方向を示し、矢印Hは装置高さ方向を示す。また、装置幅方向Wは「トレーの短手方向」と、また、装置奥行方向Dは「トレーの長手方向」と、また、装置高さ方向Hに沿う方向を「上下方向」と、装置高さ方向Hの方向を「上方」又は「上部」と、また、装置高さ方向Hと反対側の方向を「下方」又は「下部」と、また、装置高さ方向Hの側から見ることを「平面視」と、それぞれ言い換えることがある。
【0024】
また、本実施形態で示す水分とは、水のみ、塵埃を含む水、及び氷雪が融解して一部に氷粒等が含まれる水などを意味する。
【0025】
[第一実施形態]
<トレーの排水システムの基本構成>
図1はトレー2の全体を示す平面図である。トレー2は平面視、矩形状をなす長方形であり、長方形のトレー2の周囲に、トレー2上の水分がトレー2の外に流下するのを阻止する止水部材2Aが設けられている。止水部材2Aは、トレー2上の水分を堰き止めるに足る高さ及び幅を有していればよく、本実施形態では直径19mmの丸棒鋼を用いている。トレー2の上面は平板状の上板を有し、トレー2の上板の一部に1箇所、後述する排水機構20が設けられる位置に上板を上下方向に貫通する開口部2Bを有し、トレー2の周囲から開口部2Bに向けて、平板状のトレー2は全体として装置高さ方向Hの方向と反対の側に向けて水勾配を有し、排水機構20に向けて水分を集水する形状を有している。
【0026】
<要部の構成>
図2は、トレー2の排水機構20と排水機構20を開閉する水受部30を示す側面断面図である。
【0027】
[排水機構]
図2に示すように、排水機構20は、トレー2の開口部2Bの下方に設けられ、上下に開口を有し、上部に封止部2C1が形成される筒部材2Cと、筒部材2Cに設けられ、開閉部材22を移動可能に支持する支持部材2Dと、開閉部材22に接続され、支持部材2Dに摺動可能に支持される摺動部材24と、摺動部材24の開閉部材22の反対側に設けられ、後述する水受部30の作用を受ける被作動部材26と、支持部材2Dと被作動部材26との間に設けられ、開閉部材22を封止部2C1に接触させる方向に付勢するコイルばね28と、を有する。ここで、水受部30は作動部の一例であり、支持部材2Dは支持部の一例であり、コイルばね28は付勢部材の一例である。
【0028】
(筒部材)
図2に示すように、本実施形態では、筒部材2Cは、トレー2に設けられた開口部2Bの下部の周囲に水密に固定されるスペーサ2Eの下部に水密に固定されている。筒部材2Cは、全体として円筒状の部材であり、筒部材2Cの上部に、上方に向かって開く形状で傾斜面が形成された封止部2C1を有し、筒部材2Cの上下方向の中央部は同径に形成され、中央部の下方側は下方に向かって開く形状で傾斜面を有して拡径され、拡径された部分よりも下側は拡径された径のまま下方に延びる形状となっている。
【0029】
また、筒部材2Cの上下方向の中央部であって、筒部材2Cの内部には、後述する開閉部材22に固定される後述する摺動部材24を上下方向に摺動可能に支持する支持部材2Dが固定されている。支持部材2Dは、本実施形態では円筒状のパイプが用いられ、筒部材2Cの内面に固定されるブラケットを用いて摺動部材24を摺動可能に支持可能な位置に固定され、円柱状の摺動部材24を支持している。
【0030】
(開閉部材)
図2に示すように、開閉部材22は、開閉部材22の下面に固定され、上下方向に延びて予め定められた寸法を有する摺動部材24と、摺動部材24の下部に固定され、後述する水受部30に設けられる作動部材34が作用する被作動部材26が固定されている。本実施形態では、開閉部材22は、筒部材2Cの上部に形成された封止部2C1を水密に封止する大きさ及び厚さを有する円板状の部材であり、この部材の円周部分は、封止部2C1の傾斜角度に合う角度で下方に縮径する傾斜面を有している。また、開閉部材22は、ゴム等の樹脂材料で製作されている。
【0031】
(コイルばね)
図2及び
図3に示すように、コイルばね28は、支持部材2Dと被作動部材26との間に設けられ、開閉部材22を封止部2C1に接触させる方向に付勢する。本実施形態では、筒部材2Cに設けられる支持部材2Dと開閉部材22と被作動部材26とを繋ぐ摺動部材24に挿し込まれるように設けられ、開閉部材22を装置高さ方向Hの下方、すなわち、封止部2C1に向けて押し付けるように付勢している。
【0032】
図2は、トレー2の排水機構20と排水機構20を開閉する水受部30を示す側面断面図であり、
図4は、水受部の概要を示す平面図であり、
図5は、
図2に示すトレー2の排水機構と排水機構を開閉する水受部を別の角度から見た側面断面図である。
【0033】
[水受部(作動部)]
図2、
図4、及び
図5に示すように、水受部30は、上方に開放された水受タンク32と、水受タンク32の内部に設けられ、排水機構20の被作動部材26に向けて延びる作動部材34と、を有し、被作動部材26に対して進退する。また、水受部30に設けられる水受タンク32は、排水機構20の側から受けた水分を排水する排水孔32Aを有する。ここで、水受タンク32は受水槽の一例であり、排水孔32Aは、後述する排水パイプ38とともに構成される排水部の一例である。
【0034】
水受部30は、本実施形態では、昇降部18に設けられている。具体的には、水受部30は、昇降部18の上部に設けられ、スペーサ36Bを介して設けられる枠材36と、枠材36の上下方向の中間部に固定される受材36Aと、受材36Aの上側に設けられ、上部に開口を有する水受タンク32と、水受タンク32の内部に、水受タンク32の開口よりも上方に突出して設けられる作動部材34と、作動部材34の上部に上方に突出して設けられる先端34Aと、を有して構成されている。ここで、昇降部18は昇降装置の一例である。
【0035】
また、水受タンク32の底部には、排水孔32Aが開口され、エルボ管を介して排水パイプ38が接続されている。排水パイプ38の下流側の構成については後述する。ここで、排水パイプ38は、排水孔32Aとともに構成される排水部の一例である。
【0036】
[排水樋]
図4、6、7に示すように、排水樋40は、水受部30に設けられる排水パイプ38の昇降動作に沿う方向に設けられ、排水パイプ38から排水される水分を自然落下させて釜場16Aに誘導する。ここで、排水樋40は水分誘導部の一例であり、釜場16Aは貯水部の一例である。
【0037】
排水樋40は、
図6に示すように、昇降装置18の昇降方向に沿う方向に配置され、排水パイプ38が内部において昇降が許容される開放部40Dを有する。具体的には、排水樋40は、平面視、排水パイプ38の排水口38Aに近接して対向し、排水パイプ38から排出される水分を受けて下方に誘導する第一誘導部40Aと、水分が周囲に飛散しないように第一誘導部40Aの両端からそれぞれ連続して内側に折り曲げて形成される第二誘導部40B、40Bと、第二誘導部40B、40Bの第一誘導部40Aと反対側の端部からそれぞれ連続して内側に折り曲げて形成される第三誘導部40C、40Cと、これらふたつの第三誘導部40C、40Cとが間隔を隔てて対向する開放部40Dとを有する。
【0038】
また、排水樋40は、
図7に示すように、装置奥行方向Dに間隔を隔てて上下方向に沿う方向に延びる2本のリフト柱18A、18Aを連結する横梁18Dに、開放部40が排水パイプ38の上下方向への移動を許容する方向に設置されている。横梁18Dは、上下方向に複数本配置されてリフト柱18A、18Aを連結しているが、排水樋40は、これら複数本の横梁18Dに固定される。
【0039】
排水パイプ38は、排水口38Aが第一誘導部40Aに近接して対向した状態で排水樋40の内部を昇降する。
【0040】
<要部の作用>
図3に、要部の作用として、トレー2の排水機構20が水受部30によって開放された状態を示す。
【0041】
図2には、トレー2の排水機構20と水受部30とが、上下方向に離れた状態を示しているが、
図2に示す状態で、トレー2の上部に載置される物品によってトレー2の上部に水分が持ち込まれると、排水機構20の位置に水分が集まり、トレー2の上部に水分が溜まる。
図2では、トレー2の上部に溜まる水分の図示を省略している。この状態で、水受部30は、矢印Aの方向、すなわち、トレー2に設けられた排水機構20に対して、トレー2の着床位置L1に向けて下方から装置高さ方向Hに沿う方向に上昇する。
【0042】
図3に示すように、水受部30が昇降部18によって上昇されると、水受部30がトレー2に設けられた排水機構20に接触する。具体的には、水受部30の水受タンク32の内部から突出する作動部材34の先端34Aが、排水機構20の被作動部材26をコイルばね28の付勢力に抗して押し上げる。被作動部材26に摺動部材24を介して設けられた開閉部材22は、トレー2に設けられた筒部材2Cの封止部2C1から上方に押し上げられて封止部2C1を開放する。これにより、トレー2の上部であって排水機構20の周囲に溜まる水分が、筒部材2Cの内部を通過して水受部30の水受タンク32に流下し、続いて、水受タンク32に設けられた排水孔32Aを通過して排水パイプ38に流下する。
【0043】
水受タンク32では、
図4に示すように、水受タンク32の底部に開口される排水孔32Aは底部の一部に設けられているから、トレー2からの水分の量が多ければ、水分の一部が水受タンク32に溜まりつつ、排水孔32Aを通過して次第に全量が流下するが、トレー2からの水分の量が多くなければ、水受タンク32に水分が溜まることなく排水孔32Aを通過して排水パイプ38に流下する。
【0044】
ここで、水受部30の上昇動作を行う昇降部18は、例えば、電動機や油圧装置等を用いて、リンク機構やカム機構等の昇降動作を実現できる各種機構を用いて昇降するようにしてもよい。本実施形態では、一例として、機械式駐車装置1に用いた例で要部の作用を具体的に説明する。
【0045】
<機械式駐車装置の構成>
図13は、機械式駐車装置1を示す。車両4を載置するトレー2と、トレー2に車両4が乗降する乗降室12と、トレー2を格納する格納室14と、乗降室12と格納室14とを連絡し、トレー2を載置するリフト18と、を含んで構成されている。具体的には、機械式駐車装置1は、車両4がトレー2の着床位置L1にて進退する乗降室12と、車両4を格納して駐車する格納装置14Aが設置される格納室14と、が建物躯体10によって構成されている。
【0046】
乗降室12には、床にトレー2が通過可能な大きさで開口部12Bが形成され、躯体10の壁は車両4が進退可能に開口されて出入口12Aとされ、出入口12Aには図示しない出入口扉が開閉可能に設置されている。開口部12Bには、トレー2が着床位置L1に支持または昇降可能に、開口部12Bに位置するトレー2に対して進退可能な図示しないトレー支持装置が設けられている。
【0047】
格納室14には、本実施形態では、上下二段に形成された格納装置14Aが躯体10に設置されている。
図13では、格納装置14Aは、車両4を格納するレベルについて、上段におけるトレー2の上面のレベルを上段レベルL2とし、下段におけるトレー2の上面のレベルを下段レベルL3として、上段レベルL2と下段レベルL3とが上下に予め定められた高さ寸法で隔てられて形成される一例を示している。格納装置14Aは、パズル型平面循環式、水平循環式、箱型循環式、円形循環式等、トレーを用いる格納装置であればいずれの型式の格納装置でもよい。
【0048】
リフト18は、乗降室12と格納室14とを連絡し、車両4の入庫又は出庫に対応してトレー2を載置して昇降する。本実施形態では、格納室14における乗降室12の下方にリフトピット16が形成され、リフトピット16から乗降室12の開口部12Bまでリフト柱18Aが装置高さ方向Hに沿って設置され、リフト柱18Aにリフト18が昇降可能に設けられている。リフト柱18Aは格納装置14Aと反対側の躯体10にサポート部材18Bによって支持されている。
図13では、乗降室12の着床レベルL1に車両4を載置していないトレー2と、格納装置14Aの上の段、すなわち、上段レベルL2に車両4が載置されていないトレー2と、格納装置14Aの下の段、すなわち、下段レベルL3に車両4が載置されたトレー2と、を、それぞれ仮想線で示しているが、これらは、車両4の入庫又は出庫に対応してひとつのトレー2が昇降する。
【0049】
[機械式駐車装置における水受部(作動部)]
図2に示すように、水受部30は、上部に開放された水受タンク32と、水受タンク32の内部に設けられ、排水機構20の被作動部材26に向けて延びる作動部材34と、を有し、被作動部材26に対して進退する。また、水受部30に設けられる水受タンク32は、排水機構20の側から受けた水分を排水する排水孔32Aを有する。
【0050】
図8に示すように、水受部30は、本実施形態では、昇降部となるリフト18に設けられている。具体的には、水受部30は、リフト18の上部の構造体である枠体18Cの一部を構成する中間材18C1の上部に設けられている(
図7も参照)。水受部30の構成は上述した構成と同様であるのでその説明は省略する(
図2、3を参照)。ここで、リフト18は昇降装置の一例である。
【0051】
図2、3に示すように、水受タンク32の底部に開口される排水孔32Aにエルボ管を介して排水パイプ38が接続されている。水受タンク32及び排水パイプ38については上述した構成と同様であるのでその説明は省略する。
【0052】
(釜場)
図10に示すように、釜場16Aは、リフトピット16の底面より低く掘り下げた穴状とされ、排水樋40から排水される水分を一時的に貯水する。釜場16Aには図示しない排水ポンプが設置され、釜場16Aに一定量の水分が溜まった段階で排水ポンプが溜まった水分を外部に排出する。
【0053】
<第一実施形態の機械式駐車装置における排水動作>
第一実施形態の機械式駐車装置1におけるトレー2に溜まる水分の排水動作について、
図2、
図3、
図8から
図10を参照しながら説明する。
【0054】
図8に示すように、トレー2は、リフト18に載置されて、開口部12Bにおける着床レベルL1に配置されて停止している。トレー2は、空車状態の場合と、車両4が載置された状態とがあるが、
図8では、トレー2は車両4が載置されていない空車状態を示している。また、トレー2の上面には、図示しないが一定量の水分が溜まっている。
【0055】
トレー2に設けられる排水機構20は、開閉部材22が封止部2C1に対して開放状態にあり、水受部30の水受タンク32に水分が排水される(
図3を参照)。リフト18に設置される水受部30がトレー2の排水機構20を開放して水分を受け、水受部30の水受タンク32が受けた水分は排水パイプ38を介して排水樋40に誘導される。
【0056】
具体的には、水受部30の水受タンク32の内部から突出する作動部材34の先端34Aが、排水機構20の被作動部材26をコイルばね28の付勢力に抗して押し上げている。被作動部材26に摺動部材24を介して設けられた開閉部材22は、トレー2に設けられた筒部材2Cの封止部2C1から上方に押し上げられて封止部2C1を開放する。これにより、トレー2の上部であって排水機構20の周囲に溜まる水分が、筒部材2Cの内部を通過して水受部30の水受タンク32に流下し、続いて、水受タンク32に設けられた排水孔32Aを通過して排水パイプ38に流下する(
図3を参照)。排水パイプ38を流下した水分は、排水樋40に流下する。
【0057】
次に、リフト18がリフト柱18Aに沿って
図8に示す矢印Bの方向に下降すると、
図9に示す矢印Bの方向にリフト18が下降状態となる。この状態では、トレー2に溜まっている水分が多ければ、排水機構20の開閉部材22が水受タンク32に設けられる作動部材34によって封止部2C1から離れる開放状態にあるため、連続してトレー2上の水分が水受部30を介して排水樋40に排水される。一方、トレー2に溜まっている水分が少なければ、排水機構20の開閉部材22が水受タンク32に設けられる作動部材34によって封止部2C1から離れる開放状態のまま、トレー2からの水分の排水は終了され、水受タンク32は空になり、排水樋40には水分は流下しない。
【0058】
図9に示すように、リフト18は、トレー2の着床レベルL1を離れて矢印Bの方向に下降して格納装置14Aの上段レベルL2に停止する前の状態で下降を続ける。リフト18が格納装置14Aの上段レベルL2に停止した場合は、図示はしないが、トレー2は、載置部材19とともにリフト18の枠体18Cから僅かに上方に位置して、トレー2の排水機構20とリフト18の水受部30とが離れた状態になる(
図2参照)。具体的には、載置部材19の昇降範囲に、図示しない受部材が載置部材19を支持可能に突出していて、載置部材19は、リフト18上に支持されたまま図示しない受部材に支持され、枠体18Cよりも上方に上昇してトレー2が上段レベルL2に停止され、リフト18も停止される。このとき、載置部材19の上面は、格納装置14Aの上段レベルL2のレールの上面と同一レベルとされ、トレー2が、リフト18と格納装置14Aとの間で移動可能とされる。この状態において、トレー2に設けられる排水機構20とリフト18に設けられる水受部30とが離れた状態となり、これにより、トレー2に設けられる排水機構20の開閉部材22は封止部2C1と水密に接触して封止状態となって開口部12Bを封止する(
図2を参照)。トレー2は、排水機構20と水受部30とが離れた状態にあるから、リフト18と格納装置14Aとの間での移動が許容される。
【0059】
次に、排水樋40を流下した水分が排水される状態を説明する。
図10は、トレー2がリフト18に載置されて下降してトレー2が下段レベルL3に支持され、排水樋40を流下した水分をリフトピット16の釜場16Aに排水する状態を示している。
【0060】
図10は、リフト18は、トレー2が格納装置14Aの下段レベルL3に下降して停止する直前の状態を示す。図示はしないが、トレー2は、載置部材19とともにリフト18の枠体18Cから僅かに上方に位置して、トレー2の排水機構20とリフト18の水受部30とが離れた状態になる(
図2参照)。具体的には、載置部材19の昇降範囲に、図示しない受部材が載置部材19を支持可能に突出していて、載置部材19は、リフト18上に支持されたまま図示しない受部材に支持され、枠体18Cよりも上方に上昇してトレー2が下段レベルL3に停止され、リフト18も停止される。このとき、載置部材19の上面は、格納装置14Aの下段レベルL3のレールの上面と同一レベルとされ、トレー2が、リフト18と格納装置14Aとの間で移動可能とされる。この状態において、トレー2に設けられる排水機構20とリフト18に設けられる水受部30とが離れた状態となり、これにより、トレー2に設けられる排水機構20の開閉部材22は封止部2C1と水密に接触して封止状態となって開口部12Bを封止する。トレー2は、排水機構20と水受部30とが離れた状態にあるから、リフト18と格納装置14Aとの間での移動が許容される。
【0061】
排水樋40を流下した水分は、排水樋40の下方に配置される接続部42に連結される排水部材44を介して流下してリフトピット16に設けられる釜場16Aに貯水される。釜場16Aに貯水される水分は、図示しない排水ポンプによって外部に排出される。
【0062】
図10に示す下段レベルL3にて、水分がリフトピット16の釜場16Aに排水されると、水受部30の水受タンク32は空状態になる。この後、リフト18が
図10に示す矢印Aの方向に上昇されると、載置部材19はリフト18の枠体18Cの側に下降して、
図3に示すように、リフト18に設けられる水受部30の作動部材34が、トレー2に設けられる排水機構20の開閉部材22を封止部2C1から離れる方向に移動して、封止部2C1を開放する。
図10では、この開放状態を示している。そして、次の車両4の入出庫のために、上段レベルL2、又は上段レベルL2を通過して上昇し、着床レベルL1に停止する。このとき、載置部材19の昇降範囲に突出する図示しない受部材は昇降範囲に突出しない位置に退避している。この間、トレー2に設けられる排水機構20は開放状態に置かれるため、格納装置14A内に格納されている間にトレー2上に溜まった水分、又は、次の入出庫において車両4によって持ち込まれる水分がトレー2上から確実に排水される。
【0063】
<第二実施形態の機械式駐車装置における排水動作>
図11は、第二実施形態として、トレー2に水受部30を有するリフト18が接近する状態を示している。第二実施形態では、乗降室12に、図示しない特殊ターンテーブルが乗降室12の床に配置された形式のもの、又は、乗降室12と格納室14とが免震装置によって躯体10が上下方向で切り離されている、いわゆる、免震対応の乗降室12のものを示している。特殊ターンテーブルが乗降室12の床に配置された形式の場合、開口部12Bは、躯体10にではなく特殊ターンテーブルに設けられるものとなる。
【0064】
図11に示すように、トレー2は、開口部12Bに設けられる図示しないトレー支持装置によって支持されている。リフト18は、リフト柱18Aに支持されて矢印Aの方向に上昇している。トレー2は、空車状態でもよいし、車両4が載置された状態でもよい。また、トレー2の上面には、図示しないが一定量の水分が溜まっている。トレー2に設けられる排水機構20は、開閉部材22が封止部2C1に接触して封止状態である(
図2を参照)。
【0065】
図12は、トレー2がリフト18に載置され、水受部30がトレー2の排水機構20を開放して水分を受ける状態を示している。具体的には、水受部30の水受タンク32の内部から突出する作動部材34の先端34Aが、排水機構20の被作動部材26をコイルばね28の付勢力に抗して押し上げる。被作動部材26に摺動部材24を介して設けられた開閉部材22は、トレー2に設けられた筒部材2Cの封止部2C1から上方に押し上げられて封止部2C1を開放する。これにより、トレー2の上部であって排水機構20の周囲に溜まる水分が、筒部材2Cの内部を通過して水受部30の水受タンク32に流下し、続いて、水受タンク32に設けられた排水孔32Aを通過して排水パイプ38に流下する(
図3を参照)。排水パイプ38を流下した水分は、排水樋40に流下する。
【0066】
続いて、リフト18はトレー2を着床レベルL1よりも上方に持ち上げて停止し、この状態で、図示しないトレー支持装置がトレー2から退避して、リフト18は矢印Bの方向に下降する。
【0067】
続く動作は第一実施形態と同じであるので、第一実施形態における動作を説明した
図9及び
図10を参照しながら説明する。
【0068】
図9に示すように、リフト18は、トレー2の着床レベルL1を離れて矢印Bの方向に下降して格納装置14Aの上段レベルL2に停止する前の状態で下降を続ける。リフト18が格納装置14Aの上段レベルL2に停止した場合は、図示はしないが、トレー2は、載置部材19とともにリフト18の枠体18Cから僅かに上方に位置して、トレー2の排水機構20とリフト18の水受部30とが離れた状態になる(
図2参照)。具体的には、載置部材19の昇降範囲に、図示しない受部材が載置部材19を支持可能に突出していて、載置部材19は、リフト18上に支持されたまま図示しない受部材に支持され、枠体18Cよりも上方に上昇してトレー2が上段レベルL2に停止され、リフト18も停止される。このとき、載置部材19の上面は、格納装置14Aの上段レベルL2のレールの上面と同一レベルとされ、トレー2が、リフト18と格納装置14Aとの間で移動可能とされる。この状態において、トレー2に設けられる排水機構20とリフト18に設けられる水受部30とが離れた状態となり、これにより、トレー2に設けられる排水機構20の開閉部材22は封止部2C1と水密に接触して封止状態となって開口部12Bを封止する(
図2を参照)。トレー2は、排水機構20と水受部30とが離れた状態にあるから、リフト18と格納装置14Aとの間での移動が許容される。
【0069】
次に、排水樋40を流下した水分が排水される状態を説明する。
図10は、トレー2がリフト18に載置されて下降してトレー2が下段レベルL3に支持され、排水樋40を流下した水分をリフトピット16の釜場16Aに排水する状態を示している。
【0070】
図10は、リフト18は、トレー2が格納装置14Aの下段レベルL3に下降して停止する直前の状態を示す。図示はしないが、トレー2は、載置部材19とともにリフト18の枠体18Cから僅かに上方に位置して、トレー2の排水機構20とリフト18の水受部30とが離れた状態になる(
図2参照)。具体的には、載置部材19の昇降範囲に、図示しない受部材が載置部材19を支持可能に突出していて、載置部材19は、リフト18上に支持されたまま図示しない受部材に支持され、枠体18Cよりも上方に上昇してトレー2が下段レベルL3に停止され、リフト18も停止される。このとき、載置部材19の上面は、格納装置14Aの下段レベルL3のレールの上面と同一レベルとされ、トレー2が、リフト18と格納装置14Aとの間で移動可能とされる。この状態において、トレー2に設けられる排水機構20とリフト18に設けられる水受部30とが離れた状態となり、これにより、トレー2に設けられる排水機構20の開閉部材22は封止部2C1と水密に接触して封止状態となって開口部12Bを封止する。トレー2は、排水機構20と水受部30とが離れた状態にあるから、リフト18と格納装置14Aとの間での移動が許容される。
【0071】
排水樋40を流下した水分は、排水樋40の下方に配置される接続部42に連結される排水部材44を介して流下してリフトピット16に設けられる釜場16Aに貯水される。釜場16Aに貯水される水分は、図示しない排水ポンプによって外部に排出される。
【0072】
図10に示す下段レベルL3にて、水分がリフトピット16の釜場16Aに排水されると、水受部30の水受タンク32は空状態になる。この後、リフト18が
図10に示す矢印Aの方向に上昇されると、載置部材19はリフト18の枠体18Cの側に下降して、
図3に示すように、リフト18に設けられる水受部30の作動部材34が、トレー2に設けられる排水機構20の開閉部材22を封止部2C1から離れる方向に移動して、封止部2C1を開放する。
図10では、この開放状態を示している。そして、次の車両4の入出庫のために、上段レベルL2、又は上段レベルL2を通過して上昇し、着床レベルL1に停止する。このとき、載置部材19の昇降範囲に突出する図示しない受部材は昇降範囲に突出しない位置に退避している。この間、トレー2に設けられる排水機構20は開放状態に置かれるため、格納装置14A内に格納されている間にトレー2上に溜まった水分、又は、次の入出庫において車両4によって持ち込まれる水分がトレー2上から確実に排水される。
【0073】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について、
図14を参照して説明する。
第三実施形態に係るトレーの排水システムは、第一実施形態におけるトレー2に設けられる排水機構20を複数設ける点で構成が異なる。
【0074】
[排水機構]
本実施形態では、排水機構20は、トレー2の長手方向の中央部であってトレー2の短手方向に沿う方向に間隔を隔ててふたつ設けられている。排水機構20の位置は、これに限定されず、トレー2の下方に設けられる水受部30の位置に合わせることができればいずれの位置でもよい。
【0075】
本実施形態では、排水機構20をふたつ設けることにより、トレー2の下方に設ける水受部30もふたつ設ける構成となる。これを機械式駐車装置1のリフト18に適用する場合は、水受部30、排水樋40、及び釜場16Aを、それぞれふたつずつ2系統に分けて設けてもよく、また、水受部30をふたつ設けて、ふたつの水受部30からの2本の排水パイプ38をひとつの排水樋40に導いて、排水樋40及び釜場16Aを、それぞれひとつずつとして、排水システムの途中から1系統としてもよく、また、水受部30の水受タンク32をふたつの排水機構20に対応させる大きさとして、水受部30、排水樋40、及び釜場16Aをひとつずつとして1系統としてもよい。
【0076】
以上、詳述したように、本発明に係るトレーの排水システムは、物品を載置するトレー2に設けられる排水機構20と、排水機構20に作用して排水機構20を開放する水受部30と、水受部30からの水分を誘導する排水樋40と、を含んで構成されるトレー2の排水システムであって、排水機構20は、トレー2の床を貫通する開口部2Bの下側に設けられ、水分を封止する封止部2C1と、封止部2C1を開閉する開閉部材22と、を含んで構成され、水受部30は、開閉部材22を封止部2C1から離反する方向に移動させて封止部2C1を開放する作動部材34を含んで構成され、水受部30が封止部2C1を開放してトレー2に溜まる水分が排水される構成とされ、排水樋40は、水受部30に設けられる排水パイプ38の昇降動作に沿う方向に設けられ、排水パイプ38から排水される水分を自然落下させて釜場16Aに誘導する。
【0077】
これにより、タンク又は水抜穴を有するものに比べて、トレー2上に溜まる水分を確実に排水することができる。
【0078】
また、本発明に係るトレーの排水システムは、排水機構20は、開口部2Bの下方に設けられ、上下に開口を有し、上部に封止部2C1が形成される筒部材2Cと、筒部材2Cに設けられ、開閉部材22を移動可能に支持する支持部材2Dと、開閉部材22に接続され、支持部材2Dに摺動可能に支持される摺動部材24と、摺動部材24の開閉部材22の反対側に設けられ、水受部30の作用を受ける被作動部材26と、支持部材2Dと被作動部材26との間に設けられ、開閉部材22を封止部2C1に接触させる方向に付勢するコイルばね28と、を有する。
【0079】
これにより、トレーに単に穴を有するものに比べて、トレー2上に溜まる水分を一時的に排水することができる。
【0080】
また、本発明に係るトレーの排水システムは、水受部30は、上部に開放された水受タンク32と、水受タンク32の内部に設けられ、排水機構20の被作動部材26に向けて延びる作動部材34と、を有し、被作動部材26に対して進退する。
【0081】
これにより、トレーに単に穴を有するものに比べて、トレー2上に溜まる水分を一時的に排水することができる。
【0082】
また、本発明に係るトレーの排水システムは、水受部30に設けられる水受タンク32は、排水機構20の側から受けた水分を排水する排水孔32A及び排水パイプ38を有する。
【0083】
これにより、トレーに穴又はタンクを有するものに比べて、水受タンク32が受けた水分を下流側に一定水量で排水することができる。
【0084】
また、本発明に係るトレーの排水システムは、水受部30は、トレー2を載置して昇降する昇降部18、又はリフト18に設けられる。
【0085】
これにより、手動操作を行うものに比べて、水受部30が受けた水分を下流側に自動的に一定水量で排水することができる。
【0086】
また、本発明に係るトレーの排水システムは、排水樋40は、昇降装置18の昇降方向に沿う方向に配置され、排水パイプ38が内部において昇降が許容される開放部40Dを有する。
【0087】
これにより、トレーに穴又はタンクを有するものに比べて、水受タンク32が受けた水分を途中で貯水することなく、下流側に排水することができる。
【0088】
また、本発明に係る機械式駐車装置は、車両4を載置するトレー2と、トレー2に車両4が乗降する乗降室12と、トレー2を格納する格納室14と、乗降室12と格納室14とを連絡し、トレー2を載置するリフト18と、上記のいずれかに係るトレーの排水システムと、を備える。
【0089】
これにより、車両4によってトレー2上に持ち込まれる水分を、トレー2から適宜のタイミングで下流側に排水することができる。水分には、雨水、雪氷融水の他に、燃料電池車(FCV)の排水システムによる連続排水される水も含まれ、これらの水分を確実に排水することができる。
【0090】
以上、各実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、本実施形態は一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更をして実施でき、また、本発明の権利範囲がこれら実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0091】
例えば、筒部材2Cは円筒形であると説明したが、これに限らず、角筒など他の断面形状の筒材を用いてもよく、その際、封止部2C1は開閉部材22と水密に封止できる形状にするとよい。
【0092】
また、支持部材2Dは円筒形のパイプであり、摺動部材24は円柱状の部材であると説明したが、これに限らず、支持部材2Dは水分を下方に通過可能であればいずれの形状でもよく、また、摺動部材24は角柱状の部材であってもよい。その際、支持部材2Dの支持形状は摺動部材24の断面形状に合わせて角筒状に形成してもよい。
【0093】
また、開閉部材22は円板状であると説明したが、これに限らず、楕円状、角形状、角錐状、球体状、丸体状などとしてもよく、その際、封止部2C1は、開閉部材22に水密に接触する形状とすればよい。
【0094】
また、コイルばね28は、筒部材2Cに設けられる支持部材2Dと開閉部材22と被作動部材26とを繋ぐ摺動部材24に挿し込まれるように設けられていると説明したが、これに限らず、板ばねなど他のばね材を用いてもよいことは勿論である。
【0095】
また、排水樋40は、第一誘導部40Aと、第二誘導部40Bと、第三誘導部40Cと、開放部40Dとを有すると説明したが、これに限らず、排水樋40の平面視における断面形状は、開放部40Dを有する形状であれば、円形、楕円形、台形、三角形等、水分を誘導して流下させる機能を有するものであればいずれの形状でもよい。
【0096】
また、排水樋40の下流側は、接続部42を設けて排水部材44と接続すると説明したが、これに限らず、排水樋40を直接釜場16Aに導いてもよい。
【0097】
また、止水部材2Aは、直径19mmの丸棒鋼を用いると説明したが、これに限らず、直径25mmの丸棒鋼でもよいし、同等の寸法を有する角棒鋼としてもよく、止水機能を発揮する材料であればいずれの材料でもよい。
【0098】
また、本実施形態における機械式駐車装置1の格納装置14Aは上下二段式であると説明したが、これに限らず、上下二段式以外にも、一段式、或いは三段以上の形式でもよい。また、格納するレベルごとに車両4の格納台数が異なる形式とするもの、或いは、格納する車両4の大きさ(例えば、車両4の収容高さ制限や車両4の収容平面寸法制限)又は車両4の収容重量制限等に基づいて、格納するレベルの段ごとに、又は同一レベル内で、設定を異ならせる形式のものとしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 機械式駐車装置
2 トレー
2A 止水部材
2B 開口部
2C 筒部材
2C1 封止部
2D 支持部材(支持部の一例)
2E スペーサ
4 車両
10 建物躯体
12 乗降室
12A 出入口
12B 開口部
14 格納室
14A 格納装置
16 リフトピット
16A 釜場
18 昇降部、リフト(昇降装置の一例)
18A リフト柱
18B サポート部材
18C 枠体
18C1 中間材
18D 横梁
19 載置部材
20 排水機構
22 開閉部材
24 摺動部材
26 被作動部材
28 コイルばね(付勢部材の一例)
30 水受部(作動部の一例)
32 水受タンク(受水槽の一例)
32A 排水孔(排水パイプ38とで構成される排水部の一例)
34 作動部材
34A 先端
36 枠材
36A 受材
36B スペーサ
38 排水パイプ(排水孔32Aとで構成される排水部の一例)
38A 排水口
40 排水樋(水分誘導部の一例)
40A 第一誘導部
40B 第二誘導部
40C 第三誘導部
40D 開放部
42 接続部
44 排水部材