(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109658
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】色調改変剤
(51)【国際特許分類】
A23L 5/41 20160101AFI20230801BHJP
【FI】
A23L5/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022021649
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 優一
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MA07
4B018MB01
4B018MB05
(57)【要約】
【課題】 本発明は、飲食品の色調を改変することができる色調改変剤、該色調改変剤を含有させる色調改変方法、及び色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品を提供するものである。
【解決手段】 エラグ酸含有物が色調改変効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラグ酸を有効成分とする、色調改変剤。
【請求項2】
エラグ酸含有物と分散剤との混合物である、請求項1に記載の色調改変剤。
【請求項3】
非動物性タンパク質用である、請求項1又は2に記載の色調改変剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の色調改変剤を、鉄を含む飲食品に含有させることを特徴とする、飲食品の色調改変方法。
【請求項5】
エラグ酸含有物と分散剤との混合物を含有する非動物性タンパク質含有飲食品であって、非動物性タンパク質100重量部に対してエラグ酸を0.001~0.4重量部含む、色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品。
【請求項6】
非動物性タンパク質が灰褐色へ色調改変された、請求項5に記載の非動物性タンパク質含有飲食品。
【請求項7】
エラグ酸含有物と分散剤との混合物を非動物性タンパク質含有飲食品に含有させる、非動物性タンパク質含有飲食品の製造方法であって、非動物性タンパク質100重量部に対してエラグ酸を0.001~0.4重量部含有させることを特徴とする、色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品の製造方法。
【請求項8】
非動物性タンパク質が灰褐色へ色調改変された非動物性タンパク質含有飲食品の製造方法である、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調改変剤、色調改変方法及び色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに各種素材による色調改変剤が開発されており、例えば、ヘム含有タンパク質を使用して、肉レプリカを着色して生の状態の肉の色調を模倣し、肉レプリカの調理中には調理された肉の色調に変遷させること(特許文献1)が知られている。
【0003】
また、特許文献2には、エラグ酸含有組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6930951号公報
【特許文献2】特許第6653091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、飲食品の色調を改変することができる色調改変剤、該色調改変剤を含有させる色調改変方法、及び色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、エラグ酸含有物が色調改変効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]の態様に関する。
[1]エラグ酸を有効成分とする、色調改変剤。
[2]エラグ酸含有物と分散剤との混合物である、[1]記載の色調改変剤。
[3]非動物性タンパク質用である、[1]又は[2]に記載の色調改変剤。
[4][1]~[3]の何れかに記載の色調改変剤を、鉄を含む飲食品に含有させることを特徴とする、飲食品の色調改変方法。
[5]エラグ酸含有物と分散剤との混合物を含有する非動物性タンパク質含有飲食品であって、非動物性タンパク質100重量部に対してエラグ酸を0.001~0.4重量部含む、色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品。
[6]非動物性タンパク質が灰褐色へ色調改変された、[5]に記載の非動物性タンパク質含有飲食品。
[7]エラグ酸含有物と分散剤との混合物を非動物性タンパク質含有飲食品に含有させる、非動物性タンパク質含有飲食品の製造方法であって、非動物性タンパク質100重量部に対してエラグ酸を0.001~0.4重量部含有させることを特徴とする、色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品の製造方法。
[8]非動物性タンパク質が灰褐色へ色調改変された非動物性タンパク質含有飲食品の製造方法である、[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、飲食品の色調を改変することができる色調改変剤を提供することができるようになり、該色調改変剤を含有させることで、飲食品の色調を改変できるようになった。また、色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】水、エラグ酸含有物粉末、食塩及び植物性タンパク質を混合した実施品1-1の植物性タンパク質含有食品(灰褐色)の写真。
【
図2】水、食塩及び植物性タンパク質を混合した比較品1の植物性タンパク質含有食品(クリーム色)の写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の色調改変剤は、エラグ酸を有効成分として含有する。エラグ酸はエラグ酸含有物として配合でき、エラグ酸含有物としては、エラグ酸を含有する市販の植物抽出物が好ましく、例えば、ザクロ抽出物、アフリカマンゴノキ抽出物、タラ抽出物、ブラックベリー抽出物、ラズベリー抽出物、イチゴ抽出物、ブドウ抽出物、クルミ抽出物、ピーカン抽出物、クコ抽出物等が例示できる。
【0011】
本発明の色調改変剤は、エラグ酸含有物と分散剤との混合物であるのが好ましく、特許文献2に記載のエラグ酸含有組成物を利用できる。エラグ酸含有物と分散剤との混合物は、例えばエラグ酸含有物と分散剤とを、pH9~14、好ましくはpH10以上のアルカリ条件下で混合後、pH4~8、好ましくはpH5~7.5にpHを低下させることで得られ、減圧濃縮、膜濃縮、ドラムドライ、エアードライ、噴霧乾燥、真空乾燥若しくは凍結乾燥、又はそれらの組み合わせ等により、濃縮品や乾燥品としてもよい。
【0012】
分散剤は、分散剤溶解液中にエラグ酸含有物を分散できれば特に限定されないが、水溶性高分子が好ましく、平均分子量1万以上の水溶性高分子がより好ましく、平均分子量5万以上がさらに好ましく、例えば、アラビアガム、ペクチン等の増粘多糖類等が例示でき、2種類以上の分散剤を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
分散処理は、一般的な方法で行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等の装置を使用した処理を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。また、混合時の温度は、例えば20~120℃、30~100℃等の温度が例示でき、好ましくは100℃未満、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0014】
本発明の色調改変剤は、鉄を含む各種飲食品に添加することで、飲食品の色調を改変することができ、好ましくは非動物性タンパク質用、より好ましくは植物性タンパク質用の色調改変剤として用いることができる。該色調の改変は、主に灰褐色に色調を改変できるが、飲食品中に含まれる鉄とエラグ酸との反応により起こると思われ、生成される物質が、肉を加熱すると生成される、ミオグロビンが変性した変性ミオグロビン(メトミオクロモーゲン)様の色調を有すると思われるため、特に視覚的に疑似性の高い肉様食品の調製に有用である。
【0015】
鉄を含む飲食品は特に制限されないが、例えば非動物性タンパク質、好ましくは植物性タンパク質を使用した、プロテインサプリメント、プロテインバー、プロテインゼリー等のタンパク質補給用食品、豆乳等の飲料、非動物性タンパク質を含むスープ類、肉様食品等の非動物性タンパク質含有飲食品が例示でき、飲食品が鉄を含んでいればよい。飲食品中に好ましくは0.1~500ppm、より好ましくは0.2~200ppm、さらに好ましくは0.5~100ppm、特に好ましくは1~50ppmの鉄を含んでいればよく、非動物性タンパク質が鉄を含んでいればよいが、前記濃度になるように、鉄を添加することもできる。
【0016】
本発明の非動物性タンパク質含有飲食品は、エラグ酸含有物と分散剤との混合物を含有し、非動物性タンパク質100重量部に対してエラグ酸を0.001~0.40重量部、好ましくは0.002~0.35、より好ましくは0.005~0.30、さらに好ましくは0.01~0.25含む、色調が改変された非動物性タンパク質含有飲食品であって、非動物性タンパク質が灰褐色へ色調改変された非動物性タンパク質含有飲食品であるのが好ましい。該非動物性タンパク質含有飲食品は、エラグ酸含有物と分散剤との混合物を非動物性タンパク質含有飲食品に添加してエラグ酸を前記割合で含有させることで製造でき、添加時又は添加後に例えば20~120℃、30~100℃程度に加熱してもよいが、好ましくは100℃未満、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。非動物性タンパク質は、鉄を含んでいればよく、例えば、大豆タンパク質、エンドウタンパク質、ソラマメ蛋白質、ヒヨコマメタンパク質、インゲンマメタンパク質等の豆類タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質等の穀類タンパク質、ゴマタンパク質等の種実類タンパク質等の植物性タンパク質、昆虫タンパク質等が例示でき、酵素処理、熱処理、アルカリ処理等により加水分解された非動物性タンパク質でもよい。
【実施例0017】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0018】
[試験例1]
水道水6192gに水酸化ナトリウムを134.4g添加し、エラグ酸含有物であるザクロ抽出物(ザクロエラグ酸、株式会社サビンサジャパンコーポレーション社製、エラグ酸含有量:91.7%(w/w))200gを投入して、溶解させた後、アラビアガム(FIBREGUM(登録商標)B、Nexira株式会社製)1000gを加えて、80℃で10分間混合処理した液(pH12.3)に、50%(w/w)クエン酸水溶液を328g加えてpH6.0に調整後、高圧ホモジナイザー(LAB-1000、SMT株式会社製)を用いて均一に分散させた。次に、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することで、エラグ酸含有物粉末(エラグ酸含有量:11.1%(w/w))を得た。
【0019】
水29.6gに、エラグ酸含有物粉末0.04g(実施例1-1)、0.08g(実施例1-2)又は0g(比較例1)、及び食塩0.24gを溶解させた後、植物性タンパク質としてクリーム色の粒状大豆たん白(ニューフジニック(登録商標)-51、不二製油株式会社製)10gを添加して、植物性タンパク質含有食品(実施品1-1、1-2又は比較品1)を調製した。各植物性タンパク質含有食品中のエラグ酸濃度及び植物性タンパク質100重量部に対するエラグ酸(重量部)を表1にまとめると共に、各植物性タンパク質含有食品の色調変化を表1に示し、実施品1-1及び比較品1の写真を
図1及び2に示した。
【0020】
【0021】
実施品1-1及び1-2は何れも植物性タンパク質含有食品の色調が、クリーム色から灰褐色に変化しており、また実施品1-2の方が実施品1-1より若干暗い色を呈していた。実施品の色調は、加熱した動物肉特有の色調に似ており、実施品1-1及び1-2は、加熱後のミンチ肉に酷似していた。これは、肉を加熱すると生成される、ミオグロビンが変性した変性ミオグロビン(メトミオクロモーゲン)様の色調を有する物質が、植物性タンパク質中の鉄とエラグ酸との反応により生成されたと思われる。以上から、植物性タンパク質を使用した飲食品に、エラグ酸含有物を配合することで、より疑似性の高い肉様食品の提供が期待できる。